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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/14 20100101AFI20240618BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L33/14
H01S5/343 610
H01L33/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023045022
(22)【出願日】2023-03-22
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ シリル
(72)【発明者】
【氏名】松倉 勇介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 一史
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-008449(JP,A)
【文献】特開2022-172792(JP,A)
【文献】特開2021-193726(JP,A)
【文献】特開2022-003660(JP,A)
【文献】特開2016-149544(JP,A)
【文献】特開2022-163904(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230459(WO,A1)
【文献】特開2022-167231(JP,A)
【文献】特開2020-077874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Ga及びNを含有するn型半導体層と、
前記n型半導体層の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する井戸層及びAl、Ga及びNを含有するとともに前記井戸層よりもAl組成比が大きい障壁層を有する活性層と、
前記活性層における前記n型半導体層側と反対側に形成され、Al及びNを含有する電子ブロック層と、
前記電子ブロック層における前記活性層側と反対側に形成されたp型半導体層と、を備え、
前記電子ブロック層は、アンドープの複数の半導体層からなり、
前記電子ブロック層を構成する前記複数の半導体層のうち、最も前記活性層側に位置する第1電子ブロック層は、前記電子ブロック層を構成する他の半導体層及び前記障壁層よりも、Al組成比が大きく、
前記第1電子ブロック層の膜厚は、1.4nm未満であり、
前記p型半導体層は、p型のGaNによって形成されるp型コンタクト層を有し、
前記p型コンタクト層の膜厚は、18nm以下である、
窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1電子ブロック層の膜厚は、1.nm未満である、
請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記電子ブロック層と前記p型半導体層との界面には、シリコンが含まれている、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、n側層、活性層、電子ブロック構造層及びp側層が積層された窒化物半導体発光素子が開示されている。電子ブロック構造層は、活性層側から、第1電子ブロック層、中間層及び第2電子ブロック層を備える。第1電子ブロック層は、障壁層よりもバンドギャップが大きい。第2電子ブロック層は、障壁層よりもバンドギャップが大きいとともに第1電子ブロック層よりもバンドギャップが小さい。中間層は、第2電子ブロック層よりもバンドギャップが小さい。そして、特許文献1には、電子ブロック構造層を前述のような構造にすることで長寿命化が図られる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/057149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の窒化物半導体発光素子の構成は、長寿命化の観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、長寿命化を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、Al、Ga及びNを含有するn型半導体層と、前記n型半導体層の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する井戸層及びAl、Ga及びNを含有するとともに前記井戸層よりもAl組成比が大きい障壁層を有する活性層と、前記活性層における前記n型半導体層側と反対側に形成され、Al及びNを含有する電子ブロック層と、前記電子ブロック層における前記活性層側と反対側に形成されたp型半導体層と、を備え、前記電子ブロック層は、アンドープの複数の半導体層からなり、前記電子ブロック層を構成する前記複数の半導体層のうち、最も前記活性層側に位置する第1電子ブロック層は、前記電子ブロック層を構成する他の半導体層及び前記障壁層よりも、Al組成比が大きく、前記第1電子ブロック層の膜厚は、1.4nm未満であり、前記p型半導体層は、p型のGaNによって形成されるp型コンタクト層を有し、前記p型コンタクト層の膜厚は、18nm以下である、窒化物半導体発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長寿命化を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態における、窒化物半導体発光素子の構成を概略的に示す模式図である。
