IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本クロージャー株式会社の特許一覧

特許7506027金属製本体及び合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋
<>
  • 特許-金属製本体及び合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋 図1
  • 特許-金属製本体及び合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋 図2
  • 特許-金属製本体及び合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋 図3
  • 特許-金属製本体及び合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】金属製本体及び合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/06 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B65D53/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021082410
(22)【出願日】2021-05-14
(62)【分割の表示】P 2017025771の分割
【原出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2021120301
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-05-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下地 俊平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英典
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】田口 傑
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003325(JP,A)
【文献】米国特許第7611026(US,B1)
【文献】特開2006-327678(JP,A)
【文献】特開2002-332059(JP,A)
【文献】特開2016-026961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状の天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁を有する金属薄板製本体と、該本体の該天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーとを備え、
該ライナーは該天面壁の内面に供給された硬質合成樹脂材料を型押成形することによって成形された第一層及び該第一層の下面に供給された軟質合成樹脂材料を型押成形することによって成形された第二層から構成されており、
該ライナーの該第一層は、該本体の該天面壁の内面に沿って延在する円形状の中央部と該本体の該天面壁の外周縁部内面及び該スカート壁の上端部内面に沿って延在する円環形状の外周縁部とを有し、
該ライナーの該第二層は、該第一層の該中央部に積層されており、円形状の薄肉中央部と円環形状の厚肉外周縁部とを有し、該厚肉外周縁部が容器の口頸部に密接される、
容器蓋において、
該第一層の該中央部には半径方向外方に向かって厚さが漸次低減する円環形状の厚さ変動領域が存在し、該厚さ変動領域の外周縁は該第二層の該厚肉外周縁部の内周縁に近接してその半径方向内側に位置する、
ことを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
該第二層の該厚肉外周縁部の半径方向内側領域には下方に突出する環状突出部が存在する、請求項1記載の容器蓋。
【請求項3】
該第二層の該薄肉中央部における該厚さ変動領域に対向する領域では該厚さ変動領域の厚さ変動に応じて厚さが半径方向外方に向かって漸次増大する、請求項1又は2記載の容器蓋。
【請求項4】
該厚さ変動領域は水平に対して0.5乃至3.0度の傾斜角度で傾斜する、請求項1からまでのいずれかに記載の容器蓋。
【請求項5】
口頸部の先端には外巻カールが形成されている金属薄板製容器に適用され、該ライナーの該第二層の該環状突出部の外周面が該外巻カールの内周面上端部に密接されると共に該環状突出部よりも半径方向外側に位置する該厚肉外周縁部の半径方向外側領域の下面が該外巻カールの上面乃至外周面に密接される、請求項記載の容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形状の天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁とを有する金属薄板製本体及び本体の天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム基合金の如き金属薄板から形成され、円筒形状の口頸部の上端部には外巻カールが形成され、口頸部の外周面には雌螺条とその下方に位置する係止あご部が形成されている、一般にボトル缶と称されている容器に特に適する容器蓋として、下記特許文献1及び2には、円形状の天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁とを有する金属薄板製本体及び本体の天面壁内面に配設された合成樹脂製ライナーを備えた容器蓋が開示されている。本体のスカート壁の上端部には環状凹部が形成されている。ライナーは天面壁の内面に供給された硬質合成樹脂材料を型押成形することによって成形された第一層及びこの第一層の下面に供給された軟質合成樹脂材料を型押成形することによって成形された第二層とから構成されている。ライナーの第一層は、本体の天面壁の内面に沿って延在する円形状の中央部及び本体の天面壁の外周縁部及びスカート壁の上端部に沿って延在する円環形状の外周縁部を有し、ライナーの第二層は第一層の中央部に積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-3325公報
