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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】対称性の面外回折格子および方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240618BHJP
   H01S 3/10 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
G02B5/18
H01S3/10 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020512002
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018049615
(87)【国際公開番号】W WO2019050995
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】62/555,596
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508318650
【氏名又は名称】ローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lawrence Livermore National Security, LLC
【住所又は居所原語表記】Lawrence Livermore National Laboratory, 7000 East Avenue, L-703, Livermore, CA 94551-9234, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】リンク,エミリー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アレッシ,デイヴィッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘフナー,レオン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリッテン,ジェラルド エー.
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/118925(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0093111(US,A1)
【文献】特表2008-532070(JP,A)
【文献】特開平09-211504(JP,A)
【文献】特開2014-035374(JP,A)
【文献】特開平09-258117(JP,A)
【文献】米国特許第06081543(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0127123(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0115711(US,A1)
【文献】B. Rus, et al.,"ELI-beamlines: progress in development of next generation short-pulse laser systems",Proceedings of SPIE,2017年06月26日,Volume 10241,p.102410J-1~102410J-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
H01S 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反射格子および第2の反射格子を備える第1の格子対であって、前記第1の反射格子は、前記第1の反射格子の溝に垂直であり、かつ前記第1の反射格子の法線を含む平面として定義される第1の平面を有し、前記第2の反射格子は前記第1の反射格子に平行である、第1の格子対と、
前記第1の格子対の対称性の鏡像構成と、
前記第1の平面の外側に、かつ前記第1の反射格子へと、電磁放射のパルスを誘導するよう構成された手段であって、前記パルスは、前記第1の反射格子から前記第2の反射格子へと直接伝播し、次いで前記対称性の鏡像構成を通って伝播して、出力パルスを生成することになる、手段と
を備え、
前記対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになる、又は
前記対称性の鏡像構成は、第3の反射格子および第4の反射格子を備え、前記第3の反射格子は前記第4の反射格子に平行であり、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播することになり、前記第3の反射格子から反射されることになり、次いで前記第4の反射格子から反射されることになり、
前記第1の格子対は、前記パルスの波長を分散するように構成されている、対称性の面外回折格子圧縮器。