図2】実施の形態における、電子ブロック層とp型半導体層との界面付近の、窒化物半導体発光素子のシリコン濃度分布を示すグラフである。
図3】実験例1における、通電時間と光出力維持率との関係を示すグラフである。
図4】実験例2における、第1電子ブロック層の膜厚と光出力維持率との関係を示すグラフである。
図5】実験例2における、第1電子ブロック層の膜厚と初期光出力との関係を示すグラフである。
図6】実験例3における、p型コンタクト層の膜厚と光出力維持率との関係を示すグラフである。
図7】実験例3における、p型コンタクト層の膜厚と初期光出力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
(窒化物半導体発光素子1)
図1は、窒化物半導体発光素子1の構成を概略的に示す模式図である。なお、図1において、窒化物半導体発光素子1(以下、単に「発光素子1」ともいう。)の各層の積層方向の寸法比は、必ずしも実際のものと一致するものではない。以後、発光素子1の各層の積層方向を上下方向という。また、上下方向の一方側であって、基板2における各半導体層が成長される側(例えば図1の上側)を上側とし、その反対側(例えば図1の下側)を下側とする。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば発光素子1の使用時における、鉛直方向に対する発光素子1の姿勢を限定するものではない。
【0011】
発光素子1は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)である。本形態において、発光素子1は、紫外領域の波長の光を発する発光ダイオードである。特に、本形態の発光素子1は、中心波長が250nm以上365nm以下の紫外光を発する。発光素子1は、例えば殺菌(例えば空気浄化、浄水等)、医療(例えば光線治療、計測・分析等)、UVキュアリング等の分野において用いることができる。
【0012】
発光素子1は、基板2上に、バッファ層3、n型クラッド層4、組成傾斜層5、活性層6、電子ブロック層7及びp型半導体層8を順次備える。また、発光素子1は、n型クラッド層4上に設けられたn側電極11と、p型半導体層8上に設けられたp側電極12とを備える。
【0013】
発光素子1を構成する半導体としては、例えば、AlGaIn1-a-bN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。本形態においては、発光素子1を構成する半導体として、AlGa1-cN(0≦c≦1)にて表される2元系又は3元系のIII族窒化物半導体を用いている。これらのIII族元素の一部は、ホウ素(B)、タリウム(Tl)等に置き換えてもよい。また、窒素の一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置き換えてもよい。
【0014】
基板2は、活性層6が発する光を透過する材料からなる。基板2は、例えばサファイア(Al)基板である。基板2の上面(すなわち発光素子1の各半導体層が積層される側の面)は、c面である。このc面は、オフ角を有するものであってもよい。また、基板2として、例えば窒化アルミニウム(AlN)基板又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板等を用いてもよい。
【0015】
バッファ層3は、基板2上に形成されている。本形態において、バッファ層3は、窒化アルミニウムにより形成されている。なお、基板2が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層3は必ずしも設けなくてもよい。また、バッファ層3は、窒化アルミニウムからなる半導体層の上に形成された、アンドープのAlGa1-pN(0≦p≦1)からなる半導体層を含んでいてもよい。
【0016】
n型クラッド層4は、バッファ層3上に形成されたn型半導体層である。n型クラッド層4は、例えば、n型不純物がドープされたAlGa1-qN(0≦q≦1)により形成されている。本形態において、n型不純物としては、シリコン(Si)を用いた。なお、n型不純物としては、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)又はテルル(Te)等を用いてもよい。n型クラッド層4のAl組成比qは、例えば20%以上とすることが好ましく、25%以上70%以下とすることが更に好ましい。なお、Al組成比は、AlNモル分率とも称される。n型クラッド層4の膜厚は、例えば1μm以上4μm以下とすることができる。本形態において、n型クラッド層4は、単層構造であるが、複数層構造としてもよい。
【0017】
組成傾斜層5は、n型クラッド層4上に形成されている。組成傾斜層5は、シリコンがドープされたAlGa1-rN(0≦r≦1)からなる。組成傾斜層5の上下方向の各位置におけるAl組成比は、活性層6側の位置ほど大きくなっている。なお、組成傾斜層5は、例えば上下方向の極一部の領域(例えば組成傾斜層5の上下方向の全体の5%以下の領域)に、活性層6側に向かうにつれてAl組成比が大きくならない領域を含んでいてもよい。
