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特許7506114マスクブランクスの製造方法及びマスクブランクス、フォトマスク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】マスクブランクスの製造方法及びマスクブランクス、フォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/26 20120101AFI20240618BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20240618BHJP
【FI】
G03F1/26
G03F1/54
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022106960
(22)【出願日】2022-07-01
(65)【公開番号】P2024006247
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】望月 聖
(72)【発明者】
【氏名】汐崎 英治
(72)【発明者】
【氏名】関根 正弘
(72)【発明者】
【氏名】東 小由里
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】森山 久美子
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197698(JP,A)
【文献】特開2018-010081(JP,A)
【文献】特開2020-095133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト能を有しクロムを含有するマスク層を有し、
前記マスク層が酸素および窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上とされる
ことを特徴とするマスクブランクス。
【請求項2】
前記マスク層が炭素および窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から10.0nmの深さにおいて炭素に対する窒素の組成比N/Cが、1.5以下とされる
ことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス。
【請求項3】
前記マスク層が窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する窒素の組成比N/Crが、0.15以下とされる
ことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス。
【請求項4】
前記マスク層が酸素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する酸素の組成比O/Crが、2.8以上とされる
ことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス。
【請求項5】
前記マスク層が炭素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する炭素の組成比C/Crが、1.0以上とされる
ことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス。
【請求項6】
前記マスク層が炭素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において酸素に対する炭素の組成比C/Oが、0.4以上とされる
ことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載されたマスクブランクスの製造方法であって、
前記透明基板上に前記マスク層を形成するマスク層形成工程を有し、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスおよび窒素含有ガスの流量を設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に制御して形成する
ことを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
【請求項8】
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御する酸素リッチ層形成工程を有する
ことを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項9】
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nを前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において増加して薄膜形成する酸素増加薄膜形成工程を有する
ことを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項10】
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御する酸素リッチ層形成工程と、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nを前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において増加して薄膜形成する酸素増加薄膜形成工程と、
を有する
ことを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項11】
前記酸素リッチ層形成工程において、酸素含有ガスの流量増加が、
前記マスク層形成工程における最終20%となる膜厚に対応しておこなわれる
ことを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項12】
前記酸素増加薄膜形成工程において、酸素含有ガスの流量増加が、
プラズマに接触する時間に施されるとともに、膜厚が増加しない程度の時間に対応することを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項13】
前記マスク層形成工程において、
前記酸素含有ガスが二酸化炭素である
ことを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項14】
前記マスク層形成工程において、
前記窒素含有ガスの流量を一定に設定するか、または、可変に設定する
ことを特徴とする請求項記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項15】
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板上にはクロムを主成分とした薄膜と、
透明基板から離間する側には請求項1乃至のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備える
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項16】
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする薄膜と、
エッチングストッパ膜と、
請求項1乃至のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項17】
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側からクロムとのエッチング選択性のある遷移金属を材料とする薄膜と、
請求項1乃至のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項18】
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする透過率調整膜と、
請求項1乃至のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた
ことを特徴とするフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクブランクスの製造方法及びマスクブランクス、フォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やフラットパネルディスプレイにおいて、パターンの微細化が行われてきている。そのために、フォトマスクにおいてもパターン微細化を行うために、遮光膜パターン形成したフォトマスクから、パターン縁において光干渉を用いて、単波長を用い、より微細なパターン形成可能な位相シフトマスクが使用されるに至っている。
さらなる微細化のために、特許文献1に示すように露光波長としてDUVの波長を用いるとともに、半透過型の位相シフトマスクが使用されてきている。
【0003】
位相シフトマスクは、位相シフト層、遮光層等からなるマスク層を積層されたマスクブランクスから、フォトレジスト等を用いたエッチングによるフォトリソ工程を経てマスクパターンを形成することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-104670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マスク層をパターニングした際に、マスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直ではなくなるといった問題は、完全には解決していない。
【0006】
さらに、マスク層をパターニングした際に、マスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることによって、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との位置のずれが生じてしまいサイドエッチングが制御できないという問題も、完全には、解決していない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.パターン形成した際に、断面形状を垂直にすることが可能なマスクブランクスを提供すること。
2.パターン形成した際に、サイドエッチングを小さくすることが可能なマスクブランクスを提供すること。
3.上記マスクブランクスを用いてマスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直に近づけることが可能なフォトマスクを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のマスクブランクスは、
位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト能を有しクロムを含有するマスク層を有し、
前記マスク層が酸素および窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上とされる
ことにより、上記課題を解決した。
(2)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が炭素および窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から10.0nmの深さにおいて炭素に対する窒素の組成比N/Cが、1.5以下とされる
ことができる。
(3)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する窒素の組成比N/Crが、0.15以下とされる
ことができる。
(4)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が酸素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する酸素の組成比O/Crが、2.8以上とされる
ことができる。
(5)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が炭素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する炭素の組成比C/Crが、1.0以上とされる
ことができる。
(6)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が炭素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において酸素に対する炭素の組成比C/Oが、0.4以上とされる
ことができる
14)本発明のマスクブランクスの製造方法は、
上記(1)から()のいずれかに記載されたマスクブランクスの製造方法であって、
前記透明基板上に前記マスク層を形成するマスク層形成工程を有し、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスおよび窒素含有ガスの流量を設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に制御して形成する
ことができる。
(15)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御する酸素リッチ層形成工程を有する
ことができる。
(16)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nを前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において増加して薄膜形成する酸素増加薄膜形成工程を有する
ことができる。
(17)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御する酸素リッチ層形成工程と、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nを前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において増加して薄膜形成する酸素増加薄膜形成工程と、
を有する
ことができる。
(18)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(15)において、
前記酸素リッチ層形成工程において、酸素含有ガスの流量増加が、前記マスク層形成工程における最終20%となる膜厚に対しておこなわれる
ことができる。
(19)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(16)において、
前記酸素増加薄膜形成工程において、酸素含有ガスの流量増加が、プラズマに接触される時間に施されるとともに、膜厚が増加しない程度の時間に対応する
ことができる。
(20)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
前記酸素含有ガスが二酸化炭素である
ことができる。
(21)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
前記窒素含有ガスの流量を一定に設定するか、または、可変に設定する
ことができる。
(22)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板上にはクロムを主成分とした薄膜と、
透明基板から離間する側には上記(1)から()のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備える
ことを特徴とする。
(23)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする薄膜と、
エッチングストッパ膜と、
上記(1)から()のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた
ことを特徴とする。
(24)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側からクロムとのエッチング選択性のある遷移金属を材料とする薄膜と、
上記(1)から()のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた
ことを特徴とする。
(25)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする透過率調整膜と、
上記(1)から()のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた
ことを特徴とする。
【0009】
(1)本発明のマスクブランクスは、
位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト能を有しクロムを含有するマスク層を有し、
