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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20240619BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240619BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/03 100C
B60C11/13 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038217
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021138291
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】竹森 諒平
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224132(JP,A)
【文献】特許第5796655(JP,B2)
【文献】特開2017-039407(JP,A)
【文献】特開2016-074390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0023077(US,A1)
【文献】特開2012-236455(JP,A)
【文献】特開2010-215221(JP,A)
【文献】特開2016-074256(JP,A)
【文献】特開2019-1406(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012808(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/013152(WO,A1)
【文献】特開2002-240513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両装着方向が指定されており、車両装着内側から外側に向かって第1の周方向主溝、第2の周方向主溝、第3の周方向主溝、及び第4の主方向主溝が形成され、前記4本の周方向主溝によって車両装着内側から外側に向かって第1の陸部、第2の陸部、第3の陸部、第4の陸部、及び第5の陸部が区画形成されたタイヤであって、
前記第1の周方向主溝から前記第4の周方向主溝のそれぞれの車両装着外縁に沿って、タイヤ周方向においてタイヤ幅方向寸法が変化する第1の面取り部から第4の面取り部がそれぞれ形成され、
前記第2の面取り部の車両装着最外側位置と隣接する第2の傾斜溝が形成されるとともに、前記第3の面取り部の車両装着最外側位置と隣接する第3の傾斜溝が形成され、
前記第1の陸部と前記第2の陸部との少なくともいずれかにおいて、タイヤ周方向に延在する少なくとも1本の周方向細溝が形成されており、
前記第1の陸部及び前記第2の陸部のそれぞれについて、車両装着最内側位置を0%のタイヤ幅方向位置とするとともに、車両装着最外側位置を100%のタイヤ幅方向位置とした場合に、前記周方向細溝がそれぞれ60%以上90%以下のタイヤ幅方向位置に形成されていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記第1の陸部及び前記第2の陸部のいずれにも前記周方向細溝が形成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2の陸部のタイヤ幅方向寸法W2に対する第1の傾斜溝のタイヤ幅方向寸法L1の割合(L1/W2)が、0.40以上0.50以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第3の陸部のタイヤ幅方向寸法W3に対する前記第2の傾斜溝のタイヤ幅方向寸法L2の割合(L2/W3)が、0.35以上0.45以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第4の陸部のタイヤ幅方向寸法W4に対する前記第3の傾斜溝のタイヤ幅方向寸法L3の割合(L3/W4)が、0.30以上0.40以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1の周方向主溝から前記第4の周方向主溝のそれぞれの深さに対する、前記第1の面取り部から前記第4の面取り部のそれぞれの深さの割合が、0.30以上0.50以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1の面取り部から前記第4の面取り部の少なくともいずれかが、複数のタイヤ周方向ユニットから構成されている場合において、前記タイヤ周方向ユニットのタイヤ周方向寸法に対するタイヤ幅方向寸法の割合が、0.05以上0.10以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1の陸部に形成された周方向細溝を第1の周方向細溝とするとともに、前記第2の陸部に形成された周方向細溝を第2の周方向細溝とした場合に、