【0018】
組成傾斜層5は、そのn型クラッド層4側の端部のAl組成比が、n型クラッド層4における組成傾斜層5側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。また、組成傾斜層5は、その活性層6側の端部のAl組成比が、活性層6における組成傾斜層5側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。組成傾斜層5の膜厚は、例えば5nm以上50nm以下とすることができる。
【0019】
活性層6は、組成傾斜層5上に形成されている。活性層6は、複数の井戸層621~623を有する多重量子井戸構造である。活性層6は、中心波長が250nm以上365nm以下の紫外光を発することができるよう、バンドギャップが調整されている。
【0020】
本形態において、活性層6は、障壁層61と井戸層621~623とを3つずつ有し、障壁層61と井戸層621~623とが交互に積層されている。活性層6においては、組成傾斜層5側の端部に障壁層61が位置しており、電子ブロック層7側の端部に井戸層623が位置している。なお、活性層6の障壁層61の数及び井戸層621~623の数は、特に限定されない。
【0021】
各障壁層61は、AlGa1-sN(0<s<1)により形成されている。各障壁層61のAl組成比sは、例えば60%以上100%以下である。また、各障壁層61の膜厚は、例えば2nm以上50nm以下である。
【0022】
井戸層621~623は、AlGa1-tN(0<t<1)により形成されている。各井戸層621~623のAl組成比tは、障壁層61のAl組成比sよりも小さい(すなわちt<s)。
【0023】
本形態においては、3つの井戸層621~623を、組成傾斜層5側から順に第1井戸層621、第2井戸層622、第3井戸層623と呼ぶこととする。第1井戸層621の膜厚は、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれの膜厚よりも1nm以上大きい。これにより、活性層6の各層が平坦化され、出力光の単色性が向上する。第1井戸層621の膜厚と第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれの膜厚との差は、2nm以上4nm以下とすることが好ましい。第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれは、2nm以上4nm以下の膜厚を有し、第1井戸層621は、4nm以上6nm以下の膜厚を有する。
【0024】
また、第1井戸層621のAl組成比は、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれのAl組成比よりも2%以上大きい。第1井戸層621のAl組成比を、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれのAl組成比よりも大きくすることにより、第1井戸層621の結晶性が向上する。これは、第1井戸層621とn型クラッド層4とのAl組成比の差が小さくなるためである。第1井戸層621の結晶性が向上することにより、活性層6のうちの第1井戸層621上に形成される各半導体層の結晶性も向上する。これにより、活性層6におけるキャリアの移動度が向上し、光出力が向上する。かかる効果は、第1井戸層621の膜厚が大きくなるほど顕著であるが、発光素子1全体の電気抵抗値が増加することを抑制する観点から第1井戸層621の膜厚は所定値以下となるよう設計される。
【0025】
本形態において、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれは、25%以上45%以下のAl組成比を有し、第1井戸層621は、35%以上55%以下のAl組成比を有する。複数の井戸層621~623は、例えば組成傾斜層5側のものほどAl組成比が大きくなるよう構成されていてもよい。
【0026】
電子ブロック層7は、活性層6上に形成されている。電子ブロック層7は、活性層6からp型半導体層8側へ電子がリークするオーバーフロー現象の発生を抑制すること(以後、電子ブロック効果ともいう)によって活性層6への電子注入効率を向上させる役割を有する。本形態において、電子ブロック層7は、アンドープのAlGa1-uN(0.7≦u≦1)により形成されている。すなわち、電子ブロック層7は、Al組成比uが70%以上の半導体層にて構成されている。電子ブロック層7は、活性層6側から順に、第1電子ブロック層71と第2電子ブロック層72とを積層した積層構造を有する。なお、電子ブロック層7は、3層以上にて形成されていてもよい。
【0027】
第1電子ブロック層71は、活性層6に接するよう設けられている。電子ブロック層7を構成する複数の半導体層(本形態においては第1電子ブロック層71及び第2電子ブロック層72)のうち、第1電子ブロック層71は、電子ブロック層7を構成する他の半導体層(すなわち第2電子ブロック層72)及び障壁層61よりも、Al組成比が大きい。第1電子ブロック層71のAl組成比は、例えば90%以上であり、100%としてもよい(すなわち第1電子ブロック層71をAlNにて構成してもよい)。
【0028】
