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特許7506154アミン及び/又はニトリルを調製するための電気化学的方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】アミン及び/又はニトリルを調製するための電気化学的方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 3/25 20210101AFI20240618BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240618BHJP
   C25B 3/09 20210101ALI20240618BHJP
   C25B 11/04 20210101ALI20240618BHJP
【FI】
C25B3/25
C25B9/00 G
C25B3/09
C25B11/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022530221
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2019120510
(87)【国際公開番号】W WO2021102611
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュビーデルノク, レナーテ
(72)【発明者】
【氏名】チアン, ファン
(72)【発明者】
【氏名】ストレイフ, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】メティビアー, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】オルベ, ドミニク
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/119337(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110016684(CN,A)
【文献】国際公開第2017/212271(WO,A1)
【文献】Roman Matthessen et al.,“Decarboxylation of a Wide Range of Amino Acids with Electrogenerated Hypobromite”,Eur. J. Org. Chem.,2014年,Volume2014,Issue30,pp.6649-6652
【文献】Jian-Jun Dai et al.,“Electrochemical Synthesis of Adiponitrile from the Renewable Raw Material Glutamic Acid”,ChemSusChem,2012年,Volume5,Issue4,pp.617-620
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 3/25
C25B 9/00
C25B 3/09
C25B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と前記溶媒中で還元形態のメディエータを生成する化合物との存在下でアミノ酸及び/又はその塩をアミン及び/又はニトリルに変換するための電気化学的方法であって、溶媒と、前記溶媒中で還元形態のメディエータを生成する化合物と、アミノ酸及び/又はその塩とを含む溶液中のアミノ酸及び/又はその塩の濃度が0.15モル/L以上であり、前記溶媒中で還元形態のメディエータを生成する前記化合物が鉄塩である、方法。
【請求項2】
前記鉄塩が硫酸鉄(II)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液中の前記アミノ酸及び/又はその塩の濃度が0.15モル/L~2モル/Lの範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液中の前記アミノ酸及び/又はその塩の濃度が0.50モル/L~1.0モル/Lの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液中の、前記溶媒中で還元形態のメディエータを生成する前記化合物の濃度が0.01モル/L~1モル/Lの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液中の、前記溶媒中で還元形態のメディエータを生成する前記化合物の濃度が0.05モル/L~0.2モル/Lの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノ酸が、リシン、システイン、ロイシン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン及びイソロイシンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アミノ酸の前記塩が、塩酸塩の塩、臭化水素酸塩の塩及びヨウ化水素酸塩の塩からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記変換がアノードとカソードの両方を含む反応器内で実施され、前記アノードと前記カソードとの間の距離が1mm~10cmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アノードと前記カソードとの間の距離が3mm~1cmの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アノード及び/又は前記カソードが触媒を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アノードの前記触媒がPtであり、前記カソードの前記触媒がNi又はCuである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応によってアミン及び/又はニトリルを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミンは化学工業に特に重要である。従って、数多くのアミン及びその誘導体が、農薬、薬剤、又は食品添加剤として利用されている。毎年数百万トンのアミンが製造されている。それらは、基本材料、添加剤、染料、及び農薬としてバルクケミカル産業及びファインケミカル産業の両方で広く利用されている。
【0003】
ジアミンは、ポリアミド、ポリイミド、及びポリ尿素を調製するためのモノマーとして使用される。例えば、炭素5個の化合物1,5-ジアミノペンタンは、プラットホーム化学物質として、特に、バイオ系ポリマーのための革新的な構成要素としてますます関心を集めている。現在、化学産業は、石油化学工業からよりバイオ系の産業に向かって移行している。アミノ酸は、α-炭素原子上のカルボン酸基の選択的な除去後の様々な窒素含有バルク化学物質のための興味深い出発材料であり得る。この窒素再循環は、アンモニアを使用する炭化水素の反復的なエネルギー集約的機能化を回避する。
【0004】
Eur.J.Org.Chem.2014,6649-6652には、電気生成次亜臭素酸塩による広範囲のアミノ酸の脱カルボキシル化が開示されている。リシンの脱カルボキシル化によってアミノペンタンニトリル(APN)及びジアミノペンタン(DAP)の最も高い総収率は、93%である。しかしながら、アミノ酸の濃度は非常に低い。不利なことには、低い濃度の反応体は、同時に同じ量を製造するためにより大きめの反応器を必要とし、したがってより多くのCAPEXを必要とする。
【0005】
緩い条件下でより高い選択率及び収率でアミンを調製する産業的に適用可能な且つ効率的方法を開発することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、溶媒と溶媒中で還元形態のメディエータを生成する化合物との存在下でアミノ酸及び/又はその塩をアミン及び/又はニトリルに変換するための電気化学的方法に関し、ここで、溶媒中のアミノ酸及び/又はその塩の濃度は0.15モル/L以上である。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、反応媒体が反応の初めに高い濃度のアミノ酸及び/又はその塩を有するとき、本発明による方法によって得られるアミン及びニトリルの総収率及び選択率は先行技術の場合よりも高い。反応体の濃度を高くすることは、生産高レートを増加させるので平均コストを低減し、小規模生産よりも大規模生産に有利である。
【0007】
定義
特許請求の範囲を含めた本明細書の全体を通して、用語「1つを含む」は、特に明記しない限り、用語「少なくとも1つを含む」と同じ意味であると理解されるべきであり、「~の間」は、その両端を含むと理解されるべきである。
【0008】
本明細書で用いるところでは、有機基に関連して専門用語「(C~C)」(式中、n及びmはそれぞれ整数である)は、基が、1基当たりn個の炭素原子からm個の炭素原子を含有し得ることを示す。
【0009】
本明細書で用いるところでは、専門用語「酸化脱カルボキシル化」反応は、カルボキシレート又はカルボン酸基が取り除かれ、二酸化炭素を形成する酸化反応である。
【0010】
本明細書で用いるところでは、用語「アノード」は、電子がそこから外部回路に移動する電極を意味し、そこで酸化が起こる電極である。
【0011】
本明細書で用いるところでは、用語「カソード」は、電子が外部回路からそこへ移動する電極を意味し、そこで還元が起こる電極である。
