(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ヘリカルアンテナ、アンテナ装置及び通信機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/40 20060101AFI20240618BHJP
H01Q 11/08 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01Q1/40
H01Q11/08
(21)【出願番号】P 2024526957
(86)(22)【出願日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2023047185
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591149089
【氏名又は名称】株式会社MARUWA
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】河合 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 真功
(72)【発明者】
【氏名】西山 直人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 久倫
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-225012(JP,A)
【文献】特開2007-60617(JP,A)
【文献】特開2020-184712(JP,A)
【文献】特表2012-520594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/40
H01Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の誘電体コアと、螺旋パターンのアンテナエレメントと、樹脂チューブとが、内から外への順で配され、樹脂チューブは、アンテナエレメントを覆った近傍で誘電体コアの外周面に接合されているヘリカルアンテナ。
【請求項2】
柱状の誘電体コアと、誘電体コアの外周面に接合されている螺旋パターンのアンテナエレメントと、アンテナエレメントの外側面に接合され且つ誘電体コアの外周面に接合されている樹脂チューブとを含むヘリカルアンテナ。
【請求項3】
アンテナエレメントは、誘電体コアの外周面に接着剤にて接合されている請求項1又は2記載のヘリカルアンテナ。
【請求項4】
樹脂チューブは、厚さが10~100μmである請求項1又は2記載のヘリカルアンテナ。
【請求項5】
樹脂チューブは、樹脂フィルムが巻かれて形成されたものである請求項1又は2記載のヘリカルアンテナ。
【請求項6】
樹脂フィルムと、樹脂フィルムの内面に接合されたアンテナエレメントと、アンテナエレメントを覆って樹脂フィルムの内面に接着された両面接着テープとのアセンブリが誘電体コアの外周面に巻かれて、樹脂チューブが形成されるとともに、樹脂チューブが誘電体コアの外周面に両面接着テープの接着剤にて接合されている請求項5記載のヘリカルアンテナ。
【請求項7】
誘電体コアよりも樹脂チューブが長く、アンテナエレメントは、誘電体コアの長さに対応して相対的に短い第1アンテナエレメントと、樹脂チューブの長さに対応して相対的に長い第2アンテナエレメントとを含み、第2アンテナエレメントのうち誘電体コアよりもはみ出した部位の内側はエア領域である請求項1又は2記載のヘリカルアンテナ。
【請求項8】
樹脂チューブは、曲げ弾性率(JIS K7171:2022、試験条件2mm/分)が2500Mpa以上、ガラス転移温度Tg(JIS K7121:2012)が220℃以上の樹脂よりなる請求項7記載のヘリカルアンテナ。
【請求項9】
アンテナ方式がエンドファイヤ型である請求項1又は2記載のヘリカルアンテナ。
【請求項10】
アンテナエレメントが閉回路である請求項1又は2記載のヘリカルアンテナ。
【請求項11】
