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特許7506182レーザ加工プロセスを分析する方法、レーザ加工プロセスを分析するシステム、及びそのようなシステムを備えるレーザ加工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】レーザ加工プロセスを分析する方法、レーザ加工プロセスを分析するシステム、及びそのようなシステムを備えるレーザ加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240618BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240618BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240618BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240618BHJP
   B23K 31/12 20060101ALI20240618BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/21 Z
B23K26/38 A
B23K31/00 Z
B23K31/12
G06N3/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022567471
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021061724
(87)【国際公開番号】W WO2021224255
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】102020112116.4
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】クラウス マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マック ファビアン
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-021949(JP,A)
【文献】国際公開第2020/069840(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/031948(WO,A1)
【文献】特開2017-131937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工プロセスを分析する方法であって、前記方法は、
前記レーザ加工プロセスについての少なくとも1つのセンサデータセットを取得するステップ(S1)と、
伝達関数を使用して、前記少なくとも1つのセンサデータセットに基づいて前記レーザ加工プロセスの加工結果の少なくとも1つの物理特性の値を決定するステップ(S2)と、
を含み、
前記伝達関数は、訓練済みニューラルネットワークによって形成され、
少なくとも1つのセンサデータセットを取得するステップ(S1)は、前記レーザ加工プロセスの少なくとも1つのプロセスパラメータの測定値に基づいており、
前記少なくとも1つのプロセスパラメータは、焦点位置、焦点直径、及び/又は加工物(1)からの前記レーザ加工プロセスを実行するレーザ加工ヘッド(101)の距離を含み、
前記物理特性の前記値は、前記レーザ加工プロセスの少なくとも1つの制御データセットに基づいて更に決定され
前記少なくとも1つの制御データセットは、加工物材料、及び/又は加工物厚さを含む、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つのセンサデータセットを取得するステップ(S1)は、前記レーザ加工プロセスのプロセス放射の測定値に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサデータセットは、前記レーザ加工プロセスのプロセス放射の放射強度の測定値、及び/又は加工物の加工面の画像に基づいている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射強度は、所定の期間中に、及び/又は少なくとも1つの所定の波長範囲内で、及び/又は少なくとも1つの所定の波長で、及び/又は空間分解方式で、及び/又は周波数分解方式で測定される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ加工プロセスの前記プロセス放射は、温度放射、プラズマ放射、及び加工物の表面から反射されたレーザ放射のうちの少なくとも1つを含む、請求項2~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの物理特性の前記値は、同じ期間に様々なセンサによって取得された少なくとも2つのセンサデータセットに基づいて決定される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記加工結果の前記物理特性は、引張強度、圧縮強度、導電率、キーホール深さ、溶接深さ、前記レーザ加工プロセスによって接合された2つの加工物の間の隙間の隙間寸法、前記レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁の粗さ、前記レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁のバリ、前記レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁のバリ高さ、切断前面の峻度、及び前記レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁の直角度を含む群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサデータセットは、前記レーザ加工プロセスの実行中及び/又は実行後に取得され、並びに/或いは
