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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/30 20060101AFI20240618BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20240618BHJP
   F27B 9/28 20060101ALI20240618BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240618BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20240618BHJP
   F27D 9/00 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
F27B9/30
F27B9/04
F27B9/28
F27D7/06 A
F27D5/00
F27D9/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024002835
(22)【出願日】2024-01-11
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 英紀
(72)【発明者】
【氏名】大威 英晃
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅己
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-32334(JP,A)
【文献】特開平6-340928(JP,A)
【文献】特開2014-215033(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第2014-0005649(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00 - 9/40
F27D 7/06
F27D 5/00
F27D 9/00
B65H 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物が搬送されつつ処理される処理空間を内部に有する外壁と、
前記処理空間内に設けられ、前記被処理物を案内するガイドローラと
を備え、
前記ガイドローラは、
シャフトと、
前記シャフトの軸方向に間隔を空けて取り付けられた第1軸受および第2軸受と、
前記シャフトに対して前記第1軸受および前記第2軸受を介して回転可能に取り付けられた筒状のローラ本体と、
第1カバーおよび第2カバーと
を備え、
前記第1軸受および前記第2軸受は、
前記シャフトに装着される内輪と、
前記内輪の径方向において対向する外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に配置された複数の転動体と、
前記内輪と前記外輪の間に配置され、前記複数の転動体を保持する保持器と
をそれぞれ備え、
前記第1カバーおよび前記第2カバーは、それぞれ前記シャフトの軸方向に沿った、前記第1軸受および前記第2軸受の外側において、前記内輪と前記外輪の間隙をそれぞれ塞いでいる、
熱処理装置。
【請求項2】
前記第1カバーと前記第2カバーのうち少なくとも一方は、コイルばねによって前記ローラ本体の端部に押し付けられている、請求項1に記載された熱処理装置。
【請求項3】
前記シャフトは、第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを備え、
前記第1カバーは、前記シャフト上において位置決めされており、
前記第2カバーは、前記コイルばねによって前記ガイドローラの前記第2端部に押し付けられている、請求項2に記載された熱処理装置。
【請求項4】
前記シャフトには、前記第2端部の外側にばね座部が設けられており、
前記コイルばねは、前記ばね座部と前記第2端部の間に配置される、請求項3に記載された熱処理装置。
【請求項5】
前記シャフトには、前記第1軸受が取り付けられる位置よりも外側において段差部が設けられており、
前記第1カバーは、前記段差部と前記ローラ本体の前記第1端部に挟まれている、請求項3または4に記載された熱処理装置。
【請求項6】
前記処理空間には、一対の支持板が設けられており、
前記シャフトの前記第1端部と前記第2端部のうち一方は、前記一対の支持板のうち一方の支持板に取り付けられている、請求項3または4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項7】
前記外壁には、前記処理空間を減圧する真空ポンプが接続される、請求項1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項8】
前記第1軸受および前記第2軸受のうち少なくとも一方は、セラミック軸受である、請求項1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項9】
前記ローラ本体と前記シャフトの間には、空間が形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第7285360号公報には、巻出部と、加熱処理部と、冷却部と、巻取部とを備えた熱処理装置が開示されている。巻出部からは、加熱処理前の帯状のシートが巻出される。加熱処理部では、シートが搬送されつつ加熱処理される。冷却部では、加熱処理部で加熱処理されたシートが搬送されつつ冷却される。巻取部では、冷却部で冷却された帯状のシートが巻取られる。巻出部、加熱処理部、冷却部および巻取部では、搬送されるシートは、ガイドローラによって案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7285360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、被処理物が処理される処理空間の清浄度を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される熱処理装置は、搬送装置と、外壁と、ガイドローラとを備えている。搬送装置は、被処理物を搬送する。外壁は、被処理物が搬送されつつ処理される処理空間を内部に有する。ガイドローラは、処理空間内に設けられ、被処理物を案内する。ガイドローラは、シャフトと、第1軸受および第2軸受と、筒状のローラ本体と、第1カバーおよび第2カバーとを備えている。第1軸受および第2軸受は、シャフトの軸方向に間隔を空けて取り付けられている。ローラ本体は、シャフトに対して第1軸受および第2軸受を介して回転可能に取り付けられている。第1軸受および第2軸受は、内輪と、外輪と、転動体と、保持器とをそれぞれ備えている。第1カバーおよび第2カバーは、それぞれシャフトの軸方向に沿った、第1軸受および第2軸受の外側において、内輪と外輪の間隙をそれぞれ塞いでいる。かかる熱処理装置では、被処理物が処理される処理空間の清浄度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、熱処理装置10を示す模式図である。
