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特許7506087保護コーティング組成物およびそれを含むコーティングされた金属基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】保護コーティング組成物およびそれを含むコーティングされた金属基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/02 20060101AFI20240618BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240618BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240618BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240618BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C09D183/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/20
C09D183/04
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021552539
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020020015
(87)【国際公開番号】W WO2020180576
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】16/291,588
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ,ラージクマール
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,ラガヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲサン,カーシケヤン
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-161238(JP,A)
【文献】特開昭63-081176(JP,A)
【文献】特開昭63-117074(JP,A)
【文献】特公平07-035485(JP,B2)
【文献】特開平08-151552(JP,A)
【文献】特開2000-281970(JP,A)
【文献】特開2003-226806(JP,A)
【文献】特開2008-150611(JP,A)
【文献】国際公開第2019/027991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのアルコキシシラン
(ii)シリカナノ粒子;
(iii)ジルコアルミネート材料及びジルコネート材料から選択されるジルコニウムベースの化合物、またはそれらの組合せから選択される接着促進剤;
(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;
(v)水;
(vi)任意選択でのマット剤、ここでマット剤は存在する場合、無機化合物のマット剤から選択される
(vii)任意選択での溶媒;および
(viii)任意選択での少なくとも1つの縮合触媒、
を含むコーティング形成組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのアルコキシシランは、式A、式B、または式Aおよび式Bの混合物、
(X-RSi(R(OR4-(a+b) 式A
(RO)Si-R-Si(OR 式B
またはそれらの加水分解および縮合生成物からなる群から選択され、
ここで
Xは有機官能基であり;
各Rは、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む、1から12個の炭素原子の直鎖状、分枝状または環状の二価有機基であり;
各Rは、独立して、1つまたは複数のハロゲン原子を任意選択で含む、1から16個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり;
各Rは、独立して、1から12個の炭素原子のアルキル基であり;
は、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む、1から12個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状の二価有機基であり;そして
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1または2であり、そしてa+bは0、1または2である、
請求項1に記載のコーティング形成組成物。
【請求項3】
式AおよびBのアルコキシシランの総量がコーティング形成組成物の80重量パーセントを超えない、請求項2に記載のコーティング形成組成物。
【請求項4】
式Aのアルコキシシランにおいて、aは1であり、そして有機官能基Xは、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOORまたは-NHCOSR基であり、ここでRは、1から12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビル基、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネートまたはイソシアヌラト基、または他の-Si(OR)基であり、ここでRは前記定義通りである、請求項2から3のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項5】
式Bのアルコキシシランにおいて、Rは、O、S、およびNRからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む二価の炭化水素基であり、ここでRは、水素または1から4個の炭素原子のアルキル基である、請求項2から4のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項6】
式Aのトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここで式Bのトリアルコキシシランは、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、およびビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項2から5のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項7】
シリカナノ粒子がコロイダルシリカナノ粒子である、請求項1から6のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項8】
シリカナノ粒子が、組成物の重量に基づいて5から50重量パーセントの量で存在する、請求項1から7のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項9】
ジルコニウムベースの化合物が、ジルコアルミネート材料から選択される、請求項1から8のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項10】
ジルコアルミネート材料およびジルコネート材料が中性または酸性のpHを有する、請求項1または9に記載のコーティング形成組成物。
【請求項11】
ジルコニウムベースの化合物が、組成物の重量に基づいて0.1から10重量パーセントの量で存在する、請求項1から10のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項12】
ジルコニウムベースの化合物が、組成物の重量に基づいて0.25から7.5重量パーセントの量で存在する、請求項1から11のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの酸加水分解触媒は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、バーサティック酸、およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から12のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項14】
コーティング形成組成物がマット剤を含む、請求項1から13のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項15】
マット剤が、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、タルク、粘土、か焼カオリン、リン酸カルシウム、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項14に記載のコーティング形成組成物。
【請求項16】
マット剤が、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン、またはそれらの2つ以上の組み合わせで官能化されたシリカである、請求項14に記載のコーティング形成組成物。
【請求項17】
マット剤が、組成物の重量に基づいて0.1から10重量パーセントの量で存在する、請求項14から16のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項18】
コーティング形成組成物が溶媒(vi)を含む、請求項1から17のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項19】
溶媒が、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびケトンからなる群から選択される水混和性溶媒である、請求項18に記載のコーティング形成組成物。
【請求項20】
コーティング形成組成物が、少なくとも1つの縮合触媒を含む、請求項1から19のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項21】
