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特許7505989混和剤添加量判定方法、混和剤添加量決定方法及び締固め完了時間適否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】混和剤添加量判定方法、混和剤添加量決定方法及び締固め完了時間適否判定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240618BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240618BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20240618BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240618BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20240618BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20240618BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C04B28/02
C04B14/06 Z
G01N33/38
E02D17/18 A
E02D3/00
E02B7/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021001471
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106459
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-08-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2020/V-16/public/pdf?type=in(V-43 現地発生土の細粒分がセメント系材料の施工性に及ぼす影響)、 https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2020/V-17/public/pdf?type=in(V-44現地発生土の細粒分がセメント系材料の発熱特性に及ぼす影響)、 https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2020/V-18/public/pdf?type=in(V-45現地発生土の細粒分がセメント系材料の鉱物組成に及ぼす影響)、 掲載日:令和2年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 那津子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 恭伸
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】大井 篤
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】向 俊成
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166934(JP,A)
【文献】特開平07-053252(JP,A)
【文献】特開2000-309919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C04B 28/02
C04B 14/06
G01N 33/38
E02D 17/18
E02D 3/00
E02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材とセメント系固化材と水とを混合することにより製造され、製造後、所定の締固め完了時間が経過するまでに締固めが行われるセメント系固化材含有混練物に配合される混和剤の添加量の過不足を判定する混和剤添加量判定方法であって、
前記混和剤は、前記セメント系固化材の凝結反応を遅延させる作用を有し、
前記混和剤添加量判定方法は、
前記混和剤が配合された供試体の温度を測定し、測定された前記温度の変化に基づいて前記供試体の状態変化点の発現を判定する工程と、
前記状態変化点が発現したと判定されるまでの発現時間と前記締固め完了時間とを比較して、前記供試体に配合された前記混和剤の添加量の過不足を判定する工程と、を有する、
混和剤添加量判定方法。
【請求項2】
骨材とセメント系固化材と水とを混合することにより製造され、製造後、所定の締固め完了時間が経過するまでに締固めが行われるセメント系固化材含有混練物に配合される混和剤の添加量を決定する混和剤添加量決定方法であって、
前記混和剤は、前記セメント系固化材の凝結反応を遅延させる作用を有し、
前記混和剤添加量決定方法は、
前記セメント系固化材含有混練物の配合比率で製造され複数の異なる量の前記混和剤が配合された複数の供試体の温度を測定し、測定された前記温度の変化に基づいて前記供試体毎の状態変化点の発現を判定する工程と、
前記状態変化点が発現したと判定されるまでの発現時間と前記締固め完了時間に基づいて前記混和剤の添加量を決定する工程と、を有する、
混和剤添加量決定方法。
【請求項3】
骨材とセメント系固化材と水と混和剤とを混合することにより製造され、製造後、所定の締固め完了時間が経過するまでに締固めが行われるセメント系固化材含有混練物の前記締固め完了時間の適否を判定する締固め完了時間適否判定方法であって、
前記混和剤は、前記セメント系固化材の凝結反応を遅延させる作用を有し、
前記締固め完了時間適否判定方法は、
前記混和剤が配合された供試体の温度を測定し、測定された前記温度の変化に基づいて前記供試体の状態変化点の発現を判定する工程と、
前記状態変化点が発現したと判定されるまでの発現時間と前記締固め完了時間とを比較して、前記締固め完了時間の適否を判定する工程と、を有する、
締固め完了時間適否判定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の混和剤添加量判定方法、請求項2に記載の混和剤添加量決定方法、または、請求項3に記載の締固め完了時間適否判定方法であって、
前記状態変化点は、前記供試体が製造されてから所定の経過時間が経過した後に測定された前記温度の変化に基づいて求められる前記供試体の発熱速度または発熱加速度が予め設定された閾値を超えたときに発現したと判定され、
前記所定の経過時間の長さは、前記供試体が製造された直後に生じる化学反応に応じて設定される方法。
【請求項5】
請求項1に記載の混和剤添加量判定方法、請求項2に記載の混和剤添加量決定方法、または、請求項3に記載の締固め完了時間適否判定方法であって、
前記骨材には、未洗浄の掘削土質材料、または、JIS A 1204「土の粒度試験方法」に従う、ふるいの呼び寸法0.15mmを通るものの質量分率が3%を超える掘削土質材料が、少なくとも含まれる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材とセメント系固化材と水とを混合することにより製造されるセメント系固化材含有混練物に配合される混和剤の添加量の過不足を判定する混和剤添加量判定方法及び混和剤の添加量を決定する混和剤添加量決定方法、並びに、混和剤が配合されたセメント系固化材含有混練物の締固め完了時間適否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、骨材となる現地発生材(掘削土質材料)にセメントと水を添加混合し、これを施工現場まで搬送して、ブルドーザで敷均し、振動ローラで締め固めることによって構造物を構築するCSG工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-168977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明のようなCSG工法では、CSGが製造されてから締め固められるまでに比較的長い時間を要することがある。骨材の分別や粒度調整が基本的に行われないCSGのようにセメントと反応して凝結が促進されやすい微粒骨材を含む場合、締固めが行われるまでに放置される時間が長いと、セメントの凝結反応が進行することによって、締固め度といった締固め特性が低下するおそれがある。また、分別や粒度調整が行われるコンクリート用骨材を用いるコンクリートにも凝結を促進する骨材は含まれていることがあることから、コンクリートが製造されてから締め固められるまでに比較的長い時間を要するRCD工法等においても同様のおそれがある。
【0005】
締め固めが行われるまでの時間が長くなることが予めわかっている場合、セメントの凝結反応を遅らせる混和剤を配合することが考えられるが、高価な混和剤を必要以上に使用することは施工コストの増大を招くおそれがある。一方で、混和剤が配合されたセメント系固化材含有混練物の締固め特性に及ぼす影響が大きい混和剤の添加量や締固め完了時間といったパラメータの最適値を決定するには、多くの供試体を用意し、混和剤の添加量及び締め固めが完了するまでの時間を変数として締固め度や強度といった締固め特性を網羅的に把握する必要がある。また、混和剤の効果は、骨材の成分や粒度分布に応じて変化することから、使用される骨材が変わる度にこのような確認作業を繰り返す必要がある。このため、最適な混和剤の添加量や最適な締固め完了時間を決定するまでに多大な労力と時間を要するおそれがある。
【0006】
本発明は、セメント系固化材の凝結反応を遅らせる混和剤が配合されたセメント系固化材含有混練物の締固め特性に影響を及ぼすパラメータの最適値を迅速に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、骨材とセメント系固化材と水とを混合することにより製造され、製造後、所定の締固め完了時間が経過するまでに締固めが行われるセメント系固化材含有混練物に配合される混和剤の添加量の過不足を判定する混和剤添加量判定方法であって、前記混和剤は、前記セメント系固化材の凝結反応を遅延させる作用を有し、前記混和剤添加量判定方法は、前記混和剤が配合された供試体の温度を測定し、測定された前記温度の変化に基づいて前記供試体の状態変化点の発現を判定する工程と、前記状態変化点が発現したと判定されるまでの発現時間と前記締固め完了時間とを比較して、前記供試体に配合された前記混和剤の添加量の過不足を判定する工程と、を有する。
【0008】
