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特許7506212密度変調によって高性能を達成するフィードバック制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】密度変調によって高性能を達成するフィードバック制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20240618BHJP
   H03M 7/32 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G05B11/36 505A
H03M7/32
G05B11/36 505Z
G05B11/36 507C
G05B11/36 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2023041822
(22)【出願日】2023-03-16
(65)【公開番号】P2023138919
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/321,809
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/339,394
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/178,552
(32)【優先日】2023-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】シイ‐シュヨン チェン
(72)【発明者】
【氏名】張 傑堯
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 宏吉
(72)【発明者】
【氏名】ジーン‐ムオン リウ
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-130633(JP,A)
【文献】米国特許第7463089(US,B1)
【文献】特開平8-330967(JP,A)
【文献】特表2015-519778(JP,A)
【文献】特開2011-258192(JP,A)
【文献】特開2008-193160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/36
H03M 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
を有し、
当該フィードバック制御システムが動作している間、当該フィードバック制御システムは前記負荷についての量を蓄積する、
フィードバック制御システム。
【請求項2】
前記負荷は負荷量を生成し、特定の時間に対応する前記負荷量が、該特定の時間の前の時間に対応する前記負荷量に依存する、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項3】
前記負荷は容量性負荷であり、
当該フィードバック制御システムが動作している間、当該フィードバック制御システムは前記容量性負荷上の電荷の量を蓄積する、
請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項4】
前記負荷はアクチュエータを有する、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項5】
前記負荷はスピーカ負荷である、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項6】
前記ソース信号はオーディオ信号に相当する、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項7】
前記デルタ回路及び前記シグマ回路によってループが形成され、
前記ループは、ノイズシェイピング効果を持つノイズ伝達関数に相当する、
請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項8】
前記駆動装置は前記ループ内にある、請求項7に記載のフィードバック制御システム。
【請求項9】
前記シグマ回路は、少なくとも1つの積分器又はデジタル無限インパルス応答(IIR)フィルタを有する、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項10】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
を有し、
前記駆動装置は、電圧源と前記負荷との間に結合され、
前記駆動装置は、元々は前記負荷に蓄えられた第1のエネルギーを、エネルギー除去フェーズ中に、前記電圧源に蓄えられる第2のエネルギーに変換する、
ィードバック制御システム。
【請求項11】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
を有し、
前記駆動装置は、電圧源と前記負荷との間に結合され、
放電動作の間、前記駆動装置は、前記電圧源に向かう電流を形成する、
載のフィードバック制御システム。
【請求項12】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
を有し、
前記駆動装置は、電圧源と前記負荷との間に結合され、
前記駆動装置はスイッチング回路及びパルス幅変調(PWM)コントローラを有する、
ィードバック制御システム。
【請求項13】
前記スイッチング回路はインダクタを含む、請求項12に記載のフィードバック制御システム。
【請求項14】
前記スイッチング回路は、
前記電圧源と前記インダクタの第1端子との間に結合された第1スイッチと、
前記インダクタの前記第1端子に結合された第2スイッチと、
前記負荷と前記インダクタの第2端子との間に結合された第3スイッチと、
前記インダクタの前記第2端子に結合された第4スイッチと、
を有する、請求項13に記載のフィードバック制御システム。
【請求項15】
前記PWMコントローラは、前記駆動装置が充電動作を行ったり放電動作を行ったりするように前記スイッチング回路を制御するためのPWM信号を生成する、請求項12に記載のフィードバック制御システム。
