(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ターゲット照射システム、及び固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法
(51)【国際特許分類】
G21G 1/10 20060101AFI20240618BHJP
G21K 5/08 20060101ALI20240618BHJP
G21K 5/00 20060101ALI20240618BHJP
G21F 7/00 20060101ALI20240618BHJP
H05H 13/00 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
G21G1/10
G21K5/08 R
G21K5/00 S
G21F7/00 Z
H05H13/00
(21)【出願番号】P 2021509616
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013835
(87)【国際公開番号】W WO2020196793
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019063353
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博紀
(72)【発明者】
【氏名】ゲラゴメズ フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】越智 重治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 愛実
(72)【発明者】
【氏名】村上 喜信
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬
(72)【発明者】
【氏名】上野 悟史
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄貴
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517258(JP,A)
【文献】特開2018-095967(JP,A)
【文献】特開2011-153827(JP,A)
【文献】松岡 伸吾,六ヶ所村再処理施設の安全設計と安全評価,日本原子力学会誌,Vol.35,No10(1993),日本原子力学会,1993年,p.864-873
【文献】六カ所再処理施設 新規制基準に対する適合性 [溶解槽における臨界事故への対策],日本原燃株式会社,2015年01月21日,p.1-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/10
G21K 5/08
G21K 5/00
G21F 7/00
H05H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層を有する固体ターゲットへ粒子加速器から出射された荷電粒子線を照射して前記金属層の放射性同位元素を生成するターゲット照射システムであって、
前記固体ターゲットを前記荷電粒子線の照射位置にて保持して前記固体ターゲットへの前記荷電粒子線の照射を可能とするターゲット照射装置と、
前記ターゲット照射装置によって前記荷電粒子線の照射が完了した前記固体ターゲットに付着する前記放射性同位元素を
強酸で溶解させる溶解装置と、
前記溶解装置を覆う収容部と、
前記粒子加速器と前記ターゲット照射装置と前記溶解装置と前記収容部とを内部に収容して、前記粒子加速器と前記ターゲット照射装置と前記溶解装置とから放出される放射線を遮蔽する遮蔽シールドと、
前記収容部内の気体を
前記粒子加速器及び前記ターゲット照射装置のうち少なくとも一方に触れないように前記遮蔽シールドの外部へ排気する排気部と、を備える
ターゲット照射システム。
【請求項2】
前記ターゲット照射装置を支持する支持部を更に備え、
前記溶解装置は、前記支持部によって支持されている、
請求項1に記載のターゲット照射システム。
【請求項3】
前記ターゲット照射装置による保持が解除された前記固体ターゲットを、前記溶解装置まで搬送する搬送装置を更に備える、
請求項1又は2に記載のターゲット照射システム。
【請求項4】
前記ターゲット照射装置から前記溶解装置へ前記固体ターゲットを搬送する搬送装置と、
制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記金属層への前記荷電粒子線の照射の後、前記ターゲット照射装置に保持された前記固体ターゲットを前記溶解装置へ搬送するように、前記搬送装置を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載のターゲット照射システム。
【請求項5】
前記固体ターゲットを搬送する搬送装置を更に備え、
前記搬送装置は、複数の前記固体ターゲットを支持可能である、請求項1~4の何れか一項に記載のターゲット照射システム。
【請求項6】
前記固体ターゲットを支持する支持装置を更に備え、
前記ターゲット照射装置は、前記荷電粒子線が出射される照射ポートを備え、
前記溶解装置は、溶解液の供給及び回収を行う溶解ポートを備え、
前記支持装置は、前記照射ポートに連結され、且つ、前記溶解ポートに連結される、請求項1~5の何れか一項に記載のターゲット照射システム。
【請求項7】
前記溶解装置は、溶解液の供給及び回収を行う複数の溶解ポートを備える、請求項1~6の何れか一項に記載のターゲット照射システム。
【請求項8】
前記ターゲット照射装置及び前記溶解装置は、建屋に設けられた同一の室内に配置されている、請求項1~7の何れか一項に記載のターゲット照射システム。
【請求項9】
金属層を有する固体ターゲットに付着する当該金属層の放射同位元素を回収する固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法であって、
建屋に設けられた遮蔽室内に配置されたターゲット照射装置によって、前記固体ターゲットへ荷電粒子線を照射して前記固体ターゲットに前記放射性同位元素を生成し、
前記固体ターゲットを搬送可能な搬送装置によって、前記荷電粒子線の照射が完了した前記固体ターゲットを、前記遮蔽室内に配置された溶解装置へ搬送し、
前記溶解装置によって、前記固体ターゲットに付着した前記放射性同位元素を
強酸で溶解させ、
前記溶解装置を覆う収容部内の気体を、粒子加速器と前記ターゲット照射装置と前記溶解装置とから放出される放射線を遮蔽する遮蔽シールドの外部へ
、前記粒子加速器及び前記ターゲット照射装置のうち少なくとも一方に触れないように排気し
、
前記遮蔽シールドは前記粒子加速器と前記ターゲット照射装置と前記溶解装置と前記収容部とを内部に収容する、
固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット照射システム、及び固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、サイクロトロンを内部に収容し、サイクロトロンから放出される放射線が外部に放出されることを抑制する自己シールドを備えた自己シールド型サイクロトロンシステムが知られている。近年、金属層を有するターゲットへ荷電粒子線を照射することで、固体の放射性同位元素(RI:Radio Isotope)を得る装置が開発されている。このような放射性同位元素は、病院等でのPET検査(ポジトロン断層撮影検査)等に使用される放射性薬剤を製造するため用いられる。例えば、特許文献2では、固体の放射性同位元素が付着したターゲットが溶解装置に搬送され、当該溶解装置内にて放射性同位元素を溶解することで、当該RIの回収が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-105293号公報
【文献】特開2014-115229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、荷電粒子線照射後のターゲットは放射化している。従って、ターゲットを照射装置から取り出して速やかに溶解装置で放射性同位元素を溶解させることが求められている。
【0005】
本発明は、ターゲットを照射装置から取り出して速やかに溶解装置で放射性同位元素を溶解させることができるターゲット照射システム、及び固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るターゲット照射システムは、金属層を有する固体ターゲットへ粒子加速器から出射された荷電粒子線を照射して金属層の放射性同位元素を生成するターゲット照射システムであって、建屋に設けられた室内に配置され、固体ターゲットを荷電粒子線の照射位置にて保持して固体ターゲットへの荷電粒子線の照射を可能とするターゲット照射装置と、室内に配置され、ターゲット照射装置によって荷電粒子線の照射が完了した固体ターゲットに付着する放射性同位元素を溶解させる溶解装置と、を備える。
【0007】
本発明に係るターゲット照射システムにおいて、ターゲット照射装置は、固体ターゲットを荷電粒子線の照射位置にて保持して固体ターゲットへの荷電粒子線の照射を可能とする。これにより、固体ターゲットの金属層のうち、荷電粒子線が照射された箇所には、放射性同位元素が形成される。また、溶解装置は、ターゲット照射装置によって荷電粒子線の照射が完了した固体ターゲットに付着する放射性同位元素を溶解させる。これにより、溶解液を回収することで、放射性同位元素を回収することが可能となる。ここで、ターゲット照射装置及び溶解装置は、建屋に設けられた室内に配置される。従って、荷電粒子線を固体ターゲットに照射する工程、及び放射性同位元素を溶解によって回収する工程は、いずれも室内にて行われる。従って、固体ターゲットをターゲット照射装置から取り出して速やかに溶解装置で放射性同位元素を溶解させることができる。
