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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】油圧式引張装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 29/02 20060101AFI20240618BHJP
   G01L 5/24 20060101ALI20240618BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20240618BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20240618BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B25B29/02
G01L5/24
B25B23/14 610U
B23P19/06 T
G01L5/00 103Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021534326
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 GB2019053507
(87)【国際公開番号】W WO2020120959
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】1820138.4
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521258810
【氏名又は名称】テンテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TENTEC LIMITED
【住所又は居所原語表記】Unit F1,Innovation Drive,Wolverhampton WV9 5GA (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー アダム トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スクリーベンズ アンソニー
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-129163(JP,A)
【文献】特開昭53-022698(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118283(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02492140(GB,A)
【文献】英国特許出願公開第02412705(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 29/02
B25B 23/14
B23P 19/06
G01L 5/00 - 5/24
F16B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山を有するねじ部材を引っ張るための油圧式引張装置であって、
本体と、油圧流体のための圧力空間と、前記ねじ部材の前記ねじ山と係合し、油圧流体を前記圧力空間に導入することで前記本体から離間させられて、前記ねじ部材に張力を与えるよう構成されたねじ山係合部材とを有する油圧テンショナ;
基部を基準とした前記ねじ山係合部材の線形変位を計測し、前記線形変位を表す出力を提供するよう構成された変位センサ;
前記ねじ部材について回転するナットの回転を判定するよう構成され、前記ナットの回転角度を表す出力を提供するよう構成された回転センサ;および
前記変位センサおよび前記回転センサの前記出力を入力とし、前記油圧テンショナによる引張りによる前記ねじ部材の伸長に対応する、前記ナットの必要とされる回転角度を前記変位センサの前記出力から判定するよう構成されたコントロールユニット
を備える油圧式引張装置。
【請求項2】
前記コントロールユニットは、前記回転センサの前記出力によって表された前記ナットの回転と、前記必要とされる回転角度とを比較して、前記ねじ部材の前記伸長に対応するよう前記ナットが十分に回転されたかを判定するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ナット回転インジケータを備えており、前記コントロールユニットは、前記ナットが十分に回転されたと判定した場合に前記ナット回転インジケータに表示を出すよう構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記圧力空間中における流体圧力を判定し、前記圧力を表す出力を提供するよう構成された圧力センサを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記コントロールユニットは、ねじ部材負荷率などの所望のねじ部材負荷のための入力部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントロールユニットは、前記所望のねじ部材負荷に基づいて