【0012】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(即ち少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0013】
用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」の意味及びまた、この用語に関連する要素の他の可能な組み合わせも全て包含する。
【0014】
説明の継続において、特に明記しない限り、端の値は、与えられている値の範囲に含まれることが明記される。
【0015】
比、濃度、量及び他の数値データは、本明細書において範囲形式で示される場合がある。このような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界点として明示的に列挙される数値を包含するだけでなく、それぞれの数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのようにその範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲を包含するように柔軟に解釈されるものと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アミノ酸及び/又はその塩の濃度の上限は特に限定されない。いくつかの実施形態において、それは飽和溶液濃度であり得、特定のアミノ酸又は塩に依存する。好ましくは、溶液中のアミノ酸及び/又はその塩の濃度が0.15モル/L~2モル/L、及びより好ましくは0.50モル/L~1.0モル/Lの範囲である。
【0017】
溶媒はアミノ酸又はその塩と、還元形態のメディエータを生成する化合物との両方の十分な溶解性を有し、それらが溶液中で十分な接触を有するようにできるということは理解されたい。このような溶媒はアルコール、水又はそれらの組合せであり得る。好ましくは、溶媒は水である。
【0018】
本明細書で用いるところでは、「メディエータ」は、電子移動をもたらす酸化還元物質である。本発明において、この物質は、酸化電極とアミノ酸及び/又はその塩との間で電子シャトルとして作用する。酸化電極とアミノ酸及び/又はその塩との間で電子を移動させる原因となり得る限り、メディエータは特に限定されない。
【0019】
溶媒中で還元形態のメディエータを生成する化合物の例は:
- 臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)及び臭化カリウム(KBr)などのアルカリ金属臭化物;
- 塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)などのアルカリ金属塩化物;
- ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)及びヨウ化カリウム(KI)などのアルカリ金属ヨウ化物;
- 臭化アンモニウム(NHBr);
- 硫酸鉄(II)(FeSO)、臭化鉄(II)(FeBr)、塩化鉄(II)(FeCl)、ヨウ化鉄(II)(FeI)、亜硝酸鉄(II)(Fe(NO)、酢酸鉄(II)((CFe)、フェロシアン化カリウム(II)K[Fe(CN)]及びフェロセンなどの鉄塩;
- 硫酸セリウム(III)Ce(SOなどのセリウム塩;
- 硫酸マンガン(II)(MnSO)などのマンガン塩;
- 硫酸銅(II)(CuSO)、臭化銅(II)(CuBr)、塩化銅(II)(CuCl)、ヨウ化銅(II)(CuI)、亜硝酸銅(II)(Cu(NO)及び酢酸銅(II)((CCu)などの銅塩;
- 硫酸コバルト(II)(CoSO)、臭化コバルト(II)(CoBr)、塩化コバルト(II)(CoCl)、ヨウ化コバルト(II)(CoI)、亜硝酸コバルト(II)(Co((NO)及び酢酸コバルト(II)((CCo)などのコバルト塩;
- 硫酸クロム(III)(Cr(SO)、臭化クロム(III)(CrBr)、塩化クロム(III)(CrCl)、ヨウ化クロム(III)(CrI)、亜硝酸クロム(III)(Cr(NO)及び酢酸クロム(III)((CCr)などのクロム塩。
【0020】
いくつかの実施形態において、臭化ナトリウム(NaBr)又は臭化アンモニウム(NHBr)を好ましくは使用することができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、鉄塩などの環境に優しい化合物を好ましくは使用することができる。全ての鉄塩のなかで、硫酸鉄(II)(FeSO)がより好ましい。
【0022】
溶液中で還元形態のメディエータを生成する化合物の濃度は、0.01モル/L~1モル/L及び好ましくは0.05モル/L~0.2モル/Lの範囲である。
【0023】