請求項1又は2記載のヘリカルアンテナと、ヘリカルアンテナへの給電点を有する接続基板と、接続基板に接続された増幅器を有する回路基板とを含むアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1又は2記載のヘリカルアンテナを組み込んだ通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリカルアンテナ、アンテナ装置及び通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機器、車載通信機器等の用途に使用されるヘリカルアンテナは、一般的に、柱状の誘電体コアに螺旋状のアンテナエレメントを形成して作成される。このヘリカルアンテナには、小型化、動作利得性能が要求される。
【0003】
特許文献1には、セラミック材料で円柱状に形成されたコアの外周面に、螺旋状の長い第1アンテナエレメントと、螺旋状の短い第2アンテナエレメントとを、めっきやその他の方法で金属化して形成することで、GPSの2周波数(1227.6MHz,1575.42MHz)に対応したヘリカルアンテナが開示されている。同ヘリカルアンテナは、小型化されたものであるが、コアを、長い第1アンテナエレメントを形成できる長さにする必要があった。
【0004】
また、特許文献2には、セラミック材料で形成された短い内部コアの外周面に、螺旋状の短い内部アンテナエレメントをメタライズ処理によって形成し、樹脂材料で円筒状に形成された長い外部コアの外周面に、螺旋状の長い外部アンテナエレメントをメタライズ処理によって形成し、外部コアの内部に内部コアを収容することで、前記2周波数に対応したヘリカルアンテナの発明が開示されている。同ヘリカルアンテナは、より小型化可能な簡易構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2012-520594号公報
【文献】特許第6568332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記携帯通信機器等の用途に使用されるヘリカルアンテナには、小型化、動作利得性能のみならず、アンテナエレメントの防錆性、防塵性、防傷性も必要である。しかしこれまでは、アンテナエレメントの防錆性、防塵性、防傷性についてはさほど検討されていない。
【0007】
特許文献1では、コアの外周面に金属化された第1・第2アンテナエレメントが外部に露出している。特許文献2では、外部コアの外周面にメタライズ処理された外部アンテナエレメントが外部に露出しており、内部コアは樹脂製の外部コアに内挿されただけで接着されていない(浮いている)ため、内部コアの外周面にメタライズ処理された内部アンテナエレメントも外部コアの内部で空気に晒されている。そのため、アンテナエレメントが、錆びたり、塵をかぶったり、傷付いたりするおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、アンテナエレメントの防錆性、防塵性、防傷性を向上させ、耐久性の高いヘリカルアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、単に「長い」「短い」というときは、誘電体コアの中心を通る軸の方向の長さのことをいうものである。また、「内」はその軸に近付く側、「外」はその軸から離れる側である。
【0010】
[1]柱状の誘電体コアと、螺旋パターンのアンテナエレメントと、樹脂チューブとが、内から外への順で配され、樹脂チューブは、アンテナエレメントを覆った近傍で誘電体コアの外周面に接合されているヘリカルアンテナ。
(作用)樹脂チューブが、アンテナエレメントを空気、塵、衝突物等に晒されないように封止して保護する。
【0011】
[2]柱状の誘電体コアと、誘電体コアの外周面に接合されている螺旋パターンのアンテナエレメントと、アンテナエレメントの外側面に接合され且つ誘電体コアの外周面に接合されている樹脂チューブとを含むヘリカルアンテナ。
(作用)アンテナエレメントの外側面に接合され且つ誘電体コアの外周面に接着により接合されている樹脂チューブが、アンテナエレメントを空気、塵、衝突物等に晒されないように保護する。
【0012】
[3]アンテナエレメントは、誘電体コアの外周面に接着剤にて接合されている[1]又は[2]記載のヘリカルアンテナ。
(作用)アンテナエレメントの保護が向上する。
【0013】
[4]樹脂チューブは、厚さが10~100μmである[1]又は[2]記載のヘリカルアンテナ。
(作用)強度と柔軟性とのバランスが良く、アンテナエレメントの保護が向上する。
【0014】
[5]樹脂チューブは、樹脂フィルムが巻かれて形成されたものである[1]~[4]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
