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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】放射性物質収納容器の緩衝体
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/08 20060101AFI20240618BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20240618BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G21F5/08
G21C19/32 100
G21F9/36 501J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021162561
(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公開番号】P2023053495
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】下条 純
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 健一
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-011602(JP,A)
【文献】特開2019-203572(JP,A)
【文献】特開2020-173206(JP,A)
【文献】特開2021-041947(JP,A)
【文献】特開2018-204998(JP,A)
【文献】米国特許第05894134(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/08
G21C 19/32
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置き状態で貯蔵される放射性物質収納容器の軸方向端部に設置される緩衝体であって、
金属材料で形成された複数の緩衝部材を備え、
前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の径方向の外方へ突出する形状とされており、
隣り合う前記緩衝部材の間に空間が設けられ
前記緩衝部材は、複数の切れ込みを途中まで有する矩形の板材から形成され、
隣り合う前記切れ込みの間の部分がひねられることで、前記径方向の外方へ突出するとともに相互に間隔があいた複数の細長形状部が前記緩衝部材に形成されており、
前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の周方向において相互に間隔をあけて配置される、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項2】
横置き状態で貯蔵される放射性物質収納容器の軸方向端部に設置される緩衝体であって、
金属材料で形成された複数の緩衝部材を備え、
前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の径方向の外方へ突出する形状とされており、
隣り合う前記緩衝部材の間に空間が設けられ
前記緩衝部材は、複数の第1緩衝部材と、当該第1緩衝部材よりも前記径方向の外方へ長く突出する複数の第2緩衝部材と、を有する、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記軸方向端部に嵌め込まれる筒形状の内側カバー部材をさらに備え、
前記内側カバー部材の外周面に、前記径方向の外方へ突出する姿勢で前記緩衝部材が取り付けられている、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項4】
請求項に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記内側カバー部材の内周面に、前記放射性物質収納容器の軸方向端面に当接されるとともに固定される板部材が取り付けられている、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項5】
請求項に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記内側カバー部材は、
前記軸方向端部に嵌め込まれる第1内側カバー部と、
前記第1内側カバー部から前記板部材よりも前記放射性物質収納容器の軸方向の外方へ延びる第2内側カバー部と、を有する、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項6】
請求項に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記第2内側カバー部の内周面に、前記第2内側カバー部を支持する補強部材が取り付けられている、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項7】