【文献】特開2016-26961公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者等の経験によれば、上述した形態の従来の容器蓋には、第二層を型押成形する際に第二層を成形するための合成樹脂が充分円滑に所要とおりに流動せず、所要形状の第二層を型押成形することができないことがある、という解決すべき問題が存在することが判明している。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる課題は、所要形状の第二層を確実に型押成形することができる、新規且つ改良された容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、第一層の中央部の所要部位に半径方向外方に向かって厚さが漸次低減する円環形状の厚さ変動領域を存在せしめると、第二層を型押成形する際に第二層を成形するための合成樹脂材料が充分円滑に流動せしめることができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる課題を達成する容器蓋として、
円形状の天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁を有する金属薄板製本体と、該本体の該天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーとを備え、
該ライナーは該天面壁の内面に供給された硬質合成樹脂材料を型押成形することによって成形された第一層及び該第一層の下面に供給された軟質合成樹脂材料を型押成形することによって成形された第二層から構成されており、
該ライナーの該第一層は、該本体の該天面壁の内面に沿って延在する円形状の中央部と該本体の該天面壁の外周縁部内面及び該スカート壁の上端部内面に沿って延在する円環形状の外周縁部とを有し、
該ライナーの該第二層は、該第一層の該中央部に積層されており、円形状の薄肉中央部と円環形状の厚肉外周縁部とを有し、該厚肉外周縁部が容器の口頸部に密接される、
容器蓋において、
該第一層の該中央部には半径方向外方に向かって厚さが漸次低減する円環形状の厚さ変動領域が存在し、該厚さ変動領域の外周縁は該第二層の該厚肉外周縁部の内周縁に近接してその半径方向内側に位置する、
ことを特徴とする容器蓋が提供される。
【0008】
第二層の該厚肉外周縁部の半径方向内側領域には下方に突出する環状突出部が存在するのが好都合である。該第二層の該薄肉中央部における該厚さ変動領域に対向する領域では該厚さ変動領域の厚さ変動に応じて厚さが半径方向外方に向かって漸次増大するのが望ましい。該厚さ変動領域は水平に対して0.5乃至3.0度の傾斜角度で傾斜するのが好適である。口頸部の先端には外巻カールが形成されている金属薄板製容器に適用され、該ライナーの該第二層の該環状突出部の外周面が該外巻カールの内周面上端部に密接されると共に該環状突出部よりも半径方向外側に位置する該厚肉外周縁部の半径方向外側領域の下面が該外巻カールの上面乃至外周面に密接されるのが好都合である。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する語句「上」及び「下」は、容器蓋の正立状態(即ち図1乃至図3に図示する状態)における上及び下を意味する。
【発明の効果】
【0010】
第一層の中央部には半径方向外方に向かって厚さが漸次低減する円環形状の厚さ変動領域が存在し、この厚さ変動領域の外周縁は第二層の該厚肉外周縁部の内周縁に近接してその半径方向内側に位置する本発明の容器蓋においては、厚さ変動領域の存在によって第二層を型押成形する際に材料の流動が助長され、所要形状の第二層を確実に型押成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態の、一部を断面で示す正面図。
図2図1の一部を拡大して示す拡大図。
図3図1に示す容器蓋を薄板製容器の口頸部に装着して口頸部を密封した状態の、一部を断面で示す正面図。
図4図3の一部を拡大して示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示す容器蓋は、金属薄板製本体4と合成樹脂製ライナー6とを備えている。
【0014】
アルミニウム基合金薄板の如き適宜の金属薄板から形成することができる本体4は、円形状の天面壁8及びこの天面壁8の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁10を有する。天面壁8とスカート壁10との境界領域は横断面において円弧形状である。スカート壁10の上端部には周方向に連続して延びる環状凹部12が形成されている。また、この環状凹部12の直ぐ下方の領域においては、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット(切り込み)14が形成され、かかるスリット14の下方に位置する領域が半径方向内方に変位されている。スカート壁10の下端部には周方向破断可能ライン16が配設されていて、スカート壁10は周方向破断可能ライン16よりも上方の主部18と周方向破断可能ライン16よりも下方のテンパーエビデント裾部20とに区画されている。図示の実施形態における周方向破断可能ライン16は、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット22とかかるスリット22間に残留せしめられた複数個の橋絡部24とから構成されており、タンパーエビデント裾部20は複数個の橋絡部24を介して主部18に接続されている。かような本体4自体は周知の形態であり、それ故に本体4の詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0015】