前記マスク層が酸素および窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0010】
(2)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が炭素および窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から10.0nmの深さにおいて炭素に対する窒素の組成比N/Cが、1.5以下とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0011】
(3)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が窒素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する窒素の組成比N/Crが、0.15以下とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0012】
(4)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が酸素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する酸素の組成比O/Crが、2.8以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0013】
(5)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が炭素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面においてクロムに対する炭素の組成比C/Crが、1.0以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0014】
(6)本発明のマスクブランクスは、上記(1)において、
前記マスク層が炭素を含有するとともに、前記マスク層の前記透明基板から離間する側
の表面において酸素に対する炭素の組成比C/Oが、0.4以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0015】
(7)本発明のマスクブランクスは、
位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト能を有しクロムを含有するマスク層を有し、
前記マスク層が酸素および窒素を含有するとともに、窒素に対する酸素の組成比O/Nが、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から前記透明基板に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、1.7(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるO/N傾きが、後述するF8膜において、(25-8)/5nm=3.4(/nm)以上~(25-8)/10nm=1.7(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0016】
(8)本発明のマスクブランクスは、上記(7)において、
前記マスク層における前記組成比O/Nの傾き(厚さに対する減少率)が、5.7(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるO/N傾きが、後述するF7膜において、(82-25)/5nm=11.4(/nm)以上~(82-25)/10nm=5.7(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0017】
(9)本発明のマスクブランクスは、上記(7)において、
前記マスク層が酸素および炭素を含有するとともに、炭素に対する酸素の組成比O/Cが前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から前記透明基板に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、0.0435(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるC/O傾きが、後述するF8膜において、(0.61-0.17)/5nm=0.088(/nm)以上~(0.61-0.17)/10nm=0.044(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるC/O傾きが、後述するF7膜において、(0.48-0.45)/5nm=0.087(/nm)以上~(0.48-0.45)/10nm=0.0435(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0018】
(10)本発明のマスクブランクスは、上記(7)において、
前記マスク層が酸素および炭素を含有するとともに、炭素に対する酸素の組成比O/Cが、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から前記透明基板に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、2.1(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるO/C傾きが、後述するF7膜において、(23-2)/5nm=4.2(/nm)以上~(23-2)/10nm=2.1(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0019】
(11)本発明のマスクブランクスは、上記(7)において、
前記マスク層が炭素を含有するとともに、クロムに対する炭素の組成比C/Crが、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から前記透明基板に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、0.15(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるC/Cr傾きが、後述するF7膜において、(1.6-0.1)/5nm=0.3(/nm)以上~(1.6-0.1)/10nm=0.15(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるC/Cr傾きが、後述するF8膜において、(2-0.2)/5nm=0.36(/nm)以上~(2-0.2)/10nm=0.18(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0020】
(12)本発明のマスクブランクスは、上記(7)において、
前記マスク層が窒素を含有するとともに、クロムに対する窒素の組成比N/Crが、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から前記透明基板に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、0.002(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるN/Cr傾きが、後述するF7膜において、(0.06-0.04)/5nm=0.004(/nm)以上~(0.06-0.04)/10nm=0.002(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるN/Cr傾きが、後述するF8膜において、(0.22-0.14)/5nm=0.016(/nm)以上~(0.22-0.14)/10nm=0.008(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0021】
(13)本発明のマスクブランクスは、上記(7)において、
前記マスク層が酸素を含有するとともに、クロムに対する酸素の組成比O/Crが、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面から前記透明基板に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、0.17(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるO/Cr傾きが、後述するF8膜において、(3.3-1.5)/5nm=0.036(/nm)以上~(3.3-1.5)/10nm=0.18(/nm)以上とされる。
ここで、最表面から10nm以下の領域におけるO/Cr傾きが、後述するF7膜において、(3.4-1.7)/5nm=0.34(/nm)以上~(3.4-1.7)/10nm=0.17(/nm)以上とされる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0022】
(14)本発明のマスクブランクスの製造方法は、
上記(1)から(13)のいずれかに記載されたマスクブランクスの製造方法であって、
前記透明基板上に前記マスク層を形成するマスク層形成工程を有し、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスおよび窒素含有ガスの流量を設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に制御して形成する。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトフォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0023】
(15)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御する酸素リッチ層形成工程を有する。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0024】
(16)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nを前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において増加して薄膜形成する酸素増加薄膜形成工程を有する。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0025】
(17)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)において、
前記マスク層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御する酸素リッチ層形成工程と、
スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nを前記マスク層の前記透明基板から離間する側の表面において増加して薄膜形成する酸素増加薄膜形成工程と、
を有する。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0026】
(18)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(15)または(17)において、
前記酸素リッチ層形成工程において、酸素含有ガスの流量増加が、前記マスク層形成工程における最終20%となる膜厚に対応しておこなわれる。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0027】
(19)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(16)または(17)において、
前記酸素増加薄膜形成工程において、酸素含有ガスの流量増加が、
プラズマに接触する時間に施されるとともに、膜厚が増加しない程度の時間に対応する。
ここで、酸素含有ガスの流量増加が、酸素含有ガスの流量増加および、電力低減、搬送速度の増加を行った条件で放電させたプラズマ中を通過するとともに、ほぼ膜厚が増加しない程度である。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0028】
(20)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)から(19)のいずれかにおいて、
前記マスク層形成工程において、
前記酸素含有ガスが二酸化炭素である。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0029】
(21)本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記(14)から(20)のいずれかにおいて、
前記マスク層形成工程において、
前記窒素含有ガスの流量を一定に設定するか、または、可変に設定する。
これにより、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
また、マスクブランクスをフォトマスクとして形成するためにマスク層をパターニングした際に、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能なマスクブランクスを製造することができる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0030】
(22)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板上にはクロムを主成分とした薄膜と、
透明基板から離間する側には上記(1)から(13)のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備える。
これにより、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングする工程において、レジスト塗布前の熱処理温度よりもパターニング後の熱処理温度の方が高く、パターニングされたレジスト断面角度が熱処理後に低減させることにより、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0031】
(23)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする薄膜と、
エッチングストッパ膜)と、
上記(1)から(13)のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた。
これにより、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングする工程において、レジスト塗布前の熱処理温度よりもパターニング後の熱処理温度の方が高く、パターニングされたレジスト断面角度が熱処理後に低減させることにより、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0032】
(24)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側からクロムとのエッチング選択性のある遷移金属を材料とする薄膜と、
上記(1)から(13)のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた。
これにより、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングする工程において、レジスト塗布前の熱処理温度よりもパターニング後の熱処理温度の方が高く、パターニングされたレジスト断面角度が熱処理後に低減させることにより、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0033】
(25)本発明のフォトマスクは、
透明基板上に転写露光用パターンを備えた、フラットパネルディスプレイに供されるフォトマスクであって、
パターンの寸法Pが、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たす、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンを有し、
透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする透過率調整膜と、
上記(1)から(13)のいずれかに記載されたクロムを含有するマスク層と、
を備えた。
これにより、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングした際に、マスク層におけるエッチングレートを制御して、エッチングによって形成されるマスクパターンの断面形状、つまり、マスクパターンの露出した壁面(側面)が基板に対して垂直になるように制御することが可能となる。
