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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/88 20060101AFI20240619BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20240619BHJP
   G08B 13/181 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G01S17/88
G01S17/10
G08B13/181
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020075862
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173569
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悠紀
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-101566(JP,A)
【文献】特開2017-219385(JP,A)
【文献】特開2009-110124(JP,A)
【文献】特開2007-315948(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189191(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
G01V 1/00-99/00
G08B 13/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視システムに用いられるセンサ装置であって、
パルス光を時系列に複数回出力する発光部と、
対象物による前記パルス光の反射光を時系列に受光する受光部と、
前記受光部において時系列に受光される前記反射光の飛行時間を利用して、前記センサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を時系列に算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された前記対象距離を利用して、前記対象物を人として検知する検知部と、
を備え、
前記検知部は、前記対象距離として、前記対象物が背景物である場合の前記対象距離である予め定められた所定距離よりも小さな距離が算出された後、次に前記所定距離が算出されるまでの間に、人の胴体または脚部の位置に対応する距離である特定距離が算出された場合に、前記対象物を人として検知する、
センサ装置。
【請求項2】
前記発光部は、前記対象物に対して上方から前記パルス光を出力する請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセンサ装置において、
前記検知部は、時系列に得られた前記対象距離のうちの最小値である最小距離に予め定められた所定値を加えた閾値距離以上且つ前記所定距離よりも小さな距離範囲内の距離を、前記特定距離として判断する、センサ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサ装置において、
前記検知部は、前記対象距離が算出されると、時系列に得られた前記対象距離のうちから前記最小距離を特定し、特定された前記最小距離を利用して、算出された前記対象距離が前記距離範囲内の距離であるか否かを判定し、算出された前記対象距離が前記距離範囲内の距離であると判定した場合に、前記対象物を人として検知する、
センサ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記検知部は、前記対象距離として、前記所定距離よりも小さな距離が算出された後、次に前記所定距離が算出されるまでの間に、前記特定距離が算出されなかった場合に前記対象物を飛翔体として検知する、センサ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記発光部から出力する前記パルス光を予め定められた範囲で走査させる走査部を、さらに備える、センサ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサ装置において、
前記走査部の1回の操作に対応して受光する複数の前記反射光に基づき求められる前記対象距離のうち、単一物による前記反射光に基づき求められる複数の前記対象距離を、推定してクラスタ化する第1クラスタ部と、
前記第1クラスタ部によりクラスタ化された複数の前記対象距離である第1距離クラスタと、クラスタ化された時刻が前記第1距離クラスタとは異なる第2距離クラスタと、が互いに同じ前記単一物による前記反射光に基づき求められる複数の前記対象距離であるか否かを推定し、互いに同じ前記単一物による前記反射光に基づき求められる複数の前記対象距離であると推定する場合に、前記第1距離クラスタと前記第2距離クラスタとをクラスタ化する第2クラスタ部と、
をさらに備える、センサ装置。
【請求項8】
監視システムに用いられるセンサ装置であって、
パルス光を時系列に複数回出力する発光部と、
対象物による前記パルス光の反射光を時系列に受光する受光部と、
前記受光部において時系列に受光される前記反射光の飛行時間を利用して、前記センサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を時系列に算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された前記対象距離を利用して、前記対象物を人として検知する検知部と、
を備え、
前記検知部は、時系列に算出された前記対象距離のうちの最小値である最小距離が算出されてから、次に前記対象物が背景物である場合の前記対象距離である予め定められた所定距離が前記対象距離として算出されるまでの期間における前記対象距離の時間変化量が、予め定められた閾値変化量よりも小さい場合に、前記対象物を人として検知する、
