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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】歯車ポンプまたは歯車モータ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20240619BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20240619BHJP
   F03C 2/08 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
F04C2/18 321B
F04C15/00 B
F03C2/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020148428
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042820
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】都築 克成
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/024519(WO,A1)
【文献】特開昭57-062985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
F04C 15/00
F03C 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合う斜歯歯車である駆動ギヤ(11)および従動ギヤ(12)と、
上記駆動ギヤ(11)と上記従動ギヤ(12)とを収容するメガネ穴(24)と、上記メガネ穴(24)に連通する吸込通路(25)と、上記吸込通路(25)とは反対側に設けられ、上記メガネ穴(24)に連通する吐出通路(26)とを有するハウジング(20)と、
上記ハウジング(20)の上記メガネ穴(24)に配置され、上記駆動ギヤ(11)の一端面と上記従動ギヤ(12)の一端面とに摺接する摺動面(30a)とその摺動面(30a)と反対側の非摺動面(30b)とを有する第1サイドプレート(30)と、
上記ハウジング(20)の上記メガネ穴(24)に配置され、上記駆動ギヤ(11)の他端面と上記従動ギヤ(12)の他端面とに摺接する摺動面(40a)とその摺動面(40a)と反対側の非摺動面(0b)とを有する第2サイドプレート(40)と、
上記第1サイドプレート(30)の上記非摺動面(30b)に当接する3の字状の第1ガスケット(50)と、
上記第2サイドプレート(40)の上記非摺動面(40b)に当接する3の字状の第2ガスケット(60)と
を備え、
上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先の上記第1サイドプレート(30)に摺接する一端は、上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先の上記第2サイドプレート(40)に摺接する他端よりも回転方向に向かって位相が進んでおり、
上記第1ガスケット(50)は、上記メガネ穴(24)の内周面に対向する端部(50a,50b)を有し、
上記第1ガスケット(50)の端部(50a,50b)の周方向の長さを、上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先円上1ピッチ以上に設定していることを特徴とする歯車ポンプまたは歯車モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の歯車ポンプまたは歯車モータおいて、
上記第2ガスケット(60)は、上記メガネ穴(24)の内周面に対向する端部(60a,60b)を有し、
上記第2ガスケットの端部(60a,60b)の周方向の長さを、上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先円上1ピッチ以上に設定していることを特徴とする歯車ポンプまたは歯車モータ。
【請求項3】
互いに噛み合う斜歯歯車である駆動ギヤ(11)および従動ギヤ(12)と、
上記駆動ギヤ(11)と上記従動ギヤ(12)とを収容するメガネ穴(24)と、上記メガネ穴(24)に連通する吸込通路(25)と、上記吸込通路(25)とは反対側に設けられ、上記メガネ穴(24)に連通する吐出通路(26)とを有するハウジング(20)と、