また、フォトマスクを形成するためにマスクブランクスのマスク層をパターニングする工程において、レジスト塗布前の熱処理温度よりもパターニング後の熱処理温度の方が高く、パターニングされたレジスト断面角度が熱処理後に低減させることにより、フォトレジスト層との密着性を向上して、マスク層におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングを抑制して、エッチングによって形成されるマスク層におけるサイドエッチングが過分に生じることを防止し、フォトレジスト層の端部となる側面とマスクパターンの壁面(側面)との間で生じる位置のずれ、つまり、サイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、フォトマスクで、より一層の高精細化を図ることが可能となるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係るマスクブランクスの第1実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係るマスクブランクスの第1実施形態の他の例を示す断面図である。
図3】本発明に係るマスクブランクスの製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図4】本発明に係るマスクブランクスの製造方法の第1実施形態における成膜装置を示す模式図である。
図5】本発明に係るマスクブランクスの第1実施形態を示す説明断面図である。
図6】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図7】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図8】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図9】本発明に係るマスクブランクスの第1実施形態から製造したフォトマスクを示す説明断面図である。
図10】本発明に係るマスクブランクスの製造方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
図11】本発明に係るマスクブランクスの第2実施形態を示す説明断面図である。
図12】本発明に係るマスクブランクスの第2実施形態から製造したフォトマスクを示す説明断面図である。
図13】マスクブランクスから製造したフォトマスクを示す説明断面図である。
図14】マスクブランクスから製造したフォトマスクを示す説明断面図である。
図15】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図16】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図17】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図18】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図19】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図20】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図21】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図22】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図23】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図24】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図25】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図26】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図27】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図28】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図29】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図30】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図31】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図32】本発明に係るマスクブランクスの実験例を示すグラフである。
図33】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図34】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図35】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図36】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図37】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図38】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図39】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図40】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図41】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図42】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図43】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図44】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図45】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図46】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図47】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図48】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るマスクブランクスの製造方法及びマスクブランクス、フォトマスクの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。本実施形態は一例であり、特に本発明は以下の実施形態に限定されず、当業者にとって明白な改善およびその等価物をも包含するものである。
図1は、本実施形態におけるマスクブランクスを示す断面図であり、図において、符号10Aは、マスクブランクスである。
【0037】
本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、露光光の波長がDUV(deep ultra-violet;深紫外光)1nm~50nm~100nm~200nm~350nm程度の範囲で使用される位相シフトマスク(フォトマスク)に供されるものとされる。
本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、図1に示すように、ガラス基板(透明基板)11と、このガラス基板11上に形成されたマスク層12と、を有する。
マスク層12は、位相シフト能を有するものとされ、位相シフト層と、位相シフト層上に形成された遮光層と、で構成されることができる。
これら位相シフト層と遮光層とは、フォトマスクとして必要な光学特性を有した積層膜としてマスク層12を構成していることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、マスク層12が位相シフト層上に形成されたエッチングストップ層を有していてもよい。この場合に、エッチングストップ層は、位相シフト層よりもガラス基板11から離間する位置に設けられる。また、遮光層は、エッチングストップ層よりもガラス基板から離間する位置に設けられる。
【0039】
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、図1に示す位相シフト層とエッチングストップ層と遮光層との積層されたマスク層12に対して、図2に示すように、あらかじめフォトレジスト層(レジスト層)15が成膜された構成とすることもできる。
【0040】
なお、本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、マスク層12として、位相シフト層とエッチングストップ層と遮光層以外に、反射防止層、耐薬層、保護層、密着層、等を積層した構成とされてもよい。さらに、これらの積層膜の上に、図2に示すように、フォトレジスト層15が形成されていてもよい。
【0041】
ガラス基板(透明基板)11としては、透明性及び光学的等方性に優れた材料が用いられ、例えば、石英ガラス基板を用いることができる。ガラス基板11の大きさは特に制限されず、当該マスクを用いて露光する基板(例えばLCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPD用基板等)に応じて適宜選定される。
【0042】
本実施形態では、ガラス基板(透明基板)11として、一辺100mm程度から、一辺2000mm以上の矩形基板を適用可能であり、さらに、厚み1mm以下の基板、厚み数mmの基板や、厚み10mm以上の基板も用いることができる。
【0043】
また、ガラス基板11の表面を研磨することで、ガラス基板11のフラットネスを低減するようにしてもよい。ガラス基板11のフラットネスは、例えば、20μm以下とすることができる。これにより、マスクの焦点深度が深くなり、微細かつ高精度なパターン形成に大きく貢献することが可能となる。さらにフラットネスは10μm以下と、小さい方が良好である。
【0044】
マスク層12における位相シフト層としては、Cr(クロム)を主成分とするものであり、さらに、C(炭素)、O(酸素)およびN(窒素)を含むものとされる。
さらに、マスク層12における位相シフト層が厚み方向に異なる組成を有することもでき、この場合、マスク層12における位相シフト層として、Cr単体、並びにCrの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物および酸化炭化窒化物から選択される1つ、または、2種以上を積層して構成することもできる。
マスク層12における位相シフト層は、後述するように、所定の光学特性および抵抗率が得られるようにその厚み、および、Cr,N,C,O等の組成比(atm%)が設定される。
【0045】
マスク層12における位相シフト層の膜厚は、位相シフト層に要求される光学特性によって設定され、Cr,N,C,O等の組成比によって変化する。位相シフト層の膜厚は、50nm~150nmとすることができる。
【0046】
例えば、マスク層12における位相シフト層の組成比は、炭素含有率(炭素濃度)が2atm%~28atm%、酸素含有率(酸素濃度)が35atm%~60atm%、窒素含有率(窒素濃度)が1atm%~15atm%、クロム含有率(クロム濃度)が15atm%~38atm%であるように設定されることができる。
【0047】
これにより、マスク層12における位相シフト層は、上述したDUVである波長100nm~350nm程度の範囲において、波長340nmに対する透過率が8~10%、8.4~8.6程度、波長365nmに対する位相差が160deg~180deg程度を有した場合、膜厚90nm程度に設定されることができる。
なお、マスク層12における位相シフト層における組成比・膜厚は、製造する位相シフトマスク10に要求される光学特性によって設定されるものであり、上記の値に限定されるものではない。
【0048】
マスク層12における遮光層は、Cr(クロム)、O(酸素)を主成分とするものであり、さらに、C(炭素)およびN(窒素)を含むものとされる。
この場合、マスク層12における遮光層として、Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物および酸化炭化窒化物から選択される1つ、または、2種以上を積層して構成することもできる。さらに、マスク層12における遮光層が厚み方向に異なる組成を有することもできる。
マスク層12における遮光層は、後述するように、所定の密着性(疎水性)、所定の光学特性が得られるようにその厚み、および、Cr,N,C,O,Si等の組成比(atm%)が設定される。
【0049】
マスク層12における遮光層の膜厚は、遮光層に要求される条件、つまり、後述するフォトレジスト層15との密着性(疎水性)および光学特性等といった膜特性によって設定される。これらの遮光層における膜特性は、Cr,N,C,O等の組成比によって変化する。マスク層12における遮光層の膜厚は、特に、位相シフトマスク10として必要な光学特性によって設定することができる。
【0050】
マスク層12における遮光層の膜厚・組成を上記のように設定することにより、フォトリソグラフィ法におけるパターニング形成時に、たとえば、クロム系に用いられるフォトレジスト層15との密着性を向上して、フォトレジスト層15との界面でエッチング液の浸込みが発生しないため、良好なパターン形状が得られて、所望のパターンを形成することができる。
【0051】
なお、マスク層12における遮光層が上記の条件のように設定されていない場合、フォトレジスト層15との密着性が所定の状態とならずにフォトレジスト層15が剥離して、界面にエッチング液が侵入してしまい、パターン形成をおこなうことができなくなるため好ましくない。また、マスク層12における遮光層の膜厚が上記の条件のように設定されていない場合には、フォトマスクとしての光学特性を所望の条件に設定することが難しくなる、あるいは、マスクパターンの断面形状が所望の状態にならない可能性があるため、好ましくない。
【0052】
マスク層12における遮光層は、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を高くすることで親水性を低減して、疎水性を向上し、密着性をあげることが可能である。
同時に、マスク層12における遮光層は、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を高くすることで屈折率と消衰係数の値を低くする、あるいは、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を低くすることで屈折率と消衰係数の値を高くすることが可能である。
【0053】
本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法は、ガラス基板(透明基板)11にマスク層12としての位相シフト層、遮光層を成膜するものとされる。
【0054】
図3は、本実施形態におけるマスクブランクスの製造工程を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法における成膜装置を示す模式図である。
図5は、本実施形態におけるマスクブランクスを示す説明断面図である。
本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法は、図3に示すように、基板準備工程S0と、マスク層形成工程S1と、レジスト形成工程S2とを有する。
【0055】
図3に示す基板準備工程S0においては、例えば、所定の寸法を有する石英ガラス製のガラス基板(透明基板)11を準備する。
基板準備工程S0においては、透明性および光学的等方性に優れたガラス基板(透明基板)11に対して、研磨、HF洗浄等の表面処理をおこなうことができる。
【0056】
図3に示すマスク層形成工程S1においては、ガラス基板(透明基板)11にマスク層12を成膜する。
【0057】
マスク層形成工程S1においては、スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスおよび窒素含有ガスの流量を設定することにより、マスク層12におけるガラス基板(透明基板)11から離間する側の表面12Aにおいて窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に制御してマスク層12を形成する。