また、本発明は、骨材とセメント系固化材と水とを混合することにより製造され、製造後、所定の締固め完了時間が経過するまでに締固めが行われるセメント系固化材含有混練物に配合される混和剤の添加量を決定する混和剤添加量決定方法であって、前記混和剤は、前記セメント系固化材の凝結反応を遅延させる作用を有し、前記混和剤添加量決定方法は、前記セメント系固化材含有混練物の配合比率で製造され複数の異なる量の前記混和剤が配合された複数の供試体の温度を測定し、測定された前記温度の変化に基づいて前記供試体毎の状態変化点の発現を判定する工程と、複数の前記供試体のうち、前記状態変化点が発現したと判定されるまでの発現時間と前記締固め完了時間に基づいて前記混和剤の添加量を決定する工程と、を有する。
【0009】
また、本発明は、骨材とセメント系固化材と水と混和剤とを混合することにより製造され、製造後、所定の締固め完了時間が経過するまでに締固めが行われるセメント系固化材含有混練物の前記締固め完了時間の適否を判定する締固め完了時間適否判定方法であって、前記混和剤は、前記セメント系固化材の凝結反応を遅延させる作用を有し、前記締固め完了時間適否判定方法は、前記混和剤が配合された供試体の温度を測定し、測定された前記温度の変化に基づいて前記供試体の状態変化点の発現を判定する工程と、前記状態変化点が発現したと判定されるまでの発現時間と前記締固め完了時間とを比較して、前記締固め完了時間の適否を判定する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セメント系固化材の凝結反応を遅らせる混和剤が配合されたセメント系固化材含有混練物の締固め特性に影響を及ぼすパラメータの最適値を迅速に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る方法によって添加量が設定された混和剤を含む材料により構築される土木構造物の一例を示す概略図である。
図2】従来の試験方法により求められた締固め度の傾向を示すグラフである。
図3】本発明の実施形態に係る方法において供試体の温度を計測する装置の概略図である。
図4A】本発明の実施形態に係る方法において測定される供試体の発熱速度の時間変化の傾向を示すグラフである。
図4B図2のグラフに発現時間を重ね合わせて表示したグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る方法の一例において行われる工程を示すフロー図である。
図6】本発明の実施形態に係る方法の他の例において行われる工程を示すフロー図である。
図7】発現時間と混和剤の添加量との関係性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る混和剤添加量判定方法及び混和剤添加量決定方法について説明する。
【0013】
本実施形態では、当該混和剤添加量判定方法及び混和剤添加量決定方法によって、ダム等の土木構造物1を構築する工事において用いられるコンクリート材料又はCSG材料(セメント系固化材含有混練物)に配合される混和剤の添加量の過不足の判定ないし最適値の決定が行われる場合について説明する。図1は、ダムにおける堤体の一部である土木構造物1を構築している状態を示す図である。なお、土木構造物1は、ダムにおける堤体に限定されず、例えば、砂防堰堤や防潮堤における堤体であってもよいし、道路における盛土であってもよい。
【0014】
まず、土木構造物1を構築するための材料であるコンクリート材料又はCSG材料について説明する。
【0015】
コンクリート材料は、寸法別に選定された骨材にセメント系固化材及び水を混合して製造されるセメント系固化材含有混練物である。スランプ値が3cm未満となるように、スランプ値が3cm以上である有スランプコンクリート材料に比して単位セメント量及び単位水量を少なくした貧配合のコンクリート材料は、超硬練りコンクリート材料とも呼ばれる。超硬練りコンクリート材料の配合は、例えば、最大粗骨材寸法が40mmを超えて200mm以下であり、単位セメント量が90kg/m3以上180kg/m3以下であり、水セメント比が50%以上120%以下である。
【0016】
なお、「スランプ値」は、固化前のセメント系固化材含有混練物の軟らかさ、流動性を示す値であり、スランプ値が大きいほど軟らかいこと、流動性が高いこと、を意味する。スランプ値は、例えばJIS(日本工業規格)A 1101:2005に規定されているスランプ試験方法により測定される。
【0017】
CSG材料は、建設現場周辺で得られる砂礫や岩塊等の掘削土質材料にセメント系固化材及び水を混合して製造されるセメント系固化材含有混練物である。掘削土質材料は、洗浄がなされない未洗浄の現地発生材であり、JIS A 1204:2009「土の粒度試験方法」に従う、ふるいの呼び寸法0.15mmを通るものの質量分率が掘削土質材料全体に対して3%を超え、好ましくは5%を超えるものである。CSG材料の配合は、例えば、最大粗骨材寸法が40mmを超えて90mm以下であり、単位セメント量が50kg/m3以上120kg/m3以下であり、水セメント比が50%以上120%以下である。
【0018】