上記ハウジング(20)の上記メガネ穴(24)に配置され、上記駆動ギヤ(11)の一端面と上記従動ギヤ(12)の一端面とに摺接する摺動面(30a)とその摺動面(30a)と反対側の非摺動面(30b)とを有する第1サイドプレート(30)と、
上記ハウジング(20)の上記メガネ穴(24)に配置され、上記駆動ギヤ(11)の他端面と上記従動ギヤ(12)の他端面とに摺接する摺動面(40a)とその摺動面(40a)と反対側の非摺動面(40b)とを有する第2サイドプレート(40)と、
上記第1サイドプレート(30)の上記非摺動面(30b)に当接する3の字状の第1ガスケット(50)と、
上記第2サイドプレート(40)の上記非摺動面(40b)に当接する3の字状の第2ガスケット(60)と
を備え、
上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先の上記第1サイドプレート(30)に摺接する一端は、上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先の上記第2サイドプレート(40)に摺接する他端よりも回転方向に向かって位相が進んでおり、
上記第1ガスケット(50)は、上記メガネ穴(24)の内周面に対向する端部(50a,50b)を有し、
上記第1ガスケット(50)の端部(50a,50b)の周方向の長さを、上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先円上1ピッチ以上に設定し
上記第1ガスケット(50)の端部(50a,50b)は、上記メガネ穴(24)における上記吸込通路(25)の開口の縁(EG1)から回転方向に向かって上記駆動ギヤ(11)および上記従動ギヤ(12)の歯先円上1ピッチ進んだ第1の位置(P1)から周方向に延びていることを特徴とする歯車ポンプまたは歯車モータ。
【請求項4】
請求項3に記載の歯車ポンプまたは歯車モータおいて、
上記第2ガスケット(60)の端部(60a,60b)は、上記第1ガスケット(50)の端部(50a,50b)の上記第1の位置(P1)よりも歯先円上1ピッチ遅れた第2の位置(P2)から回転方向に向かって周方向に延びていることを特徴とする歯車ポンプまたは歯車モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯車ポンプまたは歯車モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車ポンプとしては、駆動ギヤおよび従動ギヤと、駆動ギヤおよび従動ギヤの両端面に摺接する2つサイドプレートと、各サイドプレートとハウジングとの間に位置する2つガスケットとを備えたものがある(例えば、国際公開第2014/199489号(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/199489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記歯車ポンプでは、駆動ギヤおよび従動ギヤの端面にサイドプレートを押し付けることで作動流体の漏れを防いでいる。このサイドプレートによる押し付け力が強すぎると、サイドプレートと各ギヤの端面とが焼き付く一方、サイドプレートによる押し付け力が弱すぎると、サイドプレートと各ギヤの端面との間に隙間ができて作動流体が漏れるため、適切な押し付け力が求められる。
【0005】
上記歯車ポンプにおけるサイドプレートの押し付け力は、各ギヤの端面が摺接するサイドプレートの摺動面とは反対側の非摺動面に、本歯車ポンプの吐出圧を導入することで得ている。上記サイドプレートの押し付け力は、サイドプレートの非摺動面に吐出圧が作用する範囲を限定する3の字状のガスケットというシール部材の形状で決まる。
【0006】
上記3の字状のガスケットは、サイドプレートの非摺動面と、その非摺動面に対向する部品(ハウジングのカバーまたはベアリングケース)と、ハウジングのメガネ穴とで囲われる空間を密閉して高圧を保持する。
【0007】
上記3の字状のガスケットは、サイドプレートの非摺動面に高圧が作用する範囲を限定して、摺動面と非摺動面とに働く圧力をほぼ平衡させるという役割のため、サイドプレートの摺動面の高圧側と低圧側との境界に似た形状になる。このようなサイドプレートの摺動面の外周円における高圧側と低圧側との境界の位置は、従来型の平歯車を備えた歯車ポンプでは吸込通路の付近になる。
【0008】
これに対して、斜歯歯車を備えた構成の歯車ポンプでは、駆動ギヤおよび従動ギヤの歯が捻れているため、各ギヤの歯幅の一方の端において、従来型の平歯車を備えた歯車ポンプと同様、サイドプレートの摺動面の外周円における高低圧の切り替わりが吸込通路の付近になるが、歯幅の他方の端において、駆動ギヤ,従動ギヤの捻じれの分だけ吸込通路から回転方向に向かって位相が進んだ位置で高低圧が切り替わる。
