(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】推力を生成するためのエンジン
(51)【国際特許分類】
F02K 9/70 20060101AFI20240618BHJP
F02C 3/20 20060101ALI20240618BHJP
F02C 7/224 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F02K9/70
F02C3/20
F02C7/224
(21)【出願番号】P 2021537525
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 IB2019057548
(87)【国際公開番号】W WO2020049528
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-06
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521096142
【氏名又は名称】オーカブ ディートリック インダクション インク.
【氏名又は名称原語表記】Oqab Dietrich Induction Inc.
【住所又は居所原語表記】141 Duke St. E., Kitchener, ON N2H 1A6, Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハルーン ビー. オーカブ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ビー. ディートリック
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-138200(JP,A)
【文献】特開平11-229965(JP,A)
【文献】特開2001-193565(JP,A)
【文献】特開2001-207913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0001346(US,A1)
【文献】米国特許第03731047(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第01209346(EP,A2)
【文献】独国実用新案第202012005955(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/00
F02C 7/00
F02C 9/00
F02K 5/00
F02K 9/00
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンであって、
燃料を供給するための燃料供給部であって、前記燃料は、反応性金属化合物を含む導電性燃料であり、前記燃料は、マイクロ/ナノテルミットを含む、燃料供給部と、
前記燃料を受け取るように前記燃料供給部に流体接続されたチャンバと、
前記チャンバ内の前記燃料に誘導的にエネルギを与えるように前記チャンバに動作可能に接続された誘導加熱アセンブリであって、前記誘導加熱アセンブリは、コイルと、前記コイルに電流を流すように構成された電力供給回路とを含み、前記電力供給回路は、磁場を誘導するために、前記コイルに、高周波交流を流すための電子発振器または他の適切な回路であり、前記電力供給回路は、前記コイルに流れる前記電流を変化させることにより、前記磁場を変化させるようにさらに構成されており、変化した前記磁場により、
前記燃料内に渦電流を誘導させ
、前記渦電流は
、前記燃料にエネルギを与える、誘導加熱アセンブリと、
エネルギが与えられた燃料を前記チャンバから受け取り、推力を生成するように前記チャンバに接続された排気ノズルと
を備える、エンジン。
【請求項2】
前記燃料供給部は、前記燃料を収容するための一次タンクと、前記一次タンクから前記チャンバに前記燃料を圧送するためのポンプとを備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項3】
前記燃料供給部は、二次流体を収容するための1つまたは複数の二次タンクを含む混合システムをさらに備え、各二次タンクは、それぞれの二次流体の流れを制御するための対応する制御弁を有する、請求項2記載のエンジン。
【請求項4】
前記二次流体は二次燃料または触媒である、請求項3記載のエンジン。
【請求項5】
前記燃料供給部は、前記燃料を圧縮するための圧縮機をさらに備える、請求項2記載のエンジン。
【請求項6】
前記圧縮機は、対流圧縮機およびスクロール圧縮機のうちの一方または両方を備え
、前記対流圧縮機は、対流を使用して燃料を加熱し、ブレードを使用して前記燃料を圧縮する、請求項5記載のエンジン。