目標圧力を判定するよう構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記コントロールユニットは、前記圧力センサの前記出力によって表された前記圧力と、前記目標圧力とを比較して、前記目標圧力に達したかの判定を行うよう構成されている、請求項4を引用する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コントロールユニットは、前記圧力センサの前記出力によって表された前記圧力が少なくとも前記目標圧力であり、前記圧力センサの前記出力によって表された前記圧力の低下率が閾値未満である場合にのみ、前記目標圧力に達したとの判定を行うよう構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
目標圧力インジケータを備えており、前記コントロールユニットが、前記目標圧力に達したことを判定した場合に、前記目標圧力インジケータにより使用者に対して表示を出すよう構成されている、請求項7または請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コントロールユニットは、前記圧力空間中における圧力が解放された後の前記変位センサの前記出力によって表された前記変位と、所望または所定の残留変位とを比較するよう構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記回転センサは、前記ナットの回転を直接検出するものであってもよい、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ナットを駆動するよう構成された出力部と、駆動手段によって駆動される入力部とを有するギアボックスを備え、前記回転センサは、前記ギアボックスの一部、典型的には前記ギアボックスの前記入力部と直接噛合するギアの回転を検出する、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ナットに加えられたトルクを計測するよう構成されたトルクセンサを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
負荷保持ナットが伴うねじ山を有するねじ部材を引っ張る方法であって:
前記ねじ部材の前記ねじ山と油圧テンショナのねじ山係合部材とを係合させるステップであって、前記油圧テンショナは、本体と油圧流体のための圧力空間とを有し、前記ねじ山係合部材は、油圧流体を前記圧力空間に導入することで前記本体から離間させられて、前記ねじ部材に張力を与えるよう構成されているステップ;
変位センサを用いて、基部を基準とした前記ねじ山係合部材の線形変位を計測するステップ;
回転センサを用いて、ナットの回転角度を計測するステップ;および
前記油圧テンショナによる引張りによる前記ねじ部材の伸長に対応する、前記ナットの必要とされる回転角度を、コントロールユニットによって前記変位から判定するステップ
を含む方法。
【請求項15】
前記回転センサの前記出力によって表された前記ナットの回転と、前記必要とされる回転角度とを比較し、前記ねじ部材の前記伸長に対応するよう前記ナットが十分に回転されたかを判定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
圧力センサを用いて、前記圧力空間中における流体圧力を判定するステップ、所望のねじ部材負荷に基づいて目標圧力を判定するステップ、および、前記流体圧力と前記目標圧力とを比較して、前記目標圧力に達したかを判定するステップを含む、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記圧力センサの前記出力によって表された前記圧力が少なくとも前記目標圧力であり、前記圧力センサの前記出力によって表された前記圧力の低下率が閾値未満である場合にのみ、前記目標圧力に達したとの判定を行うステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記圧力空間中の前記圧力が解放された場合における前記線形変位と、所望のまたは所定の残留変位とを比較するステップを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記圧力、前記回転および前記線形変位の値を記憶装置に記録するステップを含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式引張装置および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テンショナは通例、他の作業の中でも特に、ボルトまたはスタッドなどの物品を伸ばし、これにより、伸びたボルトについてねじ込まれたナットを下げ、伸びたボルトに係る張力をナットで受け止めさせるために用いられる。典型的には、これらは、ねじ式ファスナの使用により大荷重の固定が求められるいずれかの分野において用いられ、一般的な一用途は風力タービンにおけるものであり、このようなテンショナは、タービンブレードのそのベアリングへの固定、または、このようなタービンのタワーのその基礎への固定などといった多くの留め具の固定に用いることが可能である。