前記第1の周方向主溝の溝幅に対する前記第1の周方向細溝の溝幅の割合と、前記第2の周方向主溝の溝幅に対する前記第2の周方向細溝の溝幅の割合と、の少なくともいずれかが、0.15以上0.30以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1の周方向細溝と前記第2の周方向細溝との少なくともいずれかの溝幅が1.5mm以上3.0mm以下であり、及び/又は、前記第1の周方向細溝と前記第2の周方向細溝との少なくともいずれかの溝深さが3.0mm以上4.0mm以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェット操安性、耐車外騒音性、及び耐摩耗性をバランス良く改善したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェット操安性と耐摩耗性を向上させた様々なタイヤが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、空気入りタイヤのトレッド面の領域は、タイヤ周方向に延びる4本の周方向主溝と、周方向主溝によって区画された5つの陸部と、陸部のうち、第1の側のタイヤ幅方向の最も外側に位置する第1側ショルダー陸部の領域に形成され、タイヤ幅方向に延びる第1ショルダー傾斜溝と、第2の側のタイヤ幅方向の最も外側に位置する第2側ショルダー陸部の領域に形成され、タイヤ幅方向に延びる第2側ショルダー傾斜溝と、第1側ショルダー陸部が第1側ショルダー傾斜溝と接する縁部の全周と、第2側ショルダー陸部が第2側ショルダー傾斜溝と接する縁部の全周に形成される面取りと、を含み、4本の周方向主溝のうち、第1の側から見て1番目の周方向主溝である第1周方向主溝の溝幅W1に対する、第1の側から見て2番目の周方向主溝である第2周方向主溝の溝幅W2の比を表す比W2/W1は、W2が16~20mmの範囲で4~5であり、トレッド面の領域のうち、タイヤセンターラインから見て第1の側にある領域における溝面積比率Soutに対する、タイヤセンターラインから見て第2の側にある領域における溝面積比率Sinの比を表す比Sin/Soutは前記Sinが35.2~38.4%の範囲で1.1~1.2である、空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-224132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、ウェット操安性と耐摩耗性のみならず、耐車外騒音性についても益々その要求レベルが高まっており、これら3つの性能をバランス良く改善したタイヤについて、その開発が要請されるに至っている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ウェット操安性、耐摩耗性、及び耐車外騒音性をバランス良く改善したタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤは、車両装着方向が指定されており、車両装着内側から外側に向かって第1の周方向主溝、第2の周方向主溝、第3の周方向主溝、及び第4の周方向主溝が形成され、上記4本の周方向主溝によって車両装着内側から外側に向かって第1の陸部、第2の陸部、第3の陸部、第4の陸部、及び第5の陸部が区画形成され、上記第1の周方向主溝から上記第5の周方向主溝のそれぞれの車両装着外縁に沿って、タイヤ周方向においてタイヤ幅方向寸法が変化する第1の面取り部から第5の面取り部がそれぞれ形成され、
上記第2の面取り部の車両装着最外側位置と隣接する第2の傾斜溝が形成されるとともに、上記第3の面取り部の車両装着最外側位置と隣接する第3の傾斜溝が形成され、上記第1の陸部と上記第2の陸部との少なくともいずれかにおいて、タイヤ周方向に延在する少なくとも1本の周方向細溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るタイヤでは、周方向主溝の車両装着外縁に特定形状の面取り部を形成するとともに、面取り部と特定の位置関係にある傾斜溝を形成し、しかも車両装着内側の陸部に周方向細溝を形成している。従って、本発明に係るタイヤによれば、ウェット操安性、耐車外騒音性、及び耐摩耗性をバランス良く改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態のタイヤのトレッドパターンの一例を示す平面図である。
図2図2は、図1のタイヤ幅方向中心領域を示す平面図である。
図3図3は、図1に示す周方向主溝と面取り部とのA-A´断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1~9)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0011】
<基本形態>
以下に、本発明に係るタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、タイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0012】
図1は、本実施形態のタイヤのトレッドパターンの一例を示す平面図である。同図に示すトレッドパターンを有するトレッド表面10は、車両装着方向が指定されており、車両装着内側から外側に向かって第1の周方向主溝12、第2の周方向主溝14、第3の周方向主溝16、及び第4の周方向主溝18が形成され、これら4本の周方向主溝12~18によって車両装着内側から外側に向かって第1の陸部22、第2の陸部24、第3の陸部26、第4の陸部28、及び第5の陸部30が区画形成されている。