【請求項7】
前記燃料供給部は、取込み口と圧縮機とを備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項8】
前記圧縮機が、対流圧縮機およびスクロール圧縮機のうちの一方または両方を備え
、前記対流圧縮機は、対流を使用して燃料を加熱し、ブレードを使用して前記燃料を圧縮する、請求項7記載のエンジン。
【請求項9】
熱エネルギを蓄積し、蓄積された前記熱エネルギを放出して前記燃料にエネルギを与えるよう組付けられた熱電池をさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項10】
前記チャンバに隣接してプラズマを循環させて、前記燃料へのエネルギ付与を促進するように前記チャンバに組付けられたプラズマ管と、
前記チャンバに組付けられかつ前記プラズマ管を取り囲む冷媒管であって、冷媒を循環させて、前記プラズマ管からの熱エネルギの放散を管理するように構成された冷媒管と
をさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項11】
前記誘導加熱アセンブリによって生成される磁場を増強させるための永久磁石の配列をさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項12】
前記排気ノズルを誘導加熱するように構成された二次誘導加熱アセンブリをさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項13】
チャンバ内で燃料を受け取ることであって、前記燃料は、反応性金属化合物を含む導電性燃料であり、前記燃料は、マイクロ/ナノテルミットを含む、ことと、
誘導加熱アセンブリを使用して前記燃料に誘導的にエネルギを与えることであって、前記誘導加熱アセンブリは、コイルと、前記コイルに電流を流すように構成された電力供給回路とを含み、前記電力供給回路は、磁場を誘導するために、前記コイルに、高周波交流を流すための電子発振器または他の適切な回路であり、前記電力供給回路は、前記コイルに流れる前記電流を変化させることにより、前記磁場を変化させるようにさらに構成されており、変化した前記磁場により、
前記燃料内に渦電流を誘導させ
、前記渦電流は
、前記燃料にエネルギを与える、こ
とと、
エンジンの排気ノズルにおいて、エネルギが与えられた前記燃料から推力を生成することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記燃料にエネルギを与える前に、熱電池を使用して前記燃料を予熱することをさらに含
み、前記熱電池は、熱エネルギを蓄積して、蓄積された当該熱エネルギを放出する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記燃料にエネルギを与える前に、前記燃料を圧縮することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記燃料を、対流圧縮機およびスクロール圧縮機のうちの一方または両方を使用して圧縮
し、前記対流圧縮機は、対流を使用して燃料を加熱し、ブレードを使用して前記燃料を圧縮する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記燃料にエネルギを与える前に、前記燃料を二次燃料と混合することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記燃料にエネルギを与える前に、前記燃料を触媒と混合することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
排気生成物を循環させることによって、前記燃料を加熱しかつ前記燃料にエネルギを与えるための
少なくとも1つの熱交換器をさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項20】
前記誘導加熱アセンブリは、高周波交流および直流を印加することによって前記燃料にエネルギを与えるように構成されている、請求項1記載のエンジン。
【請求項21】
発電システムをさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項22】
前記誘導加熱アセンブリは、さらに、焼結によって前記燃料にエネルギを与えるように構成されて
おり、前記焼結は液化なしに加熱を行うことである、請求項1記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、エンジンに関する。より詳細には、本開示は、推力を生成するためのエンジンに関する。