【0008】
ターゲット照射システムは、室の床に対してターゲット照射装置を支持する支持部を更に備え、溶解装置は、支持部によって床に対して支持されていてよい。この場合、ターゲット照射装置及び溶解装置が共通の支持部で支持されるため、両者を近い位置に配置することができる。
【0009】
ターゲット照射システムは、ターゲット照射装置による保持が解除された固体ターゲットを、溶解装置まで搬送する搬送装置を更に備えてよい。この場合、ターゲット照射装置から溶解装置まで固体ターゲットを速やかに搬送することが可能となる。
【0010】
ターゲット照射システムは、室内に設けられ、粒子加速器とターゲット照射装置とを内部に収容して、粒子加速器及びターゲット照射装置から放出される放射線を遮蔽する遮蔽シールドを更に備え、溶解装置は、遮蔽シールド内に設けられていてよい。この場合、遮蔽シールドは、ターゲット照射装置から溶解装置へ固体ターゲットを搬送するときに、放射線を遮蔽することができる。
【0011】
ターゲット照射システムは、ターゲット照射装置から溶解装置へ固体ターゲットを搬送する搬送装置と、制御部を更に備え、制御部は、金属層への荷電粒子線の照射の後、ターゲット照射装置に保持された固体ターゲットを溶解装置へ搬送するように、搬送装置を制御してよい。これにより、搬送装置による固体ターゲットの搬送が、制御部によって自動的に行われる。これにより、作業者に対する被曝を更に抑制することができる。また、制御部が自動的に固体ターゲットの搬送を行うことで、作業時間の短縮を図ることができる。
【0012】
ターゲット照射システムは、室内に設けられ、粒子加速器とターゲット照射装置とを内部に収容して、粒子加速器及びターゲット照射装置から放出される放射線を遮蔽する遮蔽シールドを更に備え、遮蔽シールド内で溶解装置を覆う収容部と、収容部内の気体を遮蔽シールドの外部へ排気する排気部と、を備えてよい。この場合、溶解装置の溶解液が気化した場合には、収容部によってガスが遮蔽シールド内に拡散することが抑制される。また、収容部内のガスは、排気部によって遮蔽シールドの外部へ排出される。これにより、遮蔽シールド内の他の機器が、ガスによって腐食されることを抑制することができる。
【0013】
ターゲット照射システムは、固体ターゲットを搬送する搬送装置を更に備え、搬送装置は、複数の固体ターゲットを支持可能であってよい。この場合、搬送装置は、途中で固体ターゲットの取り外し作業を伴うことなく、複数の固体ターゲットを照射位置及び溶解位置へ搬送することができる。これにより、取り外し作業による被爆の影響を低減することができる。
【0014】
ターゲット照射システムは、固体ターゲットを支持する支持装置を更に備え、ターゲット照射装置は、荷電粒子線が出射される照射ポートを備え、溶解装置は、溶解液の供給及び回収を行う溶解ポートを備え、支持装置は、照射ポートに連結され、且つ、溶解ポートに連結されてよい。この場合、支持装置は、ターゲット照射装置の一部、及び溶解装置の一部として兼用可能となる。
【0015】
溶解装置は、溶解液の供給及び回収を行う複数の溶解ポートを備えてよい。この場合、溶解ポートの取り換え作業を伴うことなく、複数核種の放射性同位元素の溶解工程を行うことができる。
【0016】
ターゲット照射システムは、金属層を有する固体ターゲットへ粒子加速器から出射された荷電粒子線を照射して金属層の放射性同位元素を生成するターゲット照射システムであって、固体ターゲットを荷電粒子線の照射位置にて保持して固体ターゲットへの荷電粒子線の照射を可能とするターゲット照射装置と、ターゲット照射装置によって荷電粒子線の照射が完了した固体ターゲットに付着する放射性同位元素を溶解させる溶解装置と、を備え、ターゲット照射装置及び溶解装置は、建屋に設けられた同一の室内に配置されている。このターゲット照射システムによれば、上述のターゲット照射システムと同様な作用・効果を得ることができる。
【0017】
固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法は、金属層を有する固体ターゲットに付着する当該金属層の放射同位元素を回収する固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法であって、建屋に設けられた遮蔽室内に配置されたターゲット照射装置によって、固体ターゲットへ荷電粒子線を照射して固体ターゲットに放射性同位元素を生成し、固体ターゲットを搬送可能な搬送装置によって、荷電粒子線の照射が完了した固体ターゲットを、遮蔽室内に配置された溶解装置へ搬送し、溶解装置によって、固体ターゲットに付着した放射性同位元素を溶解させる。この回収方法によれば、荷電粒子線を固体ターゲットに照射する工程、固体ターゲットを搬送する工程、及び放射性同位元素を溶解によって回収する工程は、いずれも遮蔽室内にて行われる。従って、固体ターゲットをターゲット照射装置から取り出して速やかに溶解装置で放射性同位元素を溶解させることができる。また、各工程において放射線を遮蔽することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ターゲットを照射装置から取り出して速やかに溶解装置で放射性同位元素を溶解させることができるターゲット照射システム、及び固体ターゲットからの放射性同位元素の回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るターゲット照射システムを備える自己シールド型サイクロトロンシステムを示す概略構成図である。
【
図4】制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】ターゲット照射システムの動作を示す拡大図である。
【
図6】ターゲット照射システムの動作を示す拡大図である。
【
図7】ターゲット照射システムの動作を示す拡大図である。
【
図8】ターゲット照射システムの動作を示す拡大図である。
【
図9】ターゲット照射システムの動作を示す拡大図である。
【
図10】変形例に係るターゲット照射システムを備える自己シールド型サイクロトロンを示す拡大図である。
【
図11】変形例に係るターゲット照射システムを示す概念構成図である。
【
図12】変形例に係るターゲット照射システムを示す概略構成図である。
【
図13】
図12に示すターゲット照射システムの主要部を示す概略図である。
【
図14】ターゲットエクスチェンジャの具体的な構造の一例を示す斜視図である。
【
図15】支持装置が照射ポートに押し付けられた状態を示す断面図である。
【
図16】支持装置が溶解ポートに押し付けられた状態を示す断面図である。
【
図18】ターゲット照射システムの動作を示す概略図である。
【
図19】ターゲット照射システムの動作を示す概略図である。
【
図20】ターゲット照射システムの動作を示す概略図である。
【
図21】ターゲット照射システムの動作を示す概略図である。
【
図22】ターゲット照射システムの動作を示す概略図である。
【
図23】ターゲット照射システムの動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示されるように、自己シールド型サイクロトロンシステム100は、建屋150の内部に設けられるシステムである。本実施形態に係る自己シールド型サイクロトロンシステム100は、荷電粒子線を用いて放射性同位元素(以下、RIと称する場合がある)を製造するシステムである。自己シールド型サイクロトロンシステム100は、例えばPET用サイクロトロンとして使用可能であり、当該システムで製造されたRIは、例えば放射性同位元素標識化合物(RI化合物)である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)の製造に用いられる。病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)に使用される放射性同位元素標識化合物としては、
18F-FLT(フルオロチミジン)、
18F-FMISO(フルオロソニダゾール)、
11C-ラクロプライド等がある。
【0022】
自己シールド型サイクロトロンシステム100は、サイクロトロン2(粒子加速器)と、ターゲット照射システム3と、遮蔽シールド4と、を備えている。自己シールド型サイクロトロンシステム100は、建屋150の内部のサイクロトロン室152において、当該建屋の床151上に設置されている。サイクロトロン室152は、コンクリート(遮蔽壁)で覆われた部屋である。従って、使用者は、自己シールド型サイクロトロンシステム100を用いることで、建屋内にて放射性同位元素をその場で取得することができる。
【0023】
サイクロトロン2は、荷電粒子線を出射する加速器である。サイクロトロン2は、イオン源から荷電粒子を加速空間内に供給し、加速空間内の荷電粒子を加速して荷電粒子線を出力する円形加速器である。サイクロトロン2は、一対の磁極と、真空箱と、これらの一対の磁極及び真空箱を取り囲む環状のヨークとを有している。一対の磁極は、一部が真空箱内で主面同士が所定間隔空けて対面している。これらの一対の磁極の隙間内で、荷電粒子が多重加速される。荷電粒子としては、例えば陽子、重粒子(重イオン)などが挙げられる。本実施形態では、サイクロトロン2は、荷電粒子線を出射する複数のポート2aを備えている。複数のポート2aの一つに、後述のターゲット照射装置20が形成される。サイクロトロン2は、加速空間内の荷電粒子線の軌道を調整して、所望のポート2aから荷電粒子線を取り出す。
【0024】