【請求項16】
前記PWMコントローラは、メモリ、デジタル-アナログ変換器(DAC)、鋸歯状信号発生器、及び比較器を有する、請求項12に記載のフィードバック制御システム。
【請求項17】
前記メモリは、充電動作又は放電動作のためのパルス幅制御コード(PWCC)を提供するルックアップテーブルを含み、
アイドルフレーム内では、前記メモリに格納された前記ルックアップテーブルのテーブルルックアップ動作又はテーブル学習動作が行われず、
前記アイドルフレーム内では充電動作も放電動作も行われず、前記アイドルフレーム内では電流が前記負荷に流れ込んだり前記負荷から流れ出たりしない、
請求項16に記載のフィードバック制御システム。
【請求項18】
前記DAC、前記鋸歯状信号発生器、及び前記比較器のうち少なくとも1つはアイドルフレーム内で動作せず、
前記アイドルフレーム内では充電動作も放電動作も行われず、前記アイドルフレーム内では電流が前記負荷に流れ込んだり前記負荷から流れ出たりしない、
請求項16に記載のフィードバック制御システム。
【請求項19】
前記ソース信号の信号レベルが閾値より低いとき、当該フィードバック制御システムの動作周期内のアイドルフレームの割合が50%を超える、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項20】
当該フィードバック制御システムは、前記負荷と前記デルタ回路との間に結合されたアナログ-デジタル変換器(ADC)を有し、
前記デルタ回路は、前記ADCの出力に従って生成された前記フィードバック信号を受信する、
請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項21】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
前記負荷と前記デルタ回路との間に結合されたアナログ-デジタル変換器(ADC)であり、前記デルタ回路は、当該ADCの出力に従って生成された前記フィードバック信号を受信する、ADCと、
前記駆動装置と前記ADCとの間に結合された適応スケーラ
有するフィードバック制御システム。
【請求項22】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
前記負荷と前記デルタ回路との間に結合されたアナログ-デジタル変換器(ADC)であり、前記デルタ回路は、当該ADCの出力に従って生成された前記フィードバック信号を受信する、ADCと、
を有し、
前記ADCは複数の動作を実行して、2つの連続した動作サイクルの間に複数の出力を取得し、前記フィードバック信号は、前記ADCの前記複数の出力に従って生成される、
ィードバック制御システム。
【請求項23】
負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムであって、
ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、
前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、
前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、
前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、
前記負荷と前記デルタ回路との間に結合されたアナログ-デジタル変換器(ADC)であり、前記デルタ回路は、当該ADCの出力に従って生成された前記フィードバック信号を受信する、ADCと、
を有し、
前記ADCは逐次近似レジスタ(SAR)ADCである、
ィードバック制御システム。
【請求項24】
前記ADCはアナログ入力を受け取り、
前記ADCは、前記アナログ入力に対して、複数の第1閾値を用いた複数の第1比較を実行して、ADC出力コードワードの複数の最上位側ビットを取得し、
前記ADCは、前記アナログ入力に対して、第2閾値を用いた複数の比較を実行して、前記ADC出力コードワードの複数の最下位側ビットを取得する、
請求項20に記載のフィードバック制御システム。
【請求項25】
前記ADCはアイドルフレーム内で動作しない、請求項20に記載のフィードバック制御システム。
【請求項26】
当該フィードバック制御システムはオーディオ駆動システム内で適用され、前記負荷は容量性スピーカ負荷であり、前記ソース信号はオーディオソース信号である、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【請求項27】
前記駆動装置は2ビット量子化器でない、請求項1に記載のフィードバック制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フィードバック制御システムに関し、より具体的には、高い性能を達成することが可能なフィードバック制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクルーズ制御用途、ロボット制御用途、温度制御用途、化学プロセス制御用途などの様々な用途で、フィードバック制御方式が広く使用されている。フィードバック制御システムは通常、加算ブロック、コントローラ、プラント、及びセンサによって形成されるループを有する。コントローラによって提供される制御変数(control variable;CV)に従って動作するプラントのプロセス変数(process variable;PV)に従って、センサが加算ブロックにフィードバック信号を提供する。
【0003】
多くの場合、フィードバック制御システムの性能は、プラント(又はセンサ)の分解能及び能力に頼っている。例えば、プロセス変数が通常はアナログドメインにあり、コントローラが通常は量子化又はデジタルドメインで動作し、プラントの処理又はステップサイズの分解能が有限であることを所与として、センサはアナログ-デジタル変換器(ADC)を有し、例えばSNR(信号対雑音比)又はSNDR(信号対雑音+歪み比)といったフィードバック制御システムの性能はADCの分解能に依存する。換言すれば、ADCの特定の実現可能で経済的に達成可能な分解能、及びプラントの処理ステップサイズ分解能では、応答速度、電力消費又はデバイスサイズの観点から、システムSNR性能が制限される。
