(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ハイダイナミックレンジディスプレイ用のブレンド層の視認性を改善するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/20 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H04N5/20
(21)【出願番号】P 2021526586
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2019060495
(87)【国際公開番号】W WO2020121136
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-29
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508301087
【氏名又は名称】エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー
【氏名又は名称原語表記】ATI TECHNOLOGIES ULC
【住所又は居所原語表記】One Commerce Valley Drive East, Markham, Ontario, L3T 7X6 Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ヂエ ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アイ. ジェイ. グレン
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-005472(JP,A)
【文献】特表2010-507832(JP,A)
【文献】特開2004-172792(JP,A)
【文献】特開2016-062637(JP,A)
【文献】特表2018-503283(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイダイナミックレンジ(HDR)アンダーライングコンテンツ層及び標準ダイナミックレンジ(SDR)オーバーレイを含む画像を調整するための方法であって、
前記画像が前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの両方を含むことを判別することと、
前記HDRアンダーライングコンテンツ層と前記SDRオーバーレイとの間にオーバーラップが存在するピクセルを識別することであって、識別されたピクセルは、前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの両方によってカバーされている、ことと、
前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの一方又は両方のピクセルに1つ以上の調整を行うことを決定することと、
前記画像を表示するために、前記1つ以上の調整を前記ピクセルに適用することと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記1つ以上の調整は、ピクセル毎に同じである固定調整を含む、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の調整は、前記ピクセルの輝度に対する調整を含む、
請求項1の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の調整は、前記ピクセルに値を掛ける乗算、前記ピクセルのクリッピング、又は、前記ピクセルへの値の加算若しくは減算のうち何れかを含む、
請求項1の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の調整は、異なるピクセルに対する異なる可変調整を含む、
請求項1の方法。
【請求項6】
前記異なる可変調整のうち何れかの可変調整の値は、前記ピクセルの統計分析に基づいている、
請求項5の方法。
【請求項7】
前記統計分析は、前記ピクセルの平均を計算することを含む、
請求項6の方法。
【請求項8】
前記統計分析は、ヒストグラムを構築することを含む、
請求項6の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の調整を行うことを決定することは、前記ピクセルの特性値を、統計分析に基づく統計結果と比較することによって、前記ピクセルに対して前記調整を行うかどうかを決定することを含む、
請求項6の方法。
【請求項10】
ハイダイナミックレンジ(HDR)アンダーライングコンテンツ層及び標準ダイナミックレンジ(SDR)オーバーレイを含む画像を調整するためのデバイスであって、
コンポジタを備え、
前記コンポジタは、
前記画像が前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの両方を含むことを判別することと、
前記HDRアンダーライングコンテンツ層と前記SDRオーバーレイとの間にオーバーラップが存在するピクセルを識別することであって、識別されたピクセルは、前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの両方によってカバーされている、ことと、
前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの一方又は両方のピクセルに1つ以上の調整を行うことを決定することと、
前記画像を表示するために、前記1つ以上の調整を前記ピクセルに適用することと、
調整したピクセルを、表示するために表示デバイスに出力して表示することと、
を行うように構成されている、
デバイス。
【請求項11】
前記1つ以上の調整は、ピクセル毎に同じである固定調整を含む、
