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特許7506038ワイヤレスメッシュネットワークにおけるデータ収集の方法、及びその実行のためのデバイス
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  • 特許-ワイヤレスメッシュネットワークにおけるデータ収集の方法、及びその実行のためのデバイス 図1
  • 特許-ワイヤレスメッシュネットワークにおけるデータ収集の方法、及びその実行のためのデバイス 図2
  • 特許-ワイヤレスメッシュネットワークにおけるデータ収集の方法、及びその実行のためのデバイス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ワイヤレスメッシュネットワークにおけるデータ収集の方法、及びその実行のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/04 20090101AFI20240618BHJP
   H04J 3/00 20060101ALI20240618BHJP
   H04L 67/2885 20220101ALI20240618BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20240618BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20240618BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
H04W74/04
H04J3/00 B
H04L67/2885
H04W4/38
H04W28/06 110
H04W72/0446
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021142496
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2022044567
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2021-12-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】PV2020-496
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】514215871
【氏名又は名称】マイクロリスク エス エル オー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウラディミール シュルツ
【合議体】
【審判長】中木 努
【審判官】本郷 彰
【審判官】圓道 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129272(JP,A)
【文献】特開2020-123844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-4
3GPP TSG CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割多重接続によりパケットベースのメッセージ伝送を伴い、ルーティング通信デバイス(N)に格納された制御通信デバイス(C)からの距離を表現する仮想ルーティング番号(VRN)を使用したルーティングのために配置されたワイヤレスメッシュネットワークであって、前記制御通信デバイス(C)、前記ルーティング通信デバイス(N)のセット、及び、センサデバイス(S)のセットを含むワイヤレスメッシュネットワークにおいて、前記制御通信デバイス(C)が、前記ルーティング通信デバイス(N)に格納されたセンサデータを収集する方法であって、
各ルーティング通信デバイス(N)が、前記センサデバイス(S)から非同期的に送信されたセンサデータを受信して格納し、
前記制御通信デバイス(C)から開始メッセージを受信すると、前記ルーティング通信デバイス(N)に格納された前記センサデータから1つ又は複数のビットを選択してセットし、
次に、開始フレームに同期させた承認フレームにおいて、より高い前記仮想ルーティング番号(VRN)を格納した前記ルーティング通信デバイス(N)から受信した承認コレクションメッセージに、セットされた前記1つ又は複数のビットをマージし、その後、前記承認フレームの対応するタイムスロットにおいてそのようにマージされた前記承認コレクションメッセージを送信する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記制御通信デバイス(C)が、前記開始メッセージに追加情報を挿入し、