超硬練りコンクリート材料及びCSG材料は、有スランプコンクリート材料に比して単位セメント量が少ないため、原材料費を低減することができる。また、超硬練りコンクリート材料及びCSG材料は、有スランプコンクリート材料に比して単位水量が少なく未固化状態において流動性が低いため、型枠を設けずに所望の形状に打設することができ、土木構造物1の構築期間を短縮することができる。さらに、超硬練りコンクリート材料及びCSG材料は、有スランプコンクリート材料に比して単位セメント量及び単位水量が少ないため、水和熱による温度上昇を抑えることができ、水和熱に起因するひび割れを軽減することができる。
【0019】
次に、図1を参照して、土木構造物1を構築する手順の概略を説明する。
【0020】
まず、地盤上に超硬練りコンクリート材料又はCSG材料を盛立てて断面台形状の土木構造物1を形成する。具体的には、不図示のダンプトラック等を用いて搬送された超硬練りコンクリート材料又はCSG材料を荷卸しして、不図示のブルドーザ等を用いて敷き均し、転圧ローラ4や起振機が取り付けられた建設機械5等の大型重機により締固める。超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の荷卸し、敷き均し及び締固めを複数回繰り返して複数の層を形成することにより、断面台形状の土木構造物1が形成される。
【0021】
超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の締固めでは、未固化の超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の表面(法面1a及び天面1b)から振動を加えて超硬練りコンクリート材料又はCSG材料から空気を除去して密度を向上させるとともに、その表面を平滑に仕上げる。このような締固めを行うことにより構造体としての強度が確保される。
【0022】
以上により、土木構造物1の構築が完了する。なお、一般的に、CSG材料を用いて敷き均し及び締固めを複数回繰り返して複数の層を形成することでダム等の堤体を構築する工法は、CSG(Cemented Sand and Gravel)工法と称され、超硬練りコンクリート材料用いて同様にしてダム等の堤体を構築する工法は、RCD(Roller Compacted Dam-Concrete)工法と称される。
【0023】
ここで、比較的大きな土木構造物1である堤体等を構築する場合、超硬練りコンクリート材料やCSG材料を製造する場所からコンクリート材料又はCSG材料が敷均される場所までの距離が離れていることなどに起因し、コンクリート材料又はCSG材料を製造してから締固め(転圧)に至るまでに比較的長い時間(例えば、最大6時間程度)を要する場合がある。
【0024】
締固めが行われるまでの時間が長いと、特に骨材の分別や粒度調整が基本的に行われないCSG材料のようにセメント系固化材と反応して凝結が促進されやすい微粒骨材を含む場合、締固めが開始される前にセメント系固化材の凝結反応がある程度進行してしまい、締固め度といった締固め特性が低下するおそれがある。締固め特性の低下は、CSG工法により構築された構造物の密度や強度に影響し、密度や強度の低下を招き、ひいては構造体としての品質を低下させる。なお、分別や粒度調整が行われるコンクリート用骨材を用いる超硬練りコンクリート材料にも凝結を促進する骨材は含まれていることがあることから、超硬練りコンクリート材料が製造されてから締固めが行われるまでに比較的長い時間を要するRCD工法においても同様のおそれがある。
【0025】
締固めが行われるまでの時間、すなわち、締固めが行われずにコンクリート材料又はCSG材料が放置される時間がある程度長くなることが予めわかっている場合、セメント系固化材の凝結反応を遅らせる作用を有する混和剤を配合することが考えられる。しかしながら、高価な混和剤を必要以上に使用することは施工コストの増大を招くおそれがある。
【0026】
混和剤の添加量を過不足が生じないように適度な量とするには、例えば、図2に示されるように、予め実験等によって混和剤の添加量(A%<B%<C%)に応じて締固め度がどのように変化するのかを網羅的に調査し、施工現場において実際に締固めが行われる時間であっても目標締固め度(例えば、98%)が得られるような混和剤の最適な添加量を把握しておくことが考えられる。なお、図2において丸印は混和剤の添加量が最も少ないA%のとき、三角印は混和剤の添加量が最も多いC%のとき、四角印は混和剤の添加量がA%とC%との間のB%のときの締固め度の推移傾向をそれぞれ示している。
【0027】
しかしながら、図2に示されるような結果を得るには、多くの供試体を用意し、少なくとも混和剤の添加量及び締固めが完了するまでの時間を変数として、十分な養生期間(例えば、2~3日)が経過した後の各供試体の締固め度や強度といった締固め特性を測定する試験を行う必要がある。
【0028】
また、凝結反応を遅らせるという混和剤の効果は、一般的に骨材の成分や粒度分布に応じて変化する。このため、骨材が採取される場所が変わることなどによって、使用される骨材の成分や粒度分布が変わると、その都度、上述のような確認試験を繰り返す必要がある。特に上述のCSG材料に含まれる骨材である掘削土質材料は、採取される場所によってその成分や粒度分布が大きく異なることがあるため、確認試験を行う頻度は自ずと多くなる。したがって、最適な混和剤の添加量を決定するために、多大な労力と時間を要することになる。
【0029】