請求項に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の軸方向において相互に間隔をあけて配置されるリング形状の板である、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項8】
請求項に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記緩衝部材は、パイプ形状物または棒形状物である、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項9】
請求項に記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記緩衝部材は、複数の第1緩衝部材と、当該第1緩衝部材よりも前記径方向の外方へ長く突出する複数の第2緩衝部材と、を有する、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の放射性物質収納容器の緩衝体において、
前記緩衝部材を覆う外側カバー部材をさらに備える、
放射性物質収納容器の緩衝体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質収納容器に取り付けられる緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記緩衝体に関する技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、複数の中空材が一かたまりにされたコア材を備える緩衝体が記載されている。中空材は、金属材料またはセラミック材料からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-173206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の緩衝体は、放射性物質収納容器の輸送時に取り付けられる緩衝体である。輸送容器の場合、事故時を想定した9m落下事象が設計要件にある。その場合の緩衝体は大きな緩衝性能(大変形)が要求される。しかしながら、放射性物質収納容器が貯蔵施設内で横置き貯蔵されている場合、落下高さは2~3m程度である。この場合、緩衝体の緩衝性能は、輸送時に取り付けられる緩衝体程大きくなくても成立する。また、横置き状態での貯蔵なので、放射性物質収納容器の落下は水平落下に限定される。したがって、水平落下だけでなく、垂直落下、コーナー落下などが試験条件としてある輸送時に取り付けられる緩衝体に比べてシンプルな構造の緩衝体が設計可能となる。
【0005】
本発明の目的は、横置き貯蔵状態から床面に落下した際の衝撃エネルギーを適切に吸収することができるシンプルな構造の緩衝体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願で開示する緩衝体は、横置き状態で貯蔵される放射性物質収納容器の軸方向端部に設置される緩衝体であって、金属材料で形成された複数の緩衝部材を備え、前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の径方向の外方へ突出する形状とされており、隣り合う前記緩衝部材の間に空間が設けられている。
【0007】
金属材料は無機材料であるため、金属材料で形成された緩衝部材は、放射線および熱による劣化を受けにくい。また、隣り合う緩衝部材の間に空間が設けられることで、緩衝体を軽量化しつつ、主に座屈変形により落下時の衝撃エネルギーを適切に吸収することができる。緩衝部材は、放射性物質収納容器の径方向の外方へ突出し、隣り合う緩衝部材同士の間に空間が設けられているというシンプルな構造である。
【0008】
前記軸方向端部に嵌め込まれる筒形状の内側カバー部材をさらに備え、前記内側カバー部材の外周面に、前記径方向の外方へ突出する姿勢で前記緩衝部材が取り付けられていてもよい。
【0009】
この構成によると、放射性物質収納容器の軸方向端部に、緩衝部材を備える緩衝体を容易に設置することができる。
【0010】
また、前記内側カバー部材の内周面に、前記放射性物質収納容器の軸方向端面に当接されるとともに固定される板部材が取り付けられていてもよい。
【0011】
この構成によると、緩衝体の位置決めを容易に行うことができる。また、緩衝体の設置を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記内側カバー部材は、前記軸方向端部に嵌め込まれる第1内側カバー部と、前記第1内側カバー部から前記板部材よりも前記放射性物質収納容器の軸方向の外方へ延びる第2内側カバー部と、を有していてもよい。
【0013】