図2図2は、被処理物Aの駆動機構を示す模式図である。
図3図3は、ガイドローラ45の模式図である。
図4図4は、第2支持部材44bの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0008】
〈熱処理装置10〉
図1は、熱処理装置10を示す模式図である。熱処理装置10は、帯状(シート状)の被処理物Aを加熱処理するための設備である。この実施形態では、熱処理装置10は、いわゆるロールtoロール方式で帯状の被処理物を搬送しつつ連続的に乾燥させるための装置である。被処理物Aは、例えば、シート基材の両面にそれぞれ電極材料が塗工された二次電池の電極シート、フレキシブル銅張積層板FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)、ポリイミドシートなど帯状のものであれば特に限定されない。熱処理装置10は、帯状(シート状)の種々の被処理物の処理に用いられうる。
【0009】
熱処理装置10は、搬送装置20,22(図2参照)と、外壁41(図1参照)と、ガイドローラ45(図1参照)とを備えている。図1に示されているように、熱処理装置10は、巻出部30と、加熱処理部40と、冷却部50と、巻取部60とを備えている。帯状の被処理物Aは、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50、巻取部60の順で搬送されつつ処理される。被処理物Aは、巻出部30に設けられた巻出ロールA1から巻出され、加熱処理部40で加熱処理され、冷却部50で冷却された後、巻取部60に設けられた巻取ロールA2に巻取られる。
【0010】
〈搬送装置20,22〉
図2は、被処理物Aの駆動機構を示す模式図である。図2では、巻出部30と巻取部60の間の加熱処理部40と冷却部50は省略されている。搬送装置20,22は、被処理物Aを搬送する装置である。被処理物Aは、予め定められた搬送経路に沿って搬送される。図2に示されているように、搬送装置20,22は、それぞれ巻出部30の巻出ロールA1が取り付けられている巻出軸32、および、巻取部60の巻取ロールA2が取り付けられている巻取軸62をそれぞれ回転駆動する装置である。この実施形態では、搬送装置20,22としてモータが用いられている。搬送装置20,22は、被処理物Aの搬送を制御する装置から構成されうる。搬送装置20,22としては、例えば、モータとインバータが用いられていてもよく、サーボモータ等が用いられていてもよい。また、搬送装置20,22は、被処理物Aにかかる張力を制御する装置を含んでいてもよい。張力を制御する装置としては、例えば、パウダクラッチが用いられうる。搬送装置20,22は、搬送速度を制御する装置および張力を制御する装置が協働する一式の装置によって実現されていてもよい。
【0011】
搬送装置20,22は、巻出部30の外壁31および巻取部60の外壁61にそれぞれ取り付けられている。巻出軸32は、搬送装置20に接続されている。搬送装置20によって巻出軸32が回転駆動され、巻出ロールA1から被処理物Aが巻出される。巻取軸62は、搬送装置22に接続されている。搬送装置22によって巻取軸62が回転駆動され、巻取ロールA2に被処理物Aが巻取られる。搬送装置20,22は、それぞれ外壁31,61に囲まれた空間内に設けられた大気ボックスに設置されていてもよい。
【0012】
熱処理装置10は、被処理物Aの処理効率を向上させるために、被処理物Aを速い速度で搬送可能に構成されうる。特に限定されないが、被処理物Aの搬送速度は、1m/分~200m/分程度に設定されうる。この実施形態では、被処理物Aの搬送速度は、100m/分程度に設定されている。熱処理装置10では、被処理物Aの搬送速度は、制御装置24によって制御されている。
【0013】
〈制御装置24〉
制御装置24は、予め定められた搬送条件に応じて被処理物Aが搬送されるように、被処理物Aの搬送速度、被処理物Aにかかる張力等を制御する。この実施形態では、制御装置24は、被処理物Aを巻出す時の巻出し張力と、処理されている被処理物Aにかかる炉内張力と、処理された被処理物Aを巻取る時の巻取り張力とをそれぞれ制御する。制御装置24は、搬送装置20,22に接続されている。また、制御装置24は、張力検出ローラ35b、フィードローラ35c、ダンサーローラ35d、張力検出ローラ65c等と接続されている。制御装置24は、張力検出ローラ35bが検出する巻出し張力を搬送装置20にフィードバックし、巻出軸32のトルクを制御する。これによって、巻出し張力が調整される。また、制御装置24は、処理されている被処理物Aが掛けられた張力検出ローラ35bが検出する炉内張力をダンサーローラ35dにフィードバックする。検出された炉内張力に応じてダンサーローラ35dが移動する。これによって、炉内張力が調整される。なお、炉内張力が一定の状態でダンサーローラ35dの位置が基準の位置に戻るように、フィードローラ35cの回転速度が制御される。また、制御装置24は、張力検出ローラ65cが検出する巻取り張力を搬送装置22にフィードバックし、巻取軸62のトルクを制御する。これによって、巻取り張力が調整される。
【0014】
〈巻出部30〉
図1に示されているように、巻出部30は、加熱処理前の被処理物Aが巻付けられた状態の巻出ロールA1を収容している。巻出部30は、内部の設備および巻出ロールA1を囲う外壁31を有している。巻出部30には、巻出軸32と、複数のローラ35とが内部に設けられている。巻出軸32は、加熱処理前の被処理物Aが巻かれた巻出ロールA1が取り付けられる軸である。この実施形態では、巻出軸32が回転駆動されることによって、巻出軸32に取り付けられた巻出ロールA1から被処理物Aが巻出される。
【0015】
巻出部30の外壁31で囲まれた空間内には、被処理物Aの搬送経路を設定する複数のローラ35が設けられている。巻出軸32に取り付けられた巻出ロールA1から巻出された被処理物Aは、複数のローラ35に予め定められた順番で掛け廻され、加熱処理部40に向けて搬送される。複数のローラ35は、ガイドローラ35aと、張力検出ローラ35bと、フィードローラ35cと、ダンサーローラ35dとを含んでいる。張力検出ローラ35bは、被処理物Aにかかる張力を検出するためのローラである。張力検出ローラ35bには、図示しない張力検出器が取り付けられている。ダンサーローラ35dは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ35dが移動することによって、被処理物Aの張力が調整される。フィードローラ35cは、図示しない駆動装置によって回転駆動される。フィードローラ35cの回転が制御されることによって、ダンサーローラ35dの位置が調整される。
【0016】
〈加熱処理部40〉
