(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ポリフェニレンスルフィドポリマー組成物及び対応するレーザー溶接用途
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20240618BHJP
C08L 81/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B29C65/16
C08L81/02
(21)【出願番号】P 2021521354
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019077710
(87)【国際公開番号】W WO2020083683
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-14
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ディーディー
(72)【発明者】
【氏名】シア, チーチアン
(72)【発明者】
【氏名】サティッチ, ウィリアム イー
(72)【発明者】
【氏名】カーベル, リー
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-015792(JP,A)
【文献】特開2005-336229(JP,A)
【文献】特開2008-019410(JP,A)
【文献】特開2007-023263(JP,A)
【文献】特開2009-040808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0110880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー-ポリマー界面に赤外線(「IR」)光線を照射することを含む、界面をレーザー溶接して接合部を形成する方法であって、
ポリマー-ポリマー界面が、第2のポリマー組成物と接触しているポリフェニレンスルフィド(「PPS」)ポリマー組成物を含み、
PPSポリマー組成物が、Al、Ba、Ca、K、Mg、及びこれらの1つ以上の任意の組み合わ
せからなる群から選択される金属カチオンを含み、
PPSポリマー組成物が、少なくとも25重量%の平坦なガラス繊維を含み、
金属カチオンの濃度が、少なくとも400ppmであり、
照射することが、PPSポリマー組成物と、第2のポリマー組成物とを含む接合部を形成する、
方法。
【請求項2】
PPSポリマー組成物が、Ca、K、及びMg、並びにこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属カチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IR光線が、900nm~1000nmの周波数の光を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
PPSポリマー組成物が、1,000ppm以下の選択された金属カチオン濃度を有する、請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金属カチオンがCaである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
IR光線が、ポリマー-ポリマー界面を照射する前に、PPSポリマー組成物を通過する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
PPSポリマー組成物が、赤外線(「IR」)透明染料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
IR透明染料が、黒色有機染料である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
-IR光線が、ポリマー-ポリマー界面を照射する前に、第2のポリマー組成物を通過し、
-PPSポリマー組成物が、IR吸収染料を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
IR吸収染料が、黒色有機染料である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2のポリマー組成物が、第2のPPSポリマー組成物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第2のPPSポリマー組成物が、
-Al、Ba、Ca、K、Mg及びこれらの1つ以上の任意の組み合わ
せからなる群から選択される第2の金属カチオンと、
-IR透明染料と
を含み、
第2の金属カチオンの濃度が、少なくとも400ppmである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2のPPSポリマー組成物が、Ca、K及びMg、並びにこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属カチオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
PPSポリマー組成物が、有機染料を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法
を含む、物品
の製造方法。
【請求項16】
-Al、Ba、Ca、K、Mg及びこれらの1つ以上の任意の組み合わ
せからなる群から選択される金属カチオンを有するPPSポリマーと、
-少なくとも25重量%の平坦なガラス繊維と、
-IR透明染料又はIR吸収染
料と
を含むPPSポリマー組成物であって、
金属カチオンの濃度が、少なくとも400ppmであり、1000ppm以下である、
PPSポリマー組成物。
【請求項17】
IR透明染料を含む、請求項16に記載のPPSポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月22日に出願された米国仮特許出願第62/748,614号の優先権を主張するものであり、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、レーザー溶接用途のためのポリフェニレンスルフィド(「PPS」)ポリマー組成物に関する。更に、本発明は、PPSポリマー組成物をレーザー溶接するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ポリマー組成物の複雑な形状を形成するために多くの製造方法が考案されてきた。しかしながら、これらの既存の方法には特定の制限がある。多くの製造方法は、それらのシーリング特性を接着剤に依存するが、これらは時間とコストがかかり、揮発性溶媒の使用により環境問題を引き起こす。超音波溶接又はスピン溶接は、一緒に結合する物体の形状及びサイズに制限があり、結合強度が不十分な場合がある。製品の外観及びフラッシュ(flash)を効果的に制御できないため、振動溶接は魅力的でないことが多く、これにより特定の用途への使用が制限される。
【0004】
従って、レーザー溶接は、これらの欠点に良好に対処する方法としてますます魅力的である。いくつかの重要なレーザー溶接方法は、レーザー光線源としてのNd:YAGレーザー(又は単にYAGレーザーとして知られている)又はダイオードレーザーに依存し、これらのレーザーは、近赤外領域の光を放射する。近年、ダイオードレーザー技術は、特に進歩しており、より高い出力を有するダイオードレーザーをより低コストで得ることができる。
【0005】
