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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】シュート、振動搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/24 20060101AFI20240619BHJP
   B65G 27/04 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B65G27/24
B65G27/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020101738
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195202
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】前田 峰尚
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲行
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝信
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-133458(JP,A)
【文献】特開2013-107742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/24
B65G 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面に沿って搬送対象物であるワークを搬送方向下流端に向かって移動させながら所定の次工程設備のワーク移載面に搬送可能なシュートであって、
上向き面に前記搬送面を有し且つ下方空間が開放されている搬送路と、
前記搬送路に隣接する位置に配置され且つ弾性変形によって生じた振動を前記搬送面に伝達する搬送部と、
前記搬送部を弾性変形させる駆動部とを備え、
前記駆動部によって前記搬送部を弾性変形させた状態である振動モードにおいて、前記搬送方向に沿った前記搬送面全体が当該搬送面上の前記搬送方向に対して垂直な方向の振幅が最大となる前記振動モードの腹に相当する位置またはその近傍位置となるように構成していることを特徴とするシュート。
【請求項2】
搬送面に沿って搬送対象物であるワークを搬送方向下流端に向かって移動させながら所定の次工程設備のワーク移載面に搬送可能なシュートであって、
上向き面に前記搬送面を有し且つ下方空間が開放されている搬送路と、
前記搬送路に隣接する位置に配置され且つ弾性変形によって生じた振動を前記搬送面に伝達する搬送部と、
前記搬送部を弾性変形させる駆動部とを備え、
前記搬送部は、起立姿勢で設けられた弾性変形可能なプレート体であり、
前記駆動部によって前記搬送部を弾性変形させた状態である振動モードにおいて前記搬送面全体が前記振動モードの腹に相当する位置またはその近傍位置となるように構成し、
前記振動モードは、前記プレート体の高さ方向中央部に固定した前記駆動部を駆動させることで前記プレートの高さ方向の伸縮運動によって生じる振動であり、
前記搬送路は、前記プレート体の端部において当該プレート体の厚み方向に突出する姿勢で設けられたものであることを特徴とするシュート。
【請求項3】
搬送面に沿って搬送対象物であるワークを搬送方向下流端に向かって移動させながら所定の次工程設備のワーク移載面に搬送可能なシュートであって、
上向き面に前記搬送面を有し且つ下方空間が開放されている搬送路と、
前記搬送路に隣接する位置に配置され且つ弾性変形によって生じた振動を前記搬送面に伝達する搬送部と、
前記搬送部を弾性変形させる駆動部とを備え、
前記搬送部は、横臥姿勢で設けられた弾性変形可能なプレート体であり、
前記駆動部によって前記搬送部を弾性変形させた状態である振動モードにおいて前記搬送面全体が前記振動モードの腹に相当する位置またはその近傍位置となるように構成し、
前記振動モードは、前記プレート体の幅方向中央部に固定した前記駆動部を駆動させることで生じる前記プレート体の前記搬送方向に垂直な面内での曲げ振動であり、
前記搬送路は、前記プレート体の一方の側端部または当該側端部近傍に隣接する位置に設けられたものであることを特徴とするシュート。
【請求項4】
前記搬送面を搬送方向下流端に向かって漸次下り勾配となる傾斜面に設定している請求項1乃至3の何れかに記載のシュート。
【請求項5】
搬送対象物であるワークを振動によってメイン搬送路の終端に向かって移動させながら搬送方向下流側に搬送可能な振動搬送装置であって、
前記メイン搬送路の終端に隣接する位置に請求項1乃至4の何れかに記載のシュートを配置していることを特徴とする振動搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動によってワークを搬送する装置(パーツフィーダ)に適用可能なシュート、及び振動搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子チップ部品等の小型のワークを振動によって搬送しながら整列させて次工程に供給する振動搬送装置(パーツフィーダ)として、直線状に延伸する搬送路に沿ってワークを搬送するリニアフィーダと、リニアフィーダの上流側に接続されるボウルフィーダとを備えた装置が知られている。