加熱処理部40は、帯状の被処理物Aが搬送されつつ加熱処理される設備である。加熱処理部40は、連結部70を介して巻出部30と接続されている。連結部70には、巻出部30の出口と、加熱処理部40の入口とが設けられている。連結部70には、被処理物Aが通る通り道が形成されている。被処理物Aは、連結部70を通って巻出部30から加熱処理部40に搬送される。連結部70に形成された、被処理物Aの通り道は、被処理物Aの幅と厚みよりもわずかに大きい寸法に設定されている。これによって、加熱処理部40の雰囲気と巻出部30の雰囲気は、互いに干渉しにくくなっている。
【0017】
加熱処理部40は、外壁41と、ヒータ42と、ガイドローラ45(45a~45d)とを備えている。外壁41は、被処理物Aが搬送されつつ処理される処理空間40aを内部に有している。外壁41は、ヒータ42と、ガイドローラ45とが配置された処理空間40aを囲っている。
【0018】
〈ガイドローラ45〉
ガイドローラ45は、処理空間40a内に設けられている。ガイドローラ45は、被処理物Aを案内するローラである。被処理物Aが搬送される搬送経路は、ガイドローラ45によって設定される。ガイドローラ45は、被処理物Aの搬送に伴い、従動的に回転するように構成されている。この実施形態では、ガイドローラ45は、略円筒状のローラである。ガイドローラ45aは、加熱処理部40の入口(連結部70)付近に設けられている。複数のガイドローラ45bは、加熱処理部40の下方において入口から出口に向かって予め定められたピッチで並べられている。複数のガイドローラ45cは、加熱処理部40の上方において、複数のガイドローラ45bとは半ピッチずれて並べられている。ガイドローラ45dは、加熱処理部40の出口(連結部72)付近に設けられている。
【0019】
被処理物Aは、加熱処理部40の入口付近のガイドローラ45aに掛けられ下方に搬送される。その後、被処理物Aは、入口から出口に向かって、上下のガイドローラ45b,45cに順に交互に掛け廻される。これにより、加熱処理部40において被処理物Aは、入口から出口に向かって上下に行ったり来たりしつつ進む。
【0020】
〈ヒータ42〉
ヒータ42は、被処理物Aを加熱するための設備である。この実施形態では、ヒータ42は、上下に折り返されつつ、入口から出口に向かって進む被処理物Aの周りに設けられている。ヒータ42は、ガイドローラ45b,45cに掛けられて、上下に折り返される被処理物Aの間隙にも配置されている。ヒータ42は、被処理物Aに対向するように配置されている。ヒータ42は、例えば、ヒータホルダおよび支柱によって固定されてもよい。
【0021】
この実施形態では、ヒータ42として、遠赤外線加熱式の板状のプレートヒータが用いられている。ヒータ42としては、加熱温度や加熱雰囲気等に応じて種々のヒータが用いられうる。ヒータ42としては、例えば、板状のプレートヒータの他に、例えば、筒状のヒータが用いされてもよい。ヒータ42の材質は特に限定されず、金属シースヒータ、セラミックヒータ、ランプヒータ等が用いられてもよい。また、ヒータ42は、遠赤外線加熱式のヒータに限られない。雰囲気炉の場合は、ヒータ42としては、例えば、被処理物に熱風が吹き付けられる熱風加熱式のヒータや赤外線加熱式のランプヒータが用いられてもよい。加熱処理された被処理物Aは、出口付近に設けられたガイドローラ45dを通して、冷却部50に向けて搬出される。
【0022】
〈冷却部50〉
冷却部50は、加熱処理部40で加熱処理された被処理物Aが搬送されつつ冷却される設備である。冷却部50は、連結部72を介して加熱処理部40と接続されている。連結部72には、加熱処理部40の出口と、冷却部50の入口とが設けられている。連結部72には、連結部70と同様、被処理物Aが通る通り道が形成されている。連結部72の構成は、連結部70の構成と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
冷却部50は、冷却ローラ52と、複数のガイドローラ55と、外壁51とを備えている。外壁51は、複数の冷却ローラ52と、複数のガイドローラ55とが配置された処理空間50aを囲っている。この実施形態では、冷却部50には、複数の冷却ローラ52が設けられている。複数の冷却ローラ52と複数のガイドローラ55は、冷却部50において被処理物Aが搬送される搬送経路を設定している。冷却ローラ52は、単数でもよいが、複数であるほうが好ましい。
【0024】
〈冷却ローラ52〉
冷却ローラ52は、内部に冷媒が流通するように構成されたローラである。被処理物Aは、冷却ローラ52の表面に接することによって冷却される。冷却ローラ52は、第1冷却ローラ52aと、第2冷却ローラ52bとを備えている。第1冷却ローラ52aは、被処理物Aの一方の面が接するように掛け廻される冷却ローラ52である。第2冷却ローラ52bは、被処理物Aの他方の面が接するように掛け廻される冷却ローラ52である。この実施形態では、冷却ローラ52には、図示しない駆動装置が接続されている。冷却ローラ52は、搬送方向に沿って、設定された搬送速度に合わせて回転する。この実施形態では、被処理物Aは、冷却部50において、室温程度まで冷却される。冷却される被処理物Aの温度は、特に限定されない。
【0025】
第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bは、それぞれ複数(この実施形態では、4つずつ)設けられている。冷却ローラ52の数は特に限定されない。第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bは、例えば、それぞれ1つずつ設けられていてもよい。
【0026】
複数の第1冷却ローラ52aは、冷却部50の前方(出口側)に高さ方向に沿って予め定められたピッチで一列に並べられている。複数の第2冷却ローラ52bは、冷却部50の後方(入口側)において、高さ方向に沿って予め定められたピッチで一列に並べられている。隣り合う第1冷却ローラ52aの間隔および隣り合う第2冷却ローラ52bの間隔はそれぞれ、冷却ローラ52の外径よりも狭くなるように設定されている。なお、第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bの配置は、特に限定されない。
【0027】
ここでは、第1冷却ローラ52aと第2冷却ローラ52bは、同じピッチで並べられている。第2冷却ローラ52bの高さは、下から順に、第1冷却ローラ52aよりも半ピッチ高い位置に配置されている。これにより、複数の第1冷却ローラ52aと複数の第2冷却ローラ52bとは、冷却部50の前後で順に高さがずれるように配置されている。換言すると、複数の第1冷却ローラ52aと複数の第2冷却ローラ52bとは、千鳥に配置されている。これによって、冷却部50を高さ方向に長い構造とすることができる。他方で、冷却部50の専有面積を小さくすることができ、設備の省スペース化が図られる。
【0028】
〈ガイドローラ55〉
