(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240618BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240618BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240618BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240618BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240618BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301H
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 618F
(21)【出願番号】P 2023023566
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2020006880の分割
【原出願日】2020-01-20
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 年輝
(72)【発明者】
【氏名】田島 純平
(72)【発明者】
【氏名】布上 真也
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-311913(JP,A)
【文献】特開2018-041878(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039177(WO,A1)
【文献】特開2016-192460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0256407(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106688084(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0293709(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106024879(CN,A)
【文献】朴 冠錫 他,MOCVDによるGaN基板上への低C不純物濃度のGaN単膜成長,応用物理学会春季学術講演会,日本,応用物理学会,2015年03月11日,62,12p-P16-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/812
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にあり、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にあり、
前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高く、
前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下し、
前記第1領域は炭素を含まない、または、
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第3領域における炭素の前記濃度よりも低
く、
前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記第1濃度の対数の第1変化率は、前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記第3濃度の対数の第3変化率よりも低い、半導体装置。
【請求項2】
前記第3濃度は、前記第1向きに沿って低下する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
基板と、
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にあり、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にあり、
前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高く、
前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下し、
前記第1領域は炭素を含まない、または、
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第3領域における炭素の前記濃度よりも低
く、
前記第3領域は炭素を含み前記第2領域は炭素を含まない、または、
前記第3領域における炭素の濃度は、前記第2領域における炭素の濃度よりも高く、
前記第3領域における炭素の前記濃度は、3×10
16
/cm
3
以上5×10
17
/cm
3
以下であり、
前記第2領域における炭素の前記濃度は、2×10
15
/cm
3
以上2×10
16
/cm
3
以下である、半導体装置。
【請求項4】
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第2領域における炭素の前記濃度よりも低い、請求項1~
3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
基板と、
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にあり、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にあり、
前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高く、