遮蔽シールド4は、室内(サイクロトロン室152内)に設けられ、サイクロトロン2と後述のターゲット照射装置20とを内部に収容して、サイクロトロン2及び後述のターゲット照射装置20から放出される放射線を遮蔽する。遮蔽シールド4は、建屋内に配置され、サイクロトロン2を内部に収容し、サイクロトロン2から放出される放射線がサイクロトロン室152に放出されることを抑制する。遮蔽シールド4は、サイクロトロン2を全方向から覆うことで、全方向において放射線を遮蔽することができる。本実施形態では、遮蔽シールド4は六面体の箱形構造を有しているが、形状は特に限定されない。遮蔽シールド4は、建屋150の内部空間(サイクロトロン室152)と、自己シールド型サイクロトロンシステム100の内部空間120とを隔てている。建屋150の内部空間は、他の機器が設置されたり、作業者などが通行することができる空間として構成されてもよい。従って、建屋の室内に単にサイクロトロン2を配置したものと、本実施形態の自己シールド型サイクロトロンシステム100とは異なっており、建屋の部屋を構成する周囲の壁は、遮蔽シールド4には該当しない。遮蔽シールド4の壁は、例えば、ポリエチレン、鉄、鉛、重コンクリートなどの材質によって構成される。遮蔽シールド4内には、サイクロトロン2の他、当該サイクロトロン2を運転させるための真空ポンプや配線等も配置されている。また、遮蔽シールド4内には、ターゲット照射システム3の構成要素も配置されている。従って、遮蔽シールド4は、サイクロトロン室152の床151に対して後述のターゲット照射装置20を支持する支持部として機能する。後述の溶解装置21は、支持部として機能する遮蔽シールド4によって床151に対して支持される。以上のような構成により、後述のターゲット照射装置20及び後述の溶解装置21は、建屋150に設けられた同一の室内(サイクロトロン室152内)に配置されている。
【0025】
ターゲット照射システム3は、固体ターゲット10に対して荷電粒子線を照射し、当該照射によって生成された放射性同位元素を溶解させて回収する部分である。ターゲット照射システム3は、サイクロトロン2の外周部付近に形成されており、遮蔽シールド4内に配置されている。ターゲット照射システム3で得られた放射性同位元素を含む溶解液は、輸送管161を介して、溶解液中の放射性同位元素の精製を行う精製装置や薬剤の合成を行う合成装置などの装置160へ送られる。
【0026】
図2を参照して、固体ターゲット10について説明する。固体ターゲット10は、ターゲット基板13と、金属層11と、を備える。固体ターゲット10は、具体的には、
図2に示すように、金属板で構成されるターゲット基板13上に、ターゲット材料としての金属層11が形成される。なお、金属層11は、純度の高い金属の層に限らず、金属酸化物の層でもよい。当該ターゲット基板13を装置にセットして、金属層11に荷電粒子線Bが照射されることにより、照射された部分に微量の放射性同位元素12が生成する。これにより金属層11中に放射性同位元素12が含有される。ターゲット基板13の材料として、溶解液で溶解しない材料が採用され、例えば、Au、Ptなどが採用される。
図2に示すターゲット基板13は円板状に形成されているが、形状や厚さは特に限定されない。ターゲット材料である金属層11の材料として、例えば、
64Ni、
89Y、
100Mo、
68Znなどが挙げられる。当該金属層11に対応して生成される放射性同位元素12として、
64Cu、
89Zr、
99mTc、
68Gaなどが挙げられる。金属層11は、ターゲット基板13の表面10aにめっき処理を施すことによって形成される。また、めっき処理に限らず、板状の金属層をターゲット基板13に貼り付けてもよい。
図2に示す金属層11は、ターゲット基板13の中央位置に円形状に形成されているが、形状や位置は特に限定されない。なお、ターゲット基板13の裏面10bには、金属層11に荷電粒子線Bが照射されるとき、冷却水などが供給される。これにより、荷電粒子線Bの照射による金属層11(及びターゲット基板13)の発熱を、冷却水等で吸収することができる。
【0027】
次に、
図3を参照して、ターゲット照射システム3の構成の詳細について説明する。ターゲット照射システム3は、金属層11を有する固体ターゲット10へサイクロトロン2から出射された荷電粒子線を照射して金属層11の放射性同位元素を生成する。ターゲット照射システム3は、ターゲット照射装置20と、溶解装置21と、搬送装置22と、制御部50を備える。
【0028】
ターゲット照射装置20は、建屋150に設けられた室内(サイクロトロン室152内)に配置され、固体ターゲット10を荷電粒子線Bの照射位置にて保持して固体ターゲット10への荷電粒子線Bの照射を可能とする装置である。ターゲット照射装置20は、金属層11を有する固体ターゲット10を荷電粒子線Bの照射位置にて保持する。また、ターゲット照射装置20は、固体ターゲット10に対する荷電粒子線Bの照射が終了したら、固体ターゲット10の保持を解除する。具体的には、ターゲット照射装置20は、固定ユニット23と、可動ユニット24と、を備える。ターゲット照射装置20は、固体ターゲット10を固定ユニット23と可動ユニット24とで挟み込むことによって、固体ターゲット10を照射位置RPに保持する。固定ユニット23及び可動ユニット24は、いずれも遮蔽シールド4内に収容されている。
【0029】
固定ユニット23は、サイクロトロン2の外周部に固定された筒状の部材である。固定ユニット23は、サイクロトロン2から出射される荷電粒子線Bの照射軸BLに沿って延びた状態で、サイクロトロン2の外周から突出した状態で設けられる。固定ユニット23は、荷電粒子線Bの照射軸BLに対応する位置に当該荷電粒子線Bを通過させるための内部空間26を備えている。内部空間26は、照射軸BLを中心線として、当該照射軸BLに沿って延びるように形成される。固定ユニット23及び内部空間26は、水平方向に対して、下方へ傾斜するように配置されている。
【0030】
固定ユニット23は、下端側に、可動ユニット24の上面と対向する対向面23aとして水平方向に広がる面を有している。固定ユニット23は、対向面23aの位置で固体ターゲット10を保持する。対向面23aには、Oリング等のシール部材が設けられている。対向面23aは、シール部材を介して固体ターゲット10と当接することで、固体ターゲット10に対するシール面としても機能する。本実施形態では、対向面23aにおいて内部空間26が開口する箇所(さらにそのうちの照射軸BLの位置)が照射位置RPに該当する。従って、ターゲット照射装置20が固体ターゲット10を保持するときは、固体ターゲット10のうち、金属層11が内部空間26の開口に配置されるように保持する。
【0031】
固定ユニット23は、内部空間26の中途位置に、真空ホイル25を備えている。真空ホイル25は、内部空間26のうち、真空ホイル25より上流側の領域を真空に保つ。
【0032】
固定ユニット23は、照射位置に配置された荷電粒子線B及び真空ホイル25にヘリウムなどのガスを吹き付ける流路27を有している。流路27は、メイン流路27aと、当該メイン流路27aから分岐する分岐流路27b,27cを有する。分岐流路27bは、真空ホイル25へ向かって延びており、当該真空ホイル25にガスを吹き付ける。分岐流路27cは、固体ターゲット10の照射位置RPへ向けて延びており、保持された固体ターゲット10に対してガスを吹き付ける。
【0033】
可動ユニット24は、固定ユニット23に対して上下方向に進退する。可動ユニット24は、固体ターゲット10を搬送トレイ60に設置する際には、固定ユニット23から下方へ離間した位置に配置される。可動ユニット24は、固体ターゲット10を照射位置RPに保持する際には、固定ユニット23との間で固体ターゲット10を挟み込む位置に配置される(
図5参照)。
【0034】
可動ユニット24は、上下方向に延びる円柱状の形状を有している。可動ユニット24は、外周面の一部において、上下方向へ移動する駆動機構28と接続されている。可動ユニット24の上端には、上方へ突出する小径部29が形成されている。小径部29の径は、少なくとも後述の搬送トレイ60の内周部の径よりも小さい。これにより、小径部29は、搬送トレイ60の内周側の貫通孔を通過して、固体ターゲット10と当接し、当該固体ターゲット10を上方の固定ユニット23に押し付ける。
【0035】
可動ユニット24は、小径部29の上端側に、固定ユニット23の対向面23aと対向する対向面24aとして水平方向に広がる面を有している。対向面24aには、Oリング等のシール部材が設けられている。対向面24aは、シール部材を介して固体ターゲット10と当接することで、固体ターゲット10に対するシール面としても機能する。ターゲット照射装置20が固体ターゲット10を保持するときは、対向面23aと対向面24aとが固体ターゲット10を挟み込む(
図5参照)。
【0036】
なお、可動ユニット24は、対向面24aで開口する内部空間31を有する。内部空間31は、固体ターゲット10を冷却するための冷却媒体を貯留するための空間である。内部空間31には、冷却媒体を供給するための供給管32と、冷却媒体を排出するための排出管33と、が接続されている。
【0037】
溶解装置21は、室内(サイクロトロン室152内)に配置され、ターゲット照射装置20によって荷電粒子線Bの照射が完了した固体ターゲット10に付着する放射性同位元素を溶解させる装置である。溶解装置21は、固体ターゲット10における放射性同位元素を含有する金属層11を溶解させる。溶解装置21は、固定ユニット40と、可動ユニット41と、を備える。溶解装置21は、固体ターゲット10を固定ユニット40と可動ユニット41とで挟み込んで保持する。溶解装置21は、固体ターゲット10を保持した状態にて、少なくとも金属層11に対して溶解液を供給し、当該溶解液に放射性同位元素を含む金属層11の金属を溶解させ、当該溶解液を放射性同位元素ごと回収する。溶解液として、塩酸、硝酸等が採用される。固定ユニット40及び可動ユニット41は、遮蔽シールド4内に収容されている。
【0038】