今日まで、ポリフタルアミド(「PPA」)ポリマーは、レーザー溶接可能なポリマー組成物が望まれる用途設定で広く使用されてきた。しかしながら、高い耐薬品性及び熱酸化耐性が望まれる用途設定(例えば、ボンネット自動車用途では)では、PPAの使用は妥協点である。特に、他のポリマー組成物は、PPAポリマーと比較して優れた耐薬品性及び熱酸化耐性を有するが、このようなポリマー組成物は、レーザー溶接時に望ましくは強い接合部を生成するのにIR照射に対する十分な透明度を有さない。従って、レーザー溶接でのPPAの使用は、材料の性能よりも接合強度を改善させるための妥協点を反映している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明は、界面をレーザー溶接して接合部を形成する方法に関し、この方法は、ポリマー-ポリマー界面に赤外線(「IR」)光線を照射することを含み、この場合、ポリマー-ポリマー界面は、第2のポリマー組成物と接触しているポリフェニレンスルフィド(「PPS」)ポリマー組成物を含み、PPSポリマー組成物は、Al、Ba、Ca、K、Mg、及びこれらの1つ以上の任意の組み合わせ、好ましくはCa、K、及びMg、並びにこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属カチオンを含み、金属カチオンの濃度は、少なくとも400ppmであり、照射は、PPSポリマー組成物と、第2のポリマー組成物とを含む接合部を形成する。
【0007】
いくつかの実施形態では、IR光線は、900nm~1000nmの周波数の光を含む。いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、1,000ppm以下の選択された金属カチオン濃度を有する。いくつかの実施形態では、金属カチオンはCaである。PPSポリマー組成物は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%の平坦なガラス繊維を含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、IR光線は、ポリマー-ポリマー界面を照射する前に、PPSポリマー組成物を通過する。PPSポリマー組成物は、赤外線(「IR」)透明染料を含み得、いくつかのこのような実施形態では、IR透明染料は、黒色の有機染料である。いくつかの実施形態では、IR光線は、ポリマー-ポリマー界面を照射する前に第2のポリマー組成物を通過し、PPSポリマー組成物は、IR吸収染料を含む。いくつかのこのような実施形態では、IR吸収染料は、黒色の有機染料である。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2のポリマー組成物は、第2のPPSポリマー組成物である。第2のPPSポリマー組成物は、Al、Ba、Ca、K、Mg、及びこれらの1つ以上の任意の組み合わせ、好ましくはCa、K、及びMg、並びにこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される第2の金属カチオン、及びIR透明染料を含み得、この場合、第2の金属カチオンの濃度は、少なくとも400ppmである。いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、有機染料を含まない。いくつかの実施形態では、第2のポリマー組成物、第2のPPSポリマー組成物は、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン(高密度及び低密度)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、物品は、前述の方法によって形成される。いくつかのこのような実施形態では、物品は、自動車部品、モバイル電子デバイス部品、航空宇宙部品、フィルター部品(例えば、布地)、電気絶縁部品、膜部品、又はガスケット部品である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、Al、Ba、Ca、K、Mg、及びこれらの1つ以上の任意の組み合わせ、好ましくはCa、K、及びMg、並びにこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属カチオンを有するPPSポリマー、少なくとも25重量%の平坦なガラス繊維、並びにIR透明染料又はIR吸収染料、好ましくはIR透明染料を含むPPSポリマー組成物に関し、この場合、金属カチオンの濃度は、少なくとも400ppm及び1000ppm以下である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
赤外線(「IR」)照射に対する優れた透明度を有するポリフェニレンスルフィド(「PPS」)ポリマーが、本明細書に記載される。驚くべきことに、選択された金属イオン(Al、Ba、Ca、K、又はMg)濃度が少なくとも400重量百万分率(「ppm」)のPPSポリマーを含むPPSポリマー組成物が、400ppm未満の選択された金属イオン濃度を有するPPSポリマーを含む対応するPPSポリマー組成物と比較して、IR透明度を大幅に増加させることが発見された。
加えて、PPSポリマー組成物をレーザー溶接するための方法が、本明細書に記載される。
【0013】
レーザー溶接では、IR光線を使用して2つのポリマー基板間に接着接合部を作成する。本明細書で使用される場合、IR光は、800nm~1nmの範囲の波長を有する光を指す。レーザー溶接では、以下でより詳細に記載されるように、IR光線が、2つのポリマー組成物が接触しているポリマー-ポリマー界面を照射する。界面で、ポリマーは溶融して再固化し、両方のポリマーのブレンドを含む接合部を作成する。
【0014】
PPSの優れた耐薬品性及び熱酸化安定性により、効果的にレーザー溶接できるPPSポリマー組成物を開発することが強く望まれている。例えば、現在、ポリフタルアミド(「PPA」)ポリマー組成物は、PPSポリマー組成物の代わりにレーザー溶接用途で使用されている。PPSポリマー組成物は、PPAと比較して大幅に改善された耐薬品性と熱酸化耐熱性をもたらすが、PPA(約20%~30%)に対するPPSポリマー組成物の結晶化度の増加(約40%~50%)は、PPAポリマー組成物に対してPPSポリマー組成物を通った不十分なIR透過につながる(結晶化度はX線回折を使用して測定できる)。従って、耐薬品性及び熱酸化耐熱性の向上が重要である用途設定(例えば、ボンネット自動車用途及びモバイル電子デバイス用途の下で)では、望ましい強度の接合部を有するPPSポリマー組成物を溶接することができないため、PPAポリマー組成物が、依然として使用されている。
【0015】
驚くべきことに、少なくとも400ppmの選択された金属カチオン濃度を有するPPSポリマーを含むPPSポリマー組成物を含むポリマー基板が、400ppm未満の選択された金属カチオン濃度を有する対応するPPSポリマー組成物と比較して、大幅に改善されたIR透過率を有することが発見された。本明細書で使用される場合、選択された金属カチオンは、Al、Ba、Ca、K、及びMg、並びにこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属カチオンを指す。好ましくは、選択された金属カチオンは、Ca、K、及びMgから選択される。実施例で実証されるように、選択された金属カチオンがCaである場合、優れた結果が達成された。
【0016】
ポリフェニレンスルフィドポリマー
PPSポリマーは、PPSポリマー中の繰り返し単位の総数に対して、以下の式で表される繰り返し単位R
