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特許7506179環状カーボネートを含有する電解質を含むリチウム-硫黄二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】環状カーボネートを含有する電解質を含むリチウム-硫黄二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240618BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/13
H01M4/36 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022563477
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 KR2021014791
(87)【国際公開番号】W WO2022092701
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142338
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142351
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】インテ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨンフィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・パク
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・イ
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508927(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105980(WO,A1)
【文献】特表2020-521283(JP,A)
【文献】特開2021-170442(JP,A)
【文献】特開2004-342585(JP,A)
【文献】特開2014-049298(JP,A)
【文献】特開2001-006730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム-硫黄二次電池であって、
前記電解質は環状カーボネート及び非水系溶媒を含有し、
前記環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートまたはこれらの組み合わせからなり、
前記環状カーボネートは、電解質の総重量を基準にして0ppm超1,000ppm未満が電解質に含有され、
前記電解質に含まれる非水系溶媒はエーテル系溶媒からなる、リチウム-硫黄二次電池。
【請求項2】
前記環状カーボネートは、電解質の総重量を基準にして300ppm以上、800ppm以下で電解質に含有されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項3】
前記エーテル系溶媒はフッ素化された線状エーテルを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項4】
前記フッ素化された線状エーテルは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ビス(フルオロメチル)エーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2'H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル、1H,1H,2'H-パーフルオロジプロピルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項5】
前記エーテル系溶媒は、エーテル系溶媒の総重量を基準にして50重量%ないし99重量%のフッ素化された線状エーテルを含むことを特徴とする請求項3または4に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項6】
前記電解質はリチウム塩を更に含み、
前記リチウム塩は、LiN(FSO、LiSCN、LiN(CN)、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiPF、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiSbF、LiAsF、LiBF、LiBC、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFP、LiCFSO、LiCSO、LiCFCFSO、LiCFCF(CFCO、Li(CFSOCH、LiCF(CFSO、LiCFCO、LiCHCO及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項7】
前記正極は正極活物質層を含み、前記正極活物質層は30%以上70%未満の気孔率を持つことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項8】
前記正極は3.0mAh/cmないし10.0mAh/cmの正極活物質ローディング量を持つことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項9】
前記正極は正極活物質で硫黄-炭素複合体を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項10】
前記硫黄-炭素複合体は硫黄-炭素複合体の総重量を基準にして60重量%ないし90重量%の硫黄を含むことを特徴とする請求項9に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【請求項11】
前記エーテル系溶媒はフッ素化されていない線状エーテル、環状エーテル、ポリエーテルまたはこの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状カーボネートを含有する電解質を含むリチウム-硫黄二次電池に関する。具体的に、本発明は環状カーボネートであるフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートまたはこれらの組み合わせを含有する電解質を含むリチウム-硫黄二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2020年10月29日付韓国特許出願第10-2020-0142338号及び第10-2020-0142351号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【背景技術】
【0003】