前記物理特性の前記値は、前記レーザ加工プロセスが実行されている間に、及び/又は前記レーザ加工プロセスが完了された後に決定される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの制御データセットは、更に、レーザパワー、前記レーザ加工プロセスを実行するレーザ加工ヘッドと加工物との間の距離、焦点位置、焦点直径、及び/又は経路信号についての制御データを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
レーザ加工プロセスを分析するシステム(200)であって、前記システム(200)は、請求項1~のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成され、前記システム(200)は、
前記レーザ加工プロセスについての前記少なくとも1つのセンサデータセットを取得するように構成されたセンサユニット(210)と、
前記訓練済みニューラルネットワークによって形成された前記伝達関数によって、前記少なくとも1つの物理特性の前記値を決定するように構成された分析ユニット(220)と、
を含む、システム(200)。
【請求項11】
前記センサユニット(210)は、ダイオード、フォトダイオード、画像センサ、ラインセンサ、カメラ、スペクトルセンサ、マルチスペクトルセンサ、及び/又はハイパースペクトルセンサを含む、請求項10に記載のシステム(200)。
【請求項12】
前記分析ユニット(220)は、リアルタイムで前記少なくとも1つの物理特性の前記値を決定するように、及び前記レーザ加工プロセスを実行するレーザ加工システム(100)に制御データを出力するように構成されている、請求項10又は11に記載のシステム(200)。
【請求項13】
レーザビームによって加工物を加工するレーザ加工システム(100)であって、前記レーザ加工システム(100)は、
加工されるべき加工物(1)上にレーザビーム(10)を放射するレーザ加工ヘッド(101)と、
請求項1012のいずれか1項に記載のシステム(200)と、
を備える、レーザ加工システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物における、特に金属加工物におけるレーザ加工プロセスを分析する方法、レーザ加工プロセスを分析するシステム、及びそのようなシステムによるレーザビームを使用して加工物を加工するレーザ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームを使用して加工物を加工するレーザ加工システムにおいて、レーザ光源から又はレーザ光ファイバの1つの端部から発生するレーザビームが、ビーム誘導装置及び集束光学系によって、加工されるべき加工物上に集束又はコリメートされることにより、融点温度まで加工物を局所的に加熱する。加工は、例えば、結合すること、すなわち、加工物を恒久的に接続すること、特にレーザ溶接すること、又はレーザはんだ付けすること、及びレーザ切断すること、を含んでもよい。特に、加工物をレーザ溶接する又ははんだ付けするときに、溶接又ははんだ付けプロセスを監視すること、及び加工結果、すなわち溶接された又ははんだ付けされたシームによって形成された、加工物同士の間に生成された接合の品質を査定することにより、加工品質を保証することが重要である。レーザ加工プロセスを監視する、及びレーザ溶接の品質を査定する現在の解決案は、通常、いわゆるインプロセス及びポストプロセス監視、及びそれに対応する監視システムを含む。インプロセス監視は、レーザ加工プロセスについての開ループ及び閉ループ制御を実行するためにも使用される。
【0003】
この目的のために、例えば、レーザ溶接中に、レーザビームと加工物との間の相互作用区域から放出される様々な波長での電磁放射、特に、加工物の表面から反射又は後方散乱されたプラズマ放射、温度放射、又はレーザ放射の強度が、データ処理によって検出及び解析される。分析のために、取得されたデータ、例えば、対応する強度曲線は、指定された基準曲線又は包絡曲線と比較される。予め規定された誤差基準に基づいて、誤差が監視システムによって出力される。
【0004】
基準は、例えば、包絡曲線上方の曲線、又は包絡曲線の下方にある若しくはそれを超える曲線の積分であってもよい。
【0005】
更に、画像センサは、レーザ加工プロセス中に溶融浴の画像信号を捕捉してもよい。画像処理によって、溶融浴の幾何学的特徴、例えば溶融浴の幾何学的形状、特に溶融浴の形、サイズ、及び位置が認識されて監視に含まれてもよい。誤差がまた、指定された幾何学的形状からの偏差の場合に出力されてもよい。
【0006】
検出された誤差に基づいて、溶接された接合は、「良」(すなわち、接合された加工物が、更なる処理又は販売に適している)として、或いは「不良」(すなわち、加工物は排除される)として分類され得る。更に、溶接が誤差クラスに分類され得る。オーバーラップ溶接の場合には、例えば、「接続が存在しない」、「隙間が過大である」、又は「穴」若しくは「貫通」というクラスが存在する。更に、プロセスの閉ループ制御は、進行中のレーザ加工プロセス中に影響を受け得る。
【0007】
レーザ切断については、切断縁の粗さ、バリ高さ、切断縁の直角度、及び切断前面の峻度が、レーザ加工プロセスの品質に関する情報を提供する特徴である。これらの特徴は、典型的には、プロセス後に決定又は測定される。直列システムにおいて、切断破壊についての検出は、加工プロセス中に実行されない。許容品質は、これらの特徴の測定によって決定される。
【0008】
従来の監視システムにおいて、レーザ加工プロセスから獲得されるデータの分析が複雑であるが、その理由は、データ加工パラメータ及び誤差基準が、多くの要因に依存し、また溶接プロセスが変化すると調整されなければならないからである。パラメータは、そのため、通常、専門家によって規定及び設定される。専門家の経験は、そのため、信頼性の高い監視に重要である。複雑さのために、取得されたデータは、典型的には互いに独立して分析される。全てのデータを考慮する監視が実行されないか、又はデータ内に含まれる情報の融合は、処理連鎖の端部においてのみ実行される。複雑さのために、そのような監視システムの性能がまた、不足している。
【0009】
特許文献1及び特許文献2が、深層畳み込みニューラルネットワークを使用するレーザ加工プロセスの監視について記述する。これは、分類の性能及び信頼性を向上させ得る。
【0010】