【0002】
背景技術
エンジンまたはモータは、推力を生成するために、多くのタイプの輸送用途に使用され得る。例えば、内燃機関は燃料を燃焼させて熱を発生させ、その熱を、推力を生成するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】非限定的な実施形態による例示的なエンジンを示す図である。
【
図2A】
図1のエンジンにおける例示的な燃料供給部を示すブロック図である。
【
図2B】
図2Aの燃料供給部における例示的なサイクロン対流圧縮機を示す断面図である。
【
図2C】
図2Aの燃料供給部における例示的なスクロール圧縮機を示す断面図である。
【
図2D】
図1のエンジンにおける別の例示的な燃料供給部を示すブロック図である。
【
図3A】
図1のエンジンにおける例示的なチャンバを示す横断面図である。
【
図3B】
図1のエンジンにおける例示的なチャンバを示す長手方向断面図である。
【
図4】非限定的な実施形態による別の例示的なエンジンを示すブロック図である。
【
図5】非限定的な実施形態による別の例示的なエンジンを示すブロック図である。
【
図6A】非限定的な実施形態による更なる例示的なエンジンを示すブロック図である。
【
図6B】非限定的な実施形態による更なる例示的なエンジンを示すブロック図である。
【
図7】
図1のエンジンにおいて推力を生成する例示的な方法を示すフローチャートである。
【0004】
発明の概要
本明細書の一態様によれば、エンジンは、燃料を供給するための燃料供給部と、燃料を受け取るように燃料供給部に流体接続されたチャンバと、チャンバ内の燃料に誘導的にエネルギを与えるように加熱チャンバに動作可能に接続された誘導加熱アセンブリと、エネルギが与えられた燃料をチャンバから受け取り、推力を生成するようにチャンバに接続された排気ノズルとを含む。
【0005】
本明細書の別の態様によれば、誘導エンジンにおける方法は、チャンバ(燃焼チャンバ)内で燃料を受け取ることと、誘導加熱アセンブリを使用して燃料に誘導的にエネルギを与えることと、エンジンの排気ノズルにて、エネルギが与えられた燃料から推力を生成することとを含む。
【0006】
詳細な説明
本開示は、電磁誘導を適用することによって燃料にエネルギを与えて推力を提供するためのエンジン(反動スラスタとも呼ばれる)を提供する。エンジンは、燃料供給部、チャンバ、誘導加熱アセンブリ、および排気ノズルを含む。誘導加熱アセンブリは、燃料内に渦電流および/またはヒステリシスを誘導して燃料にエネルギを与えるように磁場を誘導的に誘導する。エネルギが与えられた燃料は、排気ノズルによって変換されて推力を生成する。
【0007】
図1は、本開示によるエンジン100の特定の構成要素を示している。エンジン100は、一般的に、推力を提供するために燃料108にエネルギを与えるように構成される。エンジン100は、例えば、航空機システムにおいて該航空機システムに推力および揚力を提供するために利用され得る。他の例では、エンジン100は、限定されるものではないが、ロケット、衛星、エアシップおよび飛行船、自動車、列車、船舶、水中システム、ジェットパック、ドローンおよび他の無人航空機システム、推進ドライバ、ならびに宇宙システムを含む他のシステムで利用され得る。
【0008】
エンジン100は、燃料108を供給するように構成された燃料供給部104と、チャンバ112と、燃料108にエネルギを与えるための誘導加熱アセンブリ110(本明細書では単にアセンブリ110とも呼ばれる)と、エネルギが与えられた燃料を使用して推力を生成するよう構成された排気ノズル120と、を含む。
【0009】
燃料供給部104は、一般的に、燃料108をアセンブリ110に供給するように構成される。例えば、
図2Aは、主ライン202を介してポンプ204に接続された一次タンク200を含む燃料供給部104Aを示している。燃料供給部104Aは、混合システム206および圧縮機208をさらに含み得る。
【0010】
一次タンク200は、金属、金属合金、プラスチック、セラミック、材料の組合せなどで形成された容器などであり得る。一次タンク200は、一般的に、蓄積用の燃料108を収容し、かつエンジン100の他の構成要素に供給するように構成される。タンク200は、例えば、燃料108のタイプに基づいて構成され得る。主ライン202は、幾つかの例では、誘導的に加熱され得るとともに主ライン202を通って移動する燃料108を対流の使用により加熱するように構成され得る強磁性パイプであり得る。
【0011】
