(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】共重合体、及び複合樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
C08F220/18
(21)【出願番号】P 2021524811
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021321
(87)【国際公開番号】W WO2020246381
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019106372
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】近野 光知
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104509(JP,A)
【文献】特開平3-7758(JP,A)
【文献】特開平5-239331(JP,A)
【文献】特開平9-31317(JP,A)
【文献】特開2008-56798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08F 220/00-70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキサゾリン基含有モノマー単位と、(メタ)アクリレート単位とを有し、
前記オキサゾリン基含有モノマー単位が、全モノマー単位100質量部に対して、7質量部以上であり、
前記(メタ)アクリレート単位が、全モノマー単位100質量部に対して、50質量部以上であり、
JIS K0071に基づいて決定されるハーゼン単位色数が300以下であり、
重量平均分子量が23,000~80,000である、
酸性プロトン含有基を分子鎖末端に有するポリカーボネートの改質用共重合体。
【請求項2】
分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、1.5以上、8以下である請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
ガラス転移温度(Tg)が、70℃以上である請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の共重合体と、
酸性プロトン含有基を分子鎖末端に有するポリカーボネートとを含有する複合樹脂。
【請求項5】
前記共重合体と前記ポリカーボネートとが界面がないか、又は海島構造の状態で存在し、この島の大きさを原子間力顕微鏡の粘弾性モードで測定したとき、島の99%以上(個数基準)が円相当直径0.1μm以下である請求項4に記載の複合樹脂。
【請求項6】
前記共重合体の含有割合が、前記ポリカーボネート100質量部に対して、1~100質量部である請求項4又は5に記載の複合樹脂。
【請求項7】
鉛筆硬度が5B以上である、請求項4~6のいずれかに記載の複合樹脂。
【請求項8】
JIS K6251に準じて測定した引張強さが95MPa以上である請求項4~7のいずれかに記載の複合樹脂。
【請求項9】
厚さが100μmのフィルムのときのヘイズが15%以下である請求項4~8のいずれかに記載の複合樹脂。
【請求項10】
厚さが100μmのフィルムにしたときの全光線透過率が、70%以上である請求項4~9のいずれかに記載の複合樹脂。
【請求項11】
ガラス転移温度(Tg)が100℃以上にある、請求項4~10のいずれかに記載の複合樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共重合体の利用技術に関するものであり、特に前記共重合体を用いた酸性プロトン含有熱可塑性樹脂の改質技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系重合体は、透明性、硬さなどの種々の物性が優れており、改質剤として使用されることがある。例えば、特許文献1及び2には、ポリカーボネート樹脂にアクリル系重合体であるアクリル系改質剤を添加することにより、ポリカーボネート樹脂の表面硬度を向上させることが記載されている。しかし、アクリル系改質剤をポリカーボネート樹脂に添加すると、改質剤添加後に得られる樹脂に白濁が生じ、(メタ)アクリル系重合体の透明性が良好であるという利点を生かすことができない。そこで特許文献1では、メチルメタクリレートを芳香族(メタ)アクリレートと共重合することで、アクリル系改質剤添加後に得られる樹脂の透明性の低下を改善している。また特許文献2では、ポリカーボネート主鎖にポリメタクリル酸メチルをグラフトした共重合体を第3成分として添加することで、アクリル系改質剤添加後に得られる樹脂の透明性の低下を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-116501号公報
【文献】特開2016-117849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、共重合成分としての芳香族(メタ)アクリレートやポリカーボネート主鎖は、いずれもポリカーボネート樹脂が有する芳香族環との親和性を改善する目的で使用されているものであり、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂には適用できず、その技術の適用範囲はポリカーボネート樹脂に限定される。また、共重合成分に芳香族環を有すると、光学特性や耐候性が優れない場合がある。
従って本発明の目的は、種々の熱可塑性樹脂由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ、該熱可塑性樹脂を改質可能な(メタ)アクリル系重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が鋭意検討したところ、(メタ)アクリル系モノマーをオキサゾリン基含有モノマーと共重合させた共重合体を改質剤として用い、かつ熱可塑性樹脂として酸性プロトン含有熱可塑性樹脂を用いた場合、該熱可塑性樹脂由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ改質できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の一態様は、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂の改質用共重合体であり、該改質用共重合体は、オキサゾリン基含有モノマー単位と、(メタ)アクリレート単位とを有し、前記オキサゾリン基含有モノマー単位が、全モノマー単位100質量部に対して、1質量部以上である。