前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下し、
前記第1領域は炭素を含まない、または、
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第3領域における炭素の前記濃度よりも低
く、
前記第1領域における炭素の前記濃度は、1×10
14
/cm
3
以上2×10
16
/cm
3
以下である、半導体装置。
【請求項6】
基板と、
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にあり、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にあり、
前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高く、
前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下し、
前記第1領域は炭素を含まない、または、
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第3領域における炭素の前記濃度よりも低
く、
(log
10
(1/cm
3
))/nmの単位において、前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記第2濃度の対数の第2変化率は、0.01以上0.2以下である、半導体装置。
【請求項7】
(log
10(1/cm
3))/nmの単位において、前記第3変化率は、0.0001以上0.002以下である、請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3領域の前記第1向きに沿った厚さは、10nm以上1000nm以下である、請求項1~
7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
基板と、
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にあり、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にあり、
前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高く、
前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下し、
前記第1領域は炭素を含まない、または、
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第3領域における炭素の前記濃度よりも低
く、
前記第2領域の前記第1向きに沿った厚さは、5nm以上200nm以下である、半導体装置。
【請求項10】
前記第3濃度の前記第3領域における平均値は、前記第1濃度の前記第1領域における平均値の1/10以下である、請求項1~
9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第3濃度の前記第3領域における平均値は、5×10
16/cm
3以下である、請求項1~
9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
基板と、
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にあり、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にあり、
前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高く、
前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下し、
前記第1領域は炭素を含まない、または、
前記第1領域における炭素の濃度は、前記第3領域における炭素の前記濃度よりも低
く、
前記第1濃度の前記第1領域における平均値は、5×10
16
/cm
3
以上、5×10
18
/cm
3
以下である、半導体装置。
【請求項13】
Alを含む窒化物半導体を含む第3半導体層をさらに備え、
前記第3半導体層は、前記基板と前記第1半導体層との間にある、請求項1~1
2のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項14】
Al
x2Ga
1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含む第2半導体層をさらに備え、
前記第1半導体層は、前記基板と前記第2半導体層との間にある、請求項1~1
3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項15】
第1電極、第2電極及び第3電極をさらに備え、
前記第1半導体層の一部から前記第1電極への方向は、前記第1向きに沿い、
前記第1半導体層の別の一部から前記第2電極への方向は、前記第1向きに沿い、
前記第1電極から前記第2電極への第2方向は、前記第1向きと交差し、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にある、請求項1~1
