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  • 特許-電磁波シールドフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240618BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240618BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
B32B7/025
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022504413
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008033
(87)【国際公開番号】W WO2021177328
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020035598
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
(72)【発明者】
【氏名】森元 昌平
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/164174(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/159566(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層の一方の面に設けられた導電性接着剤層とを備え、
前記電磁波シールド層は構成材料としてアルミニウムを含み、
前記導電性接着剤層は導電性粒子としてニッケル粒子を含み、前記ニッケル粒子の円形度の平均値が0.60以上0.83以下であり、前記円形度の10%累積値が0.65以下である、電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記ニッケル粒子の形状はフィラメント状である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記ニッケル粒子の平均アスペクト比は0.70以下である請求項1または2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記ニッケル粒子のアスペクト比の10%累積値は0.50以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記ニッケル粒子のメディアン径は1~30μmである請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記導電性接着剤層中の前記ニッケル粒子の含有割合は2~80質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スマートフォンやタブレット端末を始めとした携帯機器などには、内部から発生する電磁波や外部から侵入する電磁波を遮断するために、電磁波シールドフィルムを貼り付けたフレキシブルプリント配線板(FPC)が用いられている。
【0003】
電磁波シールドフィルムとしては、例えば、金属薄膜等の電磁波シールド層と、導電性粒子を含む導電性接着剤層とを備えるものが知られている。電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層を、プリント配線板の、回路パターンを被覆する絶縁層に重ね合わせた状態で加熱プレスすることにより、電磁波シールドフィルムはプリント配線板に接着されてシールドプリント配線板が作製される。
【0004】
絶縁層にはグランド回路を露出する開口部が設けられており、電磁波シールドフィルムをプリント配線板上に裁置した状態で加熱プレスすることで、上記導電性接着剤層が流動して上記開口部が導電性接着剤により充填される。これにより、電磁波シールド層とプリント配線板の回路パターンに含まれるグランド回路とが、導電性接着剤を介して電気的に接続され、電磁波シールドフィルムはシールド性能を発揮することができる。
【0005】
その後シールドプリント配線板には、はんだリフロー工程を経ることによって部品が実装される。はんだリフロー工程では、例えば270℃程度の高温に曝される。
【0006】
また、近年、上記電磁波シールドフィルムとしては、コスト削減の観点から、電磁波シールド層としてアルミニウムを用いたものが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-122883号公報
【文献】国際公開第2017/164174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁波シールドフィルムにおける、アルミニウムを用いた電磁波シールド層と導電性粒子の組み合わせでは、上記はんだリフロー工程を通過した後において、電磁波シールド層とグランド回路の導通抵抗が上昇し、本来のシールド性能を発揮できないという問題があった。また、特許文献2に記載の電磁波シールドフィルムにおける、アルミニウムを用いた電磁波シールド層と導電性粒子の組み合わせでは、プリント配線板との接着性が劣る、上記はんだリフロー工程を通過した後において、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性が得られないという問題があった。このため、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れる電磁波シールドフィルムが求められている。
【0009】