【0058】
さらに、マスク層形成工程S1においては、酸素リッチ層形成工程S12と、酸素増加薄膜形成工程S13と、を有する。
【0059】
図3に示す酸素リッチ層形成工程S12においては、スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、マスク層12におけるガラス基板(透明基板911から離間する側の表面12Aにおいて窒素に対する酸素の組成比O/Nを膜厚方向に増加して制御して、図5に示すように、酸素リッチ層12bを形成する。
【0060】
図3に示す酸素増加薄膜形成工程S13においては、スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nをマスク層12のガラス基板(透明基板)11から離間する側の表面12Aにおいて増加して、図5に示すように、酸素増加薄膜12cを形成する。
【0061】
酸素リッチ層形成工程S12は、マスク層形成工程S1の終盤においておこなわれる。酸素増加薄膜形成工程S13は、マスク層形成工程S1の終盤においておこなわれる。酸素増加薄膜形成工程S13は、マスク層形成工程S1において、酸素リッチ層形成工程S12よりも後におこなうことができる。
つまり、マスク層形成工程S1においては、図5に示すように、酸素増加薄膜12cが酸素リッチ層12bの後に成膜される。
【0062】
マスク層形成工程S1において、図5に示すように、酸素リッチ層12bよりもガラス基板(透明基板)11に近接する位置のマスク層12では、厚さ方向において、ガラス基板(透明基板)11から酸素リッチ層12bに向けて、エッチングレート(ETR)が低下するようにその組成が制御される。
【0063】
本実施形態におけるマスク層形成工程S1において、マスクブランクス10Aにおけるマスク層12は、図4に示す製造装置により製造される。
【0064】
図4に示す製造装置110は、プラズマ処理装置とされる。製造装置110は、例えば、インターバック式のDCスパッタリング装置とされる。製造装置110は、ロード室111、アンロード室116と、ロード室111に密閉機構117を介して接続されるとともに、アンロード室116に密閉機構118を介して接続された成膜室(真空処理室)112とを有するものとされる。
【0065】
ロード室111には、外部から搬入されたガラス基板11を成膜室112へと搬送する搬送機構111aと、この室内を粗真空引きするロータリーポンプ等の排気機構111fが設けられる。
【0066】
アンロード室116には、成膜室112から成膜の完了したガラス基板11を外部へと搬送する搬送機構116aと、この室内を粗真空引きするロータリーポンプ等の排気機構116fが設けられる。
【0067】
成膜室112には、基板保持機構112aと、2つの成膜処理に対応した機構として二段の成膜機構113,114が設けられている。
【0068】
基板保持機構112aは、搬送機構111aによって搬送されてきたガラス基板11を、成膜中にターゲット113b,114bと対向するようにガラス基板11を保持するとともに、ガラス基板11をロード室111からの搬入およびアンロード室116へ搬出可能とされている。
【0069】
成膜室112のロード室111に近接する位置には、2段の成膜機構113,114のうち一段目の成膜材料を供給する成膜機構113が設けられている。
成膜機構113は、ターゲット113bを有するカソード電極(バッキングプレート)113cと、バッキングプレート113cに負電位のスパッタ電圧を印加する電源113dと、を有する。電源113dは、直流電圧または高周波電圧を印加する。
【0070】
成膜機構113は、成膜室112内でカソード電極(バッキングプレート)113c付近に重点的にガスを導入するガス導入機構113eと、成膜室112内でカソード電極(バッキングプレート)113c付近を重点的に高真空引きするターボ分子ポンプ等の高真空排気機構113fと、を有する。
【0071】
さらに、成膜室112におけるアンロード室116に近接する位置には、二段の成膜機構113,114のうち二段目の成膜材料を供給する成膜機構114が設けられている。
成膜機構114は、ターゲット114bを有するカソード電極(バッキングプレート)114cと、バッキングプレート114cに負電位のスパッタ電圧を印加する電源114dと、を有する。電源114dは、直流電圧を印加する。
【0072】
成膜機構114は、成膜室112内でカソード電極(バッキングプレート)114c付近に重点的にガスを導入するガス導入機構114eと、成膜室112内でカソード電極(バッキングプレート)114c付近を重点的に高真空引きするターボ分子ポンプ等の高真空排気機構114fと、を有する。
【0073】
成膜室112には、カソード電極(バッキングプレート)113c,114cの付近において、それぞれガス導入機構113e,114eから供給されたガスが、隣接する成膜機構113,114に混入しないように、ガス流れを抑制するガス防壁112gが設けられる。このガス防壁112gは、基板保持機構112aがそれぞれ隣接する成膜機構113,114間を移動可能なように構成されている。
【0074】
成膜室112において、それぞれの2段の成膜機構113,114は、ガラス基板11に順に成膜するために必要な組成・条件を有するものとすることができる。
本実施形態において、成膜機構113はマスク層12の成膜に対応しており、成膜機構114はマスク層12の成膜に対応しており、例えば、成膜を迅速におこなう際に対応してもよい。
【0075】
あるいは、本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法においては、マスク層12としての位相シフト層と遮光層以外に、エッチングストップ層、保護層、遮光層、耐薬層、反射防止層、等を積層する場合には、これらの積層工程を有することができる。
この際、例えば、クロム以外を含む層を成膜する際に、異なる材質のターゲット114bを備えた成膜機構114を用いることができる。
クロム以外を含む層を成膜しない場合には、成膜機構114を用いないこと、あるいは、製造装置110として、成膜機構114を備えていない装置を用いることできる。
【0076】
具体的には、成膜機構113においては、ターゲット113bが、ガラス基板11にマスク層12を成膜するために必要な組成として、クロムを含有する材料からなるものとされる。あるいは、ターゲット113bが、クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等を含有する材料からなるものとされることもできる。
【0077】
同時に、成膜機構113においては、ガス導入機構113eから供給されるガスとして、マスク層12の成膜に対応して、プロセスガスが窒素、酸素、炭素などを含有し、アルゴン、窒素ガス等のスパッタガスとともに、所定のガス分圧として条件設定される。
ここで、マスク層12の成膜における雰囲気ガスは、二酸化炭素、窒素、アルゴンが適応できる。
【0078】
また、成膜条件にあわせて高真空排気機構113fからの排気がおこなわれる。
また、成膜機構113においては、電源113dからバッキングプレート113cに印加されるスパッタ電圧が、マスク層12における位相シフト層の成膜に対応して設定される。
【0079】
同様に、成膜機構114においては、ターゲット114bが、成膜機構113のターゲット113bと同等の材質・組成とされて、マスク層12の膜厚を増加させるために必要な組成として、クロムを含有する材料からなるものとされることができる。
【0080】
同時に、成膜機構114においては、ガス導入機構114eから供給されるガスとして、マスク層12の成膜に対応して、プロセスガスが窒素、酸素、炭素などを含有し、アルゴン、窒素ガス等のスパッタガスとともに、所定のガス分圧として設定される。
ここで、マスク層12の成膜における雰囲気ガスは、二酸化炭素、窒素、アルゴンが適応できる。
【0081】
また、成膜条件にあわせて高真空排気機構114fからの排気がおこなわれる。
また、成膜機構114においては、電源114dからバッキングプレート114cに印加されるスパッタ電圧が、マスク層12の成膜、たとえば遮光層に対応して設定される。
【0082】
図4に示す製造装置110においては、ロード室111から搬送機構111aによって搬入したガラス基板11に対して、成膜室(真空処理室)112において基板保持機構112aによって搬送しながらスパッタリング成膜をおこなった後、アンロード室116から成膜の終了したガラス基板11を搬送機構116aによって外部に搬出する。
【0083】
マスク層形成工程においては、成膜機構113において、ガス導入機構113eから成膜室112のバッキングプレート113c付近に供給ガスとしてスパッタガスと反応ガスとを供給する。この状態で、電源113dからバッキングプレート(カソード電極)113cにスパッタ電圧を印加する。また、マグネトロン磁気回路によりターゲット113b上に所定の磁場を形成してもよい。
【0084】
成膜室112内のバッキングプレート113c付近でプラズマにより励起されたスパッタガスのイオンが、カソード電極113cのターゲット113bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、飛び出した粒子と反応ガスとが結合した後、ガラス基板11に付着することにより、図5に示すように、ガラス基板11の表面に所定の組成でマスク層12が形成される。
【0085】
同様に、成膜室112内のバッキングプレート114c付近でプラズマにより励起されたスパッタガスのイオンが、カソード電極114cのターゲット114bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、飛び出した粒子と反応ガスとが結合した後、ガラス基板11に付着することにより、図5に示すように、ガラス基板11の表面に所定の組成でマスク層12が形成される。
【0086】
この際、マスク層12の成膜では、ガス導入機構114eから所定の分圧となる窒素、酸素、炭素含有ガス等の反応性ガスを供給してその分圧を制御するように切り替えて、その組成を設定した範囲内にする。
【0087】
ここで、反応ガスとしては、窒素ガス(Nガス)、酸素ガス(Oガス)、窒素酸化物ガス(NOガス、NOガス、NOガス)などを用いることができる。スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどを用いることもできる。
【0088】
また、酸素含有ガスとしては、CO(二酸化炭素)、O(酸素)、NO(一酸化二窒素)、NO(一酸化窒素)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。
また、炭素含有ガスとしては、CO(二酸化炭素)、CH4(メタン)、C(エタン)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。
【0089】
さらに、このマスク層12の成膜に加え、他の膜を積層する場合には、対応するターゲット、ガス等のスパッタ条件としてスパッタリングにより成膜するか、他の成膜方法によって該当膜を積層して、フォトレジスト層15のないマスクブランクス10Aとする。
【0090】
マスクブランクス10Aは、図5に示すように、酸素リッチ層12bよりもガラス基板(透明基板)11に近接する位置のマスク層12が、厚さ方向において、ガラス基板(透明基板)11から酸素リッチ層12bに向けて、エッチングレート(ETR)が低下するとともに、酸素リッチ層12bよりもガラス基板(透明基板)11から離間する側の表面12Aに酸素増加薄膜12cが形成されている。
【0091】
図3に示すレジスト形成工程S3においては、マスクブランクス10Aにおけるマスク層12の表面12Aに、フォトレジスト層15を形成する。フォトレジスト層15は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。フォトレジスト層15としては、いわゆるクロム系材料へのエッチングに対応可能なものとされる。フォトレジスト層15としては、液状レジストが用いられる。レジスト液は、化学増幅型のレジストとされてもよい。
【0092】
レジスト形成工程S3では、マスクブランクス10Aの最表面にフォトレジスト層15を塗布形成した後、ベーク処理等を施してレジスト形成工程S3を終了し、図5に示すように、マスクブランクス10Aが製造される。
【0093】
以下、本実施形態のマスクブランクス10Aから位相シフトマスク(フォトマスク)10を製造する製造方法について説明する。
【0094】
図6は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクの製造方法における製造工程を示す断面工程図である。図7は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクの製造方法における製造工程を示す断面工程図である。図8は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクを示す断面図である。
本実施形態における位相シフトマスク(フォトマスク)10は、図8に示すように、積層されたマスク層12を有するマスクブランクス10Aから、露光パターンを形成したものとされる。
【0095】
まず、レジストパターン形成工程として、図6に示すように、フォトレジスト層15を描画及び現像することで、マスク層12の表面12Aの上層にレジストパターン15Pが形成される。レジストパターン15Pは、マスク層12のエッチングマスクとして機能する。
【0096】
次いで、マスクパターン形成工程として、パターン形成されたレジストパターン15P越しに、マスク層12をウエットエッチングして、図7に示すように、開口パターン10Lを有するマスクパターン12Pを形成する。
このとき、エッチング液としては、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
【0097】
最後に、レジスト除去工程として、マスクブランクス10Aの表面に残ったレジストパターン15Pを除去してレジスト除去工程を終了し、図8に示すように、開口パターン10Lを有するマスクパターン12Pの形成されたフォトマスク10が製造される。
【0098】
フォトマスク10が有する開口パターン10Lの線幅Pは、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たしており、形成されるパターンとしては、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンが含まれる。また、ホールパターンが含まれる場合には、ホールパターン周囲に形成されるパターン幅が露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μmを満たしており、フォトマスク10を用いてフォトレジストを露光する投影(プロジェクション)露光装置の解像限界は、経験則として以下の(式1)を用いることができる。
λ/(2NA) (式1)
ここでλは投影露光装置の波長(代表波長)であり、NAは投影露光装置の開口数である。
具体的には、例えば、露光装置の解像限界以下のパターン幅は、2.5μm以下であり、好ましくは、2.0μm以下である。
【0099】
<トップ型位相シフトマスクの製造方法>
次に、本実施形態のマスクブランクス10Aのマスク層12とクロムを主成分とする薄膜16を積層した構成を有するトップ型の位相シフトマスクの製造方法について図33図36に基づいて説明する。
ここでトップ型とは、位相シフト膜がクロムを主成分とする薄膜16の上層に形成された構成を示している。
【0100】
図33図36は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクの製造方法における製造工程を示す断面工程図である。
まず、図33に示すように、透明基板11上にクロムを主成分とする薄膜16を形成する。
【0101】
クロムを主成分とする薄膜16の形成には、例えば、膜厚が15nmのクロムを主成分とした金属膜を、蒸着法、スパッタ法、CVD法等により形成することが可能である。薄膜16は、半透過膜とした場合の光透過率が1~60%、典型的には1~30%に設定することが可能である。薄膜16の露光光に対する位相シフト角は、例えば、0.4~15°であるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、半透過膜としての薄膜16は、後述する位相シフト膜との積層部における積層透過率を調整する透過率調整膜として使用することが可能である。
【0102】
次に、第1のフォトレジストを所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、第1のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)17Pを形成し、それをマスクとしてクロムを主成分とする薄膜16をエッチングする。