本発明の他の一態様は、共重合体であり、該共重合体は、オキサゾリン基含有モノマー単位と、(メタ)アクリレート単位とを有し、オキサゾリン基含有モノマー単位が、全モノマー単位100質量部に対して、1質量部以上であり、JIS K0071に基づいて決定されるハーゼン単位色数が80以下である。
本発明の別の一態様は、複合樹脂であり、該複合樹脂は、オキサゾリン基含有モノマー単位と、(メタ)アクリレート単位とを有し、前記オキサゾリン基含有モノマー単位が、全モノマー単位100質量部に対して、1質量部以上である共重合体と、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂とを含有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一定の熱可塑性樹脂を、該熱可塑性樹脂由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ改質できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)共重合体
本発明の共重合体は、オキサゾリン基含有モノマー単位と、(メタ)アクリレート単位を有する共重合体である。オキサゾリン基含有モノマー単位と(メタ)アクリレート単位とは、ブロック共重合体を形成してもよく、ランダム共重合体を形成してもよく、ランダム共重合体を形成することが好ましい。共重合体が(メタ)アクリレート単位を有することで、熱可塑性樹脂を改質できる。また共重合体がオキサゾリン基含有モノマー単位を有することで、熱可塑性樹脂の酸性プロトンと共重合体との間に結合を形成でき、熱可塑性樹脂由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ、改質できる。
【0008】
前記オキサゾリン基含有モノマーは、重合性二重結合とオキサゾリン基とを有する化合物であればよく、芳香族環を有してもよく、有さなくてもよいが、芳香族環を有さない方が好ましい。芳香族環を有さないオキサゾリン基含有モノマーから得られる共重合体は、光学特性や耐候性に優れている。オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、ビニルオキサゾリン類、イソプロペニルオキサゾリン類、アリルオキサゾリン類などの炭素数2~4のアルキレン基にオキサゾリン環が結合した化合物が挙げられ、これらのうち芳香族環を有さないオキサゾリン基含有モノマーとしては、以下のものが例示される。
【0009】
前記ビニルオキサゾリン類としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリンなどのビニルオキサゾリンが挙げられ、前記ビニルオキサゾリンは置換基を有していてもよい。置換基を有するビニルオキサゾリンには、例えば、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-エチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-プロピル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-ブチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-プロピル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-ブチル-2-オキサゾリンなどのC1-20アルキル-ビニルオキサゾリン(好ましくはC1-10アルキル-ビニルオキサゾリン、より好ましくはモノ又はジC1-4アルキル-ビニルオキサゾリン)などのアルキル-ビニルオキサゾリンが含まれる。
【0010】
前記イソプロペニルオキサゾリン類としては、例えば、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンなどのイソプロペニルオキサゾリンが挙げられ、前記イソプロペニルオキサゾリンは置換基を有していてもよい。置換基を有するイソプロペニルオキサゾリンには、例えば、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-プロピル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-ブチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-プロピル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-ブチル-2-オキサゾリンなどのC1-20アルキル-イソプロペニルオキサゾリン(好ましくはC1-10アルキル-イソプロペニルオキサゾリン、より好ましくはモノ又はジC1-4アルキル-イソプロペニルオキサゾリン)などのアルキル-イソプロペニルオキサゾリンが含まれる。
【0011】
オキサゾリン基含有モノマーは、単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
オキサゾリン基含有モノマーとしては、イソプロペニルオキサゾリン類が好ましく、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンがより好ましい。
【0012】