一般的に、燃料108は、誘導的に加熱することができる。例えば、燃料は、反応性金属化合物などの導電性燃料であり得る。より具体的には、燃料は、酸化剤および還元剤(例えば、金属および金属酸化物)を含むマイクロ/ナノテルミットであり得る。他の例では、燃料は、磁性流体、あるいは導電性粒子または成分を含む他の様々なタイプの流体(燃料、ガスなどを含む)であり得る。例えば、燃料108は、磁性材料、ガス、液体、合成ポリマおよび非合成ポリマ、ハイドロゲル、熱可塑性プラスチック、メタマテリアルおよび他のナノテルミット、ならびに天体、月、火星、その他の惑星、小惑星、プラネトイドおよびその他の天体に見られる複数の燃料源を含む自然にある宇宙資源、これらの組合せなどを含み得る。燃料108は、材料の層の混合物、液体状態および不活性状態の反応性金属化合物のハイブリッド混合物、または燃料の他の適切な組合せをさらに含み得る。より一般的に、燃料108は、限定されるものではないが、粒子サイズ、充填構造(例えば、単純立方充填、面心立方充填、六方充填)、異なる反応温度、またはそれ以外の場合では異なる加熱および燃焼プロファイルを含む異なる構成を有する複数の材料を含み得る。例えば、複数の材料は、シェルを形成する異なる層として、不均一または均一な混合物などとして、燃料108内で組み合わされ得る。異なる層を有する燃料108を加熱すると、異なる燃焼プロファイル、ひいては異なる推進プロファイルが生成され得る。
【0012】
燃料供給部104Aは、主ライン202を介して一次タンク200に接続されたポンプ204をさらに含む。ポンプ204は、一般的に、燃料108を主ライン202から圧送し、チャンバ112に供給するように構成される。ポンプ204は、例えば、流体ポンプ、金属粒子インジェクタ、マイクロ/ナノテルミットを排出するための排出システム、または他の適切なシステムであり得る。ポンプ204の特定の構成要素および動作は、例えば、一次タンク200に収容される燃料108のタイプに基づいて選択され得る。
【0013】
燃料供給部104Aは、主ライン202に接続された混合システム206をさらに含み得る。混合システム206は、二次流体を収容するための1つまたは複数の二次タンクを含み得る。各二次タンクは、主ラインへの二次流体の流れを制御するための対応する制御弁を含む。二次流体は、反応性金属化合物などの導電性燃料、エネルギ複合体、マイクロおよび/またはナノテルミット、磁性流体、導電性粒子または成分を含む流体、ガス液体、合成ポリマおよび非合成ポリマ、推進剤、材料の層の混合物、液体および不活性状態の反応性金属化合物のハイブリッド混合物、多分散混合物、あるいは他の適切な燃料の組合せであり得る。他の例では、二次流体は、燃料108の加熱および/または燃焼を促進するための触媒であり得る。例えば、混合システム206は、複数の二次燃料および複数の触媒を含んでよく、これらの二次燃料および触媒は、一次タンク200内の燃料108と混合させるために様々な組合せで放出され得て、様々な加熱、燃焼および推進プロファイルを達成し得る。特に、制御弁は、一次タンク200からの燃料108と混合するために、二次タンクから主ラインへの二次燃料および/または触媒の流れを自動的に制御するようプロセッサに動作可能に接続され得る。幾つかの例では、混合システム206は、二次流体と一次燃料との混合を促進するためにプロペラなどをさらに含み得る。
【0014】
燃料供給部104Aは、圧縮機208をさらに含み得る。圧縮機208は、主ライン202内の燃料108を圧縮するように主ライン202に接続されている。幾つかの例では、圧縮機208は、混合システム206からの二次燃料および/または触媒と混合する前に燃料108を圧縮するように混合システム206の上流に配置され得、他の例では、圧縮機208は、燃料108と二次燃料および/または触媒との混合物を圧縮するように混合システム206の下流に配置され得る。
【0015】
圧縮機208は、例えば、サイクロン対流圧縮機であり得る。特に、サイクロン対流圧縮機は、対流を利用して燃料108(例えば、ナノテルミット)を予熱することができる。例えば、
図2Bを参照すると、サイクロン対流圧縮機210が示されている。サイクロン対流圧縮機210は、中央チャンバ214から突出する複数の外側チャンバ212を含む。外側チャンバ212は、可撓性シェルから形成され得、かつサイクロン対流圧縮機210内の燃料108のサイクロン運動を促進するために螺旋フィン216を含み得る。サイクロン対流圧縮機210は、燃料108のサイクロン運動を促進するように中央チャンバ214から外側チャンバ212まで延びる翼218をさらに含み得る。
【0016】
他の例では、圧縮機208は、スクロール圧縮機であり得る。例えば、