4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トランジスタなどの半導体装置において、特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性を向上できる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、半導体装置は、基板と、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層と、を含む。前記第1半導体層は、第1領域、第2領域及び第3領域を含む。前記第1領域は、前記基板と前記第3領域との間にある。前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間にある。前記第1領域におけるマグネシウムの第1濃度は、前記第3領域におけるマグネシウムの第3濃度よりも高い。前記第2領域におけるマグネシウムの第2濃度は、前記基板から前記第1半導体層への第1向きに沿って低下する。前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記第2濃度の対数の第2変化率は、前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記第3濃度の対数の第3変化率よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を例示するグラフ図である。
【
図3】
図3は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(d)は、半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る半導体装置を例示するグラフ図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る半導体装置110は、基板10s及び第1半導体層10を含む。この例では、半導体装置110は、第2半導体層20をさらに含む。半導体装置110は、第3半導体層30をさらに含んでも良い。
【0009】
第1半導体層10は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、マグネシウムを含む。第1半導体層10は、例えば、Mgを含むGaNを含む。第1半導体層10は、例えば、p形GaN層である。
【0010】
第2半導体層20は、Alx2Ga1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含む。第2半導体層20は、例えばAlGaNを含む。第2半導体層20におけるAlの組成比は、例えば、0.1以上0.4以下である。第1半導体層10は、基板10sと第2半導体層20との間にある。
【0011】
第3半導体層30は、Alを含む窒化物半導体を含む。第3半導体層30は、例えば、AlNを含む。第3半導体層30は、Alの組成比が異なる複数のAlGaN膜を含んでも良い。第3半導体層30は、基板10sと第1半導体層10との間にある。第3半導体層30は、例えば、バッファ層である。
【0012】
例えば、基板10sの上に第3半導体層30が形成されている。第3半導体層30の上に、第1半導体層10が形成されている。第1半導体層10の上に第2半導体層20が形成されている。
【0013】
実施形態において、第1半導体層10は、第1領域11、第2領域12及び第3領域13を含む。第1領域11は、基板10sと第3領域13との間にある。第2領域12は、第1領域11と第3領域13との間にある。
【0014】
第1領域11におけるマグネシウムの濃度(第1濃度)は、第3領域13におけるマグネシウムの濃度(第3濃度)よりも高い。第2領域12におけるマグネシウムの濃度(第2濃度)は、基板10sから第1半導体層10への第1向きに沿って低下する。
【0015】
第1向きは、Z軸方向に沿う。Z軸方向に対して垂直な方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0016】
例えば、基板10sの上面(第1半導体層10に対向する面)は、X-Y平面に対して実質的に平行である。第1半導体層10は、X-Y平面に沿って広がる。第2半導体層20は、X-Y平面に沿って広がる。第3半導体層30は、X-Y平面に沿って広がる。
【0017】
第1向き(+Z向き)は、基板10s及び第1半導体層10における積層方向に対応する。
【0018】
後述するように、例えば、第1半導体層10と第2半導体層20との間の界面の近傍に、2次元電子ガスが生じる。2次元電子ガスが電流経路となる。例えば、第2半導体層20の上に、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極が設けられる。ゲート電極の電位を制御することで、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を制御できる。半導体装置110は、例えば、トランジスタとして機能することができる。このような例において、Mgを含む第1半導体層10を用いることで、例えば、しきい値電圧を高くすることができる。例えば、ノーマリオフの特性が得易くなる。
【0019】
1つの例において、第2半導体層20の厚さt20(第1向きに沿った厚さ)は、5nm以上40nm以下である。
【0020】
1つの例において、第1領域11の厚さt1(第1向きに沿った厚さ)は、100nm以上1000nm以下である。1つの例において、第2領域12の厚さt2(第1向きに沿った厚さ)は、5nm以上200nm以下である。1つの例において、第3領域13の厚さt3(第1向きに沿った厚さ)は、10nm以上1000nm以下である。第1厚さt1は、Z軸方向に沿った第1領域11の厚さである。第2厚さt2、は、Z軸方向に沿った第2領域12の厚さである。第3厚さt3、は、Z軸方向に沿った第3領域13の厚さである。
【0021】
上記のように、実施形態においては、第1半導体層10(例えばGaN層)は、Mgの濃度が異なる3つの領域(第1~第3領域11~13)を含む。以下、半導体装置110におけるMgの濃度の例について説明する。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を例示するグラフ図である。
図2の横軸は、Z軸方向に沿った位置pZである。グラフにおいて、右から左への向きが、第1向き(+Z向き)に対応する。