前記オキサゾリン基含有モノマー単位の含有割合は、共重合体中の全モノマー単位100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは7質量部以上である。オキサゾリン基含有モノマー単位の含有割合が多いほど、熱可塑性樹脂由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ、該熱可塑性樹脂を改質できる傾向にある。またオキサゾリン基含有モノマー単位の含有割合は、共重合体中の全モノマー単位100質量部に対して、例えば、40質量部以下、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下であり、20質量部以下でもよい。オキサゾリン基含有モノマー単位の含有割合が少ないほど、共重合体中に(メタ)アクリレート単位を多く含有することが可能となり、熱可塑性樹脂の改質効果が大きくなる傾向にある。
【0013】
前記共重合体の(メタ)アクリレート単位を構成する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸のエステル結合の酸素原子に、直鎖状、分岐状または環状の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が結合した化合物;極性官能基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0014】
直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。アルキル基などの直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上であり、例えば、18以下、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。
【0015】
環状の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の橋掛け環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。シクロアルキル基、橋掛け環などの環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、例えば、20以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
【0016】
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸キシリル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ビナフチル、(メタ)アクリル酸アントリル等の(メタ)アクリル酸アリール;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールのアリール基の炭素数は、6以上が好ましく、また20以下が好ましく、14以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルのアラルキル基の炭素数は、7以上が好ましく、また14以下が好ましく、12以下がより好ましい。
【0017】
極性官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート、アリールオキシ基含有(メタ)アクリレート、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートには、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2-10アルキル;2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどの2-(ヒドロキシC1-2アルキル)アクリル酸C1-10アルキルなどが含まれる。前記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートには、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(好ましくは(メタ)アクリル酸C1-10アルコキシC2-10アルキル)が含まれる。前記アリールオキシ基含有(メタ)アクリレートには、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アリールアルキル(好ましくは(メタ)アクリル酸C6-12アリールC2-10アルキル)が含まれる。環状エーテル基含有(メタ)アクリレートには、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートが含まれる。
【0018】
前記(メタ)アクリレートは、単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
前記(メタ)アクリレートとしては、芳香族環を有さない(メタ)アクリレートが好ましい。(メタ)アクリレートが芳香族環を有さないと、得られる共重合体の光学特性や耐候性がより良好になる傾向にある。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましく、(メタ)アクリル酸C1-4アルキルがよりさらに好ましく、メタクリル酸C1-4アルキルが特に好ましく、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
【0019】
前記(メタ)アクリレート単位の含有割合は、共重合体中の全モノマー単位100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは65質量部以上である。(メタ)アクリレート単位の含有割合が多いほど、熱可塑性樹脂の改質効果が大きくなる。また(メタ)アクリレート単位の含有割合は、共重合体中の全モノマー単位100質量部に対して、例えば、98質量部以下、好ましくは97質量部以下、より好ましくは92質量部以下であり、80質量部以下でもよい。
【0020】
前記オキサゾリン基含有モノマー単位と、前記(メタ)アクリレート単位との合計の含有割合は、共重合体中の全モノマー単位100質量部に対して、例えば、60質量部以上であり、好ましくは80質量部以上であり、より好ましくは90質量部以上であり、特に好ましくは95質量部以上であり、100質量部でもよい。