センサ装置。
【請求項9】
パルス光を時系列に複数回出力する発光部と、対象物による前記パルス光の反射光を時系列に受光する受光部と、を有する監視システムに用いられるセンサ装置において、前記対象物を人として検知するためのコンピュータプログラムであって、
前記受光部において時系列に受光される前記反射光の飛行時間を利用して、前記センサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を時系列に算出する距離算出機能と、
前記距離算出機能により算出された前記対象距離を利用して、前記対象物を人として検知する機能と、
を前記センサ装置が備えるコンピュータに実現させ、
前記対象物を人として検知する機能は、前記対象距離として、前記対象物が背景物である場合の前記対象距離である予め定められた所定距離よりも小さな距離が算出された後、次に前記所定距離が算出されるまでの間に、人の胴体または脚部の位置に対応する距離である特定距離が算出された場合に、前記対象物を人として検知する機能を含む、
コンピュータプログラム。
【請求項10】
パルス光を時系列に複数回出力する発光部と、対象物による前記パルス光の反射光を時系列に受光する受光部と、を有する監視システムに用いられるセンサ装置において、前記対象物を人として検知するためのコンピュータプログラムであって、
前記受光部において時系列に受光される前記反射光の飛行時間を利用して、前記センサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を時系列に算出する距離算出機能と、
前記距離算出機能により算出された前記対象距離を利用して、前記対象物を人として検知する機能と、
を前記センサ装置が備えるコンピュータに実現させ、
前記対象物を人として検知する機能は、時系列に算出された前記対象距離のうちの最小値である最小距離が算出されてから、次に前記対象物が背景物である場合の前記対象距離である予め定められた所定距離が前記対象距離として算出されるまでの期間における前記対象距離の時間変化量が、予め定められた閾値変化量よりも小さい場合に、前記対象物を人として検知する機能を含む、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の監視領域内への侵入者を検出するための種々のセンサ装置が知られている。例えば、特許文献1のセンサ装置では、レーザ投受光部から被検出物までの距離情報を用いて、被検出物が侵入者であるか否かを判定している。具体的には、被検出物の追跡が途切れる直前の被検出物の高さが所定値以上であれば、被検出物を侵入者であると判定し、被検出物の追跡が途切れる直前の被検出物の高さが所定値未満であれば、被検出物を侵入者でないと判定する。かかるセンサ装置では、所定の背の高さ以上の人間と、所定の背の高さ未満の犬や猫等の小動物との誤検出を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5076070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のセンサ装置のように被検出物の高さによる判別では、被検出物が人の背丈ほどの高さを飛翔する鳥である場合、侵入者と鳥の区別ができずに誤検知するおそれがある。また、このような誤検知の結果、無駄な警報が行われるという問題が生じ得る。このような問題は、被検出物が鳥である場合に限らず、ドローンや風によって飛ばされるゴミ袋など、人間の背丈ほどの高さを飛行する任意の種類の飛翔体である場合に共通する。このため、飛翔体を侵入者であると誤検知することを抑制可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、監視システムに用いられるセンサ装置が提供される。このセンサ装置は、パルス光を時系列に複数回出力する発光部と、対象物による前記パルス光の反射光を時系列に受光する受光部と、前記受光部において時系列に受光される前記反射光の飛行時間を利用して、前記センサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を時系列に算出する距離算出部と、前記距離算出部により算出された前記対象距離を利用して、前記対象物を人として検知する検知部と、を備え、前記検知部は、前記対象距離として、前記対象物が背景物である場合の前記対象距離である予め定められた所定距離よりも小さな距離が算出された後、次に前記所定距離が算出されるまでの間に、人の胴体または脚部の位置に対応する距離である特定距離が算出された場合に、前記対象物を人として検知する。
この形態のセンサ装置によれば、検知部は、対象距離として、対象物が背景物である場合の対象距離である予め定められた所定距離よりも小さな距離が算出された後、次に所定距離が算出されるまでの間に、人の胴体または脚部の位置に対応する距離である特定距離が算出された場合に、対象物を人として検知する。このため、人の背丈ほどの高さを飛翔する鳥等では、このような特定距離が算出されないので、かかる飛翔体を人として検知することを抑制でき、飛翔体を侵入者であると誤検知することを抑制できる。
(2)上記形態のセンサ装置において、前記発光部は、前記対象物に対して上方から前記パルス光を出力してもよい。この形態のセンサ装置によれば、対象物に対して横方向からパルス光が出力される構成と比較して、パルス光に対する雨や雪などの外乱物の影響を抑制できる。また、上方からパルス光を出力すると、背景物が地面となり得るので、基準とする背景物を探索する必要性が生じない。さらに、背景物を地面とすることにより、位置や形状が容易に変化しないので、所定距離が変化することを抑制でき、高い精度で人を検知できる。
(3)上記形態のセンサ装置において、前記検知部は、時系列に得られた前記対象距離のうちの最小値である最小距離に予め定められた所定値を加えた閾値距離以上且つ前記所定距離よりも小さな距離範囲内の距離を、前記特定距離として判断してもよい。