【請求項2】
前記対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになり、
前記再帰反射器は、単一部品再帰反射器、または、複数の別体の鏡を備える、請求項1に記載の圧縮器。
【請求項3】
前記対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになり、
前記再帰反射器は、角度偏差なしに、または分散光の空間分布を変更することなしに、前記パルスを、その元の光路を通って、送り戻す、請求項1に記載の圧縮器。
【請求項4】
前記電磁放射のパルスを誘導するよう構成された前記手段は、前記電磁放射のパルスを、リトロー角で、前記第1の反射格子へと誘導するよう構成されている、請求項1に記載の圧縮器。
【請求項5】
前記パルスに対して、前記出力パルスは、空間チャープ、時間チャープ及び角度チャープの少なくとも1つを含んでいる、請求項1に記載の圧縮器。
【請求項6】
前記出力パルスに対して、前記パルスは、空間チャープ、時間チャープ及び角度チャープの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の圧縮器。
【請求項7】
第1の反射格子および第2の反射格子を備える第1の格子対を設けることであって、前記第1の反射格子は、前記第1の反射格子の溝に垂直であり、かつ前記第1の反射格子の法線を含む平面として定義される第1の平面を有し、前記第2の反射格子は前記第1の反射格子に平行である、第1の格子対を設けることと、
前記第1の格子対の対称性の鏡像構成を設けることと、
前記第1の平面の外側に、かつ前記第1の反射格子へと、電磁放射のパルスを、前記パルスが、前記第1の反射格子から前記第2の反射格子へ直接伝播し、次いで前記対称性の鏡像構成を通って伝播して、出力パルスを生成するように、誘導することと
を含み、
前記対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになる、又は
前記対称性の鏡像構成は、第3の反射格子および第4の反射格子を備え、前記第3の反射格子は前記第4の反射格子に平行であり、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播することになり、前記第3の反射格子から反射されることになり、次いで前記第4の反射格子から反射されることになり、
前記第1の格子対は、前記パルスの波長を分散するように構成されている、対称性の面外回折格子圧縮方法。
【請求項8】
前記対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになり、
前記再帰反射器は、単一部品再帰反射器、または、複数の別体の鏡を備える、請求項7に記載の圧縮方法。
【請求項9】
前記対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになり、
前記再帰反射器は、角度偏差なしに、または分散光の空間分布を変更することなしに、前記パルスを、その元の光路を通って、送り戻す、請求項7に記載の圧縮方法。
【請求項10】
前記パルスを誘導するステップは、前記パルスを、リトロー角で、前記第1の反射格子へと誘導することを含んでいる、請求項7に記載の圧縮方法。
【請求項11】
空間チャープと、時間チャープと、角度チャープとからなる群から選ばれた少なくとも1つの種類の周波数チャープを、前記出力パルスに追加することをさらに含む、請求項7に記載の圧縮方法。
【請求項12】
空間チャープと、時間チャープと、角度チャープとからなる群から選ばれた少なくとも1つの種類の周波数チャープを、前記出力パルスから除去することをさらに含む、請求項7に記載の圧縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月7日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、「Symmetric Out-Of-Plane Arrangement for Diffractive Gratings for Adding or Removing Spatial,Temporal,and Angular Chirp at any Incidence Angle」と題する米国特許仮出願第62/555,596号明細書の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発による発明の権利の記載
ローレンス・リバモア国立研究所の運営に関する、米国エネルギー省とローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティLLCとの間の契約No.DE-AC52-07NA27344に従って、米国政府は、この発明における権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本技術は、短パルス拡張、圧縮およびパルス整形用に使用される格子対構造に関し、より詳しくは、空間周波数チャープを誘発することなく、任意の使用角度で、これらの構造を可能にするための技術に関する。