【0013】
図1では、規定リムに組み込んで規定内圧の5%の内圧を充填した無負荷状態における各溝の形状を示している。この状態において、例えば、サイズ235/60R18 103Vのタイヤについては、第1~第4の周方向主溝12~18の溝幅は、8.0mm~10.0mm、それらの溝深さは、7.3mm~7.5mm、それらの間隔は、33mm~37mmとすることができる。ここで、溝幅とは、溝の延在方向に垂直な方向における最大寸法であり、溝深さとは、溝がないとした場合における(タイヤ子午断面視での)タイヤプロファイルラインから溝底までタイヤ径方向に測定した際の最大寸法である。
【0014】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
【0015】
このような前提の下、基本形態に係るタイヤでは、図1に示す第1の周方向主溝12、第2の周方向主溝14、第3の周方向主溝16、及び第4の周方向主溝18のそれぞれの車両装着外縁に沿って、タイヤ周方向においてタイヤ幅方向寸法が変化する第1の面取り部32、第2の面取り部34、第3の面取り部36、及び第4の面取り部38がそれぞれ形成されている。なお、図1において、各面取り部32、34、38は、各周方向主溝12、14、18の車両装着外側に位置する部分であるが、面取り部36は、周方向主溝16の車両装着両側に位置する部分であり、同図の点線に対して各周方向主溝12~18の逆側の部分をいう(但し、後述する傾斜溝に該当する部分は含まない)。また、図1に示す例では、各面取り部32は、同形状のタイヤ周方向ユニット32aの複数が、タイヤ周方向均等に形成されてなるものであり、面取り部34、36、38についても、それぞれ、タイヤ周方向ユニット34a、36a、36b、28aが同様に形成されている。
【0016】
また、基本形態に係るタイヤでは、図1に示す第2の面取り部34の車両装着最外側位置と隣接する第2の傾斜溝44が形成されるとともに、第3の面取り部36の車両装着最外側位置と隣接する第3の傾斜溝46が形成されている。なお、図2は、図1のタイヤ幅方向中心領域を示す平面図であり、特に、周方向主溝14と周方向主溝16との間のタイヤ幅方向領域における各構成要素を示している。なお、本明細書において、第2の面取り部34と第2の傾斜溝44との境界線は、タイヤ周方向ユニット34aと第3の陸部26との境界線(図2の実線)をタイヤ周方向の一方側(図2の上側)に延長した線であり、より具体的にはこの線が陸部26に達するまでの区間の線分をいう。また、この境界の概念については、図1に示す第1の面取り部32と第1の傾斜溝66との境界、及び第3の面取り部36と第3の傾斜溝46との境界のいずれについても同様である。
【0017】
さらに、基本形態に係るタイヤでは、図1に示す第1の陸部22と第2の陸部24との少なくともいずれか(同図に示すところではそれらの双方)において、タイヤ周方向に延在する少なくとも1本(同図に示すところでは1本ずつ)の周方向細溝52、54が形成されている。なお、例えば、サイズ235/60R18 103Vのタイヤの場合、図1に示す状態において、周方向細溝52、54の溝幅は、1.3mm~2.4mm、それらの溝深さは、3.8mm~4.2mmとすることができる。
【0018】
なお、図1に示すトレッド表面10においては、以上に説明した各構成要素12~54の他、以下の構成要素が設けられている。即ち、第1の陸部22においては、複数の周方向細溝62と、周方向細溝62のタイヤ幅方向位置から車両装着外側に向けて周方向細溝52を貫通するラグ溝64と、が形成されている。第2の陸部24においては、第1の面取り部32と隣接する第1の傾斜溝66と、第1の傾斜溝66の車両装着最外側位置から車両装着外側に向かって周方向細溝54に連通するサイプ68が形成されている。第4の陸部28においては、第5の周方向主溝18と連通するとともに陸部内で終端する第4の傾斜溝70が形成されている。第5の陸部においては、複数の周方向細溝72と、周方向細溝72のタイヤ幅方向位置から車両装着内側に向けて陸部内で終端するラグ溝74とが形成されている。
【0019】
(作用等)
従来、ウェット操安性と耐摩耗性を向上させるべく、車両装着外側に形成された周方向主溝同士の溝幅比と、車両装着外側と車両装着内側とにおける溝面積比と、を改良することが行われてきた(特許文献1)。しかしながら、近年では、これらの性能に加えて、耐車外騒音性の改善も要請されている。
【0020】
そもそも、耐車外騒音性には、概して溝の容積の影響が支配的であるが、同容積の溝を形成する場合には、車両装着内側よりも車両装着外側に溝幅の小さい溝を多く形成した方が、優れた耐車外騒音性が実現される。特許文献1の図2に示されたトレッドパターンでは、タイヤ赤道面を挟んだ車両装着内側と車両装着外側とにおいて、ショルダー部に形成されたラグ溝同士の溝面積にさほど差異はないものの、周方向主溝に関しては車両装着外側に最も幅広の溝が形成されている。
【0021】