【0003】
本発明者らによる過去における国際公開第2015/118283号パンフレットにおいては、本発明者らは、上記の風力タービンの例における場合などの、ねじ部材におけるナットの取り付けに係るトレーサビリティが重要である状況においては特に、ねじ部材の伸度を把握することが所望されることを考察した。圧力空間に導入された油圧流体の圧力を材料寸法およびボルトの特性と組み合わせて用いることによりねじ部材の伸度をある程度算出することは可能であるが、しかしながら、これは特に信頼性の高いものではない。前記先行出願において、本発明者らは、ワークピースの伸長を計測する線形変位センサを提供することを考察している。
【0004】
油圧式テンショナは技術分野において周知であり;同等のものの例は、欧州特許第2 522 465号明細書として公開されている欧州特許出願、および、特開平03-204406号公報として公開されている日本国特許出願に見ることが可能である。このようなテンショナは、スタッド、ボルト等などのねじ部材を伸ばすために使用可能であり、一般に、ねじ部材の周囲に設置される、全体が円筒状で同軸とされた内側および外側本体を備えていることが可能である。内側本体がねじ部材に螺合する。内側本体と外側本体との間の空間により圧力空間が画定され、その中に典型的には油圧流体といった流体を導入して、これらの本体をその共通の軸に沿って分離させることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなテンショナの操作においては、特に伸ばす対象である物品に確実に繰り返して張力を付与することが出来るようになるには、一定レベルの技能と経験が必要とされる。繰り返して、確実に、且つ、トレーサビリティを確保しつつ引っ張るために、従来技術に係るテンショナを用いて物品を引っ張る際に使用者が直面する問題を、少なくとも部分的に改善するテンショナを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、本発明者らは:
ねじ山を有するねじ部材を引っ張るための油圧式引張装置であって、
本体と、油圧流体のための圧力空間と、ねじ部材のねじ山と係合し、油圧流体を圧力空間に導入することで本体から離間させられて、ねじ部材に張力を与えるよう構成されたねじ山係合部材とを有する油圧テンショナ;
基部を基準としたねじ山係合部材の線形変位を計測し、線形変位を表す出力を提供するよう構成された変位センサ;
ねじ部材について回転するナットの回転を判定するよう構成され、ナットの回転角度を表す出力を提供するよう構成された回転センサ;および
変位センサおよび回転センサの出力を入力とし、油圧テンショナによる引張りによるねじ部材の伸長に対応する、ナットの必要とされる回転角度を変位センサの出力から判定するよう構成されたコントロールユニット
を備える油圧式引張装置を提供する。
【0007】
従って、変位(従って、ねじ部材の伸長)を監視することにより、ねじ部材の伸長に対応するためにどの程度ナットを回転させるべきかを判定することが可能である。
【0008】
典型的には、コントロールユニットはまた、回転センサの出力によって表されたナットの回転と、必要とされる回転角度とを比較して、ねじ部材の伸長に対応するようナットが十分に回転されたかを判定するよう構成される。
【0009】
本装置は、ナット回転インジケータを備えていてもよく;コントロールユニットは、ナットが十分に回転されたと判定した場合にナット回転インジケータに表示を出すよう構成されていてもよい。ナット回転インジケータは、目標ナット回転が達成された状態と達成されていない状態の2つの状態のみを示すバイナリインジケータであり得る。
【0010】
それ故、使用者は、ナットが適正に回転され、従って、圧力空間中における任意の圧力を解放するのに適切であり得る場合に、通知を受けることが可能である。
【0011】
典型的には、本装置は、圧力空間中における流体圧力を判定し、圧力を表す出力を提供するよう構成された圧力センサを備える。コントロールユニットは、ねじ部材負荷率などの所望のねじ部材負荷のための入力部を備えていてもよい。コントロールユニットは、所望のねじ部材負荷に基づいて目標圧力を判定するよう構成されていてもよい。コントロールユニットはさらに、圧力センサの出力によって表された圧力と、目標圧力とを比較して、目標圧力に達したかの判定を行うよう構成されていてもよい。コントロールユニットは、圧力センサの出力によって表された圧力が少なくとも目標圧力であり、圧力センサの出力によって表された圧力の低下率が閾値未満である場合にのみ、目標圧力に達したとの判定を行うよう構成されていてもよい。
【0012】
本装置はまた、目標圧力インジケータを備えており、コントロールユニットが、目標圧力に達したことを判定した場合に、目標圧力インジケータにより使用者に対して表示を出すよう構成されている。目標圧力インジケータは、目標圧力に達した状態と達していない状態の2つの状態のみを有するバイナリインジケータであり得る。
【0013】
それ故、使用者は、適正な圧力に安全に達し、次いで、ナットを回転させてねじ部材における張力(軸力)を受け止めさせることが可能となった場合に、通知を受けることが可能である。また、本装置は、目標圧力を典型的には数値的に表し得る目標圧力値インジケータを備えていてもよい。