この形態のセンサ装置によれば、かかる所定値を適切に設定することにより、例えば、人の頭部において最小距離を検出した後に、人の胴体または脚部において特定距離を検出させることができる。
(4)上記(3)の形態のセンサ装置において、前記検知部は、前記対象距離が算出されると、時系列に得られた前記対象距離のうちから前記最小距離を特定し、特定された前記最小距離を利用して、算出された前記対象距離が前記距離範囲内の距離であるか否かを判定し、算出された前記対象距離が前記距離範囲内の距離であると判定した場合に、前記対象物を人として検知してもよい。この形態のセンサ装置によれば、検知部は、対象距離が算出されるごとに、算出された対象距離が距離範囲内の距離であるか否かを判定し、対象物を人として検知できるので、侵入者が存在してから検出までの時間を短くできる。
(5)上記形態のセンサ装置において、前記検知部は、前記対象距離として、前記所定距離よりも小さな距離が算出された後、次に前記所定距離が算出されるまでの間に、前記特定距離が算出されなかった場合に前記対象物を飛翔体として検知してもよい。この形態のセンサ装置によれば、検知部は、人の脚等の特定距離が存在しない場合に、対象物を飛翔体として検知するので、飛翔体を精度良く検知できる。
(6)上記形態のセンサ装置において、前記発光部から出力する前記パルス光を予め定められた範囲で走査させる走査部を、さらに備えてもよい。この形態のセンサ装置によれば、予め定められた範囲でパルス光を走査させる走査部をさらに備えるので、走査しない構成に比べて、より広範囲にパルス光を照射でき、侵入者を検知する可能性を高めることができる。
(7)上記(6)の形態のセンサ装置において、前記走査部の1回の操作に対応して受光する複数の前記反射光に基づき求められる前記対象距離のうち、単一物による前記反射光に基づき求められる複数の前記対象距離を、推定してクラスタ化する第1クラスタ部と、
前記第1クラスタ部によりクラスタ化された複数の前記対象距離である第1距離クラスタと、クラスタ化された時刻が前記第1距離クラスタとは異なる第2距離クラスタと、が互いに同じ前記単一物による前記反射光に基づき求められる複数の前記対象距離であるか否かを推定し、互いに同じ前記単一物による前記反射光に基づき求められる複数の前記対象距離であると推定する場合に、前記第1距離クラスタと前記第2距離クラスタとをクラスタ化する第2クラスタ部と、をさらに備えてもよい。この形態のセンサ装置によれば、クラスタ化された単一物からの複数の反射光に基づき、複数の対象物が存在するとの誤検知、および、異なる対象物を同一の対象物との誤検知を抑制できる。
(8)本開示の他の形態によれば、監視システムに用いられるセンサ装置が提供される。このセンサ装置は、パルス光を時系列に複数回出力する発光部と、対象物による前記パルス光の反射光を時系列に受光する受光部と、前記受光部において時系列に受光される前記反射光の飛行時間を利用して、前記センサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を時系列に算出する距離算出部と、前記距離算出部により算出された前記対象距離を利用して、前記対象物を人として検知する検知部と、を備え、前記検知部は、時系列に算出された前記対象距離のうちの最小値である最小距離が算出されてから、次に前記対象物が背景物である場合の前記対象距離である予め定められた所定距離が前記対象距離として算出されるまでの期間における前記対象距離の時間変化量が、予め定められた閾値変化量よりも小さい場合に、前記対象物を人として検知する。
この形態のセンサ装置によれば、検知部は、対象距離のうちの最小値である最小距離が算出されてから、所定距離が対象距離として算出されるまでの期間における対象距離の時間変化量が、予め定められた閾値変化量よりも小さい場合に、前記対象物を人として検知するので、一般には、対象距離の時間変化量が閾値変化量以上となる飛翔体を人として検知することを抑制できる。このため、飛翔体を侵入者であると誤検知することを抑制できる。
【0007】
本開示は、センサ装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、センサ装置を備えるセキュリティシステム、センサ装置における侵入者の検知方法、センサ装置の制御方法、各システムの機能や各方法を実現するためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態としてのセンサ装置の装置構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態のセンサ装置からの照射光と侵入者を模式的に示す説明図である。
図3】センサ装置の照射エリアを説明するための模式図である。
図4】第1実施形態の侵入者検知処理の手順を示すフローチャートである。
図5】時刻tにおける照射光の照射を示す模式図である。
図6】時刻t+1における照射光の照射を示す模式図である。
図7】人の動きに応じた照射光の照射位置を示す横から見た模式図である。
図8】時系列クラスタリングを説明するための模式図である。
図9】時間とともに変化する対象物の対象距離値の変化を示す説明図である。
図10】照射光の照射範囲を鳥が横切る場合を模式的に示す説明図である。
図11】対象物が図10に示す鳥である場合の対象距離値の時間変化を示す説明図である。
図12】第2実施形態の侵入者検知処理の手順を示すフローチャートである。
図13】対象物が人の場合における対象距離値の時間変化量を示す説明図である。
図14】対象物が鳥の場合における対象距離値の時間変化量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1は、本開示の一実施形態としてのセンサ装置10の装置構成を示すブロック図である。センサ装置10は、所定の監視領域内への侵入者を検出するための監視システムに用いられる。センサ装置10は、パルス光(後述の照射光Lz)を照射し、対象物における反射光を受光し、受光した反射光の飛行時間(TOF:Time of Flight)を利用して対象物までの距離を算出し、算出された距離を用いて侵入者を検出する。