このようなパーツフィーダには、ワークの微細化に対応するために、弾性振動により進行波を利用してワークを搬送するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、下記特許文献2には、リニアフィーダと回転自在の円形搬送テーブルとの間に、ワークを無振動状態で移送する無振動部を配置したワーク外観検査装置が開示されている。当該特許文献には、搬送テーブルに向かって僅かな傾斜を有して下降するリニアフィーダの下流端に、リニアフィーダと同等の傾斜を有し且つ振動しない無振動部が接続された構成が開示されている。当該特許文献には、このような構成を採用した理由として、リニアフィーダが振動しているため、ワークをリニアフィーダから搬送テーブルに移載する際にリニアフィーダを搬送テーブルの直上位置まで接近させると、リニアフィーダが搬送テーブルに当接するおそれがあり、これを防止する点が挙げられている。このようなリニアフィーダの下流端と搬送テーブルとの間に振動しない無振動部を設置した構成であれば、無振動部上のワークは後続のワークに押されて前進し、搬送テーブルに向かって少しずつ下降し、無振動部の下流端に到達すると、直後に位置する後続のワークに押されて、搬送テーブル上に移載される。
【0004】
下記特許文献1にも、ワーク搬送路を備えたシュート(排出フィーダ)をリニアフィーダの下流端に連続する位置に配置し、ワーク搬送方向下流側がワーク搬送方向上流側よりも低くなるように傾斜する形状に設定したワーク搬送路の搬送面上にワークを滑らせて次工程へ供給する構成が開示されている。
【0005】
しかしながら、無振動の搬送面上においてワークを滑らせる構成であれば、ワークが搬送面との摩擦力によってワーク搬送路上で停滞したり、後続のワークによる押圧力を受けることができないワークがワーク搬送路の下流端で停止して、ワーク詰まりやワークの乱れが起こり得る。
【0006】
そこで、本出願人は、シュートの搬送面上のワークを無振動で滑らせる構成と比較してワーク搬送処理効率を向上させることが可能な構成として、シュートの背面に圧電素子を貼り付け、圧電素子を駆動させることで搬送面を含むシュート全体に波(腹・節)を生成し、シュートを弾性変形させて曲げ振動モードで加振させる構成を案出している(例えば特許文献1参照)。このような構成であれば、シュートの搬送面上のワークを無振動で滑らせる構成と比較して、シュートを曲げ振動モードで加振させることによって、シュートの搬送面とワークとの摩擦を低減することができ、その結果、ワーク搬送処理効率を構成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-100139号公報
【文献】特開2011-133458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、シュートの背面に圧電素子を貼り付けて搬送面を含むシュート全体に波(腹・節)を生成して振動させる構成であれば、シュートのうち圧電素子を固定した部分(加振部)は振動の腹に相当し、加振部から離れた部分は振動の節に相当するため、シュートの部位単位で振幅差が生じ、全体としてばらつきのある振動になり、ワークの定量供給ができないか困難になる場合があり、この点において改善の余地がある。
【0009】
また、シュートの背面に圧電素子を貼り付ける態様を採用すると、圧電素子自体の厚みや圧電素子の設置に伴って確保しなければならない配線スペースの分だけシュートの背面を次工程設備のワーク移載面から離間させる必要があり、その離間距離が大きくなることで、搬送面から次工程設備のワーク移載面への乗継時(ワークの落下中や落下時)にワークの姿勢が崩れてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、ワークとシュートの搬送面との摩擦を低減しつつ搬送面の部位単位で振幅差が生じる事態を防止・抑制するとともに、搬送面と次工程設備のワーク移載面との落差を低減し、次工程設備のワーク移載面への乗継時にワークの姿勢変換が発生しないか発生し難い状況でワークの定量供給を実現可能なシュート、及びシュートを備えた振動搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、搬送面に沿って搬送対象物であるワークを搬送方向下流端(終端)に向かって移動させながら所定の次工程設備のワーク移載面に搬送可能なシュートに関する。
【0012】
そして、本発明に係るシュートは、上向き面に搬送面を有し且つ下方空間が開放されている搬送路と、搬送路に隣接する位置に配置され且つ弾性変形によって生じた振動を搬送面に伝達する搬送部と、搬送部を弾性変形させる駆動部とを備え、駆動部によって搬送部を弾性変形させた状態である振動モードにおいて、前記搬送方向に沿った搬送面全体が搬送面上の搬送方向に対して垂直な方向の振幅が最大となる振動モードの腹に相当する位置または腹の近傍位置となるように構成していることを特徴としている。ここで、振動の腹とは、振幅が最大になり変位が最も揺れ動く点である。また、本発明におけるワークとしては、例えば電子部品などの微小部品を挙げることができるが、電子部品以外の物品であってもよい。
【0013】
このような本発明に係るシュートであれば、駆動部によって搬送部を弾性変形させた振動モードにおいて搬送面全体が振動モードの腹に相当する位置(振動の腹部分)またはその近傍部分に位置する構成であるため、搬送面上に振動モードの節(振幅が最小となる点)のない振動状態を得ることができ、搬送面全域に亘って同程度の振幅で振動し、搬送面全体で一様に摩擦低減効果が得られ、無振動のシュートであれば生じ得る不具合、すなわち、ワークが搬送面との摩擦力によってワーク搬送路上で停滞するという事態を回避することができ、ワーク詰まりやワークの乱れの発生を防止・抑制し、ワーク搬送処理をスムーズに実行することができる。
