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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ティルティングパッド軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20240618BHJP
   F16C 17/06 20060101ALI20240618BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F16C17/03
F16C17/06
F04B39/00 103J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022501117
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2020065828
(87)【国際公開番号】W WO2021008778
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-10
(31)【優先権主張番号】102019210660.9
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュルーケ,アルミン
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-076924(JP,A)
【文献】国際公開第2015/157053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/03
F16C 17/06
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティルティングパッド(1~3;41~48)と回転体(11,112;113)との間に軸受ギャップを生ぜしめるために、ハウジング体(108,109;110)に対して相対的に傾倒可能なティルティングパッド(1~3;41~48)を有するティルティングパッド軸受(104,105;106)において、
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)が、薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;30;50;60;70)と一体的に接続されていて、
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)のうちの少なくとも1つが、それぞれ、前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;30;50;60;70)から前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;30;50;60;70)の面の方向に突出する1つより多くの接続箇所(14,15;51,52)で以って前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;30;50)と一体的に接続されていることを特徴とする、ティルティングパッド軸受。
【請求項2】
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)と前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;50;60)との間の一体的な接続部(14,15;24;51,52;61)が、少なくとも1つの曲げバー(25)を有していることを特徴とする、請求項1記載のティルティングパッド軸受。
【請求項3】
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)と前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(30;70)との間の一体的な接続部が、少なくとも1つのトーションバー(34,35;72,73)を有していることを特徴とする、請求項1または2記載のティルティングパッド軸受。
【請求項4】
前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;30;50;60;70)が金属薄板材料より形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のティルティングパッド軸受。
【請求項5】
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)は、前記ティルティングパッド軸受(104,105;106)の運転中に前記ティルティングパッド(1~3;41~48)だけが前記回転体(111,112;113)を支持するようにずらされて、前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;30;50;60;70)に接続されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のティルティングパッド軸受。
【請求項6】