図2Cを参照すると、スクロール圧縮機220が示されている。スクロール圧縮機220は、固定スクロール222および旋回スクロール224を含む。スクロール222および224は、誘導を利用して加熱することができる金属で作製され得る。燃料108を圧縮し、例えば、温度を上昇させ、かつ燃料108の状態変化を誘発するように、燃料108はスクロール圧縮機220を通って流れる。幾つかの例では、スクロール圧縮機220は、サイクロン対流圧縮機210の中央チャンバ214において、サイクロン対流圧縮機210と組み合わせて利用することができる。
【0017】
さらに別の例では、主ライン202内の燃料108を圧縮するために他の適切な圧縮機208が考えられる。
【0018】
図2Dは、取込み口230および圧縮機232を含む別の例示的な燃料供給部104Dを示している。取込み口230は、入ってくる大気ガスを取り込み、このガスを圧縮機232に導くように構成されている。圧縮機232は、大気ガスを圧縮して、燃料108として圧縮空気を提供するように構成される。例えば、圧縮機232は、空気を圧縮してその温度および圧力を上昇させるように一連のタービンを含み得る。一実施形態では、大気ガスは、酸化導電性燃料と組み合わされて熱を加え、推力を生成し得る。他の例では、圧縮機232は、サイクロン対流圧縮機またはスクロール圧縮機であり得る。幾つかの例では、燃料供給部104Dは、大気ガスを過冷却するために予冷器をさらに含んでいてよく、この大気ガスは、続いて、圧縮機232によって圧縮される。
【0019】
ここで
図3Aを参照すると、チャンバ112の例示的な横断面が示されている。チャンバ112は、チャンバを規定する石英管300と、熱電池302と、1つまたは複数の追加の層304と、を含む。チャンバ112は、誘導加熱アセンブリ110のコイル114によって取り囲まれている。熱電池302は、熱エネルギを蓄積および放出してチャンバ112内の燃料108にエネルギを与える(例えば、予熱する)ように構成されたチャンバに組付けられている。特に、熱電池302は、エンジン100がオンのときにチャージされ得、かつ熱エネルギを蓄積し得る。熱電池302は、続いて、蓄積された熱エネルギを燃料108に放出し得る。例えば、熱電池302は、燃料がチャンバ112の燃焼セクションに進む前に、チャンバ112の予熱セクションで燃料108にエネルギを与え得る。他の例では、熱電池302は、誘導加熱アセンブリ110による燃料108へのエネルギ付与を補い得る。
【0020】
チャンバ112は、チャンバ112において燃料108へのエネルギ付与または予熱を補うために、限定されるものではないが、鋼、アルゴン、アルゴンプラズマ、または他の適切な材料の層を含む1つまたは複数の追加の層304をさらに含み得る。例えば、追加の層304は、熱電池302から燃料108に熱を伝達するために鋼または別の適切な熱交換器であり得る。例えば、
図3Bを参照すると、チャンバ112の例示的な長手方向断面が示されている。特に、追加の層304が示されている。エンジン100は、チャンバ112に関連付けられたプラズマ管310および冷媒管312をさらに含む。プラズマ管310は、例えば、燃料108を収容するチャンバ112に隣接してアルゴンプラズマを循環させて燃料108へのエネルギ付与をさらに促進するように構成され得る。冷媒管312は、プラズマ管310を取り囲み、かつアルゴンガスまたは別の適切な冷媒を循環させてプラズマ管310からの熱エネルギの放散を管理するように構成され得る。
【0021】
図1に戻ると、誘導加熱アセンブリ110は、一般的に、誘導加熱を使用してチャンバ112内の燃料108にエネルギを与えるように構成される。例えば、誘導加熱アセンブリ110は、コイル114と、
図1に矢印で示すように、コイル114に電流を流すように構成された電力供給回路116と、を含み得る。チャンバ112は、コイル114がチャンバ112の周りに巻き付けられることを可能にするために円筒形であり得る。したがって、コイル114は、その中心にチャンバ112を有するソレノイドを形成する。電力供給回路116は、高周波交流をコイル114に流して磁場115を誘導するための電子発振器または他の適切な回路であり得る。幾つかの実施形態では、電力供給回路116は、コイル114を流れる電流を変化させ、それによって磁場を変化させるようにさらに構成される。他の実施形態では、コイル114は、チャンバ112に対して移動して磁場を変化させるように構成され得る。例えば、コイル114は、静止しているチャンバ112の長さに沿って移動するように位置決め機構に連結され得る。他の例では、チャンバ112は、静止しているコイル114を通って移動して磁場を変化させるように位置決め機構に連結され得る。他の例では、誘導加熱アセンブリ110は、コイル114に直流を印加し得る。
【0022】