【0009】
歯車ポンプでは、サイドプレートが高圧側から低圧側に向かってメガネ穴の内周面に押し付けられて、サイドプレートの外周円の中心がメガネ穴の中心から低圧側にずれている。斜歯歯車を備えた構成の歯車ポンプでは、サイドプレートの片方で吸込通路から回転方向に向かって位相が進んだ位置で低圧側から高圧側へ切り替わるが、その領域がメガネ穴の内周面とサイドプレートとの密着部から離れた位置になり、サイドプレートとメガネ穴の内周面との間の隙間が広くなる。
【0010】
このため、サイドプレートとメガネ穴の内周面との間の隙間を介して、サイドプレートの非摺動面に供給された高圧側の作動流体が低圧側(サイドプレートの摺動面側)に漏れるという問題がある。これにより、歯車ポンプの容積効率が低下する。
【0011】
本開示では、高圧側から低圧側への作動流体の漏れを抑制できる歯車ポンプまたは歯車モータを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の歯車ポンプまたは歯車モータは、
互いに噛み合う斜歯歯車である駆動ギヤおよび従動ギヤと、
上記駆動ギヤと上記従動ギヤとを収容するメガネ穴と、上記メガネ穴に連通する吸込通路と、上記吸込通路とは反対側に設けられ、上記メガネ穴に連通する吐出通路とを有するハウジングと、
上記ハウジングの上記メガネ穴に配置され、上記駆動ギヤの一端面と上記従動ギヤの一端面とに摺接する摺動面とその摺動面と反対側の非摺動面とを有する第1サイドプレートと、
上記ハウジングの上記メガネ穴に配置され、上記駆動ギヤの他端面と上記従動ギヤの他端面とに摺接する摺動面とその摺動面と反対側の非摺動面とを有する第2サイドプレートと、
上記第1サイドプレートの上記非摺動面に当接する3の字状の第1ガスケットと、
上記第2サイドプレートの上記非摺動面に当接する3の字状の第2ガスケットと
を備え、
上記駆動ギヤおよび上記従動ギヤの歯先の上記第1サイドプレートに摺接する一端は、上記駆動ギヤおよび上記従動ギヤの歯先の上記第2サイドプレートに摺接する他端よりも回転方向に向かって位相が進んでおり、
上記第1ガスケットは、上記メガネ穴の内周面に対向する端部を有し、
上記第1ガスケットの端部の周方向の長さを、上記駆動ギヤおよび上記従動ギヤの歯先円上1ピッチ以上に設定していることを特徴とする。
【0013】
本開示によれば、3の字状の第1ガスケットのメガネ穴と接触する端部の周方向の長さを駆動ギヤ,従動ギヤの歯先円上1ピッチよりも長くしたことにより、低圧側から高圧側に切り替わる領域の全域に亘って第1サイドプレートとメガネ穴との間の隙間を第1ガスケットにより塞ぐことが可能になり、第1サイドプレートの非摺動面(駆動ギヤ,従動ギヤと摺接する面と反対側の面)に供給された高圧の作動流体が、第1サイドプレートの摺動面側の高低圧切替り領域へ漏れるのを抑制する。
【0014】
また、本開示の1つの態様に係る歯車ポンプまたは歯車モータでは、
上記第2ガスケットは、上記メガネ穴の内周面に対向する端部を有し、
上記第2ガスケットの端部の周方向の長さを、上記駆動ギヤおよび上記従動ギヤの歯先円上1ピッチ以上に設定している。
【0015】
本開示によれば、3の字状の第2ガスケットのメガネ穴と接触する端部の周方向の長さを駆動ギヤ,従動ギヤの歯先円上1ピッチよりも長くしたことにより、低圧側から高圧側に切り替わる領域の全域に亘って第2サイドプレートとメガネ穴との間の隙間を第2ガスケットにより塞ぐことが可能になり、第2サイドプレートの非摺動面(駆動ギヤ,従動ギヤと摺接する面と反対側の面)に供給された高圧の作動流体が、第2サイドプレートの摺動面側の高低圧切替り領域へ漏れるのを抑制する。
【0016】
また、本開示の1つの態様に係る歯車ポンプまたは歯車モータでは、
上記第1ガスケットの端部は、上記メガネ穴における上記吸込通路の開口の縁から回転方向に向かって上記駆動ギヤおよび上記従動ギヤの歯先円上1ピッチ進んだ第1の位置から周方向に延びている。
【0017】
本開示によれば、第1ガスケットの端部が、メガネ穴における吸込通路の開口の縁から回転方向に向かって駆動ギヤおよび従動ギヤの歯先円上1ピッチ進んだ第1の位置から周方向に延びているので、第1サイドプレートの摺動面側の高低圧切替り領域が、第2サイドプレートの摺動面側の高低圧切替り領域よりも回転方向に向かって歯先円上1ピッチ進んでいても、第1サイドプレートとメガネ穴との間の隙間を第1ガスケットにより塞ぐことができる。