【0004】
現行のレーザ技術では、超短パルスを使用することにより、テラワット(1012W)~ペタワット級(1015W)レーザを生成することができる。これらの高ピーク電力レーザは、高時間分解能を伴う基礎エネルギー科学、先端機械加工、ならびに、x線撮像、防護および医療用途用の二次的な供給源の製造に関して、成功を収めてきた。2017年の末までに、世界で、100を超えるペタワット級レーザが稼働しているであろう。(数十~100fsの)超短パルスに加えて、多くの用途でも、高平均出力用に、より高い繰り返し周波数が必要とされる。高平均出力での高ピーク電力ビームラインの運転には、加熱に関連した制限を低減するために、損失の低減が必要とされることになる。
【0005】
高ピーク電力レーザにおける損失の主たる源は、パルス圧縮の効率の悪さにある。超短パルスの増幅には、増幅媒質におけるピーク強度(単位時間あたり面積あたりのエネルギー)を減少させることが必要とされる。これを達成するために、回折格子の対が、波長依存性の遅延を導入するために使用されて、増幅器におけるピーク強度を低下させ、かつ、後に反転させることができる仕方で、パルスの持続時間を増加させる。増幅が実現されたのち、回折格子の追加の対を使用して、パルスを再圧縮することが必要である。通常の圧縮器は、第2の経路を通ってレーザを送るためのレトロ反射鏡を有する、4つの反射格子または2つの反射格子からなっている。このパルス圧縮は、十分に確立されているが、使用される格子の効率に強く依存している。プリズムまたは透過格子を使用する代替的な構造を使用できるが、純粋に反射性の形状により、高エネルギーレーザ用の最も明瞭なパルスが生成され、材料透過からの非線形の伝搬効果によって引き起こされる圧縮アーティファクトに影響されにくくなる。
【0006】
現行の技術は、サブ150fs持続時間へのパルスの圧縮に関して、94%の最大回折効率を有する金反射格子に基づいている。4回これらの金格子から回折したのち、総計の圧縮器透過は、最大で78%となる。実際には、圧縮器透過は、70~75%に、より近くなる。この高損失は、ジュールあたりのコストを大幅に増加させ、高エネルギー超短レーザへの主な制限となる。より広い帯域幅にわたって回折効率を維持するために、特定の使用角度で格子を使用することが望ましい場合がある。例えば、>90%の圧縮器透過を生み出せる多層の誘電体格子を、リトロー角構成近辺で使用しなければならない。(リトローとは、入射光線が、その起点へと戻るように回折される角度のことである。)リトロー角からの偏向により、帯域幅の急激な減少が生じる。
【0007】
反射格子圧縮器内外へビームを通過させるために、格子を傾斜させる必要がある。用途に応じて、面内入射角を特定の値(例えばリトロー)に設定することが時として必要とされ、光学系内へとビームを移送することを促進するために、面外傾斜が場合により必要となる。この面外入射角が、円錐回折を引き起こす。この面外入射角を利用する平行な格子圧縮器の先行の実施態様では、単一面再帰反射鏡を使用して、第2の経路を通り圧縮器を通ってビームを送り、かつ、入力および出力ビームの間の分離を生み出してきており、または、空間チャープを補償することを試みることなしに、格子の単一の対を使用してきており、または、空間チャープ効果に対して感受性がより低い小ビームおよび小チャープ因子を有する二要素のルーフミラーアセンブリを使用してきた。各色は、圧縮器のその第2の経路を通って、わずかに異なる角度に従うため、空間チャープの補償が不完全となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術により、あらゆる入射角において、空間、時間および角度チャープを追加または除去するための回折格子用の、対称性の面外配置が提供される。本新規なパルス圧縮器構造により、任意の使用角度での、空間チャープの十分な補償が可能となる。これにより、空間的または時間的特性の損失なしに、入力および出力ビームの分離が可能となる。この設計は、高効率で広帯域の反射性のパルス圧縮器を近リトロー角構成で製造するために、角度感受性のMLD格子で実践され、面外回折から生じる空間および角度チャープの補正を実行した。この開発は、1.4億ドル($1.4B)の超高速レーザ市場に影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この技術の用法には、レーザパルスの拡張および圧縮、超短レーザパルスの拡張および圧縮、中程度~高エネルギーの超短パルスレーザパルスの圧縮、高平均出力超短レーザパルスの圧縮、パルス整形、テラワットレーザ、ペタワットレーザ、パルス拡張および圧縮、スペクトルフィルタリング、ならびに、円錐回折ベースのパルス圧縮または拡張が含まれる。
【0010】
