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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】熱発泡性パテ状耐火組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240618BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240618BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240618BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20240618BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/32
C08K5/053
C09K21/04
C08J9/06 CEQ
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023010409
(22)【出願日】2023-01-26
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-129025(JP,A)
【文献】国際公開第1998/031730(WO,A1)
【文献】特開2020-029741(JP,A)
【文献】特開2020-019851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分100質量部に対し、加熱発泡剤を30~300質量部、無機リン系化合物を30~300質量部、分子量が500以下である低分子量多価アルコール化合物を30~300質量部含み、
前記ポリマー成分が液状ゴム及び固形エラストマーを含み、
前記ポリマー成分における前記液状ゴム及び固形エラストマーの質量比が95:5~50:50である、熱発泡性パテ状耐火組成物。
【請求項2】
前記加熱発泡剤が、有機系発泡剤を含む、請求項1に記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
【請求項3】
前記無機リン系化合物が、ポリリン酸アンモニウム、亜リン酸水素アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
【請求項4】
前記低分子量多価アルコール化合物が、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
【請求項5】
貫通部の隙間を閉塞するために使用される、請求項1~請求項4の何れか1つに記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築物(建物や船舶等)における防火壁や床等に設けられた電線やケーブル・配管を挿通するための貫通部の隙間を閉塞するために用いられる、熱発泡性パテ状耐火組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物や船舶などの建造物では、各設備・各部屋を画分する壁や床、天井などの防火区画体に貫通孔を穿設し、その貫通孔に空調設備の配管や各種電線ケーブルなどが挿通される。しかしながら、ある空間で火災が発生するとその熱や炎で前記樹脂パイプ,空調装置の配管の発泡断熱材,電線ケーブルの被覆などが燃焼したり溶融したりして消失してしまうため、前記貫通孔が炎道になってここから隣の設備・部屋へと延焼が進んでしまう。これらの貫通部の防火措置としては、熱膨張性パテ状耐火組成物が使用されている。
【0003】
熱膨張性パテ状耐火組成物としては、例えば、液状ゴムとブチルゴムとからなるゴム成分に、特定量の亜リン酸水素アルミニウムと、熱膨張性黒鉛を配合するパテ組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、熱膨張後は脆く形状安定性が低下しており、天井の貫通部に施工された場合は少しの衝撃で崩れ落下してしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-254563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、加工性、作業性、熱膨張性を損なうことなく、燃焼後の形状安定性に優れるパテ状耐火組成物を提供するものである。
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の配合の組成物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]ポリマー成分100質量部に対し、加熱発泡剤を30~300質量部、無機リン系化合物を30~300質量部、低分子量多価アルコール化合物を30~300質量部含み、前記ポリマー成分が液状ゴム及び固形エラストマーを含み、前記ポリマー成分における前記液状ゴム及び固形エラストマーの質量比が95:5~50:50である、熱発泡性パテ状耐火組成物。
[2]前記加熱発泡剤が、有機系発泡剤を含む、[1]に記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
[3]前記無機リン系化合物が、ポリリン酸アンモニウム、亜リン酸水素アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[1]又は[2]に記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
[4]前記低分子量多価アルコール化合物が、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[1]~[3]に記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
[5]貫通部の隙間を閉塞するために使用される、[1]~[4]の何れか1つに記載の熱発泡性パテ状耐火組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0009】
本実施形態の熱発泡性パテ状耐火組成物は、ポリマー成分、加熱発泡剤、無機リン系化合物、及び低分子量多価アルコール化合物を含む。以下、各成分について説明する。
【0010】
1.ポリマー成分