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)が、舌片として前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(10;20;30;50;60;70)に構成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のティルティングパッド軸受。
【請求項7】
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)のうちの少なくとも1つが、前記ティルティングパッド(1~3;41~48)に関連して中央の領域で以って前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(20;60)と一体的に接続されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のティルティングパッド軸受。
【請求項8】
前記ティルティングパッド(1~3;41~48)のうちの少なくとも1つが1つの接続箇所で以って、少なくとも1つの回り継手(26,27;66,67)によって前記薄板状のフレキシブルな支持構造体(20;60)に接続されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のティルティングパッド軸受。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の少なくとも1つのティルティングパッド軸受(10;20;30;50;60;70)によって軸受けされている被駆動軸(103)を有する圧縮機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティルティングパッドと回転体との間に軸受ギャップを生ぜしめるために、ハウジング体に対して相対的に傾倒可能なティルティングパッドを有するティルティングパッド軸受に関する。本発明はさらに、このような形式のティルティングパッド軸受を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、ピン部材を備えたティルティングパッドとスリーブとを有するティルティングパッド軸受が公知であり、この場合、スリーブが、周方向で切欠を備えた少なくとも1つのピン部材受け部を有しており、ピン部材が切欠内に受け入れ可能であり、この場合、ピン部材が、ティルティングパッドの少なくとも1つのギャップを調節するために切欠に沿って周方向で移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許第3260716号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ティルティングパッドと回転体との間に軸受ギャップを生ぜしめるために、ハウジング体に対して相対的に傾倒可能なティルティングパッドを有するティルティングパッド軸受を、製造可能性に関して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、ティルティングパッドと回転体との間に軸受ギャップを生ぜしめるために、ハウジング体に対して相対的に傾倒可能なティルティングパッドを有するティルティングパッド軸受において、ティルティングパッドが、面状(薄板状)のフレキシブルな支持構造体と一体的に接続されていることによって解決される。ティルティングパッド軸受は少なくとも3つのティルティングパッドを有している。特に好適には、ティルティングパッド軸受は正確に3つのティルティングパッドを有している。ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部は、例えば少なくとも1つの固体継手、特に回り継手を有している。請求されたティルティングパッド軸受は、ラジアル軸受として、またスラスト軸受として構成されてもよい。従来のティルティングパッド軸受においては、ティルティングパッドは、軸受リングに例えば素材結合式に結合されている。ティルティングパッドは、外レースまたは軸受リング内に挿入された別個の個別部分として構成されていてもよい。ティルティングパッドが一体的に接続されている面状のフレキシブルな支持構造体は、請求されたティルティングパッド軸受では好適にはハウジング体に当接している。これによって、ハウジング体とのティルティングパッドの熱接続は著しく改善される。これは、特にティルティングパッドがティルティングパッド軸受の運転中に、従来のティルティングパッド軸受における程度に熱くならない、という利点を提供する。従って、簡単な形式および方法で、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体とから形成された材料の許容可能な材料温度を越えないように、保証される。さらに、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続によって、ティルティングパッド軸受の製造は著しく簡略化される。ティルティングパッド軸受がラジアル軸受として構成されていれば、面状のフレキシブルな支持構造体は、例えば矩形の形態を有していてよい。矩形の面状のフレキシブルな支持構造体は、製造時に直円筒形の形態に形成される。このような円筒形周壁を有する面状のフレキシブルな支持構造体は、ハウジング体の対応する受け部内にもたらされる。ティルティングパッド軸受がスラスト軸受として構成されていれば、面状のフレキシブルな支持構造体は、例えば丸い円板の形態を有する。ティルティングパッドと一体的に接続された面状のフレキシブルな支持構造体は、好適な形式で0.5ミリメートルより大きい厚さを有している。回転体、特に軸の直径の大きさに依存して、面状のフレキシブルな支持構造体は、好適な形式で1ミリメートル乃至3ミリメートルの厚さを有している。
