(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】金型構造及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/44 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B29C45/44
(21)【出願番号】P 2021189849
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 海峰
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/12402(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259494(US,A1)
【文献】特開2002-103394(JP,A)
【文献】特開2007-69507(JP,A)
【文献】特開2002-172652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と側壁部と巻き込み部とを有する成形品であって、前記本体は板状に形成され、前記側壁部は前記本体の外縁に同本体の厚さ方向の一方側に向けて突出するよう形成されており、前記巻き込み部は前記側壁部の突出方向の先端で前記側壁部の内側に向けて突出するよう形成されている成形品の製造に用いられ、
型締め及び型開きされる固定型及び可動型と、前記可動型に配置された第1入れ子及び第2入れ子とを備え、型締めされた前記固定型と前記可動型との間には溶融した樹脂が射出されるものであり、
前記固定型と前記可動型との間で固化した前記樹脂によって前記成形品が形成されたとき、前記第1入れ子は前記成形品の内側で前記側壁部に対応して位置し、前記第2入れ子は前記成形品の内側で前記本体に対応して位置するものであり、
前記固定型と前記可動型とを型開きするとき、前記第2入れ子が前記第1入れ子に対し離れる方向に相対移動することによって前記第1入れ子が前記成形品の内側から引き抜かれ、その状態で成形品が前記第2入れ子から取り外される金型構造において、
前記成形品における前記側壁部の基端は、湾曲することによって前記成形品の本体に繋がっており、
前記第2入れ子は、型締め時に前記樹脂によって形成された前記成形品に対する接触面の縁が前記側壁部の前記基端における前記本体と繋がる箇所よりも前記側壁部の前記先端寄りに位置するよう形成されている金型構造。
【請求項2】
前記第2入れ子は、型締め時に前記樹脂によって形成された前記成形品に対する接触面の縁が、前記巻き込み部の内端よりも前記側壁部の前記先端寄りに位置するよう形成されている請求項1に記載の金型構造。
【請求項3】
前記第2入れ子における前記第1入れ子と接する側面は、前記成形品との前記接触面に繋がるとともに前記接触面に近くなるに従って前記側壁部の前記先端寄りに位置する斜面となっている請求項1又は2に記載の金型構造。
【請求項4】
前記第2入れ子における前記成形品との前記接触面のうち、前記成形品における前記側壁部の前記基端に対応する箇所では、前記側壁部の前記基端の湾曲に沿って面接触する曲面となっている請求項1~3のいずれか一項に記載の金型構造。
【請求項5】
本体と側壁部と巻き込み部とを有する成形品であって、前記本体は板状に形成され、前記側壁部は前記本体の外縁に同本体の厚さ方向の一方側に向けて突出するよう形成されており、前記巻き込み部は前記側壁部の突出方向の先端で前記側壁部の内側に向けて突出するよう形成されている成形品の製造に用いられ、
第1入れ子及び第2入れ子が配置された可動型と固定型との型締め時に前記可動型と前記固定型との間に溶融した樹脂を射出し、前記可動型と前記固定型との間で固化した上記樹脂によって前記成形品が形成されたとき、前記第1入れ子が前記成形品の内側で前記側壁部に対応して位置するとともに前記第2入れ子が前記成形品の内側で前記本体に対応して位置し、
前記固定型と前記可動型との型開き時、前記第2入れ子を前記第1入れ子に対し離れる方向に相対移動させることによって前記第1入れ子を前記成形品の内側から引き抜き、その状態で成形品を前記第2入れ子から取り外す成形品の製造方法において、
前記成形品における前記側壁部の基端は、湾曲することによって前記成形品の本体に繋がっており、