固定ユニット40は、ターゲット照射装置20の固定ユニット23から、サイクロトロン2の反対側へ離間する位置に配置される。固定ユニット40は、上下方向に延びる円筒状の本体部48と、本体部48を外周側で支持する支持部49と、を備える。本体部48は、下端側に、可動ユニット41と対向する対向面40aとして水平方向に広がる面を有している。対向面40aの位置に固体ターゲット10が保持される。対向面40aには、Oリング等のシール部材が設けられている。対向面40aは、シール部材を介して固体ターゲット10と当接することで、固体ターゲット10に対するシール面としても機能する。対向面40aの位置に固体ターゲット10が保持される。
【0039】
本体部48は、対向面40aで開口する内部空間42を有する。内部空間42は、固体ターゲット10の金属層11を溶解させるための溶解液を貯留するための溶解槽である。内部空間42には、溶解液を供給するための供給・吸引管43と、溶解液の吸引及び内部空間42内のガスを吸引する吸引管44と、が接続されている。対向面40aで開口する内部空間42の直径は、少なくとも固体ターゲット10の直径よりも小さく、金属層11の直径よりも大きい。なお、対向面40a自体の直径は特に限定されないが、本実施形態では固体ターゲット10の直径よりも小さくなっている。
【0040】
支持部49は、本体部48の外周面から径方向外側へ広がる端面壁を有する円筒状の部材である。支持部49は、中央位置に本体部48を挿入するための貫通孔49aを備える。本体部48の上端部付近には、フランジ部が形成されている。このフランジ部が本体部48の貫通孔49aの上縁部に係合する。
【0041】
可動ユニット41は、固定ユニット40に対して上下方向に進退する。可動ユニット41は、固体ターゲット10を固定ユニット40へ取り付ける際には、固定ユニット40から下方へ離間した位置に配置される。可動ユニット41は、固体ターゲット10の金属層11を溶解装置21で溶解する際には、固定ユニット40との間で固体ターゲット10を挟み込む位置に配置される(
図9参照)。
【0042】
可動ユニット41は、本体部46と、本体部46の上端側に設けられた受皿部47と、を備える。本体部46は、上下方向に延びる円柱状の形状を有している。本体部46は、外周面の一部において、上下方向へ移動する駆動機構(不図示)と接続されている。本体部46の上端には、受皿部47を支持するための溝構造が形成されている。
【0043】
受皿部47は、本体部46の上端にて水平方向に広がる底壁部47aと、底壁部47aの外周縁から上方へ立ち上がる側壁部47bと、を備えている。底壁部47aは、固定ユニット40の対向面40aと対向する対向面41aとして水平方向に広がる面を有している。対向面41aは、固体ターゲット10と当接する。溶解装置21が固体ターゲット10を保持するときは、対向面40aと対向面41aとが固体ターゲット10を挟み込む(
図9参照)。側壁部47bの内径は、固体ターゲット10の直径よりも大きい。また、固体ターゲット10を保持しているとき、側壁部47bの上端部は、固体ターゲット10よりも高い位置に配置される。従って、固体ターゲット10の金属層11を溶解している際に溶解液が内部空間42から漏れた場合、受皿部47が溶解液を受ける。なお、底壁部47aの下面側には、本体部46の溝構造と嵌合するための凹凸構造を有する。
【0044】
溶解装置21において、溶解液と接触する本体部48及び受皿部47は、交換可能なディスポーザブル部品として構成されている。すなわち、本体部48は、支持部49に対して着脱可能に取り付けられている。受皿部47は、本体部46に対して着脱可能に取り付けられている。ここで、「着脱可能」とは、一度取り付けても、作業者が通常のメンテナンス作業で容易に取り外し可能な取り付け態様であることを示す。例えば、着脱可能な取り付け構造としては、ボルト接合によって取り付ける構造や、溶解中に外れない程度の強度で嵌合、係合させることで取り付ける構造などが挙げられる。例えば、溶接や溶着などの固定構造は、着脱可能な態様に該当しない。交換可能な本体部48及び受皿部47の材質は、例えばテフロン(登録商標)などの耐酸性が高いものを用いることができる。
【0045】
搬送装置22は、ターゲット照射装置20による保持が解除された固体ターゲット10を、溶解装置21まで搬送する装置である。搬送装置22は、ターゲット照射装置20から溶解装置21へ固体ターゲット10を搬送する。搬送装置22は、遮蔽シールド4内に配置される。搬送装置22は、固体ターゲット10を載置させた状態で搬送する搬送トレイ60と、搬送トレイ60を駆動する搬送駆動部61と、を備える。搬送トレイ60は、上面側に固体ターゲット10を支持するための支持部を有する円環状の部材である。搬送トレイ60は、上面における内周側の縁部に全周に渡って形成された溝部を有しており、当該溝部に固体ターゲット10の下面側の外周縁を載せる。搬送駆動部61は、図示されない駆動源及び駆動力伝達機構の組み合わせによって構成される。搬送駆動部61は、少なくとも、荷電粒子線照射後の固体ターゲット10を溶解装置21へ搬送するときに、搬送トレイ60をターゲット照射装置20の位置から水平方向へ移動させることで、溶解装置21の位置へ搬送する。搬送駆動部61は、ターゲット照射装置20の固定ユニット23と可動ユニット24との間の領域から、溶解装置21の固定ユニット40と可動ユニット41との間の領域へ、搬送トレイ60を搬送する。なお、搬送駆動部61は、回転モータ及びリニアモータなどの公知の駆動源と、ギア及びロッドなどの駆動力伝達機構を用いて構成されていればよい。搬送駆動部61は、他の部材との干渉を避けることのでき、且つ所望の動作を行えるように構成されていれば、どのような構成であってもよい。なお、各段階における搬送トレイ60の位置については、後述の動作の説明の際に詳細に説明する。
【0046】
制御部50は、自己シールド型サイクロトロンシステム100を制御する。制御部50は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等から構成されている。制御部50は、装置内の各センサーからの検知信号、及びROMに保存されたプログラムに基づき制御内容を決定し、自己シールド型サイクロトロンシステム100内の各構成要素を制御する。なお、制御部50は、一つの処理装置によって構成されていなくともよく、複数の処理装置によって構成されてよい。制御部50は、遮蔽シールド4内に配置されてもよく、遮蔽シールド4外に配置されてもよい。
【0047】
制御部50は、照射制御部51と、保持制御部52と、溶解制御部53と、搬送制御部54と、を備える。照射制御部51は、主にサイクロトロン2を制御し、サイクロトロン2による荷電粒子線Bの照射に関する動作を制御する。保持制御部52は、主にターゲット照射装置20を制御し、ターゲット照射装置20による固体ターゲット10の保持に関する動作を制御する。溶解制御部53は、主に溶解装置21を制御し、固体ターゲット10の金属層11を溶解させることに関する動作を制御する。搬送制御部54は、主に搬送装置22を制御し、固体ターゲット10の搬送に関する動作を制御する。搬送制御部54は、金属層11への荷電粒子線Bの照射の後、ターゲット照射装置20に保持された固体ターゲット10を溶解装置21へ搬送するように、搬送装置22を制御する。
【0048】
次に、
図3~
図9を参照して、ターゲット照射システム3の動作について、制御部50による制御処理の内容と共に説明する。
図4は、制御部50の制御処理の内容を示すフローチャートである。
図4~
図9は、動作中の各段階におけるターゲット照射システム3の状態について示す図である。なお、説明のため、
図4~9では、制御部50及び搬送駆動部61の表示を省略している。また、説明に用いられない符号についても適宜省略している場合がある。
【0049】
図4に示すように、制御部50は、固体ターゲット10をターゲット照射システム3にセットするための処理を行う(ステップS10)。S10の処理では、制御部50は、ターゲット照射装置20、溶解装置21、及び搬送装置22を初期状態の位置に配置する。制御部50は、各構成要素の駆動部を駆動させることで、ターゲット照射システム3を
図3に示す状態とする。この状態では、可動ユニット24は固定ユニット23から下方へ離間した位置に配置される。可動ユニット41は、固定ユニット40から下方へ離間した位置に配置される。搬送トレイ60は、固定ユニット23から下方へ離間した位置であって、基準高さの位置に配置される。ここで、「基準高さ」とは、高さ方向において、固定ユニット23と可動ユニット24との間であり、且つ固定ユニット40と可動ユニット41との間の、所定の高さ位置であるものとする。当該高さ位置では、搬送トレイ60は、水平方向に移動しても各ユニット23,24,40,41と干渉しない。制御部50は、作業者に対して、固体ターゲット10をセット可能な状態となったことをモニタ等通知してもよい。作業者が搬送トレイ60に固体ターゲット10を載せたことを検知したら、制御部50は、固体ターゲット10のセットが完了したことを把握する。制御部50は、センサーによる検知、または作業者の入力によって、固体ターゲット10のセットが完了したことを検知してよい。
【0050】
次に、制御部50は、固体ターゲット10を荷電粒子線Bの照射位置RPにて保持する処理を行う(ステップS20:
図4)。S20では、制御部50の保持制御部52は、可動ユニット24の駆動機構28を制御することにより、可動ユニット24を上方へ移動させる。これにより、
図5に示すように、固体ターゲット10が照射位置RPにて、固定ユニット23と可動ユニット24とに挟まれた状態となる。なお、可動ユニット24が上方へ移動する過程で、搬送トレイ60に載置された固体ターゲット10は、当該搬送トレイ60の貫通孔を下方から通過して来た可動ユニット24に支持される。このとき、搬送トレイ60は、可動ユニット24に支持された状態で上昇してよい。あるいは、搬送トレイ60は、可動ユニット24と共に上昇するように駆動してもよい。