そこで本発明の実施形態に係る混和剤添加量判定方法及び混和剤添加量決定方法では、セメント系固化材の凝結反応を遅らせる混和剤が配合された供試体の温度変化が、添加量に応じて異なる傾向を示すことに着目し、計測された供試体の温度変化に基づいて、混和剤の添加量の過不足を迅速に判定すること、また、混和剤の添加量の最適値を迅速に決定することを可能としている。
【0030】
以下、図3図4A及び図4Bを参照し、本発明の実施形態に係る混和剤添加量判定方法及び混和剤添加量決定方法において行われる供試体の温度測定及び測定される温度変化の傾向について説明する。図3は、発熱量測定装置10の概略図であり、図4Aは、供試体が製造(混合)されてからの発熱速度の推移傾向を示したグラフであり、図4Bは、図2で得られた従来方法による測定結果に、図4Aのグラフから読み取られた発熱速度のピーク時間を重ねて表示したグラフである。
【0031】
本発明の実施形態に係る混和剤添加量判定方法及び混和剤添加量決定方法では、構造物の構築に用いられる超硬練りコンクリート材料やCSG材料と同じ配合比率で製造された材料に対して所定量の混和剤を配合して供試体20を製造し、後述の発熱量測定装置10により測定された供試体20内の製造後の温度変化に基づいて、混和剤の添加量の過不足の判定や混和剤の最適な添加量の決定が行われる。
【0032】
発熱量測定装置10は、供試体20が収容される収容孔12が中央に設けられた本体部11と、収容孔12を閉塞可能な形状に形成された蓋体13と、蓋体13を貫通するように設けられ、収容孔12内に収容された供試体20の中心部の温度を測定するように挿入される熱電対14と、を有する。
【0033】
本体部11及び蓋体13は、断熱性に優れた押出法ポリスチレンフォーム断熱材(商標名:スタイロフォーム)等により形成されており、供試体20と外部との間での熱の出入りが遮断される。このため、熱電対14では、供試体20内において生じた化学反応熱に基づく温度変化が測定されることになる。熱電対14の出力は、図示しないデータ記録装置やデータ処理装置に入力される。
【0034】
このように断熱状態とされた供試体20内の温度変化を熱電対14によって計測することにより、セメント系固化材の凝結反応(水和反応)による発熱量の時間変化、すなわち、発熱速度を精度よく計測することができる。なお、発熱量を計測する装置としては、上記構成の発熱量測定装置10のような簡易的な装置に代えて、試料の温度を一定に保持し、化学変化による発熱量及び吸熱量の時間変化を測定可能な市販のカロリーメータが用いられてもよい。
【0035】
続いて、供試体20に配合される混和剤の添加量(A%<B%<C%)を変えた場合に発熱量測定装置10によって測定される発熱速度の推移傾向を図4Aに示す。図4Aにおいて、実線で示される波形は混和剤の添加量が最も少ないA%のとき、二点鎖線で示される波形は混和剤の添加量が最も多いC%のとき、一点鎖線で示される波形は混和剤の添加量がA%とC%との間のB%のときの発熱速度の推移傾向をそれぞれ示している。
【0036】
図4Aからも明らかであるように、混和剤の添加量に関わらず、供試体20が製造された直後、特にセメント系固化材と水とが混ぜ合わされた直後に発熱速度は1回目のピーク(第1次ピーク)に達し、その後、ある程度の時間をおいて2回目のピーク(第2次ピーク)に至る傾向がある。
【0037】
第2次ピークが現れる時間は、混和剤の添加量が多いほど遅くなる傾向にあり、何らかの反応が混和剤によって遅らされ、第2次ピーク付近で供試体20に状態変化が生じていると考えられる。
【0038】
なお、第1次ピークは、セメント系固化材と水とが混ぜ合わされてから数分後に現れることから、遊離石灰やアルミネートの急激な水和反応が主な要因と考えられる。一方、第2次ピークは、エーライトやアルミネートの比較的緩慢な水和反応が主な要因と考えられる。
【0039】
ここで、供試体20が製造(混合)されてから第2次ピークの最大値に至るまでの時間の長さ(tA,tB,tC)は、各供試体20に配合された混和剤の添加量に応じて異なる長さとなっている。この時間を、各供試体20に所定量の混和剤が添加されることによって遅れて発現した状態変化の発現時間(tA,tB,tC)とし、図2に示される従来の試験方法によって得られた締固め度の測定結果に、この発現時間(tA,tB,tC)を重ね合わせて表示すると、発現時間(tA,tB,tC)は、何れの場合も目標締固め度と同等の締固め度が得られると考えられる時間となっていることがわかる。
【0040】
つまり、第2次ピークが発現する前までに締固め作業を完了させておけば、目標締固め度を上回る締固め度を得ることが可能である一方、締固め作業の完了が第2次ピークの発現よりも後となると、締固め度が目標締固め度を下回ることとなる。このように第2次ピークの発現は、供試体20の状態に何らかの変化が生じるタイミングであると共に、締固め作業を完了させておくべきタイミングを示しているといえる。
【0041】
また、別の解釈をするならば、例えば、実際の施工現場で締固めが行われるまでの時間が、混和剤の添加量がA%であるときの発現時間tAと、混和剤の添加量がB%であるときの発現時間tBと、の中間であった場合、混和剤の添加量がA%では、十分な締固め度が得られない、すなわち、混和剤の添加量が不足しており、混和剤の添加量がB%では、締固め度が目標締固め度を超え過ぎる、すなわち、混和剤の添加量が過多であることがわかる。
【0042】
したがって、第2次ピークが発現したタイミングを示す発現時間(tA,tB,tC)を利用することにより、以下のような方法で混和剤の添加量の最適値を迅速に求めることが可能となる。