請求項10のデバイス。
【請求項12】
前記1つ以上の調整は、前記ピクセルの輝度に対する調整を含む、
請求項10のデバイス。
【請求項13】
前記1つ以上の調整は、前記ピクセルに値を掛ける乗算、前記ピクセルのクリッピング、又は、前記ピクセルへの値の加算若しくは減算のうち何れかを含む、
請求項10のデバイス。
【請求項14】
前記1つ以上の調整は、異なるピクセルに対する異なる可変調整を含む、
請求項10のデバイス。
【請求項15】
前記異なる可変調整のうち何れかの可変調整の値は、前記ピクセルの統計分析に基づいている、
請求項14のデバイス。
【請求項16】
前記統計分析は、前記ピクセルの平均を計算することを含む、
請求項15のデバイス。
【請求項17】
前記統計分析は、ヒストグラムを構築することを含む、
請求項15のデバイス。
【請求項18】
前記1つ以上の調整を行うことを決定することは、前記ピクセルの特性値を、統計分析に基づく統計結果と比較することによって、前記ピクセルに対して前記調整を行うかどうかを決定することを含む、
請求項15のデバイス。
【請求項19】
命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記命令は、プロセッサによって実行されると、ハイダイナミックレンジ(HDR)アンダーライングコンテンツ
層及び標準ダイナミックレンジ(SDR)オーバーレイを含む画像を調整するための方法を前記プロセッサに実行させ、
前記方法は、
前記画像が前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの両方を含むことを判別することと、
前記HDRアンダーライングコンテンツ層と前記SDRオーバーレイとの間にオーバーラップが存在するピクセルを識別することであって、識別されたピクセルは、前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの両方によってカバーされている、ことと、
前記HDRアンダーライングコンテンツ層及び前記SDRオーバーレイの一方又は両方のピクセルに1つ以上の調整を行うことを決定することと、
前記画像を表示するために、前記1つ以上の調整を前記ピクセルに適用することと、を含む、
コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記1つ以上の調整は、1つ以上の固定調整又は可変調整を含む、
請求項19のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年12月13日に出願された米国特許出願第16/218,708号の利益を主張するものであり、その内容は、言及することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ハイダイナミックレンジ(HDR)ディスプレイは、標準ダイナミックレンジ(SDR)ディスプレイと比較して、最大輝度と最小輝度との比率を増加させることによって、より快適な視覚体験を提供する。HDRディスプレイに関連する改善が常に行われている。
【0003】
添付の図面と併せて例として与えられる以下の説明から、より詳細な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】特定の実施態様による、例示的なデバイスのブロック図である。
【
図2】一例による、
図1のデバイスの態様を示すブロック図である。
【
図3】一例による、アンダーライングコンテンツ層及びオーバーレイコンテンツ層を示す図である。
【
図4】A~Bは、一例による、ディスプレイ、アンダーライングコンテンツ層、及びオーバーレイコンテンツ層のダイナミックレンジの比較を示す図である。
【
図5】一例による、画像に調整を適用する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書では、ブレンド層の視認性を改善するための技術について説明する。具体的には、標準ダイナミックレンジ(SDR)オーバーレイがHDRディスプレイのハイダイナミックレンジ(HDR)コンテンツ上に表示される場合が多い。一例では、HDRビデオコンテンツは、ガイド及びメニューが追加されるケーブルテレビのセットトップボックスに提供される。オーバーレイがSDRであるため、オーバーレイの最大輝度は、HDRコンテンツの最大輝度よりもはるかに低い。これにより、SDR要素が少なくともいくつかの透明度を有する場合(例えば、アルファ値が1.0よりも大幅に低い場合)、SDR要素が不明瞭になる可能性がある。この状況を支援するために、本開示は、ある程度の透明度を有するSDR層がHDRコンテンツ上に表示される場合に、HDRコンテンツ及びSDRコンテンツの一方又は両方の輝度を修正することを含む技術を提供する。様々な技術が提供される。一例では、固定調整が、SDR層及びHDR層の一方又は両方のピクセルに適用される。固定調整は、HDR層の輝度を減少すること及び/又はSDR層の輝度を増加することを含む。別の例では、可変調整が適用される。可変調整は、特定のピクセルの特性値と複数のピクセルから得られた統計結果との比較に基づいている。「特性値」という用語は、ピクセルを特徴付ける任意の値を指す。特性値の例は、アルファ値、輝度値、平均カラー値(又は、カラー値の他の関数)、又は、ピクセルを特徴付ける任意の他の値を含む。一例では、SDR層の全てのピクセルのアルファ値の平均値が使用される。各ピクセルに対して調整が行われ、ピクセルの調整は、ピクセルのアルファ値と平均値との比較に基づいている。他の多くの技術が本明細書に開示されている。
【0006】