【0051】
次に、制御部50は、固体ターゲット10に荷電粒子線Bを照射する処理を行う(ステップS30:
図4)。S30では、制御部50の照射制御部51は、サイクロトロン2を制御することで、固体ターゲット10へ荷電粒子線Bを照射する。このとき、保持制御部52は、固定ユニット23の流路27から固体ターゲット10及び真空ホイル25へヘリウムガスなどを吹き付けるように、流路系を制御する。また、保持制御部52は、供給管32及び排出管33の管路系を制御して、内部空間31へ冷却媒体を流して固体ターゲット10を冷却する。
【0052】
S30の処理が終了したら、制御部50の保持制御部52は、可動ユニット24の駆動機構28を制御することにより、可動ユニット24を下方へ移動させる。これにより、
図6に示すように、可動ユニット24が初期状態の位置へ戻る。また、搬送トレイも60も、固体ターゲット10を載せた状態で、基準高さの位置に戻る。
【0053】
次に、制御部50は、固体ターゲット10をターゲット照射装置20から溶解装置21へ搬送する処理を行う(ステップS40:
図4)S40では、制御部50の搬送制御部54は、搬送装置22の搬送駆動部61(
図3参照)を制御して、搬送トレイ60をターゲット照射装置20から溶解装置21の位置へ水平に移動させる。これにより、
図7に示すように、搬送トレイ60は、高さ方向においては基準高さの位置を維持しつつ、固定ユニット40と可動ユニット41との間に配置される。これにより、固体ターゲット10は、内部空間42が開口した対向面40aと下方側で対向する位置に配置される。
【0054】
次に、制御部50は、固体ターゲット10を溶解装置21へセットする処理を行う(ステップS50:
図4)。S50では、
図8に示すように、制御部50の溶解制御部53は、吸引管44の管路系を制御して、内部空間42を介して対向面40aに固体ターゲット10を吸着させる。なお、固体ターゲット10を吸着する前に、搬送トレイ60の上昇により、固体ターゲット10を本体部48の対向面40aへ押し付ける。これにより、固体ターゲット10と本体部48との間に設けられたOリング(不図示)を押しつぶした状態で、内部空間をシールする。この後、搬送制御部54は、搬送駆動部61(
図3参照)を制御して、搬送トレイ60をターゲット照射装置20側の位置へ移動させておく。これにより、搬送トレイ60が可動ユニット41と干渉することを回避する。
【0055】
S50では、溶解制御部53は、可動ユニット41の駆動部を制御して、可動ユニット41を上方へ移動させる。これにより、
図9に示すように、固体ターゲット10は、固定ユニット40の対向面40aと可動ユニット41の対向面41aとに挟まれた状態となる。このとき、固体ターゲット10は、受皿部47に収容された状態で、上方から本体部48に押圧された状態となる。
【0056】
次に、制御部50は、固体ターゲット10の金属層11を溶解装置21で溶解させることにより、金属層11に含まれる放射性同位元素を回収する処理を行う(ステップS60:
図4)。S60では、制御部50の溶解制御部53は、供給・吸引管43の管路系を制御して、供給・吸引管43から内部空間42へ溶解液SLを供給する。また、溶解制御部53は、吸引管44の管路系を制御して、放射性同位元素が溶解した溶解液SLを供給・吸引管43で吸引して回収する。以上により、
図4に示す制御処理が終了する。なお、放射性同位元素の回収が終了した後、作業者は、固体ターゲット10を本体部48及び受皿部47ごと取り外し、遮蔽シールド4の外部へ出す。
【0057】
放射性同位元素が溶解した溶解液SLは、
図1に示すように、遮蔽シールド4の外部へ排出されて、溶解液SL中の放射性同位元素の精製を行う精製装置や薬剤の合成を行う合成装置などの装置160へ送られる。精製装置や合成装置は、同じ建屋150内に配置されていてもよく、別の建屋(施設)に配置されてもよい。同じ建屋150内の合成装置等に溶解液SLを輸送する場合には、供給・吸引管43につながる輸送管161にて溶解液SLを合成装置等へ送る。溶解液SLからは放射線が放出されるため、輸送管161は遮蔽シールドで覆う、または、建屋150の遮蔽壁(床や壁)内に通す。別の建屋へ溶解液SLを搬送する場合には、回収した溶解液SLを遮蔽箱(外部への放射線の放出を抑制する箱であり、鉛箱のようなもの)中に貯留し、自動車等によって、この遮蔽箱ごと搬送する。
【0058】
次に、本実施形態に係るターゲット照射システム3の作用・効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係るターゲット照射システム3は、金属層11を有する固体ターゲット10へサイクロトロン2から出射された荷電粒子線Bを照射して金属層11の放射性同位元素を生成するターゲット照射システム3であって、建屋150に設けられたサイクロトロン室152内に配置され、固体ターゲット10を荷電粒子線Bの照射位置にて保持して固体ターゲット10への荷電粒子線Bの照射を可能とするターゲット照射装置20と、サイクロトロン室152内に配置され、ターゲット照射装置20によって荷電粒子線Bの照射が完了した固体ターゲット10に付着する放射性同位元素を溶解させる溶解装置21と、を備える。
【0060】
ターゲット照射システム3において、ターゲット照射装置20は、固体ターゲット10を荷電粒子線Bの照射位置にて保持して固体ターゲット10への荷電粒子線Bの照射を可能とする。これにより、固体ターゲット10の金属層11のうち、荷電粒子線Bが照射された箇所には、放射性同位元素が形成される。また、溶解装置21は、ターゲット照射装置20によって荷電粒子線Bの照射が完了した固体ターゲット10に付着する放射性同位元素を溶解させる。これにより、溶解液を回収することで、放射性同位元素を回収することが可能となる。ここで、ターゲット照射装置20及び溶解装置21は、建屋150に設けられたサイクロトロン室152内に配置される。従って、荷電粒子線を固体ターゲット10に照射する工程、及び放射性同位元素を溶解によって回収する工程は、いずれもサイクロトロン室152内にて行われる。従って、固体ターゲット10をターゲット照射装置20から取り出して速やかに溶解装置21で放射性同位元素を溶解させることができる。
【0061】
ターゲット照射システム3は、サイクロトロン室152の床151に対してターゲット照射装置20を支持する支持部としての遮蔽シールド4を更に備え、溶解装置21は、支持部によって床151に対して支持される。この場合、ターゲット照射装置20及び溶解装置21が共通の支持部で支持されるため、両者を近い位置に配置することができる。
【0062】
ターゲット照射システム3は、ターゲット照射装置20による保持が解除された固体ターゲット10を、溶解装置21まで搬送する搬送装置22を更に備える。この場合、ターゲット照射装置20から溶解装置21まで固体ターゲット10を速やかに搬送することが可能となる。
【0063】
ターゲット照射システム3は、サイクロトロン室152内に設けられ、サイクロトロン2とターゲット照射装置20とを内部に収容して、サイクロトロン2及びターゲット照射装置20から放出される放射線を遮蔽する遮蔽シールド4を更に備え、溶解装置21は、遮蔽シールド4内に設けられている。この場合、遮蔽シールド4は、ターゲット照射装置20から溶解装置21へ固体ターゲット10を搬送するときに、放射線を遮蔽することができる。
【0064】
ターゲット照射システム3は、ターゲット照射装置20から溶解装置21へ固体ターゲット10を搬送する搬送装置22と、制御部50を更に備え、制御部50は、金属層11への荷電粒子線Bの照射の後、ターゲット照射装置20に保持された固体ターゲット10を溶解装置21へ搬送するように、搬送装置22を制御する。これにより、搬送装置22による固体ターゲット10の搬送が、制御部50によって自動的に行われる。これにより、作業者に対する被曝を更に抑制することができる。また、制御部50が自動的に固体ターゲット10の搬送を行うことで、作業時間の短縮を図ることができる。
【0065】
ターゲット照射システム3は、金属層11を有する固体ターゲット10へサイクロトロン2から出射された荷電粒子線Bを照射して金属層11の放射性同位元素を生成するターゲット照射システム3であって、固体ターゲット10を荷電粒子線Bの照射位置にて保持して固体ターゲット10への荷電粒子線Bの照射を可能とするターゲット照射装置20と、ターゲット照射装置20によって荷電粒子線Bの照射が完了した固体ターゲット10に付着する放射性同位元素を溶解させる溶解装置21と、を備え、ターゲット照射装置20及び溶解装置21は、建屋150に設けられた同一のサイクロトロン室152内に配置されている。このターゲット照射システム3によれば、上述と同様な作用・効果を得ることができる。
【0066】
固体ターゲット10からの放射性同位元素の回収方法は、金属層11を有する固体ターゲット10に付着する当該金属層11の放射同位元素を回収する固体ターゲット10からの放射性同位元素の回収方法であって、建屋150に設けられた遮蔽室内に配置されたターゲット照射装置20によって、固体ターゲット10へ荷電粒子線Bを照射して固体ターゲット10に放射性同位元素を生成し、固体ターゲット10を搬送可能な搬送装置22によって、荷電粒子線Bの照射が完了した固体ターゲット10を、遮蔽室内に配置された溶解装置21へ搬送し、溶解装置21によって、固体ターゲット10に付着した放射性同位元素を溶解させる。この回収方法によれば、荷電粒子線Bを固体ターゲット10に照射する工程、固体ターゲット10を搬送する工程、及び放射性同位元素を溶解によって回収する工程は、いずれも遮蔽室内にて行われる。従って、固体ターゲットをターゲット照射装置20から取り出して速やかに溶解装置21で放射性同位元素を溶解させることができる。また、各工程において放射線を遮蔽することができる。