レーザ加工プロセスの適用についての複雑さが絶えず増大するため、より正確なマッピング及び発見的手法が、処理又は加工結果についての査定に必要とされる。2つの又はほんの少数のクラスに分類することは、例えば、加工誤差の原因を決定することを可能にしない。プロセス又は加工結果を記述する1つ又は複数の物理変数又は特性について結論を導くことは可能ではない。
【0011】
しかし、溶接シームは、指定された基準を満たす必要がある。特に、溶接シームは、指定された強度、特に、引張、圧縮、又は剪断強度を有する必要がある。しかしながら、上記のように溶接シーム又は溶接接合を分類することによって、物理特性、例えば、強度、溶接深さ、又は導電率の値を定量化することは可能ではない。従来の監視システムは、そのため、加工結果の分類を提供し得るにすぎず、定量的表現を可能にする物理単位での物理測定値又は加工結果の物理特性の値を提供し得ない。
【0012】
レーザ切断について、切断された材料はまた、物理測定値の形式の基準を満たす必要がある。切断縁の粗さ及びバリ高さは、例えば、μm単位で測定されてもよく、一方、切断縁の直角度が度単位で測定される。
【0013】
そのため、加工結果の物理特性値を決定するために、測定が、レーザ加工後に実行される必要がある。溶接のこの物理特性を決定するために、溶接又は溶接された加工物が材料試験を受ける必要がある。例えば、溶接された加工物が引張試験を受けることにより、溶接が破壊する引張力をニュートン単位で決定する。この値は、溶接の引張強度として規定される。電気接点を溶接するとき、溶接シームの導電率が、ジーメンス単位で決定され得る。しかしながら、材料試験についてのこの測定は、通常、加工物の破壊につながり、そのため全ての加工物について実行され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】独国特許出願公開第102018129441.7号明細書
【文献】独国特許出願公開第102018129425.5号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、方法を提供することであって、該方法によって、特に、溶接、はんだ付け又は切断プロセスである、レーザ加工プロセスの物理特性又はレーザ加工プロセスの加工結果の値が、値の測定が実行される必要無しに非破壊的に決定され得る。
【0016】
また、本発明の目的は、方法を明記することであって、該方法は、特に、溶接、はんだ付け、又は切断プロセスである、レーザ加工プロセスの物理特性又はレーザ加工プロセスの加工結果についての値の決定を簡便化する又は自動化する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態及び更なる展開が、対応する従属請求項の主題である。
【0018】
本開示の第1態様に従って、レーザビームによって加工物を加工するレーザ加工プロセスを分析する方法が提供され、該方法は、レーザ加工プロセスのための少なくとも1つのセンサデータセットを取得するステップと、伝達関数を使用する少なくとも1つのセンサデータセットに基づいて、レーザ加工プロセスの加工結果についての少なくとも1つの物理特性の値を定量化又は決定するステップであって、伝達関数は訓練済みニューラルネットワークによって形成されている、ステップと、を含む。
【0019】
レーザ加工プロセスは、加工物を接合又は接続することを含み得る。レーザ加工プロセスは、レーザ切断プロセス、レーザ溶接プロセス、又はレーザはんだ付けプロセスであってもよく、又はこれらを含んでもよい。レーザ加工プロセスの加工結果は、切断された、接合された、又は接続された加工物、すなわち、溶接された又ははんだ付けされた又は切断された加工物を含んでもよい。特に、加工結果は、この場合、接合された加工物同士の間の溶接された接合又ははんだ付けされた接合を指してもよい。溶接された接合又ははんだ付けされた接合は、溶接シームによって形成されてもよい。換言すれば、この場合、加工結果は、溶接されたシーム又ははんだ付けされたシームを指してもよい。加工結果はまた、溶接された接合又は溶接シームの一部又は領域を指してもよい。レーザ加工プロセスによって接合されるべき加工物同士の間に隙間が存在することがあり、該隙間は、溶接の結果に影響を及ぼす。隙間は、突合せ溶接の場合に接合されるべき加工物の2つの対向面の間の空間を指すことがあり、又は重ね溶接の場合に接合されるべき加工物同士の間の空間を指すことがある。接合された加工物の対向面同士の間の距離が、隙間サイズを指すことがある。大きすぎる隙間は、レーザ加工プロセスの加工誤差を表すことがある。突合せ溶接の場合に、隙間は、プロセス前において、すなわち溶接前に決定され、重ね溶接の場合に、隙間はクランプ技術を用いて決定される。
【0020】
レーザ加工プロセスの加工結果はまた、レーザ加工プロセスの中間結果、すなわち、レーザ加工プロセスが実行されているときに(また又はそのときにのみ)存在する特徴を含み得る。特に、加工結果は、「キーホール」としても知られる蒸気キャピラリー、及び/又は溶融浴を含み得る。キーホール深さは、蒸気キャピラリーの底部と、レーザビームがその上に放射される加工物の表面との間の距離としてここで規定されてもよい。溶接深さは、キーホール深さから推定され得る。
【0021】
加工結果の物理特性の値は、加工結果の物理特性の測定値について予測又は評価された値に対応してもよい。言い換えれば、物理特性の値の決定は、物理特性の測定値を予測又は評価するように考えられ得る。物理特性の測定値の予測又は評価は、実際の測定値に対する代用であってもよく、すなわち値の測定を実行する必要がない。伝達関数を使用するセンサデータセットに基づく加工結果の物理特性の値の決定は、そのため、加工結果の物理特性の測定値を予測又は評価するために使用されてもよい。
【0022】