二次電池の応用領域が電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などへ拡大されることによって、単位重量に対比して相対的に低いエネルギー貯蔵密度(~250Wh/kg)を持つリチウム-イオン二次電池はこのような製品に対する適用の限界がある。これと違って、リチウム-硫黄二次電池は理論上単位重量に対比して高いエネルギー貯蔵密度(~2,600Wh/kg)を具現することができるので、次世代二次電池技術として脚光を浴びている。
【0004】
リチウム-硫黄二次電池はS-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)を持つ硫黄系列物質を正極活物質で使用し、リチウム金属を負極活物質で使用した電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は世界的に資源量が豊かで、毒性がなく、単位原子当たり低い重さを持っている長所がある。
【0005】
リチウム-硫黄二次電池は放電時に負極活物質であるリチウムが電子を出してイオン化されながら酸化され、正極活物質である硫黄系列物質が電子を受け入れて還元される。ここで、リチウムの酸化反応はリチウム金属が電子を出してリチウム陽イオン形態に変換される過程である。また、硫黄の還元反応はS-S結合が2個の電子を受け入れて硫黄陰イオン形態に変換される過程である。リチウムの酸化反応によって生成されたリチウム陽イオンは電解質を通じて正極に伝達され、硫黄の還元反応によって生成された硫黄陰イオンと結合して塩を形成する。具体的に、放電前の硫黄は環状のS構造を持っていて、これは還元反応によってリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、LiS)に変換される。リチウムポリスルフィドが完全に還元される場合は、リチウムスルフィド(LiS)が生成される。
【0006】
正極活物質である硫黄は、低い電気伝導度の特性によって、固相形態では電子及びリチウムイオンとの反応性を確保しにくい。既存のリチウム-硫黄二次電池はこのような硫黄の反応性を改善するためにLi形態の中間ポリスルフィド(intermediate polysulfide)を生成して液相反応を誘導して反応性を改善する。この場合、電解液の溶媒としてリチウムポリスルフィドに対して溶解性が高いジオキソラン(dioxolane)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)などのエーテル系溶媒が使われる。また、既存リチウム-硫黄二次電池は反応性を改善するためにカソライト(catholyte)タイプのリチウム-硫黄二次電池システムを構築するが、この場合、電解液内に溶けるリチウムポリスルフィドの特性のため、電解液の含量によって硫黄の反応性及び寿命特性が影響を受けるようになる。高いエネルギー密度を構築するためには低い含量の電解液を注液すべきであるが、電解液の含量が減少することによって電解液内のリチウムポリスルフィドの濃度が増加して、活物質の流動性減少及び副反応増加によって正常な電池駆動が難しい。
【0007】
高エネルギー密度のリチウム-硫黄二次電池を構築するためには、高ローディング、低気孔率の電極を駆動できる電池システムを要し、該当技術分野ではこのような電池システムに対する研究が持続的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0006923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はリチウム-硫黄二次電池の電解質に特定環状カーボネートを添加し、リチウム-硫黄二次電池のサイクル性能を改善することができるリチウム-硫黄二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、正極、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム-硫黄二次電池を提供し、前記電解質は環状カーボネートを含む。
【0011】
本発明の一具体例において、前記環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートまたはこれらの組み合わせである。
【0012】
本発明の一具体例において、前記環状カーボネートは電解質の総重量を基準にして0ppm超1,000ppm未満が電解質に含有される。
【0013】
本発明の一具体例において、前記電解質は非水系溶媒及びリチウム塩をさらに含み、前記非水系溶媒はフッ素化された線状エーテルを含む。
【0014】
本発明の一具体例において、前記フッ素化された線状エーテルは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ビス(フルオロメチル)エーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2'H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル、1H,1H,2'H-パーフルオロジプロピルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
本発明の一具体例において、前記非水系溶媒は、非水系溶媒の総重量を基準にして50重量%ないし99重量%のフッ素化された線状エーテルを含む。
【0016】
本発明の一具体例において、前記リチウム塩は、LiN(FSO、LiSCN、LiN(CN)、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiPF、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiSbF、LiAsF、LiBF、LiBC、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFP、LiCFSO、LiCSO、LiCFCFSO、LiCFCF(CFCO、Li(CFSOCH、LiCF(CFSO、LiCFCO、LiCHCO及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
本発明の一具体例において、前記正極は正極活物質層を含み、前記正極活物質層は30%以上70%未満の気孔率を持つ。
【0018】
本発明の一具体例において、前記正極は3.0mAh/cmないし10.0mAh/cmの正極活物質ローディング量を持つ。
【0019】
本発明の一具体例において、前記正極は正極活物質で硫黄-炭素複合体を含む。
【0020】
本発明の一具体例において、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄-炭素複合体の総重量を基準にして60重量%ないし90重量%の硫黄を含む。
【0021】