本形態において、第1電子ブロック層71は、膜厚が2nm未満となるよう極めて薄く形成されている。後述する実験例2にて示すように、電子ブロック層7をアンドープの複数の半導体層から構成するとともに、前述のように第1電子ブロック層71の膜厚を2nm未満と極めて薄くすることで、発光素子1の長寿命化が図られる。また、後述の実験例2にて示すように、第1電子ブロック層71の膜厚は、発光素子1の長寿命化の観点から、1.4nm未満、1.0nm以下、1.0nm未満、0.8nm以下の順に好ましい。また、第1電子ブロック層71の膜厚は、初期光出力の確保の観点から、0.5nm以上が好ましい。
【0029】
第2電子ブロック層72のAl組成比は、第1電子ブロック層71のAl組成比よりも小さく、例えば70%以上90%以下である。第2電子ブロック層72の膜厚は、第1電子ブロック層71の膜厚よりも大きい。第1電子ブロック層71の膜厚が小さいと、トンネル効果によって電子が第1電子ブロック層71を活性層6側からp型半導体層8側にすり抜ける確率が増大し得るが、第2電子ブロック層72を設けることでこの確率を低減することができる。
【0030】
電子ブロック層7の全体の膜厚は、70nm未満が好ましい。電子ブロック層7のようなAl組成比が比較的大きい半導体層の膜厚が大きくなることで、発光素子1の電気抵抗値が大きくなるため、電子ブロック層7の膜厚は70nm未満とすることが好ましい。
【0031】
電子ブロック層7とp型半導体層8との間には、シリコンが含まれている。マグネシウムはシリコンに引き付けられやすく、かつ、水素はマグネシウムと結びつきやすいところ、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが存在することで、p型半導体層8から活性層6へのマグネシウム及び水素の拡散が抑制され、発光素子1の長寿命化が図られる。更に、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが含まれることで、電子ブロック層7とp型半導体層8との間に、ピット(例えばいわゆるVピット)が存在する層が形成され得る。ピットは、転位が存在する箇所にシリコン源が供給されることにより形成されるため、ピットが形成されることで、転位がピットよりも上側に進展することが抑制され、発光素子1の長寿命化が図られる。
【0032】
図2は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られた、発光素子1の上下方向のシリコン濃度分布を示す図である。図2の横軸の深さは、p型半導体層8のp側電極12側の表面からの上下方向の距離を表している。電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが含まれている場合において、二次イオン質量分析法により発光素子1における上下方向のシリコン濃度分布(以後、単に「シリコン濃度分布」ともいう。)を見た際、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコン濃度のピークPが表れる。そして、電子ブロック層7がアンドープであっても、シリコン濃度分布を見た際、電子ブロック層7におけるp型半導体層8側の端部において、ピークPの裾部分等が表れてシリコンが含まれるように見えるが、これはSIMS測定上の問題である。そのため、電子ブロック層7とこれに隣接する半導体層との界面にシリコンが含まれているような場合は、SIMS測定により得られたシリコン濃度分布において、前述の界面付近に表れるピークPが存在する範囲(例えばp型半導体層と第2電子ブロック層との界面位置から深さ50nm付近の位置までの範囲)を除く電子ブロック層7の領域において、シリコン濃度がバックグラウンドレベル(例えばシリコン濃度が5.0×1017atoms/cm以下)であれば、電子ブロック層7がアンドープであるといえる。
【0033】
p型半導体層8は、電子ブロック層7上に形成されている。p型半導体層8は、p型のAlGa1-vN(0≦v<0.7)により形成されている。すなわち、p型半導体層8は、Al組成比が70%未満の半導体層にて構成されている。
【0034】
p型半導体層8は、p型コンタクト層を有する。p型コンタクト層は、p側電極12が接続された層であり、p型不純物が高濃度にドープされたAlGa1-vN(0≦v<0.7)により形成されている。p型コンタクト層は、p側電極12とのオーミックコンタクトを実現すべくAl組成比が低くなるよう構成されており、かかる観点からp型の窒化ガリウム(GaN)により形成することが好ましい。p型の窒化ガリウムからなる半導体層は、紫外光を吸収しやすいため、紫外光の吸収を防止して発光素子1の光出力を向上させる観点から、p型コンタクト層の膜厚は25nm以下が好ましい。また、後述の実験例3にて示すように、発光素子1の長寿命化を図る観点からも、p型コンタクト層の膜厚は25nm以下が好ましく、18nm以下がより好ましい。また、ショートの発生を抑制する観点から、p型コンタクト層の膜厚は5nm以上が好ましい。
【0035】