【0010】
センサ装置10は、内蔵電池により給電されて駆動する。なお、センサ装置10は、外部電源から電力の供給を受けて駆動してもよい。センサ装置10は、発光部40と、走査部50と、受光部60と、制御部110と、距離算出部120と、クラスタ部130と、検知部140とを備える。
【0011】
発光部40は、光源としての半導体レーザを照射するレーザダイオードを光源として備え、距離測定用の照射光Lzを照射する。照射光Lzは、パルス状のレーザ光である。なお、発光部40の光源はレーザダイオードのほか、固体レーザといった他の光源を用いてもよい。
【0012】
図2は、第1実施形態のセンサ装置10からの照射光Lzと侵入者Mnを模式的に示す説明図である。図2に示すように、本実施形態では、センサ装置10は、天井に設置され、発光部40は、対象物、例えば人や鳥等に対して上方から照射光Lzを出力する。センサ装置10は、下方に存在する対象物までの距離、例えば、侵入者や小動物や飛翔体や、地面Gd等の背景物までの距離を測定する。本実施形態では、Y軸方向は鉛直方向に相当する。また、X軸方向およびZ軸方向は、床と平行な方向である。センサ装置10は、照射光Lzを鉛直下方、すなわち+Y方向に照射して、対象物からの反射光を受光する。なお、本実施形態では、Z軸方向とは、+Z方向と-Z方向との総称を意味する。同様に、X軸方向は、+X方向と-X方向との総称を意味し、Y軸方向は、+Y方向と-Y方向との総称を意味する。
【0013】
図1に示す走査部50は、ミラー55を回動させることによって、発光部40から時系列に複数回出力するパルス光である照射光Lzを予め定められた範囲で走査させる。言い換えると、発光部40は、連続的に照射光Lzを出力して予め定められた範囲で走査させる。ミラー55は、例えば、MEMSミラーによって構成される。ミラー55の回動は、制御部110によって制御される。走査部50によって照射光Lzの走査が行われることにより、発光部40は、測定範囲に対して照射光Lzを照射する方位を変更しながら照射光Lzを照射する。
【0014】
図3は、センサ装置10の照射エリアを説明するための模式図である。図3に示すように、例えば、190°の走査範囲を0.25°刻みでミラー55を反時計回りにレーザを照射すると、1走査につき761点の距離値を取得できる。なお、走査範囲は、190°に限らず、360°や、160°など任意の角度であってもよい。また、0.25°刻みに限らず、刻み角度も任意の角度であってもよい。さらに、ミラー55の回転方向は、時計回りであってもよい。
【0015】
受光部60は、受光面に二次元配列される複数の図示しない画素を有する。画素は、対象物OBJからの反射光の入射強度に応じた信号を出力するアレイ状に並んだ複数の図示しない受光素子で構成されている。
【0016】
図1に示すように、制御部110は、発光部40と、走査部50と、受光部60とを含む各部の制御を行う。より具体的には、制御部110は、発光部40に対してレーザダイオードを発光させる指令信号や、受光部60の受光素子をアクティブにするアドレス信号の他、距離算出部120に距離を算出させる指示信号や、検知部140に対象物が侵入者であるか否かを判定させる指示信号や、走査部50のミラー55に対する回転の制御信号を出力する。
【0017】
距離算出部120は、対象物OBJまでの距離を算出する。距離算出部120は、TOFを利用して、走査範囲内に存在する対象物OBJまでの距離の算出を行う。より具体的には、距離算出部120は、パルス光が発光されてから、反射パルス光のピークまでの時間を検出することで、センサ装置10から対象物OBJまでの対象距離を時系列に次々と算出する。なお、距離算出部120は、算出した距離を照射光Lzの照射角度と対応付けて記録する。
【0018】
ここで、センサ装置10では、照射光Lzの対象物における反射光に加えて、背景光を受光する。背景光とは、照射光Lzとは異なる光(直接光)、または、かかる光が対象物に反射してセンサ装置10にて受光された光を意味する。照射光Lzとは異なる光とは、例えば、日光や街灯の光やこれらの光の反射光などが該当する。
【0019】
センサ装置10は、受光した光の強度を利用して背景光の強度を特定し、かかる強度に基づき閾値を設定する。そして、受光した光のうち設定された閾値以上の強度の光を対象物からの反射光として特定し、照射光Lzを照射してから反射光を受光するまでの時間、すなわち、光の飛行時間TOF(Time of Flight)を特定する。そして、かかる飛行時間TOFを、センサ装置10と対象物との間を光が往復する時間であるものとして、対象物までの距離を算出する。
【0020】
クラスタ部130は、互いに異なる時間に受光した複数の反射光に基づき求められる複数の距離が、いずれも同一の対象物から出力される反射光に基づき求められる距離である場合に、これらの距離を1つのクラスタとしてまとめる。クラスタ部130は、第1クラスタ部132と、第2クラスタ部134を備える。
【0021】
第1クラスタ部132は、走査部50の1回の走査に対応して受光する複数の反射光に基づき求められる対象距離のうち、単一の対象物による反射光に基づき求められる複数の対象距離からなる対象距離群をクラスタ化する。第2クラスタ部134は、後述する時系列クラスタリングにより、第1クラスタ部によりクラスタ化された複数の対象距離群同士をクラスタ化する。
【0022】
検知部140は、距離算出部120により算出された対象距離を利用して、人を検知する。概略的に、検知部140は、対象距離が算出されると、時系列に得られた対象距離のうちから最小距離を特定し、特定された最小距離を利用して、算出された対象距離が距離範囲内の距離であるか否かを判定し、算出された対象距離が距離範囲内の距離であると判定した場合に、対象物を人として検知する。かかる処理の具体的な手順は後述する。