図1は、本開示の1つ以上の特性を実装可能な例示的なデバイス100のブロック図である。デバイス100は、例えば、コンピュータ、ゲーミングデバイス、ハンドヘルドデバイス、セットトップボックス、テレビ、携帯電話、又は、タブレットコンピュータを含む。デバイス100は、プロセッサ102と、メモリ104と、ストレージ106と、1つ以上の入力デバイス108と、1つ以上の出力デバイス110と、を含む。また、デバイス100は、オプションとして、入力ドライバ112及び出力ドライバ114を含む。デバイス100は、
図1に示されていない追加のコンポーネントを含むことを理解されたい。
【0007】
様々な代替案では、プロセッサ102は、中央処理装置(CPU)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、同じダイ上に配置されたCPU及びGPU、又は、1つ以上のプロセッサコアを含み、各プロセッサコアは、CPU又はGPUであり得る。様々な代替案では、メモリ104は、プロセッサ102と同じダイ上に配置されてもよいし、プロセッサ102とは別に配置されてもよい。メモリ104は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックRAM、キャッシュ)を含む。
【0008】
ストレージ106は、固定式ストレージ又はリムーバブルストレージ(例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、光ディスク、フラッシュドライブ等)を含む。入力デバイス108は、限定されないが、キーボード、キーパッド、マウス、タッチスクリーン、タッチパッド、検出器、マイクロホン、加速度計、ジャイロスコープ、バイオメトリックススキャナ、又は、ネットワーク接続(例えば、無線IEEE802信号の送信用及び/若しくは受信用の無線ローカルエリアネットワークカード)を含む。出力デバイス110は、限定されないが、表示デバイス118、スピーカ、プリンタ、触覚フィードバックデバイス、1つ以上の照明、アンテナ、又は、ネットワーク接続(例えば、無線IEEE802信号の送信用及び/若しくは受信用の無線ローカルエリアネットワークカード)を含む。
【0009】
入力ドライバ112は、プロセッサ102及び入力デバイス108と通信し、プロセッサ102が入力デバイス108からの入力を受信することを可能にする。出力ドライバ114は、プロセッサ102及び出力デバイス110と通信し、プロセッサ102が出力デバイス110に出力を送信することを可能にする。入力ドライバ112及び出力ドライバ114は、オプションのコンポーネントであり、入力ドライバ112及び出力ドライバ114が存在しない場合、デバイス100が同じように動作することに留意されたい。出力ドライバ114は、表示デバイス118に結合された高速処理デバイス(APD)116を含む。APD116は、計算コマンド及びグラフィックスレンダリングコマンドをプロセッサ102から受信し、これらの計算コマンド及びグラフィックスレンダリングコマンドを処理し、表示するためにピクセル出力を表示デバイス118に提供するように構成されている。
【0010】
図2は、本開示の1つ以上の特性を実装可能な例示的なシステム200の簡略化されたブロック図である。システム200は、画像データをプレ表示デバイス215にまとめて提供するレンダリングエンジン210と通信するプロセッサ102を含む。オプションのプレ表示デバイス215は、画像データを読み出し、1つ以上の技術に従って、画像データから得られたピクセルデータを任意に変更し、変更されたピクセルデータを表示デバイス118に出力して表示させる。システム200は、グラフィックスを画面に表示させる様々なデバイスの何れかを表す。
【0011】
一例では、システム200は、デスクトップ、ラップトップ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、ビデオゲームコンソール又は他のデバイス等のホームコンピューティングデバイスである。プロセッサ102は、デバイスのメインプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))である。係るシステムでは、プロセッサ102は、コマンド及びデータをレンダリングエンジン210に提供する。レンダリングエンジン210は、専用の又は統合されたグラフィックスレンダリングハードウェアを表す。レンダリングエンジン210は、表示デバイス118に表示するためのピクセル出力を生成する。レンダリングエンジン210のコマンド及びデータは、2次元オブジェクト又は3次元オブジェクトに基づいてフレームをレンダリングすることをレンダリングエンジン210に指示する。コマンド及びデータは、表示デバイス118に表示するためのオーバーレイを指定し、レンダリングエンジン210は、レンダリングされたフレームと組み合わせて、表示デバイス118に表示するための最終出力を生成する。このような状況では、プレ表示デバイス215が存在しない。
【0012】
システム200がホームコンピューティングデバイスである別の例では、レンダリングエンジン210は、表示するためにビデオデータをデコードするビデオデコーダを含む。プロセッサ102は、コマンドをビデオデコーダに発行して、ビデオデータをデコードさせる。プレ表示デバイス215は、表示デバイス118に表示するためのオーバーレイを追加するビデオ後処理エンジンである。
【0013】
別の例では、システム200は、インターネットを通じて、プレ表示デバイス215を介して表示デバイス118に接続されたビデオコンテンツサーバである。このようなシステムでは、プロセッサ102及びレンダリングエンジン210は、協働して、表示デバイス118に表示するためのピクセルデータを提供する。プレ表示デバイス215は、ビデオデータを受信し、オーバーレイを追加し、結果として得られる組み合わされた画像フレームを、表示するために表示デバイス118に出力するセットトップボックス又は他のメディアプレーヤである。
【0014】