本開示の一部に組み込まれて、本開示の一部を形成する添付図面は、本発明の実施形態を説明し、かつ、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】格子へのレーザビーム入射の面外回折の図である。
図2】任意の角度のパルス圧縮用の、対称性の4格子構成の図である。
図3】面外圧縮器形状を通る経路長さの算定用に使用される、角度規則を示す図である。
図4】面外回折収差を補正する、完成した面外圧縮器配置の光線追跡図である。
図5】さまざまな格子技術用の波長の関数としての、(測定値からの)圧縮器効率を示す。
図6】算定および測定された群遅延の間の呼応を示す。
図7A】MLD格子を有する面外圧縮器の実践からの、測定されたスペクトル応答を示す。
図7B図7A中のスペクトルおよび位相に関する、算定された時間パルス形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
格子の第1の対により導入された空間チャープを完全に補償するために、ビームが、十分に対称性の鏡像構成において、格子の第2の対を横断する必要がある。この対称性要求は、図1に示すように、円錐回折ゆえに、格子法線平面の外側の入射角が使用される時に、より拘束的となる。この対称性は、複数の異なる構成により、達成できる。図1は、格子へのレーザビーム入射の面外回折の図である。業界標準では、格子溝(14)に垂直な平面内にある、入射および回折ビームにより作動する。この場合、広帯域のレーザパルス10が、角度シータ(Θ)により面外となる平面16において、格子12に入射する。色は、図示した円錐18において、平面外に回折される。
【0013】
十分な構成の2つの例を、図2に表示する。図2の対称性の4格子構成におけるビームは、図2の差し込み図における複合の再帰反射器を有する2格子二重通過構成に相当する。これは、ビームが、同じ経路をたどって、その第2の経路を通って戻るからである。対称性の鏡像構成の実現は、格子圧縮器システムにおいて空間チャープを除去するために必要である。より慣例的な格子システムにおけるように、角度チャープ効果は、入射角にかかわらず、平行な平面格子を有することにより補償される。そこで、図2は、任意の角度のパルス圧縮用の、対称性の4格子構成の図となっている。この構成では、すべての空間チャープを、第1の格子対の対称性の鏡像を使用することにより、首尾よく補償できる。第1の格子対120および122は、入力パルスの波長を分散させる。第2の格子対124および126は、第1の格子対の対称性の鏡像である。要求される対称性を同様に満たす代替的な方策の一例が、格子対124および126を再帰反射器128と置換することにより、実現できる。この場合、スリーミラー再帰反射器設計を使用して、鉛直変位を有する格子の第1の対を通じて、第2の経路用にビームを送り戻す。
【0014】
面外の構成において、入力ビームに印加された分散は、純粋に面内の構成により印加されたものと異なっている。これは、各周波数が横断する経路が、従来の場合における面外の構成において、異なっているからである。それぞれが格子対を通る間に横断するこの経路は、
【数1】
によって記述され、式中、
【数2】
であり、dは、格子の間の垂直分離であり、Gは、格子上の罫線の間の距離であり、λは波長であり、αは、入射光線と、格子法線の平面におけるその投射との間の角度であり、βは、格子法線と、格子法線平面への入射光線の投射との間の角度である。角度αおよびβの間の関係を図3に示す。
【0015】
図3は、面外圧縮器形状を通る経路長さの算定用に使用される、角度規則を示す図である。z軸は格子法線であり、y軸は、格子の溝に平行であると定義され、x軸は、法線および格子溝の両方に垂直である。格子法線平面は、xz平面として定義される。面外角度αは、入射ビームベクトルと、格子法線平面におけるその投射との間の角度として定義される。面内の角度βは、この投射とz軸との間の角度として定義される。
【0016】
面内の場合におけるように、ビームが格子対を横断する際にビームにより生じる位相をΦ=ωp/cにより記述し、式中、ωは角周波数であり、cは光の速さである。回折次数は依然として、位相のテーラー展開により、面内の場合におけるように、算定できる。面外角度α=0という制限内で、位相導関数は、1969年にトレーシーにより記述された、よく知られ面内の事例を発生させる。
【0017】
格子法線平面外に回折平面を4度回転させることによりリトロー角パルス圧縮器の内外へビームを移送するための構成を研究することによって、本発明者はこの設計を実践した。格子が平行である場合、角度チャープ問題は予期されない。本発明者は、対称性の構成において4つの格子を使用することにより、反空間-スペクトル効果ゼロを実証する。リトロー面外圧縮器は、解析計算、光線追跡モデル化を使用し、かつ、実験室での試作を通じて、実践された。図4は、空間または角度チャープを有さない4度のOOP角度で作動する4つの格子を利用した、本発明者の設計の、光線追跡結果を示している。本新規な形状が不測の時空的な効果を引き起こさないことを立証するために、原理実験の最初の証明が、標準の金格子で行われた。この設計の有効性が実験的に立証されると、原理の第2の証明が、高スループットを実現するために、MLD格子により行われた。使用された格子は、808nmの中心波長のいずれの側に対しても±15nmで、98%のピーク回折効率(DE)および>97%の回折効率を有していた。