少なくとも1つの縮合触媒は、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択され、ここでRは、水素、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、および6から20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される、請求項1から20のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項22】
縮合触媒は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、およびTBD-アセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から21のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項23】
25℃で3から7cStkの範囲内の粘度を有する、請求項1から22のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項24】
物品の表面に配置された、請求項1から23のいずれかに記載のコーティング形成組成物から形成されたコーティングを含む物品。
【請求項25】
コーティングされた表面は、金属、金属合金、金属化部分、1つまたは複数の保護層を有する金属または金属化部分、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料から形成されている、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
コーティングされた表面は、鋼、ステンレス鋼、クロム、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、またはこれらの金属の2つ以上の合金から選択される金属を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
物品の表面にコーティングを形成する方法であって、
請求項1から23のいずれかに記載のコーティング形成組成物を物品の表面に適用すること;および
コーティング形成組成物を硬化させること、
を含む方法。
【請求項28】
コーティング形成組成物を硬化させることは、80から200℃の温度で硬化させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から23のいずれかに記載のコーティング形成組成物を形成する方法であって、
a)アルコキシシランおよび少なくとも1つの酸加水分解触媒を混合すること;
b)ステップ(a)の混合物に少なくとも1つのシリカナノ粒子および水を加えること;
c)ステップ(b)で得られる混合物に少なくとも1つの水混和性溶媒および追加の酸加水分解触媒を加えること;
d)ステップ(a)、ステップ(b)、またはステップ(d)のいずれかの混合物に、ジルコニウム含有化合物、任意選択での縮合触媒、および/または他の任意選択での添加剤を添加すること;
e)25℃で3.0から7.0cStkの範囲内の粘度を有する硬化性コーティング形成組成物を提供するのに有効な高められた温度および期間の条件下で、ステップ(d)から得られる混合物をエージングすること;および、
f)任意選択にて、前記のステップのいずれかで、その間に、またはその後に縮合触媒を加えること、を含む方法。
【請求項30】
ステップ(c)または(d)の後にマット剤を加えることを含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護コーティング組成物、例えば、化成および不動態化コーティング、より具体的には、アルコキシシランに由来する硬化性コーティング組成物、およびそのような組成物を基材のコーティングのために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部用途の金属および金属合金は、酸塩基反応および電気化学的腐食によって表面を腐食する可能性のある条件にさらされることが多く、これは機械的強度の損失を引き起こし、そして仕上げ金属表面の外観を低下させることになり得る。アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金は、そのような材料(軽金属)の重量対強度比のために、外部用途に好ましい材料である。ただし、アルミニウムは非常に柔らかい金属であるため、機械的な損傷を受けやすくなっている。例えば、擦傷につながる乏しい耐摩耗性を示すことがあり得る。アルミニウムはまた、酸性および塩基性条件への暴露による腐食の影響を受けやすくなっている。
【0003】
これらの問題に対処するための1つのアプローチは、アルミニウム材料を陽極酸化と呼ばれる電気化学的プロセスに供することであり、これは酸化アルミニウムの均一な層を堆積させ、続いて陽極酸化表面の細孔を閉じるようシーリングする。陽極酸化層は、非陽極酸化アルミニウムと比較して、比較的良好な耐摩耗性、耐食性、およびpH耐性(pH4-9)を示す。ただし、陽極酸化プロセスは、多段階で時間がかかり、化学的に集中的なプロセスである。また、高度に酸性および塩基性の条件に対する耐性など、厳しい性能が望まれる一部の要求の厳しい用途では、陽極酸化だけでは不十分なことがあり得る。
【0004】
陽極酸化層を腐食条件から保護するために、良好な光学的および耐摩耗特性に加えて、過度の酸性および塩基性条件に対する耐性、および下層にバリアを提供することによる電気化学的腐食に対する耐性を提供できる保護コーティング層がしばしば適用される。クロムおよび重金属リン酸塩化成コーティングは、塗装前に金属表面を調製するために使用されてきた。しかし、クロムの毒性や、産業廃棄物として小川、河川、その他の水路に排出されるクロム酸塩、リン酸塩、その他の重金属の汚染効果に関する懸念が高まっているため、このような金属コーティング組成物の代替品が求められている。
【0005】
非クロム、非リン酸塩、および非重金属ベースの金属コーティング組成物を開発する努力から出現した1つのタイプの表面保護コーティング組成物は、アルコキシシランに由来する。アルコキシシランに由来する硬化性コーティング組成物は、金属産業内で引き続き高い関心を集めており、一部の配合物は広く商業的に受け入れられているが、金属製造業者および加工業者にとって引き続き非常に重要であるそれらの特性の1つまたは複数、例えば、未硬化組成物の貯蔵安定性、ならびに硬化組成物の接着性、柔軟性、耐食性、耐摩耗性/耐摩損性、および/または光学的透明性特性には改善の余地がかなり残っている。陽極酸化アルミニウムと同様にアルミニウム基材の保護を提供しながら、陽極酸化およびシーリングプロセスをバイパスしてバルク/ベアアルミニウムに直接接着できる単一の保護コーティング層を持つことは非常に有用であることになる。このアプローチ(バルク/ベアAlに直接コーティング)の主な利点は、前処理、陽極酸化、またはシーリングステップを回避する選択肢を提供できることである。アルミニウムバルク金属などの基材の保護コーティングに関連する重要な課題は、より良い性能のため、酸、アルカリ、および腐食性媒体に対するバリアを提供すると同時に、強力な接着力である。
【0006】
性能要件に加えて、仕上げ面のマット外観が、自例えば動車のトリム部品などのスタイリング目的の一部の用途で望まれることがあり得る。現在、マット仕上げは、陽極酸化の前に化学エッチングプロセスによって達成されている。マット仕上げの陽極酸化表面を調製するプロセス全体には、通常、多段階の洗浄、エッチング、陽極酸化、およびシーリングプロセスが含まれる。これらのプロセスは時間がかかり、化学的に集中的であり、そして危険なことがあり得る。さらに、高酸性および強塩基性条件に対する耐性などの厳しい性能特性を満たすために、要求の厳しい用途では保護コーティング層が必要になり得、そして耐腐食性陽極酸化だけでは十分なコーティングを提供できないことがあり得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば、金属、金属合金、金属化部分、1つまたは複数の保護層を有する金属または金属化部分、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料の1つなどの、基材の表面を保護する適用のための硬化性表面保護コーティング形成組成物が提供され、コーティング形成組成物は、
(i)少なくとも1つのアルコキシシラン、
(ii)シリカナノ粒子;
(iii)ジルコニウムベースの化合物;
(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;
(v)水;
(vi)任意選択のマット剤;
(vii)任意選択の溶媒;および
(viii)任意選択の少なくとも1つの縮合触媒;および
(ix)任意選択の1つまたは複数の追加の添加剤、
を含む。
【0008】
一実施形態では、コーティング組成物は、金属、金属合金、金属化部分、1つまたは複数の保護層を有する金属または金属化部分、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料上にコーティングされたときに透明なコーティングを提供する。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つのアルコキシシランは、式A、式B、または式Aと式Bの混合物、
(X-RSi(R(OR4-(a+b) 式A
(RO)Si-R-Si(OR 式B
またはそれらの加水分解および縮合生成物からなる群から選択され、ここで
Xは有機官能基であり;
各Rは、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む1から約12個の炭素原子の直鎖状、分枝状または環状の二価有機基であり;
各Rは、独立して、1つまたは複数のハロゲン原子を任意選択で含む、1から約16個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり;
各Rは、独立して、1から約12個の炭素原子のアルキル基であり;
は、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む1から約12個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状の二価有機基であり;そして