【0021】
前記共重合体は、オキサゾリン基含有モノマー単位及び(メタ)アクリレート単位以外のモノマー単位(以下、「他のモノマー単位」という)を有していてもよい。他のモノマー単位を構成する他のモノマーとしては、スチレン系モノマー;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ベンジルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;置換基を有していてもよい無水マレイン酸などの無水マレイン酸誘導体;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどの置換基を有していてもよい(メタ)アクリルアミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アルキルビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなど)などのビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-オクテンなどのオレフィン系モノマー(好ましくは炭素数2~10のオレフィン系モノマー);塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化オレフィン系モノマー(好ましくは炭素数2~10のハロゲン化オレフィン系モノマー)などが挙げられる。
【0022】
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン;α-メチルスチレンなどのα-アルキルスチレン(好ましくはα-C1-4アルキルスチレン);ビニルトルエンなどのアルキルスチレン(好ましくはC1-4アルキルスチレン);クロロスチレンなどのハロスチレンなどが挙げられる。
【0023】
これら他のモノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
なお共重合体の主鎖に、オキサゾリン基含有モノマー単位と、(メタ)アクリレート単位に加えて、環構造を有する単位を有することも好ましい。共重合体の主鎖に環構造を有する単位を有することにより、共重合体の耐熱性が高まる傾向にある。
【0025】
前記環構造としては、ラクトン環構造、マレイミド又は無水マレイン酸に由来する環構造(以下、それぞれマレイミド構造、無水マレイン酸構造という)、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造などが挙げられ、該環構造は、前記(メタ)アクリレート単位の一部または全部を環構造化することによって形成されたものであってもよく、他のモノマーに由来するものであってもよい。
【0026】
ラクトン環構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと2-(ヒドロキシC1-2アルキル)アクリル酸C1-10アルキルとの共重合構造から、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合と2-(ヒドロキシC1-2アルキル)アクリル酸C1-10アルキルのヒドロキシ基の間で脱アルコール環化することで形成できる。マレイミド構造又は無水マレイン酸構造は、他のモノマーとしてのマレイミド系モノマー又は無水マレイン酸誘導体を共重合させることによって導入できる。無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造は、隣接する(メタ)アクリル酸エステル単位で酸無水物化することにより、又は該酸無水物をイミド化することにより形成でき、或いは隣接する(メタ)アクリル酸エステル単位と(メタ)アクリルアミド単位との間でイミド化することにより形成できる。
【0027】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、例えば、3,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、よりさらに好ましくは23,000以上、特に好ましくは25,000以上である。また重量平均分子量は、例えば、1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下、特に好ましくは150,000以下、最も好ましくは80,000以下である。
【0028】
前記共重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、例えば、1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.3以上であり、例えば、8以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.5以下である。
【0029】
前記共重合体のガラス転移温度は、例えば、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。ガラス転移温度が高いほど、高温での熱可塑性樹脂の改質が可能になる。またガラス転移温度は、例えば、150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0030】
なお共重合体のガラス転移温度は、下記FOX式により計算される(式中、wiは単量体iの質量割合、Tgiは単量体iの単独重合体のガラス転移温度(℃)である)。
1/(Tg+273)=Σ〔wi/(Tgi+273)〕
上記FOX式に用いる単量体の単独重合体のTgは、例えば「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」(J.BRANDRUP、E.H.IMMERGUT著、1989年、John Wiley & Sons,Inc.発行、ページ:VI/209~VI/277)に記載の値(ガラス転移温度が複数記載されている場合は、最も低い値)を採用すればよい。また、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」に記載されていない単量体については、市販のガラス転移温度計算ソフト(例えば、Accelrys Software Inc.製「MATERIALS STUDIO」、バージョン:4.0.0.0、モジュール:Synthia、条件:重合平均分子量10万で計算)を用いてコンピューターにより求めた値を用いることができる。前記ソフトを用いても算出できない場合には、該単量体を重合してガラス転移温度を求めることとする。