p型半導体層8は、p型コンタクト層の電子ブロック層7側に、更にp型クラッド層を備えていてもよい。p型クラッド層は、Al組成比が70%未満のp型AlGaNから構成される。p型クラッド層は、例えば単層で構成されてもよいし、複数層にて構成されてもよい。p型クラッド層が複数層で構成される場合、例えば、p型クラッド層は、第2電子ブロック層72側に形成された第1p型クラッド層と、第1p型クラッド層とp型コンタクト層との間に形成された第2p型クラッド層とを有してもよい。第2p型クラッド層の上下方向の各位置におけるAl組成比は、p型コンタクト層側の位置ほど小さくしてもよい。なお、第2p型クラッド層は、例えば上下方向の極一部の領域(例えば第2p型クラッド層の上下方向の全体の5%以下の領域)に、p型コンタクト層に向かうにつれてAl組成比が大きくならない領域を含んでいてもよい。第2p型クラッド層は、その第1p型クラッド層側の端部のAl組成比が、第1p型クラッド層における第2p型クラッド層側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。また、第2p型クラッド層は、そのp型コンタクト層側の端部のAl組成比が、p型コンタクト層における第2p型クラッド層側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。
【0036】
発光素子1のうちの、活性層6より上側に存在する半導体層(すなわち電子ブロック層7及びp型半導体層8)の合計の光学膜厚は、活性層6から上側に発されてp側電極12にて反射されて下側に向かう光と、活性層6から直接下側に発された光とが互いに強め合う光学膜厚となるよう設計することが好ましい。活性層6から発される光の中心波長を波長λ[nm]としたとき、例えば、活性層6より上側に存在する半導体層の合計の光学膜厚は、0.5λ以上1.4λ以下が好ましく、0.5λ以上0.8λ以下又は1.0λ以上1.3λ以下がより好ましく、0.5λ以上0.8λ以下がより一層好ましい。
【0037】
n側電極11は、n型クラッド層4の上側に形成された、活性層6から露出する露出面41の面上に形成されている。n側電極11は、例えば、n型クラッド層4の上にチタン(Ti)、アルミニウム、チタン、金(Au)が順に積層された多層膜とすることができる。また、後述するように発光素子1がフリップチップ実装される場合、n側電極11は、活性層6が発する紫外光を反射可能な材料にて構成されていてもよい。
【0038】
p側電極12は、p型半導体層8の上面に形成されている。p側電極12は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等にて構成することができる。また、後述するように発光素子1がフリップチップ実装される場合、p側電極12は、活性層6が発する紫外光を反射可能な材料にて構成されていてもよい。
【0039】
発光素子1は、図示しないパッケージ基板にフリップチップ実装されて使用され得る。すなわち、発光素子1は、上下方向におけるn側電極11及びp側電極12が設けられた側をパッケージ基板側に向け、n側電極11及びp側電極12のそれぞれが、金バンプ等を介してパッケージ基板に実装される。フリップチップ実装された発光素子1は、基板2側から光が取り出される。なお、これに限られず、発光素子1は、ワイヤボンディング等によりパッケージ基板に実装されてもよい。また、本形態において、発光素子1は、n側電極11及びp側電極12の双方が発光素子1の上側に設けられた、いわゆる横型の発光素子1としたが、これに限られず、縦型の発光素子1であってもよい。縦型の発光素子1は、n側電極11とp側電極12とによって活性層6がサンドイッチされた発光素子1である。なお、発光素子1を縦型とする場合、基板2及びバッファ層3は、レーザーリフトオフ等により除去することが好ましい。
【0040】
(発光素子1の製造方法)
次に、本形態の発光素子1の製造方法の一例につき説明する。
本形態においては、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、円板状の基板2上に、バッファ層3、n型クラッド層4、組成傾斜層5、活性層6、電子ブロック層7及びp型半導体層8を順次エピタキシャル成長させる。すなわち、本形態においては、チャンバ内に配されたサセプタのポケットに円板状の基板2を設置し、基板2上に形成される各半導体層の原料ガスをチャンバ内に導入することによって基板2上に各半導体層が形成される。なお、MOCVD法は、有機金属化学気相エピタキシ法(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)と呼ばれることもある。
【0041】
各層をエピタキシャル成長させるための原料ガスとしては、アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、ガリウム源としてトリメチルガリウム(TMG)、窒素源としてアンモニア(NH)、シリコン源としてテトラメチルシラン(TMSi)、マグネシウム源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。ウエハの各半導体層をエピタキシャル成長させるための成長温度、成長圧力及び成長時間等の製造条件については、各半導体層の構成に応じた条件を適宜採用することができる。
【0042】
なお、基板2上に各半導体層をエピタキシャル成長させるに際しては、分子線エピタキシ法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、ハイドライド気相エピタキシ法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)等の他のエピタキシャル成長法を用いることも可能である。
【0043】