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1または2であり、そしてa+bは0、1または2である。
【0010】
一実施形態では、式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約80重量パーセントを超えない。
【0011】
一実施形態では、式Aのアルコキシシランにおいて、aは1であり、そして有機官能基Xは、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOORまたは-NHCOSR基であり、ここでRは、1から約12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビル基、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネートまたはイソシアヌラト基、または他の-Si(OR)基であり、ここでRは以前に定義されたとおりである。
【0012】
一実施形態では、式Bのアルコキシシランにおいて、Rは、O、S、およびNRからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む二価の炭化水素基であり、ここでRは、水素または1から約4個の炭素原子のアルキル基である。
【0013】
一実施形態では、式Aのトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここで式Bのトリアルコキシシランは、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、およびビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0014】
一実施形態では、シリカナノ粒子はコロイダルシリカから選択される。
【0015】
一実施形態では、シリカナノ粒子は、組成物の重量に基づいて、約5から約50重量パーセントの量で存在する。
【0016】
一実施形態では、ジルコニウムベースの化合物は、ジルコニウム塩、ジルコアルミネート、ジルコネート、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0017】
別の実施形態では、ジルコアルミネートおよびジルコネートは、中性または酸性のpHを有する。
【0018】
組成物の一実施形態では、接着促進剤は、組成物の重量に基づいて、約0.1から約10重量パーセントの量で存在する。
【0019】
別の実施形態では、接着促進剤は、組成物の重量に基づいて、約0.25から約7.5重量パーセントの量で存在する。
【0020】
一実施形態では、少なくとも1つの酸加水分解触媒(iv)は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸(isoanoic acid)、バーサティック酸、およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここでコーティング形成組成物はまた、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの縮合触媒(vi)を含み、ここでRは、水素、1から約8個の炭素原子を含むアルキル基、および約6から約20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。
【0021】
一実施形態では、コーティング形成組成物は、マット剤(vi)を含む。マット剤は、無機化合物または有機化合物であり得る。一実施形態では、マット剤は、官能化シリカから選択される。一実施形態では、マット剤はシリコーン樹脂材料である。
【0022】
一実施形態では、マット剤は、無機化合物または有機化合物から選択される。
【0023】
一実施形態では、マット剤は、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、タルク、粘土、か焼カオリン、リン酸カルシウム、シリコーン樹脂、フルオロ樹脂、アクリル樹脂、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0024】
一実施形態では、マット剤は、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン、またはそれらの2つ以上の組み合わせで官能化された官能化シリカ粒子から選択される。
【0025】
一実施形態では、マット剤は、組成物の重量に基づいて、約0.1から約10重量パーセントの量で存在する。
【0026】
一実施形態では、水混和性溶媒(vii)は、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、およびケトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0027】
一実施形態では、縮合触媒(viii)は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、およびTBD-アセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0028】
一実施形態では、組成物は、25℃で約3.0から約7.0cStkの範囲内の粘度を有する。
【0029】
別の態様では、物品の表面に配置された前述の実施形態のいずれかのコーティング形成組成物から形成されたコーティングを含む物品が提供される。
【0030】
一実施形態では、コーティング形成組成物を含むコーティングされた表面は、金属、金属合金、塗装金属または金属合金、不動態化金属または金属合金、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料から形成される。
【0031】
一実施形態では、金属は、鋼、クロム、ステンレス鋼、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、またはこれらの金属の2つ以上の合金から選択される。
【0032】
さらに別の態様では、物品の表面にコーティング形成組成物を適用すること、およびコーティング形成組成物を硬化させてコーティングを形成することを含む、物品の表面にコーティングを形成する方法が提供される。
【0033】
一実施形態では、コーティング形成組成物を硬化させることは、約80から約200℃の温度で硬化させることを含む。
【0034】
さらに、別の態様では、前述の実施形態のいずれかによる硬化性表面保護コーティング形成組成物を形成するための方法が提供され、該方法は、
a)アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の一部を混合すること;
b)金属酸化物(ii)および水(v)を加えて、ステップ(a)からの加水分解物を形成すること;
c)水混和性有機溶媒(vii)および残りの酸加水分解触媒(iv)をステップ(b)から得られる混合物に加えること;
d)約3.0から約7.0cStk、より具体的には約4.0から約5.5cStk、さらにより具体的には約4.5から約5.0cStkの範囲内の25℃での粘度を有する硬化性コーティング形成組成物を提供するのに有効な高められた温度および期間の条件下で、ステップ(c)から得られる混合物をエージングすること;および
e)任意選択で、前述のステップのいずれかで、その間に、またはその後に縮合触媒(viii)を加えること、任意選択で、前述のステップのいずれかで、その間に、またはその後に接着促進剤(iii)を加えること、および/または任意選択で、前述のステップのいずれかで、その間に、またはその後に追加の添加剤(ix)を加えること、を含む。
【0035】
一実施形態では、該方法は、マット剤(vi)を組成物に加えることをさらに含む。一実施形態では、マット剤は、ステップ(d)後に加えられる。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、表面保護コーティング、すなわち、コーティングされていないまたはプレコートされた金属の表面に耐食性および/または耐摩耗性を付与するコーティングを有する金属は、前述のコーティング形成組成物のコーティングを金属のコーティングされていないまたはプレコーティングされた表面に適用すること;コーティング形成組成物の適用されたコーティングから少なくともいくらかの溶媒(vii)を除去すること;およびコーティング形成組成物の溶媒が減じたコーティングを硬化させ、金属表面に耐食性および/または耐摩耗性コーティングを提供することをさらに含むコーティングプロセスによって得られる。
【0037】
本硬化性コーティング形成組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、そこから得られる硬化表面保護コーティングは、高レベルの耐食性および耐摩耗性、金属表面への接着、柔軟性(ひび割れまた亀裂に対する耐性)、および耐酸性および/または耐アルカリ性などの1つまたは複数の機能的に有利な特性を示す傾向がある。さらに、本明細書の硬化コーティングの一般的に卓越した光学的透明度は、示される下にある基材表面の審美的に魅力的な品質に良い効果をもたらすことができる。
【発明の詳細な説明】
【0038】
ここでの明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、以下に示される意味を有するものとして理解されるべきである。
【0039】
単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれ、特定の数値への参照には、文脈で明確に別段の指示がない限り、少なくともその特定の値が含まれる。
【0040】
実施例または他に示された場合を除き、明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、持続時間、材料の定量化された特性などを表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。
【0041】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を制限するものではない。
【0042】
