(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂及びそれを含む光学部材
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240618BHJP
C08G 63/13 20060101ALI20240618BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20240618BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G63/13
C08G64/04
G02B1/00
(21)【出願番号】P 2022558985
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037853
(87)【国際公開番号】W WO2022091780
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020179567
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】梅木 篤志
(72)【発明者】
【氏名】真野 稜大
(72)【発明者】
【氏名】柳田 高恒
(72)【発明者】
【氏名】友成 安彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬介
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175663(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/170691(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008483(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176874(WO,A1)
【文献】特開2018-177887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
G02B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される単位を含む熱可塑性樹脂(A)、および式(2)で表される単位を含む熱可塑性樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂組成物
であって、前記式(1)のWが式(3)もしくは式(4)を含み、前記熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の質量比率(A:B)が20:80~99:1であり、ISO179に従って測定されたノッチなしシャルピー衝撃強度が25J/m
2
以上である、熱可塑性樹脂組成物。
【化1】
{式(1)中、L
1及びL
2は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、k及びlはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基
のいずれかを示し、Wは2価の連結基を示す。}
【化2】
{式(2)中、L
3及びL
4はそれぞれ独立に、2価の連結基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基
のいずれかを示す。}
【化3】
{式(3)中、L
5
及びL
6
は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、o及びpは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、R
9
、R
10
、R
11
及びR
12
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基のいずれかを示す。}
【化4】
{式(4)中、環Zは同一又は異なって芳香族炭化水素環を示し、L
7
及びL
8
は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、q及びrはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R
13
、R
14
、R
15
及びR
16
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基のいずれかを示す。}
【請求項2】
前記式(4)のZがナフタレン環である請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
3mm厚みで測定した際のヘーズが、0.5%以下である、請求項
1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
屈折率が1.645~1.690である請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
配向複屈折が4.5×10
-3以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(A)がポリエステルカーボネート樹脂である請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂(B)がポリエステルカーボネート樹脂、または、ポリカーボネート樹脂である請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱可塑性樹脂、及びそれにより形成される光学部材、特に光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の機器には、撮像モジュールが用いられている。この撮像モジュールに用いられる光学系では、小型化が求められている。光学系を小型化していくと光学系の色収差が大きな問題となる。そこで、屈折率を高く、かつアッベ数を小さくして高分散にした光学レンズと、屈折率を低く、かつアッベ数を大きくして低分散にした光学レンズとを組み合わせることで、色収差の補正が行われている。
【0003】
特許文献1には、式(M)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂、および式(N)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物を各比率で混錬しても、色相及びヘーズを悪化させることなく、低屈折率、高アッベ数のポリカーボネート樹脂が得られることが記載されている。
【0004】
【0005】
【0006】
特許文献2には、式(P)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂と、式(Q)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を混錬したポリカーボネート樹脂組成物が記載されており、該樹脂組成物は高屈折率であり、成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらいことが記載されている。
【0007】
【0008】
【0009】
なかでも、近年の急速な技術革新に伴って、高屈折率樹脂に注目が集まっており、さらなる高屈折率化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2018/181157号公報
【文献】国際公開第2015/166951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の目的は、高屈折率でヘーズが小さく、さらに低複屈折、耐熱性と成型性のバランスに優れ、シャルピー衝撃強度が高く、低吸水性を示す、幅広い高屈折率帯の材料を効率よく製造し、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
式(1)で表される単位を含む熱可塑性樹脂(A)、および式(2)で表される単位を含む熱可塑性樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
【0014】
{式(1)中、L1及びL2は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、k及びlはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示し、Wは2価の連結基を示す。}
【0015】
【0016】
{式(2)中、L3及びL4はそれぞれ独立に、2価の連結基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。}
《態様2》
前記式(1)のWが式(3)もしくは式(4)を含む態様1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0017】