別の例では、システム200は、ビデオコンテンツをディスプレイシステムに提供するビデオコンテンツプロバイダシステムに接続されたディスプレイシステムを含む、複合システムである。このような例では、ディスプレイシステムは、オーバーレイを生成し、オーバーレイを、ビデオコンテンツプロバイダシステムから受信したビデオコンテンツと合成する役割を果たす表示デバイス118及びプレ表示デバイス215を含む。コンテンツプロバイダシステムの例は、ストリーミングデスクトップコンピュータ又はインターネットビデオコンテンツサーバである。ディスプレイシステムの例は、プレ表示デバイス215を含むスマートテレビ又は非スマートテレビである。
【0015】
システム200のいくつかの例が説明されているが、システム200は、表示されるアンダーライング画像コンテンツ(underlying image content)を受信又は生成し、そのアンダーライング画像コンテンツを、表示デバイス118に表示するためにオーバーレイと組み合わせる任意の他のタイプのコンピューティングデバイスを表してもよいことを理解されたい。
【0016】
オーバーレイ層のグラフィックを、アンダーライングコンテンツ層と透過的に合成することができる。「アルファ」と通常呼ばれる値は、オーバーレイ層の不透明度を指定する。言い換えると、アルファ値は、オーバーレイ層の色がブレンドされたピクセルの最終カラー値にどの程度影響するかを指定する。慣習的に、アルファ値1.0は、オーバーレイ層が不透明であることを示し、したがって、最終的なカラー値は、アンダーライングコンテンツ層によって変更されないオーバーレイ層によって提供される色になる。アルファ値0.0は、オーバーレイ層が完全に透明であり、最終的なカラー値に影響しないことを示す。アルファ値0.5は、アンダーライングコンテンツ及びオーバーレイ層の両方が最終的なピクセル値にかなりの程度寄与していることを示す。
【0017】
表示デバイス118のような表示デバイスは、固有のダイナミックレンジを有する。ダイナミックレンジは、ディスプレイが生成可能な最高輝度と最低輝度との比率を指定する。従来のディスプレイは、「標準」ダイナミックレンジ(SDR)を有すると考えられる。実際のダイナミックレンジはディスプレイ毎に異なるが、一般的なアプリケーションからの出力は、通常、SDR範囲にトーンマッピングされる。トーンマッピングは、コンテンツジェネレータ(例えば、レンダリングエンジン210)によって出力されたピクセルの輝度を、ディスプレイによって出力された実際の輝度の値にマッピングする技術である。通常、トーンマッピングは、表示の制限にかかわらず、画像の意図した外観に近似するために行われる。
【0018】
ハイダイナミックレンジ(HDR)ディスプレイは、SDRディスプレイよりもはるかに広い範囲の輝度を表示する機能を備える。さらに、HDRディスプレイの最大輝度は、SDRディスプレイの最大輝度よりもはるかに大きい(例えば、HDRディスプレイでは1000ニット(nit)であるのに対し、SDRディスプレイでは300ニットである)。しかしながら、HDRディスプレイのダイナミックレンジ全体を使用するには、HDRディスプレイに表示されるコンテンツを、SDRコンテンツよりもはるかに大きいダイナミックレンジを有するHDRコンテンツとして指定する必要がある。HDRディスプレイに表示されるSDRコンテンツは、ディスプレイの全範囲にマッピングされるのではなく、HDRディスプレイのダイナミックレンジの暗い部分にマッピングされる。このように、SDRディスプレイと比較してHDRディスプレイの輝度が大きいので、SDRコンテンツが「マッピングダウン(mapped down)」される。より具体的には、HDRコンテンツは、通常、HDR範囲の上部を含む「ハイライト範囲」を含む。このハイライト範囲は、HDRコンテンツのハイライト(スペキュラーハイライト(specular highlights)等)に使用され、通常、HDRディスプレイの最高輝度にマッピングされる。しかしながら、SDRコンテンツは、このハイライト範囲を含まず、SDR範囲の上部が汎用的に使用される。SDRコンテンツがHDR範囲全体にマッピングされる場合、SDRコンテンツの多くがHDRディスプレイのハイライト範囲にあり、明るすぎる。したがって、SDRコンテンツをHDRディスプレイの全範囲にマッピングするのではなく、SDRコンテンツをより小さい範囲にマッピングする。一例では、SDRコンテンツは、HDRディスプレイに表示される場合であっても、SDRディスプレイの輝度範囲にマッピングされるので、SDRコンテンツは、SDRディスプレイに現れるのとほぼ同じように、HDRディスプレイに現れる。
【0019】
HDRコンテンツ及びSDRコンテンツの組み合わせを含むコンテンツの表示には問題がある。具体的には、上述したように、SDRコンテンツは、SDRコンテンツの最大輝度がHDRコンテンツ及びディスプレイの両方の最大輝度よりも低くなるようにトーンマッピングされる。このマッピングにより、アンダーライング画像コンテンツよりも明るさが大幅に低下するために、SDRオーバーレイが不明瞭になる(歪む又は見えなくなる)状況が発生する可能性がある。SDRディスプレイのSDRコンテンツにオーバーレイする場合、SDRコンテンツと同等の輝度になるため、SDRオーバーレイがはるかに見やすくなることに留意されたい。しかしながら、HDRディスプレイでは、SDRオーバーレイは、より明るいHDRコンテンツによって圧倒(overpowered)される。
【0020】
図3及び
図4A~
図4Bは、SDRオーバーレイがコンテンツ層上に存在する状況を示している。
図3は、1つのオブジェクト312が示された、アンダーライングコンテンツ層305を有する画面300を示している。実際にはより多くのオブジェクトがコンテンツ層に存在し得るが、説明を分かり易くするために1つだけ示している。さらに、オーバーレイコンテンツ層310が示されている。オーバーレイコンテンツ層310は、アンダーライングコンテンツ層オブジェクト312と少なくとも部分的に重なるオーバーレイコンテンツ層311を含む。