前記ルーティング通信デバイス(N)が、前記追加情報を解釈し、前記解釈の結果に応じて、1つ又は複数のビットをセットする、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
ルーティング通信デバイス(N)上で請求項1又は2に記載の方法を実行するためのデバイスであって、
前記デバイスが、メモリ及び制御ユニット(CPU)を備え、
前記メモリの一部が、受信したセンサデータを格納することに充てられ、
制御ユニット(CPU)が、開始メッセージを解釈し、請求項1又は2に記載の方法を実行する、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記メモリ全体が、非同期センサデータを受信することに完全に充てられる、
ことを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割多重を使用した競合のないルーティングのために配置されたワイヤレスメッシュネットワーク内のセンサ通信デバイスからデータを収集するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メッシュネットワークは、最も一般的なネットワークトポロジであり、一般に、このネットワークに接続された任意の2つのデバイス間に接続を確立することができる、すなわち、これらのデバイスは、互いに直接通信し、互いにメッセージを伝えることができる。任意の2つのデバイス間に接続を確立できるメッシュネットワークは、完全に接続されたメッシュネットワークと呼ばれるが、実際には、いくつかのデバイスだけが互いに接続され、接続を確立できるケースを扱うことがはるかに一般的である。
【0003】
ワイヤレスメッシュネットワークでは、デバイスは、通常、無線周波数帯域において、ワイヤレスで互いに通信する。したがって、2つの通信しているデバイス間の直接接続は、通常、これらのデバイスの通信範囲によって制限され、通信範囲外のデバイスは、直接接続を互いに確立することができない。したがって、メッセージは、パケットと呼ばれるデータのブロック内で送信され、ここで、パケットは、その受信者についての情報を搬送し、受信者に達するまで、1つのデバイスから次のデバイスへと徐々に、発信者から全体的なメッシュネットワーク内で転送される。経路を定義すること、すなわち、どのデバイスを通じてパケットを転送するかを決定することは、ルーティングと呼ばれる。ルーティングの目標は、発信者から受信者へのパケットの最も信頼でき、かつ最も早い配信を保証することである。
【0004】
一般的なワイヤレスメッシュネットワークでは、どのデバイスが互いに接続を確立できるかは、通常、予め知られていないので、ルーティングは、特に、異なる接続の組合せの結果生じる可能な経路の数により、比較的複雑な技術的及びアルゴリズム的問題であり、ここで、n個のデバイスを伴うネットワーク内の全ての可能な接続の数は、公式Nmax=n*(n-1)/2によって与えられる数Nmax以下である。
【0005】
一般的なワイヤレスメッシュネットワークの機能的配置の作成に基づくソリューション、及び、特許文献1によるこのネットワークにおけるルーティング技法は、信頼でき、かつ効率的なメッセージ配信を保証する。それでも、より多くのデバイスからデータを収集する必要があるとき、ネットワークに接続された通信デバイスの数が増加すると、レスポンス時間及びオーバヘッドが増加する。この事実は、特に電池式デバイス、ほとんどの場合、センサについて、電力消費量が多くなり、必然的に、センサデバイスのバッテリ寿命を制限する。
【0006】
特許文献2において提示されたソリューション、及び特許文献1による整然としたネットワークの恩恵が、確立されたルーティング構造により、及び指向性フラッディングを使用して、パケット伝送による整然としたワイヤレスメッシュネットワークにおけるデータ収集の時間効率をかなり改善する。それでも、電池式センサデバイスは、典型的には、スリープモードで動作し、通信の必要があるときに通信モードに覚醒するだけであり、このデータ収集方法では、予めスケジュールしなければならない。この場合のセンサデバイスのエネルギー効率に影響を及ぼす技術的制限は、センサデバイスが開始メッセージを受信する正に直前に目覚める必要があることであり、これにより、検知デバイスは、メッセージを受信し、適切なシーケンスを実行することができる。より早く覚醒すると、電池式デバイスにとって望ましくないエネルギー負荷の高い通信モードに、より多くの時間を費やすことで効率が低下し、その一方で、より遅く覚醒すると、初期化メッセージの紛失、及びルーティング失敗になる。次に、正確なタイミングは、通常、非常に低い電力消費量の正確なタイマーを使用する必要があることにより、経済的コストが高くなることを意味する。その上、センサデバイスで正確なタイミングを達成しても、センサデバイスのエネルギー効率は、例えば、制御ネットワークデバイス(C)が親システムからの優先コマンドの実行で忙しく、したがって、スケジュールより後に初期化パケットを送信する場合、さらに低下し得る。同様に、例えば周囲の干渉により、初期化メッセージがセンサデバイスに達しない場合、これは失敗する。これらの場合、センサデバイスは、より長い時間、受信モードで待たなければならず、スリープモードより電力消費量が数桁大きくなる。