エッチングでは、ウエットエッチング法又はドライエッチング法により行うことが可能であり、図34に示すように、透明基板11を露出させてパターン16Pを形成した後に、第1のフォトレジストパターン17Pを除去する。
【0103】
次に、クロムを主成分とする薄膜16のパターン16Pを覆うように露光光に対して位相シフト能を有しクロムを含有すると共に、酸素と窒素を含有し、透明基板11から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上となるマスク層120を形成し、その上層に第2のフォトレジストを形成する。マスク層120は、上述したマスク層12に対応する。
【0104】
第2のフォトレジストを所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、図35に示すように、第2のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)18Pを形成し、それをマスクとして、マスク層120及びクロムを主成分とする薄膜16のパターン16Pをエッチングし、透明基板11を露出させた透明領域M1、透明基板11に位相シフト膜のパターン120Pが形成された位相シフト領域M2、並びにクロムを主成分とする薄膜16のパターン16P及びマスク層120のパターン120Pからなる積層パターンが形成された積層領域M3を形成する(図36)。
【0105】
その後、第2のフォトレジストパターン18Pを除去することで、図36に示すように、トップ型の位相シフトマスク10が形成される。
なお、クロムを主成分とする薄膜16とは、例えば、(クロム酸化物、クロム窒化物、クロム酸窒化物など)であり、クロムを主成分とする薄膜16及びマスク層120の積層領域M3における光学濃度OD値は、2.7以上となることが好ましい。
【0106】
また、所望のパターン設計に基づくパターンは、例えば、ライン・アンド・スペース形状パターン、および/または、ホールパターンなどのパターンであり、
露光装置の解像限界以下≦P≦5.0μm
を満たすパターンであるが、これに限定するものではない。
【0107】
<ES膜付位相シフトマスクの製造方法>
次に、本実施形態の位相シフト膜と透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする薄膜と、その中間にエッチングストッパ膜を形成した構成を有する、ES膜付位相シフトマスクの製造方法について図37図40に基づいて説明するが、共通する部分については省略することもある。
ここでES膜付とは、透明基板から離間する側から遷移金属を材料とする薄膜と位相シフト膜に対して材質が異なり、エッチング特性が異なる膜を中間に形成した構成を示している。
【0108】
図37図40は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクの製造方法における製造工程を示す断面工程図である。
まず、透明基板11上に露光光に対して位相シフト能を有しクロムを含有すると共に、酸素と窒素を含有し、透明基板11から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上となるマスク層120を成膜する。
その上層に、マスク層120とエッチング特性の異なるエッチングストッパ膜122と、更に遷移金属からなる薄膜20を成膜することにより、図37に示すように、ES膜付位相シフトマスクブランクス10Aを形成する。
【0109】
次に、第1のフォトレジスト膜を形成し、所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、第1のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)19Pを形成し、それをマスクとして遷移金属からなる薄膜20をエッチングしパターン20Pを形成する。
そして、遷移金属からなる薄膜20と位相シフト膜(マスク層)120とにエッチング選択性のあるエッチャントを使用して、第1のフォトレジストパターン19Pをマスクにエッチングストッパ膜122をエッチングしエッチングストッパパターン(パターン)122Pを形成する。
次に、エッチングストッパパターン122Pをマスクとして、遷移金属からなる薄膜20とマスク層120にエッチング選択性のあるエッチャントによりエッチングを行い、図38に示すように、パターン120Pを形成する。
その後、第1のフォトレジストパターン19Pを除去する。
【0110】
次に、第2のフォトレジスト膜を形成し、所望のパターン設計に基づきを描画及び現像することで、図39に示すように、第2のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)21Pを形成する。さらに、第2のフォトレジストパターン21Pをマスクとして遷移金属からなる薄膜20、エッチングストッパ膜122、および、マスク層120をエッチングする。
【0111】
これにより、図40に示すように、透明基板11を露出させた透明領域M1、透明基板11に位相シフト膜のパターン120P1が形成された位相シフト領域M2、並びに遷移金属からなる薄膜20のパターン20P1、エッチングストッパ膜122のパターン122P1、および、マスク層120の積層パターンが形成された積層領域M3が形成される。
その後、第2のフォトレジストパターン21Pを除去することで、図40に示すように、位相シフトマスク10が形成される。
積層領域M3における光学濃度OD値は、2.7以上となることが好ましい。
【0112】
なお、遷移金属からなる薄膜20は、例えば、(Ti、Ni、Mo、Zr、Ta、Wなど)であり、エッチングストッパ膜122は、例えば、膜厚が4~30nmとするTi(チタン)系膜(Ti、Ti酸化膜、Ti酸窒化膜、若しくはこれらの積層膜)、Ni(ニッケル)系膜(Ni、Ni酸化膜、Ni酸窒化膜、若しくはこれらの積層膜)、MoSi(モリブデンシリサイド)膜等を使用することが可能である。
【0113】
また、位相シフト膜120に対して選択的にエッチングストッパ膜122をエッチングする場合、好適には高い選択比を有するウエットエッチングが使用できる。エッチング液は、位相シフト膜120に対して選択性を有し(エッチング耐性があり)、エッチングストッパ膜の材質に合わせて、エッチングストッパ膜122をエッチングできる薬液を選択すればよい。
例えばエッチングストッパ膜122にTi系膜を使用する場合、水酸化カリウム(KOH)と過酸化水素水の混合液を好適に使用することできるが、これに限るものではない。
また、他の薄膜のエッチングに使用するエッチング液についても、既知のエッチング液を使用することが可能であり、特に限定するものではない。
【0114】
また、上記のES膜付位相シフトマスクの製造方法において、位相シフト膜120と、エッチングストッパ膜122と、遷移金属からなる薄膜20について各々に対してエッチング特性の異なる材料により構成したが、位相シフト膜の金属材料系と同種系の金属材料系を使用し、その中間にエッチング特性の異なるエッチングストッパ膜を形成してもよく、これに限定するものではない。
【0115】
<選択E型位相シフトマスクの製造方法>
次に、本実施形態の位相シフト膜と透明基板から離間する側に遷移金属を材料とする薄膜を形成した構成を有する、選択エッチング型位相シフトマスクの製造方法について図41図44に基づいて説明するが、共通する部分については省略することもある。
ここで選択エッチング型とは、遷移金属を材料とする薄膜と、位相シフト膜が各々の材質に対して、エッチング特性が異なる膜で形成した構成を示している。
【0116】
図41図44は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクの製造方法における製造工程を示す断面工程図である。
まず、透明基板11上に露光光に対して位相シフト能を有しクロムを含有すると共に、酸素と窒素を含有し、透明基板11から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上となるマスク層120を成膜する。
その上層に、マスク層120とエッチング特性の異なる遷移金属からなる薄膜23を成膜することにより、図41に示すように、選択エッチング型位相シフトマスクブランクス10Aを形成する。
【0117】
次に、第1のフォトレジスト膜を形成し、所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、第1のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)22Pを形成し、それをマスクとして遷移金属からなる薄膜23をエッチングする。
このとき、遷移金属からなる薄膜23をエッチング可能でマスク層120対しエッチング選択性のあるエッチャントを使用して、第1のフォトレジストパターン22Pをマスクに遷移金属からなる薄膜23をエッチングしてパターン23Pを形成する。
次に、遷移金属からなる薄膜23をマスクとして、マスク層120をエッチング可能で遷移金属からなる薄膜23に対しエッチング選択性のあるエッチャントでエッチングを行って、図42に示すように、パターン120Pを形成する。
その後、第1のフォトレジスト膜を除去する。
【0118】
次に、第2のフォトレジスト膜を形成し、所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、図43に示すように、第2のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)24Pを形成する。第2のフォトレジストパターン24Pをマスクとして遷移金属からなる薄膜23、マスク層120をエッチングする。これにより、図44に示すように、透明基板11を露出させた透明領域M1、透明基板11にマスク層120のパターン120Pが形成された位相シフト領域M2、並びに遷移金属からなる薄膜23のパターン23P1、および、マスク層12の積層パターンが形成された積層領域M3が形成される。
その後、第2のフォトレジストパターン24Pを除去することで、図44に示すように、位相シフトマスク10が形成される。
積層領域M3における光学濃度OD値は、2.7以上となることが好ましい。
【0119】
なお、遷移金属からなる薄膜23は、例えば、(Ti、Ni、Mo、Zr、Ta、Wなど)膜等を使用することが可能である。
【0120】
<PS+HT型の製造方法>
次に、本実施形態のマスク層と透明基板から離間する側に遷移金属を材料とする透過率調整膜(以下HT膜、半透過膜ともいう)を形成した構成を有する、PS+HT型位相シフトマスクの製造方法について図45図48に基づいて説明するが、共通する部分については省略することもある。
ここでPS+HT型とは、HT膜(ハーフトーン膜;透過率調整膜)がマスク層の上層に形成された構成を示している。
【0121】
図45図48は、本実施形態におけるマスクブランクスを用いたフォトマスクの製造方法における製造工程を示す断面工程図である。
まず、透明基板11上に露光光に対して位相シフト能を有しクロムを含有すると共に、酸素と窒素を含有し、透明基板11から離間する側の表面において窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上となるマスク層120を成膜することにより、図45に示すように、マスクブランクス10Aを形成する。
【0122】
次に、第1のフォトレジストを所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、第1のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)25Pを形成し、それをマスクとしてクロムを主成分とするマスク層120をエッチングして、図46に示すように、パターン120Pを形成する。
エッチングでは、ウエットエッチング法又はドライエッチング法により行うことが可能であり、透明基板11を露出させ、パターンを形成した後に、第1のフォトレジストパターン25Pを除去する。
【0123】
次に、マスク層120のパターン120Pを覆うように、遷移金属からなるHT膜125を形成する。
【0124】
次に、第2のフォトレジスト膜を形成し、所望のパターン設計に基づき描画及び現像することで、第2のフォトレジストパターン(フォトレジストパターン)26Pを形成し、それをマスクとしてマスク層120、HT膜125をエッチングする。これにより、図47に示すように、透明基板11を露出させた透明領域M1、透明基板11にHT膜125のパターン125Pが形成されたHT領域M4、並びにマスク層120のパターン120P1およびHT膜125のパターン125Pの積層パターンが形成された積層領域M3が形成される。
その後、第2のフォトレジストパターン26Pを除去することで、図48に示すように、フォトマスク10が形成される。
積層領域M3における光学濃度OD値は、2.7以上となることが好ましい。
【0125】
なお、HT膜125は、例えばTi、Ni、Mo、Zr、Ta、Wなどの公知の半透過膜を使用することが可能である。
【0126】
本実施形態におけるマスク層12の製造条件、膜特性について検証した。
【0127】
まず、クロムからなるターゲット113bを用いて、ガラス基板11にマスク層12を形成した。この際、成膜時の雰囲気ガスとして、アルゴン、二酸化炭素、窒素の流量を変化させて、ガラス基板(透明基板)11から膜厚が増加するにつれてエッチングレート(ETR)を低下させるとともに、その表面に酸素リッチ層12bを積層し、さらに、酸素増加薄膜12cが形成されているマスク層12を成膜した。
【0128】
マスクパターン12Pの製造プロセスにおいては、通常、酸やアルカリ等の薬液が用いられるが、形成後のパターン形状の正確性における変化抑制が必要である。
本発明者らは、膜厚方向におけるマスク層12中のクロム、酸素、炭素、窒素の組成比を所定の状態とすることで、パターン形成プロセス中におけるフォトレジスト層15との密着性や、膜厚方向におけるエッチングレートの最適化による形状設定の向上を可能とすることができることを見出した。
【0129】
図15は、本実施形態におけるマスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果を示すグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図15に示すように、グラフ左端となる表面12Aからガラス基板11に近接する右端に向けて、深さが増すにつれ、窒素の比率は増加している。同様に、深さ方向に酸素の比率が低下している。
【0130】
ここで、横軸はスパッタ時間であり、1300オングストローム程度で酸素濃度が増加し始めた部分から右側がガラス基板11である。
マスク層12は、表面12Aに近接する部分において、酸素の比率が高くなっており、特に、表面12Aに近接する膜厚280オングストロームよりも左側の部分が山形になっている。これが、酸素リッチ層12bと酸素増加薄膜12cとに対応する。なお、本実施形態におけるマスク層は、F7,あるいは、F7膜、として示している。
【0131】
図19は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、窒素に対する酸素の組成比O/Nを示すグラフである。また、図20は、図19の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図19図20に(F7)として示すように、表面12Aにおいて、窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上とされる。
同時に、マスク層12は、窒素に対する酸素の組成比O/Nが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(25-8)/50=0.34(/オングストローム)以上、または、(25-8)/100=0.17(/オングストローム)以上とされる。
【0132】
このような組成比O/Nを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0133】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0134】
図21は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、炭素に対する窒素の組成比N/Cを示すグラフである。また、図22は、図21の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図21図22に(F7)として示すように、表面12Aからガラス基板11に向かう100オングストロームの深さにおいて炭素に対する窒素の組成比N/Cが、1.5以下とされる。