【0021】
図4Aは、SDRディスプレイについて、画面300が示されるディスプレイと、アンダーライングコンテンツ層305と、オーバーレイコンテンツ層310と、のダイナミックレンジの比較を示している。ディスプレイがSDRディスプレイであるため、ディスプレイのダイナミックレンジ402と、アンダーライングコンテンツのダイナミックレンジ404と、オーバーレイのダイナミックレンジ406と、はほぼ同じである。アンダーライングコンテンツの明るいオブジェクト312は、オーバーレイオブジェクト311よりもわずかに低い輝度レベルを有するので、オーバーレイオブジェクト311がアルファブレンディングで表示される場合であっても、オーバーレイオブジェクト311は、明るいオブジェクト312によって不明瞭にならない可能性が高い。
【0022】
図4Bは、HDRディスプレイについて、画面300が示されるディスプレイと、アンダーライングコンテンツ層305と、オーバーレイコンテンツ層310と、のダイナミックレンジの比較を示している。ディスプレイがHDRディスプレイであるため、ディスプレイのダイナミックレンジ452は、SDRディスプレイのダイナミックレンジ402よりもはるかに大きい。さらに、ディスプレイに提供されるアンダーライングコンテンツもHDRであり、ディスプレイと同じダイナミックレンジを有する。しかしながら、オーバーレイのダイナミックレンジはHDRではなくSDRであるため、オーバーレイのダイナミックレンジはディスプレイのダイナミックレンジ452よりもはるかに小さくなる。さらに、オーバーレイダイナミックレンジ456の最大輝度は、ディスプレイダイナミックレンジ452の最大輝度よりもはるかに低い。アンダーライングコンテンツのダイナミックレンジ454はHDRであるため、アンダーライングコンテンツの明るいオブジェクト312の輝度は、オーバーレイオブジェクト311の輝度よりもはるかに大きくなる。このため、オーバーレイオブジェクト311が実質的に透明である場合(例えば、アルファ値が実質的に1.0未満である場合)、オーバーレイオブジェクト311は、アンダーライングコンテンツ層305の明るいオブジェクト312によって不明瞭になる。SDRディスプレイの
図400及びHDRディスプレイの
図450のオーバーレイオブジェクト311及び明るいオブジェクトを表す線は、各々のオブジェクトの最大輝度を表すことに留意されたい。HDRコンテンツのダイナミックレンジ454は、ディスプレイのダイナミックレンジ452と全く同じである必要がないことを理解されたい。
【0023】
上記の理由のため、アンダーライングHDRコンテンツ層及びSDRオーバーレイの両方を含む合成画像であって、HDRディスプレイに表示される合成画像の少なくとも一部の輝度値を調整する技術が提供される。具体的には、
図5は、一例による、SDRオーバーレイを有するHDRコンテンツを含むフレームを調整する方法500のフロー図である。
図1~
図3及び
図4A~
図4Bのシステムに関して説明するが、技術的に実行可能な順序で方法500のステップを行うように構成された任意のシステムが本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0024】
方法500は、コンポジタによって、又は、コンポジタとは異なる別のユニットによって実行され、このユニットは、プロセッサ102の一部(例えば、プロセッサ102上で実行されるハードウェアモジュール又はソフトウェアモジュール)、レンダリングエンジン210の一部(例えば、後処理ハードウェア又はソフトウェアモジュール)、プレ表示デバイス215の一部(例えば、ハードウェア又はソフトウェアモジュール)、又は、表示デバイス118の一部(例えば、同様に、ハードウェア又はソフトウェアモジュール)であってもよい。トーンマッパ(tone mapper)は、最初に、コンテンツを処理して、コンテンツで定義された輝度をディスプレイの輝度にマッピングする。上述したように、SDRコンテンツがSDRダイナミックレンジにマッピングされ、HDRコンテンツがより大きいHDRダイナミックレンジにマッピングされる。SDRオーバーレイがHDRコンテンツ上に表示される場合等で合成が必要な場合、コンポジタは、SDRオーバーレイのアルファ値に従ってSDRコンテンツ及びHDRコンテンツをブレンドする。コンポジタは、上述したユニットの何れか又は説明していない別のユニットに配置されたソフトウェア又はハードウェアコンポーネントであってもよい。HDRアンダーライングコンテンツよりも低い最大輝度を有するSDRオーバーレイに関連する難題を克服するために、コンポジタは、HDRコンテンツ及びSDRコンテンツを合成する際に方法500を実行する。コンポジタは、オプションとして、入力コンテンツのピクセルの1つ以上の特性値を分析し(入力コンテンツは、アンダーライングコンテンツ及びオーバーレイコンテンツを含む)、(少なくともいくつかの状況では)アンダーライングコンテンツ及びオーバーレイコンテンツの一方又は両方の1つ以上のピクセルの輝度を調整して、ブレンドされた場合、オーバーレイコンテンツは、調整が行われず、アンダーライングコンテンツ及びオーバーレイコンテンツがブレンドされた場合と異なる外観を有する。この変更により、SDRオーバーレイとHDRアンダーライングコンテンツとのコントラストが改善され、SDRオーバーレイが視聴者に見やすくなる。「特性値」という用語は、ピクセルを特徴付ける任意の値を指す。特性値の例は、アルファ値、輝度値、平均カラー値(又は、カラー値の他の関数)、又は、ピクセルを特徴付ける任意の他の値を含む。
【0025】