ガイドローラ55(55a~55d)は、被処理物Aを案内するローラである。この実施形態では、ガイドローラ55は、略円筒状のローラである。冷却部50には、複数のガイドローラ55によって、入口(連結部72)から複数の冷却ローラ52を通り、出口(連結部74)に向かうように、被処理物Aの搬送経路が設定されている。複数のガイドローラ55は、被処理物Aにかかる張力を検出する張力検出ローラを含んでいてもよい。
【0029】
被処理物Aは、冷却部50の入口から、ガイドローラ55aを通って冷却部50に導入される。被処理物Aは、下方に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55bを通って最下端に配置された第1冷却ローラ52aに搬送される。被処理物Aは、第1冷却ローラ52aと第2冷却ローラ52bに下側から順に交互に掛け廻され、最上端の第2冷却ローラ52bからガイドローラ55cに向けて搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55cを通って下方に搬送され、ガイドローラ55dを通して冷却部50の出口から巻取部60に搬送されている。ここでは、被処理物Aは、第1冷却ローラ52aと第2冷却ローラ52bに対して、被処理物Aの異なる面が順に接触するように掛け廻される。
【0030】
冷却部50は、連結部74を介して巻取部60と接続されている。連結部74は、冷却部50の出口と、巻取部60の入口とを備えている。冷却された被処理物Aは、連結部74を通って巻取部60に搬送される。
【0031】
〈巻取部60〉
巻取部60は、被処理物Aを巻き取る設備である。巻取部60は、冷却ローラ52を通じて冷却された被処理物Aを巻取るための巻取ロールA2を収容している。巻取部60は、内部の設備および巻取ロールA2を囲う外壁61を有している。巻取部60には、巻取軸62と、複数のローラ65とが設けられている。巻取軸62には、加熱処理部40で加熱処理され、冷却部50で冷却された被処理物Aが巻き取られた巻取ロールA2が取り付けられている。巻取軸62が回転駆動されることによって、巻取ロールA2に被処理物Aが巻取られる。
【0032】
巻取部60の外壁61で囲まれた空間内には、被処理物Aの搬送経路を設定する複数のローラ65が設けられている。複数のローラ65は、巻取部60において被処理物Aが搬送される搬送経路を設定する。冷却部50から搬送された被処理物Aは、巻取部60の入口(連結部74)付近のローラ65に掛けられた後に、複数のローラ65に予め定められた順番に掛け廻され、巻取ロールA2に巻取られる。複数のローラ65は、ガイドローラ65aと、ダンサーローラ65bと、張力検出ローラ65cと、フィードローラ65dとを含んでいる。ダンサーローラ65bは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ65bは、例えば、巻取ロールA2が交換される際に、被処理物Aの必要な余長を確保するために移動されうる。張力検出ローラ65cには、図示しない張力検出器が取り付けられている。フィードローラ65dは、巻取ロールA2を交換するときに交換後の巻取ロールA2に被処理物Aを貼り付ける際、貼り付けに必要な余長を送り出す。
【0033】
〈真空ポンプ80〉
熱処理装置10は、真空ポンプ80を備えている。上述した巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の内部の空間は、それぞれ外壁31,41,51,61によって囲まれている。巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の各部は、外壁31,41,51,61によってそれぞれ外部空間と隔離された空間を有している。外壁31,41,51,61の内部の空間は、被処理物Aの処理時には、連通している。各部の外壁31,41,51,61にはそれぞれ真空ポンプ80が接続されている。真空ポンプ80は、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の内部の空間(加熱処理部40、冷却部50においては処理空間40a,50a)を減圧する。この実施形態では、被処理物Aは、大気圧よりも低い予め定められた真空雰囲気下で処理される。
【0034】
なお、真空ポンプ80の接続形態は、特に限定されない。真空ポンプ80が複数設けられており、複数の真空ポンプ80は、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の各部にそれぞれ接続されていてもよい。ひとつの真空ポンプ80から配管が分岐しており、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60のうち複数の部の内部が減圧されてもよい。
【0035】
真空ポンプ80の配管には、各部の真空度を調整するための真空バルブ81~84が設けられている。真空バルブ81~84は、各部と真空ポンプ80の接続および各部と真空ポンプ80の切断を切り替え可能に構成されている。各部の真空度を調整しない場合には、真空バルブ81~84の替わりに開閉バルブが用いられていてもよい。
【0036】
加熱処理部40の入口(この実施形態では、連結部70)には、扉70aが設けられている。扉70aは、巻出ロールA1を取り替える時等に閉じられる。巻出ロールA1を取り替える時等に扉70aが閉じられることによって、加熱処理部40の雰囲気(この実施形態では、減圧状態)を保つことができる。扉70aは、巻出ロールA1を取り替える時等、被処理物Aが連結部70を通っている時に閉じられてもよい。巻出ロールA1に巻かれた被処理物Aの残りが少なくなってきたとき、巻出ロールA1は、新しいものに交換される。交換後の巻出ロールA1の被処理物Aの端部と、交換前の被処理物Aの端部とは、繋ぎ合わせられる。被処理物Aを処理空間40aに残した状態で、加熱処理部40の雰囲気を保ったまま巻出ロールA1を交換することができ、巻出ロールA1交換後の装置の復旧が早くなる。
【0037】
また、冷却部50の出口(この実施形態では、連結部74)には、扉74aが設けられている。扉74aは、扉70aと同様、巻取ロールA2を取り替える時等に扉74aが閉じられることによって、冷却部50の雰囲気(この実施形態では、減圧状態)を保つことができる。扉74aは、巻取ロールA2を取り替える時等、被処理物Aが連結部74を通っている時に閉じられてもよい。巻取ロールA2に巻かれた被処理物Aが多くなってきたとき、巻取ロールA2は、新しいものに交換される。交換後の巻取ロールA2の端部と、被処理物Aの端部とは、繋ぎ合わされる。被処理物Aを処理空間50aに残した状態で、冷却部50の雰囲気を保ったまま巻取ロールA2を交換することができ、巻取ロールA2交換後の装置の復旧が早くなる。
【0038】