また、本実施形態におけるマスク層12は、図21図22に(F7)として示すように、炭素に対する窒素の組成比N/Cが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、0.00965(/オングストローム)以下、または、0.0089(/オングストローム)以下とされる。
【0135】
このような組成比N/Cを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0136】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0137】
図23は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、クロムに対する窒素の組成比N/Crを示すグラフである。また、図24は、図23の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図23図24に(F7)として示すように、マスク層12の表面12Aにおいてクロムに対する窒素の組成比N/Crが、0.15以下とされる。
マスク層12は、クロムに対する窒素の組成比N/Crが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、(0.06-0.04)/50=0.0004(/オングストローム)以上、または、(0.06-0.04)/100=0.0002(/オングストローム)以上とされる。
【0138】
このような組成比N/Crを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0139】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0140】
図25は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、クロムに対する酸素の組成比O/Crを示すグラフである。また、図26は、図25の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図25図26に(F7)として示すように、マスク層12の表面12Aにおいてクロムに対する酸素の組成比O/Crが、2.8以上とされる。
マスク層12は、クロムに対する酸素の組成比O/Crが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(3.4-1.7)/50=0.034(/オングストローム)以上、または、(3.4-1.7)/100=0.017(/オングストローム)以上とされる。
【0141】
このような組成比O/Crを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0142】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0143】
図27は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、クロムに対する炭素の組成比C/Crを示すグラフである。また、図28は、図27の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図27図28に(F7)として示すように、表面12Aにおいてクロムに対する炭素の組成比C/Crが、1.0以上とされる。
マスク層12は、クロムに対する炭素の組成比C/Crが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aから前記透明基板に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(1.6-0.1)/50=0.03(/オングストローム)以上、または、(1.6-0.1)/100=0.015(/オングストローム)以上とされる。
【0144】
このような組成比C/Crを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0145】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0146】
図29は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、酸素に対する炭素の組成比C/Oを示すグラフである。また、図30は、図29の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図29図30に(F7)として示すように、表面12Aにおいて酸素に対する炭素の組成比C/Oが、0.4以上とされる。
マスク層12は、酸素に対する炭素の組成比C/Oが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(0.48-0.045)/50=0.0087(/オングストローム)以上、または、(0.48-0.045)/100=0.00435(/オングストローム)以上とされる。
【0147】
このような組成比C/Oを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0148】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0149】
図31は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、酸素に対する炭素の組成比C/Oを示すグラフである。また、図32は、図31の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図31図32に(F7)として示すように、表面12Aにおいて炭素に対する酸素の組成比O/Cが、0.25以下とされる。
マスク層12は、炭素に対する酸素の組成比O/Cが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、(23-2)/50=0.42(/オングストローム)以上、または、(23-2)/100=0.21(/オングストローム)以上とされる。
【0150】
このような組成比O/Cを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0151】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0152】
本実施形態のマスクブランクス10Aのマスク層12におけるそれぞれの組成比は、図15図19図32に示すような表面12Aおよび表面12Aから所定の深さまでのプラファイルを有するように形成されることができる。
【0153】
図9は、本実施形態におけるマスクブランクスからフォトマスクを製造するために、パターン形成した状態を説明するための模式断面図である。
本実施形態のマスクブランクス10Aでは、マスクパターン形成工程としてマスク層12をウエットエッチングした際に、図9に示すように、マスク層12における膜厚方向のエッチングレートをその位置に対応して制御し、エッチングによって形成されるマスクパターン12Pの断面形状、つまり、マスクパターン12Pの露出した壁面(側面)12P1がガラス基板11に対して垂直になるように制御することを可能とすることができる。
【0154】
本実施形態のマスクブランクス10Aでは、マスクパターン形成工程としてマスク層12をウエットエッチングした際に、図9に示すように、マスク層12の表面12Aにおけるフォトレジスト層15との密着性を向上して、マスク層12の表面12A付近におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングSEを抑制して、パターン形成時のエッチングによって形成されるマスク層12の表面12A付近におけるサイドエッチングSEが過分に生じることを防止し、レジストパターン15Pの端部15P1とマスクパターンの壁面(側面)12P1との間で生じる位置のずれ、つまり、図9において符号SEで示すサイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【0155】
特に、マスクパターン形成工程における処理条件が公知の条件であった場合であっても、サイドエッチングSEを抑制し、マスクパターン12Pの露出した壁面(側面)12P1をガラス基板11に対して垂直になるように制御することができる。特に、サイドエッチングSEが小さいことが高精細のマスクを製造する際には重要である。
【0156】
以下、本発明に係るマスクブランクスの製造方法及びマスクブランクス、フォトマスクの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図10は、本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法を示すフローチャートである。
図11は、本実施形態におけるマスクブランクスを示す説明断面図である。
本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、酸素リッチ層形成に関する点である。
【0157】
本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、図1に示した第1実施形態と同様に、ガラス基板(透明基板)11と、このガラス基板11上に形成されたマスク層12と、を有する。
本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、露光光の波長がDUV(deep ultra-violet;深紫外光)340nm程度で使用される位相シフトマスク(フォトマスク)に供されるものとされる。
マスク層12は、位相シフト能を有するものとされ、位相シフト層と、位相シフト層上に形成された遮光層と、で構成されることができる。
これら位相シフト層と遮光層とは、いずれもクロムを含有するものとされ、フォトマスクとして必要な光学特性を有した積層膜としてマスク層12を構成していることができる。具体的には、位相シフト層と遮光層とは、異なる組成比を有することができる。
【0158】
本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、図2に示した第1実施形態と同様に、ガラス基板11に積層されたマスク層12に対して、あらかじめフォトレジスト層15が成膜された構成とすることもできる。
【0159】
なお、本実施形態に係るマスクブランクス10Aは、マスク層12である位相シフト層、遮光層に加えて、エッチングストップ層、反射防止層、耐薬層、保護層、密着層、等を積層した構成とされてもよい。この場合、これらの積層膜の上に、フォトレジスト層15が形成されていてもよい。
【0160】
ガラス基板(透明基板)11としては、透明性及び光学的等方性に優れた材料が用いられ、例えば、石英ガラス基板を用いることができる。ガラス基板11の大きさは特に制限されず、当該マスクを用いて露光する基板(例えばLCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPD用基板等)に応じて適宜選定される。
【0161】
本実施形態では、ガラス基板(透明基板)11として、一辺100mm程度から、一辺2000mm以上の矩形基板を適用可能であり、さらに、厚み1mm以下の基板、厚み数mmの基板や、厚み10mm以上の基板も用いることができる。
【0162】
また、ガラス基板11の表面を研磨することで、ガラス基板11のフラットネスを低減するようにしてもよい。ガラス基板11のフラットネスは、例えば、20μm以下とすることができる。これにより、マスクの焦点深度が深くなり、微細かつ高精度なパターン形成に大きく貢献することが可能となる。さらにフラットネスは10μm以下と、小さい方が良好である。
【0163】
マスク層12としては、位相シフト能を有しCr(クロム)を主成分とするものであり、さらに、C(炭素)、O(酸素)およびN(窒素)を含むものとされる。
さらに、マスク層12が厚み方向に異なる組成、あるいは、厚み方向に傾斜する組成等を有することもでき、この場合、マスク層12として、Cr単体、並びにCrの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物および酸化炭化窒化物から選択される1つ、または、2種以上を積層して構成することもできる。
【0164】
マスク層12は、後述するように、所定の光学特性および抵抗率が得られるようにその厚み、および、Cr,N,C,O等の組成比(atm%)が設定される。
マスク層12の膜厚は、位相シフト能を発揮する層に要求される光学特性によって設定され、Cr,N,C,O等の組成比によって変化する。マスク層12における位相シフト層の膜厚は、50nm~150nmとすることができる。
【0165】
例えば、マスク層12の組成比は、炭素含有率(炭素濃度)が2atm%~28atm%、酸素含有率(酸素濃度)が34atm%~52atm%、窒素含有率(窒素濃度)が2atm%~14atm%、クロム含有率(クロム濃度)が18atm%~39atm%であるように設定されることができる。
【0166】
これにより、マスク層12における位相シフト層は、上述したDUVである波長100nm~350nm程度の範囲において、波長340nmに対する透過率が7%~10%、8.2%~8.5%程度、波長365nmに対する位相差が160deg~180deg程度を有した場合、膜厚90nm程度に設定されることができる。
なお、マスク層12における組成比・膜厚は、製造する位相シフトマスク10に要求される光学特性によって設定されるものであり、上記の値に限定されるものではない。
マスク層12は、後述するように、表面12Aにおける所定の密着性(疎水性)、所定の光学特性が得られるようにその厚み、および、Cr,N,C,O等の組成比(atm%)が設定される。
【0167】
マスク層12における膜厚・組成を上記のように設定することにより、フォトリソグラフィ法におけるパターニング形成時に、たとえば、クロム系材料に対応して用いられるフォトレジスト層15との密着性を向上して、フォトレジスト層15との界面でエッチング液の浸込みが発生しないため、良好なパターン形状が得られて、所望のパターンを形成することができる。
【0168】
なお、マスク層12の表面12A付近が上記の条件のように設定されていない場合、フォトレジスト層15との密着性が所定の状態とならずにフォトレジスト層15が剥離して、界面にエッチング液が侵入してしまい、パターン形成をおこなうことができなくなるため好ましくない。また、マスク層12の膜厚が上記の条件のように設定されていない場合には、フォトマスクとしての光学特性を所望の条件に設定することが難しくなる、あるいは、マスクパターンの断面形状が所望の状態にならない等の可能性があるため、好ましくない。
【0169】
マスク層12は、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を高くすることで親水性を低減して、疎水性を向上し、密着性をあげることが可能である。
同時に、マスク層12は、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を高くすることで透過率の値を高くする、あるいは、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を低くすることで屈折率と消衰係数の値を高くすることが可能である。
【0170】
本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法は、ガラス基板(透明基板)11にマスク層12を成膜するものとされる。
本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法は、図10に示すように、基板準備工程S0と、マスク層形成工程S1と、レジスト形成工程S2とを有する。
【0171】
図10に示す基板準備工程S0においては、例えば、所定の寸法を有する石英ガラス製のガラス基板(透明基板)11を準備する。
基板準備工程S0においては、透明性および光学的等方性に優れたガラス基板(透明基板)11に対して、研磨、HF洗浄等の表面処理をおこなうことができる。
【0172】
図10に示すマスク層形成工程S1においては、ガラス基板(透明基板)11にマスク層12を成膜する。
【0173】
マスク層形成工程S1においては、スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスおよび窒素含有ガスの流量を設定することにより、マスク層12におけるガラス基板(透明基板)11から離間する側の表面12Aにおいて窒素に対する酸素の組成比O/N等を膜厚方向に制御してマスク層12を形成する。
【0174】