図2の縦軸は、マグネシウム濃度の対数CMgである。
図2には、第1領域11におけるマグネシウムの第1濃度の対数CMg1、第2領域12におけるマグネシウムの第2濃度の対数CMg2、及び、第3領域13におけるマグネシウムの第3濃度の対数CMg3が示されている。
図2には、第2半導体層20におけるマグネシウムの濃度の対数CMg20も示されている。
【0023】
図2に示すように、第1領域11におけるマグネシウムの第1濃度(対数CMg1)は、第3領域13におけるマグネシウムの第3濃度(対数CMg3)よりも高い。第2領域12におけるマグネシウムの第2濃度(対数CMg2)は、第1向き(基板10sから第1半導体層10への向き)に沿って低下する。
【0024】
図2に示すように、第1向きに沿った位置pZの変化に対する第2濃度の対数CMg2の第2変化率は、第1向きに沿った位置pZの変化に対する第3濃度の対数CMg3の第3変化率よりも高い。第1向きに沿った位置pZの変化に対する第2濃度の対数CMg2の第2変化率は、第1向きに沿った位置pZの変化に対する第1濃度の対数CMg1の第1変化率よりも高い。
【0025】
第2変化率は、第2領域12における第2濃度の対数CMg2の傾きに対応する。第3変化率は、第3領域13における第3濃度の対数CMg3の傾きに対応する。第1変化率は、第1領域11における第1濃度の対数CMg1の傾きに対応する。
【0026】
このように、実施形態においては、マグネシウムの濃度が急激に変化する第2領域12と、マグネシウム濃度の変化率が小さい(または変化しない)第3領域13が設けられる。
【0027】
既に説明したように、第1半導体層10の、第2半導体層20の近傍に2次元電子ガスが形成される。2次元電子ガスは、第1半導体層10のうちの第3領域13に設けられる。もし、第3領域13におけるマグネシウムの濃度が高いと、Mgにより電子の移動が妨げられる。第3領域13におけるマグネシウムの濃度が低いことで、Mgにより妨げられることが抑制される。これにより、高い電子移動度が得やすくなる。
【0028】
一方、第1領域11におけるマグネシウムの濃度を高くすることで、しきい値電圧を効果的に高くできる。第2領域12は、第1領域11から第3領域13に向けて、マグネシウムの濃度が低下する領域である。
【0029】
例えば、第1領域11と第2領域12との境界の位置(
図2の点p1)から、第3領域13と第2半導体層20との境界(
図2の点p2)に向けて、なだらかに(例えば線形に)、マグネシウムの濃度が変化する第1参考例が考えられる。この場合、点p1と点p2との間の厚さが変化すると、しきい値電圧が大きく変化する。しきい値電圧は、マグネシウムの濃度に依存する。マグネシウムの濃度が低いと、しきい値電圧が低くなる。
【0030】
実施形態においては、第2領域12においてマグネシウムの濃度をステップ状に高い変化率で変化させる。そして、第3領域13では、マグネシウムの濃度の変化を小さくする。これにより、例えば、第3領域13の厚さが変化しても、しきい値電圧は比較的変化し難い。
【0031】
例えば、製造工程のばらつきなどに起因して、第3領域13の厚さが変動する場合がある。実施形態によれば、厚さの変動の許容幅を拡大できる。実施形態においては、しきい値電圧が安定化した実用的な半導体装置を適用できる。特性を向上できる半導体装置を提供できる。
【0032】
既に説明したように、マグネシウムの濃度が高い第1領域11を設けることで、高いしきい値電圧が得られる。実施形態によれば、製造条件が変動しても、高いしきい値電圧が安定して得られる。
【0033】
実施形態において、第2変化率(第1向きに沿った位置pZの変化に対する第2領域12におけるMgの第2濃度の対数CMg2の第2変化率)は、例えば、0.01以上0.2以下である。この例において、第2変化率の単位は、(log10(1/cm3))/nmである。これにより、例えば、しきい値電圧の制御性が向上する。
【0034】
図2に示すように、マグネシウム濃度の変化を、Z軸方向に沿った位置pZ(nm)に対応する横軸と、マグネシウム濃度の対数CMg(単位:/cm
3)に対応する縦軸と、により表すことができる。この場合において、第2変化率ΔCMg2は、例えば、
図2の点p1におけるマグネシウム濃度と、
図2の点p3におけるマグネシウム濃度と、で表される。
図2の点p1は、第1領域11と第2領域12との境界の位置に対応する。
図2の点
p3は、第2領域12と第3領域13との境界の位置に対応する。点p1におけるマグネシウム濃度の対数をCMg(p1)(単位:/cm
3)とする。点p3におけるマグネシウムの濃度の対数をCMg(p3)(単位:/cm
3)とする。点p1のZ軸方向に沿った位置をpZ(p1)(単位:nm)とする。点p3のZ軸方向に沿った位置をpZ(p3)(単位:nm)とする。
【0035】
第2変化率ΔCMg2は、
ΔCMg2=(log10(CMg(p1))―log10(CMg(p3)))/((pZ(p1)―pZ(p3))
で表される。第2変化率ΔCMg2の単位は、(log10(1/cm3))/nmである。
【0036】
実施形態において、第3変化率(第1向きに沿った位置pZの変化に対する第3領域13におけるMgの第3濃度の対数CMg3の第3変化率)は、例えば、0.0001以上0.002以下である。この例において、第3変化率の単位は、(log10(1/cm3))/nmである。これにより、例えば、第3領域13の厚さが変化した際のしきい値電圧の変化を小さくできる。
【0037】
第3変化率ΔCMg3は、例えば、
図2の点p2におけるマグネシウム濃度と、
図2の点p3におけるマグネシウム濃度と、で表される。
図2の点p2は、第3領域13と第2半導体層2
0との境界の位置に対応する。点p2におけるマグネシウム濃度の対数をCMg(p2)(単位:/cm
3)とする。点p2のZ軸方向に沿った位置をpZ(p2)(単位:nm)とする。
【0038】
第3変化率ΔCMg3は、