【0018】
{式(3)中、L5及びL6は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、o及びpは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、R9、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。}
【0019】
【0020】
{式(4)中、環Zは同一又は異なって芳香族炭化水素環を示し、L7及びL8は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、q及びrはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。}
《態様3》
前記式(4)のZがナフタレン環である態様2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様4》
3mm厚みで測定した際のヘーズが、0.5%以下である、態様1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様5》
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の質量比率(A:B)が1:99~99:1である態様1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様6》
屈折率が1.645~1.690である態様1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様7》
配向複屈折が4.5×10-3以下である、態様1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様8》
ノッチなしシャルピー衝撃強度が25J/m2以上である態様1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様9》
熱可塑性樹脂(A)がポリエステルカーボネート樹脂である態様1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様10》
熱可塑性樹脂(B)がポリエステルカーボネート樹脂、または、ポリカーボネート樹脂である態様1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
《態様11》
態様1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学部材。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高屈折率、低複屈折、耐熱性と成型性のバランスに優れ、ヘーズが小さく、シャルピー衝撃強度が高く、低吸水性を示す、幅広い高屈折率帯の材料を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
《熱可塑性樹脂(A)》
本発明における熱可塑性樹脂(A)は、上記式(1)で表される構成単位を含む。
【0023】
上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示し、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基を挙げられる。
【0024】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
【0025】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル基などが挙げられる。
【0026】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、キシリル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0027】
R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましく、水素原子又は、フェニル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0028】
上記式(1)中、L1及びL2は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、炭素数1~4のアルキレン基などが挙げられ、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0029】
上記式(1)中、k及びlはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、好ましくは0~2を示し、より好ましくは1を示す。
【0030】
上記式(1)中、Wは2価の連結基を示し、好ましくは上記式(3)もしくは上記式(4)を示す。
【0031】
上記式(1)において、1,1’-ビナフチル骨格は、屈折率を向上させると共に、二つナフタレン環を結ぶ結合軸で直行するような立体配座になっているため、複屈折を低減させる効果がある。
【0032】
上記式(3)中、R9、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示し、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基を挙げることができる。
【0033】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
【0034】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル基等が挙げられる。
【0035】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、キシリル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0036】
R9~R12は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましく、水素原子又は、フェニル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0037】
上記式(3)中、L5及びL6は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、炭素数1~4のアルキレン基などが挙げられ、好ましくはエチレン基、またはプロピレン基を示し、より好ましくはエチレン基を示す。
【0038】
o及びpは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、好ましくは0~2、より好ましくは1を示す。
【0039】
上記式(3)において、1,1’-ビナフチル骨格は、屈折率を向上させると共に、二つナフタレン環を結ぶ結合軸で直行するような立体配座になっているため、複屈折を低減させる効果がある。
【0040】
上記式(4)中、Zは同一又は異なって芳香族炭化水素環を示し、ナフタレン環、ベンゼン環などが挙げられ、ナフタレン環が好ましい。
【0041】
R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示し、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基を挙げることができる。
【0042】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
【0043】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル基等が挙げられる。
【0044】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、キシリル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0045】
R13~R16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましく、水素原子又は、フェニル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0046】
L7及びL8は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、炭素数1~4のアルキレン基などが挙げられ、好ましくはエチレン基、またはプロピレン基を示し、より好ましくはエチレン基を示す。
【0047】
q及びrは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、好ましくは0~2示し、より好ましくは1を示す。
【0048】
上記式(4)において、カルド構造を有するため、高耐熱を示し、かつ複屈折を低減させる効果がある。