【0014】
コントロールユニットは、圧力空間中における圧力が解放された後の変位センサの出力によって表された変位と、所望または所定の残留変位とを比較するよう構成されていてもよい。
【0015】
回転センサは、ナットの回転を直接検出するものであってもよい。あるいは、本装置は、ナットを駆動するよう構成された出力部と、駆動手段(典型的には、使用者により操作)によって駆動される入力部とを有するギアボックスを備えていてもよく、回転センサは、ギアボックスの一部、典型的にはギアボックスの入力部と直接噛合するギアの回転を検出する。
【0016】
本装置はさらに、ナットに加えられたトルクを計測するよう構成されたトルクセンサを備えていてもよい。トルクセンサはナットに加えられたトルクを直接計測してもよいが、トルクセンサは典型的には、ギアボックスの一部、典型的には入力部に加えられたトルクを計測し、ギアボックス減速比を使ってナットにおけるトルクを算出してもよい。
【0017】
本装置はコントロールユニットに接続された記憶装置を備えていてもよく、これにより、コントロールユニットは、それぞれ圧力センサ、回転センサおよび変位センサの出力により表された圧力、回転および変位の値を記憶装置に保存することが可能である。これによりトレーサビリティが補助される。トルクセンサの出力により表されたトルクの値もまた記憶装置に保存されてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、本発明者らは、負荷保持ナットが伴うねじ山を有するねじ部材を引っ張る方法であって:
ねじ部材のねじ山と油圧テンショナのねじ山係合部材とを係合させるステップであって、油圧テンショナは、本体と油圧流体のための圧力空間とを有し、ねじ山係合部材は、油圧流体を圧力空間に導入することで本体から離間させられて、ねじ部材に張力を与えるよう構成されているステップ;
変位センサを用いて、基部を基準としたねじ山係合部材の線形変位を計測するステップ;
回転センサを用いて、ナットの回転角度を計測するステップ;および
油圧テンショナによる引張りによるねじ部材の伸長に対応する、ナットの必要とされる回転角度を、変位から判定するステップ
を含む方法を提供する。
【0019】
従って、変位(従って、ねじ部材の伸長)を監視することにより、ねじ部材の伸長に対応するためにどの程度ナットを回転させるべきかを判定することが可能である。
【0020】
本方法はまた、回転センサの出力によって表されたナットの回転と、必要とされた回転角度とを比較し、ねじ部材の伸長に対応するようナットが十分に回転されたかを判定するステップを含んでいてもよい。
【0021】
本方法は、ナットが十分に回転されたと判定された場合に、ナット回転表示を提供するステップを含んでいてもよい。ナット回転表示は、目標ナット回転に達した状態と達していない状態の2つの状態のみを有するバイナリ式であり得る。
【0022】
それ故、使用者は、ナットが適正に回転され、従って、圧力空間中における任意の圧力を解放するのに適切であり得る場合に、通知を受けることが可能である。
【0023】
本方法は、圧力センサを用いて、圧力空間中における流体圧力を判定するステップを含んでいてもよい。
【0024】
本方法はまた、所望のねじ部材負荷に基づいて目標圧力を判定するステップを含んでいてもよい。本方法は、流体圧力と目標圧力とを比較して、目標圧力に達したかを判定するステップを含んでいてもよい。本方法は、圧力センサの出力によって表された圧力が少なくとも目標圧力であり、圧力センサの出力によって表された圧力の低下率が閾値未満である場合にのみ、目標圧力に達したとの判定を行うステップを含んでいてもよい。
【0025】
本方法はまた、目標圧力に達したと判定されたことの目標圧力表示を提供するステップを含んでいてもよい。目標圧力表示は、目標圧力に達した状態と達していない状態の2つの状態のみを有するバイナリ式であり得る。
【0026】
それ故、使用者は、適正な圧力に安全に達し、次いで、ナットを回転させてねじ部材における張力を受け止めさせることが可能となった場合に、通知を受けることが可能である。また、本方法は、目標圧力を典型的には数値的に表すステップを含んでいてもよい。
【0027】
本方法は、圧力空間中の圧力が解放された場合における線形変位と、所望のまたは所定の残留変位とを比較するステップを含んでいてもよい。
【0028】
本方法は、圧力、回転および線形変位の値を記憶装置に記録するステップを含んでいてもよい。これによりトレーサビリティが補助される。本方法はまた、記憶装置にトルクの値を保存するステップを含んでいてもよい。
【0029】
ここで、単なる一例として、以下の添付の図面を参照して記載されている本発明の実施形態に係る記載を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態に係る油圧テンショナの斜視図を示す。
図2図2は、図1のテンショナの断面を示す。
図3図3は、本発明のさらなる実施形態に係る他のテンショナの断面を示す。
図4図4は、図1のテンショナのギアボックスを示す。
図5図5は、図1のテンショナの操作を示すフローチャートを示す。