明細書のいかなる文言も、クレームされていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0043】
ここで使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語、およびそれらの文法上の均等の用語は、追加の、記載されていない要素、または方法のステップを除外しない包括的または限定の無い用語であるが、「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consisting essentially of)」というより限定的な用語を含むことも理解されよう。
【0044】
組成パーセンテージは、特に明記しない限り、重量パーセントで示される。
【0045】
本明細書に記載される任意の数値範囲は、その範囲内のすべての下位範囲、およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0046】
構造的、組成的、および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または黙示的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載されている化合物、材料または物質は、個々の群の代表およびそのすべての組み合わせを含むことがさらに理解されよう。
【0047】
本明細書で使用される「金属」という用語は、本明細書では、金属自体、金属合金、金属化部分、および1つまたは複数の非金属保護層を有する金属または金属化部分に適用されると理解されるべきである。
【0048】
「加水分解縮合」とは、コーティング組成物形成混合物中の1つまたは複数のシランが最初に加水分解され、続いて加水分解生成物とそれ自体または混合物の他の加水分解および/または非加水分解成分との縮合反応を意味する。
【0049】
コーティング組成物は、(i)少なくとも1つのアルコキシシラン:(ii)コロイダルシリカ;(iii)ジルコニウムベースの化合物;(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;(v)水;(vi)任意選択でマット剤;(vii)任意選択で1つまたは複数の溶媒;(viii)任意選択で少なくとも1つの縮合触媒;および(ix)任意選択で1つまたは複数の追加の添加剤を含む。一態様では、ベースコーティング組成物は、金属表面上にクリアコートを形成するための組成物を提供する。別の態様では、ベースコーティング組成物は、マット剤を含む場合、金属表面にマットコーティングを形成するための組成物を提供する。
【0050】
A.コーティング形成組成物の成分
【0051】
アルコキシシラン(i)
【0052】
実施形態では、アルコキシシラン(i)は、式Aおよび/または式Bのアルコキシシランから選択され、
(X-RSi(R(OR4-(a+b) 式A
(RO)Si-R-Si(OR 式B
ここで
Xは有機官能基であり、より具体的には、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOOR、または-NHCOSR基であり、ここでRは、1から約12個の炭素原子、実施形態では1から約8個の炭素原子を含む一価ヒドロカルビル基、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネート、フルオロ基、またはイソシアヌラト基、または他の-Si(OR)であり、ここでRは以下のように定義され、
各Rは、1から約12個の炭素原子、1から約10個の炭素原子、または1から約8個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状の二価有機基であり、例えば、非限定的な例の、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、シクロヘキシレン、アリーレン、アラルキレンまたはアルカリーレン基などの二価の炭化水素基、および任意選択で非限定的な例であるO、S、およびNRなどの1つまたは複数のヘテロ原子を含むものであり、ここでRは水素または1から4個の炭素原子のアルキル基であり、
各Rは、独立して、1から約16個の炭素原子、1から約12個の炭素原子、または1から4個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基から選択され、そして任意選択で1つまたは複数のハロゲン原子、より具体的にはフッ素原子を含み;
各Rは、独立して、1から約12個の炭素原子、より具体的には1から約8個の炭素原子、さらにより具体的には1から4個の炭素原子のアルキル基であり;
は、1から約12個の炭素原子、1から約10個の炭素原子、または1から約8個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状の二価有機基、例えば、非限定的な例の、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、シクロヘキシレン、アリーレン、アリールアルキレンまたはアルカリーレン基のなどの二価炭化水素基、および非限定的な例のO、S、およびNRなどの1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含むものであり、ここでRが水素または1から4個の炭素原子のアルキル基であり;そして
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1、または2であり、そしてa+bは0、1、または2である。
【0053】
一実施形態では、式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約80重量パーセント、約70重量パーセント、約60重量パーセント、50重量パーセント、約45重量パーセント、さらには約40重量パーセントを超えない。一実施形態では、アルコキシシラン(i)は、組成物の重量に基づいて、コーティング組成物中に約20から約80重量パーセント、約25から約70重量パーセント、約30から約50重量パーセント、または約35から約40重量パーセントの量で存在する。
【0054】
一実施形態では、アルコキシシラン(i)は、上記のように、式Aのジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、および/またはテトラアルコキシシランのうちの1つまたは複数、および/または式Bのトリアルコキシシランのうちの1つまたは複数から選択することができ、但し少なくとも1つのそのようなトリアルコキシシランがその中に含まれるという条件である。
【0055】
式Aのジアルコキシシランの例には、これらに限定されないが、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3-シアノプロピルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジ(p-トリル)ジメトキシシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ヘキサメチレンアミノ)ジメトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシランなど、およびそれらの混合物が含まれる。上で説明したように、ジアルコキシシランを含むアルコキシシランには、その加水分解および縮合生成物(オリゴマー)も含まれる。
【0056】
一実施形態では、式Aおよび/またはBからなる群から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン(i)もまた、それらの加水分解および縮合生成物であり得る。
アルコキシシラン(i)のそのような生成物のオリゴマーは、式AおよびBなどからなる群から選択される。それらは、式AおよびBからなる群から選択されるアルコキシシラン(i)の加水分解および縮合によって調製される。つまり、アルコキシシリル基が水と反応して対応するアルコールを遊離し、そして次に得られたヒドロキシシリル基が縮合してSi-O-Si(シロキサン基)を形成する。得られる加水分解および縮合生成物またはオリゴマーは、例えば、2から30のシロキシ単位、好ましくは2から10のシロキシ単位、および残留アルコキシ基を含む直鎖状または環状ポリシロキサンであり得る。
そのようなオリゴマーの特定の例示的な例には、特に、オリゴマーのグリシドキシプロピル-トリメトキシシランが含まれる。
【0057】
式Aのトリアルコキシシランの例には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、それらのオリゴマーおよび2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランは、例示的なトリアルキルシロキサンである。上で説明したように、トリアルコキシシランを含むアルコキシシランには、その加水分解および縮合生成物(オリゴマー)も含まれる。
【0058】
式Aのテトラアルコキシシラン(すなわち、テトラアルキルオルトシリケート)の例には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラプロポキシシランなど、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
式Bのトリアルコキシシランの例には、これらに限定されないが、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンなど、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれる。
【0060】
金属酸化物(ii)
【0061】
本組成物は、シリカナノ粒子から選択される金属酸化物を含む。一実施形態では、シリカナノ粒子は、コロイダルシリカから選択される。コロイドダルシリカ成分は、一般に、粒子、例えば、約5nmから約500nm、約10から約200nm、または約10から約60nmの平均粒子サイズの範囲のほぼ球形または等軸粒子の形態で提供される。平均粒子サイズは、例えば、完全Mie理論を使用する低角レーザー光散乱(LALLS)、特にMastersizer 2000または3000、Malvern Instrumentsを使用することを含む、任意の適切な方法または装置によって決定することができる。