ΔCMg3=(log10(CMg(p3))―log10(CMg(p2)))/((pZ(p3)―pZ(p2))
で表される。第3変化率ΔCMg3の単位は、(log10(1/cm3))/nmである。
【0039】
実施形態においては、第2領域12において、マグネシウムの濃度をステップ状に低下させる。このようなプロファイルは、後述するように、例えば、実用的な製造条件などを工夫することで、得やすい。以下、マグネシウム(Mg)を含むGaN層の製造条件に関する実験結果の例について説明する。
【0040】
図3は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図3は、Mgを含むGaN層において、製造条件と、GaN層に含まれるMgの濃度と、の関係を示している。
図3の横軸は、Mgを含むGaNを成長させる際のアンモニアの分圧PN(kPa)である。
図3の縦軸は、Mgの濃度CMg0である。濃度CMg0は、対数で表示されている。
【0041】
Mgを含むGaNは、例えば、Ga(ガリウム)を含む原料と、アンモニアと、Mgを含む原料と、を含むガスを用いて成長される。成長は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により行われる。Gaを含む原料は、例えば、TMG(トリメチルガリウム)である。Mgを含む原料は、例えば、Cp
2Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)である。
図3の例では、TMGの供給量に対するCp
2Mgの供給量の比(Cp
2Mg/TMG)は、3.7×10
-6である。
図3の例では、Cp
2Mgの分圧は一定である。
【0042】
図3に示すように、アンモニアの分圧PN(アンモニアガスの分圧)が高くなると、GaにおけるMgの濃度CMg0が低下する。これは、アンモニアの分圧PNが高くなると、GaNへのMgの取り込まれる効率が低下することを意味する。例えば、Cp
2Mgの分圧が一定でも、GaNに導入されるMgの濃度が変化する。
【0043】
一般的に、Mgを含むGaN層を成長させた後には、成長装置の内部(例えば装置壁面など)に、Mgが残留すると考えられる。このため、Mgを含むGaN層を成長させた後に、Mgを含まないGaN層を成長させると、意図せずに、残留したMgがGaNに取り込まれる場合がある。この際、Mgを含まないGaN層を成長させるときの条件として、Mgが取り込まれやすい条件を採用すると、GaN層には意図せずにMgが導入される。これに対して、Mgを含まないGaN層を成長させるときの条件として、Mgが取り込まれ難い条件を採用すると、GaN層への導入が抑制できる。
【0044】
例えば、Mgの取り込まれる効率を考慮する条件を採用することで、Mgを含まない(またはMg濃度が適切に低い)GaN層を得ることが容易になる。
【0045】
一方、Mgの取り込まれる効率を考慮しない場合は、意図せずにMgがGaN層に導入される。このため、Mg濃度を適切に低くすることが困難である。この場合、例えば、成長装置内に残留したMgが消費されてMgの濃度が低くなるまでに、成長されるGaN層の厚さが厚くなる。または、Mgの濃度を低くなることは困難である。
【0046】
例えば、Mgの取り込まれる効率を考慮する条件を採用することで、Mgを含まない(またはMg濃度が適切に低い)GaN層を得ることが容易になる。
【0047】
図4(a)~
図4(d)は、半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図4に示すように、基板10s準備する。例えば、基板10sの上に第3半導体層30が形成されても良い。基板10sの上に(この例では第3半導体層30)の上に、第1領域11を形成する。第1領域11は、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、マグネシウムを含む原料と、を含む第1ガスを用いて形成される。第1領域11の形成において、アンモニアの分圧PNは第1分圧である。第1分圧は、比較的低い。第1分圧は、例えば、5kPa以上15kPa以下である。
【0048】
図4(b)に示すように、第1領域11の形成の後に、第2領域12を形成する。第2領域12は、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、を含む第2ガスを用いて形成される。第3領域13の形成においてマグネシウムを含む原料は供給されない。第2領域12の形成において、アンモニアの分圧PNは第2分圧である。第2分圧は、第1分圧よりも高い。第2分圧は、35kPa以上65kPa以下である。第2分圧は、36kPa以上60kPa以下でもよい。第2分圧が高いので処理装置にMgが残留していても、第2領域12には、Mgが取り込まれ難い。
【0049】
図4(c)に示すように、第2領域12の形成の後に、第3領域13を形成する。第3領域13は、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、を含む第3ガスを用いて形成される。第3領域13の形成においてマグネシウムを含む原料は供給されない。第3領域13の形成において、アンモニアの分圧PNは、第3分圧である。例えば、第3分圧は、第2分圧よりも低くても良い。第3分圧は、例えば、20kPa以上35kPa以下である。第3領域13の形成ときには、例えば、処理装置に残留したMgは少ない。このため、第3分圧は、第2分圧よりも低くても、第3領域13には、Mgが取り込まれにくい。第3分圧は、例えば、第2分圧と同じでも良い。例えば、処理装置に残留したMgが少ないため、Mgの取り込みのより少ない第3領域13を形成できる。
【0050】
例えば、このような製造条件を用いることで、第2領域12でMgの濃度がステップ状に低下するプロファイルが得やすい。
【0051】