【0007】
特許文献2の言及した短所は、電池式センサデバイスのエネルギー効率を最適化する、下記で説明するメッセージのパケット伝送によるワイヤレスメッシュネットワーク内の通信デバイスからのデータ集約の方法によって、ほとんどなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第8,681,656号公報
【文献】特許第6333120号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、パケットメッセージ伝送を伴い、時分割多重、及び特許文献1に記述された仮想ルーティング番号を使用した競合のないルーティングのために配置されたワイヤレスメッシュネットワーク内の通信デバイスからデータを収集する方法である。
【0010】
本発明の本質は、センサデバイスがデータ集約の処理に直接関与するのではなく、代わりに、データを非同期的に送信し、そのデータを、ルーティングデバイス(N)のメモリに格納し、一方で、開始メッセージをブロードキャストすることによって制御デバイス(C)によってデータ集約の処理を始めることである。開始メッセージの受信後、及び、このメッセージ内の制御データに基づいて、その後、ルーティングノード(N)は、他の承認コレクションメッセージと、格納された日付をマージし、これらを承認フレーム中に順次、最大仮想ルーティング番号(VRN)のルーティングデバイス(N)から、最小仮想ルーティング番号(VRN)のルーティングデバイス(N)に送信する。このようにして、ルーティングデバイス(N)は、センサデータの集約を行う。
【0011】
特許文献2に記述された集約の方法と異なり、センサデバイス(S)は、データ集約にもはや関与せず、代わりに、通常、いくつかの周期的なモードで、促すことなくこれらのデータを送信するので、開始メッセージを待つ必要がない。センサデバイス通信のこの方式により、センサデバイスのエネルギー消費量が著しく低下する。
【0012】
さらに、センサデバイス(S)はデータ集約に関与しないので、これらのデータがルーティング通信デバイス(N)で格納され、処理されるとき、データを収集するための時間は、承認フレーム内でセンサデバイス(S)のためのタイムスロットを充てる必要がなく、ルーティング通信デバイス(N)のためにだけ充てるので、著しく低下する。
【0013】
主題の発明は、センサ通信デバイス(S)からデータを収集することを説明した方法を実行するルーティングデバイスも提供する。このようなデバイスは、センサから受信したデータを格納することに部分的又は全面的に充てられるメモリ、並びに、初期化メッセージの解釈、及び集約ロジックを実現する制御ユニットを含まなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】3つのルーティングデバイス及び6つのセンサデバイスを収めるネットワークトポロジの例を示す図である。
図2】専用メモリデバイスの実装形態の例、及びそのブロック図である。
図3図1に示すネットワークトポロジの例のデータ獲得及びマージシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
主題の発明は、時分割多重、及び仮想ルーティング番号(VRN)を使用した競合のないルーティングのために配置される、パケットメッセージ伝送を伴うワイヤレスメッシュネットワーク内のセンサ通信デバイスからデータを収集するための方法を提供する。
【0016】