【0067】
本実施形態に係る自己シールド型サイクロトロンシステム100において、ターゲット照射装置20は、金属層11を有するターゲットを荷電粒子線Bの照射位置RPにて保持する。従って、ターゲット照射装置20で保持された固体ターゲット10には、荷電粒子線Bが照射される。これにより、固体ターゲット10の金属層11のうち、荷電粒子線Bが照射された箇所には、放射性同位元素12が形成される。また、溶解装置21は、固体ターゲット10における放射性同位元素を含有する金属層11を溶解させる溶解装置を備える。これにより、溶解液を回収することで、放射性同位元素を回収することが可能となる。搬送装置22は、固体ターゲット10への荷電粒子線Bの照射が行われるターゲット照射装置20から、放射性同位元素を回収する溶解装置21へ、固体ターゲット10を搬送する。ここで、ターゲット照射装置20、溶解装置21、及び搬送装置22は、遮蔽シールド4内に配置されている。従って、荷電粒子線Bを固体ターゲット10に照射する工程、放射性同位元素を溶解によって回収する工程、及び両工程間におけるターゲットの搬送を行う工程は、いずれも遮蔽シールド4内にて行われる。従って、各工程において、荷電粒子線照射後の固体ターゲット10から放出される放射線は、自己シールドによって遮断される。以上により、放射性同位元素を得る際の被曝に対する安全性を更に向上できる。
【0068】
自己シールド型サイクロトロンシステム100は、制御部50を更に備え、制御部50は、金属層11への荷電粒子線Bの照射の後、ターゲット照射装置20に保持された固体ターゲット10を溶解装置21へ搬送するように、搬送装置22を制御してよい。これにより、搬送装置22による固体ターゲット10の搬送が、制御部50によって自動的に行われる。これにより、被曝に対する安全性を更に向上することができる。また、制御部50が自動的に固体ターゲット10の搬送を行うことで、作業時間の短縮を図ることができる。
【0069】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、
図10のような構成を採用してもよい。
図10に示す自己シールド型サイクロトロンシステムは、遮蔽シールド4内で溶解装置21を覆う収容部70と、収容部70内の気体を遮蔽シールド4の外部へ排気する排気部71と、を備えてよい。収容部70は、ターゲット照射装置20を覆うことなく、溶解装置21のみを覆っている。なお、収容部70のうち、搬送トレイが通過する箇所には開口部70aが形成されてよい。なお、この開口部70aは、搬送トレイが通過しない時は閉じられてよい。また、排気部71は、収容部70から遮蔽シールド4を通過して、遮蔽シールド4の外部へ連通された排気管を有して良い。この排気部71は、排気管に設けられたポンプなどを備えてよい。
【0071】
これにより、溶解装置21の溶解液が気化した場合には、収容部70によってガスが遮蔽シールド4内に拡散することが抑制される。また、収容部70内のガスは、排気部71によって遮蔽シールド4の外部へ排出される。これにより、遮蔽シールド4内の他の機器が、ガスによって腐食されることを抑制することができる。
【0072】
また、上述の実施形態の各図に示すターゲット照射システムの構成は一例に過ぎず、本発明の範囲内である限り、形状や配置は適宜変更してもよい。例えば、搬送装置は、搬送トレイに代えて、例えばターゲットを把持するアーム状の把持部を採用してもよい。
【0073】
なお、搬送装置によるターゲットの搬送は、制御部によって自動的になされていた。これに代えて、搬送装置による駆動自体は、作業者の手作業による操作によってなされてよい。このような場合も、ターゲットは自己シールド内に収容されているので、被曝に対する安全性を更に向上することができる。
【0074】
図11(a)に示すようなターゲット照射システム3としてもよい。
図11(a)に示す例では、建屋150のサイクロトロン室152とは別の照射室153にターゲット照射装置20及び溶解装置21を配置してよい。このとき、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線は、輸送ライン155を介してサイクロトロン室152から照射室153のターゲット照射装置20へ輸送される。このとき、ターゲット照射装置20及び溶解装置21は、支持部156によって照射室153の床151に対して支持される。
【0075】
また、
図11(b)に示すようなターゲット照射システム3としてもよい。
図11(b)に示す例では、サイクロトロン2、ターゲット照射装置20、及び溶解装置21が同じサイクロトロン室152内に配置されている。このとき、
図1に示す構成と異なり、遮蔽シールド4は省略されてよい。
【0076】
なお、上述の実施形態では、粒子加速器の一例としてサイクロトロンが挙げられていたが、サイクロトロンに限定されるものではない。例えば、粒子加速器として、線形加速器が採用されてもよい。
【0077】
図12に示すターゲット照射システム200が採用されてよい。ターゲット照射システム200は、ターゲット照射装置210の固定ユニット211と、溶解装置220の固定ユニット221と、支持装置230と、ターゲットエクスチェンジャ240と、制御部260と、を備える。
【0078】
なお、ターゲット照射システム200の説明のために、XYZ座標系を設定する。X軸方向は、水平方向と平行な方向である。X軸方向における一方側(
図12では紙面手前側)をX軸方向の正側とする。Y軸方向は、X軸方向と直交する方向であって、水平方向と平行な方向である。Y軸方向における一方側(
図12では紙面左側)をY軸方向の正側とする。上下方向をZ軸方向とする。上側をZ軸方向における正側とする。
【0079】
図13に示すように、ターゲット照射装置210の固定ユニット211は、荷電粒子線Bの照射軸BLに対応する位置に当該荷電粒子線Bを通過させるための内部空間213を備えている。内部空間213は、照射軸BLを中心線として、当該照射軸BLに沿って延びるように形成される。本実施形態では、荷電粒子線Bの照射軸BLは、Y軸方向と平行に延びる。また、荷電粒子線Bは、Y軸方向における正側から負側へ向かって照射される。従って、内部空間213は、Y軸方向と平行に延びる。
【0080】
固定ユニット211は、荷電粒子線Bを出射させる照射ポート212を備える。照射ポート212は、支持装置230のシール面230aと対向する対向面として、XZ平面と平行に広がる面を有している。照射ポート212は、内部空間213が開口する開口部を有する。荷電粒子線Bは、当該開口部から出射される。
【0081】
溶解装置220の固定ユニット221は、ターゲット照射装置210の固定ユニット211から、X軸方向の正側へ離間する位置に配置される。固定ユニット221は、溶解液SLの供給及び回収を行う複数の溶解ポート222A,222Bを備える。溶解ポート222A,222Bは、互いに異なる核種の放射性同位元素を回収してよい。従って、溶解ポート222A,222Bは、互いに異なる溶解液SLを供給・回収することができる。ただし、溶解ポート222A,222Bは、同じ核種の放射性同位元素を回収してもよい。溶解ポート222A,222Bは、X軸方向において互いに隣り合うように設けられている。また、溶解ポート222A,222Bは、支持装置230のシール面230aと対向する対向面としてXZ平面と平行に広がる面を有している。溶解ポート222A,222Bの対向面の中心線SCL,SCLは、互いにX軸方向に離間した状態で、Y軸方向に平行に延びる。また、溶解ポート222A,222Bの中心線SCL,SCLは、照射軸BLと同じ高さ位置に設定される。なお、溶解ポート222A,222Bは、溶解装置220に対して着脱可能であってよい。すなわち、溶解ポート222A,222Bは、載置台223に対して、着脱可能に取り付けられてよい。これにより、放射性同位元素の核種に合わせて、溶解ポート222を取り替えることができる。
【0082】
図16及び
図17を参照して、溶解ポート222Aの構成について詳細に説明する。なお、溶解ポート222Bは、溶解ポート222Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。溶解ポート222Aは、支持装置230のシール面230aが押し当てられる対向面222aを有する。また、溶解ポート222Aは、流路224と、吸着構造226と、を備える。
【0083】
流路224は、溶解液SLを流通させる。流路224は、溶解ポート222Aの部材の内部に形成されており、対向面222aにて開口する。流路224は、当該開口から溶解液SLを流出させると共に、当該開口から溶解液SLを吸引する。なお、対向面222aの中心線SCLの位置からは、Y軸方向の負側へ突出する流路形成部材227が突出する。流路形成部材227は、支持装置230の内部空間233に挿入されることで、当該内部空間233に溶解液SLの流路を形成する部材である。流路224は、流路形成部材227の周方向に隣り合う位置にて、開口する。なお、溶解ポート222Aは、二本の流路224を有しているが、本数は特に限定されない。
【0084】
吸着構造226は、対向面222aと接触した状態のシール面230aを吸引する機構である。吸着構造226は、中心線SCLを中心とした円環状の溝部226aを有する。また、吸着構造226は、溶解ポート222A内に形成された真空排気路226bを有する。真空排気路226bは、溝部226aの位置にて開口している。
【0085】
図12及び
図13に示すように、支持装置230は、固体ターゲット10を支持する装置である。支持装置230は、照射ポート212に連結され、且つ、溶解ポート222A,222Bに連結される。従って、支持装置230は、ターゲット照射装置210の可動ユニットとして機能する。また、支持装置230は、溶解装置220の可動ユニットとして機能する。また、本実施形態では、後述のようにターゲットエクスチェンジャ240が複数の支持装置230を取付可能である。従って、ターゲット照射システム200は、用途に応じて、複数の支持装置230を備えることができる。本実施形態では、ターゲット照射システム200は、二つの支持装置230A,230Bを備えるものとする。