動作中、電力供給回路116は、コイル114に電流を流すように構成される。アンペールの法則に従って、コイル114を流れる電流はコイル114の周りに磁場を誘導する。さらに、チャンバ112の周りに巻き付けられているコイル114のソレノイド形状に基づいて、コイル114の各巻回の磁場は、コイルの中心を通過し、それによって、コイル114の中心(すなわちチャンバ112内)に強い磁場を生成する。ファラデの誘導の法則に従って、変化する磁場は、近くの導体、特に燃料108内に渦電流を誘導する。すると渦電流は、燃料108の抵抗を通って流れ、燃料108にエネルギを与える。したがって、誘導加熱アセンブリ110は、渦電流を燃料源(または他の燃料108)に誘導して互いの反応を誘導し、それによってエネルギを放出するように構成される。さらに、渦電流損失が発生する。特に、電磁場によって誘導される渦電流は、コイルの温度を上昇させる電力損失を引き起こす。
【0023】
誘導加熱アセンブリ110は、燃料108内に磁気ヒステリシスをさらに誘導し得る。ヒステリシス損失は、熱を生成するための燃料108の磁化および消磁によって引き起こされる。磁力が加えられると、燃料108の分子は第1の方向に整列する。磁力が逆転すると、燃料108は磁性の逆転に対抗し、ヒステリシス損失をもたらし、それにより燃料108を加熱する。幾つかの実施形態では、誘導加熱アセンブリ110は、磁気ヒステリシスと渦電流を介した誘導加熱との両方を使用して、燃料108にエネルギを与え得る。
【0024】
したがって、総電力損失は、ヒステリシス損失、渦電流損失、および残留損失の合計として計算され得る。
【0025】
幾つかの実施形態では、誘導加熱アセンブリ110は、超伝導電磁石を含み得る。特に、コイル114は、超伝導材料を含み得る。したがって、誘導加熱アセンブリ110は、コイル114をその臨界温度未満に冷却することによってゼロ電気抵抗および磁束場の排除を含む超伝導を提供するために液体窒素や液体二酸化炭素などの冷媒を供給するように構成された冷媒供給部も含み得る。
【0026】
幾つかの実施形態では、誘導加熱アセンブリ110は、
図3Bに示されるように、ハルバッハ配列(アレイ)316などの永久磁石の配列をさらに含み得る。ハルバッハ配列316は、チャンバ112の周りの磁場を増強させるとともにハルバッハ配列316の反対側の磁場を打ち消すような特定の配列の複数の磁石を含み得る。
【0027】
再び
図1に戻ると、エンジンはさらに排気ノズル120を含む。排気ノズル120は、エネルギが与えられた燃料108をチャンバ112から受け取り、エネルギが与えられた燃料108のエネルギを推力に変換するように構成される。ノズル120は、エネルギが与えられた燃料から推力を生成するために、円錐形、ベル形、スパイク形、または他の形状をとり得る。より一般的に、ノズル120の材料および形状は、燃料108のタイプおよびエンジン100の用途に応じて選択され得る。
【0028】
幾つかの例では、排気ノズル120は、例えば強磁性材料で作製されたタービンを含み得る。したがって、タービンは、伝導加熱を介して加熱され得、かつ圧縮されエネルギが与えられた大気ガスが排気ノズル120を通して排出されるときに追加の推力を提供し得る。
【0029】
幾つかの例では、エンジン100は、エンジン100の様々な構成要素に適用される更なる誘導加熱アセンブリを含み得る。例えば、ノズル120は、該ノズル120を誘導加熱して、チャンバ112から受け取った燃料108の完全燃焼を促進するように構成された二次誘導加熱アセンブリを含み得る。他の実施形態では、誘導加熱アセンブリは、伝導表面加熱によって加熱され、流体(例えば、大気ガス、圧縮流体など)を加熱することによって推力を提供する、導電性の一連のロータブレードおよび/またはディスクに適用され得る。例えば、チャンバ112は、誘導加熱アセンブリによって加熱されるように構成された強磁性材料を含み得る。するとチャンバ112は、チャンバを通過する燃料を伝導的に加熱して、燃料にエネルギを与えることができる。さらに別の実施形態では、二次誘導加熱アセンブリを圧縮機208(例えば、スクロール圧縮機220)に適用して、燃料108の圧縮を促進するようにしてもよい。
【0030】
エンジン100は、エンジン100の様々な構成要素の温度を管理するための冷媒および/または冷却システムをさらに含み得る。特に、冷却システムを使用して、強磁性材料をそれらのキュリー温度未満に維持するよう用いることができ、キュリー温度を超えると、磁性材料は常磁性になり、それらの磁気特性を失う。例えば、エンジン100は、エンジン100の構成要素の温度を管理するために、配列された微小管ライニングを含み得る。微小管ライニングは、例えば、スクロール圧縮機220に統合され得る。他の例では、冷却システムは、窒素冷却ラッピング、液体窒素、循環水、または他の適切な冷媒を含むことができる。