【0049】
熱可塑性樹脂(A)は上記式(1)で表される単位を単独で含んでもよく、又は二種以上組み合わせて含んでもよい。例えば、上記式(1)において、Wが上記式(3)である単位と、Wが上記式(4)である単位を共に含んでもよい。
【0050】
熱可塑性樹脂(A)としては、ポリエステル樹脂、または、ポリエステルカーボネート樹脂が好ましく、ポリエステルカーボネート樹脂がより好ましい。
《上記式(1)で表される単位に使用するジカルボン酸成分》
本発明の熱可塑性樹脂の上記式(1)で表される単位に使用するジカルボン酸成分は、主に式(a)で表される化合物、またはそのエステル形成性誘導体である。
【0051】
【0052】
上記式(1)の原料となるジカルボン酸成分の上記式(a)において、L1、L2、k、l、R1~R4は上記式(1)の各式と同様である。
【0053】
具体的には、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-カルボキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-カルボキシプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-カルボキシ-2-メチルプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(4-カルボキシフェニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルが挙げられ、なかでも2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-カルボキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-カルボキシプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-カルボキシ-2-メチルプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(4-カルボキシフェニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルが好ましく、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルがより好ましい。
【0054】
これらは単独で使用しても良く、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エステル形成性誘導体としては酸クロライドや、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル等のエステル類を用いてもよい。
《上記式(1)で表される単位に使用するジオール成分》
本発明の熱可塑性樹脂の上記式(1)のWで表される単位に使用されるジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン、下記式(b)、下記式(c)が挙げられ、なかでも9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、式(b)及び式(c)が好ましく、式(b)及び式(c)がより好ましい。
【0055】
【0056】
ジオール成分の上記式(b)において、L5、L6、o、p、R9~R12は上記式(3)の各式と同様である。
【0057】
【0058】
ジオール成分の上記式(c)において、L7、L8、q、r、R13~R16は上記式(4)の各式と同様である。
【0059】
上記式(b)は、具体的に、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトール、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ジヒドロキシ-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ジヒドロキシ-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル等が好ましく挙げられ、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチルが好ましく、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルがさらに好ましい。
【0060】
これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記式(c)は、具体的に、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジメチルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジメチルフルオレン、9,9-ビス(6-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジメチルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン等が好ましく挙げられる。なかでも9,9-ビス(6-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンが好ましく、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレンがより好ましい。
【0062】
これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
《上記式(1)以外の共重合成分》
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、上記の本発明の有利な効果が得られる範囲で、上記式(1)で表される繰返し単位以外の繰返し単位を含んでいてもよい。本発明における熱可塑性樹脂(A)に占める上記式(1)で表される構成単位の割合は、50mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましい。上記式(1)で表される繰返し単位以外の繰返し単位として、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエステルカーボネートがあり、それらのジカルボン酸成分及びジオール成分を下記に示す。
【0063】
ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレン等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が挙げられ、これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。また、エステル形成性誘導体としては酸クロライドや、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル等のエステル類を用いてもよい。
【0064】
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトール、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ジヒドロキシ-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ジヒドロキシ-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン等が挙げられ、これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
《熱可塑性樹脂(B)》
本発明における熱可塑性樹脂(B)は、上記式(2)で表される構成単位を含む。
【0065】
上記式(2)中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を示し、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基を挙げることができる。
【0066】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
【0067】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル基等が挙げられる。
【0068】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、キシリル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0069】
R5~R8は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましく、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又は、フェニル基であり、R7及びR8は、水素原子であることがさらに好ましい。