方法500はステップ502で始まり、コンポジタは、表示デバイス118に表示される画像が、HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイを含むことを判別する。HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイを含む状況の例は、HDRでレンダリングされるレンダリング済み3次元画像(アンダーライングコンテンツ)と、例えば、アプリケーション、オペレーティングシステム、デバイスドライバ、他のハードウェア若しくはソフトウェアモジュールの要求に応じて実行されるプロセッサ102、レンダリングエンジン210、プレ表示デバイス215、セットトップボックスがHDRテレビコンテンツ上に表示されるSDRメニューを提供するケーブルテレビネットワークを介して配信されるHDRテレビコンテンツ、物理メディアからHDRコンテンツを表示し、物理メディアからHDRコンテンツ上にSDRメニュー、テキスト及び/又はグラフィックスを表示するメディアプレーヤ(例:ブルーレイ(登録商標)プレーヤ)の1つ以上によって生成されたSDRオーバーレイと、を含む。これらの例は、説明されているが、限定的なものと見なすべきではない。
【0026】
ステップ504において、コンポジタは、HDRアンダーライングコンテンツとSDRオーバーレイとの間のオーバーラップエリアを識別する。これらのエリアは、SDRオーバーレイ及びHDRアンダーライングコンテンツの両方によってカバーされるピクセルを含む。SDRオーバーレイの何れかの部分が完全に不透明でない場合(例えば、アルファ値が1.0未満の場合)、そのSDRオーバーレイは、アンダーライングHDRコンテンツからの少なくともいくつかの寄与が表示される。
【0027】
ステップ506において、コンポジタは、SDRオーバーレイ及びHDRアンダーライングコンテンツの一方又は両方に適用する1つ以上の調整を決定する。様々な調整が可能であり、以下にさらに詳細に説明する。ステップ508において、コンポジタは、オーバーレイ及びアンダーライングコンテンツの一方又は両方に1つ以上の調整を適用する。方法500の後に、SDRオーバーレイ及びHDRアンダーライングコンテンツが合成されて最終画像が形成され、その最終画像がディスプレイ118に表示される。
【0028】
ここで、コンポジタによって適用される調整の例について説明する。一例では、コンポジタは、HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイの1つ以上のピクセルに固定調整を適用する。いくつかの例では、この固定調整は、HDRアンダーライングコンテンツピクセルの輝度に固定値を加算又は減算すること、HDRアンダーライングコンテンツピクセルの輝度に固定値(例えば、0~1の間の値のような減少値、又は、1よりも大きい値のような増加値)を乗算すること、固定値をSDRオーバーレイの輝度に加算又は減算すること、SDRオーバーレイの輝度に固定値(例えば、0~1の間の値のような減少値、又は、1よりも大きい値のような増加値)を乗算すること、HDR層の輝度をクリッピングすること、のうち1つ以上を含む。上記の1つ以上の調整は、単独で又は組み合わせて適用され得る。クリッピングは、アンダーライングHDRコンテンツの最大輝度値を設定する調整である。クリッピング調整を適用するために、ピクセルの輝度値が最大値を上回る場合には輝度値を最大値に設定し、ピクセルの輝度値が最大値以下である場合にはクリッピング調整を適用しない。いくつかの例では、他の調整(例えば、乗算及び/又は加算)が最初にピクセルの輝度値に適用され、必要に応じて、結果値が最大値にクリッピングされる。クリッピングは、他の調整無しに単独で使用され得る。一例では、オーバーラップエリア内の全てのピクセル(HDRコンテンツとSDRコンテンツとのオーバーラップエリア内のピクセル)は、乗算及び加算の一方又は両方によって輝度が低下する。次に、クリッピングの最大値を超える結果値は、最大値に設定されるか、又は、さらなる輝度値の減少(例えば、0~1の間の値で乗算することによって減少する)によってさらに減少し、その後、クリッピング動作が続き、クリッピングの最大値を超えたままの値が最大値に設定される。
【0029】
いくつかの実施形態では、クリッピングは、より複雑な方法で適用される。より具体的には、クリッピングの最大値を、ピクセルの赤、緑及び青の成分に設定し、個別に適用することができる。いくつかの実施形態では、赤、緑又は青の成分のうち1つ又は2つのみがクリッピングされる。ピクセル値をクリッピングするための他の技術的に実行可能な技術を使用することができる。
【0030】
いくつかの例では、固定調整は、値を加算又は減算することと、結果値に対してスケール値(scale value)を乗算することと、を含む。いくつかの例では、加算又は減算演算、次の乗算演算は、SDRコンテンツ及びHDRコンテンツの両方に適用される。
【0031】
一例では、固定調整は、SDRオーバーレイのダイナミックレンジとHDRアンダーライングコンテンツのダイナミックレンジとの比較に基づいており、視差が大きくなると、輝度がより強く変更される。別の例では、固定調整は、予め定義された定数値である。別の例では、固定調整は、ユーザによって定義される。固定調整の値を決定する方法は、本明細書に提供される特定の例によって限定されると解釈されるべきではない。
【0032】
別の例では、コンポジタは、コンテンツ適応型の調整を適用する。コンテンツ適応調整は、本明細書では可変調整とも呼ばれる。一般に、コンテンツ適応調整は、HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイの一方又は両方のピクセルの輝度値に対して1つ以上の変更を行い、輝度が調整される度合いは、HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイの一方又は両方のピクセルの特性値の分析に基づいている。コンテンツ適応調整のいくつかの例を以下に示す。