従って、本開示の目的は、経済的に優れながら、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れる電磁波シールドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、電磁波シールド層にアルミニウムを用い、且つ導電性接着剤層中の導電性粒子として特定のニッケル粒子を用いた電磁波シールドフィルムによれば、経済的に優れながら、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0011】
本開示は、電磁波シールド層と、上記電磁波シールド層の一方の面に設けられた導電性接着剤層とを備え、
上記電磁波シールド層は構成材料としてアルミニウムを含み、
上記電性接着剤層は導電性粒子としてニッケル粒子を含み、上記ニッケル粒子の円形度の平均値が0.85以下であり、上記円形度の10%累積値が0.65以下である、電磁波シールドフィルムを提供する。
【0012】
上記電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド層の構成材料として、銀や銅と比較して安価なアルミニウムを用いることで経済的に優れる。そして、導電性接着剤層中の導電性粒子として、円形度の平均値が0.85以下であり、円形度の10%累積値が0.65以下であるニッケル粒子を用いる。上記円形度は、ニッケル粒子の二次元形状について円との近さを示す指標であり、高いほど二次元形状は円に近づき、円形度が1.0であるとその形状は真円であることを示す。すなわち、ニッケル粒子の円形度の平均値が0.85以下であることは、ニッケル粒子の二次元形状が真円とはある程度かけ離れていることを示し、ニッケル粒子の円形度の10%累積値が0.65以下であることは、円形度が小さいニッケル粒子の割合がある程度多いことを示す。このようなニッケル粒子を導電性粒子として用いることにより、上記電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド層の構成材料としてアルミニウムを用いながら、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れる。
【0013】
上記ニッケル粒子の形状はフィラメント状であることが好ましい。
【0014】
上記ニッケル粒子の平均アスペクト比は0.70以下であることが好ましい。
【0015】
上記ニッケル粒子のアスペクト比の10%累積値は0.50以下であることが好ましい。
【0016】
上記ニッケル粒子のメディアン径は1~30μmであることが好ましい。
【0017】
上記導電性接着剤層中の上記ニッケル粒子の含有割合は2~80質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本開示の電磁波シールドフィルムは、経済的に優れながら、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[電磁波シールドフィルム]
本開示の電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド層と、上記電磁波シールド層の少なくとも一方の面に設けられた導電性接着剤層とを少なくとも備える。上記電磁波シールドフィルムは、上記電磁波シールド層および上記導電性接着剤層以外の他の層を備えていてもよい。上記他の層としては、上記電磁波シールド層の、上記導電性接着剤層とは反対側に、絶縁層を備えていてもよい。
【0021】
上記電磁波シールドフィルムの一実施形態について、以下に説明する。図1は、上記電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【0022】
図1に示す電磁波シールドフィルム1は、電磁波シールド層2と、電磁波シールド層2の一方の面に隣接して設けられた導電性接着剤層3と、電磁波シールド層2の他方の面に隣接して設けられた絶縁層4とを備える。言い換えると、電磁波シールドフィルム1は、導電性接着剤層3、電磁波シールド層2、および絶縁層4をこの順に備える。
【0023】
(電磁波シールド層)
上記電磁波シールド層は構成材料としてアルミニウムを含む。構成材料としてアルミニウムを含む上記電磁波シールド層としては、アルミニウム層(アルミニウムからなる層)やアルミニウムと他の金属との合金からなる合金層等の金属からなる金属層、これらの層が他の層(フィルムや他の金属層等)の表面に形成されたもの(金属メッキが施された層)などが挙げられる。また、上記アルミニウム層や上記合金層等の金属層を形成する方法は、特に限定されず、例えば、電解、蒸着(例えば真空蒸着)、スパッタリング、化学気相蒸着(CVD)法、有機金属成長(MO)法、メッキ、圧延加工などが挙げられる。上記電磁波シールド層は、単層、複層(例えば、金属めっきが施された層)のいずれであってもよい。
【0024】
上記電磁波シールド層の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上である。上記厚さが0.01μm以上であると、シールド性能がより良好となる。上記厚さは、柔軟性に優れる観点および10MHz以上の高周波信号の伝送特性に優れ電磁波のシールド性能により優れる観点から、12μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。また、アルミニウム層の厚さが上記範囲内であることが好ましい。
【0025】
(導電性接着剤層)
上記導電性接着剤層は、例えば上記電磁波シールドフィルムをプリント配線板に接着するための接着性と導電性を有する。導電性接着剤層は、電磁波シールド層と隣接して形成されていることが好ましい。導電性接着剤層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0026】
上記導電性接着剤層は導電性粒子としてニッケル粒子を含む。電磁波シールド層に用いられるアルミニウムは酸化して表面に酸化膜を形成しやすいが、ニッケル粒子はその硬度等の効果により、上記酸化膜を突き破ることができ、安定して良好な電気的接続を維持することが可能となる。なお、他の柔らかい金属粒子の場合には、突起等を有する形状であっても酸化膜を突き破ることが困難であり、良好な電気的接続を得ることが困難である。上記ニッケル粒子は、一種のみを使用してもよいし、本開示の目的を損なわない範囲内において、二種以上を使用してもよい。