PPSの少なくとも50モル%を有する:
(式中、R
1~R
4は、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルケトン、アリールケトン、フルオロアルキル、フルオロアリール、ブロモアルキル、ブロモアリール、クロロアルキル、クロロアリール、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルエステル、アリールエステル、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から独立して選択される)。好ましくは、R
1~R
4は、全て水素である。本明細書で使用される場合、破線の結合(「---」)は、描かれた構造の外側の原子への結合(例えば、繰り返し単位R
PPS又は別の繰り返し単位への結合)を表す。いくつかの実施形態では、PPSポリマーは、PPSポリマーの繰り返し単位の総数に対して、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位R
PPSを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位R
PPSは、以下の式によって表される:
【0018】
いくつかのこのような実施形態では、R1~R4は、全て水素である。
【0019】
PPSポリマーは、少なくとも400ppmの選択された金属カチオン濃度を有する。以下の実施例で実証されるように、少なくとも400ppmの選択された金属カチオン濃度を有するPPSポリマーを含むPPSポリマー組成物が、400ppm未満の選択された金属カチオン濃度を有するPPSポリマーを含む対応するPPSポリマー組成物と比較して、大幅に改善されたIR透明性を有することが驚くべきことに発見された。いくつかの実施形態では、PPSポリマーは、少なくとも450ppm、少なくとも500ppm、少なくとも550ppm又は少なくとも600ppmの選択された金属カチオン濃度を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、PPSポリマーは、1,000ppm以下の選択された金属カチオン濃度を有する。いくつかの実施形態では、PPSポリマーは、400ppm~1,000ppm、450ppm~1,000ppm、500ppm~1,000ppm、又は550ppm~1,000ppmの選択された金属カチオン濃度を有する。選択された金属イオン濃度は、以下の例で説明するように測定できる。
【0020】
いくつかの実施形態では、PPSポリマーは、10g/10分~1000g/10分、20g/10分~500g10分、又は30g/10分~200/10分のメルトフロー速度を有する。メルトフロー速度は、ASTM D1238、手順Bに従って、316℃及び5kgで測定できる。
【0021】
ポリフェニレンスルフィドポリマーの合成
PPSポリマー合成は、当技術分野で周知であり、重合プロセス及びその後の回収プロセスを含む。重合プロセスは、パラ-ジハロベンゼン化合物と硫黄化合物を重合してPPSポリマーを形成する重合反応、及び重合反応を止める停止を含む。一般的に、回収プロセスは、合成されたPPSポリマーの特性を調整するために、並びに溶媒、未反応の反応成分、及び重合副生成物(低分子量PPSポリマー及び塩を含むが、これらに限定されない)を除去するために使用される。回収プロセスは、重合中に形成されたPPSポリマーを液体(「処理液」)と接触させる少なくとも1つの反応後処理を含む。いくつかの実施形態では、PPSポリマー中の選択された金属カチオン及び対応する濃度は、例えば、処理液における選択された金属カチオンを組み込むことによって、回収プロセス中に得られる。
【0022】
重合プロセスは、重合反応及び停止を含む。重合反応は、重合溶媒(総称して、「反応成分」)の存在下でパラ-ジハロベンゼン化合物と硫黄化合物を接触させてPPSポリマーを形成することを含む。いくつかの実施形態では、反応成分は、分子量改質剤を更に含む。パラ-ジハロベンゼン化合物は、以下の式で表される:
(式中、X
1及びX
2は、F、Cl、Br、I、及びAtからなるハロゲンの群から独立して選択される)。いくつかの実施形態では、X
1及びX
2は、同じである。いくつかの実施形態では、R
1~R
4は、全て水素である。望ましいパラ-ジハロベンゼン化合物の例は、p-ジクロロベンゼン(「P-DCB」)、p-ジブロモベンゼン、p-ジヨードベンゼン、1-クロロ-4-ブロモベンゼン、及び1-クロロ-4-ヨードベンゼンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、反応成分は、式(5)による複数の別個のパラ-ジハロベンゼン化合物を含み得る。
【0023】
硫黄化合物は、チオ硫酸、チオ尿素、チオアミド、元素硫黄、チオカルバメート、金属二硫化物及びオキシ硫化物、チオ炭酸、有機メルカプタン、有機メルカプチド、有機硫化物、アルカリ金属硫化物及び二硫化物、及び硫化水素からなる群から選択される。好ましくは、硫黄化合物はアルカリ金属硫化物である。いくつかの実施形態では、アルカリ金属硫化物は、アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物からその場で生成される。例えば、Na2Sは、特に望ましいアルカリ金属硫化物である。Na2Sは、NaSHとNaOHからその場で生成できる。
【0024】
重合溶媒は、反応温度(後述)において、パラ-ジハロベンゼン化合物、硫黄化合物、及び合成されたPPSの溶媒となるように選択される。いくつかの実施形態では、重合溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。望ましい極性非プロトン性溶媒の例は、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、n,n-エチレンジピロリドン、n-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、ピロリドン、カプロラクタム、n-エチルカプロラクタム、スルホラン、n,n’-ジメチルアセトアミド、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含むが、これらに限定されない。好ましくは、重合溶媒はNMPである。重合溶媒がNMPを含む実施形態では、NMPは、NaOHと反応して、n-メチル-1,4-アミノブタノエート(「SMAB」)を形成することができる。
【0025】
上記の通り、いくつかの実施形態では、反応成分は、分子量改質剤を更に含む。分子量改質剤は、分子量改質剤を含まない合成スキームと比較して、PPSポリマーの分子量を増加させる。好ましくは、分子量改質剤は、アルカリ金属カーボネートである。アルカリ金属カーボネートは、式:R’CO2M’(式中、R’は、C1~C20ヒドロカルビル基、C1~C20ヒドロカルビル基、及びC1~C5ヒドロカルビル基からなる群から選択され、M’は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムからなる群から選択される)で表される。好ましくは、M’は、ナトリウム又はカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。好ましくは、アルカリ金属カルボン酸は、酢酸ナトリウムである。
【0026】