緩衝部材は、内側カバー部材の外周面に取り付けられる。上記構成によると、緩衝部材の十分な取り付けスペースを確保することができる。その結果、緩衝部材の数量、取り付けピッチ、および寸法などの設計自由度が大きくなり、緩衝体の設計を行い易くなる。
【0014】
また、前記第2内側カバー部の内周面に、前記第2内側カバー部を支持する補強部材が取り付けられていてもよい。
【0015】
この構成によると、第2内側カバー部が曲がりにくくなる。そのため、第2内側カバー部の外周面に取り付けられた緩衝部材は、設計通りの座屈変形をし易くなる。その結果、衝撃エネルギーをより適切に吸収することができる。
【0016】
また、前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の軸方向において相互に間隔をあけて配置されるリング形状の板であってもよい。
【0017】
この構成によると、緩衝部材がパイプ形状物または棒形状物とされた場合よりも、緩衝部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0018】
また、前記緩衝部材は、パイプ形状物または棒形状物であってもよい。
【0019】
この構成によると、緩衝部材の数量、取り付けピッチ、および寸法などの設計自由度が大きくなり、緩衝体の設計を行い易くなる。また、緩衝部材の材料の手配が容易となる。
【0020】
また、前記緩衝部材は、複数の切れ込みを途中まで有する矩形の板材から形成され、隣り合う前記切れ込みの間の部分がひねられることで、前記径方向の外方へ突出するとともに相互に間隔があいた複数の細長形状部が前記緩衝部材に形成されており、前記緩衝部材は、前記放射性物質収納容器の周方向において相互に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0021】
緩衝部材が上記矩形の板材から形成されていると、複数の細長形状部が形成された側とは反対側の端面は直線形状である。そのため、緩衝部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0022】
また、前記緩衝部材は、複数の第1緩衝部材と、当該第1緩衝部材よりも前記径方向の外方へ長く突出する複数の第2緩衝部材と、を有していてもよい。
【0023】
この構成によると、外側の密度が小さく、内側の密度が大きいものとなる。そのため、緩衝体が着床した際の初期の衝撃荷重のピークを緩和することができる。また、上記構成の緩衝体は、緩衝体にある程度の変形が生じた時点で、内側の密度が大きい部分で衝撃エネルギーを吸収する。そのため、着床後期は、小さい変形量で衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0024】
また、前記緩衝部材を覆う外側カバー部材をさらに備えていてもよい。
【0025】
この構成によると、衝撃吸収性能を安定させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、横置き貯蔵状態から床面に落下した際の衝撃エネルギーを適切に吸収することができるシンプルな構造の緩衝体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る緩衝体が設置された放射性物質収納容器の側面図である。
図2図1に示す緩衝体のA-A断面図である。
図3図1に示すB部の拡大図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る緩衝体が設置された放射性物質収納容器の側面図である。
図5図4に示す緩衝体のC-C断面図である。
図6図4に示す緩衝部材を説明するための図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る緩衝体が設置された放射性物質収納容器の側面図である。
図8図7に示す緩衝体のE-E断面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る緩衝体が設置された放射性物質収納容器の側面図である。
図10図9に示す緩衝体のF-F断面図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る緩衝体が設置された放射性物質収納容器の側面図である。
図12図11に示す緩衝体のG-G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
放射性物質収納容器1は、使用済燃料などの放射性物質を収納して貯蔵するために用いられるものであって、キャスクと呼ばれる。放射性物質を収納した放射性物質収納容器1は、貯蔵施設内で縦置き状態で貯蔵される場合と、横置き状態で貯蔵される場合とがある。横置き状態で貯蔵されるときの放射性物質収納容器1の状態が図1図4などに示されている。横置き状態とは、放射性物質収納容器1の軸方向Zが水平にされて放射性物質収納容器1が置かれた状態のことをいう。放射性物質収納容器1の外周部には、ハンドリング用及び貯蔵架台への設置用の複数のトラニオン2が取り付けられている。放射性物質収納容器1は、筒状の容器である。