本発明による方法において、上記の化合物が溶媒中に溶解される時に還元形態のメディエータが得られる。電流が反応器に流される時に酸化形態のメディエータを得るために還元形態のメディエータがアノードで酸化されることは当業者によって理解されるであろう。次に、酸化形態のメディエータは、アミノ酸及び/又はその塩を酸化し、同時に、還元形態のメディエータを形成し、それは、化合物が溶解される時に得られる還元形態のメディエータと同じか又は異なり得る。
【0024】
還元形態のメディエータの例は:
- Br、Cl及びIなどのハロゲンイオン;
- Fe2+、Fe(CN) 4- Mn2+、MnO 2-、Ce3+、Cr3+及びCo2+などの金属イオンである。
酸化形態のメディエータの例は:
- 次亜臭素酸塩(OBr)、次亜塩素酸塩(OCl)及び次亜ヨウ素酸塩(OI)などのハロゲンイオン;
- Fe3+、Fe(CN) 3-、MnO 2-、MnO 、Ce4+、HCrO 及びCo3+などの金属イオンである。
【0025】
本明細書で用いるところでは、「アミノ酸」は、それぞれのアミノ酸に固有の側鎖(R基)と共に、アミン(-NH)及びカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合物である。
【0026】
好ましくは、本発明の方法において使用されるアミノ酸はアルファ-アミノ酸である。
【0027】
本発明による方法において使用されるアミノ酸の例はリシン、システイン、ロイシン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシンである。アミノ酸はとりわけ、リシンなどの2つのアミノ官能基を有することができる。
【0028】
アミノ酸の塩は特に限定されない。それはとりわけ、塩酸塩の塩、臭化水素酸塩の塩又はヨウ化水素酸塩の塩であり得る。
【0029】
酸化脱カルボキシル化によってアミノ酸及び/又はその塩を相当するニトリル又はアミンに変換することは理解されるはずである。例えば、一般式RCH(NH)COOHのアミノ酸反応体、所望の生成物はニトリルRCN又は特定の場合アミンRCHNHである。次に、公知の方法によりニトリルを完全な変換でアミンに水素化することができる。
【0030】
生成物アミンの好ましい例は、1,5-ジアミノペンタン、3-メチルブタン-1-アミン、1-(4-アミノブチル)グアニジン、ヒスタミン、2-メチルブタン-1-アミン、システアミン、ジアミノエチルジスルフィド、2-アミノエタノールである。
【0031】
生成物ニトリルの好ましい例は、5-アミノペンタニトリル、グルタロニトリル、3-メチルブタンニトリル、1-(3-シアノプロピル)グアニジン、2-(1H-イミダゾール-4-イル)アセトニトリル、2-メチルブタンニトリル、ジシアノメチルジスルフィド、2-ヒドロキシアセトニトリルである。
【0032】
式(I)の化合物と還元形態のメディエータを生成する化合物とを含む溶液のpH価は、メディエータに依存し、任意選択的に当業者によって調節される。例えば、式(I)の化合物と鉄塩とを含む溶液のpH価を4未満、好ましくは3未満に調節して水酸化鉄(II)/(III)の形成を防ぐ。式(I)の化合物とアルカリ金属臭化物とを含む溶液のpH価を酸性又は弱塩基性溶液に調節して毒性Brガスの形成を防ぐ。
【0033】
本発明による変換は、アノードとカソードの両方を含むこのような好ましい反応器内で実施される。
【0034】
アノード及び/又はカソードは好ましくは触媒を含む。アノード又はカソードのための触媒は、金属元素を含むことができ、それは元素金属、金属合金、金属酸化物又は金属錯体の形態であり得る。
【0035】
アノード触媒は好ましくは、周期表のIIIA、IVA、VA族の元素及び遷移金属からなる群から選択される元素を含むことができる。
【0036】
本明細書で用いるところでは、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB及びVIIIB族の金属はしばしば遷移金属と称される。この群は、原子番号21~30(Sc~Zn)、39~48(Y~Cd)、72~80(Hf~Hg)及び104~112(Rf~Cn)の元素を含む。
【0037】
アノード触媒の例はとりわけ:
- 元素金属は、Pd、Pt、Ru、Au、Rh、Ir、Bi、Sn、B及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素を含む。
- Pd-Au、Pd-B及びPt-Ruなどの金属合金。
好ましくは、アノード触媒はPtである。
【0038】
カソード触媒は好ましくは、周期表のIA、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA族の元素、遷移金属及びランタニドからなる群から選択される元素を含むことができる。
【0039】
カソード触媒の例はとりわけ:
- 元素金属は、Pt、Ni、Cu、C及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素を含む。
【0040】