【0014】
特に、本発明に係るシュートであれば、搬送面を上向き面に有する搬送路の下方空間が開放されているため、ワーク搬送路の下向き面と次工程設備のワーク移載面との間の隙間は搬送路の振動を考慮した分だけ確保すればよく、搬送路の下向き面に駆動部を設けた態様と比較して、搬送路の下向き面を次工程設備のワーク移載面に接近させることができ、搬送路から次工程設備のワーク移載面への乗り継ぎ時におけるワークの姿勢が安定するとともに、次工程設備への接続や次工程設備に対する位置調整を行う処理も駆動部の設置に伴う配線スペース等を考慮する必要がなく、容易且つスムーズに行うことができる。
【0015】
本発明において、構造の複雑化を招来することのない簡素な構成でありながら、搬送路の下方空間にフリースペースを確保する好適な一例として、起立姿勢で設けられた弾性変形可能なプレート体で搬送部を構成し、振動モードが、搬送部の高さ方向中央部に固定した駆動部を駆動させることで搬送部の高さ方向の伸縮運動によって生じる振動であり、搬送部の端部から搬送部の厚み方向に突出する姿勢で搬送面を設けた構成を挙げることができる。このような構成であれば、搬送部から搬送面に伝達される振動が搬送面上におけるワークの搬送方向に対して垂直な方向のみの振動(上下方向のみの振動)であり、搬送面における水平方向の振幅がほぼゼロであるため、振動波自体はワークの推進力に直接的に寄与せず、搬送面上を搬送中のワークの挙動に脈動が生じず、ワークの搬送速度を一定速度に保つことができ、安定したワーク搬送処理を実現できる。
【0016】
本発明に係るシュートの他の好適な一例として、横臥姿勢で設けられた弾性変形可能なプレート体で搬送部を構成し、振動モードが、搬送部の幅方向中央部に固定した駆動部を駆動させることで生じる搬送部の搬送方向に対して高さ方向に垂直な面内での曲げ振動であり、搬送部の一方の側端部または当該側端部近傍に隣接する位置に搬送路を設けた構成を挙げることができる。このような構成であれば、搬送部から搬送面に曲げ振動が伝達されるものの、上述の縦振動の場合と同様に、搬送面における水平方向の振幅がほぼゼロであるため、振動波自体はワークの推進力に直接的に寄与せず、搬送面上を搬送中のワークの挙動に脈動が生じず、ワークの搬送速度を一定速度に保つことができ、安定したワーク搬送処理を実現できる。
【0017】
加えて、本発明に係るシュートにおいて、搬送面を搬送方向下流端に向かって漸次下り勾配となる傾斜面に設定した構成を採用すると、搬送面上のワークが滑り落ちるように搬送されることになり、後方からのワークに押される力(押圧力)がない最後尾のワークであっても滑り落ちて搬送される構成を実現でき、次工程設備のワーク移載面にワークを安定して供給することができる。
【0018】
また、本発明に係る振動搬送装置は、搬送対象物であるワークを振動によってメイン搬送路の終端に向かって移動させながら搬送方向下流側に搬送可能なものであって、メイン搬送路の終端に隣接する位置に上述の構成を有するシュートを配置したことを特徴としている。このような本発明に係る振動搬送装置によれば、上述したシュートが奏する作用効果を得て、ワークとシュートの搬送面の間の摩擦低減効果を向上させることができ、シュートの搬送面の終端から次工程設備のワーク移載面に向かってワークを一定供給することが可能になるとともに、搬送路の下方空間が開放されていない態様と比較して搬送路を次工程設備のワーク移載面に近付けて配置してワーク移載面とのギャップを小さくすることができ、シュートの搬送面からワーク移載面への乗継時にワークが姿勢変換する事態を防止・抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、駆動部によって搬送部を弾性変形させた振動モードにおいて搬送面全体が振動の腹の位置またはその近傍位置となるように構成するという斬新な技術的思想に基づき、搬送面全体に亘って節のない同程度の振幅で一様な振動状態を得ることができ、部分的なワークの停滞やワーク詰まりが発生せず、スムーズなワーク搬送処理及びワークの定量供給が可能になるとともに、搬送路の下方空間が開放されているため、搬送路の下方空間が開放されていない態様と比較して搬送路を次工程設備のワーク移載面に近付けて配置する際の設計上の制約が減少し、搬送面の下流端(終端)とワーク移載面とのギャップを小さくすることができ、搬送面からワーク移載面への乗継時にワークが姿勢変換する事態を防止・抑制することが可能な振動搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係るシュートを備えた振動搬送装置の全体図。
図2図1の要部各第図。
図3】同実施形態に係るシュートの全体外観図。
図4】同実施形態に係るシュートを示す図。
図5】同実施形態に係るシュートを示す図。
図6】同実施形態における縦振動モードを解析アニメーションにより変位拡大して示す図。
図7】本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係るシュートを備えた振動搬送装置の全体図。
図8図7の要部各第図。
図9】同実施形態に係るシュートの全体外観図。
図10】同実施形態に係るシュートを示す図。
図11】同実施形態における曲げ振動モードを解析アニメーションにより変位拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
〈第1実施形態〉