前記第2入れ子は、型締め時に前記樹脂によって形成された前記成形品に対する接触面の縁が前記側壁部の前記基端における前記本体と繋がる箇所よりも前記側壁部の前記先端寄りに位置するよう形成されている成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型構造及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の射出成形によって製造される成形品として、本体と側壁部と巻き込み部とを有するものが知られている。上記本体は板状に形成されている。上記側壁部は、本体の外縁に同本体の厚さ方向の一方側に向けて突出するよう形成されている。上記巻き込み部は、側壁部の突出方向の先端に位置しており、その側壁部の内側に向けて突出するよう形成されている。
【0003】
こうした成形品を製造するための金型構造は、特許文献1に示されるように、型締め及び型開きされる固定型及び可動型と、可動型に配置された第1入れ子及び第2入れ子と、を備えている。上記金型構造において、型締めされた固定型と可動型との間には、溶融した樹脂が射出される。そして、固定型と可動型との間で固化した上記樹脂によって成形品が形成されたとき、その成形品の内側に第1入れ子及び第2入れ子が位置する。詳しくは、第1入れ子は成形品の側壁部に対応して位置し、第2入れ子は成形品の本体に対応して位置する。その後、固定型と可動型とを型開きするとき、第2入れ子が第1入れ子に対し離れる方向に相対移動することによって成形品の内側から引き抜かれ、その状態で成形品が第2入れ子から取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成形品としては、側壁部の基端を湾曲させて本体に繋ぐようにしたものもある。この場合、成形品における側壁部が本体から外側にはみ出る幅が大きくなる。こうした成形品を上記金型構造を用いて製造すると、次のようなことが生じる。
【0006】
すなわち、固定型と可動型との型開き時であって、第1入れ子が第2入れ子から離れる方向に相対移動して成形品から抜き出されるとき、成形品の側壁部が第1入れ子によって引っ張られる。このように引っ張る力が側壁部に作用するとき、成形品における第2入れ子と接する箇所の縁に応力が集中する。そして、成形品における側壁部が本体から外側にはみ出る幅が大きくなるほど、上記応力が大きくなって成形品が変形するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する金型構造は、次のような成形品を製造する際に用いられる。上記成形品は、本体と側壁部と巻き込み部とを有する。本体は、板状に形成される。側壁部は、本体の外縁に同本体の厚さ方向の一方側に向けて突出するよう形成される。巻き込み部は、側壁部の突出方向の先端で同側壁部の内側に向けて突出するよう形成される。上記金型構造は、型締め及び型開きされる固定型及び可動型と、可動型に配置された第1入れ子及び第2入れ子とを備える。同金型構造では、型締めされた固定型と可動型との間に溶融した樹脂を射出する。固定型と可動型との間で固化した上記樹脂によって成形品が形成されたとき、第1入れ子は成形品の内側で側壁部に対応して位置し、第2入れ子は成形品の内側で本体に対応して位置する。固定型と可動型とを型開きするとき、第2入れ子が第1入れ子に対し離れる方向に相対移動することによって第1入れ子が成形品の内側から引き抜かれ、その状態で成形品が第2入れ子から取り外される。上記成形品における側壁部の基端は、湾曲することによって成形品の本体に繋がっている。上記第2入れ子は、型締め時に上記樹脂によって形成された成形品に対する接触面の縁が側壁部の基端における本体と繋がる箇所よりも側壁部の先端寄りに位置するよう形成されている。
【0008】
上記課題を解決する成形品の製造方法は、本体と側壁部と巻き込み部とを有する成形品の製造に用いられる。本体は、板状に形成される。側壁部は、本体の外縁に同本体の厚さ方向の一方側に向けて突出するよう形成される。巻き込み部は、側壁部の突出方向の先端で側壁部の内側に向けて突出するよう形成される。上記製造方法では、第1入れ子及び第2入れ子が配置された固定型と可動型との型締め時に、可動型と固定型との間に溶融した樹脂を射出する。可動型と固定型との間で固化した上記樹脂によって成形品が形成されたとき、第1入れ子が成形品の内側で側壁部に対応して位置するとともに第2入れ子が成形品の内側で本体に対応して位置する。そして、固定型と可動型との型開き時には、第2入れ子を第1入れ子に対し離れる方向に相対移動させることにより、第1入れ子が成形品の内側から引き抜かれる。その状態で、成形品が第2入れ子から取り外される。上記成形品における側壁部の基端は、湾曲することによって前記成形品の本体に繋がっている。第2入れ子は、型締め時に上記樹脂によって形成された成形品に対する接触面の縁が側壁部の基端における本体と繋がる箇所よりも側壁部の先端寄りに位置するよう形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の金型構造の固定型と可動型とを型開きする途中の状態を示す略図である。