本発明の一具体例において、前記非水系溶媒はフッ素化されていない線状エーテル、環状エーテル、ポリエーテルまたはこの混合物をさらに含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池は電解質に特定の環状カーボネートが添加されることで、リチウム-硫黄二次電池のサイクル性能が改善される。
【0023】
特定の環状カーボネートとしてフルオロエチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートは1,000ppm未満がリチウム-硫黄二次電池の電解質に添加されるが、該当技術分野で電解質添加剤は普通1重量%(10,000ppm)またはそれ以上を使用した時、目的とする電池の性能改善効果を得られるという点を考慮すると、前記フルオロエチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートは該当技術分野で使われる一般的な電解質添加剤とは異なる。
【0024】
前記フルオロエチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートは該当技術分野で一般的な電解質添加剤が使われる量で使った場合、リチウム-硫黄二次電池のサイクル性能改善効果が微々たるものか、またはほとんど現われない。
【0025】
そして、リチウム-硫黄二次電池ではないリチウム二次電池に使用する場合も、リチウム-硫黄二次電池のサイクル性能改善効果が微々たるものであるか、またはほとんど現われない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によって提供される具体例は下記の説明によって全て達成されることができる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0027】
本明細書に記載された物性に対し、測定条件及び方法が具体的に記載されていない場合、前記物性は該当技術分野において通常の技術者によって一般的に使われる測定条件及び方法によって測定される。
【0028】
「リチウム二次電池」は一般にリチウム-硫黄二次電池の上位概念であってリチウム-硫黄二次電池を含むが、本明細書における「リチウム二次電池」は正極活物質でリチウム金属酸化物を利用する普通のリチウム二次電池をいい、リチウム-硫黄二次電池とは分けて使われる。
【0029】
本発明は、正極、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム-硫黄二次電池であって、前記電解質が環状カーボネートを含むリチウム-硫黄二次電池を提供する。本発明の一具体例によると、前記環状カーボネートはフルオロエチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate、FEC)、ビニレンカーボネート(Vinylene carbonate、VC)またはこれらの組み合わせである。前記フルオロエチレンカーボネートは下記化学式1の構造を持つ化合物で、前記ビニレンカーボネートは下記化学式2の構造を持つ化合物である。本発明の発明者は特定の環状カーボネートが正極活物質でリチウム金属酸化物を使用する一般的なリチウム二次電池ではなく、正極活物質で硫黄を含む物質を使用するリチウム-硫黄二次電池で電解質に添加して使用する時、電池のサイクル性能が改善されることを確認して発明を完成した。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
正極活物質を除いた他の構成が同一であるリチウム二次電池では、電池のサイクル性能改善効果が微々たるものであるか、またはないことを見ると、電解質に添加されたフルオロエチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートはリチウム-硫黄二次電池の正極活物質と直接的に相互作用するものと予想される。
【0033】
本発明の一具体例によると、前記電解質は電解質の総重量を基準にして0ppm超、50ppm以上、100ppm以上、150ppm以上、200ppm以上、250ppm以上、300ppm以上、350ppm以上、400ppm以上、450ppm以上または500ppm以上の環状カーボネートを含み、前記電解質は電解質の総重量を基準にして1,000ppm未満、950ppm以下、900ppm以下、850ppm以下、800ppm以下、750ppm以下、700ppm以下、650ppm以下、600ppm以下、550ppm以下または500ppm以下の環状カーボネートを含有する。本発明では環状カーボネートを電解質に1,000ppm未満のように少量添加するのが一つの特徴であり、環状カーボネートを1,000ppm以上と多量添加する場合、サイクル性能改善効果が微々たるものであるか、またはない。該当技術分野で電解液添加剤は普通1重量%(10,000ppm)またはそれ以上を利用した時、目的とする電池の性能改善効果を得られるという点を考慮すれば、上述した特徴は該当技術分野で一般的なことではない。
【0034】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池を構成する電解質は、上述した環状カーボネートの他に非水系溶媒及びリチウム塩を含む。上述したように、環状カーボネートの使用による電池のサイクル性能改善効果は、環状カーボネートとリチウム-硫黄二次電池の正極活物質との直接的な相互作用によって発生することがあるので、非水系溶媒及びリチウム塩の種類は特に制限されない。ただし、リチウム-硫黄二次電池にもっと適する非水系溶媒及びリチウム塩を選択すれば、電池の全体的なサイクル性能が優秀となる。
【0035】
本発明の一具体例によると、前記非水系溶媒はエーテル系溶媒である。前記エーテル系溶媒は線状エーテル(Linear ether)、環状エーテル(Cyclic ether)、ポリエーテル(polyether)またはこれらの混合物である。
【0036】
前記線状エーテルは、メチルエチルエーテル(Mehtyl ethyl ether)、メチルプロピルエーテル(Methyl propyl ether)、メチルブチルエーテル(Mehtyl butyl ether)、エチルプロピルエーテル(Ethyl propyl ether)、エチルイソプロピルエーテル(Ethyl isopropyl ether)、エチルブチルエーテル(Ethyl butyl ether)、エチルイソブチルエーテル(Ethyl isobutyl ether)、ジエチルエーテル(Diethyl ether)、ジプロピルエーテル(Dipropyl ether)、ジブチルエーテル(Dibutyl ether)、ジメトキシメタン(Dimethoxy methane、DMM)、トリメトキシメタン(Trimethoxy methane、TMM)、ジメトキシエタン(Dimethoxy ethane、DME)、ジエトキシエタン(Diethoxy ethane、DEE)、ジメトキシプロパン(Dimethoxy propane、DMP)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0037】