【0070】
上記式(2)中、L3及びL4は、それぞれ独立に、2価の連結基を示し、炭素数1~4のアルキレン基などが挙げられ、好ましくはエチレン基、またはプロピレン基を示し、より好ましくはエチレン基を示す。
【0071】
上記式(2)中、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、好ましくは0~2示し、より好ましくは1を示す。
【0072】
熱可塑性樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂、または、ポリエステルカーボネート樹脂が好ましい。
《上記式(2)で表される単位に使用するジオール成分》
本発明の熱可塑性樹脂の上記式(2)で表される単位に使用されるジオール成分としては、主に式(d)で表される原料が好ましく用いられる。
【0073】
【0074】
上記式(2)の原料となるジオール成分の上記式(d)において、L3、L4、m、n、R5~R8は上記式(2)の各式と同様である。
【0075】
具体的には、9-ビス(4-(ヒドロキシメトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(ヒドロキシメトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(ヒドロキシメトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、が挙げられ、なかでも9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、が好ましく、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンがより好ましい。
【0076】
《上記式(2)以外の共重合成分》
本発明における熱可塑性樹脂(B)は、上記式(2)で表される構成単位を有するが、本発明による効果を損なわない範囲で他の構成単位を含んでも良い。本発明における熱可塑性樹脂(B)に占める上記式(2)で表される構成単位の割合は、70mol%以上であることが好ましく、80mol%以上であることがより好ましい。その他の繰返し単位として、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエステルカーボネートが好ましく、それらを構成するジカルボン酸成分及びジオール成分を下記に示す。
【0077】
本発明における熱可塑性樹脂(B)に含んでもよい他のジカルボン酸成分、ジオール成分を下記に示す。ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレン等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が挙げられ、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレンが好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。また、エステル形成性誘導体としては酸クロライドや、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル等のエステル類を用いてもよい。
【0078】
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン等が例示され、これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
《熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)の製造方法》
本発明の熱可塑性樹脂は、例えばジオール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法やジオール成分にジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を反応させる方法等により製造される。以下にその具体例を示す。
《ポリエステル樹脂の製造方法》
ポリエステル樹脂は、一般にジオール成分とジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体とをエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすることで製造される。
【0079】
重合方法としては、直接重合法、エステル交換法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の公知の方法から適宜の方法を選択して製造できる。
【0080】
界面重合法を用いる場合、ジカルボン酸クロリドを水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、芳香族ジオールおよび重合触媒を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下、好ましくは25℃以下の温度で0.5~8時間撹拌しながら重合反応を行う方法が好ましく挙げられる。
【0081】
有機相に用いる溶媒としては、水と相溶せず本発明のポリエステル樹脂を溶解する溶媒が好ましい。そのような溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素系溶媒が好ましく挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンがより好ましい。
【0082】
水相に用いるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液が好ましく挙げられる。
【0083】
溶融重合法による反応は、通常、ジオール成分とジカルボン酸成分またはそのジエステルを混合し、好ましくは120~350℃、より好ましくは150~300℃、さらに好ましくは180~270℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には0.13kPa以下にして生成した水、アルコール等のヒドロキシ化合物を系外に留去させることができる。反応時間は通常1~10時間程度が好ましい。
【0084】
また、溶融法において重合速度を速めるためにエステル交換触媒、および重合触媒を用いることができる。エステル交換触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、マンガン、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、コバルト、ナトリウム、リチウム、鉛元素を含む化合物などを好ましく用いることができる。具体的にはこれらの元素を含む酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等がより好ましく挙げることができる。この中でも、ポリエステル樹脂の溶融安定性、色相、樹脂不溶異物の少なさの観点からマンガン、マグネシウム、亜鉛、チタン、コバルトの酸化物、酢酸塩、アルコラート等の化合物がさらに好ましい。これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。重合触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物またはアルミニウム化合物が好ましい。このような化合物としては、例えばアンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウムの酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等を好ましく挙げることができる。また、これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。
【0085】
重合触媒の使用量は、全モノマー単位の合計1molに対して、1×10-8~1×10-3molの範囲が好ましい。
【0086】
本発明で使用されるポリエステル樹脂は、分子量調整や熱安定性向上のため、末端封止剤を使用しても良い。末端封止剤としては、単官能ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、ケテンイミン化合物等が好ましく挙げられる。
【0087】
本発明で使用されるポリエステル樹脂には、ジオール成分とジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体以外の共重合成分を含有させてもよい。
《ポリカーボネート樹脂の製造方法》
ポリカーボネート樹脂は、一般にジヒドロキシ化合物に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。