(作用)樹脂チューブを簡単に形成できる。
【0015】
[6]樹脂フィルムと、樹脂フィルムの内面に接合されたアンテナエレメントと、アンテナエレメントを覆って樹脂フィルムの内面に接着された両面接着テープとのアセンブリが誘電体コアの外周面に巻かれて、樹脂チューブが形成されるとともに、樹脂チューブが誘電体コアの外周面に両面接着テープの接着剤にて接合されている[5]記載のヘリカルアンテナ。
(作用)ヘリカルアンテナを簡単に製造できる。
【0016】
[7]誘電体コアよりも樹脂チューブが長く、アンテナエレメントは、誘電体コアの長さに対応して相対的に短い第1アンテナエレメントと、樹脂チューブの長さに対応して相対的に長い第2アンテナエレメントとを含み、第2アンテナエレメントのうち誘電体コアよりもはみ出した部位の内側はエア領域である[1]~[6]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
(作用)アンテナエレメントが、相対的に短い第1アンテナエレメントと、相対的に長い第2アンテナエレメントとを含むため、複数の周波数に対応することができる。また、第2アンテナエレメントにエア領域があることにより、軽量化が可能であり、あるいは別の誘電体コアを設けて周波数調整も可能である、
【0017】
[8]樹脂チューブは、曲げ弾性率(JIS K7171:2022、試験条件2mm/分)が2500Mpa以上、ガラス転移温度Tg(JIS K7121:2012)が220℃以上の樹脂よりなる[1]~[7]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
(作用)樹脂チューブの剛性が向上する([7]ではエア領域の形成が容易になる)とともに、アンテナエレメントのハンダ付け時等の耐熱性が向上する。
【0018】
[9]アンテナ方式がエンドファイヤ型である[1]~[8]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
(作用)誘電体コアを貫通する伝送線を設ける必要がない。
【0019】
[10]アンテナエレメントが閉回路である[1]~[9]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
(作用)動作利得性能が向上する。
【0020】
[11]前記[1]~[10]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナと、ヘリカルアンテナへの給電点を有する接続基板と、接続基板に接続された増幅器を有する回路基板とを含むアンテナ装置。
【0021】
[12]前記[1]~[10]のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナを組み込んだ通信機器。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アンテナエレメントの防錆性、防塵性、防傷性を向上させることができ、耐久性の高いヘリカルアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は実施例のヘリカルアンテナ及びアンテナ装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は樹脂フィルムとアンテナエレメントと両面接着テープとのアセンブリを示し、(a)はアセンブリの正面図、(b)は樹脂フィルムにアンテナエレメントを設けたときのA-A断面図、(c)はさらに両面接着テープを設けたときのA-A断面図である。
【
図3】
図3はヘリカルアンテナの製造過程を示し、(a)は誘電体コアにアセンブリを巻いて第1アンテナエレメントの上端部をハンダ付けしたときの斜視図、(b)は第2アンテナエレメントの上端部をハンダ付けしたときの部分斜視図、(c)は各アンテナエレメントの下端をハンダ付けしたときの部分斜視図である。
【
図5】
図5(a)はアセンブリを巻く前の誘電体コア等の部分縦断面図、(b)はアセンブリを巻いた後のヘリカルアンテナの部分縦断面図である。
【
図6】
図6は実施例の変更例のヘリカルアンテナを示し、(a)はアセンブリを巻く前の誘電体コア等の部分縦断面図、(b)はアセンブリを巻いた後のヘリカルアンテナの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<1>誘電体コア