重合反応は、パラ-ジハロベンゼン化合物と硫黄化合物が重合してPPSポリマーを形成するように選択された反応温度で反応成分を接触させることによって実施される。いくつかの実施形態では、反応温度は、170℃~450℃、又は200℃~285℃である。反応時間(重合反応の持続時間)は、10分~3日、又は1時間~8時間であり得る。重合反応中、反応成分を液相に維持するために圧力(反応圧力)が選択される。いくつかの実施形態では、反応圧力は、0ポンド/平方インチゲージ(「psig」)~400psig、30psig~300psig、又は100psig~250psigであり得る。
【0027】
重合反応は、反応混合物を重合反応が止まる温度まで冷却することによって停止させることができる。「反応混合物」は、重合反応中に形成される混合物を指し、任意の残りの反応成分、形成されたPPSポリマー、及び反応副生成物を含む。冷却は、当技術分野で知られている様々な技術を使用して実施することができる。いくつかの実施形態では、冷却は、液体急冷を含み得る。液体急冷では、急冷液体を反応混合物に加えて反応混合物を冷却する。いくつかの実施形態では、急冷液体は、重合溶媒又は水、或いはこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、急冷液体の温度は、約15℃~99℃であり得る。いくつかの実施形態では、急冷液体の温度は、54℃~100℃(例えば、急冷液体が溶媒である実施形態では)又は15℃~32℃(例えば、急冷液体が水である実施形態では)であり得る。冷却は、反応器ジャケット又はコイルを使用して、重合反応が行われる反応容器(「重合反応器」)を冷却することによって更に促進することができる。明確にするために、重合反応の停止は、パラ-ジハロベンゼン化合物と硫黄化合物の完全な反応を意味するものではない。一般的には、停止は、重合反応が実質的に完了したとき、又はパラ-ジハロベンゼン化合物と硫黄化合物の更なる反応がPPSポリマーの平均分子量の著しい増加をもたらさないときに開始される。
【0028】
停止後、PPSポリマーは、PPSポリマー混合物として存在する。PPSポリマー混合物は、水、重合溶媒、塩(例えば、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウム)を含む反応副生成物、PPSオリゴマー(式(1)の10以下の繰り返し単位)、及び任意の未反応の反応物(例えば、溶媒、パラ-ジハロベンゼン化合物、及び分子量改質剤)(総称して、「反応後の化合物」)を含む。一般的に、停止後、PPSポリマー混合物は、PPSポリマーを含む液相及び固相を有するスラリー(液体急冷中に溶媒から沈殿する)として存在する。いくつかの実施形態では、PPSポリマー混合物は、例えば、停止後のスラリーの濾過によって、湿潤PPSポリマーとして存在することができる。PPSポリマー混合物は、PPSポリマー混合物の総重量に対して、PPSポリマー、5重量%未満のイオン性塩、30重量%超の重合溶媒(例えば、NMP)、及び0.1重量%超のパラ-ジクロロベンゼンを含む。イオン性塩に関して、選択された金属カチオンのいずれか1つの濃度は、100ppm未満である。重合と停止を含むPPSポリマー合成、及び酸処理と金属カチオン処理を含む回収については、2013年12月19日に出願されたFodorらの米国特許出願公開第2015/0175748号明細書(「748特許」)で説明されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
停止後、回収プロセスが実施される。回収プロセスは、1992年6月24日に出願されたReedの米国特許第5,266,680号明細書に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、選択された金属カチオンは、回収プロセス中に所望の濃度でPPSポリマーに効率的に組み込まれ得る。回収プロセスは、1つ以上の反応後処理を含み、1つ以上の反応後処理のそれぞれは、PPSポリマー混合物を処理液と接触させ、続いて処理液を除去することを含む。一般的に、処理液は、PPSポリマーから1つ以上の反応後化合物を除去するのに役立つと同時に、末端保護剤との化学反応を回避するのに役立つように選択される。しかしながら、選択された金属カチオンが回収プロセス中にPPSポリマーに組み込まれる実施形態では、1つ以上の後反応処理のうちの少なくとも1つの処理液が選択されて、選択された金属カチオンを所望の濃度でPPSに組み込む。従って、このような実施形態では、1つ以上の後反応処理のうちの少なくとも1つの処理液は、選択された金属カチオンを含む。
【0030】
選択された金属カチオンをPPSポリマーに組み込むための望ましい処理液の例は、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、水酸化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、チオシアン酸カルシウムを含むが、これらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施形態では、接触することは、フィルター上で、処理液でPPSポリマー混合物を洗浄することを含む。洗浄中、処理液は、PPSポリマー混合物と接触し、その後、ろ液として除去され、処理されたPPSポリマー混合物はフィルターに残る。他の実施形態では、処理液とPPSポリマー混合物を容器にて一緒に加え、混合してスラリーを形成することができる。続いて、スラリーから処理液をデカントし、処理されたPPSポリマー混合物を容器に残すことにより、処理液を除去することができる。当業者は、反応後処理のそれぞれの後に、PPSポリマー混合物の組成が変化することを認識するであろう。特に、液体処理は1つ以上の反応後化合物の除去に役立つため、PPSポリマー混合物中のこれらの化合物の濃度は、少なくとも1つの反応後処理のそれぞれの後に減少し、場合によっては、検出可能な限界を下回っている場合がある。当然ながら、選択された金属カチオンが回収プロセス中に所望の濃度でPPSポリマーに組み込まれる実施形態では、所望の金属カチオンの濃度は、反応後処理の前の所望の金属カチオンの濃度と比較して、反応後処理の後に増加する。
【0032】
回収中の選択された金属カチオンのPPSへの組み込みは、PPSポリマー混合物が、選択された金属カチオンを含む処理液と接触される少なくとも1つの反応後処理を伴う。このような反応後処理の数は、特に限定されない。本明細書の開示に基づいて、当業者は、最終的な乾燥したPPSポリマーにおいて、上記の通り、所望の選択された金属カチオン濃度を得るための、処理の数、各処理液内の選択された金属カチオン濃度、及び全ての反応後反応処理の順序を含むが、これらに限定されない、反応後処理のパラメータを選択する方法を知っているであろう。反応後処理の順序(例えば、選択された金属カチオンをPPSポリマーに組み込むための反応後処理の順序とそうでないもの)に関しては、順序は特に限定されない一方で、選択された金属カチオンをPPSポリマーに組み込む1つ以上の反応後処理のそれぞれが、他の全ての反応後処理に続いて連続して実施されることが好ましい。最も好ましくは、以下で詳細に説明するように、選択された金属カチオンをPPSポリマーに組み込む1つ以上の後反応処理を、乾燥の直前に実施する。
【0033】