【0088】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下、所定割合のジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0089】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6~12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネート等が例示される。なかでも特に、ジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1molに対して、好ましくは0.95~1.10mol、より好ましくは0.98~1.04molである。
【0090】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、等が挙げられる。
【0091】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0092】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0093】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
【0094】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0095】
その他のエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウムの塩が挙げられ、例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)チタンテトラブトキシド(IV)等が用いられる。国際公開第2011/010741号及び特開2017-179323号公報において使用されている触媒を用いてもよい。
【0096】
さらに、アルミニウム又はその化合物とリン化合物とからなる触媒を用いてもよい。その場合、使用する全モノマー単位の合計1molに対して、8×10-5mol以上、9×10-5mol以上、1×10-4mol以上であってもよく、1×10-3mol以下、8×10-4mol以下、6×10-4mol以下で使用することができる。
【0097】
アルミニウム塩としては、アルミニウムの有機酸塩及び無機酸塩を挙げることができる。アルミニウムの有機酸塩としては、例えば、アルミニウムのカルボン酸塩を挙げることができ、具体的にはギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、及びサリチル酸アルミニウムを挙げることができる。アルミニウムの無機酸塩としては、例えば、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びホスホン酸アルミニウムを挙げることができる。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、及びアルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキシドを挙げることができる。
【0098】
リン化合物としては、例えば、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、及びホスフィン系化合物を挙げることができる。これらの中でも特に、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、及びホスフィンオキサイド系化合物を挙げることができ、特にホスホン酸系化合物を挙げることができる。
【0099】
これらの重合触媒の使用量は、ジヒドロキシ成分1molに対し好ましくは0.1μmol~500μmol、より好ましくは0.5μmol~300μmol、さらに好ましくは1μmol~100μmolである。
【0100】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0101】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0102】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1mol当たり好ましくは0.5~50molの割合で、より好ましくは0.5~10molの割合で、更に好ましくは0.8~5molの割合で使用することができる。
《ポリエステルカーボネート樹脂の製造方法》
ポリエステルカーボネート樹脂は一般に、ジヒドロキシ化合物に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質とジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を重縮合反応させる方法により製造される。
【0103】
ジヒドロキシ化合物、ジカルボン酸又はその酸クロライドとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤及び溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp-tert-ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0~40℃、反応時間は数分~5時間が好ましい。
【0104】
エステル交換反応では、不活性ガス雰囲気下にジヒドロキシ化合物とジカルボン酸又はそのジエステルとビスアリールカーボネートを混合し、減圧下通常120~350℃、好ましくは150~300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1~4時間程度である。また、エステル交換反応では反応促進のために重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としてはアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又は重金属化合物を主成分として用い、必要に応じて更に含窒素塩基性化合物を従成分として用いるのが好ましい。
【0105】
アルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0106】
含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0107】
その他のエステル交換触媒としては、上記のポリカーボネートの製造方法において、エステル交換触媒として挙げた触媒を同様に使用することができる。
【0108】
重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01~50倍mol、好ましくは0.3~20倍mol使用される。触媒量に対して0.01倍molより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍molより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0109】
触媒失活後、熱可塑性樹脂中の低沸点化合物を13.3~133Paの圧力、200~320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
《熱可塑性樹脂組成物》
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)を含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物は本発明による効果を損なわない範囲で他の樹脂を含んでもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物に占める上記熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)の合計の割合は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%であることがより好ましい。
【0110】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との質量比率(A:B)が、1:99~99:1であることが好ましく、20:80~99:1であることがより好ましく、30:70~99:1であることがさらに好ましく、60:40~90:10であることが特に好ましい。
【0111】
上記範囲であれば、高屈折率及び低アッベ数でありながら、高衝撃強度の熱可塑性樹脂が得られる。
【0112】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜添加して樹脂組成物として用いることができる。具体的な離型剤、熱安定剤としては、国際公開2011/010741号パンフレットに記載されたものが好ましく挙げられる。
【0113】