【0018】
また、本開示の1つの態様に係る歯車ポンプまたは歯車モータでは、
上記第2ガスケットの端部は、上記第1ガスケットの端部の上記第1の位置よりも歯先円上1ピッチ遅れた第2の位置から回転方向に向かって周方向に延びている。
【0019】
本開示によれば、第2ガスケットの端部が、第2ガスケットの端部の第1の位置よりも歯先円上1ピッチ遅れた第2の位置から回転方向に向かって周方向に延びているので、第2サイドプレートの摺動面側の高低圧切替り領域における第2サイドプレートとメガネ穴との間の隙間を第2ガスケットにより塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1実施形態の歯車ポンプの全体斜視図である。
図2】第1実施形態の歯車ポンプの分解斜視図である。
図3図1のIII-III線から見た断面図である。
図4図3のIV-IV線から見た断面図である。
図5図3のV-V線から見た断面図である。
図6】駆動ギヤの端面の図である。
図7図3のVII-VII線から見た断面図である。
図8図3のVIII-VIII線から見た断面図である。
図9】第1実施形態の歯車ポンプのメガネ穴の内周面の高低圧切替り領域をメガネ穴の内部から見た模式図である。
図10】比較例の歯車ポンプのメガネ穴の内周面の高低圧切替り領域をメガネ穴の内部から見た模式図である。
図11】本開示の第2実施形態の歯車ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態を説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法を表してはいない。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本開示の第1実施形態の歯車ポンプ1の全体斜視図である。この第1実施形態の歯車ポンプ1は、作動流体(本実施形態では作動油)を吸い込んで昇圧して、液圧機器(例えば油圧機器)に吐出する。
【0023】
この第1実施形態の歯車ポンプ1は、図1に示すように、ボディ21と、ボディ21に固定されたカバー22と、ボディ21に固定されたマウンティング23とからなるハウジング20を備えている。図1において、11aは、駆動ギヤ11から軸方向に延びる駆動軸、26は吐出通路である。
【0024】
図2は、第1実施形態の歯車ポンプ1の分解斜視図であり、図3は、図1のIII-III線から見た断面図である。
【0025】
第1実施形態の歯車ポンプ1は、図2,図3に示すように、互いに噛み合う一対の駆動ギヤ11および従動ギヤ12と、駆動ギヤ11および従動ギヤ12を収容するハウジング20と、ハウジング20内に配置されたベアリングケース71,72,73,74とを備える。ハウジング20のボディ21に、駆動ギヤ11および従動ギヤ12等を収容するためのメガネ穴24が設けられている。
【0026】
歯車ポンプ1は、駆動ギヤ11および従動ギヤ12の軸方向の一方側(図3において右側)の一端面に摺接する第1サイドプレート30と、駆動ギヤ11および従動ギヤ12の軸方向の他方側(図3において左側)の他端面に摺接する第2サイドプレート40とを備える。
【0027】
駆動ギヤ11と従動ギヤ12とは、斜歯歯車である。駆動ギヤ11の歯と従動ギヤ12の歯とは、互いに噛み合うように構成されている。駆動ギヤ11の歯のねじれ角は、従動ギヤ12の歯のねじれ角と同一であり、駆動ギヤ11の歯のねじれ方向は、従動ギヤ12の歯のねじれ方向と逆向きである。駆動ギヤ11および従動ギヤ12のねじれ量は、1ピッチ分としている。
【0028】
駆動ギヤ11および従動ギヤ12の歯先の第1サイドプレート30に摺接する一端が、駆動ギヤ11および従動ギヤ12ヤの歯先の第2サイドプレート40に摺接する他端よりも回転方向に向かって位相(1ピッチ分に相当)が進んでいる。
【0029】
駆動ギヤ11は、駆動ギヤ11の軸方向の両側から駆動ギヤ11の軸方向に延びる駆動軸11aを有している。駆動軸11aの他方側(図3において左側)の端部には、モータなどの駆動源(図示せず)が機械的に接続されている。従動ギヤ12は、従動ギヤ12の軸方向の両側から従動ギヤ12の軸方向に延びる従動軸12aを有している。
【0030】