【0027】
上記ニッケル粒子の円形度の平均値は0.85以下であり、好ましくは0.84以下、より好ましくは0.83以下である。上記円形度の平均値は、小さい方が好ましいが、導電性接着剤層の厚さ方向および面方向でより良好な導電性が得られるという観点から、例えば0.60以上、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.75以上である。
【0028】
上記ニッケル粒子の円形度の10%累積値は、0.65以下であり、好ましくは0.64以下、より好ましくは0.63以下である。上記円形度の10%累積値は、小さい方が好ましいが、導電性接着剤層の厚さ方向および面方向でより良好な導電性が得られるという観点から、例えば0.40以上、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.50以上である。
【0029】
円形度は、粒子の投影像と面積が等しい円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値である。また、円形度の10%累積値は、頻度累積を100%とした場合の10%累積に相当する値である。上記円形度に関する各種値は実施例において説明する方法により測定することができる。
【0030】
上記電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド層の構成材料として、銀や銅と比較して安価なアルミニウムを用いることで経済的に優れる。そして、導電性接着剤層中の導電性粒子として、円形度の平均値が0.85以下であり、上記円形度の10%累積値が0.65以下であるニッケル粒子を用いる。上記円形度は、ニッケル粒子の投影像(二次元形状)について円との近さを示す指標であり、高いほど二次元形状は円に近づき、円形度が1.0であるとその形状は真円であることを示す。すなわち、ニッケル粒子の円形度の平均値が0.85以下であることは、ニッケル粒子の二次元形状が真円とはある程度かけ離れていることを示し、ニッケル粒子の円形度の10%累積値が0.65以下であることは、円形度が小さいニッケル粒子の割合がある程度多いことを示す。このようなニッケル粒子を導電性粒子として用いることにより、上記電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド層の構成材料としてアルミニウムを用いながら、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れる。
【0031】
上記ニッケル粒子の平均アスペクト比は、0.70以下であることが好ましく、より好ましくは0.69以下である。上記平均アスペクト比は、例えば0.60以上、好ましくは0.65以上である。
【0032】
上記ニッケル粒子のアスペクト比の10%累積値は、0.50以下であることが好ましく、より好ましくは0.49以下である。上記アスペクト比の10%累積値は、例えば0.35以上、好ましくは0.40以上である。
【0033】
アスペクト比は、投影像におけるニッケル粒子の粒子図形を長方形で囲んだ時の最小長方形を外接長方形とした場合の当該外接長方形の長さと幅の比(縦横比)である。上記平均アスペクト比が0.70以下であることは、上記最小長方形において、長さが幅に対してある程度長いことを示し、上記アスペクト比の10%累積値が0.50以下であることは、アスペクト比が小さいニッケル粒子の割合がある程度多いことを示す。このようなニッケル粒子を導電性粒子として用いた場合、導電性接着剤層中において厚さ方向に延びた導電性粒子同士が接触することで厚さ方向の導電性がより優れることとなる。さらに、導電性接着剤層中において、上記ニッケル粒子が面方向にも配置された結果、電磁波シールド層とグランド回路の接続箇所が増えることで、高熱環境下を経た後において優れたシールド性能を発揮でき、抵抗値を安定させることができることによるものと推測される。上記アスペクト比に関する各種値は、実施例において説明する方法により測定することができる。
【0034】
上記ニッケル粒子の形状はフィラメント状であることが好ましい。フィラメント状のニッケル粒子は、例えば、一次粒子が10個~1000個程度鎖状に連なりフィラメント状の二次粒子を形成している、ニッケルを主成分とする粒子である。上記ニッケル粒子がフィラメント状であると、その形状による効果として、上記酸化膜を突き破ることがより容易となり、高熱環境下を経た後の接続安定性がよりいっそう優れる。
【0035】
上記ニッケル粒子のメディアン径(D50)は、1~30μmであることが好ましく、より好ましくは2~20μm、さらに好ましくは3~13μmである。メディアン径が1μm以上であると、後述する抵抗値が低くなり、シールド性能がより良好となる。メディアン径が30μm以下(特に、13μm以下)であると、導電性接着剤層中において上記ニッケル粒子がより分散し、プリント配線板との接着性がより優れ、高熱環境下を経た後において、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性がより優れる。上記メディアン径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により測定された円相当径である。
【0036】