【0086】
図15を参照して、支持装置230の構成について詳細に説明する。
図15に示すように、支持装置230は、略円柱状の形状を有する部材である。支持装置230の中心線CLは、Y軸方向と平行に延びる。支持装置230は、第1の部材231と、第2の部材232と、を備える。支持装置230は、長手方向、すなわちY軸方向における中途位置にて、第1の部材231と第2の部材232とに分割される。第1の部材231は、Y軸方向の正側、すなわち荷電粒子線Bの照射方向における上流側に配置される。第2の部材232は、Y軸方向の負側、すなわち荷電粒子線Bの照射方向における下流側に配置される。
【0087】
支持装置230は、第1の部材231及び第2の部材232で固体ターゲット10を挟むことによって、固体ターゲット10を支持する。支持装置230は、中心線CLに対して傾斜するように固体ターゲット10を支持する。固体ターゲット10の傾斜方向は特に限定されない。ここでは、固体ターゲット10は、Y軸方向の正側から負側へ向かうに従って上側(Z軸方向の正側)へ向かうように、傾斜している。第1の部材231は、Y軸方向における負側の端部に支持面231aを有する。第2の部材232は、Y軸方向における正側の端部に支持面232aを有する。第1の部材231の支持面231aと、第2の部材232の支持面232aとは、互いに平行をなした状態で対向する。また、支持面231a,232aは、上述の固体ターゲット10の傾斜方向と同様に傾斜する。支持面231a,232aには、固体ターゲット10の外周側の端部の近傍に、Oリングを備えるシール部が設けられている。
【0088】
第1の部材231は、Y軸方向の正側の端部に上述のシール面230aを有する。従って、第1の部材231は、照射ポート212に連結され、且つ、溶解ポート222A,222Bに連結される部材として機能する。シール面230aには、Oリングを有するシール部が設けられている。第1の部材231は、中心線CLの位置で、Y軸方向に平行に延びる内部空間233を有する。内部空間233は、シール面230aから支持面231aまで貫通するように延びている。これにより、固体ターゲット10は、内部空間233に露出した状態となる。内部空間233は、荷電粒子線Bを固体ターゲット10まで導くターゲット照射装置210の輸送路として機能する。また、内部空間233は、溶解液SLを流通させる溶解装置220の溶解槽として機能する。第1の部材231は、荷電粒子線Bを通過させ、溶解液SLを流通させる部材であるため、第1の部材231の材質として、Nb、セラミック等耐薬品性、耐放射線性、耐熱性のある材料などが採用されることが好ましい。
【0089】
支持装置230が照射ポート212と連結された場合、第1の部材231のシール面230aが、照射ポート212に押し当てられる。また、内部空間233と内部空間213とが連通した状態となる。支持装置230は、中心線CLが照射軸BLと一致するように配置される。当該状態において、照射軸BLと固体ターゲット10の表面10aとが交差する位置が、照射位置RPとなる。
【0090】
第2の部材232は、固体ターゲット10を冷却するための冷却構造として機能する。第2の部材232は、支持面232aの位置に溝部234を有する。溝部234の内部空間では、固体ターゲット10の裏面10bが露出している。従って、溝部234へ供給された冷却媒体Wは、固体ターゲット10と接触する。第2の部材232は、Y軸方向に延びる冷却流路236,237を有する。冷却流路236,237は、溝部234と連通している。冷却流路236は、冷却媒体Wを溝部234へ供給する。冷却流路237は、冷却媒体Wを溝部234から回収する。 なお、第2の部材232は、固体ターゲット10を冷却する部材であるため、第2の部材232の材質として、SUS等防錆性材料が採用されることが好ましい。
【0091】
次に、
図16に示すように、支持装置230が溶解ポート222Aと連結された場合、第1の部材231のシール面230aが、溶解ポート222Aの対向面222aに押し当てられる。支持装置230は、中心線CLが溶解ポート222Aの中心線SCLと一致するように配置される。シール面230aの一部は、吸着構造226の溝部226aと対向する。これにより、シール面230aは、真空引きされる溝部226aに吸着される。また、内部空間233に流路形成部材227が挿入される。これにより、内部空間233内に溶解液SLの流路が形成される。内部空間233は、流路224の開口部と連通した状態となる。流路224から供給された溶解液SLは、固体ターゲット10の表面10aと接触する。放射性同位元素が溶解した溶解液SLは、流路224から回収される。
【0092】
次に、ターゲットエクスチェンジャ240について説明する。
図12及び
図13に示すように、ターゲットエクスチェンジャ240は、固体ターゲット10を搬送する搬送装置として機能する。ターゲットエクスチェンジャ240は、支持装置230を介して固体ターゲット10を支持する。ターゲットエクスチェンジャ240は、複数の支持装置230を取り付け可能なホルダ241を備える。従って、ターゲットエクスチェンジャ240は、複数の固体ターゲット10を支持可能である。また、ホルダ241は、複数の支持装置230が取り付けられた状態でX軸方向にスライド可能である。従って、ホルダ241は、複数の支持装置230ごと、固体ターゲット10をX軸方向に搬送することができる。
【0093】
図14を参照して、ターゲットエクスチェンジャ240の具体的な構造の一例について説明する。
図14に示すように、ターゲットエクスチェンジャ240は、ベースプレート242、第1スライドプレート243、第2スライドプレート244、第1シリンダ246、第2シリンダ247、及び第3シリンダ248を備えている。
【0094】
ベースプレート242は、第1及び第2スライドプレート243,244を搭載するためのベースとなる部材である。ベースプレート242の上面には、Y軸方向に延びるガイドレール242a(
図12参照)が設けられている。ベースプレート242は、当該ターゲットエクスチェンジャ240をサイクロトロンに取付固定するための固定板249に直交するように連結されている。
【0095】
第1スライドプレート243は、平面視において矩形の外形を有する板状の部材である。第1スライドプレート243のY軸方向の正側の縁部には、X軸方向に沿って延びるガイドレール251が設けられている。第1スライドプレート243のY軸方向の負側の側面には、第1シリンダ246が取り付けられている。第1シリンダ246がY軸方向に駆動軸を進退させることで、ホルダ241が、第1スライドプレート243と共にY軸方向に往復移動する。第1スライドプレート243の上面には、第2シリンダ247が搭載されている。第2シリンダ247の駆動軸は、X軸方向に進退可能である。
【0096】
第1スライドプレート243の上面には、第3シリンダ248が搭載されている。第3シリンダ248の駆動軸は、Y軸向に進退可能である。第3シリンダ248には、第2シリンダ247の駆動軸が接続されている。従って、第2シリンダ247がX軸方向に駆動軸を進退させることで、第3シリンダ248は、駆動軸を係合させた(詳細は後述)ホルダ241と共にX軸方向に往復移動する。
【0097】
第3シリンダ248の上面には、Y軸方向に延びる取付板252が取り付けられている。取付板252のY軸方向の正側の端部には、アタッカー253が取り付けられている。このアタッカー253が、後述する第2スライドプレート244に設けられるマイクロスイッチ259に当接することで、第2スライドプレート244のX軸方向の位置が検出される。
【0098】
第2スライドプレート244は、直方体状の基部256と、基部256に立設されたホルダ241とを有する。基部256の下面には、X軸方向に延びる断面コ字状のライナ255が取り付けられている。ホルダ241は、正面視において矩形をなす。ホルダ241は、支持装置230を保持するための四つの保持孔257を有し、これら保持孔257に略円筒状の支持装置230がそれぞれ嵌め込まれて保持される。四つの保持孔257は、X軸方向に沿って並設されている。これにより、ホルダ241は、最大で四つの支持装置230を保持することができる。本実施形態では、ホルダ241は、二つの支持装置230A,230Bを保持しているが、追加であと二つの支持装置230を保持できる。
【0099】
第2スライドプレート244の基部256の前面には、保持孔257のピッチと同一ピッチで四つのマイクロスイッチ259が取り付けられている。このマイクロスイッチ259にアタッカー253が当接することで、第2スライドプレート244X軸方向の位置が検出される。また、マイクロスイッチ259の下方には、それぞれ係合穴261が設けられている。係合穴261は、第3シリンダ248の駆動軸の径と略同一の大きさであり、この係合穴261に当該駆動軸が係合可能に構成されている。これにより、ホルダ241は、第2シリンダ247の駆動によりX軸方向に往復移動する。
【0100】
以上により、ターゲットエクスチェンジャ240は、支持した固体ターゲット10を支持装置230ごと、X軸方向へ搬送することができる。ターゲットエクスチェンジャ240は、支持装置230を照射ポート212、または溶解ポート222A,222Bと対向する位置まで搬送する。このとき、ターゲットエクスチェンジャ240は、支持装置230を照射ポート212、または溶解ポート222A,222Bへ押し付けるための機構を備える。具体的には、
図12及び