回収プロセスに続いて、PPSポリマー混合物を乾燥させることができる。乾燥は、PPSポリマー混合物を実質的に乾燥させることができる任意の温度で実施して、乾燥したPPSポリマーを生成することができる。望ましくは、乾燥プロセスは、PPSポリマーの酸化的硬化を防ぐのを助けるように選択される。例えば、乾燥プロセスが少なくとも100℃の温度で実施される場合、乾燥は、実質的に非酸化性の雰囲気(例えば、実質的に無酸素の雰囲気、又は大気圧よりも低い圧力で、例えば、真空下で)で実施することができる。乾燥プロセスが100℃未満の温度で行われる場合、大気圧未満の圧力で乾燥を行うことにより乾燥プロセスを容易にすることができ、結果、PPSポリマー混合物から液体成分を気化させることができる。乾燥が100℃未満の温度で行われる場合、ガス状の酸化性の雰囲気(例えば、空気)の存在は、一般的に、PPSポリマーの検出可能な硬化をもたらさない。
【0034】
PPSポリマー組成物
いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、PPSポリマーに加えて、平坦なガラス繊維、有機染料、又はこれらの組み合わせを含む。
【0035】
ガラス繊維は、異なるタイプのガラスを生み出すように調整することができるいくつかの金属酸化物を含むシリカ系ガラス化合物である。主な酸化物は、ケイ砂の形態のシリカであり、カルシウム、ナトリウム及びアルミニウムなどの他の酸化物が、溶融温度を低下させ、及び結晶化を妨げるために組み込まれる。A、C、D、E、M、S、R、Tガラス繊維を含むがこれらに限定されない全てのガラス組成物(Additives for Plastics Handbook,2nd ed,John Murphyのchapter 5.2.3,43-48ページに記載)、或いはこれらの任意の混合物又はこれらの混合物を、PPSポリマー組成物に組み込むことができる。好ましくは、ガラス繊維は、R、S及びTガラス繊維である。R、S及びTガラス繊維は、ASTM D2343に従って測定される、典型的には少なくとも76、好ましくは少なくとも78、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも82GPaの弾性モジュラスを有する高モジュラスガラス繊維である。
【0036】
加えて、E、R、S及びTガラス繊維は、当技術分野で周知である。それらは特に、Fiberglass and Glass Technology,Wallenberger,Frederick T.;Bingham,Paul A.(Eds.),2010,XIV、chapter 5、197-225ページに記載されている。R、S及びTガラス繊維は、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物から本質的に構成される。特に、これらのガラス繊維は、典型的には、62~75重量%のSiO2、16~28重量%のAl2O3及び5~14重量%のMgOを含む。ポリマー組成物中に広く使用される通常のE-ガラス繊維と対照的に、R、S及びTガラス繊維は、10重量%未満のCaOを含む。
【0037】
上記の通り、本明細書で対象となるガラス繊維は、平坦なガラス繊維である。「平坦なガラス繊維」という用語は、非円形の断面積を有するガラス繊維を指す。平坦なガラス繊維は、ガラス繊維の直径に対する長さの比として定義されるアスペクト比によって特徴付けることができる。本明細書で対象となる実施形態では、平坦なガラス繊維は、1~4、1~3、又は1~2のアスペクト比を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物中の平坦なガラス繊維濃度は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%である。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、PPSポリマー中の平坦なガラス繊維濃度は、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下である。いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物中の平坦なガラス繊維濃度は、5重量%~60重量%、10重量%~55重量%、15重量%~50重量%、又は20重量%~45重量%、20重量%~45重量%、20重量%~40重量%、又は25重量%~40重量%である。
【0039】
いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、有機染料を含む。「有機染料」という用語は、390~700nmの波長の可視光を吸収し、従って前述の染料に色を与える炭素系の分子を指す。加えて、本明細書で対象となる有機染料は、IR透明有機染料又はIR吸収性有機染料のいずれかである。IR透明有機染料は、800nm~1mmの範囲内の波長で少なくとも20%の透過率を有する。IR吸収性有機染料は、800nm~1nmの範囲内で10%以下の透過率を有する。透過率は、実地例で記載されているように測定できる。
【0040】
IR透明有機染料の例は、アントラセン系の染料、アントラキノン系の染料、及びペリレン系、ペリノン系、複素環系、ジスアゾ系及びモノアゾ系の染料などの有機染料を含むが、これらに限定されない。IR吸収性有機染料の例は、フタロシアニン系の染料及びポリメチン系の染料を含むが、これらに限定されない。
【0041】
当然ながら、いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、複数の有機染料を含む。例えば、青色の有機染料、赤色の有機染料及び黄色の有機染料の組み合わせ、緑色の有機染料、赤色の有機染料及び黄色の有機染料の組み合わせ、青色の有機染料、緑色の有機染料及び赤色の有機染料及び黄色の有機染料の組み合わせ、並びに緑色の有機染料、紫色の有機染料及び黄色の有機染料の組み合わせを使用することができる。一般的に、青、紫、緑の色を示す有機染料は、黒色の染料を生成するための主成分であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物中の有機染料の濃度は、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも0.7重量%である。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物中の有機染料の濃度は、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下である。いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物中の有機染料の濃度は、0.1重量%~5重量%、0.2重量%~4重量%、0.5重量%~3重量%、又は0.7重量%~2重量%である。
【0043】
当然ながら、いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、いかなる有機染料も含まない。このような実施形態では、PPSポリマー組成物中の有機染料の濃度は、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満である。
【0044】
いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、980nmで少なくとも25%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、又は少なくとも30%の透過率を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物は、940nmで少なくとも25%、少なくとも27%、少なくとも28%、又は少なくとも29%の透過率を有する。明確にするために、PPSポリマー組成物が本質的にPPSポリマーからなる場合(更なる成分の総濃度は0.01重量%未満である)、980nm及び940nmでの透過率は、PPSポリマーに対して上記のそれぞれの範囲内であり得る。他方、PPSポリマー組成物がIR吸収性有機染料を含むいくつかの実施形態では、980nm及び940nmでの透過率は、10%以下、5%以下、2%以下、又は1%以下である。透過率は、以下の実施例に記載されるように測定できる。