【0023】
A2.侵入者検知処理:
図4は、第1実施形態の侵入者検知処理の手順を示すフローチャートである。侵入者検知処理とは、侵入者の検知および発報を行う処理である。図4に示す侵入者検知処理は、発光部40による照射光Lzの照射と、受光部60による受光と、距離値の算出とは独立して行われている。図4に示す侵入者検知処理は、逐次的に、繰り返し実行される。センサ装置10では、図示しない内蔵電池から電力が供給されると、侵入者検知処理が実行される。
【0024】
第1クラスタ部132は、一回の走査で得られる複数の距離に基づき、複数の対象距離からなる対象距離群をクラスタ化する(ステップS10)。
【0025】
図5は、時刻tにおける照射光Lzの照射を示す模式図である。図5に示すように、時刻tにおいて、走査部50の1回の走査に対応して、発光部40は、対象物OBJ(t)に対して照射光Lzを複数回照射している。対象物OBJ(t)とは、時刻tに受光されるパルス光の反射光を出力する物体を意味する。受光部60は、対象物OBJ(t)の点p31~点p35からの図示しない反射光を受光する。なお、点p31~点p35は、対象物OBJ(t)である人物の肩、頭頂部に相当する。距離算出部120は、各点p31~点p35からの反射光に基づきそれぞれ対象距離を求める。第1クラスタ部132は、各点p31~点p35からの反射光に基づき求められる複数の対象距離を、単一の対象物OBJ(t)による反射光に基づき求められる一群の対象距離であるものとして、クラスタ化する。具体的には、所定の照射角度範囲内にあって、且つ、互いの誤差が所定の範囲内にある対象距離群を一群の対象距離であるものとして、クラスタ化する。なお、時刻tにおいて、クラスタ化された一群の対象距離を第1距離クラスタCL1と呼ぶ。
【0026】
図6は、時刻t+1における照射光Lzの照射を示す模式図である。図6に示す照射光Lzの照射は、図5に示す時刻tにおける照射の1回後の走査において実行される。図5および図6から理解できるように、人の動きにより時系列で照射位置が異なる。走査部50の1回の走査に対応して、発光部40は、対象物OBJ(t+1)に対して照射光Lzを複数回照射している。時刻tの場合と同様にして、第1クラスタ部132は、時刻t+1において、図6に示すように、第2距離クラスタCL2としてクラスタ化する。走査と走査の時間間隔が十分に短い場合は、一般には、対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)とは同一物である。
【0027】
図7は、人の動きに応じた照射光Lzの照射位置を示す横から見た模式図である。図7に示すように、センサ装置10における照射領域を侵入者Mnが横切る場合、時系列に照射光Lzの照射位置は変化する。具体的には、時刻tでは、対象物OBJ(t)である人物の頭頂部の点p3が照射位置となる。時刻t+1では、対象物OBJ(t+1)である人物の肩の点p4が照射位置となる。時刻t+2では、対象物OBJ(t+2)である人物の脚部の点p5が照射位置となる。時刻t+3では、照射光Lzの照射位置から人物が通り過ぎた後であり、地面Gd上の点p6が照射位置となる。なお、点p3~点p5における対象距離は、各時刻において、クラスタリングされた複数の距離のうち、最小距離を示している。この最小距離を「代表距離」と呼ぶ。ステップS10では、クラスタ化すると共に、代表距離が特定される。
【0028】
図4に示すように、第2クラスタ部134は、時系列クラスタリングを行う(ステップS15)。前回のステップS10で得られたクラスタと、今回のステップS10で得られたクラスタとが互いに同一物を示すクラスタであるか否かを判定する。図8は、時系列クラスタリングを説明するための模式図である。第2クラスタ部134は、第1クラスタ部132によりクラスタ化された上述の時刻tにおける第1距離クラスタCL1と、時刻t+1における上述の第2距離クラスタCL2とが互いに同じ対象物による反射光に基づき求められる複数の対象距離であるか否かを推定する。
【0029】
図8に示すように、第2クラスタ部134は、第1距離クラスタCL1の中心点Xを基準に半径rのクラスタリング範囲Rを設定する。第2クラスタ部134は、このクラスタリング範囲R内に、今回得られた第2距離クラスタCL2内の点p41~点p45のいずれかの点が存在していれば、第1距離クラスタCL1と第2距離クラスタCL2を互いに紐付ける(クラスタ化する)。図8の例では、対象物OBJ(t+1)の点p41~点p45のうち、点p41と、点p42と、点p43の距離値がクラスタリング範囲R内に存在している。よって、第2クラスタ部134は、対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)が互いに同じ単一物であるものとして、第1距離クラスタCL1と第2距離クラスタCL2とをクラスタ化する。
【0030】
図4に示すように、第2クラスタ部134は、対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)が、同一動体であるか否かを判定する(ステップS20)。具体的には、第2クラスタ部134は、ステップS15において、第1距離クラスタCL1と第2距離クラスタCL2とをクラスタ化することができた場合には、対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)が同一動体であると判定する。第2クラスタ部134は、対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)が、同一動体でないと判定した場合(ステップS20:No)、処理はステップS10に戻る。具体的には、第2クラスタ部134は、第1距離クラスタCL1と第2距離クラスタCL2とをクラスタ化することができなかった場合には、対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)が同一動体でないと判定して、処理はステップS10に戻る。