図4(d)に示すように、第3領域13の後に、アルミニウムを含む原料と、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、を含むガスを用い、第2半導体層20を形成する。
【0052】
図5(a)及び
図5(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図5(a)は、上記の条件で製造した第1試料SP1におけるMgの濃度のSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析結果を例示している。第1試料SP1の製造において、第2分圧は、第1分圧よりも高い。第3分圧は、第2分圧よりも低く、第1分圧よりも高い。
【0053】
図5(b)は、第2試料SP2におけるMgの濃度のSIMS分析結果を例示している。第2試料SP2の製造において、第2分圧は、第1分圧と同じである。第3分圧は、第1分圧と同じである。従って、第2試料SP2においては、第2領域12及び第3領域13の区別は存在しない。便宜的に、第1試料SP1における第2領域12及び第3領域13のそれぞれに対応する領域を、第2試料SP2における第2領域12及び第3領域13と見なす。
【0054】
図5(a)及び
図5(b)において、横軸は、Z軸方向における位置pZである。縦軸は、Mgの濃度CMg0である。
【0055】
図5(a)に示すように、第1試料SP1において、第1領域11において、Mgの濃度CMg0が高い。Mgの濃度CMg0は、第2領域12でステップ状に低下する。第3領域13において、Mgの濃度CMg0は低い。
【0056】
図5(b)に示すように、第2試料SP2において、第1領域11、第2領域12及び第3領域13において、Mgの濃度CMg0が高い。Mgの濃度CMg0が実質的に低下しない。これは、第2分圧が第1分圧と同じであるため、処理装置に残留したMgがGaN中に取り込まれたことが原因であると考えられる。例えば、第3分圧が第1分圧と同じであるため、処理装置に残留したMgがGaN中に取り込まれたことが原因であると考えられる。第2試料SP2においては、第3領域13に対応する部分において、Mgの濃度CMg0が高いため、第2試料SP2の構成を用いたトランジスタにおいて電子移動度が低い。例えば、トランジスタのオン抵抗が高い。
【0057】
このような第1試料SP1を用いて形成されたトランジスタの特性の例について説明する。
【0058】
図6は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図6は、第1試料SP1の条件(第2分圧が第1分圧よりも高い)で形成されたトランジスタの特性を例示している。この図には、第3領域13の厚さt3が異なる複数の試料の測定結果が示されている。これらの図の横軸は、第3領域13の厚さt3(nm)である。縦軸は、しきい値電圧Vth(V)である。
【0059】
図6に示すように、第1試料SP1の条件においては、第3領域13の厚さt3が厚くなると、しきい値電圧Vthは実質的に一定になる。例えば、第3領域13の厚さt3が変動しても、安定したしきい値が得られる。
【0060】
実施形態においては、例えば、上記の第1試料SP1の条件が採用されることが好ましい。これにより、第2領域12において、Mgの濃度CMg0が高い変化率でステップ状に変化する。これにより、第3領域13の厚さt3が変動しても、安定して高いしきい値電圧Vthが得られる。例えば、ノーマリ―オフ動作が安定して得られる。例えば、厚さの変動の許容幅を拡大できる。しきい値電圧Vthが高い実用的な半導体装置を適用できる。これにより、特性を向上できる半導体装置を提供できる。
【0061】
図2に示すように、実施形態において、第3領域13におけるMgの濃度(第3濃度)は、第1向き(+Z向き)に沿って低下しても良い。これにより、Mgに起因する電子の散乱が低減され、高い電子移動度が得やすい。例えば、第2半導体層20と第3領域13との界面に形成される2次元電子ガスにおいて、高い電子移動度が得やすい。
【0062】
図2に示すように、例えば、第1向き(+Z向き)に沿った位置pZの変化に対する、第1領域11におけるMgの濃度(第1濃度)の対数の第1変化率は、第1向き(+Z向き)に沿った位置pZの変化に対する、第3領域13におけるMgの濃度(第3濃度)の対数の変化率(第3変化率)よりも低い。
【0063】
実施形態において、例えば、第3濃度(第3領域13におけるMgの濃度CMg0)の第3領域13における平均値は、第1濃度(第1領域11におけるMgの濃度CMg0)の前記第1領域における平均値の1/10以下である。第3濃度の平均値が低いことで、例えば、高い電子移動度が得やすい。
【0064】
第3濃度の第3領域13における平均値は、例えば、5×1016/cm3以下である。第3濃度の第3領域13における平均値は、例えば、2×1016/cm3以下でも良い。第3濃度の第3領域13における平均値は、例えば、1×1016/cm3以下でも良い。
【0065】
実施形態において、例えば、第1濃度(第1領域11におけるMgの濃度CMg0)の第1領域11における平均値は、例えば、5×1016/cm3以上である。第1濃度の第1領域11における平均値は、例えば、1×1019/cm3以下でも良い。第1領域11における第1濃度の平均値は、例えば、5×1018/cm3以下でも良い。
【0066】
実施形態において、第1半導体層10は炭素を含んでも良い。以下、第1半導体層10における炭素の濃度のプロファイルの例について説明する。
【0067】
図7は、第1実施形態に係る半導体装置を例示するグラフ図である。
図7の横軸は、Z軸方向に沿った位置pZである。グラフにおいて、右から左への向きが、第1向き(+Z向き)に対応する。
図7の縦軸は、炭素濃度の対数CCである。
図7には、第1領域11における炭素の濃度の対数CC1、第2領域12における炭素の対数CC2、及び、第3領域13における炭素の濃度の対数CC3が示されている。