【0031】
図4は、別の例示的なエンジン400を示している。エンジン400は、上記のように、燃料供給部104、誘導加熱アセンブリ110、および排気ノズル120を含む。エンジン400において、燃料供給部104は、限定されるものではないが、蓄積システム、復水器、タービン、モータ、フィードポンプなどを含む様々な水ポンプ構成要素を含む。特に、燃料供給部104は、導電性燃料108として水を供給するように構成される。エンジン400の誘導加熱アセンブリ110は、水を加熱して、エネルギが与えられた燃料として蒸気を生成するように構成される。水からの蒸気および空気は、誘導加熱アセンブリ110から分離され、ガス蓄積部405に蓄積され得る。さらに、蒸気の少なくとも一部は、限定されるものではないが、タービン、減速ギア、スロットル、電気推進モータなどを含む様々な構成要素を含む排気ノズル120に導かれる。特に、排気ノズル120は、蒸気を使用して例えば高圧水噴流によって推力を生成するように構成される。
【0032】
図5は、別の例示的なエンジン500を示している。エンジン500は、例えば、単段式軌道ロケット用途に使用され得る。エンジン500は、上記のように、燃料供給部104、誘導加熱アセンブリ110、および排気ノズル120を含む。エンジン500において、燃料供給部104は、金属粒子を誘導加熱アセンブリ110に注入するように構成された金属粒子インジェクタを含む。誘導加熱アセンブリ110は、金属粒子にエネルギを与えるように構成され、金属粒子は、続いて、排気ノズル120で受け取られて推力を生成する。
【0033】
図6Aおよび6Bは、更なる例示的なロケット600および610を示す。これらのロケットは、粒子インジェクタを含む燃料供給部104、誘導加熱アセンブリ110、および排気ノズル120を含むエンジン500と同様のエンジンを含む。特に、エンジン600および610は、単段式ロケット用途および多段式ロケット用途に使用され得る。したがって、ロケット600および610は、ペイロードを含み、さらに、ペイロードを軌道内に推進させるための段階的ロードを含み得る。
【0034】
本開示は、誘導加熱および焼結プロセスを使用して推力を提供するためのエンジンを提供する。特に、エンジンは、磁場を交番させることによって生成される急速に交番する渦電流によって導電性燃料にエネルギを与える。エネルギが与えられた燃料は、排気ノズルによって推力に変換される。したがって、エンジンは、推力を提供するための推進システムとして使用することができ、または既存のシステムの推力を増加させるための推力増強装置として使用することができる。例えば、エンジンは、単段式または多段式のロケットブースティングシステムに適用され得る。
【0035】
さらに別の例では、エンジンは、直流電磁場内で粒子を高速で回転させることによってかつ/または磁場を交番させることによって生成される急速に交番する渦電流によって、導電性燃料にエネルギを与える。エネルギが与えられた燃料は、燃焼および/または焼結を経て排気ノズルによって推力を生成する。他の例では、タービンブレードなどの磁性材料は交流電磁場内に固定されており、この場合、直流電磁場内で材料自体を回転させることによって、かつ/または材料の周りで磁場を交番させることによって材料の磁気配向が切り替わるときに発熱が起こる。
【0036】
他の実施形態では、エンジンは、多段式スラスタを発生させるために他の推進システムと接続された推力増強装置として適用され得る。例えば、誘導加熱は、別の推進システムの燃焼チャンバ内の温度を上昇させて推力を増強させるために使用され得、他の推進システムには、限定されるものではないが、化学ベースのエンジン、アークジェット、ホールスラスタ、イオンエンジン、パルスプラズマ、電気的および熱的加熱スラスタなどが含まれる。別の例では、誘導式誘導冷凍サイクルは、ノズルに送り込まれる冷気を発生させて「ベルヌーイ効果」を生じさせ得る。圧力の低下は流れの方向に垂直に発生し、推力を増強させる。更なる例では、推力を増強させるために、エンジンは電気的および熱的加熱スラスタと組み合わせて使用され得る。
【0037】
さらに別の実施形態において、エンジンは、更なる発電システムと組み合わせて用いられ得る。例えば、エンジンは、冷却、加熱、電力、推進力および工業生成物からのコジェネレーション、トリジェネレーションおよびマルチジェネレーションのうちの1つまたは複数を用いる発電システムと組み合わせて使用され得る。特に、エンジンは、熱および電力の発生を可能にするために他のプロセスを駆動し得る。
【0038】
ここで