【0031】
対象物OBJ(t)と対象物OBJ(t+1)が、同一動体であると判定した場合(ステップS20:Yes)、第2クラスタ部134は、最小距離値Mpを特定する(ステップS25)。最小距離値Mpとは、前回地面に相当する距離が算出されてから現在までに検出された同一動体の代表距離のうちの最小値を意味する。図9は、時間とともに変化する対象物OBJの対象距離値の変化を示す説明図である。図9の横軸は、時間を示し、縦軸はセンサ装置10の位置を基準とした対象物OBJの距離値を示す。図9の点p1~点p7に示すように、照射光Lzの照射間隔は、ほぼ一定のため距離も一定の時間間隔で算出されている。
【0032】
図4に示すように、検知部140は、ステップS10で特定された代表距離が距離範囲Rth内の距離(以下、「特定距離」と呼ぶ)であるか否かを判定する(ステップS30)。図9に示すように、距離範囲Rthとは、最小距離値Mpに予め定められた所定値Thrを加えた閾値距離ThM以上であり、且つ、所定距離値Lmよりも小さな距離範囲を意味する。検知部140は、距離範囲Rth内の距離を特定距離とする。所定距離値Lmとは、センサ装置10の位置から地面Gdまでの距離であり、予め実験等により設定される。また、閾値距離ThMは、人の場合、胴体や脚部の位置となる代表距離がある程度、距離範囲Rth内に確実に含まれるように、例えば胴体より下(図9においては、胴体を示す距離値よりも上)となるように、予め実験等により設定される。
【0033】
検知部140は、ステップS10で特定された代表距離が距離範囲Rth内の距離であると判定した場合(ステップS30:Yes)、対象物OBJ(t+1)を人として検知する(ステップS35)。検知部140は、発報する(ステップS40)。具体的には、検知部140は、警備センター等へ侵入者検知の通知を行う。その後、処理は、ステップS10に戻る。
【0034】
ステップS30において、検知部140は、ステップS10で特定された代表距離が距離範囲Rth内の距離でないと判定した場合(ステップS30:No)、ステップS45へと処理が進む。
【0035】
検知部140は、地面Gdを検出するか否かを判定する(ステップS45)。本実施形態では、ステップS10で特定された代表距離が、地面Gdまでの距離として予め定められた距離に一致するか否かを判断することにより、検知部140はステップS45を判断する。検知部140は、地面Gdを検出した場合(ステップS45:Yes)、対象物OBJ(t+1)を鳥として検知して(ステップS50)、処理はステップS10に戻る。これに対して、地面Gdが検出されなかった場合(ステップS45:No)、処理はステップS10に戻る。
【0036】
図10は、照射光Lzの照射範囲を鳥Bdが横切る場合を模式的に示す説明図である。鳥Bdは、人の背丈ほどを飛んでいる。図10に示すように、センサ装置10からの照射光Lzは、図2と同様に照射される。図2の侵入者Mnの場合と比較して、鳥Bdの場合には、センサ装置10から鳥までの距離値のうち、人の胴体や脚部に相当する距離、すなわち、地面Gdに近い距離値が検出されない。
【0037】
図11は、対象物OBJが図10に示す鳥Bdである場合の対象距離値の時間変化を示す説明図である。図9と同様に、図11の横軸は、時間を示し、縦軸はセンサ装置10の位置を基準とした対象物OBJの距離値を示す。所定距離値Lmとは、センサ装置10の位置から地面Gdまでの距離として設定される。また、閾値距離ThM2とは、図9の場合と同様に、予め実験等により設定されている。さらに、最小距離値Mp2とは、代表距離のうち、最小距離を示す値である。また、距離範囲Rth2とは、所定距離値Lmと、最小距離値Mp2に対して予め定められた所定値Thrを加えた閾値距離ThM2との間の距離範囲である。
【0038】
図11に示すように、所定距離値Lmよりも小さな距離である最小距離値Mp2が算出された後、次に所定距離値Lmが算出されるまでの間に、すなわち、時刻tから時刻t+1までの間に、距離範囲Rth2内に特定距離値が算出されない。また、時刻t+1において地面が検出される。よって、検知部140は、地面Gdを検出した時刻t+1の後、対象物OBJ(t+1)を鳥として検知する。
【0039】
以上説明した第1実施形態のセンサ装置10では、検知部140は、対象距離として、地面Gdの対象距離である予め定められた所定距離値Lmよりも小さな距離が算出された後、次に所定距離値Lmが算出されるまでの間に、人の胴体または脚部の位置に対応する距離である特定距離が算出された場合に、対象物を人として検知する。このため、人の背丈ほどの高さを飛翔する鳥等では、このような特定距離が算出されないので、かかる飛翔体を人として検知することを抑制でき、飛翔体を侵入者であると誤検知することを抑制できる。
【0040】
また、発光部40は、対象物である人や鳥に対して上方から照射光Lzを出力するので、人や鳥に対して横方向から照射光Lzが出力される構成と比較して、照射光Lzに対する雨や雪などの外乱物の影響を抑制できる。また、上方から照射光Lzを出力すると、背景物が地面となり得るので、基準とする背景物を探索する必要性が生じない。さらに、背景物を地面とすることにより、位置や形状が容易に変化しないので、所定距離が変化することを抑制でき、高い精度で人を検知できる。
【0041】
検知部140は、時系列に得られた対象距離のうちの最小値である最小距離値Mpに予め定められた所定値Thrを加えた閾値距離ThM以上且つ所定距離値Lmよりも小さな距離範囲内の距離を、特定距離として判断してもよい。このため、かかる所定値Thrを適切に設定することにより、例えば、人の頭部において最小距離値Mpを検出した後に、人の胴体または脚部において特定距離を検出させることができる。
【0042】