ベアリングケース71は、駆動軸11aを軸支するベアリング71aを有する。ベアリングケース72は、従動軸12aを軸支するベアリング72aを有する。ベアリングケース71,72の第1サイドプレート30と対向する面には、3の字状の第1ガスケット50が設けられている。3の字状の第1ガスケット50は、第1サイドプレート30と、ベアリングケース71,72との間に流入した高圧の作動油の圧力が作用する範囲を限定するためのものである。第1サイドプレート30は、第1サイドプレート30とベアリングケース71,72との間の一部に流入した高圧の作動油の圧力によって、駆動ギヤ11および従動ギヤ12に向かって押し付けられる。
【0031】
ベアリングケース73は、駆動軸11aを軸支するベアリング73aを有する。ベアリングケース74は、従動軸12aを軸支するベアリング74aを有する。ベアリングケース73,74の第2サイドプレート40と対向する面には、第2ガスケット60が設けられている。第2ガスケット60は、第2サイドプレート40と、ベアリングケース73,74との間に流入した高圧の作動油の圧力が作用する範囲を限定するためのものである。第2サイドプレート40は、第2サイドプレート40とベアリングケース73,74との間の一部に流入した高圧の作動油の圧力によって、駆動ギヤ11および従動ギヤ12に向かって押し付けられる。
【0032】
第1サイドプレート30と第2サイドプレート40とは、駆動ギヤ11および従動ギヤ12を挟むようにハウジング20内に配置されている。第1サイドプレート30は、駆動ギヤ11および従動ギヤ12と、ベアリングケース71,72との間に設けられている。第2サイドプレート40は、駆動ギヤ11および従動ギヤ12と、ベアリングケース73,74との間に設けられている。
【0033】
第1サイドプレート30は、駆動ギヤ11と従動ギヤ12とに摺接する摺動面30aと、その反対側に位置する非摺動面30bとを有している。第1サイドプレート30の非摺動面30bに第1ガスケット50が当接する。作動油の圧力が第1サイドプレート30の摺動面30aに作用することによって、第1サイドプレート30が駆動ギヤ11および従動ギヤ12から離れる方向に押圧される。一方で、第1サイドプレート30とベアリングケース71,72との間に導入された高圧の作動油の圧力が非摺動面30bに作用することによって、第1サイドプレート30が駆動ギヤ11および従動ギヤ12に近付く方向に押圧される。
【0034】
第1ガスケット50の形状は、第1サイドプレート30の非摺動面30bに作用する力が、第1サイドプレート30の摺動面30aに作用する力よりも若干大きくなるように設定されている。これにより、第1サイドプレート30は、駆動ギヤ11および従動ギヤ12の一端面と第1サイドプレート30との間の隙間が小さくなるように、駆動ギヤ11の一端面と従動ギヤ12の一端面とに適切な力で押し付けられている。
【0035】
第2サイドプレート40は、駆動ギヤ11と従動ギヤ12とに摺接する摺動面40aと、その反対側に位置する非摺動面40bとを有している。第2サイドプレート40の非摺動面40bに第2ガスケット60が当接する。作動油の圧力が第2サイドプレート40の摺動面40aに作用することによって、第2サイドプレート40が駆動ギヤ11および従動ギヤ12から離れる方向に押圧される。一方で、第2サイドプレート40とベアリングケース73,74との間に導入された高圧の作動油の圧力が第2サイドプレート40の非摺動面40bに作用することによって、第2サイドプレート40が駆動ギヤ11および従動ギヤ12に近付く方向に押圧される。
【0036】
第2ガスケット60の形状は、第2サイドプレート40の非摺動面40bに作用する力が、第2サイドプレート40の摺動面40aに作用する力よりも若干大きくなるように設定されている。これにより、第2サイドプレート40は、駆動ギヤ11および従動ギヤ12の他端面と第2サイドプレート40との間の隙間が小さくなるように、駆動ギヤ11の他端面と従動ギヤ12の他端面とに適切な力で押し付けられている。
【0037】
図4は、図3のIV-IV線から見た断面図である。
【0038】
ボディ21のメガネ穴24は、図4に示すように、一部が重複する2つの円形状から構成される断面形状をしている。ボディ21のメガネ穴24は、駆動ギヤ11および従動ギヤ12と、第1サイドプレート30(図2,図3に示す)と、第2サイドプレート40(図2,図3に示す)と、第1ガスケット50(図2,図3に示す)と、第2ガスケット60(図2,図3に示す)とベアリングケース71,72,73,74(図2,図3に示す)とによって、低圧空間24aと高圧空間24bとに区画されている。
【0039】
ボディ21は、メガネ穴24の低圧空間24aに連通する吸込通路25と、メガネ穴24の高圧空間24bに連通する吐出通路26とを備える。
【0040】