【0062】
一実施形態では、金属酸化物(ii)は、水性コロイド分散液として提供される。コロイダルシリカの水性分散液には、約5から約150nm、約20から約100nm、または約40から80nmの範囲の平均粒子サイズを有するものが含まれる。一実施形態では、コロイダルシリカは、約5から約30nmの平均粒子サイズを有する。適切なコロイダルシリカ分散液には、例えば、Ludox(登録商標)(Sigma Aldrich)、Snowtex(登録商標)(Nissan Chemical)、およびBindzil(登録商標)(AkzoNobel)およびNalco(登録商標)コロイダルシリカ(Nalco Chemical Company)、Levasil(登録商標)(AkzoNobel)などの市販のものが含まれる。このような分散液は、酸性および塩基性ヒドロゾルの形態で入手できる。
【0063】
酸性および塩基性コロイダルシリカの両方をコーティング組成物に組み込むことができる。低アルカリ含有量を有するコロイダルシリカは、より安定したコーティング組成物を提供し得る。特に適切なコロイダルシリカには、限定されるものではないが、Nalco(登録商標)1034A(Nalco Chemical Company)およびSnowtex(登録商標)O40、Snowtex ST-033およびSnowtex(登録商標)OL-40(Nissan Chemical)、Ludox(登録商標)AS40およびLudox(登録商標)HS40(Sigma-Aldrich)、Levasil200/30およびLevasil(登録商標)200S/30(現在はLevasil CS30-516P)(AkzoNobel)およびCab-O-Sperse(登録商標)A205(Cabot Corporation)が含まれる。
【0064】
コロイダルシリカの総量は、一般に、組成物の重量に基づいて、約5から約50、約10から約40、または約10から約30重量パーセントまで変動し得る。ここでは、明細書および特許請求の範囲の他の箇所と同様に、数値を組み合わせて、新規な非特定範囲を形成することができる。
【0065】
コーティング組成物中の金属酸化物(ii)の量は、一般に、組成物の重量に基づいて、約1から約50、約5から約40、約10から約30、または約10から約20重量パーセントに変化し得る。重量は、組成物中の金属固体の総重量ではなく、組成物の総重量におけるコロイド分散液について示される。
【0066】
ジルコニウムベースの化合物(iii)
【0067】
組成物は、接着促進剤として機能し得るジルコニウム含有化合物である。適切なジルコニウム含有化合物の例には、ジルコニウム塩、ジルコアルミネート材料、ジルコネート材料、またはそれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。接着促進剤は、組成物の重量に基づいて約0.05から約10重量パーセント;組成物の重量に基づいて約0.1から約7.5重量パーセント;組成物の重量に基づいて約0.25から約5重量パーセント;組成物の重量に基づいて約0.5から約2重量パーセントの量で存在し得る。ここでは、明細書および特許請求の範囲の他の箇所と同様に、数値を組み合わせて、新規の非開示の範囲を形成することができる。
【0068】
ジルコニウム塩は、例えば、ジルコニウムのアルコキシド、ハロゲン化物、炭酸塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩を含むことができる。
【0069】
アルミニウム-ジルコニウム錯体の調製は、米国特許第4,539,048号および第4,539,049号に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの特許は、実験式Cに対応するジルコアルミネート錯体反応生成物について説明している。
(Al(ORO)(OC(R)O)(ZrA 実験式C
ここでX、Y、およびZは少なくとも1であり、Rは、2から17個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、メルカプトアルキル、またはエポキシアルキル基であり、そしてX:Zの比は約2:1から約5:1であり得る。AおよびBは、ハロゲン(例えば、塩素)またはヒドロキシであり得る。一実施形態では、AおよびBはクロロまたはヒドロキシであり、cは約0.05から2、好ましくは0.1から1の範囲の数値であり、dは約0.05から5.5、好ましくは約1から5の範囲の数であり;そしてcは、0.05から5.5、好ましくは約1から5の範囲の数であり、ただし、キレート安定化アルミニウム反応物にて2c+d+e=6という条件である。一実施形態では、Aはヒドロキシであり、そしてdは2から5の範囲であり、そしてBは塩素であり、そして1から3.8の範囲である。式Cのアルミニウム含有セグメントでは、アルミニウム原子の対は、二座キレート配位子によって結合されており、ここで(1)-ORO--はアルファ、ベータまたはアルファ、ガンマグリコール基であり、ここでRは、1から6個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、またはアルキニル基、好ましくはアルキル基であり、そして好ましくは2個または3個の炭素原子を有し、そのような配位子は所与の組成物内で独占的にまたは組み合わせて使用されることになる、または(2)-ORO--は、2から6個の炭素原子、好ましくは2から3個の炭素原子(すなわち、好ましくはR10はHまたはCHである)を有するアルファ-ヒドロキシカルボン酸残基--OCH(R10)--COOHである。いずれの場合も、有機配位子は2つの酸素ヘテロ原子を介して2つのアルミニウム原子に結合している。有機官能性配位子--OC(R)O--は、以下の(1)2から18個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルカルボン酸、ここで好ましい範囲は2から6個の炭素原子であり;(2)2から18個の炭素原子を有するアミノ官能性カルボン酸、ここで好ましい範囲は2から6個の炭素原子であり;(3)2から18個の炭素原子を有する二塩基性カルボン酸、ここで両方のカルボキシ基が好ましくは末端であり、好ましい範囲が2から6個の炭素原子であり;(4)2から18個の炭素原子を有する二塩基酸の酸無水物、ここで好ましい範囲は2から6個の炭素原子であり;(5)2から18個の炭素原子を有するメルカプト官能性カルボン酸、ここで好ましい範囲は2から6個の炭素原子であり;または(6)2から18個の炭素原子、好ましくは2から6個の炭素原子を有するエポキシ官能性カルボン酸の群の1つまたは組み合わせに由来する部分である。
【0070】
変数fおよびgは、0.05から4の数値を有し、但しジルコニウムオキシハライド金属有機錯体反応物においてd+e=4であるという条件である。実施形態では、ジルコニウム反応物中に少なくとも1つのヒドロキシ基および1つのハロゲン基が存在する。より好ましくは、この群におけるヒドロキシ対ジルコニウムの実験的比は、約1から2であり、そしてハロゲン対ジルコニウムの比は、その反応物において約2から3である。追加のジルコアルミネート錯体は、米国特許第4,650,526号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。適切なジルコアルミネート材料の非限定的な例には、FedChemから入手可能なManchem(登録商標)の商品名で販売されているものが含まれる。
【0071】
特定の態様において、ジルコニウムベースの化合物は、ネオアルコキシトリス(m-アミノフェニル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、プロピオン酸ジルコニウム、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチル、ビス(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、トリス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリス(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリス(m-アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリスメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリスアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシジパラミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(アイアリル)オキシビス(3-メルカプト)プロピオン酸ジルコネート、ジルコニウムIV2-エチル、および2-プロペノラトメチル1,3-プロパンジオラト、シクロジ2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラトピロホスファト-O,O,テトラ(2,2ジアリルオキシメチル)ブチル、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリメタクリルジルコネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるジルコネート有機金属化合物であり得る。ジルコネート接着促進剤の非限定的な例には、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル)ブチル、ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート(Kenrich Petrochemicals,Inc.からKZ55として市販されている);ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノイルジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ジオクチル)-ピロホスファトジルコネート ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(m-アミノ)フェニルジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリメタクリルジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリアクリルジルコネート;ジネオペンチル(ジアリル)オキシ、ジパラミノベンゾイルジルコネート;ジネオペンチル(ジアリル)オキシ、ジ(3-メルカプト)プロピオン酸ジルコネート;それらの少なくとも部分的な加水分解物またはそれらの混合物が含まれる。