特に好ましい離型剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。また、離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100質量%とした時、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物に配合させる離型剤としては、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.005~2.0質量部の範囲が好ましく、0.01~0.6質量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重質量の範囲がさらに好ましい。
【0114】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
【0115】
また、特に好ましいリン系の熱安定剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが使用される。また、熱可塑性樹脂組成物へのリン系熱安定剤の配合量としては、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.001~0.2質量部が好ましい。
【0116】
また、特に好ましい硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)である。また、熱可塑性樹脂組成物への硫黄系熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.001~0.2質量部が好ましい。
【0117】
また、好ましいヒンダードフェノール系熱安定剤としては、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0118】
熱可塑性樹脂組成物中のヒンダードフェノール系熱安定剤の配合量としては、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.001~0.3質量部が好ましい。
【0119】
リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
【0120】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0121】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、より好ましくは、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]である。
【0122】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0123】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2.4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0124】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、特に2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)が好適である。
【0125】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、及び1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0126】
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して好ましくは0.01~3.0質量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂組成物の成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0127】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及び3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0128】
酸化防止剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.50質量部以下であることが好ましく、0.05~0.40質量部であることがより好ましく、0.05~0.20質量部あるいは0.10~0.40質量部であることが更に好ましく、0.20~0.40質量部であることが特に好ましい。
《熱可塑性樹脂組成物の製造方法》
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に制限は無く、例えば、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)のそれぞれの固体を混合し、混練機により混錬する方法、溶融状態の熱可塑性樹脂(A)に固体の熱可塑性樹脂(B)を添加して混錬する方法、固体の熱可塑性樹脂(B)に固体の熱可塑性樹脂(A)を添加して混錬する方法、溶融状態の熱可塑性樹脂(A)と溶融状態の熱可塑性樹脂(B)とを混合して混錬する方法、のいずれの方法によっても製造することができる。
【0129】
混錬は、連続式、バッチ式のどちらでもよい。混錬機は連続式ならば押出機が好適であり、バッチ式ならばラボプラスとみる、及びニーダーが好適に使用される。
《熱可塑性樹脂組成物の物性》
本発明の熱可塑性樹脂組成物の屈折率は、温度:20℃、波長:589nmで測定した場合に、1.645以上であり、1.650以上、1.655以上、1.660以上、1.665以上、1.667又は1.670以上であってもよく、1.690以下であり、1.685以下、又は1.680以下であってもよい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂の屈折率は、1.645~1.690であり、1.650~1.690が好ましく、1.655~1.690がより好ましく、1.660~1.690がさらに好ましく、1.665~1.690が特に好ましく、1.667~1.685が最も好ましい。屈折率が下限以上の場合、光学レンズの球面収差を低減でき、さらに光学レンズの焦点距離を短くすることができる。
【0130】
本発明の熱可塑性樹脂組成物のアッベ数は、10.0以上、11.0以上、12.0以上、13.0以上、又は14.0以上であってもよく、30.0以下、29.0以下、28.0以下、27.0以下、26.0以下、又は25.0以下であってもよい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物のアッベ数は、15.0~25.0、16.0~24.0、17.0~23.0、18.0~22.0であってもよい。
【0131】
ここで、アッベ数は、温度:20℃、波長:486.13nm、587.56nm、656.27nmの屈折率から、下記式を用いて算出する:
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長587.56nmでの屈折率、
nF:波長486.13nmでの屈折率、
nC:波長656.27nmでの屈折率を意味する。
【0132】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の配向複屈折(Δn)の絶対値は、4.6×10-3以下であることが好ましく、4.4×10-3以下であることがより好ましく、4.2×10-3以下であることがさらに好ましい。配向複屈折が上記範囲内だと、色収差に大きな影響を与えないため、光学設計通りの性能を維持することができる。配向複屈折(Δn)は、その熱可塑性樹脂から得られる厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸した後に、波長589nmにおいて測定する。
【0133】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、3mm厚のヘーズが、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。ヘーズが上記範囲内であると各種透明部材としての使用範囲が限定されず好ましい。
【0134】
本発明における熱可塑性樹脂組成物の粘度平均分子量は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、5,000以上、6,000以上、又は7,000以上であってもよく、25,000以下、20,000以下、又は15,000以下であってもよい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の粘度平均分子量は、6,000~20,000であってもよく、7,000~15,000であってもよい。