誘電体コアを形成する誘電体としては、柱状を形作れる固体誘電体であれば特に限定されず、セラミック、樹脂、ゴム、ガラス、石英等を例示できる。
柱状としては、特に限定されないが、円柱状、楕円柱状、長円柱状、角柱状等を例示できる。柱状は、穴のないものに限定されず、筒状等の穴があいたものも含まれる。
【0025】
<2>樹脂チューブ
樹脂チューブを形成する樹脂としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等を例示できる。剛性と耐熱性の点ではポリイミド、PES、PET、PC等が好ましく、前記のとおり曲げ弾性率2500Mpa以上、ガラス転移温度Tg220℃以上を満たす樹脂がより好ましく、曲げ弾性率3000Mpa以上、ガラス転移温度Tg300℃以上を満たす樹脂が最も好ましい。
樹脂チューブの厚さは、特に限定されないが、前記10~100μmが好ましく、12~50μmがより好ましい。
樹脂チューブの形成手段としては、特に限定されないが、樹脂フィルムが巻かれて形成された樹脂チューブを例示できる。
【0026】
<3>アンテナエレメント
螺旋パターンのアンテナエレメントを形成する材料としては、特に限定されないが、銅、アルミニウム、銀等の金属(各合金を含む)を例示できる。
アンテナエレメントは、前記手段[1]又は[2]においては次の態様を含む。
(ア)所定螺旋パターンのアンテナエレメントが一つある態様
(イ)同一螺旋パターンのアンテナエレメントが複数ある態様
(ウ)相異なる螺旋パターンのアンテナエレメントが一つずつある態様。
(エ)相異なる螺旋パターンのアンテナエレメントが複数ずつある態様。
(オ)相異なる螺旋パターンのアンテナエレメントがいずれかの一つと他の複数との組み合わせである態様。
アンテナエレメントは、前記手段[7]においては次の態様を含む。
(カ)第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとが一つある態様
(キ)第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとが複数ずつある態様
(ク)第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとがいずれかの一つと他の複数との組み合わせである態様。
【0027】
アンテナエレメントの形成手段としては、特に限定されないが、次の態様を例示できる。
(サ)樹脂チューブ用の樹脂フィルムに金属がめっき、スパッタ、メタライズ処理、印刷等されてなるアンテナエレメント
(シ)樹脂チューブ用の樹脂フィルムに金属箔が接着剤で接着されてなるアンテナエレメント
(ス)誘電体コアに金属がめっき、スパッタ、メタライズ処理、印刷等されてなるアンテナエレメント、
【0028】
<4>接合
樹脂チューブと誘電体コアとの接合手段としては、特に限定されないが、接着剤による接合(接着)、融着、熱圧縮、スポンジや楔等のスペーサーによる接合、カシメ、ネジ締め等を例示できる。接着剤による接合(接着)は、密着性・封止性が良い点で好ましく、特に樹脂チューブがポリイミドよりなる場合には容易に接合できる点でも好ましい。接着剤としては、特に限定されないが、接着作業性が良い点で両面接着テープが好ましい。
アンテナエレメントと誘電体コアとの接合手段としては、特に限定されないが、上記態様(ス)ではめっき、スパッタ、メタライズ処理、印刷等による接合を例示でき、上記態様(サ)(シ)では接着剤による接合(接着)を例示できる。接着剤としては、特に限定されないが、接着作業性が良い点で両面接着テープが好ましい。
アンテナエレメントと樹脂チューブとの接合手段としては、特に限定されないが、上記態様(サ)(シ)ではめっき、スパッタ、メタライズ処理、印刷等による接合を例示でき、上記態様(ス)では接着剤による接合(接着)を例示できる。接着剤としては、特に限定されないが、接着作業性が良い点で両面接着テープが好ましい。
【0029】
<5>用途
本発明のヘリカルアンテナの用途としては、特に限定されないが、電波の受信、送信又はその両方を行う各種通信機器(情報機器を含む)に好適に用いることができる。
通信機器は、固定通信機器でもよいが、本発明による小型性を生かせる点で移動通信機器が適している。
移動通信機器としては、携帯通信機器(トランシーバ、携帯情報端末、携帯電話等)、車載通信機器(カーナビ、車載情報端末、車載電話等)、ドローン搭載通信機器等を例示できる。