【0030】
放射性物質収納容器1が横置き状態で貯蔵されている場合に、放射性物質収納容器1が万が一落下したとき、落下高さは2~3m程度である。また、放射性物質収納容器1が横置き状態で貯蔵されている場合、放射性物質収納容器1の落下は水平落下となる。水平落下とは、放射性物質収納容器1の軸方向Zがほぼ水平な状態で落下することをいう。なお、放射性物質収納容器1が貯蔵施設内で横置き状態で搬送されている場合も、万が一の落下高さは2~3m程度であり、落下は水平落下となる。放射性物質収納容器1が横置き状態から落下した際に、放射性物質収納容器1を衝撃から保護するための緩衝体3が、放射性物質収納容器1の軸方向Z端部に設置される。
【0031】
(第1実施形態)
図1から図3は、第1実施形態の緩衝体3を説明するための図である。図1において、放射性物質収納容器1の左側端部が、放射性物質収納容器1の上部(蓋側)であり、放射性物質収納容器1の右側端部が、放射性物質収納容器1の下部(底部側)である。緩衝体3は、放射性物質収納容器1の上部および下部にそれぞれ設置される。放射性物質収納容器1の上部に設置される緩衝体3と、放射性物質収納容器1の下部に設置される緩衝体3とは構造が同じである。
【0032】
緩衝体3は、衝撃エネルギーを吸収する複数の緩衝部材4、筒形状の内側カバー部材5、および放射性物質収納容器1の軸方向Z端面に当接される板部材6などを備えている。
【0033】
緩衝部材4は、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出する形状とされる。本実施形態の複数の緩衝部材4は、放射状に設置された多数本のパイプ形状物(例えばパイプ)である。緩衝部材4は、パイプ形状物に代えて、棒形状物(例えば棒)とされてもよい。パイプ形状物や棒形状物は、その手配が容易であるので、緩衝部材4をパイプ形状物または棒形状物とすると、緩衝部材4の準備を容易に行うことができる。緩衝部材4は、座屈変形しやすいように隣り合う緩衝部材4同士の間に空間が設けられる。緩衝部材4は、金属材料で形成される。金属材料は、座屈変形しやすい延性の高い材料が望ましい。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。金属材料は無機材料であるため、金属材料で形成された緩衝部材4は、放射線および熱による劣化を受けにくい。また、金属材料を使用することによる付随的な効果として、次のような効果がある。放射性物質収納容器1に使用される緩衝材は、従来、木材が使用されている。木材は天然素材であることから、品質上、強度・密度・含水率等の均一性を確保することが難しく、歩留まりが悪くなる問題がある。緩衝部材4の材料として、工業製品である金属材料を使用することで品質管理が容易になる。
【0034】
緩衝体3の設計は、緩衝部材4の取り付けピッチ(間隔)、材料、断面寸法などをパラメータにして衝撃吸収エネルギーとのバランスから行われる。緩衝部材4は、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出し、隣り合う緩衝部材4同士の間に空間が設けられているというシンプルな構造である。また、隣り合う緩衝部材4の間に空間が設けられることで、緩衝体3を軽量化することができる。
【0035】
横置き状態で貯蔵されている放射性物質収納容器1が落下したとする。このとき、緩衝部材4が床面に衝突し、緩衝部材4は主に座屈変形する(潰れる)。この座屈変形により、床面との衝突による衝撃エネルギーが緩衝部材4によって適切に吸収される。衝撃エネルギーが吸収されることで、衝撃加速度が緩和される。その結果、放射性物質収納容器1の蓋部の密封性能は維持される。
【0036】
内側カバー部材5は、複数の上記緩衝部材4を保持する部材である。複数の緩衝部材4は、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出する姿勢で、内側カバー部材5の外周面に放射状に取り付けられる。内側カバー部材5は、放射性物質収納容器1の軸方向Z端部に嵌め込まれる。内側カバー部材5の内径は、放射性物質収納容器1の軸方向Z端部の外径よりも僅かに大きな径とされる。緩衝体3が内側カバー部材5を備えていることで、放射性物質収納容器1の軸方向Z端部に、緩衝部材4を備える緩衝体3を作業者は容易に設置することができる。
【0037】
図3に符号を付して示すように、上記内側カバー部材5は、第1内側カバー部5aと第2内側カバー部5bとで構成される。第1内側カバー部5aは、放射性物質収納容器1の軸方向Z端部に嵌め込まれる部分である。第2内側カバー部5bは、第1内側カバー部5aから上記板部材6よりも放射性物質収納容器1の軸方向Zの外方へ延びる部分である。内側カバー部材5は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。緩衝部材4は、内側カバー部材5の外周面に取り付けられる。内側カバー部材5が上記構成であると、緩衝部材4の十分な取り付けスペースを確保することができる。その結果、緩衝部材4の数量、取り付けピッチ、および寸法などの設計自由度が大きくなり、緩衝体3の設計を行い易くなる。