このようなトポロジ配置の例を図1に示す。例は、制御通信デバイスC、及び、仮想ルーティング番号R1からR3を割り当てた3つのルーティング通信デバイスN1からN3を含み、実線は、このメッシュネットワークトポロジ配置内の直接リンクを示す。さらに、メッシュは、S1からS6とラベルを付けた6つのセンサ通信デバイスを含む。この例では、各センサデバイスS1からS6の断続線は、どのルーティングデバイスが、その伝送/データをこのトポロジ配置で受信できるかを示す。検知デバイスは、実際のデータを周期的に送信し、データは、この範囲内のルーティングデバイスのメモリに格納され、これにより、各ルーティング通信デバイスは、開始メッセージを受信すると、フレームの始まりに比較的同期的にタイミングを合わせ、そのメモリに格納された受信済の検知データから、1つ又は複数のビットであり得る、収集するべき所望のデータを選択し、その後、これらのビットを、制御ネットワークデバイスCにアドレス指定した収集承認メッセージに挿入する。データ集約は、承認フレーム中、大きい方の仮想ルーティング番号のルーティングデバイスから、小さい方の仮想ルーティング番号のルーティングデバイスに、順次実施される。このようにして、ルーティングデバイスを通じた個々のセンサデバイスからのセンサデータの集約は、この特定のケースでわかるように、特許文献2に記載のソリューションに比べて、通信フレームの大規模な削減になる。図1に示すようなトポロジ配置における実際のデータ集約を簡単に可視化するために、開始メッセージを受信する前の個々のルーティングデバイスのメモリ状態、すなわち、格納したセンサデータを図3に描写し、ここで、例証のための例において、センサのシリアル番号の形で値1から6をとる。その後、各ルーティングデバイスの集約状態は、承認フレームの異なるタイムスロットにわたって順次キャプチャされる。ルーティングデバイスは、ルーティングデバイスが集約したデータを伝送した後、集約サイクルを終了し、表ではエンドと表す。
【0017】
初期化メッセージに挿入された追加情報は、データを選択するべき、例えばビットフィールドの形の、センサ及び/若しくはルーティングデバイスのリストであることが可能であるか、又は、例えば、温度データ、若しくはいくつかの物理量の限界値を越えることについてのビット情報といった、データのリクエストタイプの定義を挿入することができる。この場合、解釈に基づいて、一定のデータだけを選択し、その後、この追加情報に基づいて集約することができる。これは、例えば、種々のタイプのセンサデバイスを伴うヘテロジニアステレメトリネットワークの最適化の場合、有利になる可能性があり、ここで、スローイベントを監視するように設計されたセンサからのデータは、利用できる必要がないので、重要データほど頻繁に収集しない。
【0018】
また、追加情報は、例えば、承認フレームの開始前の遅延のための要件を含むことができ、これは、例えば、異なる計算能力のルーティングデバイスを伴うネットワークにおいて、集約動作の実行時間が長くなることにより、いくつかのルーティング通信デバイスが承認フレーム中に遅延するか、そのそれぞれのタイムスロットを失い得る、より計算負荷の高い選択及び集約動作を実施したときの、個々のルーティングデバイスの時刻同期に有利になり得る。
【0019】
初期化メッセージに追加情報を挿入し、次に、説明したように、ルーティングデバイスで追加情報を解釈することによって、テレメトリシステムは、したがって、固有の用途にさらに最適化され、データ収集率の向上、伝送チャネルの負荷の低下、又は、データ収集方法全体のより高い信頼性の保証などの、さらなる利益をもたらすことができる。
【0020】
ワイヤレスメッシュネットワークにおいて、説明したデータ収集方法を実行するデバイスの例は、センサデータの格納に完全に充てられた外部RAM(MEM)を備える、図2にそのブロック図を含む図示のリピータ、及び、初期化メッセージを解釈し、集約のために所望のセンサデータを選択するマイクロコントローラ(CPU)を備えるトランシーバモジュールであってもよい。
【0021】
部分的に専用のメモリを伴うセンサデバイスの実装形態の例は、マイクロコントローラに加えて、十分に大きいFRAMメモリを収めるトランシーバモジュールが可能であり、FRAMメモリは、その有利な性質(1013回の書込みの耐用期間、高速書込み及び読込みスピード)により、センサデバイスデータの格納に使用されるだけでなく、不揮発性であるので、構成及びセキュリティ情報の格納にも使用される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、テレメトリネットワークにおける通信をより効率的にするために使用することができる。電池式センサデバイスに対して、本発明は、通信処理のエネルギー効率をかなり向上させるので、バッテリ交換サイクルをかなり延ばす機会を与える。これは、低いハードウェアリソース要件を有し、その実装形態は、経済的に興味深い。
【符号の説明】
【0023】
C 制御通信デバイス、N1 ルーティング通信デバイス、N2 ルーティング通信デバイス、N3 ルーティング通信デバイス、R1 仮想ルーティング番号、R2 仮想ルーティング番号、R3 仮想ルーティング番号、S1 センサ通信デバイス、S2 センサ通信デバイス、S3 センサ通信デバイス、S4 センサ通信デバイス、S5 センサ通信デバイス、S6 センサ通信デバイス。
図1
図2
図3