【0045】
PPSポリマー組成物の形成
PPSポリマー組成物は、当業者に周知の方法によって作製することができる。このような方法は、溶融混合プロセスを含むが、これに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも上でポリマー成分を加熱し、これにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態では、処理温度は、約280~450℃、好ましくは290℃~440℃、300℃~430℃、又は310℃~420℃の範囲である。適切な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、1軸押出機、及び2軸押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のどちらかに投与するための手段を備えた押出機が用いられる。いくつかの実施形態では、PPSポリマー組成物の成分、例えば、PPSポリマー、及び任意の更なる成分、例えば、ガラス繊維及び有機顔料は、溶融混合装置に供給され、その装置にて溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給され得る、又は別々に供給され得る。
【0046】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態では、成分は、所望量の各成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態では、第1のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1つ以上の残りの成分を、更なる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、各成分の総所望量が単一量として混合される必要はない。例えば、成分の1つ以上において、一部の量を最初に添加し、混合し、続いて、残りの一部又は全てを添加して混合することができる。
【0047】
PPSポリマー組成物のレーザー溶接
上で詳細に説明したように、少なくとも部分的には、本明細書に記載のPPSポリマー組成物の優れた透明性のために、PPSポリマー組成物は、望ましくはレーザー溶接することができる。
【0048】
レーザー溶接では、IR光線を使用して2つのポリマー組成物間に接着接合部を作成することを伴う。レーザー溶接では、第1のポリマー組成物と第2のポリマー組成物が接触して、2つのポリマー組成物間に界面(「ポリマー-ポリマー界面」)を形成する。第1のポリマー組成物は、光線に対して透明であり(800mm~1mmの範囲内の波長で少なくとも20%の透過率を有する)、第2のポリマー組成物は、光線を吸収する(800mm~1mmの範囲内で10%以下の透過率を有する)。ポリマー-ポリマー界面は、光線を第1のポリマー組成物の一部に通すことによって光線で照射される。光線が第2のポリマー組成物と接触するポリマー-ポリマー界面では、第2のポリマー組成物は、光を吸収し、IR照射を熱に変換する。発生した熱は、光によって接触される場所で第2のポリマー組成物を溶融する。加えて又、発生した熱は、第2のポリマー組成物から第1のポリマー組成物に伝導され、第1のポリマー組成物の一部を溶融する。最終的に、第1のポリマー組成物及び第2のポリマー組成物を含む溶融物が形成される。続いて光源が動かされる(又は除去される)と、溶融物は冷却し、第1のポリマー組成物と第2のポリマー組成物のブレンドを含む固体接着接合部を形成する。
【0049】
本明細書で対象となる実施形態では、第1のポリマー組成物は、PPSポリマー組成物である。第2のポリマー組成物は、特に限定されない。一般的に、第2のポリマー組成物は、PPSポリマー組成物と同様の融点を有し、好ましくは、PPSポリマー組成物の融点以下である。いくつかの実施形態では、第2のポリマー組成物もPPSポリマー組成物である。代替の実施形態では、第2のポリマー組成物は、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン(高密度及び低密度)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、IR光線は、ポリマー-ポリマー界面を照射する前にPPSポリマー組成物を通過する。このような実施形態では、IR光線は、第2のポリマー組成物によって吸収されて、上記の通り接合部を形成する。当然ながら、第2のポリマー組成物は、望ましくは第2のポリマー組成物との接合部を形成するのに十分なIR吸収を有する。PPSポリマー組成物が有機染料を含む場合、有機染料は、PPSポリマー組成物による望ましくない量のIR吸収を回避するために、IR透明有機染料であるように選択される。当然ながら、第2のポリマー組成物が本明細書に記載のPPSポリマー組成物でもある場合、PPSポリマー組成物は、第2のポリマー組成物が所望の量のIR光を吸収して接合部を形成するように、IR吸収性有機染料を含む。代替の実施形態では、IR光線は、ポリマー-ポリマー界面を照射する前に、第2のポリマー組成物を通過する。このような実施形態では、PPSポリマー組成物は、PPSポリマー組成物からの望ましい量のIR吸収をもたらすために、IR吸収性有機染料を含む。当然ながら、第2のポリマー組成物は、望ましい接合部の形成を可能にするのに十分なIR透明度を有する(例えば、所望の量のIR光がポリマー-ポリマー界面に接触することを可能にするために)。第2のポリマー組成物が本明細書に記載のPPSポリマー組成物である実施形態では、PPSポリマー組成物が有機染料を含む場合、それはIR透明有機染料である。
【0051】
接合部の形態は、特に限定されない。特定の接合部の形状は、ポリマー-ポリマー界面に渡るパターンに従ってIR光線を移動させることによって得ることができる。このような実施形態では、最終的に形成される接合部は、パターンの形状を有する。本明細書の開示に基づいて、当業者は、デューティサイクル(duty cycle)及び移動速度を含むがこれらに限定されないレーザーのパラメータを調整して、望ましい強度を有する接合部を得る方法を知っているであろう。
【0052】
溶接された接合部は、様々な物品に組み込むことができ、PPSポリマー組成物の機械的強度、耐熱性、及び耐薬品性を活用して性能を改善させることができる用途設定において特に望ましい。一例では、溶接された接合部を自動車部品に組み込むことができる。ボンネット自動車部品は、高熱、高応力、及び非常に高い腐食性の環境故に、PPSポリマー組成物の特に望ましい用途設定である。溶接された接合部を組み込んだ物品の他の例は、モバイル電子デバイス部品、航空宇宙部品、フィルター部品(例えば、布地)、電気絶縁部品、膜部品、及びガスケット部品を含む。
【実施例】
【0053】
実施例は、PPSポリマー及びPPSポリマー組成物の光学的及び機械的性能を実証する。
【0054】