円板状の基板2上に各半導体層を形成した後、p型半導体層8上の一部、すなわちn型クラッド層4の露出面41になる部分以外の部位にマスクを形成する。そして、マスクを形成していない領域を、p型半導体層8の上面から上下方向のn型クラッド層4の途中までエッチングにより除去する。これにより、上側に向かって露出する露出面41がn型クラッド層4に形成される。露出面41の形成後、マスクを除去する。
【0044】
次いで、n型クラッド層4の露出面41上にn側電極11を形成し、p型半導体層8上にp側電極12を形成する。n側電極11及びp側電極12は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの周知の方法により形成してよい。以上により完成したものを、所望の寸法に切り分けることにより、1つのウエハから図1に示すような発光素子1が複数製造される。
【0045】
(実施の形態の作用及び効果)
本形態の発光素子1において、電子ブロック層7は、アンドープの複数の半導体層からなる。電子ブロック層7を構成する複数の半導体層のうち、最も活性層側に位置する第1電子ブロック層71は、電子ブロック層7を構成する他の半導体層(すなわち本形態においては第2電子ブロック層72)及び障壁層61よりも、Al組成比が大きい。そして、第1電子ブロック層の膜厚は、2nm未満である。これにより、後述の実験例2にて示すように、発光素子1の長寿命化を図ることができる。また、後述の実験例2にて示すように、第1電子ブロック層71の膜厚が1.4nm未満を更に満たすことで、発光素子1の更なる長寿命化を図ることができる。
【0046】
また、p型半導体層8は、p型の窒化ガリウム(GaN)によって形成されるp型コンタクト層を有し、p型コンタクト層の膜厚は、25nm以下である。それゆえ、後述の実験例3にて示すように、発光素子1の長寿命化を図ることができる。また、後述の実験例3にて示すように、p型コンタクト層の膜厚を18nm以下とすることで、発光素子1の更なる長寿命化を図ることができる。
【0047】
また、電子ブロック層7とp型半導体層8との界面には、シリコンが含まれている。ここで、マグネシウムはシリコンに引き付けられやすく、かつ、水素はマグネシウムと結びつきやすいところ、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが存在することで、p型半導体層8から活性層6へのマグネシウム及び水素の拡散が抑制され、発光素子1の長寿命化が図られる。更に、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが含まれることで、電子ブロック層7とp型半導体層8との間に、ピットが存在する層が形成され得る。ピットは、転位が存在する箇所にシリコン源が供給されることにより形成されるため、ピットが形成されることで、転位がピットよりも上側に進展することが抑制され、発光素子1の長寿命化が図られる。
【0048】
以上のごとく、本形態によれば、長寿命化を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【0049】
[実験例1]
本実験例1は、実施の形態に記載の発光素子と基本構造を同じくし、かつ、第1電子ブロック層の膜厚が互いに異なる2つの発光素子につき、光出力維持率の時間変化を評価した例である。光出力維持率は、発光素子の初期光出力に対する、任意時間通電後の発光素子の光出力の割合である。本実験例1以降において用いた用語のうち、既出の形態において用いた用語と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の内容を表す。
【0050】
本実験例1においては、第1電子ブロック層の膜厚を0.8nmとした発光素子に係る実施例A1と、第1電子ブロック層の膜厚を1.6nmとした発光素子に係る実施例A2とを用意した。すなわち、実施例A1及びA2は、いずれも、第1電子ブロック層の膜厚が実施の形態と同様に2nm未満を満たす。実施例A1及びA2のそれぞれは、パッケージ化された発光素子である。実施例A1及びA2の構造、各層の膜厚、各層のAl組成比及び各層のシリコン濃度を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に記載の各層の膜厚は、第1電子ブロック層の膜厚を除き、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)によって測定したものである。表1に記載の第1電子ブロック層の膜厚に関しては後述する。また、表1に記載の各層のAl組成比は、二次イオン質量分析法により測定したAlの二次イオン強度から推定した値である。表1における組成傾斜層のAl組成比の欄は、組成傾斜層の上下方向の各位置のAl組成比が、n型クラッド層側から活性層側にかけて、55%から85%まで変動していることを表している。同様に、表1における第2p型クラッド層のAl組成比の欄は、第2p型クラッド層の上下方向の各位置のAl組成比が、第1p型クラッド層側からp型コンタクト層側にかけて、55%から0%まで変動していることを表している。また、表1に記載の各層のシリコン濃度は、二次イオン質量分析法を用いて得られたものである。表1のそれぞれにおいて、Si濃度の欄の「※」印を付けた箇所は、半導体層の膜厚が薄く正確なシリコン濃度の測定が困難であることを意味している。また、表1のSi濃度の欄について、「BG」との表記は、バックグラウンドレベルを意味している。バックグラウンドレベルのシリコン濃度は、シリコンをドープしない場合に検出されるシリコン濃度であり、具体的には5.0×1017atoms/cm以下のシリコン濃度である。