【0006】
ティルティングパッド軸受の好適な実施例は、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部が、少なくとも1つの曲げバーを有していることを特徴としている。曲げバーを介して、ティルティングパッドは、このティルティングパッドがティルティングパッド軸受の運転中に、ティルティングパッドと回転体との間に所望の軸受ギャップを生ぜしめるように、面状のフレキシブルな支持構造体に接続され得る。曲げバーを介して、それぞれのティルティングパッドは、例えば回転体に対して相対的な所望の位置へプリロードをかけられる。
【0007】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部が、少なくとも1つのトーションバーを有していることを特徴としている。このようなトーションバーを介して、ティルティングパッドは、このティルティングパッドがティルティングパッド軸受の運転中に、ティルティングパッドと回転体との間に所望の軸受ギャップを生ぜしめるように、面状のフレキシブルな支持構造体に接続され得る。トーションバーを介して、それぞれのティルティングパッドは、例えば回転体に対して相対的な所望の位置へプリロードをかけられる。
【0008】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、面状のフレキシブルな支持構造体が金属薄板材料より形成されていることを特徴としている。面状のフレキシブルな支持構造体を形成する金属薄板材料は、例えば簡単なパターニングされた金属薄板ディスク若しくは金属薄板プレート、またはティルティングパッド軸受を受けるための金属薄板曲げ部分である。場合によっては必要な精密加工のためのコストは別として、製造コストは、従来のティルティングパッド軸受の製造コストに対してほんの僅かである。金属薄板ディスクまたは金属薄板プレートの代わりに、原材料として管材料が使用されてもよい。管材料は、例えばレーザ加工によって半径方向にパターニングされる。
【0009】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部が、所定の可撓性および/または所定のねじり剛性を有することを特徴としている。ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部は、その幾何学形状に関連して製造時に簡単な方法および形式で変えることができる。選択された幾何学形状に応じて、請求されたティルティングパッド軸受によって、個別のティルティングパッドの可撓性および/またはティルティングパッドのねじり剛性は、一体的な接続箇所における懸架を介して調節され得る。軸受パッドとしても構成されかつ軸受パッドとも呼ばれるティルティングパッドは、ハウジング体のそれぞれの基本構造、特にディスク状の基本構造または円筒形周壁状の基本構造に対して、容易にずらすかまたは押し付けることができるので、ティルティングパッドまたは軸受パッドだけが、例えば軸または軸つばとして構成された回転体を支持する。
【0010】
ティルティングパッドの別の好適な実施例によれば、ティルティングパッドは、ティルティングパッド軸受の運転中にティルティングパッドだけが回転体を支持するようにずらされて、面状のフレキシブルな支持構造体に接続されていることを特徴としている。この場合、「ずらされて」とは、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との接続に関連して、ティルティングパッド軸受の運転中に所望の軸受ギャップを生ぜしめるために、ティルティングパッドが、面状のフレキシブルな支持構造体との請求された一体的な接続部を介して従来のティルティングパッド軸受と同じように良好に、回転体に対して相対的に位置調整されそこで保持される、という意味である。
【0011】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドが、舌片として面状のフレキシブルな支持構造体に構成されていることを特徴としている。舌片は、ラジアル軸受では例えば概ね矩形の形態を有している。スラスト軸受では、舌片は例えば円環状ディスク部分の形態を有している。これらの舌片は、少なくとも1つの一体的な接続部を介して面状のフレキシブルな支持構造体に接続されている。
【0012】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドのうちの少なくとも1つが、1つより多くの接続箇所で以って面状のフレキシブルな支持構造体と一体的に接続されていることを特徴としている。これによって、簡単な方法および形式で、ティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との、より頑丈な接続が可能である。さらに、ティルティングパッドと支持構造体との間で1つより多くの一体的な接続を使用することによって、回転体に対して相対的なハウジング体内における、面状のフレキシブルな支持構造体に対して相対的なそれぞれのティルティングパッドの所望の配置または位置調整が簡略化される。