本発明者は、この点に着目して、耐車外騒音性を高めるべく、周方向に延在する溝(周方向主溝及び周方向主溝よりも溝幅の小さい周方向細溝)の配置形態や、当該溝に隣接して形成される面取り部の形状等について鋭意、検討した。但し、この配置形態等を検討するにあたり、本発明者は、特許文献1のトレッドパターンによって得らえるのと同等以上の排水性(ひいてはウェット操安性)や耐摩耗性を実現することができるようなトレッドパターンについて鋭意検討を重ねた。
【0022】
その結果、本実施形態のタイヤでは、図1に示すように、第1の周方向主溝12から第4の周方向主溝18のそれぞれの車両装着外縁に沿って、タイヤ周方向においてタイヤ幅方向寸法が変化する第1の面取り部32から第4の面取り部38がそれぞれ形成されている。このように面取り部32~38のタイヤ幅方向寸法を変化させること(例えばジグザグ形状とすること)で、面取り部のタイヤ幅方向平均寸法を過度に大きくすることなく、ひいては耐車外騒音性について特許文献1と同等の効果を奏することができる(作用効果1)。また、このような形態によれば、面取り部のタイヤ幅方向平均寸法を過度に大きくすることなく、ひいては面取り部付近の陸部の剛性を低下させることなく、耐摩耗性について特許文献1と同等の効果を奏することができる(作用効果2)。
【0023】
また、このように面取り部32~38のタイヤ幅方向寸法を変化させることで、面取り部のタイヤ幅方向平均寸法を過度に小さくすることなく、排水性ひいてはウェット操安性について特許文献1と同等の効果を奏することができる(作用効果3)。
【0024】
次に、本実施形態のタイヤでは、図1図2に示すように、第2の面取り部34の車両装着最外側位置と隣接する第2の傾斜溝44が形成されるとともに、第3の面取り部36の車両装着最外側位置と隣接する第3の傾斜溝46が形成されている。これにより、排水性ひいてはウェット操安性について特許文献1と同等の効果を奏することができる(作用効果4)。
【0025】
さらに、本実施形態のタイヤでは、図1に示すように、第1の陸部22と第2の陸部24との少なくともいずれか(同図に示すところではそれらの双方)において、タイヤ周方向に延在する少なくとも1本(同図に示すところでは1本ずつ)の周方向細溝52、54が形成されている。このように、溝幅の狭い周方向細溝52、54を車両装着内側に形成することで、タイヤ周方向に延在する溝(周方向主溝12~18及び周方向細溝52、54)を車両装着外側よりも車両装着内側においてより多く形成することができる。これにより、同容量の溝を形成する場合には車両装着内側に多く溝を形成することが優れた排水効率が得られることに鑑みれば、特許文献1のトレッドパターンに対して効率的に排水性を高め、その結果ウェット操安性を改善することができる(作用効果5)。また、同容量の溝を形成する場合には車両装着内側に多く溝を形成することが優れた耐車外騒音性を得られることに鑑みれば、特許文献1のトレッドパターンに対して効率的に耐車外騒音性を高めることができる(作用効果6)。
【0026】
以上に示すように、基本形態のタイヤでは、周方向主溝の車両装着外縁に特定形状の面取り部を形成するとともに、面取り部と特定の位置関係にある傾斜溝を形成することを前提に、車両装着内側の陸部に周方向細溝を形成することで、上記作用効果1から作用効果6が相まって、特許文献1のパターンと同等の耐摩耗性が実現されるだけでなく、特許文献1と比較してウェット操安性及び耐車外騒音性を高めることができ、ひいては、ウェット操安性、耐車外騒音性、及び耐摩耗性をバランス良く改善することができる。
【0027】
なお、以上に示す、基本形態に係るタイヤは、図示しないが、従来のタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、タイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れるタイヤの断面形状をいう。基本形態に係るタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有する。そして、上記タイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0028】
また、以上に示す基本形態に係るタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。基本形態のタイヤを製造する場合には、加硫用金型の内壁に、例えば、図1に示すトレッドパターンに対応する凸部等を形成し、この金型を用いて加硫を行う。
【0029】
なお、以上に示した基本形態のタイヤは、空気入りタイヤとすることも、またエアレスタイヤとすることもできる。即ち、図1に一例として示すトレッドパターンの特徴(周方向主溝の車両装着外縁に特定形状の面取り部が形成されていること、面取り部と特定の位置関係にある傾斜溝が形成されていること、及び車両装着内側の陸部に周方向細溝が形成されていること)を有するタイヤであれば、いかなるタイヤも本発明の範囲に含まれるものである。
【0030】
<付加的形態>
次に、本発明に係るタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から9を説明する。
【0031】
(付加的形態1)
基本形態においては、図1に示す第1の陸部22及び第2の陸部24のそれぞれについて、車両装着最内側位置を0%のタイヤ幅方向位置とするとともに、車両装着最外側位置を100%のタイヤ幅方向位置とした場合に、周方向細溝52、54がそれぞれ60%以上90%以下のタイヤ幅方向位置に形成されていること(付加的形態1)が好ましい。