上記導電性接着剤層におけるニッケル粒子の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、2~60質量%が好ましく、より好ましくは3~50質量%、さらに好ましくは4~40質量%、さらに好ましくは4.5~30質量%、特に好ましくは5~25質量%である。上記含有割合が2質量%以上であると、導電性がより良好となる。また、上記含有割合が30質量%以上と多量に配合した場合であっても、上記電磁波シールドフィルムは、高熱環境下を経た後においてプリント配線板との接着性を発揮し得る。上記含有割合が60質量%以下であると、バインダー成分を充分に含有させることができ、プリント配線板に対する接着性がより良好となる。また、上記含有割合が25質量%以下と比較的少量の配合量であっても、上記電磁波シールドフィルムは、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能および電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性を発揮し得る。
【0037】
上記導電性接着剤層は、接着剤として機能を発揮し得るバインダー成分を含有することが好ましい。上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0038】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0039】
上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性を有する樹脂(熱硬化性樹脂)および上記熱硬化性樹脂を硬化して得られる樹脂の両方が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化型樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0040】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0041】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0042】
上記活性エネルギー線硬化型化合物は、活性エネルギー線照射により硬化し得る化合物(活性エネルギー線硬化性化合物)および上記活性エネルギー線硬化性化合物を硬化して得られる化合物の両方が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化型化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0043】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化型樹脂が好ましい。この場合、電磁波シールドフィルムをプリント配線板上に配置した後、加圧および加熱によりバインダー成分を硬化させることができ、接着性がより良好となる。
【0044】
上記バインダー成分が熱硬化型樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0045】
上記導電性接着剤層におけるバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、40~98質量%が好ましく、より好ましくは50~97質量%、さらに好ましくは60~96質量%、さらに好ましくは70~95.5質量%、特に好ましくは75~95質量%である。上記含有割合が40質量%以上であると、プリント配線板に対する接着性により優れる。上記含有割合が98質量%以下であると、導電性粒子を充分に含有させることができる。
【0046】
上記導電性接着剤層は、必要に応じて等方導電性または異方導電性を有する層とすることができる。上記導電性接着剤層は、中でも、プリント配線板の信号回路で伝送される高周波信号の伝送特性が向上する観点から、異方導電性を有することが好ましい。
【0047】
上記導電性接着剤層は、本開示の効果を損なわない範囲内において、上記の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着剤層に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、導電性接着剤層に含まれる全導電性粒子のうち、円形度の平均値および10%累積値が上述の範囲内であるニッケル粒子の割合は、90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0048】
上記導電性接着剤層の厚さは、3~20μmであることが好ましく、より好ましくは5~15μmである。なお、導電性接着剤層に異方性を持たせるためには、導電性接着剤層の厚さは、上記ニッケル粒子のメディアン径以下とすることが好ましい。この場合、電磁波シールドフィルムとプリント配線板との電気的接続が良好となる。
【0049】
(絶縁層)
上記絶縁層は、上記電磁波シールドフィルムにおいて、上記導電性接着剤層および/または上記電磁波シールド層を保護する機能を有する。
【0050】
上記絶縁層はバインダー成分を含むことが好ましい。上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、および活性エネルギー線硬化型化合物としては、それぞれ、上述の導電性接着剤層が含み得るバインダー成分として例示されたものが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0051】
上記絶縁層は、本開示の効果を損なわない範囲内において、上記バインダー成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0052】
上記絶縁層は、単層であってもよいし複層であってもよい。上記絶縁層が複層である場合、例えば、材質または硬度もしくは弾性率等の物性が異なる2層以上の積層体であってもよい。例えば、硬度が低い外層と、硬度が高い内層との積層体は、外層がクッション効果を有するため、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に加熱加圧する工程において電磁波シールド層に加わる圧力を緩和できる。このため、プリント配線板に設けられた段差によって電磁波シールド層が破壊されることを抑制することができる。