好ましくは、カソード触媒はNi又はCu、及びより好ましくはCuである。
【0041】
上記のアノード又はカソードのための触媒を支持体上に配合することができる。支持体は特に限定されない。支持体の典型的な例は炭素、アルミナ及びシリカである。
【0042】
一実施形態において、アノード又はカソードは、上記の触媒と基材とを含むことができる。
【0043】
好ましくは、アノード及びカソードは、多孔性基材構造を有するように製造することができる。
【0044】
アノード基材には、例えば、ステンレス鋼ネット、ニッケルフォーム、焼結ニッケル粉末、エッチングされたアルミニウム-ニッケル混合物、炭素繊維、及び炭素布が含まれ得る。好ましくは、炭素材料及びステンレス鋼がアノード基材として使用される。
【0045】
カソード基材には、ステンレス鋼、ニッケルフォーム、焼結ニッケル粉末、エッチングされたアルミニウム-ニッケル混合物、金属篩、炭素繊維、及び炭素布が含まれ得る。
【0046】
アノード触媒をアノード基材に、及びカソード触媒をカソード基材に適用するための方法には、例えば、塗布、湿式噴霧、粉末堆積、電着、蒸着、乾式噴霧、デカリング(decaling)、塗装、スパッタリング、低圧蒸着、電気化学蒸着、テープキャスティング、スクリーン印刷、熱圧及びその他の方法が含まれる。
【0047】
基材が使用されるとき、好ましい範囲の触媒配合量は、0.01mg/cm-2~500mg/cm-2の間に含まれ得る。より好ましくは、触媒配合量は、1mg/cm-2~20mg/cm-2の間に含まれ得る。
【0048】
一実施形態において、本発明による方法において使用される電気化学反応器は、2つの独立した区画を有する。アノード及びカソードは、これらの2つの区画に別々に存在する。膜を2つの区画の間に置くことができる。前記膜は中性膜又はイオン交換膜であり得る。好ましくは、膜はナフィオン(スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー-コポリマー)カチオン交換膜である。
【0049】
有利には、アノードとカソードとの間の距離が1mm~10cm、及び好ましくは3mm~1cmの範囲である。
【0050】
好ましくは、反応温度は、0℃~100℃、及びより好ましくは10℃~50℃、及び最も好ましくは室温であり得る。
【0051】
本発明によると、室温は15℃~25℃の間である。
【0052】
好ましくは、反応は、0.1mA/cm~150mA/cm、及び好ましくは10mA/cm~20mA/cmの範囲の電流密度で行われ得る。
【0053】
好ましくは、反応は、0.0001V~10V、より好ましくは1.5V~4Vの範囲の電位で行われ得る。
【0054】
当業者は、上記の反応パラメーターに基づいた適切な反応時間を用いるであろう。反応時間は10時間~100時間、及び好ましくは10時間~80時間であり得る。
【0055】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために含められる。言うまでもなく、本発明は、記載される実施例に限定されない。
【0056】
実験の部
原材料
- 臭化ナトリウム:CASNo7647-15-6、Sigma-Aldrichから
- 硫酸鉄(II)七水和物:CASNo7782-63-0、Sigma-Aldrichから
- L-リシン一塩酸塩:CASNo657-27-2、Sigma-Aldrichから
- 硫酸:CASNo7664-93-9、Sinopharmから
【0057】
実施例1(比較例)
・回分反応器として、10mlのガラス容器(直径2.5cm)を使用する。Ptコイル(コイル=高さ0.5cm、直径1cm、円周=3.1cm、表面積=1.6cm)がアノードとして機能する。カソードとしてNiフォームを円筒形状に曲げる(サイズ=5.5cm×5.5cm-反応器から外に達するのに十分な長さ)。それを円筒形状に曲げ、円筒形フォーム(直径=2cm)の周りに巻きつける。カソード表面積=5.5cm×0.5cm(Ptコイルの高さ)=2.75cm。コイルの上のPtワイヤーにおける電気化学反応を防ぐためにワイヤーをPTFEチューブによって絶縁し、スペーサーを貫通させてPt電極を所定の位置に保持する。Ptコイルを見ることができるようにNiカソードは隙間を開いたままにする。両方の電極間の距離は3mmである。
・参照電極と撹拌は使用しない。
・反応器にリシン一塩酸塩(0.14M)及びNaBr(0.19M)の溶液6mlを入れる。測定されたpHは約6である。
・反応パラメーター:全実験時間:7時間、電流=41mA(アノード側の15mA/cmの電流密度に等しい)。
・反応中に、試料を取り出してNMRで分析する。結果を表1にまとめる。
【0058】
実施例2(臭化物メディエータ、0.28Mのリシン一塩酸塩、Niカソード)