図6図6は、図5に係る操作が実施されている図1のコントロールユニットに示されるディスプレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態に係る油圧テンショナ1が添付の図面に示されている。テンショナは、ボルトまたはスタッド2であるねじ部材に張力をかけて伸長させるよう作用可能であり、次いで、この張力を受け止めるようナット3をボルト2に沿って下げることが可能とされている。
【0032】
テンショナはテンショナの筐体を形成する基部4を備え、固定面に対して載置される。テンショナはまた、孔20を通る中心軸17に沿って基部4と相対的に移動可能とされたピストン6を備える。
【0033】
基部4とピストン6との間には、画定された圧力空間13が設けられている。この空間に、ポート14に係るシステムによって油圧流体を導入可能である。これにより、ピストン6は基部4から強制的に離間され、ここで、ピストン6は、軸17に沿って、図中において垂直に移動する。
【0034】
ピストン6は、軸17と同軸とされた中心貫通孔20を有する。この孔20に、ねじ山係合部材7が設けられている。このねじ山係合部材7は、孔20の内部に嵌合する筒状スリーブ状のボディ部分8を備える。スリーブの内部には、ねじ部材2と係合するねじ孔30が画定されている。
【0035】
ねじ山係合部材7は、ボディ部分8の端部に位置されたピストン係合部9を有する。ピストン係合部9は、基部4から離間させられたピストン6によって生成された力がピストン係合部9に伝達され、次いで、ボディ部分8およびねじ孔30を介してねじ部材2に伝達されるよう、ピストン6に当接するフランジ状の突出部を形成する。次いで、ナット3がねじ部材2に沿って下げられて、部材2を張力下に保持し、これにより、圧力空間13中の流体による張力が解除されたらナット3を固定面に対して押圧させることが可能である。
【0036】
しかしながら、ねじ部材の伸度を計測可能であることが望ましい。これを実現するために、スリーブ10が、ねじ山係合部材7のボディ部分8の外面5の周囲に設けられている。スリーブ10は、軸17と同軸とされた筒状シェル形状のものである。スリーブ10はねじ山係合部材7に対して回転自在とされているが、外面5から突出する止め輪27によって、軸17に沿った直線移動ができないよう保持されている。
【0037】
このスリーブ10は、その全長に沿って、スリーブ10の外面に形成された凹部21中に設けられた磁気エンコーダストリップ11を有している。磁気エンコーダは、磁極パターンを形成するものであり、これにより、スリーブ10から軸方向外側に突出する磁界のパターンが形成される。磁気エンコーダ11の長さは、軸17と平行に位置合わせされている。
【0038】
これらの磁界は、典型的にはホール効果センサである、基部4に設けられた磁気センサ12によって読取りが可能である。磁気センサ12は、クランプ18により基部4に対して固定されている。ねじ部材2が伸長されるに伴って、磁気エンコーダ11が磁気センサ12を通過し、センサ12の出力を適切に処理することにより、基部4と相対的なねじ山係合部材7の移動を計測することが可能であり、これから、ねじ部材2の伸度を判定することが可能である。もっとも簡素な事例において、この計測には、磁極の通過による磁界の反転の単純な計数が含まれることが可能であるが、当業者は、位置を磁気的に符号化する方法が複数存在していることを理解するであろう。
【0039】
エンコーダはねじ山係合部材7の本体8の下方に設けられているため、ねじ山係合部材などのテンショナ1の一部における弾性伸長に起因する計測に介在する誤差はより小さくなる。磁気エンコーダ11はねじ部材と係合するボディ部分8の一部に固定されており、従って、この点で計測を行うことによりこれらの誤差を最低限とすることが可能であることが分かる。
【0040】
ここまで記載してきた実施形態は、国際公開第2015/118283号パンフレットとして公開された本発明者らによる以前のPCT出願に記載のものと多くの点で同様であり、線形変位センサの機能に関するさらなる参照のためにこの公報が参照される。
【0041】
あるいは、テンショナは、添付の図面における図3に示されているプラーバー式テンショナであることが可能であり、ここでは、プラーバー50がスタッド(図示せず)と係合し、プラーバー50と一緒に動く(ねじ山係合部材7と共に動き、磁気エンコーダ11を有するスリーブ10と同様)スリーブ52上の磁気符号化材料51のストリップが、プラーバー50(従ってスタッド)を基部54と相対的に動かすにピストンの移動に伴って、テンショナの基部54に固定された磁界センサ53によって検出される。
【0042】
加えて、油圧テンショナは、以下に記載のとおり用いられる種々の他のセンサを備える。
【0043】
圧力空間13に導入された流体の圧力を計測する圧力センサ60が提供されている。
【0044】
添付の図面における図4に詳細が示されているギアボックス61が設けられており、これは、入力ギア63に噛合した入力部62(角形ラチェットドライブソケット形状)を有する。入力ギア63は、ナット3を回転させるよう配置された出力ギア64に噛合する。入力ギア63は、磁気センサ66を通過する磁気回転エンコーダ65を有する。これにより、磁気センサ66は、ナット3が回転された角度を表す出力を提供する。