【0033】
コンテンツ適応調整の例では、コンポジタは、HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイの1つ以上のピクセルに可変調整を適用する。いくつかの例では、可変調整は、HDRアンダーライングコンテンツピクセルの輝度に変数値を加算又は減算すること、HDRアンダーライングコンテンツピクセルの輝度に変数値(例えば、0~1の間の値等の減少値、又は、1よりも大きい値等の増加値)を乗算すること、変数値をSDRオーバーレイの輝度に加算又は減算すること、SDRオーバーレイの輝度に変数値(例えば、0~1の間の値等の減少値、又は、1よりも大きい値等の増加値)を乗算すること、のうち1つ以上を含む。上記の例の何れにおいても、変数値は、HDRアンダーライングコンテンツ及びSDRオーバーレイの1つ以上のピクセルの特性値に基づいている。可変調整は、適用される調整が、SDRオーバーレイ又はHDRアンダーライングコンテンツの一方又は両方のピクセルのいくつかの態様に基づくという点で、コンテンツ適応型である。
【0034】
上記の調整は、本開示の他の部分において参照される。SDRオーバーレイピクセルに対する固定された調整は、まとめて「固定SDR調整」と呼ばれる。「固定」という用語は、画面の特定の領域(画面全体、画面全体のより小さな部分、又は、オーバーレイとアンダーライングコンテンツとのオーバーラップ領域内等)のピクセル毎に調整が変わらないことを意味する。これらの調整は、上述したSDRオーバーレイに対する固定調整を含む。HDRアンダーライングコンテンツに対する固定された調整は、まとめて「固定HDR調整」と呼ばれる。これらの調整は、上述したHDRアンダーライングコンテンツに対する固定調整を含む。SDRコンテンツに対する可変調整は、本明細書では、「可変SDR調整」と呼ばれる。これらの調整は、上述したSDRオーバーレイに対する可変調整を含む。HDRアンダーライングコンテンツに対する可変調整は、まとめて「可変HDR調整」と呼ばれる。これらの調整は、上述したHDRアンダーライングコンテンツに対する可変調整を含む。「固定調整」という用語は、まとめて固定SDR調整及び固定HDR調整を指す。「可変調整」という用語は、まとめて可変SDR調整及び可変HDR調整を指す。本明細書では、「調整」という用語は、他の修飾語無しに使用される場合、固定調整及び可変調整の両方を総称する。本開示では、「弱い調整」という用語は、「強い調整」よりも少ない程度でピクセルのいくつかの特性に影響を与える調整である。
【0035】
いくつかの実施形態では、調整は、SDRオーバーレイとアンダーライングHDRコンテンツとの間にオーバーラップがあるピクセルに適用され、係るオーバーラップが存在しないピクセルには適用されない。いくつかの例では、特定のピクセルに対する可変調整は、調整されるピクセルの特性値(又は、複数の特性値)に基づいており、他のピクセルには基づいていない。一例では、透明度が高い(すなわち、アルファが0に近い)SDRオーバーレイのピクセルは、透明度が低いピクセル(輝度に対する上昇を低くする等のように弱い調整になる)よりも「強い調整」(例えば、輝度に対する上昇が大きい)を受ける。他の例では、ピクセルに適用される調整は、複数のピクセルの分析に基づいており、複数のピクセルは、全て1つの層からのもの(例えば、SDR層からのもの、又は、HDR層からのもの)であるか、両方の層からのものである。
【0036】
コンポジタは、次のように固定調整を適用する。最初に、コンポジタは、特定のピクセルが調整を受けるかどうかを決定する。次に、コンポジタは、調整を受ける場合、そのピクセルに固定調整を適用する。一例では、ピクセルに調整を適用するかどうかの決定は、ピクセルの特性値が閾値を上回っているか又は下回っているかを判別することによって行われる。一例では、SDRオーバーレイピクセルが特定の閾値よりも低いアルファ値を有する場合、コンポジタは、そのSDRオーバーレイピクセルに固定調整を適用し(例えば、固定値の加算又は固定ゲインを掛ける乗算によってそのピクセルの輝度を増加させる)、アンダーライングHDRコンテンツ層のオーバーラップピクセルに固定調整を適用し(例えば、固定値を減算又は0未満の固定値を乗算することによって、そのピクセルの輝度を減少する)、又は、これらの両方の調整をSDRオーバーレイピクセル及びHDRコンテンツ層のピクセルに適用する。
【0037】
特定のピクセルに対して行われる調整が複数のピクセルの特性値の分析に基づく可変調整の場合、コンポジタは、統計的技術を使用して、特定のピクセルが調整を受けるかどうか、及び、どの程度調整を受けるかを決定する。統計的技術では、SDRオーバーレイとHDRアンダーライングコンテンツとの間にオーバーラップがあるピクセルの特性値が考慮され、その特性値に基づいて統計結果が生成される。いくつかの実施形態では、コンポジタは、統計結果を閾値と比較する。統計結果が閾値よりも大きい又は小さい場合、コンポジタは、SDRオーバーレイ及びHDRアンダーライングコンテンツの一方又は両方のピクセルに調整を適用する。さらに、いくつかの実施形態では、ピクセルに対して行われる調整の強度は、そのピクセルの特性値と統計結果との比較に基づいている。
【0038】
上記の例では、SDRオーバーレイのピクセルに対して調整が行われるが、HDRアンダーライングコンテンツのピクセルに対しては調整が行われない。コンポジタは、SDRオーバーレイのピクセルの全てのアルファ値の平均値を計算し、平均値が閾値を下回っている(透明度が高いことを示す)と判別する。この判別に応じて、コンポジタは、SDRオーバーレイのピクセルに調整を適用すべきであることを決定する。行われる調整は、SDRピクセルのアルファ値と計算された平均アルファ値との比較に基づいている。平均値よりもアルファが低いピクセルに関して、輝度の上昇が大きくなるように適用される。平均値よりもアルファが大きいピクセルに関して、輝度の上昇が小さくなるように適用される。