【0032】
通常、タイヤの接地圧はタイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に向かうにつれて大きくなり、1つの陸部についてもタイヤ幅方向内側から外側に向けて大きくなる傾向にある。よって、1つの陸部に関してタイヤ幅方向内側領域よりも外側領域において剛性を高めることが好ましい。このような観点から、本形態では、周方向細溝52、54を、それぞれ60%以上のタイヤ幅方向位置に形成することで、陸部22、24の中における周方向細溝の形成位置を車両装着外側(タイヤ幅方向内側)に寄せて、陸部22、24におけるタイヤ幅方向外側領域の剛性を高めることができる。これにより、ウェット操安性をさらに高めることができるだけでなく、ドライ操安性も高めることができる。
【0033】
これに対し、周方向細溝52、54を、それぞれ90%以下のタイヤ幅方向位置に形成することで、周方向細溝52と周方向主溝12とに挟まれるタイヤ幅方向領域、及び、周方向細溝54と周方向主溝14とに挟まれるタイヤ幅方向領域、の剛性低下を抑制することができる。これにより、ウェット操安性をさらに高めることができるだけでなく、ドライ操安性も高めることができる。また、このような構成によれば、周方向細溝52、54を過度に車両装着外側に設けることがないので、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0034】
なお、周方向細溝52、54を、それぞれ65%以上85%以下のタイヤ幅方向位置に形成した場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、それぞれ70%以上75%以下のタイヤ幅方向位置に形成した場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0035】
(付加的形態2)
基本形態又は基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、図1に示すように、第1の陸部22及び第2の陸部22のいずれにも周方向細溝52、54が形成されていること(付加的形態2)が好ましい。
【0036】
第1の陸部22及び第2の陸部24のいずれにも周方向細溝52、54が形成されている場合には、基本形態において詳述した効果がより高いレベルで奏される。なお、タイヤ赤道面CLから車両装着内側の陸部剛性を高めることを目的として、周方向細溝52、54を1本だけ設ける場合は、周方向細溝54のみを設けることが、排水性向上の観点からより好ましい。
【0037】
(付加的形態3)
基本形態又は基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す第2の陸部24のタイヤ幅方向寸法W2に対する第1の傾斜溝66のタイヤ幅方向寸法L1の割合(L1/W2)が、0.40以上0.50以下であること(付加的形態3)が好ましい。ここで、本明細書において、陸部のタイヤ幅方向寸法とは、陸部のタイヤ幅方向最内側位置とタイヤ幅方向最外側位置との間のタイヤ幅方向寸法を意味し、これら2つの位置が同じタイヤ周方向位置にある必要はないものとする。また、本明細書において、溝のタイヤ幅方向寸法とは、溝のタイヤ幅方向最内側位置とタイヤ幅方向最外側位置との間のタイヤ幅方向寸法を意味し、これら2つの位置が同じタイヤ周方向位置にある必要はないものとする。さらに、本明細書においては、面取り部は溝に含まれない概念である。
【0038】
割合(L1/W2)を0.40以上とすることで、第1の傾斜溝66のタイヤ幅方向寸法(ひいては溝面積)をより大きく確保し、排水性、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0039】
これに対し、割合(L1/W2)を0.50以下とすることで、第1の傾斜溝66のタイヤ幅方向寸法(ひいては溝面積)を過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0040】
なお、割合(L1/W2)を0.42以上0.48以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.43以上0.47以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0041】
(付加的形態4)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~3の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す第3の陸部26のタイヤ幅方向寸法W3に対する第2の傾斜溝44のタイヤ幅方向寸法L2の割合(L2/W3)が、0.35以上0.45以下であること(付加的形態4)が好ましい。
【0042】
割合(L2/W3)を0.35以上とすることで、第2の傾斜溝44のタイヤ幅方向寸法(ひいては溝面積)をより大きく確保し、排水性、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0043】