【0135】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の23℃、24時間浸漬後の吸水率が0.01質量%以上、0.04質量%以上、0.07質量%以上、0.10質量%以上であってもよく、0.30質量%以下、0.25質量%以下、0.20質量%以下であってもよい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の吸水率が0.01質量%~0.30質量%であることが好ましく、0.04質量%~0.25質量%であることがより好ましく、0.07質量%~0.25質量%であることがさらに好ましく、0.07質量%~0.20質量%であることが特に好ましい。吸水率が上記範囲内であると、吸水による光学特性の変化が小さいため好ましい。
【0136】
本発明の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度は、130℃以上、135℃以上、140℃以上、又は145℃以上であってもよく、170℃以下、165℃以下、160℃以下であってもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度は、130℃~170℃が好ましく、135℃~165℃がより好ましく、140℃~160℃がさらに好ましく、145℃~160℃が特に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
【0137】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ISO179に従って測定されたノッチなしシャルピー衝撃強度を測定した値が、25J/m2以上であることが好ましく、27J/m2以上であることがより好ましく、29J/m2以上であることが特に好ましい。なお、ノッチなしシャルピー衝撃強度は上記範囲内であると連続成型において、スプルー、ランナーの折れの発生を抑えられる。
《光学部材》
本発明の光学部材は、上記の熱可塑性樹脂組成物を含む。そのような光学部材としては、上記の熱可塑性樹脂組成物が有用となる光学用途であれば、特に限定されないが、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等を挙げることができる。
【0138】
また、本発明の光学部材には、上記の熱可塑性樹脂組成物を含む樹脂組成物から構成されていてもよく、その樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
《光学レンズ》
本発明の光学部材として、特に光学レンズを挙げることができる。このような光学レンズとしては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、監視カメラ等のための撮像レンズや、TOFカメラ等のセンシングカメラを挙げることができる。
【0139】
本発明の光学レンズを射出成型で製造する場合、シリンダー温度230~350℃、金型温度70~180℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度250~300℃、金型温度80~170℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が350℃より高い場合では、熱可塑性樹脂組成物が分解着色し、230℃より低い場合では、溶融粘度が高く成形が困難になりやすい。また金型温度が180℃より高い場合では、熱可塑性樹脂組成物から成る成形片が金型から取り出すことが困難になりやすい。他方、金型温度が、70℃未満では、成型時の金型内で樹脂が早く固まり過ぎて成形片の形状が制御しにくくなったり、金型に付された賦型を十分に転写することが困難になりやすい。
【0140】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形を用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要が無く、軽量化及び成形コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【0141】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05~3.0mm、より好ましくは0.05~2.0mm、さらに好ましくは0.1~2.0mmである。また、直径が1.0mm~20.0mm、より好ましくは1.0~10.0mm、さらに好ましくは、3.0~10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
【0142】
本発明の熱可塑性樹脂からなるレンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチングなど任意の方法により成形される。この中でも、製造コストの面から金型成形がより好ましい。
【実施例】
【0143】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
《評価方法》
〈屈折率〉
各熱可塑性樹脂組成物の3mm厚円板を作製し、切削、研磨した後、島津製作所製のカルニュー精密屈折計KPR-2000を使用して、屈折率nd(587.56nm)を測定した。
〈アッベ数〉
アッベ数の測定波長は、486.13nm、587.56nm、656.27nmの屈折率から下記の式を用いて算出した。
【0144】
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長587.56nmでの屈折率、
nF:波長486.13nmでの屈折率、
nC:波長656.27nmでの屈折率を意味する。
〈ノッチなしシャルピー衝撃強度〉
射出成型により得られた4mm厚の角柱状成型片を用いて、ISO179に準拠してノッチなしシャルピー衝撃強度を測定した。
〈吸水率〉
射出成型により得られた2mm厚の板状成型片を用いて、ISO62に準拠して23℃、24時間浸漬後の吸水率を測定した。
〈ヘーズ(Hz)〉
射出成型により得られた3mm厚の円板を用いて、本電飾工業(株)製 Haze Meter NDH 2000により、ヘーズを測定した。
〈ガラス転移温度(Tg)〉
得られた熱可塑性樹脂組成物をティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製DSC Discovery DSC25Auto型により、昇温速度20℃/minでガラス転移温度を測定した。試料は5~10mgで測定した。
〈粘度平均分子量(Mv)〉
熱可塑性樹脂組成物の粘度平均分子量を、以下の方法で測定した。熱可塑性樹脂組成物0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。そして、下記式により算出されるMvを粘度平均分子量とした。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c
[η]=1.23×10-4×Mv0.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
Mv:粘度平均分子量
〈配向複屈折の絶対値〉
熱可塑性樹脂組成物を塩化メチレンに溶解した後、ガラスシャーレ上にキャストし、十分乾燥することで厚さ100μmのキャストフィルムを作製した。該フィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM-220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折の絶対値(|Δn|)を求めた。
【0145】
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
[合成例]
〈合成例1〉(熱可塑性樹脂(A1)の製造)
2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル18.1質量部、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン18.9質量部、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル7.5質量部、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと省略することがある)2.4質量部、アルミニウムアセチルアセトネート19.5×10-3質量部及び3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル42.7×10-3質量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを200℃に加熱し、原料を溶融させた。
【0146】