ところで、帯状の被処理物が搬送されつつ処理される熱処理装置は、搬送装置と、処理空間を内部に有する外壁と、ガイドローラとを備えている。帯状の被処理物は、予め定められた搬送経路に沿って処理空間内を搬送される。換言すると、帯状の被処理物の搬送経路は、ガイドローラによって設定される。帯状の被処理物は、ガイドローラに掛けられた状態で搬送される。ガイドローラは、いわゆるフリーローラであり、帯状の被処理物の搬送に追従して回転するように構成されている。以下、ここで開示される熱処理装置について、加熱処理部の構成を例にして説明する。
【0039】
ここで開示される熱処理装置10の加熱処理部40には、帯状の被処理物Aを案内するガイドローラ45が設けられている。図3は、ガイドローラ45の模式図である。図3では、ガイドローラ45の軸方向に沿った断面が模式的に示されている。図3では、前方から見た、加熱処理部40の下方に並べられたガイドローラ45b(以下、単に「ガイドローラ45」とも称する。)の断面が示されている。図4は、第2支持部材44bの模式図である。図4では、シャフト46の軸方向外側から見た第2支持部材44bの平面が模式的に示されている。
【0040】
〈ガイドローラ45〉
ガイドローラ45は、図3に示されているように、シャフト46と、第1軸受47aおよび第2軸受47bと、筒状のローラ本体48と、第1カバー49aおよび第2カバー49bとを備えている。ガイドローラ45は、上述したように、外壁41に囲まれた処理空間40a内に設けられている。
【0041】
〈シャフト46〉
シャフト46は、ガイドローラ45の回転軸中心となる部材である。シャフト46は、略円柱状である。シャフト46の材質は、被処理物A(図1参照)の搬送によって掛かる張力および加熱処理部40(図1参照)内の温度に耐えうる限り、特に限定されない。この実施形態では、シャフト46は、ステンレス製である。
【0042】
シャフト46は、第1端部46aと、第2端部46bとを備えている。第1端部46aは、シャフト46の右側の端部である。第2端部46bは、第1端部46aとは反対側の端部である。第2端部46bは、シャフト46の左側の端部である。
【0043】
シャフト46の第1端部46aおよび第2端部46bは、後述する第1支持部材44a、第2支持部材44bおよび一対の支持板90a,90bによって処理空間40a内に固定されている。第1端部46aおよび第2端部46bの間において、シャフト46には、第1軸受47aおよび第2軸受47bが取り付けられている。
【0044】
〈第1軸受47aおよび第2軸受47b〉
第1軸受47aおよび第2軸受47bは、シャフト46の軸方向において間隔を空けて取り付けられている。この実施形態では、第1軸受47aおよび第2軸受47bは、内輪47a1,47b1と、外輪47a2,47b2と、複数の転動体47a3,47b3と、保持器47a4,47b4とをそれぞれ備えている。第1軸受47aおよび第2軸受47bは、いわゆる転がり軸受である。
【0045】
内輪47a1,47b1は、シャフト46に装着される部品である。外輪47a2,47b2は、内輪47a1,47b1と径方向において対向している。外輪47a2,47b2は、ローラ本体48に装着される部品である。複数の転動体47a3,47b3は、内輪47a1,47b1と外輪47a2,47b2の間に配置された部品である。複数の転動体47a3,47b3は、内輪47a1,47b1の外周面と、外輪47a2,47b2の外周面との間で転動する。転動体47a3,47b3としては、玉またはころが用いられる。ころとしては、円筒ころ、針状ころ、円錐ころ等が用いられうる。保持器47a4,47b4は、内輪47a1,47b1と外輪47a2,47b2の間に配置された部品である。保持器47a4,47b4は、複数の転動体47a3,47b3を、内輪47a1,47b1と外輪47a2,47b2の間に保持する部品である。
【0046】
この実施形態では、内輪47a1,47b1、外輪47a2,47b2、複数の転動体47a3,47b3および保持器47a4,47b4は、セラミック製である。第1軸受47aおよび第2軸受47bは、セラミック軸受である。内輪47a1,47b1、外輪47a2,47b2、複数の転動体47a3,47b3および保持器47a4,47b4は、例えば、酸化物系セラミック、フッ化物系セラミック等から構成されうる。第1軸受47aおよび第2軸受47bとしてセラミック軸受を用いるによって、耐熱性が向上しうる。このため、加熱処理部40内で用いられる場合にも、第1軸受47a、第2軸受47bの耐久性が良好でありうる。なお、第1軸受47aおよび第2軸受47bは、セラミック軸受に限定されない。
【0047】
第1軸受47aは、第1軸受47aの内側および外側に取り付けられた一対のリング47a5によって、ローラ本体48の第1端部48aとシャフト46に取り付けられている。第2軸受47bは、第2軸受47bの内側および外側に取り付けられた一対のリング47b5によって、ローラ本体48の第2端部48bとシャフト46に取り付けられている。
【0048】
〈ローラ本体48〉
ローラ本体48は、筒状の部材である。ローラ本体48は、シャフト46に対して第1軸受47aおよび第2軸受47bを介して回転可能に取り付けられている。被処理物Aは、ローラ本体48の外周面48cに沿って搬送される。ローラ本体48は、第1端部48aと、第2端部48bとを備えている。第1端部48aは、ローラ本体48の右側の端部である。第2端部48bは、ローラ本体48の左側の端部である。第1端部48aおよび第2端部48bには、それぞれ開口48a1,48b1が形成されている。
【0049】
第1端部48aおよび第2端部48bは、略円筒状のローラ本体48から、それぞれ内径方向に延びている。このため、第1端部48aおよび第2端部48bの内径は、第1端部48aと第2端部48bの間の内径よりも小さくなっている。ローラ本体48とシャフト46の間には、空間48dが形成されている。これによって、第1軸受47aおよび第2軸受47bにかかる摩擦が低減されうる。また、ガイドローラ45が軽量化されている。
【0050】
ローラ本体48の第1端部48a、第2端部48bの開口48a1,48b1には、それぞれ第1軸受47aおよび第2軸受47bが取り付けられている。これによって、ローラ本体48は、処理空間40a内に固定されたシャフト46に対して、周方向に回転可能に支持されている。このため、被処理物Aの搬送の際、ガイドローラ45は、被処理物Aの搬送に伴って回転する。ローラ本体48の第1端部48aおよび第2端部48bの外側には、第1カバー49aおよび第2カバー49bが設けられている。この実施形態では、ローラ本体48は、ステンレス製である。なお、ローラ本体48の材質は、特に限定されない。
【0051】
〈第1カバー49aおよび第2カバー49b〉
第1カバー49aおよび第2カバー49bは、それぞれシャフト46の軸方向に沿った、第1軸受47aおよび第2軸受47bの外側において、内輪47a1,47b1と外輪47a2,47b2の間隙をそれぞれ塞いでいる。この実施形態では、第1カバー49aおよび第2カバー49bは、板状の部材である。
【0052】