さらに、検知部140は、対象距離が算出されると、時系列に得られた対象距離のうちから最小距離を特定し、特定された最小距離を利用して、算出された対象距離が距離範囲Rth内の距離であるか否かを判定し、算出された対象距離が距離範囲Rth内の距離であると判定した場合に、対象物OBJを人として検知してもよい。このため、検知部140は、対象距離が算出されるごとに、算出された対象距離が距離範囲Rth内の距離であるか否かを判定し、対象物OBJを人として検知できるので、侵入者が存在してから検出までの時間を短くできる。
【0043】
また、検知部140は、対象距離として、所定距離値Lmよりも小さな距離が算出された後、次に所定距離値Lmが算出されるまでの間に、特定距離が算出されなかった場合に対象物OBJを飛翔体として検知してもよい。この結果、検知部140は、人の脚等の特定距離が存在しない場合に、対象物を飛翔体として検知するので、飛翔体を精度良く検知できる。
【0044】
また、発光部40から出力するパルス光を予め定められた範囲で走査させる走査部50を、さらに備えてもよい。このため、走査しない構成に比べて、より広範囲にパルス光を照射でき、侵入者を検知する可能性を高めることができる。
【0045】
また、センサ装置10は、走査部50の1回の操作に対応して受光する複数の反射光に基づき求められる対象距離のうち、単一物による反射光に基づき求められる複数の対象距離を、推定してクラスタ化する第1クラスタ部132と、第1クラスタ部132によりクラスタ化された複数の対象距離である第1距離クラスタCL1と、クラスタ化された時刻が第1距離クラスタCL1とは異なる第2距離クラスタCL2と、が互いに同じ単一物による反射光に基づき求められる複数の対象距離であるか否かを推定し、互いに同じ単一物による反射光に基づき求められる複数の対象距離であると推定する場合に、第1距離クラスタCL1と第2距離クラスタCL2とをクラスタ化する第2クラスタ部134と、をさらに備えてもよい。このため、クラスタ化された単一物からの複数の反射光に基づき、複数の対象物OBJが存在するとの誤検知、および、異なる対象物OBJを同一の対象物OBJとの誤検知を抑制できる。
【0046】
第1実施形態における代表距離は、特許請求の範囲における対象距離に相当する。
【0047】
B.第2実施形態:
第2実施形態のセンサ装置10の装置構成は、第1実施形態のセンサ装置10の装置構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第2実施形態のセンサ装置10は、侵入者検知処理の詳細手順において第1実施形態のセンサ装置10と異なる。第1実施形態では、代表距離がある特定の距離範囲Rth内の値である場合に、対象物OBJを人として検知していたが、第2実施形態では、算出される対象距離の時間変化量を利用して対象物OBJを人として検知する。以下、図12を用いて詳しく説明する。
【0048】
図12は、第2実施形態の侵入者検知処理の手順を示すフローチャートである。第2実施形態の侵入者検知処理は、逐次的に侵入者検知処理が実行されることに代えて所定の時間間隔ごとに侵入者検知処理が実行される点と、ステップS30に代えてステップS32を実行する点と、ステップS45を省略する点において、図4に示す第1実施形態の侵入者検知処理と異なる。第2実施形態の侵入者検知処理におけるその他の手順は、第1実施形態の侵入者検知処理の手順と同じであるので、同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0049】
第2実施形態の侵入者検知処理は、対象物OBJが照射光Lzの照射範囲を横切るのを終了する時間間隔、すなわち、地面が検出される前提の時間間隔で実行される。例えば、図13図14に示す時刻t~時刻t+3までの全ての測定距離がセンサ装置10の図示しないメモリに記憶された状態で、侵入者検知処理が実行される。
【0050】
ステップS25の後、検知部140は、代表距離の時間変化量が閾値変化量より小さいか否かを判定する(ステップS32)。閾値変化量は、人の場合、最小距離値Mpとなる頭頂部から地面Gdが検出されるまでに、胴体や脚部を示す代表距離となる検出点を結ぶ時間変化量よりある程度大きくなるように、予め実験等により設定されている。
【0051】
図13は、対象物OBJが人の場合における対象距離値の時間変化量を示す説明図である。図9の場合と同様に、横軸は、時間を示し、縦軸はセンサ装置10の位置を基準とした対象物OBJの距離値を示す。線分L1の傾きは、時刻tにおける点p3の距離値である最小距離値Mpと、時刻t+1における点p4の距離値である代表距離との間の時間変化量を示す。同様にして、線分L2の傾きは、時刻t+1における点p4の距離値である代表距離と、時刻t+2における点p5の距離値である代表距離との間の時間変化量を示す。線分L3の傾きは、時刻t+2における点p5の距離値である代表距離と、時刻t+3における点p6の距離値である代表距離との間の時間変化量を示す。図13に示すように、例えば、最小距離値Mpとなる頭頂部の検出以降であって、地面が検出された後に、線分L1~線分L3の3つの傾きが求められる。
【0052】
図12に示すように、代表距離の時間変化量が閾値変化量より小さいと判定した場合(ステップS32:Yes)、検知部140は、対象物OBJを人として検知する(ステップS35)。具体的には、検知部140は、線分L1~線分L3の示す時間変化量である傾きのいずれかが、閾値変化量よりも小さいと判定した場合、対象物OBJを人として検知する。対象物が人の場合、最小距離値Mpから地面Gdまでの間に、代表距離を示す検出点が存在するので、代表距離の時間変化量を示す傾きは緩やかとなる。このため、代表距離の時間変化量が予め定められた閾値変化量より小さい場合、検知部140は、対象物を人として検知できる。他方、対象物が鳥の場合、最小距離値Mp2から地面Gdまでの間に、代表距離を示す検出点が存在しないので、代表距離の時間変化量が大きくなる。上述したように、第2実施形態の侵入者検知処理は、地面が検出される前提の時間間隔で実行されるので、検知部140は地面を検出するか否かの判定は行わない。