【0004】
従って、プラントの固有の粒度及び分解能を超える性能をどのように達成/追求するかが当分野における重要な目的である。
【発明の概要】
【0005】
従って、従来技術を改善すべく、密度変調によって高性能を達成することが可能なフィードバック制御システムを提供することが本出願の主な一目的である。
【0006】
本発明の一実施形態は、負荷を駆動するように構成されたフィードバック制御システムを開示する。当該フィードバック制御システムは、ソース信号に対してアップサンプリング処理を実行して、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号を生成するように構成されたアップサンプリング回路と、前記アップサンプリング回路に結合され、前記アップサンプリング信号と前記負荷からのフィードバック信号とに従ってデルタ信号を生成するように構成されたデルタ回路と、前記デルタ信号に従って密度変調信号を生成するように構成されたシグマ回路と、前記アップサンプリング周波数を持つ前記密度変調信号に従って前記負荷を駆動するように構成された駆動装置と、を有する。
【0007】
様々な図及び図面に示される好適実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後、本発明のこれら及び他の目的が当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本出願の一実施形態に従ったフィードバック制御システム及び負荷の概略図である。
図2】本出願の一実施形態に従ったシグマ回路の概略図である。
図3】本出願の一実施形態に従ったシグマ回路の概略図である。
図4】密度変調された信号の波形と密度変調されていない信号の波形とを示している。
図5】本出願の一実施形態に従った駆動回路の概略図である。
図6】本出願の一実施形態に従ったPWM(パルス幅変調)コントローラの概略図である。
図7】本出願の一実施形態に従ったフィードバック制御システムの概略図である。
図8】ADCスロット及び動作サイクルのタイミング図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、用語“結合される”は、直接的又は間接的な接続を指し得る。“コンポーネントAがコンポーネントBに結合されている”は、コンポーネントAがコンポーネントBに直接接続されていることを示すこともあれば、何らかのコンポーネントCを介してコンポーネントAがコンポーネントBに接続されていることを示すこともある。
【0010】
図1は、本出願の一実施形態に従ったフィードバック制御システム10及び負荷12を示している。フィードバック制御システム10は、ソース信号src_0を受信し、ソース信号src_0に従って負荷12を駆動するように構成される。フィードバック制御システム10は、信号src_0に従って、負荷12を駆動するための出力(信号)Voを生成し得る。一般に、フィードバック制御システム10が動作している間、フィードバック制御システム10は、負荷12についての特定の量を蓄積することができ、該量については後で詳細に述べる。
【0011】
概して言えば、フィードバック制御システム10は追跡システムとし得る。例えば、フィードバック制御システム10によって生成される出力信号Voは、一般に例えばSNDR(信号対雑音+歪み比)、SQNR(信号対量子化誤差+雑音比)、又はSNR(信号対雑音比)などに関して一定の性能を達成することによって、信号src_0を一定の精度で追跡し得る。負荷12はアクチュエータであるかアクチュエータを含むかすることができる。フィードバック制御システム10及び負荷12は、以下に限られないが、例えばクルーズ制御用途、ロボット制御用途、温度制御用途、化学プロセス制御用途などの様々な用途で使用され得る。この出願では、SNR、SNDR、SQNRが相互に入れ替え可能に使用され、SNDR/SQNRを一般的にSNRによって参照することがある。
【0012】
一実施形態において、フィードバック制御システム10と負荷12はオーディオ駆動システムを形成することができ、負荷12はMEMS(微小電気機械システム)スピーカ又は圧電作動スピーカとすることができ、ソース信号src_0はオーディオソース信号である。フィードバック制御システム10は、ピエゾアクチュエータの頂部電極と底部電極とに結合され得る。なお、負荷12は圧電作動スピーカの静電容量であってもよい。フィードバック制御システム10が動作している間、フィードバック制御システム10は、フィードバック制御システム10によって生成される出力信号Voが信号src_0を追跡し得るように、容量性負荷12上の電荷の量を蓄積し得る。
【0013】
図1に示すように、フィードバック制御システム10は、アップサンプリング回路101、デルタ回路102、シグマ回路103、及び駆動装置104を有している。アップサンプリング回路101は、ソース信号src_0に対してアップサンプリング処理を実行して、ソース信号src_0に従った、アップサンプリング周波数を持つアップサンプリング信号srcを生成するように構成されることができ、アップサンプリング周波数はオーバーサンプリング率(OSR)に対応し得る。例えば、オーディオ駆動用途の状況では、ソース信号src_0は、44.1KHz又は48KHzのようなサンプリングレートに対応することができ、アップサンプリング信号srcは、768KHz、1536KHz、又は更には3072KHzのような(アップ)サンプリングレートに対応することができ、これらは本出願の範囲内であるが、これらに限定されるものではない。OSR(図1では記号Mとして注釈付けている)は4より大きいことが示唆される。
【0014】