これに対し、割合(L2/W3)を0.45以下とすることで、第2の傾斜溝44のタイヤ幅方向寸法(ひいては溝面積)を過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0044】
なお、割合(L2/W3)を0.37以上0.43以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.38以上0.42以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0045】
(付加的形態5)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~4の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す第4の陸部28のタイヤ幅方向寸法W4に対する第3の傾斜溝46のタイヤ幅方向寸法L3の割合(L3/W4)が、0.30以上0.40以下であること(付加的形態5)が好ましい。
【0046】
割合(L3/W4)を0.30以上とすることで、第3の傾斜溝46のタイヤ幅方向寸法(ひいては溝面積)をより大きく確保し、排水性、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0047】
これに対し、割合(L3/W4)を0.40以下とすることで、第3の傾斜溝46のタイヤ幅方向寸法(ひいては溝面積)を過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0048】
なお、割合(L3/W4)を0.32以上0.38以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.33以上0.37以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0049】
(付加的形態6)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~5の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す第1の周方向主溝から第4の周方向主溝のそれぞれ(12、14、16、18)の深さに対する、第1の面取り部から第4の面取り部のそれぞれ(32、34、36、36)の深さの割合(図3に例示するHC/HG)が、0.30以上0.50以下であること(付加的形態6)が好ましい。
【0050】
図3は、図1に示す周方向主溝12と面取り部32とのA-A´断面図である。同図に示すように、周方向主溝12の深さHGは、周方向主溝12の車両装着外側に隣り合う陸部24のタイヤ径方向最大位置から周方向主溝12の溝底(タイヤ径方向最内位置)までのタイヤ径方向寸法をいう。また、面取り部32の深さHCとは、周方向主溝12のプロファイルをタイヤ径方向外側に延長した直線に沿って測定した、周方向主溝12と面取り部32との境界位置Xから陸部24のタイヤ径方向最大位置Yまでの寸法をいう。なお、図3は、周方向主溝12及びそのタイヤ幅方向周囲について示すものであるが、周方向主溝14及びそのタイヤ幅方向周囲、周方向主溝16及びそのタイヤ幅方向周囲、並びに周方向主溝18及びそのタイヤ幅方向周囲に関しても、同図に示すのと同様に、周方向主溝12の深さと面取り部の深さが定義とが定義され、ひいては割合(HC/HG)が適用されるものとする。
【0051】
割合(HC/HG)を0.30以上とすることで、各周方向主溝12~18の深さをさらに大きく確保して排水性を高め、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0052】
これに対し、割合(HC/HG)を0.50以下とすることで、各面取り部32~38の深さを過度に大きくせず、各面取り部32~38に隣り合う陸部の剛性低下を抑制することができる。これにより、ウェット操安性をさらに高めることができるだけでなく、ドライ操安性も高めることができる。また、このような構成によれば、各面取り部32~38の深さを過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0053】
なお、割合(HC/HG)を0.35以上0.45以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.37以上0.43以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0054】
(付加的形態7)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~6の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示すように、第1の面取り部32から第4の面取り部38の少なくともいずれか(同図では全ての面取り部32、34、36、38)が、複数のタイヤ周方向ユニットから構成されている場合(例えば図2に示す面取り部34については複数のタイヤ周方向ユニット34aから構成されている場合)において、図2に示すようにタイヤ周方向ユニット34aのタイヤ周方向寸法S1に対するタイヤ幅方向寸法S2の割合(S2/S1)が、0.05以上0.10以下である(付加的形態7)が好ましい。
【0055】