【0031】
前記共重合体は、着色していてもよいが、着色が少ない方が共重合体の透明性を有効に利用でき、好ましい。JIS K0071に基づいて決定される共重合体のハーゼン単位色数は、例えば、500以下、好ましくは300以下、より好ましくは150以下、よりさらに好ましくは80以下、最も好ましくは60以下である。ハーゼン単位色数が80以下のオキサゾリン基含有モノマー単位と(メタ)アクリレート単位とを有する共重合体は、いままで知られていない。なおハーゼン単位色数は、例えば、1以上、特に10以上であってもよい。着色の少ない共重合体は、共重時の重合開始剤を適切に選択することによって製造できる。
【0032】
前記共重合体は、重合開始剤を用いて所定のモノマーを重合させることによって製造でき、重合方法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれであってもよく、溶液重合が好ましい。
【0033】
重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系開始剤(アゾビスイソブチロニトリルなど)、過硫酸塩、無機過酸化物(過硫酸アンモニウムなど)などが挙げられ、有機過酸化物が好ましい。
【0034】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエートなどのC1-4アルキルパーオキシ基を有する有機過酸化物;ROO-基(式中、Rは炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を示す)を有する有機過酸化物などが挙げられ、ROO-基を有する有機過酸化物が好ましい。ROO-基を有する有機過酸化物を用いて重合すると、前記共重合体の着色を低減でき、共重合体の重量平均分子量、分子量分布なども好ましい範囲に調整できる。
【0035】
ROO-基を有する有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキシド類(例えば、ジ-t-ヘキシルパーオキシドなど)、アルキルパーオキシアルキルモノカーボネート類(例えば、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネートなど)、アルキルパーオキシアルカノエート(例えば、t-アミルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシアセテート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートなど)、アルキルパーオキシベンゾエート(例えば、t-ヘキシルパーオキシベンゾエートなど)、1,1-ジ(アルキルパーオキシ)シクロアルカン類(例えば、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンなど)などが挙げられる。
【0036】
前記共重合体は、(メタ)アクリレート単位を有するため、ポリ(メタ)アクリレートが有する優れた特性、例えば、透明性、硬さ、引張強さ、耐衝撃強さ、耐熱性、耐候性、加工性、密着性、相溶性、顔料や無機繊維の分散性などから選ばれる少なくとも1つで熱可塑性樹脂を改質できる。好ましくは、熱可塑性樹脂の硬さを高めることが可能である。
【0037】
(2)熱可塑性樹脂
改質対象とする熱可塑性樹脂としては、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂が選択される。酸性プロトン含有熱可塑性樹脂では、前記共重合体を加えても、各種特性の低下が抑制または防止されつつ、改質がされる。低下が抑制または防止される特性と改質される特性の組み合わせは、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定され、耐白濁性、透明性、耐熱性、硬さ、引張強さのうちの1つ以上を低下が抑制または防止される特性として選択し、また耐白濁性、透明性、耐熱性、硬さ、引張強さのうちの1つ以上を改質できる特性として選択できる。好ましくは、耐白濁性、透明性、引張強さ、耐熱性の1つ以上の低下を抑制しつつ(より好ましくは耐白濁性、透明性、引張強さの1つ以上の低下を防止しつつ)、硬さまたは引張強さ(より好ましくは硬さ)を改質することができる。(メタ)アクリレート単位の優れた特性(特に好ましくは硬さ)を利用して熱可塑性樹脂を改質しつつ、該(メタ)アクリレート単位を所定の共重合体とすることで、熱可塑性樹脂の性能低下を抑制または防止できる。
【0038】
前記酸性プロトンは、例えば、フェノール性水酸基、チオフェノール性SH基、カルボン酸基などの酸性プロトン含有基に由来する。前記酸性プロトン含有基は、分子鎖末端に有することが好ましく、該酸性プロトン含有基を有する樹脂は、重縮合物系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリチオエーテル系樹脂などが含まれる。
【0039】
酸性プロトン含有基を分子鎖末端に有する重縮合物系樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンなどのフェノール性水酸基を分子鎖末端に有する重縮合物系樹脂1;前記重縮合物系樹脂1のフェノール性水酸基がチオフェノール性水酸基に置き換えられた樹脂;ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミドなどのカルボン酸基を分子鎖末端に有する重縮合物系樹脂などが挙げられる。
前記ポリエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテルなどのフェノール性水酸基を分子鎖末端に有するポリエーテル系樹脂が含まれる。