【0018】
図4は、面外回折収差を補正する、完成した面外圧縮器配置の光線追跡図である。複数の色を有する単光線200が、4度のOOPで、圧縮器へと誘導されている。色は、4つの格子201~204のそれぞれにより回折されて、最後に出力205で、位置および角度が重複する。各色は、圧縮器内で、異なる距離を移動する。
【0019】
4つのMLD格子を有する完成した圧縮器は、50nmにわたって、90%の透過を生み出した(図5)。この50nm最高値は、原理の証明で使用された格子のサイズにより制限される。これは、30fsパルスを生成するために、十分な帯域幅である。図5は、さまざまな格子技術用の波長の関数としての、(測定値からの)圧縮器効率を示す。ローレンス・リバモア国立研究所で組み立てたOOP圧縮器で、広帯域幅の格子を使用することにより、高効率のMLD圧縮器を得た。
【0020】
この圧縮器がチャープパルス増幅レーザシステム内でどのように作動するかを理解するために、圧縮器設計の空間的な分散を調査した。既存のシステムにOOP圧縮器を後付けし、かつ、FROG測定を行うことにより、分散モデル化が有効化された。図6は、測定および算定された群遅延の間の良好な呼応を示している。ゆえに、この形状は、サブ30fsパルスの圧縮を防止するであろう、いずれの分散も導入しないであろう。これにより、分散がよく理解されること、および、この設計からの分散が補償されて、良好なパルスを生成できることが確認される。測定されたスペクトルを使用して、予期されるパルス出力をモデル化して、本発明者は、現行の格子設計を有する30~35fsパルスを予期する。
【0021】
図7Aは、MLD格子を有する面外圧縮器の実践からの、測定されたスペクトル応答を示す。右軸は、分散整合された拡張器を有する立証された圧縮器用に算定された、スペクトル位相を示している。
【0022】
図7Bは、図7A中のスペクトルおよび位相に関する、算定された時間パルス形状を示す。
【0023】
格子設計と、より大きな格子とを、より最適化することで、本新規な圧縮器は、より広い帯域幅にわたって92%の透過を生み出すよう、スケール変更できるようにせねばならない。本発明者の近リトローパルス圧縮器において、MLD格子で測定した、90%の圧縮器スループットは、ペタワット級レーザに関して、1ジュールあたり、おおよそ20%のコスト削減を意味する。効率のこの著しい増加は、平均的な電力処理能力および耐用年数とともに、2017年までに運転可能とするよう計画されている100PW級のシステム、および、1.4億ドル($1.4B)超高速レーザ市場について、大いに関心を引くであろう。
【0024】
大まかには、この書面は、少なくとも以下を開示している。
【0025】
短パルス拡張、圧縮およびパルス整形用に使用される格子対構造は、空間周波数チャープを誘発することなく、任意の使用角度で、使用することができる。これらの対称性の面外回折格子配置は、あらゆる入射角において、空間、時間および角度チャープを追加または除去することができる。
【0026】
この書面は、少なくとも以下の概念をも提示している。
【0027】
概念
1 第1の反射格子および第2の反射格子を備える第1の格子対であって、前記第1の反射格子は、前記第1の反射格子の溝に垂直であり、かつ前記第1の反射格子の法線を含む平面として定義される第1の平面を有し、前記第2の反射格子は前記第1の反射格子に平行である、第1の格子対と、
前記第1の格子対の十分に対称性の鏡像構成と、
前記第1の平面の外側に、かつ前記第1の反射格子へと、電磁放射のパルスを誘導するよう構成された手段であって、前記パルスは、前記第1の反射格子から、次いで前記第2の反射格子へと、次いで前記十分に対称性の鏡像構成を通って伝播して、出力パルスを生成することになる、手段と
を備える、対称性の面外回折格子機器。
2 前記十分に対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになる、概念1及び6-10に記載の機器。
3 前記再帰反射器は、単一部品再帰反射器、または、複数の別体の鏡を備える、概念2に記載の機器。
4 前記再帰反射器は、角度偏差なしに、または分散光の空間分布を変更することなしに、前記入力パルスを、その元の光路を通って、送り戻す、概念2に記載の機器。
5 前記十分に対称性の鏡像構成は、第3の反射格子および第4の反射格子を備え、前記第3の反射格子は前記第4の反射格子に平行であり、前記パルスは、前記第2の反射格子から伝播することになり、前記第3の反射格子から反射されることになり、次いで前記第4の反射格子から反射されることになる、概念1及び6-10に記載の機器。