この実施形態では、第1カバー49aおよび第2カバー49bは、略円盤状である。第1カバー49aおよび第2カバー49bは、ローラ本体48の第1端部48a、第2端部48bの開口48a1,48b1の内径よりも大きい外径を有している。第1カバー49aおよび第2カバー49bには、シャフト46が挿通される挿通孔49a1,49b1がそれぞれ設けられている。挿通孔49a1,49b1の内径は、シャフト46の外形と、略同一である。この実施形態では、第1カバー49aおよび第2カバー49bは、ステンレス製である。なお、第1カバー49aおよび第2カバー49bの材質は、ステンレス製に限定されない。
【0053】
この実施形態では、シャフト46には、段差部46cが設けられている。段差部46cは、第1軸受47aが取り付けられる位置よりも外側に設けられている。ローラ本体48の第1端部48aと、段差部46cとの間には、隙間が形成されている。第1カバー49aは、当該隙間と略同一の厚みを有している。これによって、第1カバー49aは、段差部46cとローラ本体48の第1端部48aに挟まれている。第1カバー49aは、段差部46cとローラ本体48の第1端部48aによって位置決めされた状態でローラ本体48の第1端部48aを塞いでいる。
【0054】
この実施形態では、シャフト46には、ばね座部46dが設けられている。ばね座部46dは、第2端部48bよりも外側に設けられている。ばね座部46dは、シャフト46よりも外径が大きい円盤状の部材である。ばね座部46dとしては、スリットが形成されたセットカラーが用いられている。ばね座部46dは、図示しないボルトによってシャフト46に着脱可能に取り付けられている。ボルトを緩めた状態でばね座部46dをシャフト46に沿って移動させることによって、ばね座部46dの位置調整が可能である。ばね座部46dと、第2カバー49bの間には、シャフト46が挿通された状態で、コイルばね49cが配置される。コイルばね49cは、シャフト46の外形よりも大きな内径を有し、かつ、ばね座部46dの外形よりも小さな外径を有している。
【0055】
ばね座部46dと、第2カバー49bの間隙をコイルばね49cの自然長よりも狭くすることによって、コイルばね49cの反発力が第2カバー49bと第2端部48bに作用する。これによって、第2カバー49bは、コイルばね49cによってローラ本体48の第2端部48bに押し付けられている。
【0056】
ところで、熱処理炉の外壁の内部の処理空間では、被処理物の搬送に伴い、被処理物を案内するガイドローラが回転する。ガイドローラのローラ本体は、第1軸受および第2軸受を介してシャフトに対して回転する。本発明者の知見では、この時、ガイドローラの部品間で摩擦が発生しうる。これによって、処理空間内の清浄度(クリーン度)が低下する懸念がある。例えば、第1軸受および第2軸受の、内輪、外輪、転動体および保持器の間で発生する摩擦によって、第1軸受および第2軸受から発塵しうる。搬送速度が早くなり摩擦が大きくなるほど、第1軸受および第2軸受から発塵は、多く発生しうる。また、第1軸受および第2軸受に充填されたグリスが飛散等した場合にも、処理空間内の清浄度が低下しうる。
【0057】
上述した実施形態では、熱処理装置10は、搬送装置20,22と、外壁41と、ガイドローラ45とを備えている。搬送装置20,22は、被処理物Aを搬送する。外壁41は、被処理物Aが搬送されつつ処理される処理空間40aを内部に有する。ガイドローラ45は、処理空間40a内に設けられ、被処理物Aを案内する。ガイドローラ45は、シャフト46と、第1軸受47aおよび第2軸受47bと、筒状のローラ本体48と、第1カバー49aおよび第2カバー49bとを備えている。第1軸受47aおよび第2軸受47bは、シャフト46の軸方向に間隔を空けて取り付けられている。ローラ本体48は、シャフト46に対して第1軸受47aおよび第2軸受47bを介して回転可能に取り付けられている。第1軸受47aおよび第2軸受47bは、内輪47a1,47b1と、外輪47a2,47b2と、転動体47a3,47b3と、保持器47a4,47b4とをそれぞれ備えている。第1カバー49aおよび第2カバー49bは、それぞれシャフト46の軸方向に沿った、第1軸受47aおよび第2軸受47bの外側において、内輪47a1,47b1と外輪47a2,47b2の間隙をそれぞれ塞いでいる。かかる構成によって、被処理物Aの搬送時に第1軸受47aおよび第2軸受47bで発生しうる摩擦による発塵が、処理空間40aに出にくくなっている。また、第1軸受47aおよび第2軸受47bにグリスが用いられている場合にも、グリスが処理空間40aに飛散しにくい。その結果、処理空間40aの清浄度が向上する。
【0058】
ガイドローラ45の第1軸受47aおよび第2軸受47b等の部品間の摩擦により、粉塵、グリスの飛散等が発生した場合にも、粉塵、飛散したグリス等は、ローラ本体48内部の空間48dに収められうる。ローラ本体48の第1端部48aおよび第2端部48bの外側に第1カバー49aおよび第2カバー49bが設けられていることによって、粉塵、飛散したグリス等が、ローラ本体48内部の空間48dから処理空間40a内に出にくい。
【0059】
上述した実施形態では、第2カバー49bは、コイルばね49cによってローラ本体48の第2端部48bに押し付けられている。これによって、処理空間40a内の温度変化によって、シャフト46、ローラ本体48等の寸法が変化した場合にも、第2カバー49bが安定して第2端部48bに押し付けられやすくなる。その結果、第1軸受47aおよび第2軸受47bからの発塵等が抑えられうる。なお、上述した実施形態に限定されず、第1カバー49aがコイルばね49cによってローラ本体48の第1端部48aに押し付けられてもよい。第1カバー49a、第2カバー49bの両方がコイルばね49cによってローラ本体48の第1端部48a、第2端部48bにそれぞれ押し付けられてもよい。
【0060】
上述した実施形態では、シャフト46には、第2端部48bの外側にばね座部46dが設けられている。コイルばね49cは、ばね座部46dと第2端部48bの間に配置されている。ばね座部46dによってコイルばね49cの位置が調整されることによって、第1カバー49aおよび第2カバー49bを押さえが安定し、処理空間40a内に粉塵等が飛散しにくくなる。
【0061】
上述した実施形態では、シャフト46には、第1軸受47aが取り付けられる位置よりも外側において段差部46cが設けられている。第1カバー49aは、段差部46cとローラ本体48の第1端部48aに挟まれている。これによって、第1カバー49aがシャフト46上に位置決めされ、第1端部48aが塞がれやすい。
【0062】
上述した実施形態では、第1軸受47aおよび第2軸受47bは、セラミック軸受である。これによって、被処理物Aの搬送に合わせてガイドローラ45が回転する際に、第1軸受47a、第2軸受47bからの発塵が低減されうる。さらに、第1軸受47a、第2軸受47bとして、自己潤滑性が良好なセラミック材料を用いることによって、部品間に充填するグリスが不要となる。このため、グリスの飛散の懸念がなく、処理空間40a内の清浄度が向上しやすい。