【0043】
図5に示されるフロー図を参照し、混和剤の最適な添加量を決定する混和剤添加量方法について説明する。この混和剤添加量決定方法では、上述のように実際の施工現場で締固めが行われるまでの時間と、発現時間と、を比較することで混和剤の添加量の過不足を判定可能であることを利用し、最適な添加量を決定している。
【0044】
まず、ステップS11では、混和剤の添加量が仮設定された供試体20が製造される。具体的には、構造物の構築に用いられる超硬練りコンクリート材料やCSG材料と同じ材料に対して、経験的に妥当と思われる量の混和剤を配合し、上述の発熱量測定装置10内に投入する。
【0045】
続くステップS12では、発熱量測定装置10によって供試体20の温度変化を測定し、第2次ピークの値が最大となった点を供試体20の状態が変化した状態変化点とし、供試体20が製造されてからこの状態変化点に至るまでの時間を発現時間として求める。
【0046】
ここで、第2次ピークの最大値に至ったとき、発熱速度の変化率である発熱加速度はゼロとなる。このため、状態変化点に至ったか否かは、例えば、発熱加速度が正の値から負の値に転じたか否かに基づいて判定することが可能である。このように、状態変化点の発現は、発熱量測定装置10によって測定された温度に基づいて求められる供試体20の発熱量に関するパラメータが予め設定された閾値を超えたか否か、この場合は、発熱加速度が正の値からゼロを超えて負の値となったか否かで判定される。
【0047】
なお、状態変化点は、第2次ピークの発現を明確に判定できる点であればよく、第2次ピークの値が最大となった点である必要はない。例えば、第1次ピークと第2次ピークとの間に生じる発熱速度の最小値を基準として、発熱速度の大きさがこの基準から予め設定された値を超えた点を状態変化点としてもよく、この場合は、発熱速度が発熱量に関するパラメータとして用いられる。また、例えば、第2次ピークの最大値へと向かって発熱速度の変化率である発熱加速度が最も大きくなる点(発熱速度の変曲点)を状態変化点としてもよく、この場合、発熱量に関するパラメータとして発熱加速度を用いることにより、発熱加速度が予め設定された閾値を超えたか否かで状態変化点の発現を判定することができる。
【0048】
また、混和剤の添加量に関わらず、上述のように供試体20が製造(混合)された直後には、第2次ピークと同じように最大値において発熱加速度がゼロとなる第1次ピークが生じる。このため、状態変化点が発現したか否かの判定は、この第1次ピークを判定から除外するために、供試体20が製造されてから所定の経過時間t0が経過した後に測定された温度に基づいて行われる。所定の経過時間t0は、例えば30分程度に設定される。これにより、第1次ピーク周辺の発熱速度の変化から状態変化点が発現したと誤って判定されてしまうことを回避することができる。
【0049】
また、第2次ピークが最大となったときの時間、すなわち、発熱加速度がゼロとなったときの時間は、測定値から直接的に求められてもよいし、測定された発熱速度の波形を関数化することにより得られた数式から求められてもよい。例えば、上述のように2つのピークがある場合には、下記数1に示される一般指数関数をそれぞれのピークに対応させ、2つの式を足し合わせることによって、測定された発熱速度の波形を、経過時間tを変数とする1つの関数(下記数2)によって表すことが可能である。
【0050】
【数1】
【0051】
上記数1中のtは、測定を開始してからの経過時間、すなわち、供試体20が製造(混合)されてからの経過時間であり、tcnは、n番目のピークが現れた時間を示す定数であり、wnは、n番目のピーク波形の形状を示す定数であり、Anは、n番目のピークの面積を示す定数である。
【0052】
【数2】
【0053】
上記数2中のBGは、バックグランドを示す定数である。上記数1及び上記数2中の各定数は、一般化簡約勾配法といった機械学習によって、上記数2の関数G(t)で示される波形が、実測された波形に近づくように逆解析を行うことで同定される。なお、近似式として使用される関数は、上記数1のような一般指数関数に限定されず、ガウス関数やロレンツ関数、フォークト関数などの関数であってもよい。また、ピークが3つ以上ある場合には、上記数1をピークの数だけ足し合わせることによって関数G(t)が作成される。
【0054】
次にステップS13では、求められた発現時間と施工現場での締固め作業完了予定時間(締固め完了時間)との比較が行われる。
【0055】
ここで、発現時間と締固め作業完了予定時間とがほぼ同じである場合、例えば、発現時間が図4BにおいてtBで示される時間であり、締固め作業完了予定時間もtBで示される時間にほぼ等しいである場合、締固め作業が予定時間に完了すれば、締固め度は、ほぼ目標締固め度になることが予測される。
【0056】
このため、発現時間と締固め作業完了予定時間とがほぼ同じである場合には、ステップS14にて肯定的な結果となり、ステップS15へと進み、ステップS11で仮設定された添加量は最適値であるとして添加量が本決定される。
【0057】