【0068】
図7に示すように、第3領域13における炭素の濃度(対数CC3)は、第2領域12における炭素の濃度(対数CC2)よりも高い。または、第3領域13は炭素を含み、第2領域12は炭素を含まなくても良い。
【0069】
例えば、第3領域13に炭素が取り込まれることで、第3領域13にMgが取り込まれることが抑制できる。例えば、p形領域においては、炭素は、n形不純物として機能する。例えば、炭素は、Mgのp形不純物としての機能を抑制する。例えば、第3領域13に炭素が存在することで、Mgを補償することができる。
【0070】
第2領域12における炭素の濃度が低いことで、例えば、Mgの濃度を高い変化率でステップ状に変化することができる。例えば、しきい値電圧の制御性が向上し、安定したしきい値が得られ易くなる。
【0071】
例えば、第3領域13における炭素の濃度は、3×1016/cm3以上5×1017/cm3以下である。これにより、例えば、第3領域13におけるMgの濃度を制御することが容易になる。
【0072】
例えば、第2領域12における炭素の濃度は、2×1015/cm3以上2×1016/cm3以下である。これにより、例えば、Mgの濃度を高い変化率でステップ状に変化することができる。例えば、しきい値電圧の制御性が向上し、安定したしきい値が得られ易くなる。
【0073】
図7に示すように、1つの例において、第1領域11における炭素の濃度は、第3領域13における炭素の濃度よりも低い。第1領域11における炭素の濃度が低いことで、例えば、第1領域11において、Mgのp形導電性の機能が効果的に得られる。第1領域11は、炭素を実質的に含まなくても良い。
【0074】
例えば、第1領域11における炭素の濃度は、第2領域12における炭素の濃度よりも低くても良い。例えば、第1領域11における炭素の濃度は、1×1014/cm3以上2×1016/cm3以下である。第1領域11における炭素の濃度は、1×1014/cm3以上9×1015/cm3以下でも良い。
【0075】
図8(a)及び
図8(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図8(a)は、第1試料SP1における炭素の濃度のSIMS分析結果を例示している。既に説明したように、第1試料SP1の製造において、第2分圧は、第1分圧よりも高い。第1試料SP1において、第3分圧は、第1分圧よりも高い。
図8(b)は、上記の第2試料SP2に対応する。第2試料SP2の製造において、第2分圧は、第1分圧と同じであり、第3分圧は、第1分圧と同じである。
【0076】
図8(a)に示すように、第1試料SP1において、第2領域12における炭素の濃度は、第1領域11における炭素の濃度よりも高い。第1試料SP1において、第3領域13における炭素の濃度は、第2領域12における炭素の濃度よりも高い。第1試料SP1において、第2領域12における炭素の濃度は、第1領域11における炭素の濃度よりも高く、第3領域13における炭素の濃度よりも低い。
【0077】
上記の第1試料SP1においては、第3分圧は、第2分圧よりも低い。第3分圧が第2分圧よりも低いと、炭素が取り込まれ易いと考えられる。第3分圧を第2分圧よりも低くすることで、第3領域13に炭素が取り込まれやすくなると考えられる。
【0078】
このように、実施形態に係る半導体装置は、基板10sと、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む第1半導体層10と、を含む。第1半導体層10は、第1領域11、第2領域12及び第3領域13を含む。第1領域11は、基板10sと第3領域13との間にある。第2領域12は、第1領域11と第3領域13との間にある。第1領域11におけるマグネシウムの濃度CMg0は、第3領域13におけるマグネシウムの濃度CMg0よりも高い。第2領域12におけるマグネシウムの濃度CMg0は、基板から第1半導体層10への第1向き(+Z向き)に沿って低下する。第3領域13は炭素を含み、第2領域12は炭素を含まない。または、第3領域13における炭素の濃度は、第2領域12における炭素の濃度よりも高い。
【0079】
図9は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、実施形態に係る半導体装置120は、基板10s、第1半導体層10及び第2半導体層20に加えて、第1電極51、第2電極52及び第3電極53を含む。この例では、半導体装置120は、第3半導体層30を含む。半導体装置120において、基板10s、第1半導体層10、第2半導体層20及び第3半導体層30の構成は、半導体装置110のそれらの構成と同じで良い。以下、電極の例について説明する。
【0080】
図9に示すように、第1半導体層10の一部10aから第1電極51への方向は、第1向き(+Z向き)に沿う。第1半導体層10の別の一部10bから第2電極52への方向は、第1向き(+Z向き)に沿う。第1電極51から第2電極52への第2方向は、第1向きと交差する。第2方向は、例えば、X軸方向である。第3電極53の第2方向における位置は、第1電極51の第2方向における位置と、第2電極52の第2方向における位置と、の間にある。
【0081】
例えば、この例では、第1半導体層10の一部10cと、第3電極53と、の間に第2半導体層20の一部がある。第2半導体層20と第3電極53との間に絶縁膜80がある。
【0082】
第1電極51は、例えば、ソース電極として機能する。第2電極52は、例えば、ドレイン電極として機能する。第3電極53は、例えば、ゲート電極として機能する。半導体装置120は、例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。
【0083】
図10及び
図11は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図10及び