減算器を有する(又はそれによって実装される)ことができるものであるデルタ回路102は、デルタ演算を実行して、アップサンプリング信号srcに従ったデルタ信号を生成するように構成され、シグマ回路103は、シグマ演算(これは総和演算又はフィルタリング演算とすることができる)を実行して、デルタ信号に従った信号INを生成することができる。フィードバック制御ループとしてのループ105が、デルタ回路102とシグマ回路103とによって形成され、デルタシグマ(ΔΣ)ループと見なすことができる。ΔΣループ105は、ノイズシェイピング効果を有するノイズ伝達関数(NTF)を持つ。ΔΣループ105のNTFのノイズシェイピング効果は、ノイズエネルギー/パワーを関心周波数帯域(例えば、音響処理用途の場合、関心周波数帯域は20Hzから約20KHz乃至24KHzまでの人間の可聴帯域となる)から高周波帯域(例えば、音響処理用途では96KHz超)側へと除去/整形することと見なすことができ、従って、関心周波数帯域/スペクトル内で負荷に観測されるSNDR/SNRが有意に改善される。要するに、ΔΣループ105のノイズシェイピング効果は、フィードバック制御システム10にとって関心ある周波数帯域でのSNDR/SNR性能を改善する。
【0015】
図2は、シグマ回路103の3つの実施形態を示している。図2に示すように、シグマ回路103は1つ以上の積分器を有することができ、整数L≧1で、(zドメインで)1/(1-z-1)Lとして伝達関数を持つことができる。従って、ループ105は(1-z-1)LとしてNTFを持つ。図3は、シグマ回路103の他の一実施形態を示しており、シグマ回路103は伝達関数H103(z)を持つデジタル無限インパルス応答(IIR)フィルタである。
【0016】
図3では、ループ105によって行われるΔΣ変調の安定性を向上させるため、ループ105のNTFが、NTF105=HHPFとして表現されることができるハイパスフィルタリング(HPF)特性を持つとして、伝達関数は、H103(z)=1/NTF105(z)-1=1/HHPF(z)-1として表されることができ、ループ105のNTFは、NTF105(z)=1/(1+H103(z))として表されることができ、NTF105によって抑制されたノイズが駆動装置104によって持ち込まれ得る。
【0017】
駆動装置104は、フィードバック制御システム内のプラント(の一部)として解釈され得る。一実施形態において、駆動装置104を回路によって実現され得る。本出願では、一種の駆動装置として駆動回路を参照するが、それに限定されるものではない。様々な用途で、駆動装置104は単純に回路であるのでなくてもよい。(負荷として)アクチュエータを駆動するように構成された任意の装置が駆動装置として解釈され得る。例えば、車両/航空機クルーズコントロール内の車両/航空機エンジンを駆動装置として見ることができ、また、サーモスタットシステム内のヒータを同様に駆動装置として見ることができる。
【0018】
一方、駆動装置104は2ビット量子化器を有さず、あるいは2ビット量子化器自体ではない。本出願において、2ビット量子化器は、バイナリ出力を生成する又は論理0若しくは論理1のいずれかを出力する回路又は装置を指す。例えば、比較器は一種の2ビット量子化器と見なされ得る。
【0019】
デルタ演算を行うデルタ回路102とシグマ演算を行うシグマ回路103とを有するループ105は、パルス密度変調(純粋な密度変調)又は信号密度変調(密度変調と振幅変調とのハイブリッドであり、SDMと略され、米国特許第11,303,295号で教示されている)に使用されるループ構造に類似である。本出願において、“密度変調信号”は概して、デルタ回路とシグマ回路とを有するΔΣループ(例えば、105)内のシグマ回路(例えば、103)によって又はそれに従ってアップサンプリングされて生成される信号を指し得る。例えば、信号INは密度変調信号であり、信号Voも同様に密度変調信号である。なお、駆動装置104は密度変調信号IN/Voに従って負荷12を駆動する。
【0020】
実際には、プラント又は駆動装置によって達成される分解能又は粒度は限られる。駆動装置によって生じるオーバーシュート及びアンダーシュートが常に発生する。例えばオーディオ駆動用途といった、SNR/SNDRに敏感な用途では、そのようなオーバーシュート/アンダーシュートが、望ましくない誤差/歪みを負荷に持ち込む。それにより、例えばSNR/SNDRなどのシステム性能が限られることになる。
【0021】
ΔΣループ105のアップサンプリング処理及びノイズシェイピング/抑制能力のおかげで、密度変調信号INに従って負荷12を駆動することはSNDR性能を有意に向上させることになる。オーディオ駆動用途の状況では、ノイズシェイピング/抑制能力による寄与で、密度変調信号を使用するシナリオのSNDRが15-20dB改善されることを、シミュレーション結果が示している。前述のように、アクチュエータ/負荷を駆動するために密度変調を利用することは、オーディオ駆動用途に限らず、様々な用途に適用されることができ、SNDRが有意に上昇することが期待される。
【0022】
しかしながら、密度変調信号(高い切り換わりレート(トグリングレート)を有する)にって負荷を駆動することは、負荷が容量性又は誘導性を呈するときにはいつも過剰な電力を消費してしまい得る。例えば、MEMSスピーカの圧電アクチュエータにかかる電圧を変えることは容量性であり、処理タンクの温度を変えることは容量性であり、自動車の速度を変えることは誘導性である。
【0023】
なお、ΔΣループのノイズリシェイピングからの恩恵を大いに受けるには、OSRが高い必要があり、これは、アップサンプリング及びΔΣ演算が高トグリングレートの密度変調信号を生成することを意味する。例示的に、図4に示すように、図4の信号波形のうち縦点線の左側の部分は、ΔΣ演算がアクティブにされないときのループ105内のPCM変調信号INと及びVoを示しており、図4の信号波形のうち縦点線の右側の部分は、ΔΣ演算がアクティブにされるとしたときの信号IN(駆動装置104の入力)及びVo(駆動装置104の出力)を示している。図4から見て取れるように、密度変調信号(例えば、IN及びVo)は、密度変調されないもの(又はそれに対してΔΣ演算を行わないもの)と比較して、より高いトグリングレートを持つことになる。
【0024】