【0013】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドのうちの少なくとも1つが、ティルティングパッドに関連して中央の領域で以って面状のフレキシブルな支持構造体と一体的に接続されていることを特徴としている。これは特に、運転中に発生するティルティングパッドと回転体との間の面圧縮の変化が、ティルティングパッドと回転体との間の角度変化を生ぜしめることがない、という利点を提供する。それぞれのティルティングパッドの中央の領域との一体的な接続部によって、ティルティングパッドの可撓性および傾きは、面状のフレキシブルな支持構造体から十分に遮断され得る。
【0014】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドのうちの少なくとも1つが1つの接続箇所で以って、少なくとも1つの回り継手によって面状のフレキシブルな支持構造体に接続されていることを特徴としている。回り継手を介して、それぞれのティルティングパッドは、簡単な方法および形式で、面状のフレキシブルな支持構造体および/または回転体に対して相対的な所望の角度で配置され得る。第2の回り継手を介して、面状のフレキシブルな支持構造体および/または回転体に対して相対的なティルティングパッドの所望の配置に関する形態の自由度は、もう一度さらに拡大される。
【0015】
ティルティングパッド軸受の別の好適な実施例は、ティルティングパッドのうちの少なくとも1つが少なくとも1つの補助接続箇所で以って面状のフレキシブルな支持構造体に接続されていることを特徴としている。補助接続箇所は好適には、ティルティングパッドを有する面状のフレキシブルな支持構造体の形状安定性を、ハウジング体内に組み込む前に高めるために用いられる。ハウジング体内に組み込む前に、またはティルティングパッド軸受の運転開始前に、補助接続箇所との接続は取り除かれるかまたは分離される。
【0016】
本発明はさらに、前記ティルティングパッド軸受を製造するためのおよび/または運転するための方法に関する。ティルティングパッドを有する面状のフレキシブルな支持構造体を製造する際の原材料として、例えば鋼材料、真鍮材料、赤色黄銅材料または軸受金属材料が使用される。例えばクラッディング、熱スプレーまたは溶接法によって被着されるハード層を備えた複合材料、例えば薄鋼板が使用されてもよい。相応の材料を選択することによって、耐久性または耐摩耗性に影響を及ぼすことができ、これは例えばティルティングパッド軸受の運転中に頻繁に行われるスタート/ストップ操作において役立つ。レーザ切断またはウォータージェット切断による分離加工と組み合わせた曲げプロセスまたは打ち抜きプロセスおよび打ち出し成形プロセスを介して、ティルティングパッドと、ティルティングパッド軸受のための面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部内および面状のフレキシブルな支持構造体内の、ティルティングパッドの所望の幾何学形状を製造することができる。高い表面硬さは、必要であれば、熱処理、例えば調質若しくは表層焼入れによって、またはコーティング、特にニッケルコーティング若しくは炭素コーティングによって実現され得る。ラジアル軸受では、軸受パッドとも呼ばれる切り抜かれたティルティングパッドを有する面状のフレキシブルな支持構造体は、ばね弾性的な開放するスリーブとしてハウジング体内に押し込まれてよい。しかしながら、ティルティングパッドを有する面状のフレキシブルな支持構造体は、ハウジング体内に挿入または押し込まれる前に閉じたスリーブに溶接されてもよい。ティルティングパッド、特に軸受パッドの高い精度は、研削プロセスによって得ることができる。追加的に、軸受箇所の表面は、軸受特性を改善するためにパターニングされてよい。従って、例えばマイクロ構造化部、ポケットまたは渦巻き溝が、ティルティングパッドの表面内に設けられてよい。すべての請求されたティルティングパッド軸受は、特に軸受ギャップ内にくさび状に先細りする面が得られ、これらの面と、回転する回転体、特に回転する軸との間に流体膜が形成され、この流体膜が回転体、特に軸を支持するようになっているので、運転中に接触が発生しないことを特徴としている。回転数が高くなるにつれて、くさび角は、それぞれのティルティングパッドと面状のフレキシブルな支持構造体との間の一体的な接続部のねじり剛性に依存して変化する。従って、ティルティングパッドまたは軸受パッドは負荷に応じて多かれ少なかれ変形することができる。
【0017】
本発明はさらに、少なくとも1つの上記のティルティングパッド軸受によって軸受けされた被駆動軸を有する圧縮機に関する。ティルティングパッドを有する面状のフレキシブルな支持構造体は、高速回転するロータのためのすべてのティルティングパッド軸受、特にターボ機械および圧縮機に使用することができる。
【0018】