通信内容としては、特に限定されないが、GPSデータ、一般データ、通話等を例示できる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を具体化した実施例について、図面を参照して説明する。なお、実施例の各部の材料、数量及び条件は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0031】
図1~
図5に示す実施例のアンテナ装置は、ヘリカルアンテナ1と、ヘリカルアンテナ1の接続基板10に接続された増幅器を有する回路基板12と、回路基板12のシールドケース13と、同軸ケーブルを接続するためのコネクタ14とを含むものである。
【0032】
ヘリカルアンテナ1の要点は、
図5等に示すように、柱状の誘電体コア2と、螺旋パターンのアンテナエレメント3,4と、樹脂チューブ5とが、内から外への順で配され、樹脂チューブ5は、アンテナエレメントを覆った近傍で誘電体コア2の外周面に接着剤にて接合されているところにある。
【0033】
言い換えれば、ヘリカルアンテナ1は、柱状の誘電体コア2と、誘電体コア2の外周面に接合されている螺旋パターンのアンテナエレメント3,4と、アンテナエレメント3,4の外側面に接合され且つ誘電体コア2の外周面に接着剤にて接合されている樹脂チューブ5とを含むものである。
【0034】
以下、ヘリカルアンテナ1の詳細を説明する。
誘電体コア2は、比誘電率21のセラミック材料(主成分:MgO-TiO2 )により、長さ18mm×外直径14mmの円柱状に形成されている。なお、図示例の誘電体コア2の軸中心には貫通孔があるが、この貫通孔は無くてもよい。後述するように、本実施例のヘリカルアンテナ1はエンドファイヤ型だからである。但し、バックファイヤ型に変更する場合は、伝送線を通すために貫通孔は必要である。
【0035】
樹脂チューブ5は、ポリイミドよりなる厚さ20μmの樹脂フィルム6が長さ23mm×内直径15~16mmの円筒状に巻かれて形成されたものである。すなわち、誘電体コア2よりも樹脂チューブ5が長い。誘電体コア2と樹脂チューブ5は両者の下端レベルが揃えられており、樹脂チューブ5は誘電体コア2よりも上方へはみ出している。使用したポリイミドは、曲げ弾性率(JIS K7171:2022、試験条件2mm/分)が3500Mpa、ガラス転移温度Tg(JIS K7121:2012)が335℃である。
【0036】
アンテナエレメント3,4は、誘電体コア2の長さに対応して相対的に短い第1アンテナエレメント3と、樹脂チューブ5の長さに対応して相対的に長い第2アンテナエレメント4とを含み、第2アンテナエレメント4のうち誘電体コア2よりもはみ出した部位の内側はエア領域(空芯)である。第1アンテナエレメント3と第2アンテナエレメント4は、それぞれ線幅1mm・厚さ35μmの銅箔よりなり、4本ずつあって、周方向に間隔をおいて交互に配列されている。
【0037】
樹脂チューブ5とアンテナエレメント3,4は、誘電体コア2の外周面に両面接着テープ7により接合されている。
図2に示すように、樹脂チューブ5を形成する樹脂フィルム6とアンテナエレメント3,4と両面接着テープ7は、予めアセンブリ化されている。同図(a)のように、樹脂フィルム6は正面視で平行四辺形をなす。同図(b)のように、樹脂フィルム6の内面に、第1アンテナエレメント3と第2アンテナエレメント4が接着剤(溶剤可溶型ポリイミドワニス(PIAD))により接合され、同図(c)のように、さらに両面接着テープ7が接着されてアセンブリ化されている。両面接着テープ7には、例えば日東電工株式会社のNo.5605R(ポリエステルフィルムの両面にアクリル系接着剤が付着した厚さ50μmのテープ)が用いられている。
樹脂フィルム6は、同図(b)では平らであるが、同図(c)では両面接着テープ7に引っ張られてアンテナエレメント3,4を囲むように変形する傾向となる。
【0038】
図2(a)にハッチングで示す箇所すなわちアンテナエレメント3,4の各端部は、後述するハンダ付けのため露出するように、両面接着テープが省かれている。
【0039】
そして、
図1、
図3、
図5等に示すように、このアセンブリが誘電体コア2の外周面に巻かれて、樹脂チューブ5が形成されるとともに、樹脂チューブ5がアンテナエレメントを覆った近傍で誘電体コア2の外周面に両面接着テープ7の粘着剤(接着剤)にて接合され、また、アンテナエレメント3,4も誘電体コア2の外周面に同粘着剤にて接合されている。