前記環状エーテルは、ジオキソラン(Dioxolane、DOL)、メチルジオキソラン(Methyl dioxolane)、オキサン(Oxane)、ジオキサン(Dioxane)、トリオキサン(Trioxane)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)、ジヒドロピラン(Dihydropyran、DHP)、テトラヒドロピラン(Tetrahydropyran、THP)及びメチルテトラヒドロフラン(Methyl tetrahydrofuran)、フラン(Furan)、メチルフラン(Methyl furan)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0038】
前記ポリエーテルは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(Diethylene glycol dimethyl ether)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(Triethylene glycol dimethyl ether)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(Tetraethylene glycol dimethyl ether)、エチレングリコールジビニルエーテル(Ethylene glycol divinyl ether)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(Diethyleneglycol divinyl ether)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(Triethyleneglycol divinyl ether)、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル(Dipropyleneglycol dimethylene ether)、ブチレングリコールエーテル(Butylene glycol ether)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0039】
前記線状エーテル、環状エーテル及びポリエーテルは、フッ素化されたエーテル化合物である。前記フッ素化された形態の化合物は、フッ素化された線状エーテルであってもよく、前記フッ素化された線状エーテルは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(1,1,2,2-tetrafluoroethyl 2,2,3,3-tetrafluoropropyl ether、TTE)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(1,1,2,2-tetrafluoroethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)、ビス(フルオロメチル)エーテル(bis(fluoromethyl)ether、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(bis(2,2,2-trifluoroehtyl)ether)、プロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(Propyl 1,1,2,2-tetrafluoroethyl ether)、イソプロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(isopropyl 1,1,2,2-tetrafluoroehtyl ether)、1,1,2,2-テトラフルオロエチルイソブチルエーテル(1,1,2,2-tetrafluoroethyl isobutyl ether)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル(1,1,2,3,3,3-hexafluoropropyl ethyl ether)、1H,1H,2'H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2'H,3H-decafluorodipropyl ether)、1H,1H,2'H-パーフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2'H-perfluorodipropyl ether)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0040】
前記フッ素化されたエーテル化合物は、フッ素化されていない線状エーテル、環状エーテル、ポリエーテルまたはこれらの組み合わせと混合して使用することができる。本発明の一具体例によると、前記フッ素化されたエーテル化合物は電解質を構成する溶媒の総重量を基準にして50重量%ないし99重量%、好ましくは60重量%ないし95重量%、より好ましくは70重量%ないし90重量%が電解質に含まれることができる。前記フッ素化されたエーテル化合物が電解質を構成する溶媒の総重量を基準にして50重量%以上電解質に含まれる場合、気孔率が低く、正極活物質のローディング量が高いリチウム-硫黄二次電池の正極と一緒に使用する時、電池の性能を向上させることができる。
【0041】
前記リチウム塩は、非水系溶媒に容易に溶解されることができる物質であり、LiN(FSO、LiSCN、LiN(CN)、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiPF、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiSbF、LiAsF、LiBF、LiBC、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFPF、Li(CFP、LiCFSO、LiCSO、LiCFCFSO、LiCFCF(CFCO、Li(CFSOCH、LiCF(CFSO、LiCFCO、LiCHCO及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0042】
前記リチウム塩の濃度は、電解液混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウム二次電池分野に公知された他の要因のような多くの要因によって、0.1Mないし8.0M、好ましくは0.5Mないし5.0M、より好ましくは1.0Mないし3.0Mである。もし、リチウム塩の濃度が前記範囲未満であれば電解液の伝導度が低くなって電池性能が低下されることがあるし、前記範囲を超えると電解液の粘度が増加してリチウムイオン(Li)の移動性が減少されることがあるので、前記範囲内で適正濃度を選択することが好ましい。