図10に示す酸素増加薄膜形成工程S13においては、スパッタリングにおける供給ガスとして、酸素含有ガスの流量または分圧を増加するように設定することにより、窒素に対する酸素の組成比O/Nをマスク層12のガラス基板(透明基板)11から離間する側の表面12Aにおいてさらに増加して、図11に示すように、酸素増加薄膜12cを形成する。
酸素増加薄膜形成工程S13は、マスク層形成工程S1の終盤においておこなわれる。
【0175】
マスク層形成工程S1において、図11に示すように、酸素増加薄膜12cよりもガラス基板(透明基板)11に近接する位置のマスク層12では、厚さ方向において、ガラス基板(透明基板)11から酸素増加薄膜12cに向けて、エッチングレート(ETR)が低下するようにその組成が制御される。
【0176】
本実施形態におけるマスク層形成工程S1において、マスクブランクス10Aにおけるマスク層12は、図4に示した製造装置により成膜される。
【0177】
図4に示す製造装置110は、プラズマ処理装置とされる。製造装置110は、例えば、インターバック式のDCスパッタリング装置とされる。製造装置110は、第1実施形態と同等の構成を有し、同等の性能を有するものとされ、その説明を省略する。
【0178】
マスク層12における位相シフト層の成膜では、成膜室112内のバッキングプレート113c付近でプラズマにより励起されたスパッタガスのイオンが、カソード電極113cのターゲット113bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、飛び出した粒子と反応ガスとが結合した後、ガラス基板11に付着することにより、ガラス基板11の表面に所定の組成でマスク層12が形成される。
【0179】
この際、マスク層12における位相シフト層の成膜では、ガス導入機構113eから所定の分圧となる窒素、酸素、炭素含有ガス等の反応性ガスを供給してその分圧を制御するように切り替えて、その組成を設定した範囲内にする。
【0180】
ここで、反応ガスとしては、窒素ガス(Nガス)、酸素ガス(Oガス)、窒素酸化物ガス(NOガス、NOガス、NOガス)などを用いることができる。スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどを用いることもできる。
【0181】
また、酸素含有ガスとしては、CO(二酸化炭素)、O(酸素)、NO(一酸化二窒素)、NO(一酸化窒素)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。
また、炭素含有ガスとしては、CO(二酸化炭素)、CH4(メタン)、C(エタン)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。
【0182】
さらに、このマスク層12の成膜においては、基板保持機構112a(図4)によってガラス基板11をプラズマに対して移動させて酸素増加薄膜12cを形成することができる。
【0183】
マスクブランクス10Aは、図5に示すように、酸素増加薄膜12cよりもガラス基板(透明基板)11に近接する位置のマスク層12が、厚さ方向において、ガラス基板(透明基板)11から酸素増加薄膜12cに向けて、エッチングレート(ETR)が低下するように設定されている。
【0184】
図10に示すレジスト形成工程S3においては、マスクブランクス10Aにおけるマスク層12の表面12Aに、フォトレジスト層15を形成する。フォトレジスト層15は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。フォトレジスト層15としては、いわゆるクロム系材料へのエッチングに対応可能なものとされる。フォトレジスト層15としては、液状レジストが用いられる。レジスト液は、化学増幅型のレジストとされてもよい。
【0185】
レジスト形成工程S3では、マスクブランクス10Aの最表面にフォトレジスト層15を塗布形成した後、ベーク処理等を施してレジスト形成工程S3を終了し、図11に示すように、マスクブランクス10Aが製造される。
【0186】
以下、本実施形態のマスクブランクス10Aから位相シフトマスク(フォトマスク)10を製造する製造方法について説明する。
【0187】
本実施形態における位相シフトマスク(フォトマスク)10は、図8に示す第1実施形態と同様に、積層されたマスク層12を有するマスクブランクス10Aから、露光パターンを形成したものとされる。
【0188】
まず、レジストパターン形成工程として、図6に示す第1実施形態と同様に、フォトレジスト層15を露光及び現像することで、マスク層12の表面12Aよりも外側にレジストパターン15Pが形成される。レジストパターン15Pは、マスク層12のエッチングマスクとして機能する。
【0189】
次いで、マスクパターン形成工程として、パターン形成されたレジストパターン15P越しに、マスク層12をウエットエッチングして、図7に示す第1実施形態と同様に、開口パターン10Lを有するマスクパターン12Pを形成する。
このとき、エッチング液としては、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
【0190】
最後に、レジスト除去工程として、マスクブランクス10Aの表面に残ったレジストパターン1P5を除去してレジスト除去工程を終了し、図8に示す第1実施形態と同様に、開口パターン10Lを有するマスクパターン12Pの形成されたフォトマスク10が製造される。
【0191】
本実施形態におけるマスク層12の製造条件、膜特性について検証した。
【0192】
まず、クロムからなるターゲット113bを用いて、ガラス基板11にマスク層12を形成した。この際、成膜時の雰囲気ガスとして、アルゴン、二酸化炭素、窒素の流量を変化させて、ガラス基板(透明基板)11から膜厚が増加するにつれてエッチングレート(ETR)を低下させるとともに、その表面に酸素リッチ層12bを積層し、さらに、酸素増加薄膜12cが形成されているマスク層12を成膜した。
【0193】
マスクパターン12Pの製造プロセスにおいては、通常、酸やアルカリ等の薬液が用いられるが、形成後のパターン形状の正確性における変化抑制が必要である。
本発明者らは、膜厚方向におけるマスク層12中のクロム、酸素、炭素、窒素の組成比を所定の状態とすることで、パターン形成プロセス中におけるフォトレジスト層15との密着性や、膜厚方向におけるエッチングレートの最適化による形状設定の向上を可能とすることができることを見出した。
【0194】
図16は、本実施形態におけるマスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果を示すグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図16に示すように、グラフ左端となる表面12Aからガラス基板11に近接する右端に向けて、深さが増すにつれ、窒素の比率は増加している。同様に、深さ方向に酸素の比率が低下している。
【0195】
ここで、横軸はスパッタ時間であり、23min程度で酸素濃度が増加し始めた部分から右側がガラス基板11である。なお、図16等において、1minは膜厚50オングストローム程度に対応する。
マスク層12は、ガラス基板11から表面12Aに近接する方向に向かって、酸素の比率が高くなるように傾斜しており、表面12Aに近接する左端位置で、最も酸素の比率が高くなっている。これが、酸素増加薄膜12cに対応する。なお、本実施形態におけるマスク層は、F8,あるいは、F8膜、として示している。
【0196】
本実施形態におけるマスク層12は、図19図20に(F8)として示すように、表面12Aにおいて、窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上とされる。
同時に、マスク層12は、窒素に対する酸素の組成比O/Nが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(25-8)/50=0.34(/オングストローム)以上、または、(25-8)/100=0.17(/オングストローム)以上とされる。
【0197】
このような組成比O/Nを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0198】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量とを同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)によるターゲット113bに対する移動スピードを設定することが考えられる。
【0199】
本実施形態におけるマスク層12は、図21図22に(F8)として示すように、表面12Aからガラス基板11に向かう100オングストロームの深さにおいて炭素に対する窒素の組成比N/Cが、1.5以下とされる。
また、本実施形態におけるマスク層12は、図21図22に(F8)として示すように、炭素に対する窒素の組成比N/Cが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、0.00965(/オングストローム)以下、または、0.004825(/オングストローム)以下とされる。
【0200】
このような組成比N/Cを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0201】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0202】
本実施形態におけるマスク層12は、図23図24に(F8)として示すように、マスク層12の表面12Aにおいてクロムに対する窒素の組成比N/Crが、0.15以下とされる。
マスク層12は、表面12Aから100オングストローム以下の領域における酸素に対する窒素の組成比N/Crが表面12Aからガラス基板11に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、(0.22-0.14)/50=0.0016(/オングストローム)以上、または、(0.22-0.14)/100=0.0008(/オングストローム)以上とされる。
【0203】
このような組成比N/Crを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0204】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0205】
本実施形態におけるマスク層12は、図25図26に(F8)として示すように、マスク層12の表面12Aにおいてクロムに対する酸素の組成比O/Crが、2.8以上とされる。
マスク層12は、クロムに対する酸素の組成比O/Crが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(3.3-1.5)/50=0.036(/オングストローム)以上、または、(3.3-1.5)/50=0.018(/オングストローム)以上とされる。
【0206】
このような組成比O/Crを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0207】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0208】
本実施形態におけるマスク層12は、図27図28に(F8)として示すように、表面12Aにおいてクロムに対する炭素の組成比C/Crが、1.0以上とされる。
マスク層12は、炭素に対するクロムの組成比C/Crが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aから前記透明基板に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(2-0.2)/50=0.036(/オングストローム)以上、または、(2-0.2)/100=0.018(/オングストローム)以上とされる。
【0209】
このような組成比C/Crを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0210】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0211】
本実施形態におけるマスク層12は、図29図30に(F8)として示すように、表面12Aにおいて酸素に対する炭素の組成比C/Oが、0.00435(/オングストローム)以上とされる。
マスク層12は、酸素に対する炭素の組成比C/Oが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって減少する傾き(厚さに対する減少率)が、(0.61-0.17)/50=0.0088(/オングストローム)以上、または、(0.61-0.17)/100=0.0044(/オングストローム)以上、または、0.00435(/オングストローム)以上とされる。
【0212】
このような組成比C/Oを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0213】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0214】
図31は、マスクブランクス10Aのマスク層12に対するX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の分析結果において、酸素に対する炭素の組成比C/Oを示すグラフである。また、図32は、図31の左端を拡大したグラフである。
本実施形態におけるマスク層12は、図31図32に(F8)として示すように、表面12Aにおいて炭素に対する酸素の組成比O/Cが、0.25以上とされる。
マスク層12は、炭素に対する酸素の組成比O/Cが、表面12Aから100オングストローム以下の領域における表面12Aからガラス基板11に向かって増大する傾き(厚さに対する増大率)が、(23-2)/50=0.42(/オングストローム)以上、または、(23-2)/100=0.21(/オングストローム)以上とされる。
【0215】
このような組成比C/Oを実現するために、酸素リッチ層形成工程S12において、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量を増加している。また、それ以前のマスク層形成工程S1に比べて、酸素リッチ層形成工程S12において増加する二酸化炭素ガスの流量を、4/3倍以上に増加することができる。
【0216】
さらに、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、窒素ガスの流量は変化させず、二酸化炭素ガスの流量は変化させず、Arガスの流量を低減している。
ここで、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で増加した二酸化炭素ガスの流量と、酸素増加薄膜形成工程S13の開始時点で低減したArガスの流量と、を同量に設定することができる。
ない、酸素増加薄膜形成工程S13としては、酸素リッチ層形成工程S12に比べて、処理時間として極めて短い時間とすることができる。具体的には、基板保持機構112a(図4)による移動スピードを設定することが考えられる。
【0217】
本実施形態のマスクブランクス10Aのマスク層12におけるそれぞれの組成比は、図16図19図32に示すような表面12Aおよび表面12Aから所定の深さまでのプラファイルを有するように形成されることができる。
【0218】
図12は、本実施形態におけるマスクブランクスからフォトマスクを製造するために、パターン形成した状態を説明するための模式断面図である。
本実施形態のマスクブランクス10Aでは、マスクパターン形成工程としてマスク層12をウエットエッチングした際に、図12に示すように、マスク層12における膜厚方向のエッチングレートをその位置に対応して制御し、エッチングによって形成されるマスクパターン12Pの断面形状、つまり、マスクパターン12Pの露出した壁面(側面)12P1がガラス基板11に対して垂直になるように制御することを可能とすることができる。
【0219】
本実施形態のマスクブランクス10Aでは、マスクパターン形成工程としてマスク層12をウエットエッチングした際に、図12に示すように、マスク層12の表面12Aにおけるフォトレジスト層15との密着性を向上して、マスク層12の表面12A付近におけるエッチングレートを制御し、サイドエッチングSEを抑制して、パターン形成時のエッチングによって形成されるマスク層12の表面12A付近におけるサイドエッチングSEが過分に生じることを防止し、レジストパターン15Pの端部15P1とマスクパターンの壁面(側面)12P1との間で生じる位置のずれ、つまり、図12において符号SEで示すサイドエッチング量を抑制することが可能となる。
これにより、より一層の高精細化を図ることが可能となる。
【実施例
【0220】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0221】