加工結果の少なくとも1つの物理特性は、レーザ加工プロセスによって製造された、溶接された又ははんだ付けされた接合の強度、特に、引張、圧縮及び/又は剪断強度と、レーザ加工プロセスによって製造された、溶接された又ははんだ付けされた接合の導電率と、キーホール深さと、加工物内の溶接深さと、レーザ加工プロセスによって接合された2つの加工物の間の隙間サイズと、レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁の粗さと、レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁のバリ又はバリ高さと、切断前面の峻度と、レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁の直角度と、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。切断前面のキーホール深さ又は峻度が、本発明に従う方法を用いて決定又は予測されるとき、別個の測定デバイス、例えば、光干渉断層撮影装置が、レーザ加工プロセスを実行するレーザ加工システムにおいて省略されてもよい。一方、圧縮強度値の決定は、特に、突合せ接合された加工物に関連する。レーザ切断中の加工結果は、切断縁の粗さ、切断縁のバリ若しくはバリ高さ、又は切断縁の直角度のような物理特性によって記述されてもよい。
【0023】
物理特性の値は、物理単位で、例えば、「SI単位」(国際単位系)で決定されてもよい。例えば、ニュートン(N)若しくは面積当たりニュートン(N/m)単位の強度、μm単位の溶接深さ、μm単位の隙間サイズ、及びジーメンス(S)単位の電気伝導率が決定されてもよい。切断縁の粗さは、例えば、μm単位で決定されてもよい。
【0024】
本発明は、そのため、加工結果の物理特性についての値を指定する、すなわち、入力データセットとして、レーザ加工プロセスに対して取得された、少なくとも1つのセンサデータセット、好ましくは生データを使用するニューラルネットワークによって物理特性を定量化する、ニューラルネットワークを使用するという考え方に基づくものである。本発明に従う方法を用いると、それで、加工結果についての値の測定を実行することのない非破壊方式で、レーザ加工プロセスの加工結果の物理特性の値を決定することが可能である。本発明に従う方法によって、レーザ加工プロセスについて取得されたセンサデータと加工結果の物理特性との間の関係は、例えば、回帰によって定量的に指定又は決定されてもよい。本発明に従う方法は、それで物理特性の値を加工結果に割り当てることを可能にする。物理特性は、例えば、材料条件に関する標準又は基準によって指定されてもよい、加工結果の品質特徴であってもよい。したがって、溶接された又ははんだ付けされたシーム及び切断縁のような加工結果についての品質は、定量化されるか、又は量的に記述され、そして物理特性についての決定された値に基づいて評価されることにより、溶接された又ははんだ付けされたシーム及び切断縁、並びにそれに対応するレーザ加工プロセスを分析するきめ細かな評価測定基準を指定してもよい。
【0025】
本発明に従って、加工品質を査定する説明可能な品質特徴として役に立つ物理量又は物理特性が、それで学習済みニューラルネットワークの伝達関数によって予測される。加工結果の単純な分類とは対照的に、ニューラルネットワークの入力データセットは、クラスに、例えば、「良」、「不良」に割り当られるだけではなく、加工結果の物理特性の絶対値にも割り当られる。本発明に従う方法は、それで、少数のクラスによる分類、値、好ましくは物理測定値への回帰への拡張として、物理特性を考慮に入れる。推論において、レーザ加工プロセスのために取得されたセンサデータセットは、伝達関数を使用して、回帰結果に、すなわち、物理特性の値に直接マッピングされ得る。
【0026】
少なくとも1つのセンサデータセットは、好ましくは特定の波長における又は特定の波長範囲内での、レーザ加工プロセスからのプロセス放射の測定に基づくセンサデータを含み得る。センサデータセット、例えば、レーザ加工プロセスのプロセス放射の測定値の取得は、時間分解型方式で及び/又は所定の期間にわたって実行されてもよい。センサデータセットはまた、そのため「時間データ系列」とも呼ばれてもよい。プロセス放射は、レーザビームと、「プロセス領域」又は「加工領域」とも呼ばれる加工物との間の相互作用区画からレーザ加工プロセスの実行中に放出又は反射された電磁放射を含んでもよい。プロセス放射は、加工物によって反射及び/又は後方散乱された熱放射と、プラズマ放射と、レーザ放射と、を含んでもよい。プロセス放射はまた、空間分解方式及び/又は周波数分解方式で測定され得る。
【0027】
少なくとも1つのセンサデータセットは、レーザ加工プロセスの処理パラメータ、例えば、レーザビームの焦点位置、レーザビームの焦点直径、レーザ加工を実行するレーザ加工システムのレーザ加工ヘッドの位置等についての測定値に基づくセンサデータを含んでもよい。
【0028】
プロセス放射についての測定値は、プロセス放射の放射強度の測定値を含んでもよい。この目的のために、放射強度は、少なくとも1つの所定の波長範囲内及び/又は少なくとも1つの所定の波長において、所定の期間の間に測定され得る。センサデータセットは、放射強度が測定されるそれぞれの波長範囲又はそれぞれの波長において記録されてもよい。したがって、所定の期間にわたって測定された放射強度のセンサデータは、波長範囲内又は波長においてセンサデータセットを形成する。放射強度はまた、空間分解方式で、及び/又は周波数分解方式で測定されてもよい。
【0029】
プロセス放射又は加工物の表面によって放出又は反射された放射の放射強度を測定することは、加工物の表面の画像を捕捉することを含んでもよい。言い換えると、センサデータセットは、加工物の表面又は表面の一区画の少なくとも1つの画像を含んでもよい。表面の区画は、加工領域を含んでもよい。画像は、グレースケール画像であってもよい。画像は、輝度及び/又は色情報を含んでもよい。
【0030】
物理特性の値はまた、少なくとも2つのセンサデータセットに基づいて決定されてもよい。例えば、少なくとも1つの物理特性の値は、同じ期間に様々なセンサによって取得された少なくとも2つのセンサデータセットに基づいて決定されてもよい。センサデータセットは、それぞれ、様々な波長範囲内における及び/又は様々な波長におけるプロセス放射からのセンサデータを含んでもよい。その代替として、第1センサデータセットが、プロセス放射の測定に基づいてもよく、一方、第2センサデータセットが、少なくとも1つのプロセスパラメータの測定に基いてもよい。複数のセンサデータセットを同時に考慮することによって、様々な変数がマッピングされてもよい。それに加えて、加工結果は、特に、前処理を伴わないエンドツーエンドの処理が使用される場合に、より確実により迅速に決定されてもよい。その結果、レーザ加工プロセスは、より確実により正確に監視され得る。
【0031】