【0053】
上記絶縁層の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~20μmであることが好ましく、より好ましくは2~15μm、さらに好ましくは3~10μmである。上記厚さが1μm以上であると、より充分に電磁波シールド層および導電性接着剤層を保護することができる。上記厚さが20μm以下であると、柔軟性および屈曲性に優れ、また経済的にも有利である。
【0054】
上記電磁波シールドフィルムは、絶縁層側および/または導電性接着剤層側にセパレータ(剥離フィルム)を備えていてもよい。セパレータは、上記電磁波シールドフィルムから剥離可能なように積層される。セパレータは、絶縁層や導電性接着剤層を被覆して保護するための要素であり、電磁波シールドフィルムを使用する際には剥がされる。
【0055】
上記セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが挙げられる。
【0056】
上記セパレータの厚さは、10~200μmであることが好ましく、より好ましくは15~150μmである。上記厚さが10μm以上であると、保護性能により優れる。上記厚さが200μm以下であると、使用時にセパレータを剥離しやすい。
【0057】
上記電磁波シールドフィルムは、さらに、絶縁層と電磁波シールド層の間に、アンカーコート層が形成されていてもよい。このような構成を有する場合、電磁波シールド層と絶縁層の接着性がより良好となる。
【0058】
上記アンカーコート層を形成する材料としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂をシェルとしアクリル系樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。上記材料は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0059】
上記電磁波シールドフィルムの、下記導電性試験により求められる抵抗値(初期抵抗値)は、特に限定されないが、500mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは400mΩ以下、さらに好ましくは300mΩ未満である。上記初期抵抗値が500mΩ以下であると、電磁波シールドフィルムとグランド回路との導通が良好となる。
[導電性試験]
プリント配線板として、ポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランド回路を疑似した2本の銅箔パターンが形成され、その上に絶縁性の接着剤層および厚さ25μmのポリイミドフィルムからなるカバーレイが形成されたプリント配線板を用いる。カバーレイには、直径1mmのグランド接続部を模擬した円形開口部が形成されている。そして、電磁波シールドフィルムとプリント配線板とを、プレス機を用いて温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で60秒間真空引きした後、さらに180秒間加熱加圧して接着し、オーブンで150℃60分の条件で加熱して、2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を抵抗計で測定して抵抗値とする。
【0060】
上記電磁波シールドフィルムの、265℃の熱風に5秒間曝されるような温度プロファイルに設定したリフロー工程を3サイクル通過させた後の、導電性試験により求められる抵抗値(リフロー後抵抗値)は、特に限定されないが、1000mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは700mΩ以下、さらに好ましくは500mΩ未満である。上記抵抗値が1000mΩ以下であると、高温環境下を経た後の電磁波シールドフィルムとグランド回路との導通が良好となる。なお、上記リフロー後抵抗値は、上記リフロー工程を3サイクル通過させた後の電磁波シールドフィルムについて、上記初期抵抗値の導電性試験と同様にして測定される。
【0061】
上記電磁波シールドフィルムの、下記接着性試験により求められる接着力は、特に限定されないが、3.0N/10mm以上が好ましく、より好ましくは3.5N/10mm以上、さらに好ましくは4.0N/10mm超である。上記接着力が3.0N/10mm以上であると、高温環境下を経た後のプリント配線板との接着性に優れる。
[接着性試験]
電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層面に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを貼り合わせ、プレス機を用いて温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で60秒間真空引きした後、さらに180秒間加熱加圧して接着する。その後150℃、60分の条件で加熱処理して、測定サンプルを作製する。次いで測定サンプルを10mm幅にカットし、引張試験機を使用して剥離速度50mm/min、剥離角度180°で、導電性接着剤層とポリイミドフィルムとの界面を剥離することで接着強度を測定して接着力とする。
【0062】
上記電磁波シールドフィルムは、プリント配線板用途であることが好ましく、フレキシブルプリント配線板(FPC)用途であることが特に好ましい。
【0063】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
上記電磁波シールドフィルムの製造方法の一実施形態について説明する。図1に示す電磁波シールドフィルム1の作製においては、まず、絶縁層4および電磁波シールド層2の積層体と、導電性接着剤層3とを個別に作製する。その後、個別に作製された積層体と導電性接着剤層3とを貼り合わせる(ラミネート法)。
【0064】