【0053】
そして、実施例A1及びA2のそれぞれについて、500mAの電流を、累計1000時間を超えるまで流し続け、複数の時点での光出力維持率を評価した。結果を図3に示す。
【0054】
図3から分かるように、実施例A1及びA2のいずれにおいても、1000時間通電後の光出力維持率が70%を超えている。ここで、一般的に、1000時間通電後の発光素子の光出力維持率が70%以上であることが要求されているところ、第1電子ブロック層の膜厚が2nm未満の実施例A1及びA2においては、この要求を満たしていることが分かる。
【0055】
また、図3から、第1電子ブロック層の膜厚が比較的小さい実施例A1の方が、第1電子ブロック層の膜厚が比較的大きい実施例A2よりも長寿命化が図れていることが分かる。
【0056】
また、実施例A1及びA2のいずれにおいても、通電時間が100時間となるまでに大きく光出力維持率が下がる一方、その後の光出力維持率の低下は緩やかになることが分かる。通電100時間の時点における光出力維持率と、通電1000時間の時点における光出力維持率との差が比較的大きい実施例A2でも、これらの差は約10%であった。そのため、第1電子ブロック層の膜厚が2nm未満の発光素子においては、通電100時間の時点における光出力維持率が80%を超えていれば、通電1000時間の時点における光出力維持率が70%を超えるものと見込まれる。これを踏まえ、次ぐ実験例2において、第1電子ブロック層の膜厚と、発光素子の通電100時間の時点における維持率との関係を評価した。
【0057】
[実験例2]
本実験例2は、実施の形態と基本構成を同様にした発光素子について、第1電子ブロック層の膜厚と、通電100時間の時点の光出力維持率との関係を評価した例である。
【0058】
本実験例2においては、第1電子ブロック層の膜厚を1.6nmとした発光素子にかかる実施例B1~B10と、第1電子ブロック層の膜厚を1.2nmとした発光素子にかかる実施例B11及びB12と、第1電子ブロック層の膜厚を1.0nmとした発光素子にかかる実施例B13及びB14と、第1電子ブロック層の膜厚を0.8nmとした発光素子にかかる実施例B15~B18とを準備した。実施例B1~B18は、パッケージ化された発光素子である。実施例B1~B18の構造、各層の膜厚、各層のAl組成比及び各層のシリコン濃度に関しては、第1電子ブロック層の膜厚を除き、実施例1の表1に記載の内容と同様である。
【0059】
各実施例について、まず、350mAの電流を流して初期光出力を測定した。そして、各実施例について、500mAの電流を継続して100時間流して発光させた。その後、各実施例について、350mAの電流を流して、100時間通電後の光出力を測定し、光出力維持率を算出した。
【0060】
各実施例の第1電子ブロック層の膜厚、初期光出力及び維持率を表2に示す。また、各実施例の第1電子ブロック層の膜厚と光出力維持率との関係を図4に示し、第1電子ブロック層の膜厚と初期光出力との関係を図5に示す。ここで、表2及び図4に記載の各実施例の光出力維持率は、1つのウエハから作成された10個のパッケージ化された発光素子を用いて得られた光出力維持率の平均値である。また、表2及び図5に記載の各実施例の初期光出力も同様に、10個の発光素子を用いて測定された光出力維持率の平均値である。
【0061】
【表2】
【0062】
表2及び図4から分かるように、第1電子ブロック層の膜厚が2nm未満を満たす全実施例B1~B18において、100時間通電後の光出力維持率が85%以上となっており、高い光出力維持率が得られている。実験例1にて述べたように、第1電子ブロック層の膜厚が2nm未満を満たす発光素子においては、100時間通電後の光出力維持率が80%を超えることが好ましいところ、実施例B1~B18においてはこれを十分に満たしている。
【0063】
また、表2及び図4から分かるように、高い光出力維持率を得る観点から、第1電子ブロック層の膜厚は、1.4nm未満、1.0nm以下、1.0nm未満、0.8nm以下の順に好ましい。
【0064】
また、表2及び図5から分かるように、第1電子ブロック層の膜厚が2nm未満である全実施例B1~B18において、良好な初期光出力が得られる。
【0065】
[実験例3]
本実験例3は、実施の形態と基本構成を同様にした発光素子について、p型コンタクト層の膜厚と、通電100時間の時点の光出力維持率との関係を評価した例である。
【0066】
本実験例3においては、p型コンタクト層の膜厚を互いに異ならせた5つの発光素子に係る実施例C1~C5を準備した。実施例C1~C5は、パッケージ化された発光素子である。実施例C1~C5の構造、各層の膜厚、各層のAl組成比及び各層のシリコン濃度に関しては、p型コンタクト層の膜厚を除き、実施例1の表1に記載の内容と同様である。実施例C1~C5のそれぞれにおいて、第1電子ブロック層の膜厚は1.6nmに統一した。
【0067】
各実施例について、実験例2と同様の方法で光出力維持率を算出した。すなわち、各実施例について、まず、350mAの電流を流して初期光出力を測定した。そして、各実施例について、500mAの電流を継続して100時間流して発光させた。その後、各実施例について、350mAの電流を流して、100時間通電後の光出力を測定し、光出力維持率を算出した。
【0068】