【0053】
検知部140は、対象距離の時間変化量が閾値変化量以上であると判定した場合(ステップS32:No)、検知部140は、対象物OBJを鳥として検知する(ステップS50)。
【0054】
図14は、対象物OBJが鳥の場合における対象距離値の時間変化量を示す説明図である。図11の場合と同様に、横軸は時間を示し、縦軸はセンサ装置10の位置を基準とした対象物OBJである鳥の距離値を示す。線分L10の傾きは、時刻tにおける点p23の距離値である最小距離値Mp2と、時刻t+1における点p24の距離値である代表距離との間の時間変化量を示す。最小距離値Mp2となる代表距離を示す点が複数存在する場合には、時間の遅い方の点、例えば、図14においては、点p22と点p23のうち、点p23を用いる。対象物OBJが鳥の場合、隣り合う時刻で測定される時間変化量である傾きが一つ、すなわちL10のみ求められる。対象物OBJが鳥の場合は、人の胴体や脚部に相当する部分がないので、傾きが急となる。検知部140は、L10の時間変化量が閾値変化量以上であると判定して対象物OBJを鳥として検知する。
【0055】
以上説明した第2実施形態のセンサ装置10によれば、検知部140は、対象距離のうちの最小値である最小距離値Mpが算出されてから、地面の対象距離である予め定められた所定距離値Lmが対象距離として算出されるまでの期間における、検出される代表距離ごとの時間変化量が、予め定められた閾値変化量よりも小さい場合に、対象物を人として検知するので、一般には、対象距離の時間変化量が閾値変化量以上となる鳥を人として検知することを抑制できる。このため、簡易に、鳥を侵入者であると誤検知することを抑制できる。
【0056】
C.他の実施形態:
(C1)各実施形態のセンサ装置10では、鳥が検知される場合を例示したが、本開示はこれに限定されない。ドローンや風で飛ばされるゴミ袋などの任意の種類の飛翔体であっても精度良く検知できる。
【0057】
(C2)第1実施形態では、任意の時点ごとに、例えば、時刻tで、侵入者検知処理のステップを全て実行し、時刻t+1で、侵入者検知処理のステップを全て実行する、というように、逐次的に実施していたが、本開示はこれに限られない。最初に地面が検出された後、次に地面が検出されるまでの間、距離値の測定を全て行った後に、第2実施形態と同様に、侵入者検知処理のステップを実行してもよい。
【0058】
(C3)各実施形態のセンサ装置10において、照射光Lzの照射速度(すなわち、パルス光の照射の時間間隔)は、ほぼ一定であったが、本開示はこれに限られない。照射光Lzの照射速度は変化してもよい。例えば、所定距離が検出された時は、照射光Lzの照射速度を遅くしてもよい。これにより、省エネ効果が得られる。
【0059】
(C4)第2実施形態におけるセンサ装置10において、検知部140は、時系列に算出された対象距離のうちの最小値である最小距離値Mpが算出されてから、次に地面Gdの対象距離である予め定められた所定距離値Lmが対象距離として算出されるまでの期間における対象距離の時間変化量に応じて、対象物OBJを人であるか鳥であるかを検知していたが、本開示はこれに限られない。検知部140は、時系列に算出された地面Gdの対象距離である予め定められた所定距離値Lmが算出されてから、次に対象距離のうちの最小値である最小距離値Mpが算出されるまでの期間の時間変化量と、時系列に算出された対象距離のうちの最小値である最小距離値Mpが算出されてから、次に地面Gdの対象距離である予め定められた所定距離値Lmが対象距離として算出されるまでの期間の時間変化量と、を比較して、時間変化量に差がある場合には、人として検知し、時間変化量に差がない場合には、鳥として検知してもよい。
【0060】
(C5)各実施形態のセンサ装置10において、所定距離値Lmは、センサ装置10から地面Gdまでの距離であったが、地面Gdまでの距離に限らず任意の種類の背景物までの距離であってもよい。すなわち、背景物とは、侵入者がいない状態で照射されるものであれば任意の種類のものでよく、例えば、照射光Lzの向きによっては、建物の壁であってもよいし、木であってもよい。
【0061】
(C6)各実施形態のセンサ装置10において、代表距離は、各時刻において、クラスタリングされた複数の距離のうち、最小距離を示していたが、本開示はこれに限られない。代表距離は、各時刻において、クラスタリングされた複数の距離のうち、最大距離を示してもよい。また、代表距離は、各時刻において、クラスタリングされた複数の距離のうち、平均値の距離を示してもよい。
【0062】
(C7)各実施形態のセンサ装置10において、発光部40は、対象物に対して上方から照射光Lzを照射していたが、本開示はこれに限られない。発光部40は、対象物に対して横方向から照射光Lzを照射してもよい。
【0063】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…センサ装置、40…発光部、50…走査部、55…ミラー、60…受光部、110…制御部、120…距離算出部、130…クラスタ部、132…第1クラスタ部、134…第2クラスタ部、140…検知部、Bd…鳥、CL1…第1距離クラスタ、CL2…第2距離クラスタ、Gd…地面、L1…線分、L10…線分、L2…線分、L3…線分、Lm…所定距離値、Lz…照射光、Mn…侵入者、Mp…最小距離値、Mp2…最小距離値、OBJ…対象物、R…クラスタリング範囲、Rth…距離範囲、Rth2…距離範囲、TOF…飛行時間、ThM…閾値距離、ThM2…閾値距離、Thr…所定値、X…中心点、p1…点、p22…点、p23…点、p24…点、p3…点、p31…点、p35…点、p4…点、p41…点、p42…点、p43…点、p45…点、p5…点、p6…点、p7…点、r…半径、t…時刻
図1
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図14