少なくとも1つのセンサデータセットは、レーザ加工プロセスの実行中及び/又は実行後に取得されてもよい。物理特性の値は、レーザ加工プロセスの実行中又はレーザ加工プロセスの完了後に決定されてもよい。したがって、本発明に従う方法は、インプロセス又はポストプロセス方法として構成されてもよい。物理特性の値は、特に物理特性の値がレーザ加工プロセスを実行しながら決定されるときに、レーザ加工プロセスを制御するために使用されてもよい。例えば、レーザ加工プロセスが制御されることにより、決定された値と、加工結果又はその後の加工結果の物理特性の目標値との間の差が低減される。物理特性が、加工物内の溶接深さ、及び溶接深さの目標値からの溶接深さ偏差についての決定された値である場合、レーザ加工プロセスは、その後のレーザ加工プロセスに対して調整されることにより、溶接深さの決定された値と現在の目標値との間の差が減少する。レーザ加工プロセスの閉ループ制御が、レーザビームの焦点位置、焦点直径、レーザパワー、及び/又はレーザ加工ヘッドの距離についての調整を含んでもよい。
【0032】
本発明に従う方法は、レーザ加工プロセスが実行されている間に連続的に及び/又は反復的に実行されてもよい。言い換えると、少なくとも1つのセンサデータセットは、連続的に及び/又は反復的に取得されてもよく、少なくとも1つの物理特性の値が決定されてもよい。少なくとも1つの物理特性は、リアルタイムで決定されてもよい。
【0033】
物理特性の値は、レーザ加工プロセスの少なくとも1つの制御データセットに基づいて更に決定されてもよい。制御データセットは、制御データを含んでもよい。制御データは、レーザ加工プロセスを制御するより高いレベルの制御ユニットによって指定されてもよい。制御データは、プロセスパラメータの目標値を含んでもよい。制御データは、レーザの出力パワー、レーザビームの焦点位置、レーザビームの焦点直径、レーザ加工を実行するレーザ加工システムのレーザ加工ヘッドの位置、加工速度、経路信号、加工物材料、及び/又は加工物厚さのうちの少なくとも1つについてのデータを含んでもよい。経路信号は、レーザ加工システムからの制御信号であってもよく、該レーザ加工システムは、加工物に対するレーザ加工ヘッドの動作を制御する。上記の制御データは、レーザ加工プロセス中に取得されてもよく、制御データセットとしてリアルタイムで提供されてもよい。制御データセットは、所定の期間の間の時間分解型若しくは時間依存型制御データ、及び/又は時間非依存型制御データを含んでもよい。
【0034】
様々なデータセット、すなわち、センサデータセット及び/又は制御データセットに含まれるデータが整合する場合に有利である。このことは、様々なデータセットに含まれるデータが、同じ期間中に取得又は記録されたことを意味することがある。更に、このことは、所定の期間内の所定の時点について、データが、取得されたデータセットのそれぞれ内にあることを意味することがある。このために、センサデータ及び/又は制御データは、同じサンプリング周波数によって取得又は記録されてもよい。その代替として、センサデータ及び/又は制御データが補間されてもよく、又はセンサデータ及び/又は制御データが破棄されてもよい。
【0035】
伝達関数は、学習済み又は訓練済みのニューラルネットワークによって形成される。ニューラルネットワークは、誤差フィードバック又は誤差逆伝播法によって訓練され得る。ニューラルネットワークは、深層ニューラルネットワーク、例えば、深層畳み込みニューラルネットワーク又は畳み込みネットワークであってもよい。畳み込みネットワークは、少なくとも1つのいわゆる「全結合」層を有してもよい。
【0036】
少なくとも1つのセンサデータセットは、訓練済みニューラルネットワークのための入力データセットとして機能してもよい。複数の取得された又は記録されたデータセットが組み合わされて、ニューラルネットワークのための入力テンソルを形成してもよい。その代替として、それぞれの取得されたデータセットは、別個の入力テンソルを形成してもよい。この場合、ニューラルネットワークは、様々な取得されたデータセットのための個々のネットワークを含んでもよく、該ネットワークは、少なくとも1つの共通の出力層を介して結合されている。特に、訓練済みニューラルネットワークは、伝達関数を使用して、様々な記録されたデータセットから形成された入力テンソルを共通の出力テンソルにマッピングするように構成されてもよい。
【0037】
訓練済みニューラルネットワーク又は伝達関数は、出力テンソルとして少なくとも1つの物理特性の値を出力してもよい。ニューラルネットワーク又は伝達関数はまた、複数の物理特性の値を同時に決定し、出力テンソルとしてそれらを出力してもよい。加工結果の複数の物理特性を同時に定量化することによって、レーザ加工プロセスがより確実により正確に監視され得る。
【0038】
訓練済みニューラルネットワークは、転移学習のために構成されてもよい。転移学習は、少なくとも1つの訓練データセットに基づき得る。少なくとも1つの訓練データセットは、変更されたレーザ加工プロセスについての少なくとも1つの訓練センサデータセットと、加工結果の少なくとも1つの物理特性についての少なくとも1つの対応する所定の値と、を含んでもよい。少なくとも1つの物理特性の所定の値は、加工された加工物での直接測定によって決定されてもよい。少なくとも1つの訓練データセットは、変更されたレーザ加工プロセスの訓練制御データセットを更に含んでもよい。複数の訓練データセットが使用されて、ニューラルネットワークを調整又は訓練してもよい。
【0039】
その結果、伝達関数を形成するニューラルネットワークが、変更された状況又は変更されたレーザ加工プロセスに適用されてもよい。変更された状況は、例えば、加工されるべき加工物が、様々な材料、汚染度、及び/又は厚さを有するということ、或いはレーザ加工のパラメータが変更されるということであってもよい。転移学習において、ニューラルネットワークを訓練又は教育するために用いられる訓練データセットが、新たな例によって補われてもよい。転移学習のために構成された訓練済みニューラルネットワークの使用は、そのため、システムが、変更された状況に、特に変更されたレーザ加工プロセスに迅速に調整され得るという長所を有する。
【0040】
ニューラルネットワークは、RNN(「回帰型ニューラルネットワーク」)、LSTM(「長・短期記憶」)層、及び/又は少なくとも1つのGRU(「ゲート付き回帰型ユニット」)層であってもよい。それによって、ニューラルネットワークの性能が向上させられ得る。