本実施形態に係るシュート1は、図1及び図2に示すように、搬送対象物であるワークWを振動によってメイン搬送路(リニアメイン搬送路L1)の終端L11に向かって移動させながら搬送方向D1下流側に搬送可能な振動搬送装置Xに適用され、メイン搬送路の終端L11に接続可能なものである。図1では、メイン搬送路の一例としてリニアフィーダLを示すとともに、リニアメイン搬送路L1の終端L11に隣接する位置に本実施形態に係るシュート1を配置した態様を示している。
【0023】
リニアフィーダLは、図2に示すように、直線状の搬送路であるリニアメイン搬送路L1を有するリニア搬送部L2に振動を与えることで、リニアメイン搬送路L1に沿ってワークWを搬送方向下流側へ搬送可能なものである。本実施形態におけるリニアフィーダLにおいて、リニア搬送部L2を振動させてリニアメイン搬送路L1上のワークWを搬送方向下流側へ搬送する具体的な構成は特に限定されず、例えば、加振源から与えられる加振力によって、リニア搬送部L2が接続された可動部と所定の固定部とを相互に連結する板バネ(駆動用バネ)を直接または間接的に起振させることで、可動部及び固定部が互いに逆方向に振動し、これによって可動部に接続されているリニア搬送部L2が長手方向に振動し、ワークWを搬送方向に沿って下流側へ搬送する構成を挙げることができる。また、他の例として、リニア搬送部L2に発生させた進行波によりワークWをリニアメイン搬送路L1に沿って搬送するリニアフィーダLであってもよい。
【0024】
リニアメイン搬送路L1の始端(図示省略)及び終端L11は、リニア搬送部L2の外縁に到達し、適宜の断面形状に設定されている。リニアメイン搬送路L1は、ワークWを搬送する搬送面(リニア搬送面)として機能する。なお、リニアメイン搬送面の断面形状は、上向きコ字状、U字状、V字状等、適宜の形状を選択できる。リニアフィーダLは、リニアメイン搬送路L1の始端から搬送されたワークWを搬送中に一列に整列させてリニアメイン搬送路L1の終端L11から次工程装置に供給することができる。
【0025】
なお、リニア搬送部L2の上流側に図示しないボウルフィーダを備えた振動搬送装置Xに構成することもできる。ボウルフィーダは、内周面に螺旋状の搬送路(螺旋搬送路)を有するボウル状の搬送部(ボウル搬送部)に振動を与えることで、螺旋搬送路に沿ってワークWを搬送方向下流側へ搬送可能なものである。ボウルフィーダにおいて、ボウル搬送部を振動させて螺旋搬送路上のワークWを搬送方向下流側へ搬送する具体的な構成は特に限定されず、上述のリニアフィーダLに準じた構成(板バネを用いた構成、進行波を発生させる構成等)を適宜採用することができる。ボウル搬送部に振動を与えると、ワークWは螺旋搬送路を登坂し、そのまま螺旋搬送路の終端(出口部分)からリニアフィーダLのリニアメイン搬送路L1の始端に搬送される。
【0026】
リニアメイン搬送路L1の始端(上流端)に到達したワークWは、リニアメイン搬送路L1の終端L11(下流端)に向かって搬送され、そのままシュート1に乗り継いで、次工程設備Yのワーク移載面Y1に供給される。図1及び図2では、次工程設備Yが回転テーブルTである態様を示している。回転テーブルTの上向き面のうち外周縁近傍に沿って規定される所定の周回エリアがワーク移載面Y1である。なお、回転テーブルTは、例えばワークの外観を検査する外観検査装置の一部を構成するものであり、このような外観検査装置では、円板状の回転テーブルT上にワークWが一定の姿勢で等ピッチで並べられていることで検査効率が向上する。
【0027】
シュート1は、図3乃至図5に示すように、上向き面に搬送面(搬送面21)を有し且つ下方空間が開放されている搬送路(ワーク搬送路2)と、ワーク搬送路2に隣接する位置に配置され且つ弾性変形によって生じた振動を搬送面21に伝達する搬送部3と、搬送部3を加振して弾性変形させる駆動部4とを備えたものである。ここで、図3はシュート1の全体外観斜視図であり、図4(a)はシュート1の平面図であり、同図(b),(c)及び図5(a),(b)はそれぞれ図4(a)のB方向矢視図、C方向矢視図、F矢視図、G方向矢視図であり、図5(c)は同図(a)のP領域拡大図である。
【0028】
本実施形態に係るシュート1は、起立姿勢で設けた弾性変形可能なプレート体で搬送部3を構成している。本実施形態のシュート1は、搬送部3の高さ方向H中央部からシュート1におけるワークWの搬送方向D1上流側及び下流側にそれぞれ突出する固定部5を備えている。固定部5は搬送部3と一体に形成されている。なお、シュート1におけるワークWの搬送方向D1は、「シュート1の前後方向Z」として特定することができる。したがって、本実施形態のシュート1は、搬送部3の前面31及び背面32からそれぞれ前方及び後方に突出する固定部5を備えたものであると捉えることができる。
【0029】
本実施形態のシュート1は、搬送部3の2つの側面33,34(搬送部3におけるワークWの搬送方向D1に対して平面視において直交する2つの面)のうち一方の側面33に駆動部4を設けている。本実施形態では、駆動部4として圧電素子41を適用し、1つの圧電素子41を搬送部3の一方の側面33における高さ方向H中央部に貼付処理等の適宜の処理または固定手段によって固定している。
【0030】
ワーク搬送路2は、搬送部3の端部(図示例では上端部)において当該搬送部3の厚み方向(搬送部3におけるワークWの搬送方向D1に対して平面視において直交する方向、幅方向E)に突出する姿勢で設けられたものである。本実施形態では、搬送部3の上端部において、駆動部4を固定した側面33から離間する方向に突出する姿勢でワーク搬送路2を設けている。ワーク搬送路2の上向き面には、溝状の搬送面21を形成している。搬送面21の溝形状は特に限定されず、図5等では一例として断面上向きコ字状の搬送面21を示している。ワーク搬送路2の始端22及び終端23は、それぞれワーク搬送路2のうちワーク搬送方向D1上流側の外縁及びワーク搬送方向D1下流側の外縁に到達している。ワーク搬送路2の前後方向Zに沿った寸法は、搬送部3のうち上端部の前後方向Zに沿った寸法と同じである。すなわち、本実施形態のシュート1は、搬送部3の上端部から側方に張り出したワーク搬送路2を備えたものである。本実施形態では、搬送部3及びワーク搬送路2を一体に形成している。