ポリマー成分は、液状ゴム及び固形エラストマーを含む。ポリマー成分は、液状ゴムと固形エラストマーからなるものであってもよく、その他のポリマーを含むものであってもよい。その他のポリマーとしては、液状ゴムでも固形エラストマーでもない樹脂(ポリオレフィン、ポリスチレンなど)などが挙げられる。ポリマー成分中のその他ポリマーの割合は、例えば0~30質量%であり、例えば、0、5、10、15、20、25、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0011】
液状ゴムと固形エラストマーの質量比は95:5~50:50である。この質量比は、好ましくは93:7~60:40であり、さらに好ましくは90:10~70:30である。液状ゴムの割合が高すぎると、非付着性が悪くなり、液状ゴムの割合が低すぎると、加工性が悪くなる。液状ゴム及び固形エラストマーの質量比の合計を100とすると、固形エラストマーの質量比は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。液状ゴムの質量比は、100から固形エラストマーの質量比を引いた値となる。
【0012】
<液状ゴム>
本発明において液状ゴムとは、25℃において流動性のあるゴムであれば何れのものでも良く、例えば、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリクロロプレン、液状ポリブテン、液状ブチルゴムなどが使用されるが、必ずしも1種のものに限ることなく、2種以上を混合してもよい。
【0013】
<固形エラストマー>
本発明において固形エラストマーとは、25℃において固形のエラストマーであれば何れのものでも良く、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・酢ビゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、再生ゴムなどの架橋可能なゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0014】
2.加熱発泡剤
加熱発泡剤は、加熱によってガスを発生させる物質である。加熱発泡剤としては、加熱することで分解によりガスを生じる物質や、それ自体ガスとなる物質などが挙げられる。加熱発泡剤自体がガスとなる物資としては、加熱によってマイクロカプセル内のガスが放出されるマイクロカプセル系発泡剤が挙げられる。
【0015】
加熱発泡剤としては、無機系発泡剤、有機系発泡剤、マイクロカプセル系発泡剤などが挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸アンモニウムが挙げられる。マイクロカプセル系発泡としては、例えば液状の低沸点炭化水素などを熱可塑性高分子殻で包み込んだものが挙げられる。
【0016】
有機系発泡剤は、好ましくは、分子中に窒素原子を含有し、加熱することにより窒素ガスやアンモニア等を発生する発泡剤である。有機系発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジド化合物、テトラゾール化合物、ジシアンジアミド、メラミン、メラミン誘導体などがある。アゾ化合物としては、例えば、アドジカルボンアミドADCA等がある。ニトロソ化合物としては、例えば、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンDPT等がある。ヒドラジン誘導体としては、例えば、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)OBSHやヒドラゾジカルボンアミドHDCA等がある。メラミン誘導体としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒド等を反応させたトリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等を挙げることができる。これらの加熱発泡剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
発泡開始温度は、例えば50℃以上であり、50~600℃が好ましく、100~600℃が好ましい。発泡開始温度が低すぎると、本実施形態の組成物を製造する際の混練による摩擦熱での昇温によって発泡が開始されてしまう場合があり、取り扱い性が悪い。一方、発泡開始温度が高すぎると、火災の際に膨張するタイミングが遅くなりすぎてしまう場合がある。発泡開始温度は、例えば、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
種々の加熱発泡剤の発泡開始温度は、以下の通りである。
・炭酸アンモニウム:58℃
・重曹:140~170℃
・メラミン:360℃
・マイクロカプセル:140~180℃
・アゾ化合物:アドジカルボンアミド(ADCA、分解温度200~210℃)
・ニトロソ化合物:N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT、分解温度205℃)
・ヒドラジン誘導体セミカルバジド化合物:
4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH、155~160℃)
ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA、分解温度245℃)
【0019】
加熱発泡剤の含有量は、ポリマー成分100重量部に対して30~300重量部であり、50~240重量部が好ましく、75~170重量部がさらに好ましい。加熱発泡剤の含有量が少なすぎると、加熱時の発泡性が悪くなりやすい。加熱発泡剤の含有量が多すぎると、過発泡で割れが生じてしまい、燃焼後の形状安定性が悪くなりやすい。加熱発泡剤の含有量は、ポリマー成分100重量部に対して、例えば、30、50、75、100、150、170、200、240、250、300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
3.無機リン系化合物
無機リン系化合物は、リン酸系化合物、亜リン酸系化合物、次亜リン酸系化合物、メタリン酸系化合物、ピロリン酸系化合物及びポリリン酸系化合物のうちの少なくとも1種を含む。本実施形態の組成物が無機リン系化合物を含むことで、燃焼後の形状安定性が向上する。無機リン系化合物としては、無機リン系の金属塩又はアンモニウム塩が好ましい。金属塩の金属としては、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が好ましい。
【0021】