【0038】
板部材6は、内側カバー部材5の内周面に取り付けられる。板部材6は、円板形状の部材である。板部材6の径は、内側カバー部材5の内径とほぼ同じ径とされる。板部材6は複数のボルト7によって、放射性物質収納容器1の軸方向Z端面に着脱可能に固定される。板部材6は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。内側カバー部材5の内周面に板部材6が取り付けられていることで、作業者は放射性物質収納容器1に対する緩衝体3の位置決めを容易に行うことができる。また、緩衝体3の設置を容易に行うことができる。
【0039】
放射性物質収納容器1の軸方向Z端部に緩衝体3が設置された状態において、内側カバー部材5を構成する第2内側カバー部5bの内側は中空となる。この中空部分に、第2内側カバー部5bを支持する補強部材8が配置される。本実施形態の補強部材8は、筒形状部材8aと、板形状の複数のリブ材8bとを有する。筒形状部材8aは、板部材6の広面の中央部に取り付けられる。複数のリブ材8bは、第2内側カバー部5bと筒形状部材8aとの間に放射状に設置される。リブ材8bは、長手方向の一方の端面が第2内側カバー部5bの内周面に取り付けられ、他方の端面が筒形状部材8aの外周面に取り付けられる。リブ材8bの長手方向に沿う面は、板部材6に取り付けられる。補強部材8は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。
【0040】
補強部材8が配置されることで、第2内側カバー部5bが曲がりにくくなる。そのため、第2内側カバー部5bの外周面に取り付けられた緩衝部材4は、床面衝突時に設計通りの座屈変形をし易くなる。その結果、衝撃エネルギーをより適切に吸収することができる。なお、補強部材8の構成は上記構成に限られることはない。補強部材8は、第2内側カバー部5bを内側から支持する構成とされればよい。
【0041】
上記中空部分は、中空部分に雨水などが入り込まないように、端部カバー部材9で蓋がれる。本実施形態の端部カバー部材9は、リング形状のカバー部材9aと、その内側の円板形状のカバー部材9bとで構成される。端部カバー部材9は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。なお、端部カバー部材9の構成は上記構成に限られることはない。また、端部カバー部材9は省略されてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図4から図6は、第2実施形態の緩衝体3を説明するための図である。第1実施形態の緩衝体3と、第2実施形態の緩衝体3との相違点は、緩衝部材の構成である。緩衝部材以外の構成については、第1実施形態の緩衝体3と、第2実施形態の緩衝体3とは同じである。第2実施形態の緩衝体3が備える緩衝部材10の構成は次のとおりである。
【0043】
図6は、図4に示す緩衝部材10を説明するための図である。図6中の上側の図は、緩衝部材10の中間部材11(製作途中のもの)を示す図である。中間部材11は、複数の切れ込み11aを途中まで有する矩形の板材である。複数の切れ込み11aは、例えば、比較的細かいピッチ(間隔)で入れられる(約30mmピッチ程度)。切れ込み11aのピッチ(間隔)は特に限定されるものではない。隣り合う上記切れ込みの間の部分がひねられることで、図6中の下側の図に示すように、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出するとともに相互に間隔があいた複数の細長形状部12が形成される。この細長形状部12が衝撃エネルギーを吸収する部分である。緩衝部材10のうちの細長形状部12が占める範囲を大きくするために、切れ込み11aは長い方が望ましい。また、ひねられる部分は、切れ込み11aの間の部分のうちの根本部分であることが望ましい。本実施形態では、切れ込みの間の部分のうちの根本部分が90度ひねられることで細長形状部12が形成されている。ひねられる角度は90度に限られない。
【0044】
1枚当たりに複数の細長形状部12が形成された複数の緩衝部材10は、放射性物質収納容器1の周方向において相互に間隔をあけて配置される。複数の緩衝部材10は、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出する姿勢で、内側カバー部材5の外周面に取り付けられる。ここで、緩衝部材10のうちの切れ込み11aが入れられていない側の端面17は直線形状である。また、内側カバー部材5の外周面は、内側カバー部材5の軸方向において直線形状である。直線形状同士のものを突き合わせて溶接などで固定することになるため、内側カバー部材5への緩衝部材10の取り付けを作業者は容易に行うことができる。