【0063】
上述した実施形態では、第1カバー49aは、シャフト46上において位置決めされている。第2カバー49bは、コイルばね49cによってローラ本体48の第2端部48bに押し付けられている。これによって、ガイドローラ45の位置が安定する。
【0064】
上述した実施形態では、外壁41には、処理空間40aを減圧する真空ポンプ80が接続されている。真空ポンプ80によって処理空間40aが減圧される熱処理装置10では、処理中にガイドローラ45から発生しうる発塵が、処理空間40aの清浄度に大きく影響しうる。このため、上述したガイドローラ45の構成を採用した場合に、清浄度を向上させる効果がより大きくなりうる。
【0065】
なお、熱処理装置10では、ガイドローラ45は、処理空間40aに設けられた一対の支持板90a,90bに支持されている。
【0066】
〈一対の支持板90a,90b〉
一対の支持板90a,90bは、加熱処理部40の処理空間40aに設けられている。詳細な図示は省略するが、一対の支持板90a,90bは、ガイドローラ45bが並べられた方向(前後方向)に沿って延びる板状の部材である。一対の支持板90a,90bは、前後方向に並ぶ複数のガイドローラ45bを支持している。一対の支持板90a,90bは、被処理物Aの搬送経路を挟むように、被処理物Aの幅よりも長い間隔が空けられて配置されている。一対の支持板90a,90bには、シャフト46が挿通される挿通孔90a1,90b1が設けられている。挿通孔90a1,90b1は、略円形に開口している。挿通孔90a1,90b1には、シャフト46が挿通されている。この実施形態では、ガイドローラ45は、第1支持部材44aおよび第2支持部材44bを介して一対の支持板90a,90bに支持されている。
【0067】
シャフト46の第1端部46aには、第1支持部材44aが取り付けられている。第1端部46aよりも内側には、第1端部46aよりも径が大きい段差部46cが設けられている。段差部46cは、第1カバー49aの外側に設けられている。シャフト46の第2端部46bには、第2支持部材44bが取り付けられている。第1支持部材44a、第2支持部材44bには、それぞれシャフト46の軸に沿って貫通した挿通孔44a1,44b1が形成されている。シャフト46は、挿通孔44a1,44b1に挿通された状態で第1支持部材44a、第2支持部材44bに取り付けられる。挿通孔44a1,44b1の内径は、シャフト46の第1端部46a,第2端部46bの外径と略同一に設定されている。
【0068】
〈第1支持部材44a〉
第1支持部材44aは、挿通部44a2と、フランジ部44a3と、端部44a4とを有している。挿通部44a2と、フランジ部44a3と、端部44a4とは、異なる部材であってもよく、一体的に構成されていてもよい。挿通部44a2、フランジ部44a3および端部44a4の外形は、略円環状である。挿通部44a2は、支持板90aの挿通孔90a1に挿通される部位である。フランジ部44a3は、挿通部44a2および端部44a4よりも径が大きい部位である。端部44a4はスリットが設けられたセットカラーでありうる。
【0069】
第1端部46aは、段差部46cよりも径が細くなっている。第1支持部材44aの挿通部44a2が段差部46cに当たって位置決めされた状態で、第1支持部材44aは、シャフト46に取り付けられる。第1支持部材44aの挿通孔44a1は、シャフト46の第1端部46aと略同一の長さである。このため、シャフト46の第1端部46aと、第1支持部材44aの端部44a4は、揃っている。第1支持部材44aは、端部44a4がシャフト46の第1端部46aに対して締め付けられることによって、シャフト46の第1端部46aに取り付けられている。
【0070】
第1支持部材44aは、シャフト46の第1端部46aに取り付けられた状態で、支持板90aに取り付けられている。換言すると、シャフト46の第1端部46aは、第1支持部材44aを介して支持板90aに取り付けられている。ここでは、第1支持部材44aは、フランジ部44a3が支持板90aの外側面に当接し、かつ、挿通部44a2が支持板90aの挿通孔90a1に挿通された状態で、支持板90aに取り付けられている。ここでは、第1支持部材44aのフランジ部44a3がボルト(図示省略)によって支持板90aに取り付けられている。これによって、処理空間40a内においてガイドローラ45の位置が安定しうる。
【0071】
〈第2支持部材44b〉
第2支持部材44bは、挿通部44b2と、フランジ部44b3と、端部44b4とを有している。挿通部44b2と、フランジ部44b3と、端部44b4とは、異なる部材であってもよく、一体的に構成されていてもよい。挿通部44b2および端部44b4の外形は、略円環状である。フランジ部44b3の外径は、角部が面取りされた略正方形状である(図4参照)。挿通部44b2は、支持板90bの挿通孔90b1に挿通される部位である。フランジ部44b3は、挿通部44b2および端部44b4よりも径が大きい部位である。端部44b4はスリットが設けられたセットカラーでありうる。
【0072】
第2支持部材44bは、支持板90bに取り付けられた際に、端部44b4がシャフト46の第2端部46bと略揃う寸法に設定されている。第2支持部材44bの挿通孔44b1には、シャフト46の第2端部46bが挿通されている。シャフト46の第2端部46bは、第2支持部材44bの挿通孔44b1に対して固定されていない。被処理物Aの処理時、温度変化によってシャフト46の長さが変化した場合にも、シャフト46は、第2支持部材44bの挿通孔44b1の内周面を滑る。これによって、シャフト46へ負荷がかかりにくい。
【0073】
第2支持部材44bは、フランジ部44b3が支持板90bの外側面に当接し、かつ、挿通部44b2が支持板90bの挿通孔90b1に挿通された状態で、支持板90bに取り付けられている。
【0074】
図4に示されているように、第2支持部材44bのフランジ部44b3の四隅には、挿通孔44b5が設けられている。第2支持部材44bは、挿通孔44b5に挿通されたボルト44b6によって支持板90b(図3参照)に取り付けられている。挿通孔44b5の内径は、ボルト44b6が挿通される部分の外形よりもわずかに大きい寸法に設定されている。このため、フランジ部44b3は、ボルト44b6が締められた状態でも、挿通孔44b5の内径と、ボルト44b6の外形との差だけ支持板90bの外側面に沿って動く。第2支持部材44bは、位置調整部材44dによって支持板90bの外側面に沿って位置調整可能に構成されている。
【0075】
位置調整部材44dは、フランジ部44b3の下面44baと、前方側面44bbと、後方側面44bcとに近接して設けられている。位置調整部材44dは、支持板90bに取り付けられた基部44d1と、基部44d1に挿通された調整ねじ44d2とを備えている。調整ねじ44d2の先端部は、それぞれ基部44d1を貫通し、フランジ部44b3の各面44ba~44bcに達している。調整ねじ44d2を回すことによって、先端の位置を調整し、これによって、支持板90bの外側面におけるフランジ部44b3の位置を調整することができる。