【0040】
4本の第1アンテナエレメント3の上端部は、誘電体コア2の上端面にメタライズ処理で形成された十字パターンの第1接続導体8にハンダ付けされて(
図3(a)に丸印で示す)、閉回路になっている。
4本の第2アンテナエレメント4の上端部は、樹脂チューブ5の上端に載せられた十字状の板金よりなる第2接続導体9にハンダ付けされて(
図3(b)に丸印で示す)、閉回路になっている。
各アンテナエレメント3,4の下端部はそれぞれ、樹脂チューブ5の上端に当てられた接続基板10の給電点11にハンダ付けされている(
図3(c)に丸印で示す)。すなわち、本実施例のヘリカルアンテナ1はアンテナ方式がエンドファイヤ型である。
【0041】
以上のように構成された本実施例のヘリカルアンテナ1は、次の作用効果を奏する。
(1)樹脂チューブ5が、アンテナエレメント3,4を空気、塵、衝突物等に晒されないように保護するため、防錆性、防塵性、防傷性が向上し、耐久性の高いヘリカルアンテナ1となる。
(2)アンテナエレメント3,4は、誘電体コア2の外周面に接着剤にて接合されているため、アンテナエレメント3,4の保護が向上する。
(3)樹脂チューブ5は、樹脂フィルム6が巻かれて形成されたものであるから、樹脂チューブ5を簡単に形成できる。
(4)アセンブリが誘電体コア2の外周面に巻かれる構成なので、ヘリカルアンテナ1を簡単に製造できる。
(5)相対的に短い第1アンテナエレメント3と相対的に長い第2アンテナエレメント4により、複数の周波数(例えば、1575.42MHz,1227.6MHz)に対応することができる。
(6)第2アンテナエレメント4のうち誘電体コア2よりもはみ出した部位の内側はエア領域(空芯)であるから、軽量化が可能であり、あるいは別の誘電体コア2を設けて周波数調整も可能である。
(7)樹脂チューブ5がポリイミドよりなるから、剛性が向上しエア領域の形成が容易になる。また、アンテナエレメント3,4のハンダ付け時等の耐熱性が向上する。
(8)アンテナ方式がエンドファイヤ型であるから、誘電体コア2を貫通する伝送線を設ける必要がない。
(9)アンテナエレメント3,4が閉回路であるから、動作利得性能が向上する。
(10)特許文献2と比べても、さらなる小型軽量化が可能である。
(11)部品点数が少なく、低コスト化が可能である。
【0042】
本実施例のヘリカルアンテナ1は、
図1及び
図4に示すように、接続基板10に、増幅器を有する回路基板12を接続し、さらに必要に応じて、回路基板12のシールドケース13を設けたり、同軸ケーブルを接続するためのコネクタ14を設けたりして、アンテナ装置を構成することができる。このヘリカルアンテナ1又はアンテナ装置は、小型軽量であり、前記の各種通信機器に組み込むことができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)
図6に示す変更例のように、誘電体コア2の外周面に第1アンテナエレメント3をめっき、スパッタ、メタライズ処理、印刷等により直接形成し、樹脂チューブ5には第2アンテナエレメント4のみを前記実施例のように設けてもよい。但し、製造効率は前記実施例の方が良い。
(2)アンテナ方式をエンドファイヤ型に変更すること。
(3)アンテナエレメント3,4を開回路に変更すること。
【符号の説明】
【0044】
1 ヘリカルアンテナ
2 誘電体コア
3 第1アンテナエレメント
4 第2アンテナエレメント
5 樹脂チューブ
6 樹脂フィルム
7 両面接着テープ
8 第1接続導体
9 第2接続導体
10 接続基板
11 給電点
12 回路基板
13 シールドケース
14 コネクタ
【要約】
【課題】アンテナエレメントの防錆性、防塵性、防傷性を向上させ、耐久性の高いヘリカルアンテナを提供する。
【解決手段】柱状の誘電体コア2と、螺旋パターンのアンテナエレメント3,4と、樹脂チューブ5とが、内から外への順で配され、樹脂チューブ5は、アンテナエレメント3,4を覆った近傍で誘電体コア2の外周面に接合されているヘリカルアンテナ1である。誘電体コア2よりも樹脂チューブ5が長く、アンテナエレメント3,4は、誘電体コア2の長さに対応して相対的に短い第1アンテナエレメント3と、樹脂チューブ5の長さに対応して相対的に長い第2アンテナエレメント4とを含み、第2アンテナエレメント4のうち誘電体コア2よりもはみ出した部位の内側はエア領域である。
【選択図】
図5