【0041】
センサデータセット内に含まれるセンサデータは、未処理、すなわち生データであってもよい。センサデータは、そのため、データの前処理を伴わずに、伝達関数又は訓練済みニューラルネットワークを使用してマッピングされてもよい。この場合、「エンドツーエンド」マッピングが、事前にセンサデータから特徴を抽出すること、計算すること、又はパラメータ化することなく、実行される。訓練済みニューラルネットワークは、そのため、生データに直接的に基づいて、少なくとも1つの物理特性の値を決定してもよい。ニューラルネットワークの結果ニューロンは、次いで、物理特性の値を直接出力してもよい。
【0042】
本発明の更なる態様に従って、レーザ加工プロセスを分析するシステムが提供され、該システムは、上記の方法を実行するように構成されている。システムは、レーザ加工プロセスのための少なくとも1つのセンサデータセットを取得するように構成されたセンサユニットと、訓練済みニューラルネットワークによって形成された伝達関数を使用して物理特性の値を決定するように構成された分析ユニットとを含んでもよい。分析ユニットは、訓練済みニューラルネットワークによって形成された伝達関数を含んでもよい。
【0043】
センサユニットは、ダイオード、フォトダイオード、画像センサ、ラインセンサ、カメラ、分光器、マルチスペクトルセンサ、及び/又はハイパースペクトルセンサを含んでもよい。
【0044】
分析ユニットは、リアルタイムで値を決定するように、及び/又はレーザ加工を実行するレーザ加工システムに制御データを出力するように構成されてもよい。
【0045】
本発明の更なる態様に従うと、レーザビームを使用して加工物を加工するレーザ加工システムが提供され、該レーザ加工システムは、加工されるべき加工物上にレーザビームを放射するレーザ加工ヘッドと、上記の加工結果を分析するためのシステムと、を備える。本発明の実施形態に従うレーザ加工システムは、「予測監視システム」とも呼ばれてもよい。レーザ加工システムは、レーザ溶接システム、レーザはんだ付けシステム、又はレーザ切断システムであってもよい。レーザ加工システムは、制御ユニットを含んでもよい。分析ユニットは、制御ユニット内に一体化されてもよい。
【0046】
本発明に従うと、物理量又は特性が、それで加工結果に量的に割り当てられて、加工結果の質を決定してもよい。ここで、物理特性は、例えば、検知されたプロセス放射から取得されたセンサデータセットに基づいて、インプロセス及び/又はポストプロセスシステムによって割り当てられるか又は量的に決定される。物理特性の値の決定は、複数の様々なセンサデータセット又は様々なタイプのプロセス放射を同時に考慮しながら、実行されることが好ましい。このようにすれば、値決定が、より正確でより信頼性が高くなる。加工結果の物理特性の値についての決定は、レーザ加工プロセス(いわゆる「エンドツーエンド」のデータ処理)からの生データに基づいてもよい。データ前処理が、そのため省略されることにより、方法はより迅速に容易に実行し得る。
【0047】
本発明の実施形態は、次の図面を参照して以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態に従う、レーザビームを使用して加工物を加工するレーザ加工システム、及びレーザ加工プロセスの加工結果を分析するシステムを示す図である。
図2】本発明の実施形態に従うレーザ加工プロセスの加工結果を分析する方法を示す図である。
図3】本発明の実施形態に従う、ニューラルネットワークを訓練する際の目的関数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
特に断らない限り、同じ参照記号は、同じ要素及び同じ効果を有する要素について以下において用いられる。
【0050】
図1は、本開示の実施形態に従う、レーザビーム10によって加工物を加工するレーザ加工システム100についての概略図である。レーザ加工システム100は、レーザ加工プロセス、特に、レーザ溶接、レーザはんだ付け、又はレーザ切断、及び本発明の実施形態に従ってレーザ加工プロセスの加工結果について分析する方法を実行するように構成されている。
【0051】
レーザ加工システム100は、レーザ加工ヘッド101、具体的には、レーザはんだ付け、レーザ切断、又はレーザ溶接ヘッド、及び本発明の実施形態に従うレーザ加工プロセスの加工結果を分析するシステム200を含む。レーザ加工システム100は、レーザ加工システム100を制御する制御ユニット120を更に含む。レーザ加工ヘッド101が使用されてレーザビーム10(「加工ビーム」又は「加工レーザビーム」とも呼ばれる)を提供し、そしてレーザビーム10についてのビーム成形及び誘導のための要素(図示せず)を含んでもよい。レーザ加工プロセスが実行されるとき、レーザビーム10が、加工物1上に誘導又は放射される。このプロセスにおいて、加工物1の材料が溶融させられ及び/又は蒸発させられ、その結果として、蒸気毛細管及び蒸気毛細管を囲む溶融浴が、例えば溶接又ははんだ付け中に形成される。レーザビーム10と加工物1との間の相互作用のこの領域は、「加工領域」とも呼ばれてよい。
【0052】
実施形態に従って、レーザ加工システム100、又はレーザ加工ヘッド101のようなその部分は、加工物1に対して加工方向20に可動であってもよい。その代替又は追加として、加工物1は、加工方向20と逆に、レーザ加工システム100又はその部分に対して可動であってもよい。加工方向20は、加工物1に関する、切断、溶接、はんだ付け方向、及び/又はレーザ加工システム100、例えばレーザ加工ヘッド101の動作方向であってもよい。特に、加工方向20は、水平方向であってもよい。加工方向20はまた、「搬送方向」とも呼ばれてよい。
【0053】