リン酸系化合物としては、例えば、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第1リン酸カルシウム、第1リン酸亜鉛、第2リン酸アルミニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸カルシウム、第2リン酸亜鉛、第3リン酸アルミニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸亜鉛、第3リン酸マグネシウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0022】
亜リン酸系化合物としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛などが挙げられる。
【0023】
次亜リン酸系化合物としては、例えば、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸亜鉛などが挙げられる。
【0024】
メタリン酸系化合物としては、例えば、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸亜鉛、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0025】
ピロリン酸系化合物としては、例えば、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0026】
ポリリン酸系化合物としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0027】
無機リン系化合物は、亜リン酸水素アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0028】
無機リン系化合物の含有量は、ポリマー成分100重量部に対して30~300重量部であり、50~240重量部が好ましく、75~170重量部がさらに好ましい。無機リン系化合物の含有量が少なすぎると燃焼後の形状安定性及び密着性が悪くなりやすく、無機リン系化合物の含有量が多すぎると熱膨張性が悪くなりやすい。無機リン系化合物の含有量は、ポリマー成分100重量部に対して、例えば、30、50、75、100、150、170、200、240、250、300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
4.低分子量多価アルコール化合物
低分子量多価アルコールは、分子に水酸基(ヒドロキシル基)を2個以上有し、その分子量が500以下である化合物である。低分子量多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、グルコース、フルクトース等が挙げられる。これらの低分子量多価アルコールは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。低分子量多価アルコールの分子量は、例えば50~500であり、例えば、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
低分子量多価アルコール化合物の含有量は、ポリマー成分100重量部に対して30~300重量部であり、50~240重量部が好ましく、75~170重量部がさらに好ましい。低分子量多価アルコール化合物の含有量が少なすぎると燃焼後の形状安定性及び密着性が悪くなりやすく、低分子量多価アルコール化合物の含有量が多すぎると熱膨張性が悪くなりやすい。低分子量多価アルコール化合物の含有量は、ポリマー成分100重量部に対して、例えば、30、50、75、100、150、170、200、240、250、300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
5.その他の成分
本実施形態のパテ状耐火組成物は、その効果を阻害しない範囲で、通常のゴム配合物に使用される可塑剤(軟化剤)、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、粘着付与剤、繊維状有機化合物等を併用してもよい。その他の成分の総量は、マポリマー成分100質量部に対して、例えば0~100質量部であり、0~50質量部が好ましく、0~20質量部がさらに好ましい。この総量は、ポリマー成分A100質量部に対して、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、100質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
本実施形態のパテ状耐火組成物は、無機リン系化合物以外の無機化合物(以下、「その他の無機化合物」という)を含んでもよい。
その他の無機化合物としては、例えば、アルミナ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、等の金属水酸化物;ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土、パリゴルスカイト、セピオライト等の繊維状粘土、絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)、沸石(ゼオライト)、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、クリストパライト、スメクタイト、カオリン、ハイドロタルサイト等の粘土鉱物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;ガラス繊維(Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維)、岩綿、セラミック繊維(シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維)、ジルコニア繊維、カーボン繊維、バルクアルカリアースシリケート繊維、石膏繊維、炭素繊維、金属繊維、スラグ繊維、バサルト繊維等の繊維状無機化合物;硫酸カルシウム、けい酸カルシウム等のカルシウム塩、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、無機亜リン酸系化合物以外の無機リン酸系化合物、シリカ等が挙げられる。これら無機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