本発明は場合によっては、上記のティルティングパッド軸受のためのまたはこのような形式のティルティングパッド軸受を製造するための、面状のフレキシブルな支持構造体にも関する。ティルティングパッドを有する面状のフレキシブルな支持構造体は、別個に操作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】閉じたスリーブの形態の、3つのティルティングパッドを備えた面状のフレキシブルな支持構造体の斜視図である。
図2図1に示した面状のフレキシブルな支持構造体の正面図である。
図3図1および図2に示した面状のフレキシブルな支持構造体の、変形過程前の斜視図である。
図4】別の実施例による、図1と同様の図である。
図5図4の一部の拡大図である。
図6図4および図5に示した面状のフレキシブルな支持構造体の初期状態を示す図である。
図7】別の実施例による、図1および図4と同様の図である。
図8図7に示した面状のフレキシブルな支持構造体の、初期状態を示す図である。
図9】スラスト軸受に配置するための面状のフラットな支持構造体の図である。
図10図9に示した面状のフラットな支持構造体の正面図である。
図11図9に示した、面状のフラットな支持構造体の変化例を示す図である。
図12】別の実施例による、図9および図11と同様の図である。
図13図12の一部の拡大図である。
図14】別の実施例による、図9図11および図12と同様の図である。
図15図14の一部の拡大図である。
図16】2つの追加的な補助接続ウエブを備えた、面状のフレキシブルな支持構造体の図1と同様の図である。
図17】3つのティルティングパッド軸受によって半径方向および軸方向で回転可能に軸受けされた軸を有する圧縮機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のその他の利点、特徴および詳細は、図面に関連した様々な実施例の詳細が記載されている以下の説明から得られる。
【0021】
図17に、燃料電池システムの圧縮機100が概略的に示されている。圧縮機100はハウジング101を有しており、このハウジング101内に電動機102が配置されている。電動機102は、圧縮機100の軸103を駆動するために用いられる。
【0022】
圧縮機100の軸103は、2つのティルティングパッド軸受104,105を用いてハウジング101内で半径方向に支承されている。軸103を軸方向で支承するために、ティルティングパッド軸受106が用いられる。
【0023】
図17で、軸103の左側端部に圧縮機ホイール107が取り付けられている。圧縮機ホイール107は、圧縮機ホイール107が軸103を介して電動機102によって駆動される際に燃料電池システム内に供給される空気を圧縮するために用いられる。
【0024】
ティルティングパッド軸受104,105;106は、それぞれ1つのハウジング体108,109;110を有している。軸103は、回転体111,112とも呼ばれる2つの軸区分を有しており、これらの回転体によって、軸103はティルティングパッド軸受104,105内で半径方向に軸受けされている。
【0025】
軸103はさらに、回転体113とも呼ばれる軸つばを有している。この回転体113を介して、軸103はティルティングパッド軸受106によってハウジング101内で軸方向に軸受けされている。
【0026】
ティルティングパッド軸受104,105はそれぞれ3つのティルティングパッド1,2,3を有している。従来のティルティングパッドとは異なり、これらのティルティングパッド1,2,3は、面状のフレキシブルな支持構造体10;20;30のフレーム4と一体的に接続されている。同じまたは類似の部分を示すために、図1乃至図8図9乃至図15では、同じ符号が使用される。まず、図1乃至図8図9乃至図15の様々な実施例の共通点について説明する。次にこれらの実施例の相違点について詳しく説明する。
【0027】
フレーム4は、ラジアル軸受を実現するために図1乃至図8では2つの縦ウエブ5,6を備えた長方形の形態を有しており、これらの縦ウエブ5,6はその自由端部で横ウエブ7,8によって互いに接続されている。さらに2つの縦ウエブ5,6は、2つの接続ウエブ9によって一体的に互いに接続されている。
【0028】
ティルティングパッド1,2,3は、面状のフレキシブルな支持構造体10;20;30から、舌片または軸受パッド11,12,13;21,22,23;31,32,33として打ち抜かれる。この場合、軸受パッド11,12,13;21,22,23;31,32,33は、少なくとも1箇所でフレーム4と一体的に接続されている。
【0029】
図示の実施例では、軸受パッド11,12,13;21,22,23;31,32,33は、それぞれ同じ方法および形式で所属の面状のフレキシブルな支持構造体10;20;30に組み込まれている。図示とは異なり、面状のフレキシブルな支持構造体内で様々な接続形式を互いに組み合わせてもよい。
【0030】
図1乃至図3では、軸受パッド11乃至13は、それぞれ2つの一体的な接続部14,15によって、面状のフレキシブルな支持構造体10に接続されている。一体的な接続部14,15は、図3に示されているように、曲げバーとして構成されている。2つの一体的な接続部14,15間に、長孔の形の切欠16が接続ウエブ9に対して平行に設けられている。
【0031】
図4乃至図6には、軸受パッド21乃至23毎に、面状のフレキシブルな支持構造体20とのそれぞれ1つの一体的な接続部24が設けられている。一体的な接続部24は、2つの固体継手26,27を備えた曲げバー25として構成されている。固体継手26,27は、回り継手を形成するために用いられる。曲げバー25を介して、接続ウエブ9は、軸受パッド12の中央または真ん中の領域と接続されている。