【0043】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池を構成する正極は、一般的に正極集電体及び前記正極集電体上に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質層は正極活物質、導電材及びバインダーを含む。
【0044】
前記正極集電体は電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われることができる。また、前記正極集電体は通常3ないし500μmの厚さを持つことができるし、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使われることができる。
【0045】
前記正極活物質は一般的にリチウム-硫黄二次電池に適用されるもので、例えば、硫黄元素(Elemental sulfur、S)、硫黄系列化合物またはこれらの混合物を含む。前記硫黄系列化合物は具体的に、Li(n≧1)、有機硫黄化合物または硫黄-炭素化合物((C:x=2.5~50、n≧2)などを含む。前記硫黄元素は単独では電気伝導性がないため、炭素材と複合化して硫黄-炭素複合体の形態で使用することができる。
【0046】
前記硫黄-炭素複合体は、その粒子の大きさが1μmないし100μmである。前記硫黄-炭素複合体の粒子の大きさが1μm未満の場合、粒子間の抵抗が増えてリチウム-硫黄二次電池の電極に過電圧が発生することがあるし、100μmを超える場合は単位重量当たり表面積が小さくなって、電極内の電解質とのウェッティング(wetting)面積及びリチウムイオンとの反応サイト(site)が減少するようになり、複合体の大きさに対比して電子伝達量が少なくなって反応が遅くなり、電池の放電容量が減少されることがある。
【0047】
前記硫黄-炭素複合体において、硫黄は硫黄-炭素複合体の総重量を基準にして60重量%ないし90重量%、好ましくは70重量%ないし80重量%が硫黄-炭素複合体に含まれることができる。前記硫黄が60重量%未満で硫黄-炭素複合体に含まれる場合、電池のエネルギー密度が減少する問題が発生することがあって、前記硫黄が90重量%超で硫黄-炭素複合体に含まれる場合、電極内の導電性が低下して正極活物質の機能性が落ちる問題が発生することがある。
【0048】
前記硫黄-炭素複合体を構成する炭素材(または、硫黄担持材)は多孔性を持つものであって、特に、本発明の正極活物質で使われる炭素材は、高比表面積(3,000m/g以上)及び高気孔率(単位重量当たり気孔体積:0.7~3.0cm/g)の特性を持つので、多量の硫黄を担持することができる。
【0049】
前記炭素材は、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);還元グラフェンオキサイド(rGO);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック(Carbon Black);単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素(Activated carbon);からなる群から選択された1種以上を例示することができ、その形態は球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型などである。
【0050】
前記正極活物質は正極活物質層の総重量を基準にして80重量%ないし99重量%、好ましくは85重量%ないし95重量%が正極活物質層に含まれることができる。前記正極活物質が80重量%未満で正極活物質層に含まれる場合、電池のエネルギー密度が減少する問題が発生することがあり、前記正極活物質が99重量%超で正極活物質層に含まれる場合、バインダーの含量が不足して正極活物質間の結束力が低下されることがあり、導電材の含量が不足して電極内の導電性が低下される問題が発生することがある。
【0051】
前記導電材は電極に導電性を付えるために使われるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさずに電子伝導性を持つものであれば特に制限されずに使用可能である。具体的な例では、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらの中で1種単独または2種以上の混合物が使われることができる。
【0052】
前記導電材は正極活物質層の総重量を基準にして0.1重量%ないし15重量%、好ましくは0.5ないし10重量%が正極活物質層に含まれることができる。前記導電材が0.1重量%未満で正極活物質層に含まれる場合、導電材の含量が不足して電極内の導電性が低下される問題が発生することがあるし、前記導電材が15重量%超で正極活物質層に含まれる場合、正極活物質の量が相対的に少なくなって電池の放電容量及びエネルギー密度が低下される問題が発生することがある。
【0053】
前記バインダーは正極活物質粒子の間の付着、及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役目をする。具体的な例では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらの中で1種単独または2種以上の混合物が使われることができる。
【0054】
前記バインダーは正極活物質層の総重量を基準にして0.1重量%ないし15重量%、好ましくは0.5ないし10重量%が正極活物質層に含まれることができる。前記バインダーが0.1重量%未満で正極活物質層に含まれる場合、バインダーの含量が不足して正極活物質間の結束力が低下されることができ、前記バインダーが15重量%超で正極活物質層に含まれる場合、正極活物質の量が相対的に少なくなって電池の放電容量及びエネルギー密度が低下される問題が発生することがある。
【0055】
前記正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作って、これを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造されることができる。前記分散媒では、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルホルムアミド(DMF:Dimethyl formamide)、ジメチルスルホキシド(DMSO:Dimethyl sulfoxide)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0056】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池の正極は該当技術分野の一般的なリチウム-硫黄二次電池の正極より低い気孔率を持つことができる。ここで、前記気孔率は正極全体体積に対する気孔体積の割合で普通パーセントで表す。