図11に示すように、実施形態に係る半導体装置121及び122も、基板10s、第1半導体層10、第2半導体層20、第1電極51、第2電極52、第3電極53及び絶縁膜80を含む。
【0084】
半導体装置121及び122においては、第3電極53の少なくとも一部から第2半導体層20への方向は、X軸方向に沿う。半導体装置121及び122は、例えば、リセス形のゲート電極を有する。半導体装置121においては、第3電極53の少なくとも一部から第2半導体層20の一部への方向は、X軸方向に沿う。半導体装置122においては、第3電極53の少なくとも一部から第1半導体層10の一部への方向は、X軸方向に沿う。
【0085】
半導体装置120、121及び122においては、第1半導体層10は、上記の、第1領域11、第2領域12及び第3領域13を含む。これにより、例えば、安定したしきい値電圧Vthが得られる。
【0086】
(第2実施形態)
第2実施形態は、半導体装置の製造方法に係る。
図12(a)及び
図12(b)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図12(a)に示すように、製造方法において、基板10sを準備する(ステップS100)。基板10sに第3半導体層30が設けられても良い。
【0087】
基板10sに、第1半導体層10を形成する(ステップS110)。第1半導体層10は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含みマグネシウムを含む。第1半導体層10の形成は、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、マグネシウムを含む原料と、を含むガスを用いて行われる。
【0088】
図12(a)に示すように、さらに第2半導体層20を形成しても良い(ステップS120)。
【0089】
図12(b)は、第1半導体層10の形成を例示している。
図12(b)に示すように、第1半導体層10の形成(ステップS110)は、第1領域11の形成(ステップS111)、第2領域12の形成(ステップS112)、及び、第3領域13の形成(ステップS113)を含む。
【0090】
第1領域11の形成においては、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、マグネシウムを含む原料と、を含む第1ガスを用い、アンモニアの第1分圧で第1領域11を形成する。
【0091】
第2領域12の形成は、第1領域11の形成の後に行われる。第2領域12の形成においては、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、を含む第2ガスを用い、アンモニアの第2分圧で第2領域12を形成する。第2分圧は、第1分圧よりも高い。
【0092】
第3領域13の形成は、第2領域12の形成の後に行われる。第3領域13の形成においては、ガリウムを含む原料と、アンモニアと、を含む第3ガスを用い、アンモニアの第3分圧で第3領域13を形成する。1つの例において、第3分圧は、第2分圧よりも低い。別の1つの例において、第3分圧は、第2分圧と同じである。
【0093】
実施形態に係る製造方法においては、第2分圧は第1分圧よりも高い。これにより、第2領域12において、Mgの濃度を高い変化率で(ステップ状に)低下させることができる。一方、第3分圧は、第2分圧以下である。これにより、第3領域13において、Mg濃度の変化を小さくできる。これにより、例えば、しきい値電圧Vthの変動が抑制できる。実施形態においては、特性を向上できる半導体装置の製造方法が提供できる。
【0094】
実施形態において、第1分圧は、例えば、5kPa以上15kPa以下である。第2分圧は、例えば、36kPa以上60kPa以下である。第3分圧は、例えば、20kPa以上35kPa以下である。
【0095】
実施形態において、基板10sは、例えば、シリコンを含む。基板10sは、例えば、サファイア、SiCまたはGaNを含んでも良い。第3半導体層30は、例えば、AlNを含む。第3半導体層30は、例えば、複数のAlGaNが積層された積層体を含んでも良い。第3半導体層30は、例えば、GaN層とAlN層とが周期的に積層された超格子構造を含んでも良い。
【0096】
実施形態によれば、特性を向上できる半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【0097】
実施形態において「窒化物半導体」は、BxInyAlzGa1-x-y-zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれる。
【0098】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれる基板、半導体層、電極及び絶縁膜などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0099】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0100】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0101】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10…第1半導体層、 10a~10c…一部、 10s…基板、 11~13…第1~第3領域、 20…第2半導体層、 30…第3半導体層、 51~53…第1~第3電極、 80…絶縁膜、 110、120、121、122…半導体装置、 CC、CC1、CC2、CC3…対数、 CMg…対数、 CMg0…濃度、 CMg1、CMg2、CMg3、CMg20…対数、 PN…分圧、 SP1、SP2…第1、第2試料、 Vth…しきい値電圧、 p1、p2、p3…点、 pZ…位置、 t1、t2、t3、t20…厚さ