前記ポリチオエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンスルフィドなどのチオフェノール性水酸基を分子鎖末端に有するポリチオエーテル系樹脂が含まれる。
【0040】
前記酸性プロトン含有熱可塑性樹脂は、単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。酸性プロトン含有熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミドなどのカルボン酸基を分子鎖末端に有する重縮合物系樹脂が好ましく、ポリカーボネート、ポリアリレートなどの分子鎖の一方の末端にカルボン酸基を有し、他方の末端にフェノール性水酸基を有する樹脂がより好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0041】
酸性プロトン含有熱可塑性樹脂を改質する前記共重合体の量は、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。共重合体の含有割合が高くなるほど、改質効果が大きくなる。また前記共重合体の量は、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、45質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。共重合体の含有割合が少なくなるほど、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂の特性を維持しやすくなる。
【0042】
前記酸性プロトン含有熱可塑性樹脂は、前記共重合体の存在下、例えば、混練(好ましくは溶融混練)することによって複合樹脂(ポリマーアロイ)化することで改質される。前記共重合体が特定のモノマー単位から構成されているため、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂と前記共重合体を含有しても、該共重合体は複合樹脂中で均一に分散する。そのため、複合樹脂において、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ、該熱可塑性樹脂を改質できる。
【0043】
前記共重合体は、複合樹脂中で酸性プロトン含有熱可塑性樹脂と相溶し、共重合体と熱可塑性樹脂との間に界面が存在しないことが好ましく、たとえ界面が存在しても共重合体が熱可塑性樹脂中で微細分散していることが好ましい。相溶している場合、又は微細分散しているほど、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂(正確には複合樹脂)由来の各種特性の低下を抑制または防止しつつ、改質効果が得られやすくなる。界面が存在する場合、熱可塑性樹脂を海とし、共重合体を島とする海島構造が形成され、この島状共重合体は、その99%以上(個数基準)が円相当直径で、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.1μm未満であることがよりさらに好ましい。
【0044】
なお海島構造における島の大きさは、複合樹脂の断面を原子間力顕微鏡の粘弾性モードで測定することによって決定でき、その詳細条件は、後述する実施例に記載のものに準ずる。
【0045】
前記複合樹脂は、各種特性(耐白濁性、透明性、耐熱性、硬さ、引張強さのうちの1つ以上など)の低下が抑制または防止されながら、適切な特性(例えば、耐白濁性、透明性、耐熱性、硬さ、引張強さのうちの1つ以上など)が改質されている。具体的には、前記複合樹脂を厚さ100μmのフィルムにしたときのヘイズは、例えば、15%以下であり、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。なお該ヘイズが1%以上でも、透明性は十分に良好である。
【0046】
また前記複合樹脂を厚さ100μmのフィルムにしたときの全光線透過率は、例えば、70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。なお全光線透過率の上限は、99%程度、特に95%程度であってもよい。
【0047】
前記複合樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、100℃以上であり、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは115℃以上である。ガラス転移温度(Tg)の上限は特に限定されないが、例えば、200℃程度、特に140℃程度であってもよい。
【0048】
前記複合樹脂の鉛筆硬度は、例えば、5B以上であり、好ましくは4B以上であり、より好ましくは3B以上である。鉛筆硬度は、例えば、F程度、又はH程度まで高めることが可能である。
【0049】
JIS K6251に準じて測定した前記複合樹脂の引張強さは、例えば、85Mpa以上であり、好ましくは95Mpa以上であり、より好ましくは100Mpa以上である。また引張強さの上限は、例えば、150MPa以下であり、好ましくは140MPa以下であり、より好ましくは130MPa以下である。
【0050】
酸性プロトン含有熱可塑性樹脂と前記共重合体とを含む前記複合樹脂は、必要に応じて、添加剤を含有させて樹脂組成物としてもよい。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;等が挙げられる。
【0051】
前記複合樹脂または前記複合樹脂を含有する樹脂組成物は、適宜、成形体にすることができる。成形体としては特に限定されず、フィルム、板などを含む種々の形態のものが挙げられる。
【0052】
本願は、2019年6月6日に出願された日本国特許出願第2019-106372号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年6月6日に出願された日本国特許出願第2019-106372号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