【0072】
一実施形態では、ジルコニウムベースの化合物は、中性から酸性のpHを有する。一実施形態では、ジルコアルミネートおよび/またはジルコネート接着促進剤は、7以下、6以下、5以下または4以下のpHを有する。一実施形態では、ジルコアルミネートおよび/またはジルコネート接着促進剤は、2-7、3-6、または4-5のpHを有する。
【0073】
酸加水分解触媒(iv)
【0074】
アルコキシシランの加水分解に適した任意の酸性加水分解触媒を、本コーティング形成組成物に組み込むことができる。例示的な酸加水分解触媒(iv)には、これらに限定されないが、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸(isoanoic acid)、バーサティック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、アミノ酸、およびそれらの2つの混合物が含まれる。酸加水分解触媒は、希釈せずに、または水溶液の形態で使用することができる。
【0075】
酸加水分解触媒(iv)は、本発明のコーティング形成組成物中に、少なくとも触媒有効量で存在し、これは、ほとんどの場合、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、約0.1から約5、約0.5から約4.5、または約2から約4重量パーセントの範囲であり得る。
【0076】
水(v)
【0077】
ここでのコーティング形成組成物の水成分は、有利には脱イオン(DI)水である。コーティング組成物形成混合物中に存在する全水の一部またはすべては、混合物の1つまたは複数の他の成分、例えば、金属酸化物の水性コロイド分散液(ii)、水混和性溶媒(vii)、酸加水分解触媒(iv)、任意選択のマット剤(vi)、任意選択の縮合触媒(viii)、および/または以下に記載されるものなどの他の任意選択の成分(ix)の一部として加えることができる。
【0078】
水(v)の総量は、大きく変化する範囲内、例えば、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、約5から約40、より具体的には約5から約30、そしてさらにより具体的には約5から約15の重量パーセントの範囲内にあり得る。
【0079】
マット剤(vi)
【0080】
一実施形態では、コーティング組成物は、任意選択で、マット剤をさらに含む。マット剤がない場合、組成物は、金属表面に適用(および硬化)されたときに透明なコートを提供する。マット剤を含む組成物では、得られるコーティングはマット仕上げを示す。
【0081】
マット剤は、無機化合物からなるマット剤または有機化合物からなるマット剤のいずれかであり得る。
【0082】
マット剤として適した無機化合物の例には、ケイ素含有無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、タルク、粘土、か焼カオリン、リン酸カルシウムなどを含む無機化合物含まれるが、これらに限定されない。そのような材料の組み合わせも使用することができる。特に適しているのは、ケイ素含有無機化合物である。たとえば、二酸化ケイ素の微粒子として、Aerosil R972、R974、R812、200、300、R202、OX50、およびTT600(Nippon Aerosil Co.,Ltd.製)などの商品名で市販されている製品を使用することができる。
【0083】
一実施形態では、マット剤は、官能化シリカ粒子によって提供される。一実施形態では、官能化シリカ粒子は、有機表面処理シリカを含む。表面処理は、シリカをシラン化剤で処理することを含み得る。シラン化剤には、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザンおよび/またはシロキサンが含まれる。マット剤として適切な処理されたシリカ粒子の例には、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0120876号に記載されているものが含まれる。マット剤としての使用に適した材料の非限定的な例には、W.R.Grace製の商品名SYLOID、および/またはEvonik製のACEMATTで販売されている材料が含まれる。
【0084】
マット剤として適切な有機化合物の例には、シリコーン樹脂、フルオロ樹脂、アクリル樹脂などのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。とりわけ、より好ましいのはシリコーン樹脂である。適切な有機化合物の非限定的な例には限定されるものではないが、TOSPEARL 103、TOSPEARL 105、TOSPEARL 108、TOSPEARL 120、TOSPEARL 145、TOSPEARL 3120、およびTOSPEARL240などを含む、Momentive Performance Materials製のTOSPEARLの商品名で販売されているものが含まれる。
【0085】
マット剤は、組成物に含まれる場合、特定の目的または意図された用途のために所望の量で存在し得る。特に、マット剤の量は、所望のマット効果、例えば、特定の光沢、画像の明瞭さ(DOI)などを提供するように選択することができる。一実施形態では、マット剤は、組成物の重量に基づいて、約0から約10重量パーセント;約0.1から約10重量パーセント;約0.2から約8重量パーセント;または、約0.5から約3重量パーセントの量で提供される。さらに、マット剤は、無機化合物タイプのマット剤と有機化合物タイプのマット剤との混合物を含む2つ以上のマット剤の混合物を含むことができることが理解されよう。
【0086】
水混和性有機溶媒(vii)
【0087】
コーティング形成組成物に組み込まれ得る水混和性溶媒(vi)の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、メトキシプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、およびそれらの組み合わせなどのアルコールである。アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル、および2-ブトキシエタノールなどの他の水混和性有機溶媒も利用できる。典型的には、これらの溶媒は水と組み合わせて使用され、後者は、金属酸化物(ii)および/またはその水(v)の一部または全部を提供するコーティング組成物の他の成分に関連する任意の水と共に使用される。
【0088】
コーティング形成組成物中に存在する水混和性溶媒(vi)の総量は、例えば、その総重量に基づいて、約10から約80、約10から約65、約10から約60、または約10から約50重量パーセントに大きく変動し得る。
【0089】
任意選択の縮合触媒(viii)
【0090】
任意選択の縮合触媒(viii)は、本明細書のコーティング形成組成物の部分的または完全に加水分解されたシラン成分(A)および(B)の縮合を触媒し、そしてしたがって硬化触媒として機能する。
【0091】
任意選択の縮合触媒(viii)がなくてもコーティング形成組成物を硬化させることができるが、効率的な硬化には、より集中的な条件、たとえば、高温の適用(熱硬化)および/または延長された硬化時間などを要することがあり得、それらの両方は、コストや生産性の観点から望ましくないことがあり得る。より経済的なコーティングプロセスを提供することに加えて、任意選択の縮合触媒(viii)の使用は、一般に、コーティング形成組成物の改善された硬化をもたらす。
【0092】
コーティング形成組成物中に任意選択で存在し得る縮合触媒(viii)として適切な材料の例には、これらに限定されないが、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートが含まれ、ここでRは、水素、1から約8個の炭素原子を含むアルキル基、および約6から約20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。例示的な実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはイソブチルなど、約1から4個の炭素原子を含む基である。より活性なタイプの縮合触媒(viii)、例えば鉱酸およびアルカリ金属水酸化物と比較して、前述のテトラブチルアンモニウムカルボキシレートは、それらの触媒作用がいくらか穏やかであり、それらを含むコーティング形成組成物の貯蔵寿命を最適化する傾向がある。前述の式の例示的なテトラブチルアンモニウムカルボキシレート縮合触媒は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)、テトラブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、およびテトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネートである。特に適切な縮合触媒は、テトラブチルアンモニウムカルボキシレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラヘキシルアンモニウムアセテート、ジメチルアニリウムホルメート、ジメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムカルボキシレート、テトラメチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、ベンジルトリメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトライソプロピルアンモニウムアセテート、トリエタノール-メチルアンモニウムアセテート、ジエタノールジメチルアンモニウムアセテート、モノエタノールトリメチルアンモニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、TBDアセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))、およびそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0093】