【
図3】
図1の金型構造の固定型と可動型とを型開きした状態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、金型構造及び成形品の製造方法の一実施形態について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、樹脂製の成形品11を製造するための金型構造を示している。成形品11としては、例えば車両におけるアームレスト及びインストルメントパネルといった部品の表皮があげられる。また、成形品11を形成する樹脂としては、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)及びポリ塩化ビニル(PVC)といった樹脂を用いることが考えられる。
【0011】
<成形品11>
成形品11は、本体12と側壁部13と巻き込み部14とを有している。本体12は、板状に形成されている。側壁部13は、本体12の外縁に同本体12の厚さ方向の一方側(
図1の下側)に向けて突出するよう形成されている。成形品11における側壁部13の基端13a、すなわち側壁部13における
図1での上端は、湾曲することによって成形品11の本体12に繋がっている。巻き込み部14は、側壁部13の突出方向の先端に位置し、その側壁部13の内側に向けて突出するよう形成されている。巻き込み部14は、側壁部13の内側において複数箇所で上下方向に折り返されている。
【0012】
<金型構造>
成形品11を製造するための金型構造は、型締め及び型開きされる可動型15及び固定型16と、可動型15に配置された第1入れ子17及び第2入れ子18と、を備えている。第1入れ子17及び第2入れ子18は、可動型15から固定型16に向けて突出しており、可動型15に対し
図1の上下方向、言い換えれば固定型16に対し接近離間する方向に相対移動することが可能となっている。第2入れ子18は、第1入れ子17の内部を上下方向に通過しており、第1入れ子17に対し上下方向に相対移動することが可能となっている。
【0013】
上記金型構造では、型締めされた可動型15と固定型16との間、より詳しくは可動型15における第1入れ子17及び第2入れ子18と固定型16との間に、溶融した樹脂を射出することが可能となっている。この樹脂が固化することにより、可動型15における第1入れ子17及び第2入れ子18と固定型16との間に、上記成形品11が形成される。
【0014】
次に、第1入れ子17及び第2入れ子18について詳しく説明する。
<第1入れ子17>
第1入れ子17は成形部17aを備えている。成形部17aは、上記樹脂によって形成された成形品11の内部に位置し、成形品11における側壁部13の内形に対応した形状に形成されている。成形部17aにおける第2入れ子18と接する面17bは、成形品11に近くなるに従って側壁部13寄りに位置するように傾斜している。
【0015】
<第2入れ子18>
第2入れ子18は、型締め時に上記樹脂によって形成された成形品11に接触する接触面18aを備えている。第2入れ子18は、接触面18aの縁が成形品11の側壁部13の基端13aにおける本体12と繋がる箇所よりも側壁部13の先端寄り、すなわち
図1の左寄りに位置するよう形成されている。より詳しくは、第2入れ子18は、接触面18aの縁が成形品11における巻き込み部14の内端よりも側壁部13の先端寄りに位置するよう形成されている。
【0016】
第2入れ子18における第1入れ子17と接する側面18bは、成形品11との接触面18aに繋がるとともに、接触面18aに近くなるに従って側壁部13寄りに位置する斜面となっている。これにより、接触面18aの縁が成形品11における巻き込み部14の内端よりも側壁部13寄りに位置する。第2入れ子18の側面18bは、第1入れ子17における成形部17aの面17bと接している。
【0017】
第2入れ子18における上記成形品11との接触面18aのうち、成形品11における側壁部13の基端13aに対応する箇所では、側壁部13の基端13aの湾曲に沿って面接触する曲面となっている。
【0018】
次に、成形品11の製造方法について説明する。
図1に示すように型締めされた可動型15と固定型16との間、より詳しくは可動型15における第1入れ子17及び第2入れ子18と固定型16との間に、溶融した樹脂が射出される。可動型15と固定型16との間で固化した上記樹脂によって成形品11が形成されたとき、第1入れ子17は成形品11の内側で側壁部13に対応して位置する。このとき、第2入れ子18は、成形品11の内側で本体12に対応して位置する。ただし、第2入れ子18の側面18b付近の箇所は、成形品11の本体12側から側壁部13の基端13a側にはみ出している。