【0031】
本実施形態に係るシュート1は、ワーク搬送路2の下向き面に他の部品を設けていないため、ワーク搬送路2の下方空間がフリーなスペースになっている(図3図4(b)、図5(a),(c)参照)。本実施形態では、ワーク搬送路2の下向き面のうちワーク搬送方向D1下流側部分を、ワーク搬送路2の終端23に向かって漸次高さ寸法が小さくなるテーパ面24に設定している(図4(b)参照)。
【0032】
以上の構成を有するシュート1をリニアフィーダLの終端L11に隣接する位置に配置した振動搬送装置Xは、図1及び図2に示すように、次工程設備Yである回転テーブルTのワーク移載面Y1にワーク搬送路2のうち下流端側の下向き面を近接させた状態で、シュート1とは別体の支持部材(図示省略)に固定部5を適宜の手段で固定した状態で設置することができる。この設置状態では、ワーク搬送路2のうちテーパ面24に設定した下流端側の下向き面を回転テーブルTのワーク移載面Y1に近接させているため、搬送面21は、ワーク搬送方向D1の上流から下流に向かって漸次斜め下方に傾斜する下り勾配になる。下り勾配の傾斜角度はワークWが重力で滑り落ちる程度であり、且つワークWの姿勢を崩さない角度であることが肝要であり、本実施形態では、搬送面21を5°乃至15°程度の下り勾配に設定している。また、固定部5は、シュート1の支持部として機能する。
【0033】
そして、本実施形態に係る振動搬送装置Xは、リニアフィーダLと次工程設備Yである回転テーブルTの間に設けたシュート1によって、リニアフィーダLのリニアメイン搬送路L1から搬送面21に乗り継いだワークWを一定区間(搬送面21によるワークWの搬送区間)搬送した後、次工程設備Yである回転テーブルTにワークWを供給することができる。
【0034】
具体的には、搬送部3の高さ方向H中央部に設けた駆動部4(圧電素子41)に交流電圧を印加することで搬送部3を加振すると、搬送部3全体が高さ方向H(鉛直方向)に伸縮運動する弾性変形によって振動(縦振動)が生じる。ここで、図6から把握できるように、本実施形態に係るシュート1は、搬送部3全体が振動した振動状態(縦振動モード)においてその振動波の節の位置に圧電素子41を設け、搬送部3から縦振動が伝達する搬送面21を振動波の腹または腹付近に設定した構成である。特に、本実施形態では、搬送面21全体が縦振動状態(縦振動モード)の腹に相当する位置(振動の腹の位置)またはその近傍位置となるように設定している。本実施形態のシュート1は、縦振動モードにおいて搬送面21を周波数20kHz以上の超音波領域で振動させる(定在波)ことができる。なお、圧電素子41による加振時の周波数は搬送部3の縦振動モードの固有周波数とする。また、図6から、本実施形態のシュート1は、固定部5も振動波の節または節付近の位置に設けた構成であることが把握できる。なお、図6は、縦振動モードを解析アニメーションにより変位させて拡大表示した(誇張して模式的に示した)ものである。
【0035】
以上のように、本実施形態に係るシュート1は、駆動部4(圧電素子41)によって搬送部3を弾性変形させた状態である振動モード(縦振動モード)において搬送面21全体が振動モードの腹に相当する位置(振動の腹部分)またはその近傍部分に位置する構成であるため、搬送面21上に節のない振動状態を得ることができ、搬送面21全域に亘って同程度の振幅で振動し、搬送面21全体で一様に摩擦低減効果が得られ、ワーク搬送処理をスムーズに実行することができる。特に、本実施形態に係るシュート1によれば、搬送部3を高周波で振動(超音波振動)させることで、搬送面21上におけるワークWの跳躍を抑制しつつ、搬送面21とワークWとの間の摩擦を低減することができる。また、搬送部3を超音波振動させる構成を採用することで、振動音が聞こえず、作業環境に悪影響を及ぼさないというメリットも得ることができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係るシュート1によれば、搬送面21を上向き面に有するワーク搬送路2の下方空間が開放されているため、ワーク搬送路2の下向き面と次工程設備Yのワーク移載面Y1との間の隙間はワーク搬送路2の振動を考慮した分だけ確保すればよく、ワーク搬送路2の下向き面に圧電素子等の駆動部を設けた態様と比較して、ワーク搬送路2の下向き面を次工程設備Yのワーク移載面Y1に接近させることができ、ワーク搬送路2から次工程設備Yのワーク移載面Y1への乗継時におけるワークWの姿勢が安定するとともに、次工程設備Yへの接続や次工程設備Yに対する位置調整を行う処理も圧電素子の配線スペース等を考慮する必要がなく、容易且つスムーズに行うことができる。特に、シュート1の上流に配置されるメイン搬送路(本実施形態であればリニアメイン搬送路L1)の終端L11に到達したワークWが所望の適正な姿勢にあるワークWのみであり、その適正姿勢を維持したままワーク搬送路2を経て次工程設備Yのワーク移載面Y1に供給することが要求される場合には、ワーク搬送路2の下向き面をワーク移載面Y1に対してギャップが殆どない位置まで接近させて、搬送面21の終端L11とワーク移載面Y1との高低差(段差)をゼロに近い状態に設定可能な本実施形態のシュート1は極めて実用性の高いものである。