各実施例のp型コンタクト層の膜厚、初期光出力及び光出力維持率を表3に示し、各実施例のp型コンタクト層の膜厚と光出力維持率との関係を図6に示し、p型コンタクト層の膜厚と初期光出力との関係を図7に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3及び図6から分かるように、p型コンタクト層の膜厚が25nm以下を満たす全実施例C1~C5において、100時間通電後の光出力維持率が85%以上となっており、高い光出力維持率が得られている。実験例1にて述べたように、第1電子ブロック層の膜厚が2nm未満を満たす発光素子においては、100時間通電後の光出力維持率が80%を超えることが好ましいところ、実施例C1~C5においてはこれを十分に満たしている。
【0071】
また、表3及び図6から分かるように、高い光出力維持率を得る観点から、p型コンタクト層の膜厚は、18nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。
【0072】
また、表3及び図7から分かるように、初期光出力を向上させる観点からは、p型コンタクト層の膜厚は18nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下がより好ましい。
【0073】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0074】
[1]本発明の第1の実施態様は、Al、Ga及びNを含有するn型半導体層4と、前記n型半導体層4の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する井戸層621~623及びAl、Ga及びNを含有するとともに前記井戸層621~623よりもAl組成比が大きい障壁層61を有する活性層6と、前記活性層6における前記n型半導体層4側と反対側に形成され、Al及びNを含有する電子ブロック層7と、前記電子ブロック層7における前記活性層6側と反対側に形成されたp型半導体層8と、を備え、前記電子ブロック層7は、アンドープの複数の半導体層からなり、前記電子ブロック層7を構成する前記複数の半導体層のうち、最も前記活性層6側に位置する第1電子ブロック層71は、前記電子ブロック層7を構成する他の半導体層及び前記障壁層61よりも、Al組成比が大きく、前記第1電子ブロック層71の膜厚は、2nm未満である、窒化物半導体発光素子1である。
これにより、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0075】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記第1電子ブロック層71の膜厚が、1.4nm未満であることである。
これにより、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0076】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、前記p型半導体層8が、p型のGaNによって形成されるp型コンタクト層を有し、前記p型コンタクト層の膜厚が、25nm以下であることである。
これにより、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0077】
[4]本発明の第4の実施態様は、第3の実施態様において、前記p型コンタクト層の膜厚が、18nm以下であることである。
これにより、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0078】
[5]本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1つの実施態様において、前記電子ブロック層7と前記p型半導体層8との界面に、シリコンが含まれていることである。
これにより、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0079】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…窒化物半導体発光素子
4…n型クラッド層(n型半導体層)
6…活性層
61…障壁層
621…第1井戸層
622…第2井戸層
623…第3井戸層
7…電子ブロック層
71…第1電子ブロック層
8…p型半導体層
【要約】
【課題】長寿命化を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】窒化物半導体発光素子は、Al、Ga及びNを含有するn型半導体層と、n型半導体層の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する井戸層及びAl、Ga及びNを含有するとともに井戸層よりもAl組成比が大きい障壁層を有する活性層と、活性層におけるn型半導体層側と反対側に形成され、Al及びNを含有する電子ブロック層と、電子ブロック層における活性層側と反対側に形成されたp型半導体層と、を備える。電子ブロック層は、アンドープの複数の半導体層からなる。電子ブロック層を構成する複数の半導体層のうち、最も活性層側に位置する第1電子ブロック層は、電子ブロック層を構成する他の半導体層及び障壁層よりも、Al組成比が大きい。第1電子ブロック層の膜厚は、2nm未満である。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7