なお、発現時間と締固め作業完了予定時間とがほぼ同じであるとの判定は、例えば、締固め作業完了予定時間と発現時間との差が所定時間(例えば15分)以内である場合になされてもよいが、上述のように、締固め作業の完了が第2次ピークの発現よりも後となると、締固め度が目標締固め度を下回る可能性がある。このため、発現時間と締固め作業完了予定時間とがほぼ同じであるとの判定は、締固め作業完了予定時間が、発現時間以前であって、発現時間の所定時間前(例えば、15分前)よりは早くはない場合になされることが好ましい。
【0058】
一方、ステップS14において否定的な結果、つまり、発現時間と締固め作業完了予定時間との差が大きく、添加量に過不足があるという結果になった場合には、ステップS16へと進み、発現時間と締固め作業完了予定時間との大小が判定される。
【0059】
発現時間が締固め作業完了予定時間よりも所定時間(例えば30分)を超えて短い場合、例えば、発現時間が図4BにおいてtAで示される時間であるのに対して、締固め作業完了予定時間がtBで示される時間に近い場合、仮設定された添加量では目標締固め度を得ることが不可能である。このため、ステップS17に進み、添加量が不足していると判定され、続くステップS18において、仮設定された添加量の増量が行われる。
【0060】
一方、発現時間が締固め作業完了予定時間よりも所定時間(例えば30分)を超えて長い場合、例えば、発現時間が図4BにおいてtCで示される時間であるのに対して、締固め作業完了予定時間がtBで示される時間に近い場合、仮設定された添加量では目標締固め度を超え過ぎることとなる。このため、ステップS19に進み、添加量が過多であると判定され、続くステップS20において、仮設定された添加量の減量が行われる。
【0061】
このようにステップS18またはステップS20を経て、添加量の仮設定値が変更されると、供試体20の製造(ステップS11)及び発現時間の判定(ステップS12)といった工程が再び行われる。これらの工程は、ステップS14において肯定的な結果が得られ、ステップS15において添加量が決定されるまで繰り返される。
【0062】
上述のように、ステップS14やステップS16で示されるような混和剤の添加量の過不足を判定する工程を有する混和剤添加量判定方法を利用して混和剤の添加量を決定する場合、混和剤の添加量が異なる供試体20を数個(少なくとも1個から3個程度)製造するだけで混和剤の添加量の最適値を決定することが可能である。このため、供試体20を製造する時間や供試体20を用いた試験時間を大幅に減らすことができる。特に、供試体20の締固め度や強度といった締固め特性を測定する試験を行われないことから、十分な強度発現に必要な養生期間(例えば、2~3日)を待つことなく、混和剤の添加量の最適値を迅速に決定することが可能である。
【0063】
また、混和剤の添加量が最適な値に設定されることによって、混和剤の添加量が少なすぎることで生じる締固め度の低下を避けることができるとともに、混和剤の添加量が多すぎることで生じる施工コストの増大を避けることができる。
【0064】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0065】
上述の混和剤添加量判定方法及び混和剤添加量決定方法では、測定された供試体20の温度に基づいて判定された発現時間と、締固め作業完了予定時間と、から、混和剤が配合されたセメント系固化材含有混練物の締固め特性に及ぼす影響が大きいパラメータの1つである混和剤の添加量の過不足が判定され、結果として最適値が決定される。
【0066】
つまり、混和剤の添加量の過不足の判定や添加量の最適値の決定は、供試体20が製造されてからの温度変化を測定するだけで可能であるとともに、この判定及び決定に用いられる供試体20の製造個数は、少なくとも1個から3個程度の数個で済むことになる。したがって、供試体20を製造する時間や供試体20を用いた試験時間が大幅に減ることで、混和剤の添加量の過不足の判定及び最適値の決定を迅速に行うことができる。
【0067】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0068】
上記実施形態では、混和剤添加量判定方法を利用して、混和剤の添加量の最適値が決定される。これに代えて、混和剤の添加量の最適値の決定は、混和剤の添加量と発現時間との相関性を利用して行われてもよい。このように混和剤の添加量と発現時間との相関性を利用して行われる混和剤添加量決定方法について、図6に示されるフロー及び図7に示される相関グラフを参照して説明する。
【0069】
まず、ステップS31では、混和剤の添加量が異なる複数の供試体20が製造される。具体的には、構造物の構築に用いられる超硬練りコンクリート材料やCSG材料と同じ材料に対して、経験的に妥当と思われる量を中間値(B%)とし、これよりも添加量(A%)が少ない供試体と、これよりも添加量(C%)が多い供試体と、の3つの供試体20が製造される。
【0070】
続くステップS32では、上述のステップS12と同様にして、発熱量測定装置10によって各供試体20の温度変化を測定し、第2次ピークの発現、すなわち、状態変化点の発現を判定し、各供試体20が製造されてから第2次ピークの最大値に至るまでの時間である発現時間がそれぞれ求められる。発現時間の具体的な求め方は、上述のステップS12と同じであるため、その説明を省略する。
【0071】