特に、本実施形態では、超音波領域の高周波で振動させるため、垂直方向および水平方向の振幅が小さくなることで、搬送面21の終端L11とワーク移載面Y1との高低差(段差)をゼロに近い状態に設定可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係るシュート1によれば、起立姿勢で設けられた弾性変形可能なプレート体で搬送部3を構成し、搬送部3の上端部から搬送部3の厚み方向(幅方向E)に突出する姿勢で搬送面21を設け、振動モードが、搬送部3の高さ方向H中央部に固定した駆動部4を駆動させることで搬送部3の高さ方向Hの伸縮運動によって生じる振動であるため、搬送部3から搬送面21に伝達される振動が搬送面21上におけるワークWの搬送方向D1に対して垂直な方向のみの振動(上下方向のみの振動)であり、搬送面21における水平方向の振幅がほぼゼロであるため、振動波自体はワークWの推進力に直接的に寄与せず、搬送面21上を搬送中のワークWの挙動に脈動が生じず、ワークWの搬送速度を一定速度に保つことができ、安定したワーク搬送処理を実現できる。また、本実施形態に係るシュート1は、このような極めて簡素な構成でありながら、ワーク搬送路2の下方空間にフリースペースを確保することができる。
【0038】
加えて、本実施形態に係るシュート1によれば、搬送面21をワーク搬送方向D1下流端に向かって漸次下り勾配となる傾斜面に設定しているため、リニアフィーダLからワーク搬送路2の搬送面21に乗り移ったワークWが滑り落ちるように搬送されることになり、後方からのワークWに押される力(押圧力)がない最後尾のワークWであっても滑り落ちて搬送されることになる。また、搬送面21におけるワークWの搬送速度をリニアフィーダLのリニアメイン搬送路L1におけるワークWの搬送速度よりも遅くなるように設定した場合には、搬送面21上でワークWを搬送方向D1に隙間の無い状態または略無い状態で搬送することができ、搬送方向D1におけるワークW同士の距離が大きくなる(ワークWの離間)事象の発生を防止して、時間単位あたりのワーク搬送量増大化が可能であり、より一層安定したワークWの一定供給処理を実現できる。
【0039】
また、このようなシュート1を備えた本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、上述したシュート1が奏する作用効果を奏し、ワークWと搬送面21の間の摩擦低減効果を向上させることができ、搬送面21の終端L11から次工程設備Yのワーク移載面Y1に向かってワークWを一定供給することが可能になるとともに、搬送面21の終端L11と次工程設備Yのワーク移載面Y1との段差をゼロに近付けることができ、搬送面21の終端L11から次工程設備Yのワーク移載面Y1への乗継時にワークWの姿勢変更する不具合を防止・抑制することができる。
【0040】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係るシュート1は、振動搬送装置Xを構成するものであり、図7及び図8では、第1実施形態と同様に、リニアメイン搬送路L1の終端L11に隣接する位置に配置可能なものである。本実施形態のリニアフィーダLは、第1実施形態におけるリニアフィーダLと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
第2実施形態に係るシュート1は、図9乃至図10に示すように、上向き面に搬送面(搬送面21)を有し且つ下方空間が開放されている搬送路(ワーク搬送路2)と、ワーク搬送路2に隣接する位置に配置され且つ弾性変形によって生じた振動を搬送面21に伝達する搬送部3と、搬送部3を加振して弾性変形させる駆動部4とを備えたものである。なお、以下の説明及び図7乃至図11では、第1実施形態と第2実施形態とで相互に対応する部分やパーツには各実施形態で共通の符号を付している。ここで、図9はシュート1の全体外観斜視図であり、図10(a)はシュート1の平面図であり、同図(b),(c)はそれぞれ同図(a)のB方向矢視図、C方向矢視図であり、同図(c)は同図(b)の要部拡大図である。
【0042】
本実施形態に係るシュート1は、横臥姿勢で設けた弾性変形可能なプレート体で搬送部3を構成している。本実施形態のシュート1は、搬送部3の幅方向E中央部からシュート1におけるワークWの搬送方向D1上流側及び下流側にそれぞれ突出する固定部5を備えている。固定部5は搬送部3と一体に形成されている。本実施形態のシュート1は、搬送部3の前面31及び背面32からそれぞれ前方及び後方に突出する固定部5を備えたものであると捉えることができる。
【0043】
本実施形態のシュート1は、搬送部3の上向き面35または下向き面36のうち一方の面(図示例では上向き面35)に駆動部4を設けている。本実施形態では、駆動部4として圧電素子41を適用し、1つの圧電素子41を搬送部3の上向き面35における幅方向E中央部に貼付処理等の適宜の処理または固定手段によって固定している。
【0044】
ワーク搬送路2は、搬送部3の一方の側端部に設けられたものである。すなわち、本実施形態におけるワーク搬送路2は、搬送部3のうち駆動部4を固定した部分から幅方向Eに所定距離離間した位置にワーク搬送路2を設けている。ワーク搬送路2の上向き面には、溝状の搬送面21を形成している。搬送面21の溝形状は特に限定されず、図10等では断面上向きコ字状の搬送面21を例示している。搬送面21は、ワーク搬送路2のうちワーク搬送方向D1上流側の外縁及びワーク搬送方向D1下流側の外縁に到達している。ワーク搬送路2の前後方向Zに沿った寸法は、搬送部3の前後方向Zに沿った寸法と同じである。本実施形態のシュート1は、搬送部3の側端部から側方に張り出したワーク搬送路2を備えたものであると捉えることができる。本実施形態では、搬送部3及びワーク搬送路2を一体に形成している。