例えばオーディオ駆動用途のピエゾMEMSスピーカなど、負荷が(高度に)容量性である場合、スピーカ負荷の端子に必要な電圧トグルを生じさせることを伴うものである密度変調を行うには、アップサンプリング周波数で増幅器(駆動回路)によって絶えず又は頻繁にエネルギーを注入・除去する必要があるとし得る。エネルギー除去フェーズにおいて増幅器が例えばグランドへとエネルギーを単に放出することを伴う場合、駆動回路の電力消費が劇的に高くなる。要するに、負荷12が容量性である(例えば、負荷12が圧電作動スピーカである又はそれを有する)場合、密度変調信号Voを用いて負荷12を駆動することは、密度変調されない信号によって又はアップサンプリングとΔΣ演算とを介して生成されるのではない信号によって容量性負荷が駆動される場合と比較して、より多くの電力を消費することになる。
【0025】
抵抗性又は僅かに誘導性の負荷はそのような問題点/問題を持たない。負荷が抵抗性又は僅かに誘導性である場合、例えばSDMなどのハイブリッド振幅-密度変調方式の時間平均化(人間の可聴帯域内)は、より高いビット分解能の振幅変調とほぼ同じであり、これが意味することは、密度変調が増幅器(駆動回路)の余分な電力消費を招かないことになり得るということである。また、例えばAB級アンプ、D級アンプ、G級アンプ、又はH級アンプといった従来の駆動回路は、エネルギーリサイクル能力を持たず、単にエネルギーをグランド又は負電源へと除去/排出している。
【0026】
換言すれば、“エネルギー除去”フェーズがエネルギーを単にGNDに放出することを伴う場合、増幅器の電力消費は劇的に増加し得る。従って、“エネルギー除去”フェーズ中に増幅器がエネルギーを電力/電圧源に回収し、後続の電圧トグルサイクルの“エネルギー注入”フェーズにおいてエネルギーを再利用できるようにすることが極めて重要である。従って、エネルギーリサイクル能力を持つ駆動回路を、密度変調信号に従って負荷(例えば、12)を駆動するシステム/回路10に組み込むことが望ましい。
【0027】
図5は、本出願の一実施形態に従った駆動回路50を示している。駆動回路50は駆動装置104として適用され得るが、それに限定されるものではない。駆動回路50は、電圧源56と負荷12との間に結合され、スイッチング回路52とパルス幅変調(PWM)コントローラ54とを含んでいる。スイッチング回路52は、インダクタLとスイッチT1-T4とを含む。スイッチT1-T2はインダクタLの第1端子に結合され、スイッチT3-T4はインダクタLの第2端子に結合される。スイッチT1が電圧源56に結合され、スイッチT3が負荷12に結合される。スイッチT1-T4は、それぞれ、PWM信号SP1-SP4によって制御される。
【0028】
一般に、エネルギー注入フェーズ内で、駆動回路50は容量性負荷に対して充電動作を行い、容量性負荷に向けて電流を注入することができ、エネルギー除去フェーズ内で、駆動回路50は容量性負荷に対して放電動作を行い、容量性負荷から電流を排出することができる。
【0029】
エネルギーリサイクル能力を持つ駆動回路では、一実施形態において、放電動作のInFluxサブフェーズ中に、スイッチング回路52は、容量性負荷12に蓄えられた電気エネルギーを、インダクタLに蓄えられる磁気(磁束)エネルギーに変換し、放電動作のDeFluxサブフェーズ中に、スイッチング回路52は、インダクタLに蓄えられた磁気エネルギーを電圧源56に蓄えられる電気エネルギーに変換する。
【0030】
一実施形態において、充電動作のInFluxサブフェーズ中、スイッチT1、T4はON(導通)であり、スイッチT2、T3はOFF(遮断)であり、充電動作のDeFluxサブフェーズ中、スイッチT2、T3はONであり、スイッチT1、T4はOFFであり、放電動作のInFluxサブフェーズ中、スイッチT2、T3はONであり、スイッチT1、T4はOFFであり、放電動作のDeFluxサブフェーズ中、スイッチT1、T4はONであり、スイッチT2、T3はOFFである。
【0031】
要するに、エネルギーリサイクル能力を持つ駆動回路50は、エネルギー除去/放電フェーズ中にエネルギーを電圧源に戻してリサイクルするために、電圧源に向けて電流を形成/方向転換する。
【0032】
スイッチング回路の詳細な動作及びバリエーションは、米国特許第11,336,182号を更に参照することができ、簡潔さのため、それをここで説明することはしない。エネルギー除去フェーズ/動作又はスイッチング/駆動回路の回路トポロジーの詳細は、それに限定されるものではない。例えば、米国特許第11,290,015号に開示されている駆動回路をフィードバック制御システム10に適用してもよい。スイッチング/駆動回路が、元々は負荷に蓄えられたエネルギーを、エネルギー除去フェーズ中に、電圧源に蓄えられるエネルギーに変換することができる限り、本出願の要件は満たされ、本出願の範囲内である。
【0033】
図6は、本出願の一実施形態に従ったPWMコントローラ60を示している。PWMコントローラ60はPWMコントローラ54として適用され得るが、それに限定されるものではない。PWMコントローラ60は、メモリ600、デジタル-アナログ変換器(DAC)601、鋸歯状信号発生器602、及び比較器603を有している。メモリ600は、充電動作用のパルス幅制御コード(pulse width control code;PWCC)を提供するルックアップテーブルと、放電動作用のPWCCを提供するルックアップテーブルとを有し得る。DAC601はPWCCに従ったアナログ電圧Vを生成する。比較器603が、鋸歯状信号発生器602によって生成された鋸歯信号(又は鋸歯状信号)Ssawをアナログ電圧Vと比較することで、PWM信号SPが生成される。この場合、PWM信号SPのパルス幅が、PWCC及びアナログ電圧Vに比例することになる。PWM信号SPは、(図5に示した)PWM信号SP1-SP4のうちの少なくとも1つとして適用され得る。
【0034】
PWMコントローラ60の詳細は、米国特許第11,271,480号を参照することができる。DAC601は、米国特許第11,251,802号に開示されているDACによって実現され得る。一実施形態において、ルックアップテーブルに格納されたPWCCは、米国出願第18/048,852号で教示されるように(テーブル学習を介して)取り出され/更新され得る。一実施形態において、米国特許第11,290,015号に開示されているPWMコントローラも同様にPWMコントローラ54として適用され得る。