PPSポリマーは、以下のスキームに従って合成した。1Lチタン反応器に、27.20gのNaOHペレット(0.680モル)、18.05g(0.220モル)の酢酸ナトリウム、62.83gのNaSH水和物(59.49重量%のNaSH、0.6667モルのNaSH)、及び167gのn-メチルピロリドン(「NMP」)を加えた。反応器を密閉し、窒素(92psig)で5回加圧/排気し、320rpmで撹拌し、45分かけて150oCに温めた。その間、98.00gの1,4-ジクロロベンゼン(「DCB」)(0.667モル)及び50gのNMPを、加熱テープで包まれた300mLステンレス鋼添加容器に加えた。添加容器を窒素で5回加圧及び排気し、窒素で90psigに加圧し、次いで100oCに加熱してDCBを完全に溶融した。内部反応器温度が150oCに達し、圧力が40psigに達した後、反応器をゆっくりと排気し、透明な凝縮液を収集した。水を除去するのを助けるために、少量の窒素流を反応器に加えた。40分後、28gの凝縮液を収集し、内部反応器温度は、200℃に達した。凝縮器を取り外し、窒素の流れを止め、温かいDCB添加容器(約120pisg)の内容物を反応器に加えた。添加容器を取り外して開き、25mLのNMPを加えた。添加容器を加圧し、窒素で3回排気し、窒素で90psigに加圧し、NMPのリンス液を反応器に加えた。反応器を密閉し、20分かけて240℃に温めた。
【0055】
240℃で2時間後、温度を30分かけて265℃に上げ、反応器を更に2時間265℃に維持した。最終圧力は、140psigであった。ヒーターを下げ、攪拌機の速度を120rpmに下げ、反応器の内容物を1時間かけて1.6oC/分で冷却した。攪拌機を停止し、反応器を周囲温度まで冷却した。
【0056】
次いで、反応器(約15psig)を排気して開いた。濃厚なオフホワイトのスラリー(反応混合物)を反応器から取り出し、大きなPTFEでコーティングされたマグネチックスターラーを備えた3Lステンレス鋼ビーカーに入れた。200mLのNMPをスラリーに加え、混合物を攪拌して80oCに温めた。次いで、スラリーを、温めながら600mLの中程度の多孔性の焼結ガラスフィルターで濾過して、透明な黄色の濾液及びオフホワイトの固体(塩及びポリマー)を得た。フィルターのケーキを、100mLの温かいNMPで1回洗浄し、NMPで湿潤した個体を、300mLの80oCの脱イオン(「DI」)水でステンレス鋼ビーカーに戻した。スラリーを15分間撹拌し、乳白色の上清を3Lプラスチックビーカーにデカントした。残りの粗固体を、同じ方法で更に2回洗浄した。最後の2回の洗浄では、1.2gの酢酸カルシウムをスラリーに加えた(選択された金属カチオン濃度を少なくとも400ppmに増加させるため)。スラリーを15分間撹拌し、上澄みをデカントした。最後の洗浄後、上澄みはほぼ透明であった。次いで、粗ポリマーを濾過により単離し、フィルター上で熱い脱イオン水で3回洗浄した。次いで、固体を真空オーブンにて90~100℃/26インチHgで一晩、少量の窒素流で乾燥させて、62g(86%の収率)の粗い白色ポリマーを得た。
【0057】
PPSポリマー組成物試料は、約200rpmのスクリュー速度、15kg/時間の処理速度、及び約330℃の溶融温度を使用して、約300℃のバレル設定で作動する26mm2軸スクリュー押出機(CoperionによるZSK26)において下記の成分を溶融ブレンドすることによって調製した。ガラス繊維及び他の更なる成分を、スクリューサイドフィーダー(screw side feeder)を介して溶融物に加えた。PPSポリマー組成物の成分は、以下の通りであった:
-シラン(カップリング剤):Momentive Performance MaterialsInc.からSilquestA-187(登録商標)として市販されている。
-丸いガラス繊維:Nippon Electric GlassからT-779Hとして市販されている。
-平坦なガラス繊維:CSG 3PA-820として市販されており、アスペクト比が1:4でNittoboから市販されている。
-有機染料1:Clariantから市販されている黒色レーザー染料。
-有機染料2:Orient Chemical Industries Co.,Ltd.からEbind(登録商標)LTW-8400Cとして市販されている黒色IR透明染料。
-有機染料3: Orient Chemical Industries Co.,Ltd.からEbind(登録商標)LAW-4800として市販されている黒色IR吸収性染料。
【0058】
PPSポリマー及びPPSポリマー組成物中のカルシウムイオン濃度は、以下の通りICP-OESを使用して測定した。きれいで乾燥した白金るつぼを分析天びんに置き、天びんをゼロにした。半グラムから3グラムのPPSポリマー試料を皿に量り取り、重量を0.0001gと記録した。試料の入ったるつぼを、マッフル炉(Thermo Scientific Thermolyne F6000 Programmable Furnace)に入れ、ドアを閉めた。炉を徐々に525℃に加熱した。試料をその温度で10時間乾式灰化した。灰化サイクルが完了し、炉が室温まで冷却されたら、るつぼを炉から取り出し、ドラフト内に置いた。灰を希塩酸中に溶解した。ポリエチレン製ピペットを使用して、この溶液を25mLの体積フラスコに移した。るつぼを約5mLの超純水(R<18メガオーム-センチメートル(「MΩcm」)、Rは電気抵抗率)で2回注ぎ、これらの洗浄液をメスフラスコに加えて定量的移送(quantitative transfer)を行った。25mLフラスコの印まで超純水を加えた。フラスコの上部に栓をして、十分に混合するまで内容物を振とうした。
【0059】
ICP-OES分析は、誘導結合プラズマ発光分光器Perkin-Elmer Optima 8300 dual viewを使用して実施した。発光分光器は、0.0~10.0mg/Lの被分析物濃度を有する一組のNISTトレーサブル多要素混合標準物質を使用して較正した。48の検体それぞれについて0.9999より優れた相関係数を備える濃度の全範囲で線形較正曲線を得た。標準物質は、機器安定性を保証するために10の試料毎の前後に実施した。結果は、3回の実験の平均値として報告した。試料中の各元素不純物の濃度は、以下の方程式を用いて計算した:A=E×(B×C)/D、式中、Aは、試料中のμ当量での末端保護剤濃度であり、Bは、ICP-OESによって分析された溶液中のmg/Lでの末端保護剤濃度であり、Cは、ICP-OESによって分析された溶液のmLでの体積であり、Dは、手順で使用されたグラムでの試料重量である。カルシウム末端保護剤の分析では、Eは(1/40)である。
【0060】
透過率は、以下の通り測定した。試料は、以下の寸法:60mm×60mm×2mmを有するプラークに成形した。透過率は、Perkin Elmer Lambda 950分光光度計を使用して980nm及び940nmで測定した。結果をパーセント透過率で報告する。
【0061】
実施例1:PPSポリマー組成物のIR透過率に対するイオン濃度の効果
この実施例は、PPSポリマー組成物の透過率に対するイオン濃度の効果を実証する。
【0062】
イオン濃度の効果を実証するために、5つのPPSポリマー組成物を形成した。試料E1~E3は、上記の通り形成した(選択された金属イオン濃度を上げるために酢酸カルシウムで洗浄した)。試料CE1及びCE2も上記の通り形成したが、酢酸カルシウム洗浄の代わりに水洗浄(CE1)及び酸洗浄(CE2)を用いた。各試料について、940nm及び980nmでの透過率を試験した。表1に、試験した各試料の試料パラメータを示す。本明細書で使用される場合、「CE」は比較例を示し、「E」は本明細書による例示的な実施形態を示す。
【0063】
【0064】
表1を参照すると、試験された試料について、少なくとも400ppmのカルシウムイオン濃度を有するPPSポリマー組成物は、400ppm未満のカルシウムイオン濃度を有するPPSポリマー組成物と比較して、一般的に、980nm及び940nmの両方で透過率が増加した。980nmでは、試料1~3の透過率が、CE1とCE2の両方と比較して増加した。940nmでは、試料1~3の透過率が、両方のCE1と比較して増加し、試料2及び3の透過率が、CE2と比較して増加した。