なお、本発明におけるマスクブランクスの具体例として、マスクパターン形成後の断面形状とサイトエッチの状況に対する確認試験について説明する。
【0222】
<実験例1>
実験例1として、ガラス基板11上に、マスク層12として、スパッタリング法を用いてクロムを含有するF7膜を形成する。ここで、F7膜として形成するクロム化合物膜は、クロム、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。
F7膜の成膜においては、次のマスク層形成工程S11、酸素リッチ層形成工程S12、酸素増加薄膜形成工程S13の3工程でおこなった。
【0223】
以下に、F7膜を形成した際における図3に示すマスク層形成工程S11としての処理条件を示す。
マスク層膜厚;130nm
成膜ガス流量
Ar=20sccm
CO=30sccm
=100sccm
【0224】
以下に、F7膜を形成した際における図3に示す酸素リッチ層形成工程S12としての処理条件を示す。
成膜ガス流量
Ar=20sccm
CO=40sccm
=100sccm
(マスク層膜厚の上層2/8程度(20%~25%)において、CO流量を+10sccm増加した。)
【0225】
以下に、F7膜を形成した際における図3に示す酸素増加薄膜形成工程S13としての処理条件を示す。
最後に、表面処理を施す。
成膜ガス流量
Ar=10sccm
CO=40sccm
=100sccm
基板速度800mm/min
膜厚;30オングストローム
【0226】
このF7膜に対して、光学特性を測定した。
その結果を以下に示す。
・透過率(340nm)=8.56%
・位相差(365nm)=168.9°
【0227】
このF7膜に対してX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて組成評価を行った。
ここで、
アルバックファイ社製装置;Quantera SXM (Ulvac-PHI)
励起X線;monochromatic Al K 1,2線(1486.6eV)
X線径;200nm
光電子検出角度;45°(試料表面に対する検出器の傾き)
イオンエッチング条件; Ar+ion 2kV
での検出とした。
その結果を図15に示す。
【0228】
また、図15に示した組成比から、さらに、次の比の値、深さ方向への傾きをそれぞれ算出した。これらの結果を図19図32に(F7)として示す。
・窒素に対する酸素の組成比O/N(図19図20
・窒素に対する酸素の組成比O/Nの傾き(図19図20
・炭素に対する窒素の組成比N/C(図21図22
・クロムに対する窒素の組成比N/Cr(図23図24
・クロムに対する窒素の組成比N/Crの傾き(図23図24
・クロムに対する酸素の組成比O/Cr(図25図26
・クロムに対する酸素の組成比O/Crの傾き(図25図26
・クロムに対する炭素の組成比C/Cr(図27図28
・クロムに対する炭素の組成比C/Crの傾き(図27図28
・酸素に対する炭素の組成比C/O(図29図30
・酸素に対する炭素の組成比C/Oの傾き(図29図30
・炭素に対する酸素の組成比O/C(図31図32
・炭素に対する酸素の組成比O/Cの傾き(図31図32
【0229】
また、形成したF7膜に対して、エッチングによってマスクパターン12Pの形成を行った。
・レジスト;GRX237
・レジスト膜厚;540nm
・エッチング液;硝酸セリウム第2アンモニウム含有
・エッチング時間;178sec
【0230】
さらに、F7膜におけるエッチングに対する特性として、図9に示すように、以下の値を測定した。
・マスク層12から形成したマスクパターン12Pにおけるエッチング断面である壁面(側面)12P1のガラス基板11との角度θ:90°
・サイドエッチング量SE:0.186μm
これらは、いずれも、断面SEM画像から算出した。なお、図9においては、F7膜の断面SEM画像を模式的に示している。
【0231】
<実験例2>
実験例2として、ガラス基板11上に、マスク層12として、スパッタリング法を用いてクロムを含有するF8膜を形成する。ここで、F8膜として形成するクロム化合物膜は、クロム、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。
F8膜の成膜においては、次のマスク層形成工程S11、酸素増加薄膜形成工程S13の2工程でおこなった。
【0232】
以下に、F8膜を形成した際における図10に示すマスク層形成工程S11としての処理条件を示す。
マスク層膜厚;130nm
成膜ガス流量
Ar=10sccm
CO=25sccm
=100sccm
【0233】
以下に、F8膜を形成した際における図10に示す酸素増加薄膜形成工程S13としての処理条件を示す。
最後に、表面処理を施す。
Ar=10sccm
CO=40sccm
=100sccm
基板速度800mm/min
膜厚;30オングストローム
【0234】
このF8膜に対して、光学特性を測定した。
その結果を以下に示す。
・透過率(340nm)=8.35 %
・位相差(365nm)=169.4°
【0235】
このF8膜に対してX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて組成評価を行った。
ここで、
アルバックファイ社製装置;Quantera SXM (Ulvac-PHI)
励起X線;monochromatic Al K 1,2線(1486.6eV)
X線径;200nm
光電子検出角度;45°(試料表面に対する検出器の傾き)
イオンエッチング条件; Ar+ion 2kV
での検出とした。
その結果を図16に示す。
【0236】
また、図16に示した組成比から、さらに、実験例1と同様に、次の比の値、深さ方向への傾きをそれぞれ算出した。これらの結果を図19図32に(F8)として示す。
・窒素に対する酸素の組成比O/N(図19図20
・窒素に対する酸素の組成比O/Nの傾き(図19図20
・炭素に対する窒素の組成比N/C(図21図22
・クロムに対する窒素の組成比N/Cr(図23図24
・クロムに対する窒素の組成比N/Crの傾き(図23図24
・クロムに対する酸素の組成比O/Cr(図25図26
・クロムに対する酸素の組成比O/Crの傾き(図25図26
・クロムに対する炭素の組成比C/Cr(図27図28
・クロムに対する炭素の組成比C/Crの傾き(図27図28
・酸素に対する炭素の組成比C/O(図29図30
・酸素に対する炭素の組成比C/Oの傾き(図29図30
・炭素に対する酸素の組成比O/C(図31図32
・炭素に対する酸素の組成比O/Cの傾き(図31図32
【0237】
また、形成したF8膜に対して、エッチングによってマスクパターン12Pの形成を行った。
・レジスト;GRX237
・レジスト膜厚;540nm
・エッチング液;硝酸セリウム第2アンモニウム含有
・エッチング時間;170sec
【0238】
さらに、F8膜におけるエッチングに対する特性として、図12に示すように、以下の値を測定した。
・マスク層12から形成したマスクパターン12Pにおけるエッチング断面である壁面(側面)12P1のガラス基板11との角度θ;90°
・サイドエッチング量SE;0.15μm
これらは、いずれも、断面SEM画像から算出した。なお、図12においては、F8膜の断面SEM画像を模式的に示している。
【0239】
<実験例3>
実験例3として、ガラス基板11上に、マスク層12として、スパッタリング法を用いてクロムを含有するF6膜を形成する。ここで、F6膜として形成するクロム化合物膜は、クロム、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。
F6膜の成膜においては、次のマスク層形成工程S11、酸素リッチ層形成工程S12、の2工程でおこなった。
【0240】
以下に、F6膜を形成した際における図3に示すマスク層形成工程S11としての処理条件を示す。
マスク層膜厚;130nm
成膜ガス流量
Ar=20sccm
CO=30sccm
=100sccm
【0241】
以下に、F6膜を形成した際における図3に示す酸素リッチ層形成工程S12としての処理条件を示す。
成膜ガス流量
Ar=20sccm
CO=40sccm
=100sccm
(マスク層膜厚の上層2/8(20%~25%)において、CO流量を+10sccm増加した。)
【0242】
このF6膜に対して、光学特性を測定した。
その結果を以下に示す。
・透過率(340nm)=8.20 %
・位相差(365nm)=170.2°
【0243】
このF6膜に対してX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて組成評価を行った。
ここで
アルバックファイ社製装置;Quantera SXM (Ulvac-PHI)
励起X線;monochromatic Al K 1,2線(1486.6eV)
X線径;200nm
光電子検出角度;45°(試料表面に対する検出器の傾き)
イオンエッチング条件; Ar+ion 2kV
での検出とした。
その結果を図17に示す。
【0244】
また、図17に示した組成比から、さらに、実験例1と同様に、次の比の値、深さ方向への傾きをそれぞれ算出した。これらの結果を図19図32に(F6)として示す。
・窒素に対する酸素の組成比O/N(図19図20
・窒素に対する酸素の組成比O/Nの傾き(図19図20
・炭素に対する窒素の組成比N/C(図21図22
・クロムに対する窒素の組成比N/Cr(図23図24
・クロムに対する窒素の組成比N/Crの傾き(図23図24
・クロムに対する酸素の組成比O/Cr(図25図26
・クロムに対する酸素の組成比O/Crの傾き(図25図26
・クロムに対する炭素の組成比C/Cr(図27図28
・クロムに対する炭素の組成比C/Crの傾き(図27図28
・酸素に対する炭素の組成比C/O(図29図30
・酸素に対する炭素の組成比C/Oの傾き(図29図30
・炭素に対する酸素の組成比O/C(図31図32
・炭素に対する酸素の組成比O/Cの傾き(図31図32
【0245】
また、形成したF6膜に対して、エッチングによってマスクパターン12Pの形成を行った。
・レジスト;GRX237
・レジスト膜厚;540nm
・エッチング液;硝酸セリウム第2アンモニウム含有
・エッチング時間;180sec
【0246】
さらに、F6膜におけるエッチングに対する特性として、図13に示すように、以下の値を測定した。
・マスク層12から形成したマスクパターン12Pにおけるエッチング断面である壁面(側面)12P1のガラス基板11との角度θ;65°
・サイドエッチング量SE:0.228μm
これらは、いずれも、断面SEM画像から算出した。なお、図13においては、F6膜の断面SEM画像を模式的に示している。
【0247】
<実験例4>
実験例4として、ガラス基板11上に、マスク層12として、スパッタリング法を用いてクロムを含有するD5膜を形成する。ここで、D5膜として形成するクロム化合物膜は、クロム、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。
D5膜の成膜においては、次のマスク層形成工程S11の1工程でおこなった。
【0248】
以下に、D5膜を形成した際における図3に示すマスク層形成工程S11としての処理条件を示す。
マスク層膜厚;128nm
成膜ガス流量
Ar=20sccm
CO=25sccm
=100sccm
【0249】
このD5膜に対して、光学特性を測定した。
その結果を以下に示す。
・透過率(340nm)=8.15 %
・位相差(365nm)=169.6°
【0250】
このD5膜に対してX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて組成評価を行った。
ここで、
アルバックファイ社製装置;Quantera SXM (Ulvac-PHI)
励起X線;monochromatic Al K 1,2線(1486.6eV)
X線径;200nm
光電子検出角度;45°(試料表面に対する検出器の傾き)
イオンエッチング条件; Ar+ion 2kV
での検出とした。
その結果を図18に示す。
【0251】
また、図18に示した組成比から、さらに、実験例1と同様に、次の比の値、深さ方向への傾きをそれぞれ算出した。これらの結果を図19図32に(D5)として示す。
・窒素に対する酸素の組成比O/N(図19図20
・窒素に対する酸素の組成比O/Nの傾き(図19図20
・炭素に対する窒素の組成比N/C(図21図22
・クロムに対する窒素の組成比N/Cr(図23図24
・クロムに対する窒素の組成比N/Crの傾き(図23図24
・クロムに対する酸素の組成比O/Cr(図25図26
・クロムに対する酸素の組成比O/Crの傾き(図25図26
・クロムに対する炭素の組成比C/Cr(図27図28
・クロムに対する炭素の組成比C/Crの傾き(図27図28
・酸素に対する炭素の組成比C/O(図29図30
・酸素に対する炭素の組成比C/Oの傾き(図29図30
・炭素に対する酸素の組成比O/C(図31図32
・炭素に対する酸素の組成比O/Cの傾き(図31図32
【0252】
また、形成したD5膜に対して、エッチングによってマスクパターン12Pの形成を行った。
・レジスト;GRX237
・レジスト膜厚;540nm
・エッチング液;硝酸セリウム第2アンモニウム含有
・エッチング時間;95sec
【0253】
さらに、D5膜におけるエッチングに対する特性として、図14に示すように、以下の値を測定した。
・マスク層12から形成したマスクパターン12Pにおけるエッチング断面である壁面(側面)12P1のガラス基板11との角度θ;34°
・サイドエッチング量SE:0.300μm
これらは、いずれも、断面SEM画像から算出した。なお、図14においては、F6膜の断面SEM画像を模式的に示している。
【0254】
実験例1~4の結果から、以下のプロファイルを満たすことによって、好ましい結果を得ることができることが判明した。
・表面12Aにおける窒素に対する酸素の組成比O/Nが、20以上(図19図20
・窒素に対する酸素の組成比O/Nの傾きが、0.17(/オングストローム)以上、または、0.57(/オングストローム)以上(図19図20
・表面12Aから100オングストロームの深さにおける炭素に対する窒素の組成比N/Cが、1.5以下(図21図22
・表面12Aにおけるクロムに対する窒素の組成比N/Crが、0.15以下(図23図24
・クロムに対する窒素の組成比N/Crの傾きが、0.0002(/オングストローム)以上、または、0.0008(/オングストローム)以上(図23図24
・表面12Aにおけるクロムに対する酸素の組成比O/Crが、2.8以上(図25図26
・クロムに対する酸素の組成比O/Crの傾きが、0.42(/オングストローム)以上、または、0.21(/オングストローム)以上(図25図26
・表面12Aにおけるクロムに対する炭素の組成比C/Crが、1.0以上(図27図28
・クロムに対する炭素の組成比C/Crの傾きが、0.015(/オングストローム)以上、または、0.018(/オングストローム)以上(図27図28
・表面12Aにおける酸素に対する炭素の組成比C/Oが、0.4以上(図29図30
・酸素に対する炭素の組成比C/Oの傾きが、0.00435(/オングストローム)以上、または、0.0044(/オングストローム)以上(図29図30
・表面12Aにおける炭素に対する酸素の組成比O/Cが、0.25以下(図31図32
・炭素に対する酸素の組成比O/Cの傾きが、0.21(/オングストローム)以上(図31図32
【0255】
つまり、実験例1~4の結果から、上記のプロファイルを満たすことによって、次のようなフォトマスクを製造可能なマスクブランクスを得ることができることが判明した。
・透過率(340nm)=8.35%~8.56%
・位相差(365nm)=168.9°~169.4°
・エッチング時間;178sec
・マスク層12から形成したマスクパターン12Pにおけるエッチング断面である壁面(側面)12P1のガラス基板11との角度θ:90°
・サイドエッチング量SE:0.15μm~0.186μm
【符号の説明】
【0256】
10…フォトマスク(位相シフトマスク)
10A…マスクブランクス
10L…開口パターン
11…ガラス基板(透明基板)
12…マスク層
12A…表面
12P…マスクパターン
12P1…壁面(側面)
15…フォトレジスト層(レジスト層)
15P…レジストパターン
16,20,23…薄膜
16P,20P,20P1,23P,23P1,120P,120P1,122P,122P1,125P…パターン
17P,18P,19P,21P,22P,24P,25P,26P…フォトレジストパターン
120…マスク層(位相シフト膜)
122…エッチングストッパ膜
125…HT膜(ハーフトーン膜;透過率調整膜)
M1…透明領域
M2…位相シフト領域
M3…積層領域
M4…HT領域
SE…サイドエッチング
図1
図2
図3
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