【0019】
その後、
図2に示すように、可動型15と固定型16とが型開きされる。この型開きの初期には、可動型15が固定型16に対し離間するとともに、第1入れ子17及び第2入れ子18が一体的に可動型15に対し離間する。上記型開きの終期には、第1入れ子17のみ可動型15に対する離間が停止されることにより、
図3に示すように第2入れ子18が第1入れ子17に対し離れる方向(
図3の下方)に相対移動する。これにより、第1入れ子17が成形品11の内側から引き抜かれる。
【0020】
第1入れ子17が成形品11の内側から引き抜かれた後、接触面18aに接している成形品11が第2入れ子18から取り外される。なお、第2入れ子18からの成形品11の取り外しを、第2入れ子18からのエア噴出によって行うようにしてもよい。この場合、成形品11にアンダーカット部、すなわち成形品11を第2入れ子18から取り外す際の引っ掛かりとなる部分がある場合でも、第2入れ子18からの成形品11の取り外しを行うことが可能となる。
【0021】
次に、本実施形態における金型構造及び成形品11の製造方法の作用効果について説明する。
(1)型開きに伴って第2入れ子18が第1入れ子17に対し離間するとき、
図2及び
図3に示すように、成形品11の内側から第1入れ子17が引き抜かれる。これにより、側壁部13が第1入れ子17の成形部17aによって
図3の矢印方向に引っ張られる。このように引っ張る力が側壁部13に作用するとき、成形品11における第2入れ子18と接する箇所の縁、すなわち成形品11における上記接触面18aの縁に対応する箇所Pに応力が集中する。第2入れ子18における上記接触面18aの縁は、成形品11の側壁部13の基端13aにおける本体12と繋がる箇所よりも側壁部13の先端寄りに位置している。このため、成形品11における側壁部13の本体12から外側にはみ出る幅が大きいとしても、成形品11における上記箇所Pでの上記応力の集中が抑制される。従って、上記応力によって成形品11における上記箇所Pが変形することを抑制できる。
【0022】
(2)第2入れ子18における成形品11に対する接触面18aの縁は、成形品11における巻き込み部14の内端よりも側壁部13寄りに位置している。これにより、側壁部13が第1入れ子17の成形部17aによって
図3の矢印方向に引っ張られたとき、成形品11における上記箇所Pで上記応力が集中することをより効果的に抑制することができる。
【0023】
(3)第2入れ子18における第1入れ子17の面17bと接する側面18bは、成形品11との接触面18aに繋がるとともに上記接触面18aに近くなるに従って側壁部13寄りに位置する斜面となっている。これにより、第2入れ子18における成形品11に対する接触面18aの縁を、成形品11の側壁部13の基端13aにおける本体12と繋がる箇所よりも側壁部13の先端寄りに位置させることが容易になる。より詳しくは、第2入れ子18における成形品11に対する接触面18aの縁を、成形品11における巻き込み部14の内端よりも側壁部13寄りに位置させることが容易になる。
【0024】
(4)第2入れ子18における成形品11との接触面18aのうち、成形品11における側壁部13の基端13aに対応する箇所では、側壁部13の湾曲する基端13aに沿って面接触する曲面となっている。このため、型開きに伴う第2入れ子18に対する第1入れ子17の離間時に側壁部13が第1入れ子17の成形部17aで引っ張られるとき、成形品11における側壁部13の基端13aに対応する箇所Pが第2入れ子18の上記曲面と面接触する。これにより、上記箇所Pで応力集中が生じることを抑制できる。
【0025】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第2入れ子18の側面18bは、必ずしも斜面にする必要はない。例えば、第2入れ子18と第1入れ子17との互いに接する側面18bと面17bとに代えて、
図4に示すように第2入れ子18と第1入れ子17とに面18cと面17cとを形成する。そして、面18cと面17cとで第2入れ子18と第1入れ子17とが互いに接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
11…成形品
12…本体
13…側壁部
13a…基端
14…巻き込み部
15…可動型
16…固定型
17…第1入れ子
17a…成形部
17b…面
17c…面
18…第2入れ子
18a…接触面
18b…側面
18c…面