上記積層体の作製にあたり、絶縁層4は、例えば、絶縁層4形成用の樹脂組成物を、セパレートフィルムなどの仮基材または基材上に塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒および/または一部硬化させて形成することができる。
【0065】
上記樹脂組成物は、例えば、上述の絶縁層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。樹脂組成物の固形分濃度は、形成する絶縁層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0066】
上記樹脂組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0067】
次に、セパレータ上に形成された絶縁層4表面に、電磁波シールド層2を形成する。電磁波シールド層2の形成は、蒸着法またはスパッタリング法により行うことが好ましい。上記蒸着法およびスパッタリング法は、公知乃至慣用の方法が採用できる。このようにして、絶縁層4/電磁波シールド層2の積層体が作製される。
【0068】
一方、導電性接着剤3の作製にあたり、導電性接着剤層3は、例えば、導電性接着剤層3形成用の接着剤組成物を、セパレートフィルムなどの仮基材または基材上に塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒および/または一部硬化させて形成することができる。
【0069】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着剤層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、上述の樹脂組成物が含み得る溶剤として例示されたものが挙げられる。上記接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着剤層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0070】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、上述の樹脂組成物の塗布に用いられるコーターとして例示されたものが挙げられる。
【0071】
次いで、それぞれ作製された積層体の露出面(電磁波シールド層2側)と導電性接着剤層3を貼り合わせ、電磁波シールドフィルム1が作製される。
【0072】
電磁波シールドフィルム1は、上記ラミネート法以外の他の態様として、各層を順次積層する方法で製造してもよい(ダイレクトコート法)。例えば、図1に示す電磁波シールドフィルム1は、上述の積層体の電磁波シールド層2表面に、導電性接着剤層3形成用の接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて脱溶媒および/または一部硬化させて導電性接着剤層3を形成することで製造することができる。
【0073】
上記電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を作製することができる。例えば、上記電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層をプリント配線板(例えば、カバーレイ)に貼り合わせることで、プリント配線板に上記電磁波シールドフィルムが貼り合わされたシールドプリント配線板を得ることができる。上記シールドプリント配線板において、例えばその後の加熱加圧処理によって、上記導電性接着剤層は熱硬化していてもよい。
【実施例
【0074】
以下に、実施例に基づいて本開示の電磁波シールドフィルムの一実施形態についてより詳細に説明するが、本開示の電磁波シールドフィルムはこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0075】
実施例1
(絶縁層の形成)
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(商品名「jER1256」、三菱ケミカル株式会社製)を100質量部、硬化剤(商品名「ST14」、三菱ケミカル株式会社製)を0.1質量部配合し、撹拌混合して樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を、表面を離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面に塗布し、加熱により脱溶媒することで、絶縁層(厚さ6μm)を形成した。
【0076】
(電磁波シールド層の形成)
得られた絶縁層の表面に、蒸着法により厚さが0.1μmのアルミニウム層を形成し、絶縁層と電磁波シールド層との積層体を得た。具体的には、バッチ式真空蒸着装置(商品名「EBH-800」、株式会社アルバック製)内に、絶縁層を形成したPETフィルムを裁置し、アルゴンガス雰囲気中で、真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、マグネトロンスパッタリング法(DC電源出力:3.0kW)により、アルミニウムを0.1μmの厚さとなるように蒸着させた。
【0077】
(導電性接着剤層の形成)
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(商品名「jER1256」、三菱ケミカル株式会社株製)を95質量部、硬化剤(商品名「ST14」、三菱ケミカル株式会社製)を0.1質量部、およびフィラメント状のニッケル粒子(No.1)からなる導電性粒子を5質量部配合し、撹拌混合して接着剤組成物を調製した。なお、使用した導電性粒子の性質は表2に示す通りである。得られた接着剤組成物を、表面を離型処理したPETフィルムの離型処理面に塗布し、加熱により脱溶媒することで、導電性接着剤層(厚さ12μm)を形成した。
【0078】
(電磁波シールドフィルムの作製)