前述のテトラブチルアンモニウムカルボキシレート縮合触媒のうち、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、およびテトラ-n-ブチルアンモニウムホルメートが特に適切な材料である。
【0094】
使用される場合、縮合触媒(viii)は、コーティング形成組成物中に、少なくとも触媒有効量、例えば、組成物の総重量に基づいて約0.0001から約1重量パーセントで存在することができる。
【0095】
その他の任意選択の成分(ix)
【0096】
1つまたは複数の他の任意選択の成分(ix)は、本明細書のコーティング形成組成物に含めるのに適している。他の成分の例には、界面活性剤、酸化防止剤、染料、充填剤、着色剤、可塑剤、UV吸収剤、光安定剤、スリップ添加剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
コーティング形成組成物はまた、レベリング剤または流動添加剤として機能する1つまたは複数の界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤の例には、Fluorad(登録商標)(3M)などのフッ素化界面活性剤、Silwet(登録商標)やCoatOSil(登録商標)(Momentive Performance Materials,Inc.)などのシリコーンポリエーテル、およびBYK-302(BYK Chemie USA)などのポリエーテル修飾シリコーンなどのシリコーン表面添加剤が含まれる。
【0098】
コーティング組成物はまた、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、またはジベンゾイルレゾルシノールまたはそれらの誘導体などの1つまたは複数のUV吸収剤を含むことができる。適切なUV吸収剤には、シランと共縮合することができるものが含まれ、その特定の例には、4-[ガンマ-(トリメトキシシリル)プロポキシル]-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-[ガンマ-(トリエトキシシリル)プロポキシル]-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよび4,6-ジベンゾイル-2-(3-トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールが含まれる。シランと共縮合できるUV吸収剤を使用する場合、金属の表面に適用する前に、本明細書の熱硬化性コーティング組成物を完全に混合することにより、UV吸収剤が他の反応種と共縮合することが重要である。UV吸収剤を共縮合させることで、風化中に遊離UV吸収剤が環境に浸出することによって引き起こされ得るコーティング性能の低下を防ぐ。
【0099】
コーティング形成組成物はまた、ヒンダードフェノール(例えば、Irganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicals)、メチレングリーン、メチレンブルーなどの染料)などの1つまたは複数の酸化防止剤、限定されるものではないが、二酸化チタン、リン酸亜鉛、重晶石、アルミニウムフレークなどの充填剤、および/または限定されるものではないが、ジブチルフタレートなどの可塑剤を含むことができる。
【0100】
本明細書での使用に適した顔料は、すべて無機および有機の色剤/顔料である。これらは通常、アルミニウム、バリウム、またはカルシウムの塩またはレーキである。レーキは、固体希釈剤でのばされまたは減じられた顔料または吸着性表面に水溶性染料を沈殿させることによって調製される有機顔料であり、通常はアルミニウム水和物である。レーキはまた、酸性または塩基性染料からの不溶性塩の沈殿から形成される。カルシウムおよびバリウムのレーキもまた、ここで使用される。パール、酸化チタン、レッド6、レッド21、ブルー1、オレンジ5、グリーン5の染料、チョーク、タルク、酸化鉄、および雲母チタンなど他の色剤や顔料も組成物に含めることができる。色剤/顔料はまた、顔料ペースト/着色剤の形態であり得る。
【0101】
B.コーティング形成組成物の形成
【0102】
本発明の熱硬化性コーティング組成物の形成において、アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の一部の混合物を反応させ、続いて酸加水分解触媒(iv)の残りの部分および他の成分(例えば、ナノ粒子、ジルコニウムベースの化合物、水、任意選択の溶媒、任意選択の縮合触媒、任意選択のその他の添加剤など)を加え、そして約3.0から約7.0cStk、別の実施形態ではより具体的には約4.0から約5.5cStk、およびさらに別の実施形態ではより具体的には約4.5から約5.0cStkの粘度範囲を有する熱硬化性組成物が得られるよう、得られた混合物を高温および時間の所定の条件下でエージングする。粘度は、必要に応じて、DIN 53015規格「粘度測定-Hoepplerによるローリングボール粘度計による粘度の測定」に従って、Haake DC10温度制御ユニットおよびボールセット800-0182、特に、直径が15.598mm、重量が4.4282g、密度が2.229g/cmのボール番号2を備えた、Hoeppler落下ボール粘度計モデル356-001を使用して25℃で測定できる。
【0103】
反応は、例えば、氷浴、氷/NaCl混合物、またはドライアイス/イソプロパノール混合物を使用することによって行うことができる。より具体的には、アルコキシシラン(i)および酸加水分解触媒(iv)をガラス瓶に入れ、次に氷浴に入れて、外部温度計を通して温度を監視しながら混合物を冷却する。
【0104】
熱硬化性コーティング組成物を形成するプロセスの第1段階において、式Aおよび/またはBのトリアルコキシシラン、任意選択の式Aのジアルコキシシランおよび/またはテトラアルコキシシラン、ならびに酸加水分解触媒(iv)の総量の約10から約40パーセントの混合物を混合する。これは、混合物を冷却することで行うことができる。金属酸化物(ii)、例えば水性コロイダルシリカおよび水(v)をゆっくりと混合物に加える。
【0105】
金属酸化物(ii)の添加に続いて、そして絶えず攪拌しながら、混合物は、温度が周囲温度まで、またはほぼ周囲温度、例えば、約20℃から約30℃まで上昇させる。この連続撹拌の期間中に、混合物のアルコキシシラン成分(i)は、初期レベルの加水分解を受け、続いて得られた加水分解物が縮合する。
【0106】
本明細書の熱硬化性コーティング組成物を形成するためのプロセスの第2段階において、水混和性溶媒(vii)および残りの酸加水分解触媒(iv)を、現在の周囲温度の反応媒体に、例えば、約5から約24の期間にわたって、より具体的には、約8から約15時間の期間にわたって連続的に撹拌しながら加え、その間に、シランおよび/または部分加水分解物のさらなる加水分解およびそのように形成された加水分解物の縮合が起こる。
【0107】
接着促進剤(iii)は、ステップ(a)-(d)のいずれかで、その間に、またはその後の任意の時点で加えることができる。
【0108】
使用される場合、任意選択の縮合触媒(viii)は、硬化性コーティング組成物を調製するステップ(a)-(d)のいずれかで、その間に、またはその後に、少なくとも触媒的に有効な量で加えられ得る。任意選択の縮合触媒(viii)の量は、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、例えば、約0.01から約0.5、より具体的には約0.05から約0.2重量パーセントまで大きく変動し得る。
【0109】
この追加の加水分解期間に続いて、任意選択の縮合触媒(viii)および1つまたは複数の他の任意選択の成分(ix)を、有利には、さらなる期間、例えば、約1から約24時間の連続撹拌下で、反応混合物に加えることができる。得られた反応混合物は、これでエージングの準備ができている。
【0110】
前述のコーティング組成物形成混合物のエージングは、約3.0から約7.0cStkの前述の範囲内の粘度をもたらすことが実験的に決定された期間にわたって高温で実施される。そのような粘度を達成することにより、良好から優れた硬化コーティング特性を有する硬化性コーティング組成物がもたらされる。より低い粘度は、コーティングフィルムの硬度の低下、およびコーティングの継続的な暴露で発生する可能性のある後硬化につながることになり得る。より高い粘度は、硬化およびその後の暴露条件の間にコーティングフィルムのひび割れを引き起こし得る。
【0111】
多くのコーティング組成物形成混合物について、約3.0から約7.0cStkの範囲内の粘度は、コーティング形成混合物をエアオーブン内で、例えば、約25から約100℃の温度で約30分から約1日、より具体的には、約25から約75℃の温度で約30分から約5日、そしてさらにより具体的には、約25から約50℃の温度で約3から約10日の間、加熱することによって達成することができる。ヒドロキシル含有加水分解性シランは、等量未満の水が加水分解性シリル基と反応するときに部分的に加水分解される。加水分解パーセントが約1から約94パーセントの範囲にある場合、シランは部分的に加水分解されたと見なされる。ヒドロキシル含有加水分解性シランは、加水分解パーセントが約95から約100パーセントの範囲にある場合、実質的に完全に加水分解されたと見なされる。部分的に加水分解されたヒドロキシル含有加水分解性シランは、RO-Si基がシラノール縮合の重合反応を停止し、そしてヒドロキシル含有加水分解性シランに由来するより低い平均分子量のオリゴマー組成を維持するため、水溶液中でより良好な安定性を有する。より低い平均分子量のオリゴマー組成物は、金属基材により均一に吸着し、より良好な接着をもたらす。
【0112】