【0045】
緩衝部材10は、第1実施形態の緩衝部材4と同様、金属材料で形成される。金属材料は、座屈変形しやすい延性の高い材料が望ましい。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。
【0046】
横置き状態で貯蔵されている放射性物質収納容器1が落下したとする。このとき、緩衝部材10の細長形状部12が床面に衝突し、細長形状部12は主に座屈変形する(潰れる)。この座屈変形により、床面との衝突による衝撃エネルギーが緩衝部材10(細長形状部12)によって適切に吸収される。衝撃エネルギーが吸収されることで、衝撃加速度が緩和される。その結果、放射性物質収納容器1の蓋部の密封性能は維持される。
【0047】
(第3実施形態)
図7および図8は、第3実施形態の緩衝体3を説明するための図である。第1実施形態の緩衝体3と、第3実施形態の緩衝体3との相違点は、第3実施形態の緩衝体3が、緩衝部材4を覆う外側カバー部材13をさらに備える点である。第1実施形態の緩衝体3に、緩衝部材4を覆う外側カバー部材13を取り付けたものが、第3実施形態の緩衝体3である。緩衝部材4同士は、外側カバー部材13で相互に拘束される。緩衝部材4同士を拘束すると、緩衝部材4の座屈変形が安定するので、緩衝部材4の衝撃吸収性能を安定させることができる。図7および図8に示すように、外側カバー部材13は、例えば筒形状である。外側カバー部材13は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。
【0048】
(第4実施形態)
図9および図10は、第4実施形態の緩衝体3を説明するための図である。第1実施形態の緩衝体3と、第4実施形態の緩衝体3との相違点は、緩衝部材の構成である。緩衝部材以外の構成については、第1実施形態の緩衝体3と、第4実施形態の緩衝体3とは同じである。第4実施形態の緩衝体3が備える緩衝部材14の構成は次のとおりである。
【0049】
緩衝部材14は、複数の第1緩衝部材15と、複数の第2緩衝部材16とで構成される。第2緩衝部材16は、第1緩衝部材15よりも放射性物質収納容器1の径方向の外方へ長く突出する。この構成によると、全てが同じ長さ(高さ)の緩衝部材の場合よりも、着床した際の緩衝部材14の設置面積が小さくなる。第1緩衝部材15は、高さH1のリング形状の板である。第2緩衝部材16は、高さH2のリング形状の板である。H2>H1である。第1緩衝部材15は、1枚の板材からリング形状に形成されたものであってもよいし、円弧形状の板がつなぎ合わせられてリング形状に形成されたものであってもよい。第2緩衝部材16についても同様である。第2緩衝部材16は、1枚の板材からリング形状に形成されたものであってもよいし、円弧形状の板がつなぎ合わせられてリング形状に形成されたものであってもよい。
【0050】
第1緩衝部材15および第2緩衝部材16は、いずれもリング形状の板である。リング形状の板であることで、第1実施形態のように、緩衝部材4がパイプ形状物または棒形状物とされた場合よりも、緩衝部材14の取り付けを作業者は容易に行うことができる。
【0051】
本実施形態では、放射性物質収納容器1の軸方向Zにおいて、高さH1の第1緩衝部材15と、高さH2の第2緩衝部材16とは、相互に間隔をあけて交互に配置されている。なお、本実施形態のように、第1緩衝部材15と第2緩衝部材16とが1枚毎に交互に配置されるのではなく、2枚毎など複数枚毎に、第1緩衝部材15と第2緩衝部材16とが交互に配置されてもよい。
【0052】
緩衝部材14によると、床面に落下着床した際の初期の衝撃荷重のピークを緩和することができる。着床した瞬間、緩衝部材14が座屈変形し始める際に、瞬間的に衝撃荷重のピークが生じ、それに伴い衝撃加速度のピークが生じる。その際、着床する緩衝部材14の設置面積が小さいことにより、着床時に緩衝部材14が座屈変形しやすくなり、衝撃加速度のピークを緩和することができる。その後、ある程度の変形が生じた時点で部材密度の高い2段目の緩衝部材部分(第1緩衝部材15と第2緩衝部材16とが軸方向Zで交互になっている内側カバー部材5に近い部分)で衝撃エネルギーを吸収するため、限られた変形量で放射性物質収納容器1全体の落下エネルギーを吸収することが可能となる。すなわち、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出する部分が少なすぎると衝撃加速度を緩和できるものの、大きな変形量が必要となり放射性物質収納容器1が床面に衝突する可能性が生じる。しかしながら、緩衝部材14のように、放射性物質収納容器1の径方向の外方へ突出する部分を、密度が異なる2段階の突出部とすることでこれを回避することができる。
【0053】