6 前記格子対は、前記十分に対称性の鏡像構成とともに、前記入力パルスに対する前記出力パルスのスペクトル帯域幅を向上させるよう構成されている、概念1、2、5及び7-10に記載の機器。
7 前記電磁放射のパルスを誘導するよう構成された前記手段は、前記電磁放射のパルスを、リトロー角で、前記第1の反射格子へと誘導するよう構成されている、概念1、2、5、6及び8-10に記載の機器。
8 前記第1の格子対は、前記十分に対称性の鏡像構成とともに、短パルス拡張器と、圧縮器と、パルス整形器とからなる群から選ばれた構成を有している、概念1、2、5-7、9及び10に記載の機器。
9 前記入力パルスに対して、前記出力パルスは、空間チャープと、時間チャープと、角度チャープとからなる群から選ばれた周波数チャープの少なくとも1つの追加の種類を含んでいる、概念1、2、5-8及び10に記載の機器。
10 前記入力パルスに対して、前記出力パルスは、空間チャープと、時間チャープと、角度チャープとからなる群から選ばれた周波数チャープの種類を少なくとも1つ少なく有している、概念1、2及び5-9に記載の機器。
11 第1の反射格子および第2の反射格子を備える第1の格子対を設けることであって、前記第1の反射格子は、前記第1の反射格子の溝に垂直であり、かつ前記第1の反射格子の法線を含む平面として定義される第1の平面を有し、前記第2の反射格子は前記第1の反射格子に平行である、第1の格子対を設けることと、
前記第1の格子対の十分に対称性の鏡像構成を設けることと、
前記第1の平面の外側に、かつ前記第1の反射格子へと、電磁放射の入力パルスを、前記パルスが、前記第1の反射格子から、次いで前記第2の反射格子へと、次いで前記十分に対称性の鏡像構成を通って伝播して、出力パルスを生成するように、誘導することと
を含む、対称性の面外回折格子方法。
12 前記十分に対称性の鏡像構成は、前記第1の格子対と組み合わされた再帰反射器を備え、前記入力パルスは、前記第2の反射格子から伝播して、前記再帰反射器から反射されることになり、次いで前記第2の反射格子から反射されることになり、次いで前記第1の反射格子から反射されて、前記出力パルスを生成することになる、概念11及び16-20に記載の方法。
13 前記再帰反射器は、単一部品再帰反射器、または、複数の別体の鏡を備える、概念12に記載の方法。
14 前記再帰反射器は、角度偏差なしに、または分散光の空間分布を変更することなしに、前記入力パルスを、その元の光路を通って、送り戻す、概念12に記載の方法。
15 前記十分に対称性の鏡像構成は、第3の反射格子および第4の反射格子を備え、前記第3の反射格子は前記第4の反射格子に平行であり、前記入力パルスは、前記第2の反射格子から伝播することになり、前記第3の反射格子から反射されることになり、次いで前記第4の反射格子から反射されることになる、概念11及び16-20に記載の方法。
16 前記出力パルスの前記スペクトル帯域幅は、前記入力パルスに対して向上されることになる、概念11、12、15及び17-20に記載の方法。
17 前記入力パルスを誘導する前記ステップは、前記衝撃パルスを、リトロー角で、前記第1の反射格子へと誘導することを含んでいる、概念11、12、15、16及び18-20に記載の方法。
18 前記第1の格子対は、前記十分に対称性の鏡像構成とともに、短パルス拡張器と、圧縮器と、パルス整形器とからなる群から選ばれた構成を有している、概念11、12、15-17及び20に記載の方法。
19 空間チャープと、時間チャープと、角度チャープとからなる群から選ばれた少なくとも1つの種類の周波数チャープを、前記出力パルスに追加することをさらに含む、概念11、12、15-18及び20に記載の方法。
20 空間チャープと、時間チャープと、角度チャープとからなる群から選ばれた少なくとも1つの種類の周波数チャープを、前記出力パルスから除去することをさらに含む、概念11、12及び15-19に記載の方法。
【0028】
本明細書で説明されるすべての要素、部品、およびステップが含まれることが好ましい。当業者には明らかであるように、これらの要素、部品、およびステップのいずれかは、他の要素、部品、およびステップで置き換えるか、または完全に削除できることを理解されたい。
【0029】
前述の説明は、例示および説明の目的で提示されたものであり、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図したものではない。上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。開示された実施形態は、本発明の原理およびその実際の応用を説明することのみを意図しており、それにより、当業者は、考えられる特定の用途に適した様々な修正を加えて、様々な実施形態で本発明を最良に使用することができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものとする。
図1
図2
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図7A
図7B