【0032】
図7および図8の実施例では、軸受パッド31乃至33は、それぞれ2つのトーションバー34,35によって面状のフレキシブルな支持構造体30に接続されている。曲げ構造およびトーション構造の組み合わせにより、多くのその他の(図示していない)幾何学形状を表すことができる。
【0033】
面状のフレキシブルな支持構造体10;20;30は、例えば打ち出し成形によって形成することができる。打ち出し成形は、面状のフレキシブルな支持構造体10;20;30の平らな状態で行うことができる。選択的に、打ち出し成形は、広げた状態で例えば支持工具を使用して実施することができる。支持工具は両側から差し込まれ、これに対して、単数または複数の打ち型は、一体的な接続部を形成するために用いられる支持アーム、例えば曲げバーまたはトーションバーを半径方向で内方へ押し付ける。
【0034】
スラスト軸受として構成されたティルティングパッド軸受106は、例えば6つのティルティングパッド41乃至46または8つのティルティングパッド41乃至48を有している。ティルティングパッド41乃至48は軸受パッド54;64;74として構成されていて、少なくとも1つの一体的な接続部によって、面状のフレキシブルな支持構造体50;60;70に接続されている。面状のフレキシブルな支持構造体50;60;70は、内側環状ディスク55および外側環状ディスク56を備えた円環状ディスクの形態を有している。ティルティングパッド41乃至48を形成するための、同じ構造を有する2つの軸受パッド54;64;74の間にそれぞれ1つのスポーク体49が配置されている。全部で6つまたは8つのスポーク体49は、内側環状ディスク55を、それぞれの面状のフレキシブルな支持構造体50;60;70の外側環状ディスク56と一体的に接続する。
【0035】
図9および図10では、全部で8つのティルティングパッド41乃至48がそれぞれ2つの一体的な接続部51,52を介して、面状のフレキシブルな支持構造体50のスポーク体49と接続されている。曲げバーとして構成された2つの一体的な接続部51,52の間で、面状のフレキシブルな支持構造体50内にそれぞれ1つの切欠53が設けられている。
【0036】
図11には、図9の変化実施例が示されている。図11の変化例では、内側環状ディスク(図9の55)が省かれている。それ以外は図9の実施例と図11の実施例は同じである。
【0037】
図10図13図15に示されているように、ティルティングパッドを形成するために用いられる軸受パッド54;64;74は、得られた軸受ギャップ内で所望の圧力クッションを形成するために所定の角度を有している。この圧力クッションは、ティルティングパッド軸受の運転中に、軸または軸つばと軸受パッド54;64;74との間の不都合な接触を阻止するために用いられる。
【0038】
スラスト軸受においても、軸受パッド64の懸架は、図12および図13に示されているように、それぞれの軸受パッド64の中央領域内で移動させられてよい。図13の拡大図で示されているように、固体継手66,67を用いて軸受パッド64の概ね旋回可能な懸架が面状のフレキシブルな支持構造体60内で可能である。
【0039】
図14および図15に示されているように、軸受パッド74は、それぞれ2つのトーションバー72,73を用いて面状のフレキシブルな支持構造体70内に組み込むことができる。トーションバー72,73を介した懸架を形成するために必要な、軸受パッド74と環状ディスク55,56との間の一体的な接続部は、製造技術的に例えば打ち出し成形によって簡単に実現可能である。軸受パッド74の懸架、接続または組み込みは、必要に応じて軸受パッド74の中央の外側であってもよい。
【0040】
図16に示されているように、精密加工のために、図1の一体的な接続部14,15に追加して、補助ウエブ81,82が設けられており、これらの補助ウエブ81,82によって所属の軸受パッド12は、追加的に2箇所でフレーム4と一体的に接続される。補助ウエブ81,82は、例えば熱プロセスによる処理後に特にレーザを用いて切断される。
【符号の説明】
【0041】
1,2,3 ティルティングパッド
4 フレーム
5,6 縦ウエブ
7,8 横ウエブ
10,20,30 面状のフレキシブルな支持構造体
11,12,13 軸受パッド
14,15 接続部
16 切欠
21,22,23 軸受パッド
24 接続部
25 曲げバー
26,27 固体継手、回り継手
31,32,33 軸受パッド
34,35 トーションバー
49 スポーク体
50,60,70 面状のフレキシブルな支持構造体
51,52 接続部
55 内側環状ディスク
56 外側環状ディスク
54,64,74 軸受パッド
61 接続部
66,67 固体継手、回り継手
72,73 トーションバー
81,82 補助ウエブ
100 圧縮機
101 ハウジング
102 電動機
103 軸、被駆動軸
104,105,106 ティルティングパッド軸受
107 圧縮機ホイール
108,109,110 ハウジング体
111,112,113 回転体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17