【0035】
また、デジタルドメインでΔΣ演算が行われる場合、図1に示すように、アナログ-デジタル変換器(ADC)106がフィードバック制御システム10内又はループ105内に含められ得る。負荷12の負荷電圧とし得る通常はアナログのVoをADC106がデジタル形式に変換することで、デルタ回路102は、アップサンプリング信号srcと、ADC106の出力に従って生成されたフィードバック信号FBとに従ってデルタ演算を実行し得る。
【0036】
なお、信号IN及びFBのデータ長は実際の条件に従って適応され得る。例えば、アップサンプリング信号src(例えば、信号srcは24ビットであるとし得る)のデータ長が、ADC106(例えば、ADC106は14ビット分解能を有し得る)の14ビット出力コードワードのデータ長よりも大きい場合、ADC106の14ビット出力コードワード(図5に示したフィードバック信号FBとして使用される/みなされることができる)が(例えば、0パディングを介して24ビット信号として)拡張されて、図1に示したフィードバック信号FBとしてデルタ回路102に提供され得る。ループ105のΔΣ演算は24ビットで/として実行され得る。同様に、シグマ回路103の24ビット出力が14ビットに切り捨てられて、信号INとして駆動装置104に提供され得る。
【0037】
実際には、通常はレジスタによって実現され、zドメインでz-1として表される遅延素子が、フィードバック経路上に配置され、あるいはADC106とデルタ回路102との間に結合される。該遅延素子は、例えばsrcとFBであるデルタ回路の2つの入力間の同期タイミング関係を維持するように構成され、図1では省略されているが、図2及び図3に示されている。
【0038】
なお、ADCの動作は、ADC出力コードワードに対応する2つの閾値の範囲内にアナログADC入力があると決定されたときにデジタルADC出力コードワードを出力することとして見ることができる。例えば、ADCは、アナログADC入力adc_inがthL,K≦adc_in<thU,Kを満たすときに、デジタルADC出力コードワードKを出力することができ、ここで、thL,K/thU,Kは、出力コードワードKに対応する範囲を定める下側/上側アナログ閾値である。しかし、ADCは一般に、例えば[thL,K,thU,K)と表記される範囲内でADC入力adc_inがどのように分布しているかについての情報を提供することはめったにない。それは何故なら、範囲[thL,K,thU,K)内でadc_inがどのように分布していようと、いずれにせよADCはコードワードKを出力することになり、これが意味することは、ある特定の分解能を持つADCでは、範囲[thL,K,thU,K)内でadc_inがどのように分布しているかを観測することができないということである。
【0039】
なお、範囲[thL,K,thU,K)内でadc_inがどのように分布しているかは、ADC量子化誤差に関係するものであり、実際に、Voと表記表されるノード(図1に示されている)で観測されるSNDR性能に影響する。それは何故なら、ΔΣ演算は、ノードVoで観測されるSNDRではなくADCの出力端子で観測されるSNDRを効果的に最適化/増強するものであり、VoとADC出力とは量子化誤差だけ隔たりがあるが故に、ADCの出力端子で観測されるSNDRの方が、ノードVoで観測されるSNDRよりも良いものとなるからである。本出願では、Voを、駆動装置104の出力の表記に対して、又は駆動装置104と負荷12が接続/結合されるノードの表記に対して、相互に入れ替え可能に使用することがある。
【0040】
例えば、14ビットADCとB=12としたステップサイズΔV=Vpp/2(ΔVは駆動回路50の単位インクリメント/デクリメント(すなわち、ステップサイズ)を表し、これについては後述する)を用いるシミュレーションシナリオの下で、ループ105でのADCの出力端子におけるSNDRは117dBとして達成され得るが、ΔΣ演算でのノードVoにおけるSNDRはたったの75dBである(ΔΣ演算でのノードVoにおける75dBのSNDRは、ΔΣ動作を実行しない場合又は密度変調信号を使用しない場合のSNDRよりも既に高いものではあり、密度変調を使用しない場合のSNDRは約54-60dBである)。なお、特定のADC分解能を所与として、ΔΣ演算又は密度変調を使用することによって15-21dBの性能向上となる。
【0041】
なお、ADCの出力端子でのSNDRを増強するのではなく、負荷に接続されるノードVoでのSNDRを増強することが望ましい。範囲[thL,K,thU,K)内でadc_inがどのように分布しているかについての情報を更に抽出することができれば(又は分解能を向上させられれば)、ADC出力端子でのSNDRとノードVoでのSNDRとの間の差は小さくなるはずであり、これが意味することは、ノードVoでのSNDRがADC出力端子でのSNDRに近づいて、ノードVoでのSNDRが更に増強されるようになるということである。
【0042】
要するに、ADC106の可観測性を更に高めることができれば、駆動装置104の出力端子に対応するSNDRが更に高められることになる。本出願において、範囲[thL,K,thU,K)内でのadc_inの分布について、より多くの情報を得ること(又は、特定のADCによって予め定めれた分解能に加えて追加の分解能を得ること)は、ADCの可観測性を高めることとして参照され得る。ADC106の可観測性を高める手法は幾つか存在する。1つは適応スケーラを使用するものである。
【0043】
実際には、駆動装置104の出力Voのスイングが、ADC106のフルスケールの入力範囲(例えば、ADC106のVppに関して)と大きく異なるときに、駆動装置104の出力端子とADC106の入力端子との間にスケーラが含められて結合され得る。例えば、駆動装置104の出力のピークツーピークでのスイングが31.2Vであり、且つADC106のフルスケール入力範囲が2.4Vであるとし得る。この場合、スケーラは、駆動装置104の出力Voをスケーリング係数SFだけスケールダウンするように構成され、スケーリングされた出力Vo/SFをADC106に送ることができ、SFは、実際の要求に応じて、例えば13又は14とし得る。スケーラは、当技術分野で知られているように、抵抗/キャパシタラダーによって実現され得る。