図1と共に図2を参照して説明を続けると、ライナー6は第一層26及び第二層28から構成されている。第一層26は、上記本体4の天面壁8の内面に供給された合成樹脂材料を型押成形することによって成形される。更に詳しくは、本体4を倒立状態にして基台(図示していない)上に保持し、天面壁8の中央部に軟化溶融状態の合成樹脂材料を供給し、かかる合成樹脂材料に所要形状の型押部材(図示していない)を所要圧力で押圧することによって成形される。第一層26は、ポリエチレン或いはポリプロピレンの如きガスバリア性に優れた硬質合成樹脂から成形されていることが重要である。然るに、第一層26は密封層を構成する第二層28よりもガスバリア性が高い。第二層28は第一層26の下面に供給された合成樹脂材料を型押成形することによって成形される。更に詳しくは、第一層26が成形された本体4を倒立状態にして基台(図示していない)上に保持し、第一層26の中央部に軟化溶融状態の合成樹脂材料を供給し、かかる合成樹脂材料を所要形状の型押部材(図示していない)を所要圧力で押圧することによって成形される。第二層28は、ポリエチレン或いはエラストマーの如きシール性に優れた軟質合成樹脂から成形されていることが重要である。
【0016】
第一層26は本体4の天面壁8の内面に沿って延在する円形状の中央部30と本体4の天面壁8の外周縁部内面及びスカート壁10の上端部内面に沿って延在する円環形状の外周縁部32を有する。中央部30には半径方向外方に向かって厚さが漸次低減する(従って、下面が半径方向外方に向かって上方に傾斜して延びる)円環形状の厚さ変動領域34が存在し、この厚さ変動領域34の外周縁は第二層28の後述する厚肉外周縁部38の内周面(従って後述する環状突出部40の内周縁)に近接してその半径方向内側に位置することが重要である。厚さ変動領域34の下面の水平に対する傾斜角度αは0.5乃至3.0度であるのが好適である。図2に明確に図示するとおり、第一層26の中央部30における厚さ変動領域34よりも半径方向内側領域では厚さが変動しないのが好適である。図示の実施形態においては、第一層26の中央部30における厚さ変動領域34よりも半径方向外側領域でも厚さが変動しない。第一層26の外周縁部32の半径方向内側領域の肉厚は中央部30の半径方向外側領域の肉厚よりも大きく、中央部30と外周縁部32との境界には0.05乃至0.40mm程度であるのが好適である段差sが存在する。
【0017】
第一層26の中央部30に積層される第二層28は、円形状の薄肉中央部36と円環形状の厚肉外周縁部38とを有する。外周縁部38の半径方向内側領域には下方に突出する環状突出部40が存在する。
【0018】
本発明に従って構成された容器蓋2においては、ライナー6を構成する第一層26の外周縁部32の半径方向内側領域の肉厚は中央部30の半径方向外側領域の肉厚よりも大きく、中央部30と外周縁部32との境界には段差sが存在する、換言すれば第一層26の外周縁部32の半径方向内側領域の肉厚が比較的大きい故に、第二層28を成形する際に型押部材が第一層26の外周縁部32の半径方向内側領域に作用するが、これによって第一層26の外周縁部32が破損されてしまうことが可及的に回避される。第一層26の中央部30の半径方向外側領域の肉厚は比較的小さく、従って第一層26を成形するための合成樹脂材料量が過剰に増大してしまうことはない。更に、本発明に従って構成された容器蓋2においては、第一層26の中央部30には半径方向外方に向かって厚さが漸次低減する厚さ変動領域34が存在する故に、第二層28を型押成形する際に合成樹脂材料が充分円滑に半径方向外方に向けて流動し、所要形状の第二層28を充分確実に成形することができる。
【0019】
図3及び図4には、容器蓋2が適用される容器の口頸部42も図示されている。クロム酸処理鋼薄板、ブリキ薄板或いはアルミニウム基合金薄板の如き適宜の金属薄板から形成することができる、それ自体は周知の形態である容器の口頸部42は、全体として略円筒形状であり、上方に向かって外径が漸次減少する上端部には外巻カール44が形成されている。口頸部42の主部外周面には雄螺条46とかかる雄螺条46の下方に位置する係止あご部48とが形成されている。
【0020】
容器の口頸部42に容器蓋2を装着して口頸部42を密封する際には、口頸部42に容器蓋2を被嵌して下方に押圧しライナー6の第二層28を口頸部42の頂部に密接せしめた状態、更に詳しくは第二層28の環状突出部40の外周面及び環状突出部40よりも半径方向外側に位置する厚肉外周縁部38の半径方向外側領域の下面を口頸部40の外巻カール44の内周面上端乃至上面に密接した状態、を維持しながら、本体4の天面壁8の外周縁部及びスカート壁10の上端部を図3及び図4に図示するとおりの形状に変形する。かくすると、ライナー6の第二層28の環状突出部40の外周面が外巻カール44の内周面上端部に密接されると共に環状突出部40よりも半径方向外側に位置する厚肉外周縁部38の半径方向外側領域の下面が外巻カール44の上面乃至外周面に密接される。そして又、容器の口頸部42に形成されている雄螺条46に沿って本体4のスカート壁10の主部18を変形して雌螺条を形成し、本体4のスカート壁10におけるタンパーエビデント裾部20の下端部を半径方向内方に変形して容器の口頸部42における係止あご部48に係止する。
【0021】
容器の内容物を消費するために口頸部42を開封する際には、本体4のスカート壁8に指を掛けて容器蓋2を開方向、即ち図3において上方から見て反時計方向に回動する。かくすると、スカート壁10の主部18に形成されている雌螺条が口頸部42の雄螺条46に沿って移動する故に容器蓋2は口頸部42に対して上方に移動される。他方、スカート壁10のタンパーエビデント裾部20はその下端部が口頸部42の係止あご部48に係止されている故に上方への移動が阻止され、スカート壁10に形成されている周方向破断可能ライン16における橋絡部24に応力が生成されて橋絡部24が破断される。しかる後においては、タンパーエビデント裾部20を残して容器蓋2は回転と共に上方に移動して口頸部42から離脱され、口頸部42が開封される。
【符号の説明】
【0022】
2:容器蓋
4:本体
6:ライナー
8:天面壁
10:スカート壁
26:第一層
28:第二層
30:第一層の中央部
32:第一層の外周縁部
34:厚さ変動領域
36:第二層の薄肉中央部
38:第二層の厚肉外周縁部
40:環状突出部
42:容器の口頸部
図1
図2
図3
図4