・回分反応器として、10mlのガラス容器(直径2.5cm)を使用する。Ptコイル(コイル=高さ0.5cm、直径1cm、円周=3.1cm、表面積=1.6cm)がアノードとして機能する。カソードとしてNiフォームを円筒形状に曲げる(サイズ=5.5cm×5.5cm-反応器から外に達するのに十分な長さ)。それを円筒形状に曲げ、円筒形フォーム(直径=2cm)の周りに巻きつける。カソード表面積=5.5cm×0.5cm(Ptコイルの高さ)=2.75cm。コイルの上のPtワイヤーにおける電気化学反応を防ぐためにワイヤーをPTFEチューブによって絶縁し、スペーサーを貫通させてPt電極を所定の位置に保持する。Ptコイルを見ることができるようにNiカソードは隙間を開いたままにする。両方の電極間の距離は3mmである。
・参照電極と撹拌は使用しない。
・反応器に5mlのリシン一塩酸塩(0.28M)及びNaBr(0.14M)を入れる。測定されたpHは約6である。
・反応パラメーター:全実験時間:14時間、電流=41mA(アノード側の15mA/cmの電流密度に等しい)。
・反応中に、試料を取り出してNMRで分析する。結果を表1にまとめる。
【0059】
実施例3(臭化物メディエータ、1Mのリシン一塩酸塩、Niカソード)
・回分反応器として、10mlのガラス容器(直径2.5cm)を使用する。Ptコイル(コイル=高さ0.5cm、直径1cm、円周=3.1cm、表面積=1.6cm)がアノードとして機能する。カソードとしてNiフォームを円筒形状に曲げる(サイズ=5.5cm×5.5cm-反応器から外に達するのに十分な長さ)。それを円筒形状に曲げ、円筒形フォーム(直径=2cm)の周りに巻きつける。カソード表面積=5.5cm×0.5cm(Ptコイルの高さ)=2.75cm。コイルの上のPtワイヤーにおける電気化学反応を防ぐためにワイヤーをPTFEチューブによって絶縁し、スペーサーを貫通させてPt電極を所定の位置に保持する。Ptコイルを見ることができるようにNiカソードは隙間を開いたままにする。両方の電極間の距離は3mmである。
・参照電極と撹拌は使用しない。
・反応器に5mlのリシン一塩酸塩(1M)及びNaBr(0.14M)を入れる。測定されたpHは約6である。
・反応パラメーター:全実験時間:72時間、電流=41mA(電流密度=15mA/cm)。
・反応中に、試料を取り出してNMRで分析する。結果を表1にまとめる。
【0060】
実施例4(臭化物メディエータ、2Mのリシン一塩酸塩(飽和)、Cuカソード)
・回分反応器として、10mlのガラス容器(直径2.5cm)を使用する。Ptコイル(高さ=1.5cm、直径=1cm、円周=3.1cm、表面積=4.7cm)がアノードとして機能する。カソードとしてCuフォームを円筒形状に曲げる(サイズ=5.5cm×5.5cm-反応器から外に達するのに十分な長さ)。それを円筒形状に曲げ、円筒形フォーム(直径=2cm)の周りに巻きつける。カソード表面積=5.5cm×0.5cm(Ptコイルの高さ)=2.75cm。コイルの上のPtワイヤーにおける電気化学反応を防ぐためにワイヤーをPTFEチューブによって絶縁し、スペーサーを貫通させてPt電極を所定の位置に保持する。Ptコイルを見ることができるようにCuカソードは隙間を開いたままにする。両方の電極間の距離は3mmである。
・参照電極と撹拌は使用しない。
・反応器に8mlのリシン一塩酸塩(2M)及びNaBr(0.2M)を入れる。測定されたpHは約6である。
・反応パラメーター:全実験時間:31時間、電流=113mA(15mA/cm)。
・反応中に、試料を取り出してNMRで分析する。結果を表1にまとめる。
【0061】
実施例5(Fe3+\Fe2+メディエータ、1Mのリシン一塩酸塩、Cuカソード)
・回分反応器として、20mlのガラス反応器を使用する。Pt円筒形メッシュ(高さ=2cm、直径=1cm、円周=3.1cm、表面積=6.3cm)がアノードとして機能する。カソードとしてCuフォームを円筒形状に曲げる(厚さ=2cm、サイズ=4cm×8cm-反応器から外に達するのに十分な長さ)。それを円筒形状に曲げ、円筒形ポリマーフォーム(直径=2cm)の周りに巻きつける。カソード表面積=4cm×2cm(Ptコイルの高さ)=8cm。コイルの上のPtワイヤーにおける電気化学反応を防ぐためにワイヤーをPTFEチューブによって絶縁し、スペーサーを貫通させてPt電極を所定の位置に保持する。Pt電極を見ることができるようにCuカソードは隙間を開いたままにする。
・参照電極と撹拌は使用しない。両方の電極間の距離は3mmである。
・反応器に、1Mのリシン一塩酸塩と0.14Mの硫酸鉄七水和物とを含有する10mlの反応溶液を入れる。10ml溶液を調製する間、1M硫酸でpHを1に調節する。
・反応パラメーター:総反応時間は96時間である。電流=120mA(アノード側の15mA/cmの電流密度に等しい)。
・反応中に、試料を取り出してNMRで分析する。結果を表1にまとめる。
【0062】
【表1】