【0045】
本実施形態に係るシュート1は、ワーク搬送路2の下向き面に他の部品を設けていないため、ワーク搬送路2の下方空間がフリーなスペースになっている(図9図10(c),(d)参照)。本実施形態では、ワーク搬送路2の下向き面のうちワーク搬送方向D1下流側部分を、ワーク搬送路2の終端23に向かって漸次高さ寸法が小さくなるテーパ面24に設定している(図10(b)参照)。
【0046】
以上の構成を有するシュート1をリニアフィーダLの終端L11に隣接する位置に配置した振動搬送装置Xは、図7及び図8に示すように、次工程設備Yである回転テーブルTのワーク移載面Y1にワーク搬送路2のうち下流端側の下向き面を近接させた状態で、シュート1とは別体の支持部材(図示省略)に固定部5を適宜の手段で固定した状態で設置することができる。この設置状態では、ワーク搬送路2のうちテーパ面24に設定した下流端側の下向き面を回転テーブルTのワーク移載面Y1に近接させているため、搬送面21は、ワーク搬送方向D1上流から下流に向かって漸次斜め下方に傾斜する下り勾配になる。本実施形態では、搬送面21を5°乃至15°程度の勾配でワーク搬送方向D1に傾斜させている。また、固定部5は、シュート1の支持部として機能する。
【0047】
そして、本実施形態に係る振動搬送装置Xは、リニアフィーダLと次工程設備Yである回転テーブルTの間に設けたシュート1によって、リニアフィーダLのリニアメイン搬送路L1から搬送面21に乗り継いだワークWを一定区間(搬送面21によるワークWの搬送区間)搬送した後、次工程設備Yである回転テーブルTにワークWを供給することができる。
【0048】
具体的には、搬送部3の幅方向E中央部に設けた駆動部4(圧電素子41)に交流電圧を印加することで搬送部3を加振すると、搬送部3全体が高さ方向H(鉛直方向)に撓む弾性変形によって振動(曲げ振動)が生じる。ここで、図11から把握できるように、本実施形態に係るシュート1は、搬送部3全体が曲げ振動した状態(曲げ振動モード)においてその振動波の節の位置に圧電素子41を設け、搬送部3から曲げ振動が伝達する搬送面21を振動波の腹または腹付近に設定した構成である。特に、本実施形態では、搬送面21全体が曲げ振動状態(曲げ振動モード)の腹に相当する位置またはその近傍位置となるように設定している。本実施形態のシュート1は、曲げ振動モードにおいて搬送面21を周波数20kHz以上の超音波領域で振動させる(定在波)ことができる。なお、圧電素子41による加振時の周波数は搬送部3の曲げ振動モードの固有周波数とする。また、図11から、本実施形態のシュート1は、固定部5も振動波の節の位置に設けた構成であることが把握できる。なお、図11は、曲げ振動モードを解析アニメーションにより変位させて拡大表示した(誇張して模式的に示した)ものである。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るシュート1は、駆動部4(圧電素子41)によって搬送部3を弾性変形させた状態である振動モード(縦振動モード)において搬送面21全体が振動モードの腹に相当する位置(振動の腹部分)またはその近傍部分に位置する構成であるため、搬送面21上に節のない振動状態を得ることができ、搬送面21全域に亘って同程度の振幅で振動し、搬送面21全体で一様に摩擦低減効果が得られ、ワーク搬送処理をスムーズに実行することができる。特に、本実施形態に係るシュート1によれば、搬送部3を高周波で振動(超音波振動)させることで、搬送面21上におけるワークWの跳躍を抑制しつつ、搬送面21とワークWとの間の摩擦を低減することができる。また、搬送部3を超音波振動させる構成を採用することで、振動音が聞こえず、作業環境に悪影響を及ぼさないというメリットも得ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係るシュート1によれば、搬送面21を上向き面に有するワーク搬送路2の下方空間が開放されているため、ワーク搬送路2の下向き面と次工程設備Yのワーク移載面Y1との間の隙間はワーク搬送路2の振動を考慮した分だけ確保すればよく、ワーク搬送路2の下向き面に圧電素子等の駆動部を設けた態様と比較して、ワーク搬送路2の下向き面を次工程設備Yのワーク移載面Y1に接近させることができ、ワーク搬送路2から次工程設備Yのワーク移載面Y1への乗継時におけるワークWの姿勢が安定するとともに、次工程設備Yへの接続や次工程設備Yに対する位置調整を行う処理も圧電素子の配線スペース等を考慮する必要がなく、容易且つスムーズに行うことができる。特に、シュート1の上流に配置されるメイン搬送路(本実施形態であればリニアメイン搬送路L1)の終端L11に到達したワークWが所望の適正な姿勢にあるワークWのみであり、その適正姿勢を維持したままワーク搬送路2を経て次工程設備Yのワーク移載面Y1に供給することが要求される場合には、ワーク搬送路2の下向き面をワーク移載面Y1に対してギャップが殆どない位置まで接近させて、搬送面21の終端L11とワーク移載面Y1との高低差(段差)をゼロに近い状態に設定可能な本実施形態のシュート1は極めて実用性の高いものである。
【0051】