一般的なリチウム-硫黄二次電池の正極は、低い気孔率を持つ場合、電解質の浸透による物質移動が容易でないこともあって、電池性能をまともに具現することができない。しかし、リチウム-硫黄二次電池の正極の気孔率を高めれば、同量の正極活物質をローディングさせるための正極の体積が増加するので好ましくない。本発明による電解質をリチウム-硫黄二次電池に適用する場合、低い気孔率の正極のみならず高い気孔率の正極でも電池の性能をまともに具現することができるので、もっと好ましい。本発明の一具体例によると、正極内で正極活物質層は30%以上70%未満、好ましくは50%ないし65%、より好ましくは55%ないし65%の気孔率を持つ。70%未満の気孔率は該当技術分野の一般的なリチウム-硫黄二次電池の正極活物質層が持つ気孔率より低く、該当気孔率で電池の性能をまともに具現することができれば、同量の正極活物質をローディングさせるための正極の体積を減少させることができる長所がある。前記気孔率は該当技術分野で一般的に使われる方法で測定されることができるし、素材の厚さ測定装備(TESA、u-hite)を通じて正極活物質層の厚さを測定した後、素材の真密度測定装備(Microtrac、BELPycno)を通じて測定された正極活物質層の真密度を利用して計算した。
【0057】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池の正極は、該当技術分野の一般的なリチウム-硫黄二次電池の正極より高い正極活物質ローディング量を持つことができる。一般に、正極活物質のローディング量を高めると正極の体積が増加するしかないが、上述したように、本発明によるリチウム-硫黄二次電池は正極の気孔率を低めることができるため、相対的に小さい体積でも正極活物質のローディング量を高く維持することができる。本発明の一具体例によると、正極は3.0mAh/cmないし10.0mAh/cm、好ましくは3.5mAh/cmないし7.0mAh/cm、より好ましくは4.0mAh/cmないし7.0mAh/cmの正極活物質ローディング量を持つ。理論的に正極活物質のローディング量を高めると電池性能向上に役立つことができるが、電極の体積増加及び理論的な放電容量と実際放電容量との間の差による問題によって正極活物質のローディング量を高めることに限界がある。前記正極活物質ローディング量は正極にローディングされた正極活物質の理論的な放電容量(mAh)を正極活物質層と正極集電体とが接する表面積(cm)で除して計算する。例えば、硫黄の場合、1,675mAh/gの理論的な比放電容量を持ち、前記理論的な比放電容量に、正極にローディングされた硫黄の質量(g)を乗じると硫黄の理論的な放電容量を算出することができる。
【0058】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池を構成する負極は、負極集電体、及び負極集電体上に形成された負極活物質層を含む。
【0059】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー及び導電材を含む。前記負極活物質では、リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使うことができる。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物である。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0060】
前記バインダー、導電材及び負極集電体は上述した正極での構成を参照して選択されることができるが、必ずこれに限定されるものではない。また、前記負極集電体上に負極活物質層を形成する方法は正極と同様、公知された塗布方法によるし、特に限定されるものではない。
【0061】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池の分離膜は電極を物理的に分離する機能を持つ物理的な分離膜であって、該当技術分野で分離膜として通常使われるものであれば特に制限せずに使用可能である。特に、電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れるものが好ましい。前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極の間にリチウムイオンの輸送を可能とする。このような分離膜は30~50%の気孔率を持って多孔性で、非伝導性または絶縁性の物質からなる。具体的には多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを使うことができ、高融点のガラス繊維などからなった不織布を使うことができる。この中で、好ましくは多孔性高分子フィルムを使用する。
【0062】
もし、バッファー層及び分離膜で全て高分子フィルムを使用すれば、電解液含浸量及びイオンの伝導特性が減少し、過電圧減少及び容量特性改善効果が微々たるものとなる。逆に、全て不織布素材を使用する場合は、機械的剛性が確保されずに電池短絡の問題が発生する。しかし、フィルム型の分離膜と高分子不織布バッファー層を一緒に使用すれば、バッファー層の採用による電池性能改善効果とともに機械的強度も確保することができる。
【0063】
本発明の一具体例によると、エチレン単独重合体(ポリエチレン)高分子フィルムを分離膜で、ポリイミド不織布をバッファー層で使用する。この時、前記ポリエチレン高分子フィルムは厚さが10ないし25μmで、気孔率が40ないし50%であることが好ましい。
【0064】
本発明のリチウム-硫黄二次電池は正極と負極との間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体は、例えば、円筒形または角形などの電池ケースに入れた後、電解質を入れ込んで製造することができる。他の方法では、前記電極組立体を積層した後、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れて密封して製造することもできる。
【0065】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0066】
実施例
実施例1
先ず、ジメトキシエタン(DME)と1,1,2,2-テトラフルオロエチル 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)を3:7の体積比で混合した溶媒にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI、LiN(CFSO)を1.0M濃度で混合した後、混合物にフルオロエチレンカーボネートを500ppm添加して、リチウム-硫黄二次電池用電解質を製造した。
【0067】