実施例及び比較例における物性又は特性の評価方法は以下の通りである。
[分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られた結果を、ポリスチレンで換算することにより重量平均分子量と数平均分子量を求める。
【0055】
[ハーゼン単位色数]
JIS K0071に基づき、比色管を用いて標準液と比較することにより重合溶液のハーゼン色数を測定する。
【0056】
[弾性率像(AFM)]
樹脂固形物をウルトラミクロトームで切断し、断面を原子間力顕微鏡(AFM)の粘弾性モードで確認する。硬い箇所と柔らかい箇所とを区別することで形成される海島構造のAFMイメージ画像(視野:5μm×5μm、分解能:0.1μmより十分小さい)を取得し、島部分の円相当直径を求める。島の円相当直径が小さいほど分散性が良好である。
AFM装置:BRUKER Dimension Icon
測定モード:PeakForceTappingモード(Air)
プローブ :RTESPA-300(ばね定数=40N/m)
【0057】
[フィルムの作製方法]
手動式加熱プレス機((株)井元製作所製、IMC-180C型)を用い、250℃の温度で20MPaの圧力にて樹脂ペレットを3分間溶融プレス成形し、厚さが100μmの未延伸フィルムを作製した。
【0058】
[ヘイズ及び全光線透過率]
ヘイズ及び全光線透過率は、濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH 5000)を用いて測定した。
【0059】
[耐熱性(ガラス転移温度;Tg)]
ガラス転移温度は、JIS K7121の規定に準拠して求めたときの値である。さらに詳しくは、示差走査熱量計((株)リガク製、商品名:Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、また参照としてα-アルミナを用い、窒素ガス雰囲気中で(メタ)アクリル系樹脂約10mgを室温から200℃まで昇温速度20℃/minで昇温し、得られたDSC曲線から始点法によって求めたときの温度である。
【0060】
[鉛筆硬度]
JIS K5600-5-4(1999年)に準じ、鉛筆引っかき硬度試験機((株)安田精機製作所製)を用い、荷重1,000gにて測定した。
【0061】
[引張強さ]
フィルムをJIS K6251の6.1に規定するダンベル状2号形に打ち抜くことにより、試験片を得た。得られた試験片を引張り試験機((株)島津製作所製、商品名:オートグラフAGS-100D)のチャック間距離が20mmとなるように取り付け、温度が20℃及び剥離速度が200mm/minの条件で試験片を引っ張り、引っ張り強さ(最大引張応力)を測定した。
【0062】
実施例1
トルエン100質量部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン(IPO)30質量部及びメチルメタクリレート(MMA)70部質量部からなる原料混合液を調製した。この原料混合液を質量比で40:60に分け、40質量%に相当するものを原料混合液1とし、60質量%に相当するものを原料混合液2とした。原料混合物2に、重合開始剤としてt-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製、商品名:カヤエステルAN)5質量部を混合し、原料混合物3とした。
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた2Lフラスコ内に、前記原料混合液1を投入し、窒素ガスをフラスコ内に10分間吹き込むことにより、フラスコ内を窒素ガス置換した後、フラスコ内を撹拌しながら温度100℃に昇温した。その後、前記原料混合物3を3時間かけてフラスコ内に連続滴下し(すなわち、重合成分濃度50質量%)、その後、5時間加熱を継続し、反応を完結させた。前記フラスコ内の内容物を25℃に冷却して、重合体を50質量%の濃度で含むオキサゾリン系重合体溶液(重合液1)を得た。
得られた重合液1を冷却して、大量のn-ヘキサン中に撹拌しながらゆっくり加えた。沈殿した白色の固体を取り出し、温度90℃で約3日乾燥し溶媒を除去することで共重合体1を得た。
【0063】
実施例2
IPOを30質量部から10質量部に変更し、MMAを70質量部から90質量部に変更する以外は実施例1と同様にして共重合体2を得た。
【0064】
実施例3
t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートに代えて2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)を用いる以外は実施例1と同様にして共重合体3を得た。
【0065】
実施例4
t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートに代えてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名:パーブチルO)を用いる以外は実施例1と同様にして共重合体4を得た。
共重合体1~4の特性を表1に示す。
【0066】
【0067】
実施例5
ポリカーボネート樹脂(PC)(帝人(株)製、商品名:パンライト(登録商標)L-1250Y、固体)80質量部と共重合体1(固体)20質量部を混合し、ラボプラストミルに投入後、温度240℃、100回転/分で5分間混練した。混練後、室温まで冷却し、改質ポリカーボネート樹脂1(固体)を得た。
【0068】
実施例6
共重合体1(固体)に代えて共重合体2(固体)を用いる以外は実施例5と同様にして、改質ポリカーボネート樹脂2(固体)を得た。
【0069】
比較例1
共重合体1に代えてポリメチルメタクリレート(PMMA)(住友化学(株)製、商品名:スミペックス(登録商標)MM)を用いる以外は実施例5と同様にして、改質ポリカーボネート樹脂3(固体)を得た。
改質ポリカーボネート樹脂1~3の特性を表2に示す。
【0070】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の共重合体は、酸性プロトン含有熱可塑性樹脂を改質するために利用できる。