図7を参照すると、誘導エンジンにおいて推力を生成する方法700のフローチャートが示されている。方法700の説明を支援するために、方法700はエンジン100を使用して実行されると想定されるが、方法700は、限定されるものではないが、エンジン400、エンジン500、エンジン600、またはエンジン610などの他の適切なシステムによっても実行され得ることが考えられる。
【0039】
ブロック705において、燃料108は、例えば、一次タンク200から供給される。
【0040】
ブロック710で、燃料108は、混合システム206を介して、1つまたは複数の二次燃料、作動流体、および/または1つまたは複数の触媒と混合される。特に、プロセッサは、所望の加熱、燃焼、および/または推進プロファイルに基づいて、燃料108と混合されるべき二次流体を決定し得る。次に、プロセッサは、対応する制御弁を制御して、決定された二次流体が燃料108との混合のために主ライン202に流れることを可能にし得る。
【0041】
ブロック715で、燃料108は圧縮機208によって圧縮される。例えば、燃料108は、サイクロン対流圧縮機210に入り、翼218およびフィン216によって駆動されて圧縮され得る。他の例では、燃料108は、スクロール圧縮機220、特に、固定スクロール222と旋回スクロール224との間の空間に入ることができる。旋回スクロール224が回転すると、燃料108は2つのスクロール222および224の間で圧縮される。
【0042】
ブロック720で、燃料108は予熱される。特に、熱電池302は、蓄積されたエネルギを放出して、燃料108を予熱し得る。他の例では、燃料108は、プラズマ管310内を循環するプラズマなどとの熱交換を介して予熱され得る。より一般的に、燃料108は、所望の加熱、燃焼、および/または推進プロファイルに基づいて予熱される。例えば、燃料108は、迅速で一貫した燃焼を可能するために、ブロック720で燃焼温度のすぐ下の温度まで予熱され得る。
【0043】
ブロック725で、燃料108には、誘導加熱アセンブリを介して誘導的にエネルギが与えられる。特に、燃料108は、燃焼するまで加熱され得る。
【0044】
ブロック730において、燃料108からのエネルギは、排気ノズル120によって変換されて推力を生成する。例えば、ノズル120は、エネルギが与えられた燃料108が膨張し、排出されて推力を生成することを可能にし得る。
【0045】
幾つかの例では、ブロック710、715、および720の幾つかまたはすべては、異なる順序で実行され得るか、または完全にスキップされ得る。
【0046】
幾つかの実施形態では、誘導加熱アセンブリ110は、複数のタービンからの排気生成物を循環させて燃料108を加熱しかつ燃料108にエネルギを与えるための再生熱交換器をさらに含み得る。
【0047】
幾つかの例では、燃料108は、燃焼するまで誘導的に加熱される。他の例では、導電性燃料108は、焼結(例えば、液化なしの加熱)に供される。燃料108が複数の材料から構成される他の例では、燃焼と焼結との組合せが達成され得る。
【0048】
幾つかの実施形態では、燃料108生成物は、誘導加熱アセンブリ内の触媒の存在下で1つまたは複数のユーザ指定の燃料源を組み合わせることによって生成され得る。反応を誘発するための正確な温度制御は、燃料および/または触媒源における材料のキュリー温度を使用して達成される。他の例では、燃料108は誘導加熱アセンブリ120に注入され、エネルギが与えられた燃料は触媒床と反応し、反応からの熱および生成物はノズル120を通して膨張しかつ排出されて電力および推力を生成する。
【0049】
他の実施形態では、プラズマをチャンバ内に閉じ込めるために同軸磁石の線形アレイ(線形配列)が使用され得る。アレイは、誘導および/または焼結を介してそれぞれのマイクロ粒子および/またはナノ粒子にエネルギを与えかつ加熱するように調整された誘導コイルによって取り囲まれ得る。閉じ込められたプラズマの温度を上げるために、二次燃料および/または触媒を加えることができる。二次流体にエネルギが与えられ、作動流体は、次に、アセンブリを通して送られ、相変化あるいは燃焼および/または焼結を経る。エネルギが与えられた生成物が膨張しかつノズル120を通って排出されて推力を生成するように該エネルギが与えられた生成物を導くために、磁気ミラーおよび磁気ノズルが使用され得る。誘導加熱アセンブリ110は、エネルギが与えられた燃料108からの廃熱を使用して発電しかつエネルギ蓄積システムに電力を蓄積するようにさらに構成された発電システムとも組み合わされ得る。
【0050】
当業者は、さらに多くの代替の実施形態および修正が可能であり、上記の例は1つまたは複数の実施形態の例示にすぎないことを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。