図13に示すように、ターゲットエクスチェンジャ240は、押し出し機構270A,270Bを備える。押し出し機構270A,270Bは、第1スライドプレート243に連結された支持部材271と、Y軸方向に駆動軸を進退させるシリンダ272と、支持装置230を押し出す押し出し部材273と、を備える。押し出し部材273は、シリンダ272の駆動軸に設けられている。これにより、シリンダ272が押し出し部材273をY軸方向の正側に移動させることで、支持装置230が溶解装置220側へ押し付けられる。
図13に示すように、押し出し機構270Aは、支持装置230Aに対向する位置に設けられる。押し出し機構270Bは、支持装置230Bに対向する位置に設けられる。例えば、ホルダ241が支持装置230Aを溶解ポート222Bに対向する位置に配置した場合(
図20参照)、押し出し機構270Aは、支持装置230Aを溶解ポート222Bに押し付ける。
【0101】
制御部260は、ターゲットエクスチェンジャ240の各駆動部(シリンダ)に対して制御信号を送信することで、ターゲットエクスチェンジャ240の動作を制御する。
図13及び
図18~
図23を参照して、制御部260による制御内容の一例について説明する。ただし、ターゲット照射システム200の動作は、以下の例に限定されるものではなく、固体ターゲット10の数や、核種の数は適宜変更してもよい。
【0102】
図13及び
図18~
図23は、1核種の放射性同位元素を二つの固体ターゲット10を用いて回収する場合の動作の一例を示す。まず、
図13に示すように、二つの支持装置230A,230Bが、ホルダ241に保持される。支持装置230Aは、X軸方向における正側から見て一番目の保持孔257に保持される。支持装置230Bは、X軸方向における正側から見て二番目の保持孔257に保持される。制御部260は、ターゲットエクスチェンジャ240の第2シリンダ247(
図14参照)を制御して、ホルダ241を固定ユニット211と対向する位置に配置する。このとき、ホルダ241のX軸方向の最も正側の保持孔257、すなわち支持装置230Aが、照射ポート212と対向する位置に配置される。この位置を「初期位置」と称する。なお、以降の説明においては、当該制御内容は、「制御部260は、照射ポート212と対向する位置に支持装置230Aを配置する」と表現する。当該制御内容と、同趣旨の制御内容に対しても同様な表現を用いる。
【0103】
次に、
図18に示すように、制御部260は、ターゲットエクスチェンジャ240の第1シリンダ246を制御して第1スライドプレート243(
図12参照)をY軸方向の正側へ移動させることで、支持装置230Aを照射ポート212に押し付ける。このとき、支持装置230BもY軸方向の正側へ移動するが、支持装置230Bは特に他の部材には押し付けられない。なお、以降の説明においては、当該制御内容は、「制御部260は、支持装置230Aを照射ポート212に押し付ける」と表現する。当該制御内容と、同趣旨の制御内容に対しても同様な表現を用いる。制御部260は、ターゲット照射装置210を制御して、支持装置230Aの固体ターゲットに荷電粒子線Bを照射する。当該照射が終了したら、制御部260は、支持装置230Aの照射ポート212に対する押し付けを解除する。
【0104】
次に、
図19に示すように、制御部260は、溶解ポート222Bと対向する位置に支持装置230Aを配置する。また、
図20に示すように、制御部260は、ターゲットエクスチェンジャ240の第1シリンダ246を制御して第1スライドプレート243(
図12参照)をY軸方向の正側へ移動させることで、支持装置230Aを溶解ポート222Bの手前に配置させる。更に、制御部260は、押し出し機構270Aのシリンダ272を延ばすことにより、支持装置230Aを溶解ポート222Bに押し付ける。このとき、支持装置230BもY軸方向の正側へ移動するが、支持装置230Bは特に他の部材には押し付けられない。なお、以降の説明においては、当該制御内容は、「制御部260は、支持装置230Aを溶解ポート222Bに押し付ける」と表現する。当該制御内容と、同趣旨の制御内容に対しても同様な表現を用いる。制御部260は、溶解装置220を制御して、支持装置230Aに溶解液SLを供給し、固体ターゲット10の放射性同位元素を溶解させた溶解液SLを回収する。当該回収が終了したら、制御部260は、支持装置230Aの溶解ポート222Bに対する押し付けを解除する。そして、制御部260は、支持装置230A,230Bの位置を初期位置に復帰させる。
【0105】
次に、
図21に示すように、制御部260は、照射ポート212と対向する位置に支持装置230Bを配置し、支持装置230Bを照射ポート212に押し付ける。制御部260は、ターゲット照射装置210を制御して、支持装置230Bの固体ターゲットに荷電粒子線Bを照射する。当該照射が終了したら、制御部260は、支持装置230Bの照射ポート212に対する押し付けを解除する。
【0106】
次に、
図22に示すように、制御部260は、溶解ポート222Bと対向する位置に支持装置230Bを配置し、支持装置230Bを溶解ポート222Bに押し付ける。制御部260は、溶解装置220を制御して、支持装置230Bに溶解液SLを供給し、固体ターゲット10の放射性同位元素を溶解させた溶解液SLを回収する。当該回収が終了したら、制御部260は、支持装置230Bの溶解ポート222Bに対する押し付けを解除する。そして、制御部260は、支持装置230A,230Bの位置を初期位置に復帰させる。以上より、二つの固体ターゲット10を用いた放射性同位元素の回収が完了する。
【0107】
次に、2核種の放射性同位元素を二つの固体ターゲット10を用いて回収する場合の動作の一例について説明する。なお、上述の動作と共通する動作については、共通の図面を用いて説明する。
【0108】
制御部260は、
図18に示す動作を実行することで、支持装置230Aの固体ターゲット10に荷電粒子線Bを照射する。次に、
図23に示すように、制御部260は、溶解ポート222Aと対向する位置に支持装置230Aを配置し、支持装置230Aを溶解ポート222Aに押し付ける。制御部260は、溶解装置220を制御して、支持装置230Aに溶解液SLを供給し、固体ターゲット10の放射性同位元素を溶解させた溶解液SLを回収する。当該回収が終了したら、制御部260は、支持装置230Aの溶解ポート222Aに対する押し付けを解除する。そして、制御部260は、支持装置230A,230Bの位置を初期位置に復帰させる。
【0109】
次に、制御部260は、
図21に示す動作を実行することで、支持装置230Bの固体ターゲット10に荷電粒子線Bを照射する。次に、
図22に示す動作を実行することで、支持装置230Bの固体ターゲット10の放射性同位元素を回収する。このとき、溶解ポート222Bは、溶解ポート222Aで用いられたものとは異なる溶解液SLを用いる。これにより、支持装置230Bの固体ターゲット10の放射性同位元素は、支持装置230Aに対するものとは異なる溶解液SLで回収される。そして、制御部260は、支持装置230A,230Bの位置を初期位置に復帰させる。以上より、二つの固体ターゲット10を用いた放射性同位元素の回収が完了する。
【0110】
なお、1核種の放射性同位元素を一つの固体ターゲット10を用いて回収することも可能である。この場合は、
図18~
図20から支持装置230Bを省略し、支持装置230Aだけを用いて、
図18~
図20に示す動作を行う。
【0111】
以上より、ターゲット照射システム200は、固体ターゲット10を搬送するターゲットエクスチェンジャ240を更に備え、ターゲットエクスチェンジャ240は、複数の固体ターゲット10を支持可能である。この場合、ターゲットエクスチェンジャ240は、途中で固体ターゲット10の取り外し作業を伴うことなく、複数の固体ターゲット10を照射位置及び溶解位置へ搬送することができる。これにより、取り外し作業による被爆の影響を低減することができる。
【0112】
例えば、
図18,23に示すような支持装置230Aの固体ターゲット10の放射性同位元素の回収が行われた後、特に固体ターゲット10の交換作業(取り外し作業)などが行われることなく、
図21,22に示す支持装置230Bの固体ターゲット10に対する処理が実行される。このように、ターゲット照射システム200は、一度、複数の支持装置230対して固体ターゲット10を設置しておけば、ターゲット照射システム200は、自動的に固体ターゲット10の切替、照射、溶解、及び回収プロセスを複数回行うことが可能となる。これにより、固体ターゲット10の交換作業に伴う被爆量の大幅な低減が図られる。
【0113】
ターゲット照射システム200は、固体ターゲット10を支持する支持装置230を更に備え、ターゲット照射装置210は、荷電粒子線Bが出射される照射ポート212を備え、溶解装置220は、溶解液SLの供給及び回収を行う溶解ポート222A,222Bを備え、支持装置230は、照射ポート212に連結され、且つ、溶解ポート222A,222Bに連結されてよい。この場合、支持装置230は、ターゲット照射装置210の一部、及び溶解装置220の一部として兼用可能となる。
【0114】
溶解装置220は、溶解液SLの供給及び回収を行う複数の溶解ポート222A,222Bを備えてよい。この場合、溶解ポート222A,222Bの取り換え作業を伴うことなく、複数核種の放射性同位元素の溶解工程を行うことができる。
【符号の説明】
【0115】
2…サイクロトロン、3,200…ターゲット照射システム、4…遮蔽シールド(支持部)、10…固体ターゲット、11…金属層、20,210…ターゲット照射装置、21,220…溶解装置、22…搬送装置、50…制御部、70…収容部、71…排気部、100…自己シールド型サイクロトロンシステム、212…照射ポート、222A,222B…溶解ポート、230,230A,230B…支持装置(ターゲット照射装置、溶解装置),240…ターゲットエクスチェンジャ(搬送装置)。