正極活物質として硫黄-炭素複合体(S:C=75:25重量比)90重量部(硫黄-炭素複合体で炭素材は気孔体積が1.8cm/gの活性炭素を使用した)、導電材としてデンカブラック5重量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=7:3)5重量部を混合して正極スラリー組成物を製造した。前記製造されたスラリー組成物をアルミニウムホイル集電体上にコーティングし、50℃で12時間乾燥し、ロールプレス(roll press)機器で圧搾し、正極を製造した(この時、ローディング量は4.0mAh/cmに、正極内で正極活物質層の気孔率は65%にした)。
【0068】
製造された正極と60μm厚さのリチウム金属負極を対面するように位置させ、その間にポリエチレン(PE)分離膜を介在した後、製造された電解質を注入してコインセルタイプのリチウム-硫黄二次電池を製造した。一方、前記リチウム-硫黄二次電池の製造において、前記正極は14phi円形電極で打ち抜いて使用し、前記ポリエチレン分離膜は19phiで、前記リチウム金属は16phiで打ち抜いて使用した。
【0069】
比較例1
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートを添加していないことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0070】
比較例2
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートを5,000ppm添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0071】
比較例3
正極製造の際、下記の方法で製造したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0072】
正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM 622)90重量部、導電材としてSuper-P 5重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー5重量部を混合して正極スラリー組成物を製造した。前記製造されたスラリー組成物をアルミニウムホイル集電体上にコーティングし、50℃で12時間乾燥して、ロールプレス(roll press)機器で圧搾して正極を製造した(この時、ローディング量は3.0mAh/cm、正極内で正極活物質層の気孔率は30%にした)。
【0073】
比較例4
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートを添加していないことを除いては、比較例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0074】
比較例5
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートを5,000ppm添加したことを除いては、比較例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0075】
比較例6
電解質製造の際、下記の方法で製造したことを除いては、比較例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0076】
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で混合した溶媒にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を1.0M濃度で混合した後、混合物にフルオロエチレンカーボネートを500ppm添加して、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0077】
比較例7
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートを添加していないことを除いては、比較例6と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0078】
比較例8
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートを5,000ppm添加したことを除いては、比較例6と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0079】
実施例2
電解質製造の際、フルオロエチレンカーボネートの代わりにビニレンカーボネートを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0080】
比較例9
電解質製造の際、ビニレンカーボネートを添加していないことを除いては、実施例2と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0081】
比較例10
電解質製造の際、ビニレンカーボネートを5,000ppm添加したことを除いては、実施例2と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0082】
比較例11
正極製造の際、下記の方法で製造したことを除いては、実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0083】
正極活物質でLiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM 622)90重量部、導電材でSuper-P 5重量部、バインダーでポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー5重量部を混合して正極スラリー組成物を製造した。前記製造されたスラリー組成物をアルミニウムホイル集電体上にコーティングし、50℃で12時間乾燥して、ロールプレス(roll press)機器で圧搾して正極を製造した(この時、ローディング量は3.0mAh/cmに、正極内で正極活物質層の気孔率は30%にした)。
【0084】
比較例12
電解質製造の際、ビニレンカーボネートを添加していないことを除いては、比較例11と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0085】
比較例13
電解質製造の際、ビニレンカーボネートを5,000ppm添加したことを除いては、比較例11と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0086】
比較例14
電解質製造の際、下記の方法で製造したことを除いては、比較例11と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0087】
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で混合した溶媒にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を1.0M濃度で混合した後、混合物にビニレンカーボネートを500ppm添加して、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0088】