攪拌しながらマット剤粒子を加える。マット粒子が溶液から沈降し始めた場合(例えば、組成物を作製してから組成物を使用するまでの長期間の後)、マット剤は簡単な混合で簡単に再分散でき、そして配合物は、コーティングを調製するために使用できる。一実施形態では、マット剤は、クリアコート組成物の形成に続いて加えられる。別の実施形態では、マット剤は、コーティング組成物の形成の任意の段階で加えることができる。
【0113】
C.コーティング適用および硬化手順
【0114】
追加の溶媒のさらなる添加を有するまたは有しない本発明のコーティング形成組成物は、典型的には、約10から約50、約15から約40、または約20から約30重量パーセントの固形分を有することになる。コーティング組成物のpHは、しばしば、約3から約7、より具体的には、約4から約6の範囲内に入ることになる。
【0115】
硬化性コーティング組成物は、プライマーの使用を有するまたは有しない金属基材上にコーティングすることができる。実施形態では、コーティング組成物は、プライマーなしで金属基材上にコーティングされる。
【0116】
コーティング組成物は、様々な基材に適用することができる。適切な基材の例には、金属、金属合金、塗装金属または金属合金、不動態化金属または金属合金、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、プライミングされたプラスチック材料などが含まれる。適切な金属には、鋼、クロム、ステンレス鋼、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、これら金属の各々の合金などが含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
コーティング形成組成物は、これらに限定されないが、スプレー、ブラッシング、フローコーティング、ディップコーティングなどの任意の従来のまたは他の既知の技術を使用して、金属表面または他の基材に適用することができる。適用された(または湿った)ままのコーティングのコーティング厚さは、約10から約150、約20から約100、または約40から約80ミクロンなどのかなり広い範囲にわたって変化し得る。そのような厚さのウェットコーティングは、一般に、約1から30、約2から約20、または約5から約15ミクロンの範囲の厚さを有する(乾燥した)硬化コーティングを提供することになる。
【0118】
コーティングが乾燥するにつれて、溶媒(vii)および他の容易揮発性材料が蒸発し、適用されたコーティングは、約15から約30分で接触にて粘着性がなくなることになる。そして、コーティング層/フィルムは、任意の従来または他の既知の、または後に発見された熱硬化手順を介して硬化する準備ができている。熱硬化手順の操作要件は当技術分野でよく知られている。例えば、熱的な加速硬化は、約80から約200℃の温度領域内で、約30から約90分の期間にわたって実施され得、光学的透明または基材金属上に(組成物に基づく)マット仕上げを示す硬化された硬質保護コーティングを提供する。
【0119】
前述のように、マット仕上げの場合、組成物は、光沢、画像の明瞭さ、またはそのような仕上げを評価するための他の適切な特性に関して、特定の用途または意図された使用に所望の仕上げをもたらすために提供することができる。光沢は、光沢を測定するための任意の適切な装置および方法を使用して評価することができる。一実施形態では、光沢は、BYK Micro-TRI光沢計を使用して測定される。
【0120】
コーティング形成組成物から得られる硬化コーティングは、金属表面と直接接触することができ、その中の唯一のコーティングとして機能することができ、1つまたは複数の他のコーティングの上に重ね合わせられることができ、および/またはそれ自体が1つまたは複数のその上に重ねられた他のコーティングを有することができる。硬化コーティング組成物は、その金属基材に耐食性および/または耐摩耗性を与えることに加えて、審美的コーティングとしても機能し得、その場合、それは、金属基材上の唯一または最も外側のコーティングを構成することになる。
【0121】
既知のアルコキシシランベースのコーティング形成組成物に対する本コーティング形成組成物の利点には、格別の貯蔵安定性、様々な金属および金属化表面のいずれかへのその適用の容易さ、および硬化コーティングの確実な均一特性が含まれる。
【0122】
上記に示したように、本硬化コーティング組成物は、その金属基材への高レベルの接着、耐食性、柔軟性(ひび割れおよび亀裂に対する耐性)、耐摩耗性/耐摩損性、光学的透明度またはマットな外観を含む優れた特性を示す。
【実施例
【0123】
【0124】
例1-15
【0125】
例1-15は、本組成物の態様および実施形態によるコーティング形成組成物の調製、ならびに長さ15cm、幅10cm、厚さ1mmのベア/バルクアルミニウムパネル上の硬化コーティングとしてのそれらの性能を示す。
【0126】
例1-15の硬化性コーティング形成組成物の出発成分は、以下の表1に記載されている。
【表1】
【0127】
コーティング配合物の調製
【0128】
ガラス瓶に酢酸とトリアルコキシシランを入れた。反応混合物を氷浴で約0℃に冷却した後、シリカナノ粒子と水の混合物を、温度を約10℃未満に維持しながら、シランと酢酸の冷却混合物に滴下した。溶液の温度がゆっくりと室温に上昇する12から14時間後、アルコールと残りの酢酸を加えた後、接着促進剤、TBAA触媒、流動添加剤を加えた。この後、金属表面にコーティングする前に、配合物を熱風オーブン内で50℃でエージングした。
【0129】
表1に記載されている出発材料と上記の一般的な調製手順を使用して、例1-15の硬化性コーティング形成組成物は、以下の表2に記載の示された混合物から調製された。比較例の組成物を表3に示す。
【表2】

【表3】
【0130】
例1-15の硬化性コーティング形成組成物をベア/バルクアルミニウムパネルに適用し、そしてその上のコーティングを硬化させるための一般的な手順は、以下の通りであった。
【0131】
コーティング手順
【0132】
金属基材は最初にイソプロパノールで洗浄され、そして空気中で乾燥される。約10ミクロンの厚さを有するコーティング層の適用は、任意の適切な手段によって、例えば、ディップ、フロー、またはスプレーコーティングによって実施することができる。バルク/ベアアルミニウムパネルにコーティング形成組成物の約10ミクロンの厚さの層を適用するために、ディップコーティングが使用された。
【0133】
硬化手順
【0134】
バルク/ベアアルミニウム基材にコーティングを適用した後、揮発性物質は約20-25℃で蒸発し、約15-30分以内に粘着性のないコーティング層の形成がもたらされた。次にコーティングされたパネルを130-200℃の熱風オーブンで30-60分間ベークして、金属表面に完全に硬化した透明なハードコートを作製した。
【0135】
コーティングされた金属パネルの試験は、以下の表4に記載されているように実施された。
【表4】
【0136】
コーティング性能データは、以下のように表5-7に示されている。
【表5】

【表6】

【表7】
【0137】
表5に記載されているように、例2から3および例6から7は、すべての接着および耐摩耗性およびpH耐性試験(HClおよびNaOH緩衝液)などの他の試験に合格している。一方、表3に記載されている比較配合物の試験結果は表6にまとめられており、初期接着試験に合格していない。
【0138】
この特定の配合物および用途で機能することが見出された他のクラスの接着促進剤は、ジルコニウム(IV)錯体、特に、例14および15にて提供されるKenrich Petrochemicals製のKZTPPである。
【0139】
マットコーティング組成物およびコーティング
【0140】
出発材料
【0141】
マットコーティング組成物の出発材料を表8に記載する。
【表8】
【0142】
最終的なマットコーティング形成組成物を調製する手順は、2つのステップからなる。第1のステップは、対応するクリアコート形成組成物を調製することであり、続いて、Al表面に適用する前に、マット剤をクリアコート形成組成物に分散させることを含む第2のステップである。
【0143】
クリアコート組成物は、以前に記載されたように調製された。得られた透明コーティング組成物を丸底フラスコに入れ、必要量のマット剤粒子を約500-1000RPMで5-24時間、室温で撹拌しながら加えた。次に得られた混合物を、コーティングを適用する前に、500-750RPMで3-5分間遠心分離した。
【0144】
マットコーティング組成物でコーティングするための一般的な手順
【0145】
コーティングを適用する前に、アルミニウムの表面をイソプロパノールで洗浄し、そして空気中で乾燥させた。約5-10ミクロンのおよその厚さの薄層コーティングの適用は、フローコーティングによって達成された。アルミニウム基材にコーティングした後、揮発性物質は周囲条件(約20-25℃、30±10%RH)で蒸発し、そして25-30分以内に粘着性のないコーティング層が形成された。溶媒をフラッシュオフした後、コーティングされたパネルを130-200℃の熱風オーブンで30-60分間ベークして、アルミニウム表面に完全に硬化したマットコーティングを得た。
【0146】
マットコーティング組成物(例16-19)
【0147】
マットコーティング組成物は、上記のように調製された。組成物は表9に記載されている。
【表9】
【0148】
比較のマットコーティング組成物を表10に示す。比較例CE-4、CE-5、およびCE-6は、例16-例19と同じ手順で調製される。しかしながら、CE-4、CE-5およびCE-6配合物は、マット剤の分散後数時間(3-5時間)までしか使用できず、その時間を超えると、マット剤がコーティング形成配合物から沈降し始めることが見出されている。沈降した粒子は、激しく混合した後でも完全に再分散せず、コーティング配合物を再利用することはできない。CE-7およびCE-8組成物は、マット剤を有していない。
【表10】
【0149】
マットコーティング組成物および比較のマットコーティング組成物の結果を表11-13に提供する。
【表11】

【表12】

【表13】
【0150】
本発明は、その特定の実施形態を参照して上記で説明されてきたが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、および変形を行うことができることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるそのようなすべての変更、修正および変形を包含することが意図されている。