レーザ加工プロセスについての加工結果を分析するシステム200は、レーザ加工プロセスについてのセンサデータセットを取得するセンサユニット210を含む。センサデータセットは、例えば、加工領域からのレーザ加工プロセスのプロセス放射、及び加工物の表面によって放出又は反射された放射のプロセス放射又は放射強度の測定に基くセンサデータを含む。プロセス放射は、熱放射、プラズマ放射、及び反射された又は後方散乱されたレーザ放射を含んでもよい。このために、センサユニット210は、ダイオード、フォトダイオード、ラインセンサ、画像センサ、カメラ、分光器、マルチスペクトルセンサ、及び/又はハイパースペクトルセンサを備えてもよい。例えば、特定の波長範囲にわたるデータが、画像センサを用いる空間分解方式で、又はダイオード若しくは分光器による空間分解方式ではなく周波数分解方式で取得されてもよい。その代替又は追加として、センサデータセットは、レーザ加工プロセス中の焦点位置、焦点直径、及び/又は加工物1からのレーザ加工ヘッド101の距離のような1つ又は複数のプロセスパラメータについて取得されたセンサデータを含んでもよい。したがって、センサユニット210は、これらの処理パラメータを取得するセンサ、例えば、静電容量型又は誘導型距離センサ、光干渉断層撮影システム等を含んでもよい。
【0054】
加工結果を分析するシステム200は、分析ユニット220を備える。分析ユニット220は、レーザ加工システム100によって実行されるレーザ加工プロセスについて取得された少なくとも1つのセンサデータセットに基づく伝達関数を使用して、少なくとも1つの物理特性の値を決定するように構成されている。分析ユニット220がセンサユニット210に接続されていることにより、分析ユニット220は、センサユニット210によって取得されたセンサデータセットを受け取り得る。
【0055】
一実施形態に従うと、分析ユニット220は、本発明の実施形態に従って物理単位の値を決定するプロセッサを含む。伝達関数は、典型的には、分析ユニット220のメモリ(図示せず)に記憶されるか、又は、例えばFPGAのような回路として実装される。伝達関数は、学習された、すなわち事前訓練済みニューラルネットワークによって形成される。少なくとも1つの物理特性の値は、伝達関数を少なくとも1つのセンサデータセットに適用することによって決定される。メモリは、更なるデータ、例えば決定された値を記憶するように構成されてもよい。分析ユニット220は、レーザ加工システム100の制御ユニット120に接続されることにより、決定された値を制御ユニット120に送信してもよい。一実施形態に従うと、分析ユニット220は、制御ユニット120(図示せず)と組み合わされる。言い換えると、分析ユニット220の機能は、共通の処理ユニット内の制御ユニット120の機能と組み合わされ得る。
【0056】
分析ユニット220は、レーザ加工システム100の制御ユニット120から制御データを受信するように、また物理特性の値を決定するために制御データを用いるように更に構成されてもよい。制御データは、例えば、レーザ出力パワー、加工物1の表面からの加工ヘッド101の目標距離、搬送方向及び速度を所与の時点においてそれぞれ含んでもよい。
【0057】
実施形態に従うと、センサユニット210は、加工物1の表面の、及び/又はレーザ加工プロセスの加工領域の画像を捕捉するように、並びにそれらをセンサデータセットとして分析ユニット220に送信するように構成された撮像ユニット211を含んでもよい。一実施形態に従って、撮像ユニット211は、加工ヘッド101に配列又は取り付けられる。例えば、撮像ユニット211は、加工方向20に関して加工ヘッド101の下流に配列されてもよい。撮像ユニット211は、レーザビーム10に対して同軸に又はある角度で方向付けされてもよい。撮像ユニット211は、例えば、反射光LED照明を有するカメラシステム又はステレオカメラシステムを備えてもよい。本発明に従って、画像は、加工物表面の一区画についての2次元画像に対応する。言い換えると、捕捉された画像は、加工物表面の2次元画像を表す。画像は、所定の期間にわたって所定の速度で捕捉されてもよい。
【0058】
制御ユニット120は、加工ヘッド101、及び/又はセンサユニット210、及び/又は撮像ユニット211を制御するように更に構成されてもよい。
【0059】
図2は、本発明の実施形態に従ってレーザ加工プロセスの加工結果を分析する方法を示す図である。この方法は、レーザ加工プロセスのための少なくとも1つのセンサデータセットを取得するステップ(S1)と、伝達関数を使用して、少なくとも1つのセンサデータセットに基づいてレーザ加工プロセスの加工結果の少なくとも1つの物理特性の値を決定するステップ(S2)であって、伝達関数は訓練済みニューラルネットワークによって形成される、ステップと、を含む。図1を参照して上記されたレーザ加工システム100、又は加工結果を分析する上記されたシステム200は、図2に示す方法を実行するように構成されている。
【0060】
実施形態に従うと、少なくとも1つのセンサデータセットは、レーザ加工プロセスの加工領域から放出された熱放射の放射強度の測定値を含む。別の実施形態に従って、更なるセンサデータセットが、物理特性の値を決定するために取得及び使用されてもよい。例えば、センサデータセットは、様々な波長における放射強度、例えば、放出されたプラズマ放射及び/又は「背面反射放射」とも呼ばれる反射されたレーザ放射の強度についての測定値を含んでもよい。更に、センサデータセットはまた、レーザ加工プロセスの加工領域についての画像を含んでもよい。これらのセンサデータセットの全ては、ニューラルネットワークのための入力データセットを表してもよい。それに加えて、所定のレーザパワー、所定の加工速度、加工物材料、及び/又は加工物厚さのようなプロセス関連の入力変数又は制御データがまた、ニューラルネットワークのための入力データセットとして使用されてもよい。
【0061】
本発明の実施形態に従うと、考慮対象の物理特性、本発明に従う方法によって決定又は推測されるそれについての値は、レーザ溶接プロセスによって接合された2つの加工物間の溶接接合についての強度、特に引張強度である。
【0062】
強度の値を決定するために、上記のデータは、所定の期間にわたって、例えばレーザ溶接プロセスの継続期間の間に所定のサンプリングレートで取得又は記録される。センサデータセットのサイズは、そのため、レーザ溶接プロセスのサンプリングレート及び継続時間に依存し、それでレーザ溶接プロセスによって生成されるべき溶接シームの長さにも依存する。このようにして取得されたセンサデータセットは、「時間データ系列」又は「時系列」とも呼ばれて、ニューラルネットワークの入力ベクトル又はテンソルを形成し得る。プロセス放射が、様々な波長において又は様々な波長範囲内で測定されるとき、それに対応して取得されたセンサデータセットは、多次元テンソルに組み合わされ得る。画像又は画像データが追加的に取得されてセンサデータセットに加えられると、より高い次元のテンソルが生成される。