【0045】
トルクセンサ70が、ギアボックス61の入力部62と連結するよう設けられている。これは、同様に角形ラチェットドライブ入力部であるその入力部71に加えられるトルクの計測値を提供する。それ故、使用者は入力部71に角形ラチェットドライブを当てることが可能であり、これにより、使用者によって加えられたトルクおよび回転がギアボックス61に伝達され(加えられたトルクを計測するステップ)、次いで、これにより、このトルクおよび回転がナット3に加えられる(加えられた回転を計測するステップ)。
【0046】
制御回路80は上記のセンサ12、60、66、71のすべてからの出力を得、これらを以下に記載のように処理する。図1において、制御回路80はスクリーン82およびボタン81と共にユニットとしてテンショナに固定されているが、いずれかの汎用コンピュータまたはパーソナルコンピュータ用いて実装されていることも同等に可能であり、この場合には、画面表示は、そのコンピュータのディスプレイにおいてなされていることが可能である。コントロールユニットは、計測された値を格納するための記憶装置も備えている。
【0047】
データを収集することで、ジョイントの引張りに係るトレーサビリティおよび再現性を向上させることが可能である。以下に記載の方法に従うことにより、本装置は、推察に頼るのではなく、使用者にフィードバックを提供することが可能である。
【0048】
図5は、コントロールユニット80によって実施される方法に係るフローチャートを示し、図6は、スクリーン82に示される画面表示見本を示す。
【0049】
ステップ100において、使用者は、例えば目標残留ボルト応力を選択することにより(図示の例においては60%)、所望のボルト負荷を選択する。ステップ102において、コントロールユニット80は、必要な油圧を算出する。これは、特定のテンショナに対するルックアップテーブルを用いることにより算出が可能である。200に示されているとおり、これがスクリーン82に画面表示される。
【0050】
次いで、ステップ104において、使用者は、スタッド2およびナット3に対してテンショナを固定配置する。ステップ106において、コントロールユニット80は、圧力、線形変位、回転およびトルクの値を記録し、これらを公称データム値として記録する。
【0051】
次いで、使用者は(ステップ108で)、油圧供給源を用いて圧力空間13を加圧する。次いで、圧力空間13内に圧力が蓄えられ、目標圧力と共にスクリーン82上に画面表示される(ステップ110、ディスプレイ201)。油圧は目標に到達すると、3bar/秒以下を限度として30秒間低下し、次いで、コントロールユニットが目標圧力に安定的に達したと判定する(ステップ112)。ディスプレイ202において、この判定が、元の既に算出されている目標伸長および達成された伸長(これらは、共にステップ116において記憶装置において記録されている)と共に、ナット3を回転させるための表示として使用者に示される(ディスプレイ202)。達成された伸長が予測よりも大きく下回る場合、使用者は改めて開始するよう通知される(ディスプレイ206)。
【0052】
油圧が目標に達しない場合、または、油圧が限度よりも速く低下する場合、使用者は改めて開始するよう通知される(ディスプレイ203)。
【0053】
安定的に目標圧力に達したと仮定した場合、使用者は、トルクセンサ70の入力部71を用いてナット3を回転させる(ステップ114)。コントロールユニット80は、変位センサ12によって計測される線形変位における変化と、スタッド2におけるねじ山のピッチとから、ナット3の必要とされる回転角度を判定する。これがディスプレイ204において使用者に画面表示される。
【0054】
使用者が目標回転角度を達成したら(ステップ118)、使用者は油圧を解放するよう指示され(ディスプレイ205)、使用者が予期された回転を達成しなかった場合、使用者は、ディスプレイ207において改めて開始するよう通知される。圧力解放は、閾値の速度を超える急激な圧力低下(例えば500bar/秒)としてコントロールユニット80により検出される。これが生じて圧力が元の圧力(ここでは、1bar)に低下したら、線形変位センサ12により計測された残留伸長が記憶装置に記録され(ステップ120)、ディスプレイ208に画面表示され、そして、使用者はテンショナを取り外すことが可能となる。しかしながら、実測残留伸長が予測よりも大きく下回る場合には、使用者は、ディスプレイ209において改めて開始をするよう通知される。
【0055】
本手法を通してステップ毎に使用者に通知がなされ、また、様々なパラメータが記録されることにより、引っ張るステップではより高いトレーサビリティ(これは、各ナット3が適切な量だけ回転されたことが自動で記録されるため)および再現性が確保される。これは、使用者が毎回経験または同一の公称回転に頼る必要は無く、コントロールユニット80が使用者のために適正な回転等を自動的に判定するためである。それ故、引張りの質を高めることが可能である。
図1
図2
図3
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図5
図6