比較例15
電解質製造の際、ビニレンカーボネートを添加していないことを除いては、比較例14と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0089】
比較例16
電解質製造の際、ビニレンカーボネートを5,000ppm添加したことを除いては、比較例14と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0090】
実験例:製造された電池のサイクル性能評価
実験例1:フルオロエチレンカーボネートに対する評価
実施例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池と比較例1ないし8で製造されたリチウム二次電池を0.3Cレート(rate)で充電及び放電させて電池のサイクル性能を評価した。充電及び放電の電圧(Voltage)範囲は電池の種類による最適の条件を考慮して、リチウム-硫黄二次電池の場合1.0~3.6V、リチウム二次電池の場合2.7~4.4Vで設定され、25℃の温度条件で電池のサイクル性能が評価された。電池のサイクル性能は初期放電容量を基準にして80%以上の放電容量を示すサイクル回数で評価され、該当サイクル回数を超える場合、初期放電容量を基準にして放電容量が80%未満に落ちた。評価結果を下記表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
前記表1によると、リチウム-硫黄二次電池の電解質にフルオロエチレンカーボネートを500ppm添加した場合(実施例1)、フルオロエチレンカーボネートを添加していない場合(比較例1)に比べて、サイクル性能が著しく向上されることが確認された。しかし、リチウム-硫黄二次電池の電解質にフルオロエチレンカーボネートを5,000ppm添加した場合(比較例2)、フルオロエチレンカーボネート添加による効果が示されず、返ってフルオロエチレンカーボネートを添加していない場合(比較例1)に比べて、サイクル性能が低下することが確認された。
【0093】
また、硫黄-炭素複合体ではないリチウム金属酸化物(NCM 622)を正極活物質で使用するリチウム二次電池の場合、エーテル系溶媒を含む電解質では電池のサイクルが進められることによってエーテル系溶媒が分解されることができ、大概サイクル性能が低く測定された。リチウム-硫黄二次電池と違ってリチウム二次電池では電解質にフルオロエチレンカーボネートを500ppm添加した場合(比較例3)、フルオロエチレンカーボネートを添加していない場合(比較例4)及びフルオロエチレンカーボネートを5,000ppm添加した場合(比較例5)に比べてサイクル性能が特に改善されなかった。
【0094】
比較例3ないし5の結果が電解質の溶媒の問題によるものか否かを確認するために、リチウム金属酸化物(NCM 622)を正極活物質で使用するリチウム二次電池に適するカーボネート系溶媒を含む電解質を利用して追加実験を行った。カーボネート系溶媒を含む電解質では、サイクルが進められてもカーボネート系溶媒がほとんど分解されず、大概リチウム-硫黄二次電池と類似な水準のサイクル性能が示された。しかし、カーボネート系溶媒を含む電解質を使用したリチウム二次電池の場合(比較例6ないし8)もエーテル系溶媒を含む電解質を使用したリチウム二次電池の場合(比較例3ないし5)と同様、リチウム二次電池では電解質にフルオロエチレンカーボネートを500ppm添加した場合(比較例6)、フルオロエチレンカーボネートを添加していない場合(比較例7)及びフルオロエチレンカーボネートを5,000ppm添加した場合(比較例8)に比べて、サイクル性能が特に改善されなかった。
【0095】
実験例2:ビニレンカーボネートに対する評価
実施例2で製造されたリチウム-硫黄二次電池と比較例9ないし16で製造されたリチウム二次電池を0.3Cレート(rate)で充電及び放電させて電池のサイクル性能を評価した。充電及び放電の電圧(Voltage)範囲は電池の種類による最適の条件を考慮して、リチウム-硫黄二次電池の場合1.0~3.6V、リチウム二次電池の場合2.7~4.4Vに設定され、25℃の温度条件で電池のサイクル性能が評価された。電池のサイクル性能は初期放電容量を基準にして80%以上の放電容量を示すサイクル回数で評価され、該当サイクル回数を超える場合、初期放電容量を基準にして放電容量が80%未満に落ちた。評価結果を下記表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
前記表2によると、リチウム-硫黄二次電池の電解質にビニレンカーボネートを500ppm添加した場合(実施例2)、ビニレンカーボネートを添加していない場合(比較例9)に比べて、サイクル性能が著しく向上されることが確認された。しかし、リチウム-硫黄二次電池の電解質にビニレンカーボネートを5,000ppm添加した場合(比較例10)、ビニレンカーボネート添加による効果が示されず、返ってビニレンカーボネートを添加していない場合(比較例9)に比べてサイクル性能が低下されることが確認された。
【0098】
また、硫黄-炭素複合体ではないリチウム金属酸化物(NCM 622)を正極活物質で使用するリチウム二次電池の場合、エーテル系溶媒を含む電解質では電池のサイクルが進められることによってエーテル系溶媒が分解されることができ、大概サイクル性能が低く測定された。リチウム-硫黄二次電池と違ってリチウム二次電池では電解質にビニレンカーボネートを500ppm添加した場合(比較例11)、ビニレンカーボネートを添加していない場合(比較例12)及びビニレンカーボネートを5,000ppm添加した場合(比較例13)に比べて、サイクル性能が特に改善されなかった。
【0099】
比較例11ないし13の結果が電解質の溶媒の問題によるものか否かを確認するために、リチウム金属酸化物(NCM 622)を正極活物質で使用するリチウム二次電池に適するカーボネート系溶媒を含む電解質を使用して追加実験を行った。カーボネート系溶媒を含む電解質ではサイクルが進められてもカーボネート系溶媒がほとんど分解されず、大概リチウム-硫黄二次電池と類似な水準のサイクル性能が示された。しかし、カーボネート系溶媒を含む電解質を使用したリチウム二次電池の場合(比較例14ないし16)もエーテル系溶媒を含む電解質を使用したリチウム二次電池の場合(比較例11ないし13)と同様、リチウム二次電池では電解質にビニレンカーボネートを500ppm添加した場合(比較例14)、ビニレンカーボネートを添加していない場合(比較例15)及びビニレンカーボネートを5,000ppm添加した場合(比較例16)に比べて、サイクル性能が特に改善されなかった。
【0100】
本発明の単純な変形ないし変更は、全て本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になる。