【0044】
ADC106の可観測性を高めるために、スケーリング係数SFを実際の状況に応じて適応させることができ、例えば、信号Vo又はINの振幅スイングに従って、あるいは信号srcの振幅スイングに従ってでも、適応させることができる。
【0045】
図7は、本出願の一実施形態に従ったフィードバック制御システム70の概略図を示している。フィードバック制御システム70は、フィードバック制御システム10と類似しており、故に、同じコンポーネントは同じ表記で表している。フィードバック制御システム10とは異なり、フィードバック制御システム70は更に適応スケーラ701を有している。適応スケーラ701は、信号Voをスケーリング係数SFだけスケーリングするように構成され、スケーリング係数SFは適応的に選択されることができる。
【0046】
例えば、信号Voの振幅スイングが十分に大きい又は第1閾値より大きいとき、適応スケーラ701は信号Voを第1スケーリング係数SF(すなわち、SF=SF)だけスケールダウンし得る。一方で、信号Voのスイングが十分に小さい又は第2閾値より小さいとき、適応スケーラ701は信号Voを第2スケーリング係数SF(すなわち、SF=SF)だけスケールダウンすることができ、ただし、SF>SFである。数値的には、一実施形態において、SFは14とすることができ、SFは3.5とすることができ、これらは、これに限定されず、実際の状況に応じて決定され得る。一実施形態において、実際の設計基準に応じて、適応スケーラ701によって3つ以上のスケーリング係数を採用することができる。
【0047】
可観測性を高めるための別のアプローチは、複数のADC読み出しを取得し、それらの読み出しを平均化するものである。例えば、ADC106は複数のADC動作を実行して、駆動装置104の2つの連続した動作サイクルの間で複数のADC読み出し/出力を得ることができ、ADC106(又は、ADC106とデルタ回路102との間に結合された平均回路)は、それら複数のADC読み出しに対して平均演算を実行し、それに従ってフィードバック信号FBが生成される平均結果を出力し得る。駆動回路50によって実現される駆動装置104では、駆動装置104の動作サイクルをDC-DC(直流-直流)動作サイクルと称することができ、その中で、InFluxサブフェーズとDeFluxサブフェーズとを有するDC-DC動作が達成される。ここでのDC-DC動作は充電動作又は放電動作のいずれかとして参照され得る。
【0048】
図8は、本出願の一実施形態のタイミング図を示している。図8では、2つの連続したDC-DC動作サイクルTDCの間に3つのADCスロット(slot)がある。1つのADCスロット内で1つのADC動作が1回実行され、1つのADC読み出しが得られる。1つのDC-DC動作サイクルTDC内で、1つのDC-DC動作が実行される。ADC106は、2つの連続したDC-DCサイクルTDC内で2つ(又は3つ)のADC動作を実行して2つ(又は3つ)のADC読み出しを取得することができ、ADC106(又は平均回路)は、それら2つ(又は3つ)のADC読み出しの平均結果をADC出力として又はフィードバック信号FBとして出力し得る。
【0049】
複数のADC読み出しを平均することにより、ADC熱雑音の影響を平均及び/又は低減させることができ、ADC106の可観測性を高めることができ、それ故に、ノードVoでのSNDRを更に増強することができる。
【0050】
オーディオ駆動用途(例えば、図5の駆動回路50を図1の駆動装置104として用いることによる)では、VDD=2.7V、L=330nH、B=12としたΔV=Vpp/2(ただし、ΔVは充電/放電ルックアップテーブルの単位インクリメント/デクリメント(すなわち、ステップサイズ)を表し、ここでのVppは負荷12の最大振幅スイングを表す)、14ビット分解能のADC106、2次ΔΣ演算のループ105の状況下で、ノードVoでの(等価)SNDRは、単一のADC読み出しで99.1dBを達成することができ、2つのADC読み出しを平均する場合に101.6dBを達成し、そして、3つのADC読み出しを平均する場合に102.9dBを達成する。分かるように、SNDRは、密度変調信号(又はΔΣ演算)によって及びADCの可観測性を高めることによって増強されることができる。
【0051】
また、駆動回路(例えば、50)のエネルギーリサイクル能力により、電力消費を低減させることができる。さらに、電力消費を減らすために、動作サイクル内のPWMコントローラ60及びADC106による一部の動作をアイドルフレーム内でスキップしてもよい。
【0052】
例えば、米国特許第11,271,480号に記載されるように、PWMコントローラ60は、動作サイクル内で駆動回路がアイドルモード/状態として動作するか決定し得る。アイドルフレームは、駆動回路が充電動作も放電動作も行わない動作サイクルを指し得る。一実施形態において、ここでの動作サイクルは、アップサンプリング信号srcの(アップ)サンプリングレートの逆数を指し得る。
【0053】
また、アイドルフレーム内で、DAC601、鋸歯状信号発生器602、比較器603、及び/又はADC106は動作しなくてもよい。メモリ600に格納されたルックアップテーブルのテーブルルックアップ及びテーブル学習動作も同様に実行されなくてもよい。結果として、電流が負荷に流れ込んだり負荷から流れ出たりしないことになる。従って、容量性負荷では、本出願のフィードバック制御システムの電力消費が更に低減され得る。
【0054】
オーディオ駆動用途の下で、本出願のフィードバック制御システムの電力消費は大幅に低減され得る。信号src_0/srcの入力信号レベルが十分に低い又は閾値より低い場合、本出願のフィードバック制御システムの動作周期内のアイドルフレームの割合が50%を超えることがある。例えば、信号srcの入力信号レベルがフルスケールの-80dBほどの低さのとき、アイドルフレームの割合は少なくとも63%とし得る。