また、本実施形態に係るシュート1によれば、横臥姿勢で設けられた弾性変形可能なプレート体で搬送部3を構成し、振動モードが、搬送部3の幅方向E中央部に固定した駆動部4を駆動させることで搬送部3の撓み変形によって生じる振動であり、搬送部3の側端部に搬送面21を設けているため、搬送部3から搬送面21に伝達される振動が搬送面21上におけるワークWの搬送方向D1に対して垂直な方向のみの振動(上下方向のみの振動)であり、搬送面21における水平方向の振幅がほぼゼロであるため、振動波自体はワークWの推進力に直接的に寄与せず、搬送面21上を搬送中のワークWの挙動に脈動が生じず、ワークWの搬送速度を一定速度に保つことができ、安定したワーク搬送処理を実現できる。また、本実施形態に係るシュート1は、このような極めて簡素な構成でありながら、ワーク搬送路2の下方空間にフリースペースを確保することができる。
【0052】
加えて、本実施形態に係るシュート1によれば、搬送面21をワーク搬送方向D1下流端に向かって漸次下り勾配となる傾斜面に設定しているため、リニアフィーダLからワーク搬送路2の搬送面21に乗り移ったワークWが滑り落ちるように搬送されることになり、後方からのワークWに押される力(押圧力)がない最後尾のワークWであっても滑り落ちて搬送されることになる。また、搬送面21におけるワークWの搬送速度をリニアフィーダLのリニアメイン搬送路L1におけるワークWの搬送速度よりも遅くなるように設定した場合には、搬送面21上でワークWを搬送方向D1に隙間の無い状態または略無い状態で搬送することができ、搬送方向D1におけるワークW同士の距離が大きくなる(ワークWの離間)事象の発生を防止して、時間単位あたりのワーク搬送量増大化が可能であり、より一層安定したワークWの一定供給処理を実現できる。
【0053】
また、このようなシュート1を備えた本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、上述したシュート1が奏する作用効果を得て、ワークWと搬送面21の間の摩擦低減効果を向上させることができ、搬送面21の終端L11から次工程設備Yのワーク移載面Y1に向かってワークWを一定供給することが可能になるとともに、搬送面21の終端L11と次工程設備Yのワーク移載面Y1との段差をゼロに近付けることができ、搬送面21の終端L11から次工程設備Yのワーク移載面Y1への乗継時にワークWの姿勢変更する不具合を防止・抑制することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、搬送面をワーク搬送方向に沿って下り勾配に設定した態様を例示したが、傾斜していないフラットな搬送面を採用することもできる。
【0055】
ワーク搬送路に隣接する位置に配置される搬送部は、弾性変形によって生じた振動を搬送面に伝達するという条件を満たすものであれば、ワーク搬送路と別体のものであってもよい。つまり、本発明のシュートは、搬送路と搬送部を別体として備えた構成、及び搬送路と搬送部を一体に備えた構成の両方を包含するものである。なお、搬送路と搬送部が一体である構成(搬送部の一部を搬送路として形成・加工した構成)も本発明に含まれる。
【0056】
また、本発明では、搬送面の断面溝形状やワーク搬送方向に沿ったワーク搬送路の長さは、適宜選択・変更することができる。
【0057】
本発明では、駆動部として、圧電素子に代えてまたはそれに加えて、磁歪素子や他の素子を適用することが可能である。また、搬送部を厚み方向に挟む位置にそれぞれ駆動部を配置した構成を採用することもできる。各駆動部は、振動の節または節近傍に配置されるものに限定されず、振動モードによっては配置箇所が振動の腹または腹近傍に配置される場合もある。すなわち、振動モードにおいてより効率良く振動させるためには、弾性変形による歪みの大きな位置に駆動部を配置(圧電素子を貼付)することが好ましい。
また、第1実施形態で述べた構成の一変形例として、プレート体の下端部に、搬送路を当該プレート体の厚み方向に突出する姿勢で設けた構成を挙げることができる。
【0058】
また、本発明に係る振動搬送装置は、ボウルフィーダとリニアフィーダとシュートを全て備えたものに限定されず、ボウルフィーダのメイン搬送路(螺旋搬送路)の終端に隣接する位置にシュートを配置した構成や、ボウルフィーダを備えず、リニアフィーダのメイン搬送路(リニアメイン搬送路)の終端に隣接する位置にシュートを配置した構成であってもよい。なお、リニアフィーダが、リニア搬送部の上向き面に、リニアメイン搬送路と、リニアメイン搬送路から排除されたワークを上流側(例えばボウルフィーダの貯留部)に戻すリターントラックとを形成したものであってもよい。
【0059】
さらにはまた、ボウルフィーダとリニアフィーダの間に本発明に係るシュートを設け、螺旋搬送路の終端からワーク搬送路の始端に到達したワークを、ワーク搬送路の終端まで搬送してリニアフィーダのリニアメイン搬送路の始端に乗り継ぐ構成を実現することもできる。この場合、振動搬送装置は、ボウルフィーダとシュートとを備えたものであり、本発明における「次工程設備のワーク移載面」がリニアメイン搬送路の始端であると捉えることができる。
【0060】
また、本発明における次工程設備は、外観検査装置の回転テーブルに限定されず、適宜の検査装置或いは処理装置の一部を構成し、且つワーク移載面を有するものであればよい。
【0061】
搬送対象物であるワークWの一例として電子部品などの微小部品を挙げることができるが、ワークWは電子部品以外の物品であってもよい。
【0062】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…シュート
21…搬送面
2…搬送路(ワーク搬送路)
3…搬送部
4,41…駆動部(圧電素子)
L1…メイン搬送路(リニアメイン搬送路)
W…ワーク
X…振動搬送装置
Y…次工程設備(回転テーブル)
Y1…ワーク移載面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11