本実施形態のパテ状耐火組成物は、上記各成分をバンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等公知の混練装置を用いて混練されたものを、例えば、プレス成形、ロール成形、押し出し成形、カレンダー成形等の従来公知の成形方法で成形することが出来る。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0035】
1.パテ状耐火組成物の作製
表1~表6の配合に示した成分を、容量3リットルのニーダーミキサーを用いて80℃で10分間混練して、実施例・比較例のパテ状耐火組成物を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
表中の成分の詳細は、以下の通りである。
(1)ポリマー成分
<液状ゴム>
・液状ポリイソプレン:株式会社クラレ製「LIR-30」、分子量28000、Tg:-63℃、粘度70Pa・s(38℃)
・液状ポリブタジエン:株式会社クラレ製「LBR-302」、分子量5500、Tg:-85℃、粘度0.6Pa・s(38℃)
・液状ポリブテン:JXエネルギー株式会社製、「HV-100」、分子量980、動粘度9,500mm/s(40℃)
<固形エラストマー>
・ブチルゴム:JSR株式会社製「ブチル268」、ゴム状(40℃)
【0043】
(2―1)加熱発泡剤
<有機系発泡剤>
・メラミン:林純薬工業株式会社製
・アゾ化合物(アドジカルボンアミド):三協化成株式会社製、セルマイクC-1
・ニトロソ化合物(N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン):三協化成株式会社製、セルマイクA
・ヒドラジン誘導体(4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))::三協化成株式会社製、セルマイクS
<マイクロカプセル系発泡剤>
・マイクロカプセル:松本油脂製薬株式会社製、FN-180
<無機系発泡剤>
・炭酸水素ナトリウム:三協化成株式会社製、セルマイク266
【0044】
(2-2)加熱膨張材
・熱膨張性黒鉛:ADT社製、「ADT501」
【0045】
(3)無機リン系化合物
・亜リン酸水素AL:太平化学産業株式会社製、亜リン酸水素アルミニウム、NSF
・ポリリン酸NH4:SCM Industrial Chemical Co.,Ltd.製、ポリリン酸アンモニウム、HP-APPII
【0046】
(4)低分子量多価アルコール
・ペンタエリスリトール:関東化学株式会社製、ペンタエリスリトール(分子量136)
・ジペンタエリスリトール:関東化学株式会社製、ジペンタエリスリトール(分子量254)
【0047】
2.評価
各実施例、比較例の耐火材について、以下の測定及び評価を行った。結果を表1~表6に示す。
【0048】
<加工性(軟度)>
試験片パテをJIS A5752に準拠し荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。規定の円錐を試験片に垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。そして、貫入深さに基づいて、加工性を以下の基準で判定した。
◎:50[1/10mm]以上
○:40[1/10mm]以上50[1/10mm]未満
△:30[1/10mm]以上40[1/10mm]未満
×:30[1/10mm]未満
【0049】
<作業性(非付着性)>
ラテックスゴム手袋を装着し、試験片パテを10回握った後の手袋の付着物の重量を測定し、以下の式に基づいて付着物重量を算出した。そして、付着物重量に基づいて、非付着性を以下の基準で判定した。なお、非付着性が低いほど作業性が良いことを示す。
付着物重量(g)=(パテを10回握った後の手袋の重量)-(元の手袋の重量)
◎:0.02[g]未満
○:0.02[g]以上0.05[g]未満
△:0.05[g]以上0.10[g]未満
×:0.10[g]以上
【0050】
<熱膨張性>
厚さ4mm、幅30mm、長さ30mmの試験片パテを800℃で1時間加熱した後の体積を測定し、その体積から膨張倍率を算出した。そして、体積膨張倍率に基づいて、熱膨張性を以下の基準で判定した。
◎:4.0倍以上
○:3.0倍以上、4.0倍未満
△:2.0倍以上、3.0倍未満
×:2.0倍未満
【0051】
<燃焼後の形状安定性>
実施例・比較例の試験片パテを用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを800℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置して熱膨張させた。熱膨張後の試料を3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、熱膨張後の強度が高いことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、熱膨張後の形状安定性を以下の基準で判定した。
◎:5.0[N]以上
○:3.0[N]以上、5.0[N]未満
△:1.0[N]以上、3.0[N]未満
×:1.0[N]未満
【0052】
<燃焼後の密着性>
実施例・比較例の試験片パテを用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、珪酸カルシウム板に載せ、これを800℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置して熱膨張させた。熱膨張後の試料を3点曲げ試験治具の上部押し側治具(先端R1mmおよび幅80mm)を用い、珪酸カルシウム板と膨張後試料の境目に、速度50mm/minの条件にて押し当て、熱膨張後試料を剥がした際の密着性強度を測定した。そして、密着性強度に基づいて、熱膨張後の密着性を以下の基準で判定した。上部押し側治具を押し当てる前に熱膨張後試料が落下した場合は、密着性強度を0.0[N]とした。
◎:1.5[N]以上
○:1.0[N]以上、1.5[N]未満
△:0.5[N]以上、1.0[N]未満
×:0.5[N]未満
【要約】
【課題】加工性、作業性、熱膨張性を損なうことなく、燃焼後の形状安定性に優れるパテ状耐火組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ポリマー成分100質量部に対し、加熱発泡剤を30~300質量部、無機リン系化合物を30~300質量部、低分子量多価アルコール化合物を30~300質量部含み、前記ポリマー成分が液状ゴム及び固形エラストマーを含み、前記ポリマー成分における前記液状ゴム及び固形エラストマーの質量比が95:5~50:50である、熱発泡性パテ状耐火組成物が提供される。
【選択図】なし