ここで、図2に示すように、タイヤ周方向ユニット34aのタイヤ周方向寸法S1とは、面取り部34と周方向主溝14との境界点Zと、面取り部34と傾斜溝44との境界点Wと、の間のタイヤ周方向寸法を意味し、タイヤ周方向ユニット34aのタイヤ幅方向寸法S2とは、これら2つの境界点Z、W同士のタイヤ幅方向寸法を意味する。なお、図2は、面取り部34と傾斜溝44とを含む領域について符号を付して示すものであるが、図1に示す面取り部32と傾斜溝66とを含む領域、及び面取り部36と傾斜溝46とを含む領域に関しても、図2に示すのと同様に、上記割合(S2/S1)が適用されるものとする。また、図1に示す面取り部38を含む領域(傾斜溝は含まない領域)については、面取り部38を構成するタイヤ周方向ユニット38aのタイヤ幅方向寸法が最大となるダイヤ周方向位置から、タイヤ幅方向寸法がゼロとなるタイヤ周方向位置までのタイヤ周方向寸法にS1を適用するとともに、タイヤ周方向ユニット38aのタイヤ幅方向最大寸法にS2を適用するものとする。
【0056】
本形態では、例えば図2に示す面取り部34のように、面取り部34を構成する複数のタイヤ周方向ユニット同士34a、34aがタイヤ周方向において殆ど間隙を挟まずに形成されている場合や、これらのタイヤ周方向ユニット同士34a、34aがタイヤ周方向において繋がっているような場合を前提とする。即ち、本形態では、面取り部34を構成するタイヤ周方向ユニット34aのタイヤ周方向寸法がある程度固定された場合を前提とする。このような場合、割合(S2/S1)を0.05以上とすることで、各面取り部32~38の面積をさらに大きく確保して排水性を高め、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0057】
これに対し、割合(S2/S1)を0.10以下とすることで、各面取り部32~38の面積を過度に大きくせず、各面取り部32~38に隣り合う陸部の剛性低下を抑制することができる。これにより、ウェット操安性をさらに高めることができるだけでなく、ドライ操安性も高めることができる。また、このような構成によれば、各面取り部32~38の面積を過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0058】
なお、割合(S2/S1)を0.06以上0.09以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.065以上0.085以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0059】
(付加的形態8)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~7の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す第1の陸部22に形成された周方向細溝を第1の周方向細溝52とするとともに、第2の陸部24に形成された周方向細溝を第2の周方向細溝54とした場合に、第1の周方向主溝12の溝幅に対する第1の周方向細溝52の溝幅の割合と、第2の周方向主溝14の溝幅に対する第2の周方向細溝54の溝幅の割合と、の少なくともいずれかが、0.15以上0.30以下であること(付加的形態8)が好ましい。
【0060】
上記の周方向主溝の溝幅に対する周方向細溝の溝幅の割合(以下、「主溝幅に対する細溝幅の割合」と称する)を0.15以上とすることで、各周方向細溝52、54の溝面積をさらに大きく確保して排水性を高め、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0061】
これに対し、主溝幅に対する細溝幅の割合を0.30以下とすることで、各周方向細溝52、54の溝面積を過度に大きくせず、各周方向細溝52、54の溝面積に隣り合う陸部の剛性低下を抑制することができる。これにより、ウェット操安性をさらに高めることができるだけでなく、ドライ操安性も高めることができる。また、このような構成によれば、各周方向細溝52、54の溝面積を過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0062】
なお、主溝幅に対する細溝幅の割合を0.17以上0.28以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.18以上0.27以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0063】
(付加的形態9)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~8の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝幅が1.5mm以上3.0mm以下であり、及び/又は、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝深さが3.0mm以上4.0mm以下であること(付加的形態9)が好ましい。
【0064】