完全溶解後、20分かけて40kPaまで減圧した。その後、245℃まで昇温、0.13kPa以下まで減圧し、所定の撹拌トルクに到達するまで重合反応を行った。反応終了後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、熱可塑性樹脂(A1)のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂(A1)のMvは8,400、Tgは155℃であった。
〈合成例2〉(熱可塑性樹脂(B1)の製造)
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン36.0質量部、テレフタル酸ジメチル3.5質量部、DPC13.7質量部及びチタンテトラブトキシド4.3×10-3質量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを200℃に加熱し、原料を溶融させた。
【0147】
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧した。その後、260℃まで昇温、0.13kPa以下まで減圧し、所定の撹拌トルクに到達するまで重合反応を行った。反応終了後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、熱可塑性樹脂(B1)のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂(B1)のMvは10,100、Tgは149℃であった。
〈合成例3〉(熱可塑性樹脂(B2)の製造)
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを43.9質量部、DPCを22.3質量部及び炭酸水素ナトリウムを6.7×10-5質量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを200℃に加熱し、原料を溶融させた。
【0148】
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧した。その後、260℃まで昇温、0.13kPaまで減圧し、所定の撹拌トルクに到達するまで重合反応を行った。反応終了後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、熱可塑性樹脂(B2)のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂(B2)のMvは9,400、Tgは142℃であった。
〈実施例1〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)23.0質量部と、合成例2で製造した熱可塑性樹脂(B1)77.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B1)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは151℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは9,700であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈実施例2〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)44.0質量部と、合成例2で製造した熱可塑性樹脂(B1)56.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B1)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは152℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは9,400であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈実施例3〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)64.0質量部と、合成例2で製造した熱可塑性樹脂(B1)36.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B1)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは153℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは9,000であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈実施例4〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)86.0質量部と、合成例2で製造した熱可塑性樹脂(B1)14.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B1)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは154℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは8,600であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈実施例5〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)95.0質量部と、合成例2で製造した熱可塑性樹脂(B1)5.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B1)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは155℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは8,500であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈実施例6〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)44.0質量部と、合成例3で製造した熱可塑性樹脂(B2)56.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B2)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは148℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは8,800であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈実施例7〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)74.0質量部と、合成例3で製造した熱可塑性樹脂(B2)26.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及び熱可塑性樹脂(B2)を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットのTgは152℃であり、DSC測定では単一のピークであった。また、該ペレットのMvは8,600であった。該ペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈比較例1〉
合成例1で作製したペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈比較例2〉
合成例2で作製したペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈比較例3〉
合成例3で作製したペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈比較例4〉
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂からなるポリカーボネート樹脂“AD-5503”(帝人社製)のペレットを射出成型して2mm厚の板状成型片、3mm厚の円板及び4mm厚の角柱状成型片を得た。成型体は透明であった。評価結果を表1に示す。
〈比較例5〉
合成例1で製造した熱可塑性樹脂(A1)ペレット50.0質量部と、AD-5503のペレット50.0質量部をよく混合し、押出機(日本製鋼所社製 TEX30α 30mmφ二軸押出機)により270℃、ベント圧力30mmHgで溶融状態の熱可塑性樹脂(A1)及びAD-5503を混練してペレタイズしブレンドペレットを得た。該ペレットは白濁した。評価結果を表1に示す。
【0149】
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の熱可塑性樹脂は、光学材料に用いられ、光学レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特に光学レンズに極めて有用である。