【0065】
実施例2:PPSポリマー組成物のIR透過率に対する強化フィラーと相溶化剤の効果
本実施例は、PPSポリマー組成物の透過率と機械的性能に対するガラス繊維のタイプとシランの効果を実証する。
【0066】
ガラス繊維の効果を実証するために、PPSのカルシウム含有量を増加させるために酢酸カルシウム洗浄を使用して、上記の通り4つの試料を形成した。試料E4、E5、及びE7の場合、シランをカップリング剤として加えた。加えて、試料E4は、丸いガラス繊維(T-779H、Nippon Electric Glassから市販)を用いて形成し、試料E5~E7は、平坦なガラス繊維(CSG3PA-820、Nittoboから市販)を用いて形成した。
【0067】
初期の機械的引張り特性、破断応力(引張り強度)及び破断歪み(破断伸び)は、ISO 527-2/1Aに従って測定し、表2に報告する。測定は、射出成型されたISO引張り試験片に対して実施した。試験片の型温度は、135~150℃の範囲であり、溶融温度は、300~340℃の範囲であった。試験棒の厚さは、4mmであり、これらの幅は、10mmであった。ISO527-2/1Aに従って、引張り強度及び伸びを、5mm/分の試験速度で決定した。
【0068】
【0069】
表2を参照すると、試験された試料について、驚くべきことに、シランを含む試料は、980nmでの透過率に悪影響を与えることなく機械的性能が向上していることがわかった。例えば、試料E5と試料E6を比較すると、シラン相溶化剤(E5)を加えると、驚くべきことに、980での透過率に大きな悪影響を与えることなく、機械的性能が向上したが、シラン相溶化剤が存在する場合、940での透過率はわずかに低くなったことを実証している。更に、試料CE4と試料E5を比較すると、平坦なガラス繊維(E5)を含むPPSポリマー組成物は、丸いガラス繊維(E4)を含む対応するPPSポリマー組成物と比較して、980nm及び940nmでの透過率が驚くほど改善し、並びに衝撃強度が改善したことを実証している。更に、試料E7は、40重量%のガラス繊維濃度でさえも、PPSポリマー組成物が、980nm、940nmで依然優れた透過率を有し、並びに衝撃性能が大幅に改善していることを実証している。
【0070】
実施例3:透過率に対するメルトフロー速度の効果
本実施例は、PPSポリマー組成物の透過率に対するメルトフロー速度の効果を実証する。
【0071】
メルトフロー速度の効果を実証するために、上記の通り3つの試料を形成した。表3に、試料のパラメータを示す。
【0072】
【0073】
表3を参照すると、かなりの範囲のメルトフロー速度に渡り、試料E8~E10のパーセント透過率は、予想外に、互いの約3%~3.5%以内に留まっている。
【0074】
実施例4:透過率に対する有機染料の効果
本実施例は、PPSポリマー組成物の透過率に対する有機染料の効果を実証する。
【0075】
有機染料の効果を実証するために、7つの試料を上記の通り形成した。試料のパラメータ及び試験結果を表4に示す。
【0076】
【0077】
表4を参照すると、IR透明有機染料を含む試料は、IR透明有機染料を含まない試料と同様の光学性能を有した。例えば、試料E11(IR透明有機染料)と試料E14(IR透明染料なし)の透過率は同じであり、PPSポリマー組成物に黒色を付与すること(自動車及びモバイル電子デバイス用途で望まれるが、これらに限定されない)は、光学性能にそれほど影響を及ぼさないことを実証している。一方、試料E12(IR吸収性有機染料)と試料E14を比較すると、IR吸収性有機染料を使用した場合にIR吸収が優れる(低いIR透過率)ことを実証している。
【0078】
更なる発明の概念
1.Al、Ba、Ca、K、及びMg、好ましくはAl、Ba、Ca、K、及びMg、最も好ましくはCa、及び1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属カチオンを有するPPSポリマーを含むPPSポリマー組成物であって、金属カチオンの濃度は、少なくとも400ppm、及び1000ppm以下である、PPSポリマー組成物。
【0079】
2.PPSポリマーは、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%の平坦なガラス繊維を更に含む、発明の概念1のPPSポリマー組成物。
【0080】
3.PPSポリマーは、60重量%以下、好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下、更により好ましくは45重量%以下、最も好ましくは40重量%以下の平坦なガラス繊維を含む、発明の概念2のPPSポリマー組成物。
【0081】
4.PPSポリマー組成物は、980nmで、少なくとも25%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、又は少なくとも30%の透過率を有する、発明の概念1~3のいずれか一つのPPSポリマー組成物。
【0082】
5.PPSポリマー組成物は、940nmで、少なくとも25%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、又は少なくとも30%の透過率を有する、発明の概念1~4のいずれか一つのPPSポリマー組成物。
【0083】
6.PPSポリマー組成物は、IR透明染料又はIR吸収染料を更に含む、発明の概念1~5のいずれか一つのPPSポリマー組成物。
【0084】
7.界面をレーザー溶接して接合部を形成する方法であって、この方法は、
ポリマー-ポリマー界面に赤外線(「IR」)光線を照射する工程を含み、
この場合、
-ポリマー-ポリマー界面は、第2のポリマー組成物と接触している発明の概念1~6のいずれか一つのPPSポリマー組成物を含み、
-照射する工程は、PPSポリマー組成物と第2のポリマー組成物とを含む接合部を形成する。
【0085】
8.IR光線は、ポリマー-ポリマー界面を照射する前にPPSポリマー組成物を通過する、発明の概念7の方法。
【0086】
9.PPSポリマー組成物は、IR透明染料を含む、発明の概念7又は8のいずれかの方法。
【0087】
10.IR透明染料は、黒色有機染料である、発明の概念9の方法。
【0088】
11.
-IR光線は、ポリマー-ポリマー界面を照射する前に、第2のポリマー組成物を通過し、
-PPSポリマー組成物は、IR吸収染料を含む、発明の概念7の方法。
【0089】
12.IR吸収染料は、黒色有機染料である、発明の概念11の方法。
【0090】
13.第2のポリマー組成物は、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン(高密度及び低密度)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されるポリマーを含む、発明の概念7~12の方法。
【0091】
上記の実施形態は、例示的であり、限定的でないことが意図される。更なる実施形態は、本発明の概念内である。加えて、本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形式上及び詳細になされ得ることを認める。上記の文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明確な開示に反している主題はまったく援用されないように限定される。