【0055】
充電/放電ルックアップテーブルの単位インクリメント/デクリメント(すなわち、ステップサイズ)の詳細は、米国特許第11,271,480号及び米国出願第18/048,852号に詳述されている。
【0056】
さらに、2つの連続した動作サイクル間での複数のADC動作の中で、アナログADC入力adc_inに(1つ以上の)レベルシフトを加えてもよい。ここでのLSBはADCの最下位ビットに対応するアナログ電圧/値を表すとして、(1つ以上の)レベルシフトはLSB/2又はLSB/3の大きさを持つとし得る。例えば、ADC106は、adc_inに従って1つめのADC動作を実行するとともに、adc_in+LSB/2又はadc_in-LSB/2に従って2つめのADC動作を実行し得る。1つめ及び2つめのADC動作の結果の平均は範囲[thL,K,thU,K)内のadc_inの分布を反映することができ、これは、本出願の範囲内にある。他の一実施形態において、ADC106は、adc_inに従って1つめのADC動作を実行し、adc_in+LSB/3に従って2つめのADC動作を実行し、そして、adc_in-LSB/3に従って3つめのADC動作を実行してもよい。1つめ、2つめ、及び3つめのADC動作の結果の平均も範囲[thL,K,thU,K)内のadc_inの分布を反映し得る。
【0057】
また、ADC106はSAR(Successive Approximation Register;逐次近似レジスタ)ADCによって実現されてもよい。可観測性を高めるために、ADC106は更に、従来のSAR ADCによって生成される既存の複数の投票を活用して追加の分解能を得てもよい。
【0058】
すなわち、従来のSAR ADCのように複数の投票(又は複数の比較結果)に従って単一のLSBを決定するように多数決ルールを使用する代わりに、本出願においては、複数の投票又は複数の比較結果を更に活用して、特定の範囲内でadc_inがどのように分布しているかについて、より多くの情報を抽出し得る。
【0059】
具体的には、閾値生成器と比較器とを有するものであるNビットSAR ADCが、閾値Vth,(N-1)、…、Vth,1を用いてアナログADC入力adc_inに対して(N-1)回の第1比較を実行して、[bN-1,…,b]と表記する(N-1)個の最上位側ビットを決定する。ここで、複数の第1閾値Vth,(N-1)、…、Vth,1は、当技術分野で知られているように二分探索(木)アルゴリズムを介して閾値生成器によって決定される。ビットbが決定された後に、閾値生成器によって第2閾値Vth,0が決定される。NビットSAR ADCは、(単一の)第2閾値Vth,0を用いてアナログADC入力adc_inに対して複数の第2比較を実行して、複数の比較結果を得る。
【0060】
ADCによって実行される比較については、本質的に、アナログADC入力adc_inが、比較が実行される前にAFEノイズ又は熱雑音によって汚染されており、その中の比較器ノイズによって比較が影響を受けることが想定される。
【0061】
従来のSAR ADCは、多数決ルールを用いて、複数の比較結果に従った単一の最下位ビットbを決定する。例えば、複数の比較結果の大半がadc_in>Vth,0を示す場合、従来のSAR ADCはb=1であると決定し、それ以外の場合、SAR ADCはb=0であると決定する。
【0062】
それに対し、本出願のADC106は、従来のNビットSAR ADCとは異なり、複数の比較結果に従って、[b,f,…,f]と表記される複数の最下位ビットを取得し、[bN-1,…,b,f,…,f]としてADC出力コードワードを生成し得る。ADC106は、複数の比較結果に従って複数の最下位ビット[b,f,…,f]を得るためのカウンタ又はルックアップテーブルを有し得る。
【0063】
例えば、ADC106は、それら複数の比較結果が何度adc_in>Vth,0を示したかを表すカウント結果を取得し、該カウント結果に従って複数の最下位ビット[b,f,…,f]を決定するためのカウンタを有し得る。また、ADC106は、該カウント結果を、ルックアップテーブルをルックアップするためのインデックスとして用いて、複数の最下位ビット[b,f,…,f]を得てもよい。該ルックアップテーブルは、ADC106内の熱雑音/比較器ノイズの確率分布に従って構築され得る。複数の最下位ビット[b,f,…,f]に対して複数の比較結果を利用する理論的根拠及び(1つ以上の)詳細処理は、米国出願第18/171,687号を参照することができ、簡潔さのため、それをここで説明することはしない。
【0064】
米国出願第18/171,687号に開示されているSAR ADC(SARX-ADCと表記されている)を、本出願のフィードバック制御システムのループ105内で利用することにより、上述と同じシナリオにおいて、ノードVoでのSNDRが、様々なSARX-ADC構成に応じて、(単一のADC読み出しの下で)103.6-104.5dBまで更に増強され得る。示されるように、第18/171,687号に開示されたSARX-ADCを利用することにより、SNDRに関して4.5-5.4dBの性能向上となる。
【0065】
結果として、(整数)ビット[bN-1,…,b]に加えての(分数)ビット[f,…,f]を介して追加の分解能を提供するものであるSARX-ADCを適用することは、特にΔΣ演算又は密度変調を伴う状況下で、SNDRに関して性能向上をもたらすことになる。
【0066】
まとめるに、当該フィードバック制御システムは、ΔΣ回路/演算を利用してシステム性能を高め、エネルギーリサイクル能力を持つ駆動回路を利用して電力消費を低減させ、いっそう良好な可観測性を持つADCを利用してシステム性能を更に向上させる。従って、本出願のフィードバック制御システムは、高いシステム性能と低い電力消費を達成することができる。
【0067】
当業者が容易に気付くことには、本発明の教示を保持しながら装置及び方法の数多くの変更及び改変が為され得る。従って、上の開示は、添付の請求項の境界によってのみ限定されるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8