得られた上記導電性接着剤層を、絶縁層および電磁波シールド層からなる上記積層体の電磁波シールド層面と貼り合わせ、導電性接着剤層/電磁波シールド層/絶縁層の構成からなる実施例1の電磁波シールドフィルムを作製した。
【0079】
実施例2~4および比較例1~8
導電性接着剤層におけるニッケル粒子の種類および含有割合を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを作製した。なお、各例において使用した導電性粒子の性質は表2に示す通りである。
【0080】
(評価)
実施例および比較例で得られた各電磁波シールドフィルムについて以下の通り評価した。評価結果は表1に記載した。
【0081】
(1)円形度、アスペクト比、およびメディアン径
導電性粒子の円形度、アスペクト比、およびメディアン径について、フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA-3000」、シスメックス株式会社製)を用いて測定した。具体的には、対物レンズ10倍を用い、明視野の光学システムで、LPF測定モードにて4000~20000個/μlの濃度に調整した導電性粒子分散液で計測した。上記導電性粒子分散液は、0.2質量%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に界面活性剤を0.1~0.5ml加え、測定試料である導電性粒子を0.1±0.01g加えて調製した。導電性粒子が分散した懸濁液は超音波分散器にて1~3分の分散処理を行い測定に供した。測定により得られた導電性粒子の、円形度の平均値、円形度の10%累積値、平均アスペクト比、アスペクト比の10%累積値、およびメディアン径をそれぞれ表2に示した。
【0082】
(2)導電性試験
実施例および比較例で作製した電磁波シールドフィルムを評価用のプリント配線板上に積層し、その後プレス機を用いて、温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で60秒間真空引きした後、さらに180秒間加熱加圧して接着した。その後絶縁層上のPETフィルムを剥離し、オーブンで150℃60分の条件で加熱して、評価用基板を作製した。なお、上記プリント配線板は、互いに間隔をおいて平行に延びる2本の銅箔パターンと、上記銅箔パターンを覆うとともに、ポリイミドからなる絶縁保護層(厚さ:25μm)を有しており、上記絶縁保護層には、各銅箔パターンを露出する開口部(直径:1mm)が設けられている。電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層とプリント配線板とを重ね合わせる際に、この開口部が電磁波シールドフィルムにより完全に覆われるようにした。そして、得られた評価用基板の2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を、抵抗計を用いて測定し、リフロー前のプリント配線板と電磁波シールド層との間の抵抗値(初期抵抗値)とした。
【0083】
次に、リフロー処理を想定した熱処理を行い、リフロー後の電気抵抗値を測定した(リフロー後抵抗値)。この熱処理および電気抵抗値の測定を3回繰り返した。熱処理は鉛フリーハンダの使用を想定し、評価用基板における電磁波シールドフィルムが265℃に5秒間曝されるような温度プロファイルを設定した。そして、初期抵抗値およびリフロー後抵抗値についてそれぞれ下記の評価基準に基づいて評価した。
(初期抵抗値)
○(良好):300mΩ未満
△(可):300mΩ以上500mΩ以下
×(不良):500mΩ超
(リフロー後抵抗値)
○(良好):500mΩ未満
△(可):500mΩ以上1000mΩ以下
×(不良):1000mΩ超
【0084】
(3)接着性
実施例および比較例で作製した電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層面に、厚さ25μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン100EN」、東レデュポン株式会社製)を貼り合わせ、プレス機を用いて温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で60秒間真空引きした後、さらに180秒間加熱加圧して接着した。その後オーブンで150℃、60分の条件で加熱処理して、測定サンプルを作製した。次いで接着強度測定のため、この測定サンプルを10mm幅にカットし、引張試験機(商品名「AGS-X50N」、株式会社島津製作所製)を使用して剥離速度50mm/min、剥離角度180°の条件で、導電性接着剤層とポリイミドフィルムとの界面を剥離することで接着強度を測定した。
○(良好):4.0N/10mm超
△(可):3.0N/10mm以上4.0N/10mm以下
×(不良):3.0N/10mm未満
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
実施例の電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド層としてアルミニウム層を用いた場合において、接着性に優れており、初期抵抗値が低く、そしてリフロー処理後では抵抗値が低かった。このため、実施例の電磁波シールドフィルムは、経済的に優れながら、プリント配線板との接着性に優れ、高熱環境下を経た後において、優れたシールド性能を発揮でき、電磁波シールド層とグランド回路の接続安定性に優れるものと判断された。一方、導電性接着剤層における導電性粒子として、円形度の平均値および10%累積値が特定の値を超えるニッケル粒子を用いた場合(比較例)、導電性粒子の含有割合を変更しても、接着性およびリフロー処理後における抵抗値が両立できるものは得られなかった。
【符号の説明】
【0088】
1 電磁波シールドフィルム
2 電磁波シールド層
3 導電性接着剤層
4 絶縁層
図1