【0076】
この実施形態では、挿通孔90b1は、ローラ本体48の外形よりも大きい(図3参照)。メンテナンス時等には、以下の要領でガイドローラ45が取り外される。第2支持部材44bを支持板90bから取り外す。ローラ本体48の外形よりも大きく、かつ、挿通孔90b1の内径よりも小さい円筒状の部材を挿通孔90b1に挿通する。シャフト46の第1端部46aを第1支持部材44aから取り外す。ローラ本体48が取り付けられたシャフト46を、第2端部46b側から取り外す。円筒状の部材が支持板90bの挿通孔90b1に挿通されていることによって、シャフト46およびローラ本体48が脱落しにくく、交換時の作業性が良好である。
【0077】
以上、ここで開示される熱処理装置が備えるガイドローラ等の構成について、加熱処理部に設けられている場合を例に説明した。しかしながら、上述したガイドローラは、加熱処理部以外の部位に設けられている場合にも、上述した効果を奏しうる。例えば、上述したガイドローラは、冷却部、巻出部、巻取部等に設けられていてもよい。
【0078】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0079】
なお、本明細書は以下の項1~9を含んでいる。以下の項1~9は、上記した実施形態には限定されない。
【0080】
項1:
帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物が搬送されつつ処理される処理空間を内部に有する外壁と、
前記処理空間内に設けられ、前記被処理物を案内するガイドローラと
を備え、
前記ガイドローラは、
シャフトと、
前記シャフトの軸方向に間隔を空けて取り付けられた第1軸受および第2軸受と、
前記シャフトに対して前記第1軸受および前記第2軸受を介して回転可能に取り付けられた筒状のローラ本体と、
第1カバーおよび第2カバーと
を備え、
前記第1軸受および前記第2軸受は、
前記シャフトに装着される内輪と、
前記内輪の径方向において対向する外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に配置された複数の転動体と、
前記内輪と前記外輪の間に配置され、前記複数の転動体を保持する保持器と
をそれぞれ備え、
前記第1カバーおよび前記第2カバーは、それぞれ前記シャフトの軸方向に沿った、前記第1軸受および前記第2軸受の外側において、前記内輪と前記外輪の間隙をそれぞれ塞いでいる、
熱処理装置。
【0081】
項2:
前記第1カバーと前記第2カバーのうち少なくとも一方は、コイルばねによって前記ローラ本体の端部に押し付けられている、項1に記載された熱処理装置。
【0082】
項3:
前記シャフトは、第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを備え、
前記第1カバーは、前記シャフト上において位置決めされており、
前記第2カバーは、前記コイルばねによって前記ガイドローラの前記第2端部に押し付けられている、項2に記載された熱処理装置。
【0083】
項4:
前記シャフトには、前記第2端部の外側にばね座部が設けられており、
前記コイルばねは、前記ばね座部と前記第2端部の間に配置される、項3に記載された熱処理装置。
【0084】
項5:
前記シャフトには、前記第1軸受が取り付けられる位置よりも外側において段差部が設けられており、
前記第1カバーは、前記段差部と前記ローラ本体の前記第1端部に挟まれている、項3または4に記載された熱処理装置。
【0085】
項6:
前記処理空間には、一対の支持板が設けられており、
前記シャフトの前記第1端部と前記第2端部のうち一方は、前記一対の支持板のうち一方の支持板に取り付けられている、項3~5のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0086】
項7:
前記外壁には、前記処理空間を減圧する真空ポンプが接続される、項1~6のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0087】
項8:
前記第1軸受および前記第2軸受のうち少なくとも一方は、セラミック軸受である、項1~7のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0088】
項9:
前記ローラ本体と前記シャフトの間には、空間が形成されている、項1~8のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【符号の説明】
【0089】
A 被処理物
A1 巻出ロール
A2 巻取ロール
10 熱処理装置
20,22 搬送装置
24 制御装置
30 巻出部
31,41,51,61 外壁
32 巻出軸
35 ローラ
40 加熱処理部
40a,50a 処理空間
42 ヒータ
44a 第1支持部材
44b 第2支持部材
44a1,44b1 挿通孔
44a2,44b2 挿通部
44a3,44b3 フランジ部
44a4,44b4 端部
44b5 挿通孔
44b6 ボルト
44d 位置調整部材
44d1 基部
44d2 調整ねじ
45,45a~45d ガイドローラ
46 シャフト
46a 第1端部
46b 第2端部
46c 段差部
46d ばね座部
47a 第1軸受
47b 第2軸受
47a1,47b1 内輪
47a2,47b2 外輪
47a3,47b3 転動体
47a4,47b4 保持器
47a5,47b5 リング
48 ローラ本体
48a 第1端部
48b 第2端部
48a1,48b1 開口
48c 外周面
48d 空間
49a 第1カバー
49b 第2カバー
49a1,49b1 挿通孔
49c コイルばね
50 冷却部
52 冷却ローラ
55,55a~55d ガイドローラ
60 巻取部
62 巻取軸
65 ローラ
70,72,74 連結部
80 真空ポンプ
81~84 真空バルブ
90a,90b 支持板
90a1,90b1 挿通孔
【要約】
【課題】処理空間の清浄度の向上。
【解決手段】熱処理装置10は、搬送装置20,22と、外壁41と、ガイドローラ45とを備えている。搬送装置20,22は、被処理物Aを搬送する。外壁41は、被処理物Aが搬送されつつ処理される処理空間40aを内部に有する。ガイドローラ45は、処理空間40a内に設けられ、被処理物Aを案内する。ガイドローラ45は、シャフト46と、第1軸受47aおよび第2軸受47bと、筒状のローラ本体48と、第1カバー49aおよび第2カバー49bとを備えている。第1カバー49aおよび第2カバー49bは、それぞれシャフト46の軸方向に沿った、第1軸受47aおよび第2軸受47bの外側において、内輪47a1,47b1と外輪47a2,47b2の間隙をそれぞれ塞いでいる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4