緩衝部材14(第1緩衝部材15、第2緩衝部材16)は、第1実施形態の緩衝部材4と同様、金属材料で形成される。金属材料は、座屈変形しやすい延性の高い材料が望ましい。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。
【0054】
(第5実施形態)
図11および図12は、第5実施形態の緩衝体3を説明するための図である。第1実施形態の緩衝体3と、第5実施形態の緩衝体3との相違点は、緩衝部材の構成である。緩衝部材以外の構成については、第1実施形態の緩衝体3と、第5実施形態の緩衝体3とは同じである。第5実施形態の緩衝体3が備える緩衝部材17の構成は次のとおりである。
【0055】
緩衝部材17は、放射性物質収納容器1の軸方向Zにおいて、相互に間隔をあけて配置されるリング形状の板である。第4実施形態の場合とは異なり、複数の緩衝部材17の高さHは全て等しくされている。緩衝部材17は、1枚の板材からリング形状に形成されたものであってもよいし、円弧形状の板がつなぎ合わせられてリング形状に形成されたものであってもよい。
【0056】
緩衝部材17がリング形状の板とされていることで、第1実施形態のように、緩衝部材4がパイプ形状物または棒形状物とされた場合よりも、緩衝部材17の取り付けを作業者は容易に行うことができる。
【0057】
緩衝部材17は、第1実施形態の緩衝部材4と同様、金属材料で形成される。金属材料は、座屈変形しやすい延性の高い材料が望ましい。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。
【0058】
本実施形態において、複数の上記緩衝部材17は、第3実施形態の場合と同様、外側カバー部材13で覆われている。緩衝部材17同士は、外側カバー部材13で相互に拘束される。緩衝部材17同士を拘束すると、緩衝部材17の座屈変形が安定するので、緩衝部材17の衝撃吸収性能を安定させることができる。外側カバー部材13は、例えば筒形状である。外側カバー部材13は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。なお、外側カバー部材13は省略されてもよい。
【0059】
また、隣り合う緩衝部材17の間に複数の板材18が設置されている。図12に示すように、板材18は、放射性物質収納容器1の周方向において相互に間隔をあけて配置されている。緩衝部材17同士は、外側カバー部材13に加えて板材18によっても相互に拘束される。この構成によると、緩衝部材17の衝撃吸収性能をより安定させることができる。板材18は、金属材料で形成される。金属材料は、例えば、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、または炭素鋼である。なお、板材18は省略されてもよい。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態の各構成を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態は、次のように変更可能である。
【0062】
図4から図6に示す第2実施形態の緩衝体3を構成する緩衝部材10(細長形状部12)が、図7および図8に示す第3実施形態の緩衝体3のように、外側カバー部材13で覆われていてもよい。同様に、図9および図10に示す第4実施形態の緩衝体3を構成する緩衝部材14(第2緩衝部材16)が外側カバー部材13で覆われていてもよい。
【0063】
図9および図10に示す第4実施形態の緩衝体3を構成する緩衝部材14は、高さの異なる複数の第1緩衝部材15と、複数の第2緩衝部材16とによって、同一衝撃荷重で変形量が異なる2段構成の緩衝部材14とされている。第1緩衝部材15および第2緩衝部材16とは高さの異なるリング形状の複数の板をさらに加えることで、3段構成の緩衝部材とされてもよい。さらには、4段以上の構成の緩衝部材とされてもよい。
【0064】
図1から図3に示す第1実施形態の緩衝体3を構成する緩衝部材4のようなパイプ形状物または棒形状物の緩衝部材が、上記緩衝部材14のような2段構成の緩衝部材とされてもよいし、さらには3段以上の構成の緩衝部材とされてもよい。パイプ形状物(または棒形状物)の長さを異ならせることで、2段以上の構成の緩衝部材とすることができる。同様に、図4から図6に示す第2実施形態の緩衝体3を構成する緩衝部材10が、緩衝部材14のような2段以上の構成の緩衝部材とされてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1:放射性物質収納容器
3:緩衝体
4、10、14、17:緩衝部材
5:内側カバー部材
5a:第1内側カバー部
5b:第2内側カバー部
6:板部材
8:補強部材
11:中間部材(板材)
11a:切れ込み
12:細長形状部
13:外側カバー部材
15:第1緩衝部材(緩衝部材)
16:第2緩衝部材(緩衝部材)
Z:軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12