第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝幅を1.5mm以上とすること、及び/又は、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝深さを3.0mm以上とすることで、各周方向細溝52、54の溝容積をさらに大きく確保して排水性を高め、ひいてはウェット操安性をさらに高めることができる。
【0065】
これに対し、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝幅を3.0mm以下とすること、及び/又は、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝深さを4.0mm以下とすることで、各周方向細溝52、54の溝容積を過度に大きくせず、各周方向細溝52、54の溝面積に隣り合う陸部の剛性低下を抑制することができる。これにより、ウェット操安性をさらに高めることができるだけでなく、ドライ操安性も高めることができる。また、このような構成によれば、各周方向細溝52、54の溝容積を過度に大きくすることなく、耐車外騒音性をさらに高めることができる。
【0066】
なお、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝幅を1.7mm以上とすること、及び/又は、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝深さを3.2mm以上とすることで、ウェット操安性をさらに一層高めることができる。また、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝幅を2.8mm以下とすること、及び/又は、第1の周方向細溝52と第2の周方向細溝54との少なくともいずれかの溝深さを3.8mm以下とすることで、ウェット操安性、ドライ操安性のみならず、耐車外騒音性をさらに一層高めることができる。
【実施例
【0067】
以下の実施例は、空気入りタイヤを用いて行った。
タイヤサイズを235/60R18 103Vとし、図1に示すトレッドパターン(或いは図1に示すトレッドパターンに近似したトレッドパターン)を有する発明例1から10に係るタイヤ、及び従来例(特許文献1に記載された空気入りタイヤに相当)のタイヤを作製した。なお、これらのタイヤの細部の諸条件については、以下の表1、表2に示すとおりである。
【0068】
表1、表2中、周方向細溝の位置と本数、周方向細溝の陸部内タイヤ幅方向位置、割合(L1/W2)、割合(L2/W3)、割合(L3/W4)、割合(HC/HG)、割合(S2/S1)、主溝幅に対する細溝幅の割合、周方向細溝の溝幅(mm)については、いずれも、本明細書中で説明した事項に準拠するものである。なお、比較例における周方向細溝とは、特許文献1の図2に示す溝58を指すものとする。
【0069】
このように作製した、発明例1から10に係るタイヤ、及び従来例のタイヤを、7Jのアルミニウム製のリムに230kPaで組み付け、各試験タイヤをFR方式の試験車両(排気量:2500cc)に装着し、以下の要領に従い、ウェット操安性、耐車外騒音性、及び耐摩耗性についての評価を行った。
【0070】
(ウェット操安性)
各試験タイヤを装着した車両でウェット路面(水膜1mm)のテストコースを走行した際の、テストドライバーによる官能性評価を実施した。そして、この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1、表2に併記する。この評価は、指数が大きいほど、ウェット操安性に優れていることを示す。
【0071】
(耐車外騒音性)
自動車の騒音試験用路面として規格化されている基準路面(ISO路面)のテストコースを80km/hで走行したときの通過音[dB]を車外騒音として測定した。耐車外騒音性は、通過音の測定値の逆数を算出し、従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1、表2に併記する。この評価は、指数が大きいほど、耐車外騒音性に優れていることを示す。
【0072】
(耐摩耗性)
試験車両について、10000kmのパターン走行を行った後の各陸部の摩耗量の差(ヒールアンドトウ摩耗)を測定し、測定値の逆数を算出した。この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1、表2に併記する。この評価は、指数が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1、表2によれば、本発明の技術的範囲に属する(即ち、周方向主溝の車両装着外縁に特定形状の面取り部を形成するとともに、面取り部と特定の位置関係にある傾斜溝を形成し、しかも車両装着内側の陸部に周方向細溝を形成した)発明例1から10のタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例のタイヤに比べて、ウェット操安性、耐車外騒音性、及び耐摩耗性をバランス良く改善されていることが判る。
【符号の説明】
【0076】
10 トレッド表面
12、14、16、18 周方向主溝
22、24、26、28、30 陸部
32、34、36、38 面取り部
32a、34a、36a、36b、38a タイヤ周方向ユニット
44、46、66、70 傾斜溝
52、54、62、72 周方向細溝
64、74 ラグ溝
68 サイプ
CL タイヤ赤道面
図1
図2
図3