【0063】
本発明に従うシステムが操作される前に、又は本発明に従う方法が実行される前に、ニューラルネットワークを教育する、いわゆる「訓練する」ために、例示的な訓練データセットがニューラルネットワークのために作成される。そのために、多数の加工プロセス、例えば溶接が実行され、それぞれの加工結果の関連する物理特性が、実験的に測定される。例えば、熱放射、反射されたレーザ放射、及び/又はプラズマ放射の強度は、レーザ加工プロセス中に測定され、それぞれの溶接のための少なくとも1つのセンサデータセット内に取得される。加工結果の少なくとも1つの物理特性が、次いで測定される。加工結果の物理特性は、基準測定システムにおいて、例えば、引張力又は引張強度を決定するための従来のシステムにおいて、決定されることが好ましい。物理特性の対応する測定値は、訓練データセット内のそれぞれのセンサデータセットに割り当てられる。
【0064】
引張強度を定量化することの例では、放出されたプロセス放射、すなわち温度放射、逆反射レーザ放射、及びプラズマ放射の強度は、0.5秒の溶接期間にわたる及び50KHzのサンプリングレートでの多数の溶接プロセスに対して取得され、そして寸法3×25000のテンソルがそれから形成される。更に、形成された溶接が破壊する引張力の値が、それぞれの溶接プロセスについて測定される。測定は、例えば、基準測定システムによって実行される。溶接が破壊する引張力は、溶接の引張強度として定義される。典型的にはニュートン単位のこれらの引張力値は、それぞれのテンソルに割り当てられて、訓練データセットを生成する。ニューラルネットワークは、これが、特に、例えば畳み込み層、LSTM層、及び/又は完全結合層から成るアーキテクチャを有するディープニューラルネットワークとして構成されている場合、この訓練データによって訓練されることにより、この溶接プロセスを使用して生成された溶接シームの引張強度についての値を後に推測する。
【0065】
ニューラルネットワークを訓練するとき、センサデータセット又は時系列は、物理特性、例えば引張強度にマッピングされる。「費用関数」としても知られた目的関数は、誤差逆伝播法のような最適化過程を用いて最小化される。目的関数をゼロにする最適化の後に、物理特性、例えば引張強度の予測値又は推定値の実測値への割り当てが、図3に示すように、強度線を形成する。引張力に対するそれぞれの予測値又は推定値が、実際の測定値に対応する。しかし、そのような測定値は常に誤差の影響を受けるので、図3に示す曲線は、強く理想化されている。
【0066】
目的関数の所定の変数についての訓練の完了後に、ニューラルネットワーク及びニューラルネットワークのパラメータを含むモデルが獲得される。このモデルは、本発明の実施形態に従う伝達関数であってもよい。推測中に、すなわち本発明に従う方法を実行するときに、取得されたセンサデータセットは、伝達関数によって回帰値に又は物理特性の値にマッピングされる。このような推測は、溶接シームが破壊する引張力を記述する場合に、予測された物理特性を直接供給する。この手順は、レーザ溶接プロセスによって生成された溶接シームを測定することによって決定され得る全ての物理特性について実行されてもよい。これについての唯一の前提条件は、それぞれの物理特性について予測されるべき測定値についての情報が、プロセスからの信号内に含まれるということである。
【0067】
本発明は、溶接プロセスの例を使用して上記されてきたが、本発明はこれに限定されない。レーザ加工プロセスは、レーザ切断プロセス又はレーザはんだ付けプロセスであってもよい。レーザ切断プロセスを査定するために、レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁の粗さ、レーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁のバリ又はバリ高さ、切断前面の峻度、及びレーザ加工プロセスによって切断された加工物の切断縁の直角度のような対応する物理特性がまた、本発明に従って定量化されて、レーザ切断プロセスを分析してもよい。
【0068】
本開示の実施形態に従うレーザ加工システムのユーザは、パラメータを設定する必要がない。ニューラルネットワークについての基礎訓練が、レーザ加工プロセスを分析するためのシステムが作動させられる前に、フィールドにおいて以前に収集された例示的なデータと、それに割り当てられた考慮中の加工結果の物理特性の値と、を含む訓練データを使用して実行される。レーザ加工プロセスへの変更が小さい場合に、訓練済みニューラルネットワークの転移学習が実行されてもよい。
【0069】
本発明に従うと、少なくとも1つの取得されたセンサデータセットの、少なくとも1つの物理特性についての数値への回帰が、それで訓練済みニューラルネットワークによって実行され得る。センサデータセットは、温度放射、プラズマ放射、及び/又は反射されたレーザ放射のような時系列データから成る多次元ベクトルを典型的に形成してもよく、そして訓練済みニューラルネットワークの入力テンソルを直接的に形成してもよい。
【0070】
そのため、「エンドツーエンド」マッピングが、事前に特徴を抽出すること、計算すること、又はパラメータ化することなく、実行されることが好ましい。入力データを様々な態様で考慮する又は組み合わせることによって、様々な物理品質又は特性が、次いで伝達関数によって、すなわち、訓練済みニューラルネットワークによって定量化され得る。訓練済みニューラルネットワークは、次いで回帰結果、すなわち物理特性の値を直接的に出力する。
【0071】
1つ又は複数のセンサデータセットを少なくとも1つの物理特性の値、及び結果として生じる細粒化評価メトリックにマッピングすることによって、レーザ加工プロセスは、材料的又は環境的変動をよりよく分析され、調整され得る。本発明は、レーザ加工システムの製造ライフサイクル中に集められたデータに基づいて知識を累積することを可能にし、それで、耐用期間の経過にわたる意思決定により正確な基礎を提供し得る。
【符号の説明】
【0072】
1 加工物、10 レーザビーム、20 加工方向、100 レーザ加工システム、101 レーザ加工ヘッド、120 制御ユニット、200 加工結果を分析するシステム、210 センサユニット、211 撮像ユニット、220 分析ユニット。
図1
図2
図3