【0039】
一例では、コンポジタは、ヒストグラム等のより複雑な統計的技術に基づいて、どの調整をどのピクセルに適用するかを決定する。このような技術によれば、コンポジタは、SDRオーバーレイのピクセル、HDRアンダーライングコンテンツのオーバーラップしたピクセル、又は、その両方の特性値に基づいて、ヒストグラムを生成する。ヒストグラムは、ピクセルの特性値を、特性値の範囲に対応するヒストグラムビン(histogram bins)にグループ化する。各ビンには、そのビンに割り当てられた範囲内の値の数が記憶される。
【0040】
コンポジタは、ヒストグラムに基づいて、SDRオーバーレイ及び/又はHDRアンダーライングコンテンツのピクセルに調整を適用するかどうか、及び、オプションで、どの程度その調整を適用するかを決定する。一例では、閾値特性値が存在し、コンポジタは、ヒストグラムを使用して、特性値が閾値を上回る(又は、下回る)ピクセルの数を決定する。例えば、閾値を上回るヒストグラムビンのカウントがカウント閾値を上回る場合、コンポジタは、SDRオーバーレイ及び/又はHDRアンダーライングコンテンツの1つ以上のピクセルに調整を適用する。一例では、コンポジタは、SDRオーバーレイ及び/又はHDRアンダーライングコンテンツの1つ以上のピクセルに可変調整を適用し、適用される調整は、ヒストグラムによって定義される分布に基づいている。ピクセルの大部分が不透明端の近くにあるヒストグラムの場合(例えば、閾値のパーセンテージを上回る値がアルファ値の閾値を上回る場合)、適用される調整は、ピクセルの大部分が透明端の近くにあるヒストグラムの場合よりも弱くなる。
【0041】
一例では、ヒストグラムは、HDRアンダーライングコンテンツの輝度値のヒストグラムである。ヒストグラムが、アンダーライングコンテンツが平均して閾値よりも明るいことを示す場合(例えば、閾値を上回るビンのピクセル数がカウント閾値よりも大きい場合)、コンポジタは、調整を適用すべきであると決定する。一例では、ヒストグラムが、アンダーライングHDRコンテンツが明るいことを示す場合、調整が強くなり、ヒストグラムが、アンダーライングHDRコンテンツが暗いことを示す場合、調整が弱くなる。
【0042】
一例では、コンポジタは、複数の段階でステップ506,508を行う。具体的には、各段階は、異なる空間ピクセル範囲に関連付けられている。一段階では、コンポジタは、1つの空間ピクセル範囲に基づいて特性値を決定し、その特性値の分析に基づいてピクセルに調整を適用する。次に、別の段階では、コンポジタは、異なる空間ピクセル範囲に基づいて特性値を決定し、その特性値の分析に基づいてピクセルに調整を適用する。異なる空間ピクセル範囲の分析に基づく調整が適用される追加の段階も同様に実行され得る。いくつかの例では、異なる空間ピクセル範囲は、グローバルピクセル、ローカルピクセル、及び、単一ピクセルを含む。グローバルピクセル範囲は、分析用の特性値を生成する際に画像のほぼ全体の範囲からのピクセルが考慮される範囲である。この分析に基づいて、特定のピクセルに調整が行われる。例えば、画像全体に亘るピクセルの平均輝度(luminosity)を取得することができる。ローカルピクセル範囲は、分析用の特性値を生成する際に、調整が行われるピクセルの周囲のピクセルが考慮される範囲である。単一ピクセル範囲は、調整が行われるピクセルから特性値が導出される範囲である。例では、コンポジタは、ある空間ピクセル範囲の特性値に基づいてピクセルに調整を適用し、次に、異なるピクセル範囲の特性値に基づいてピクセルに調整を適用する。
【0043】
本明細書における開示に基づいて、多くの変形が可能であることを理解されたい。特徴及び要素を特定の組み合わせで上述したが、特徴又は要素の各々は、他の特徴及び要素を伴わずに単独で、又は、他の特徴及び要素を伴うか伴わずに様々な組み合わせで使用することができる。
【0044】
提供された方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ又はプロセッサコアにおいて実施することができる。好適なプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来のプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路、他の任意のタイプの集積回路(IC)、及び/又は、状態機械を含む。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(HDL)命令の結果と、ネットリストを含む他の中間データ(コンピュータ可読媒体に記憶することができる命令)と、を使用して製造プロセスを構成することによって、製造することができる。このような処理の結果は、本開示の特徴を実装するプロセッサを製造するための半導体製造プロセスで後に使用されるマスクワークとすることができる。
【0045】
本明細書で提供される方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又はプロセッサによって実行されるために非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に組み込まれたコンピュータプログラム、ソフトウェア又はファームウェアで実装することができる。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の例は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク等の磁気媒体、光磁気媒体、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)等の光学媒体を含む。