次にステップS33では、求められた各発現時間(tA,tB,tC)と、添加量(A%,B%,C%)と、の相関性が取得される。具体的には、横軸を発現時間、縦軸を添加量とするグラフ(図7)に、ステップS32で求められた結果をプロットし、回帰分析を行うことにより発現時間と添加量との相関関係を示す一次関数である回帰直線Lが得られる。
【0072】
ここで、発現時間は、上述のように、目標締固め度と同等の締固め度が得られると考えられる時間に近い時間を示しており、この時間までに締固め作業を完了させておけば、締固め度をほぼ目標締固め度とすることが可能と考えられる時間である。
【0073】
したがって、図7に示されるグラフにおいて、例えば、tBで示される発現時間を締固め作業完了予定時間とした場合、この時間までに締固め作業を完了させることで締固め度をほぼ目標締固め度とするには、添加量をB%とすればよいことがわかる。つまり、回帰直線Lは、任意の締固め作業完了予定時間において、締固め度をほぼ目標締固め度とするために必要な添加量を示しているともいえる。
【0074】
このような関係性を利用し、続くステップS34では、施工現場での締固め作業完了予定時間に応じた最適添加量の推定が行われる。
【0075】
具体的には、回帰直線Lを示す一次関数のパラメータである発現時間として締固め作業完了予定時間を代入することによって、添加量を導き出す。このように導き出された添加量は、締固め作業完了予定時間までに締固め作業を完了させることで締固め度をほぼ目標締固め度とするのに過不足のない最適な添加量であると推定される。
【0076】
ステップS34での推定が終わると、ステップS35へと進み、ステップS34で推定された添加量を、最適値として添加量を本決定する。
【0077】
このように、混和剤の添加量と発現時間との相関性を利用して混和剤の添加量を決定する場合、回帰直線Lを得るのに必要な数(少なくとも2個から3個程度)の供試体20を製造するだけで混和剤の添加量の最適値を決定することが可能である。このため、供試体20を製造する時間や供試体20を用いた試験時間を大幅に減らすことができる。特に、供試体20の締固め度や強度といった締固め特性を測定する試験を行われないことから、十分な強度発現に必要な養生期間(例えば、2~3日)を待つことなく、混和剤の添加量の最適値を迅速に決定することが可能である。
【0078】
なお、回帰直線Lを得るには、少なくとも2つの供試体20を製造すればよいが、最適添加量の推定精度を向上させるためには、3つより多くの供試体20を製造し、その結果から回帰直線Lを得ることが好ましい。また、回帰分析によって得られる相関関数は直線に限定されず、例えば指数関数で表されるような曲線であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、混和剤添加量判定方法が混和剤の添加量の最適値を決定するために利用されている。これに代えて、混和剤添加量判定方法は、土木構造物1の品質評価に利用されてもよい。この場合、土木構造物1を構築する際に用いられたコンクリート材料又はCSG材料であって、所定の添加量の混和剤が配合されたコンクリート材料又はCSG材料により供試体20を製造し、上述のように、その発現時間を求める。
【0080】
そして、求められた発現時間と施工現場での実際の締固め作業完了時間(締固め完了時間)とを比較し、締固め作業完了時間が発現時間よりも短ければ、土木構造物1の締固め度は、目標締固め度を上回っており、十分な強度特性を有していると評価される。
【0081】
また、上述の混和剤添加量判定方法は、施工前に仮設定された締固め作業完了時間が目標締固め度を得るのに適した時間である否かの判定、すなわち、混和剤が配合されたセメント系固化材含有混練物の締固め特性に及ぼす影響が大きいパラメータの1つである締固め作業完了時間の適否の判定に利用されてもよい。
【0082】
この場合、上記実施形態におけるステップS13と同様に、発現時間と仮設定された締固め作業完了時間(締固め完了時間)とを比較し、仮設定された締固め作業完了時間が発現時間とほぼ同じか発現時間よりも短い場合には、十分な締固めが得られると予想されることから、仮設定された締固め作業完了時間は締固め完了時間として適した時間であると判定される。
【0083】
一方、仮設定された締固め作業完了時間が発現時間よりも長い場合には、十分な締固めが得られないおそれがあることから、仮設定された締固め作業完了時間は不適であると判定され、締固め作業完了予定時間の短縮や混和剤の添加量の増量等の検討が促されることとなる。なお、発現時間と仮設定された締固め作業完了時間とがほぼ同じであるとの判定は、例えば、仮設定された締固め作業完了時間と発現時間との差が所定時間(例えば15分)以内である場合になされる。
【0084】
このように締固め作業完了時間の適否の判定や最適時間の決定についても、上記実施形態と同様に、供試体20が製造されてからの温度変化を測定するだけで実施することが可能である。
【0085】
また、上記実施形態では、混和剤が添加される材料が超硬練りコンクリート材料又はCSG材料である。これに代えて、混和剤が添加される材料は、有スランプコンクリート材料であってもよい。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0087】
1・・・土木構造物
10・・・発熱量測定装置
20・・・供試体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7