駆動軸11aに機械的に接続された駆動源(図示せず)によって駆動ギヤ11が軸C1を中心に回転(図中矢印R1参照)すると、駆動ギヤ11と噛み合った従動ギヤ12が軸C2を中心に回転(矢印R2参照)する。その結果、吸込通路25から吸い込まれた作動油は、メガネ穴24を経て吐出通路26から吐出される。
【0041】
図5は、図3のV-V線から見た断面図である。第1ガスケット50は、図5に示すように、3の字形に形成され、メガネ穴24の内周面に対向する端部50a,50bを有している。ベアリングケース71に設けられた装着部71bとベアリングケース72に設けられた装着部72bとに、第1ガスケット50が装着されている。
【0042】
第1ガスケット50の端部50aは、メガネ穴24における吸込通路25の開口の縁EG1の第2の位置P2から駆動ギヤ11の回転方向(図5において時計回り)に向かって、駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチ(図5のA2の範囲)進んだ第1の位置P1から周方向に延びている。第1ガスケット50の端部50aの周方向の長さを、駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチ以上に設定している(図5のA1の範囲)。
【0043】
ここで、第1ガスケット50の端部50aの周方向の長さは、端部50aの外周の円弧の長さである。第1ガスケット50の端部50aの周方向の長さを、駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチ以上とは、当該円弧の中心角が駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチに相当する角度範囲以上ということである。駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチを図6に示す。
【0044】
なお、第1ガスケット50の端部50bにおいても同様に、メガネ穴24における吸込通路25の開口の縁EG2から従動ギヤ12の回転方向(図5において反時計回り)に向かって従動ギヤ12の歯先円上1ピッチ(駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチと同じ)進んだ第1の位置P1から周方向に延びている。第1ガスケット50の端部50aの周方向の長さを、従動ギヤ12の歯先円上1ピッチ以上に設定している。
【0045】
図7は、図3のVII-VII線から見た断面図である。第2ガスケット60は、図7に示すように、3の字形に形成され、メガネ穴24の内周面に対向する端部60a,60bを有している。ベアリングケース73に設けられた装着部73bとベアリングケース74に設けられた装着部74bとに、第2ガスケット60が装着されている。
【0046】
第2ガスケット60の端部60aは、メガネ穴24における吸込通路25の開口の縁EG1から回転方向(図7において時計回り)に向かって周方向に延びている。言い換えると、第2ガスケット60の端部60aは、第1の位置P1よりも歯先円上1ピッチ遅れた第2の位置P2から回転方向に向かって周方向に延びている。第2ガスケット60の端部60aの周方向の長さを、図7のB1で示すように駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチ以上に設定している。
【0047】
なお、第2ガスケット60の端部60bにおいても同様に、メガネ穴24における吸込通路25の開口の縁EG2から回転方向(図7において反時計回り)に向かって周方向に延びている。第2ガスケット60の端部60aの周方向の長さを、従動ギヤ12の歯先円上1ピッチ(駆動ギヤ11の歯先円上1ピッチと同じ)以上に設定している。
【0048】
図8は、図3のVIII-VIII線から見た断面図である。
【0049】
図8に示すように、第1サイドプレート30の高圧側部(吐出通路26側)における円弧の中心と低圧側部(吸込通路25側)における円弧の中心とが共通している。また、メガネ穴24と第1サイドプレート30とのクリアランスを確保するために、メガネ穴24の内周面の円弧の曲率半径よりも、第1サイドプレート30の低圧側部,高圧側部における円弧の曲率半径を小さくしている。
【0050】
このため、稼働時に第1サイドプレート30が吐出圧によりメガネ穴24の低圧側の方向に押し付けられた状態で、図8に示す領域S2では、メガネ穴24の内周面と第1サイドプレート30の低圧側部との間の隙間が小さくなる一方、図8に示す領域S1では、メガネ穴の内周面と第1サイドプレート30の低圧側部との間の隙間が大きくなる。このことは、従動ギヤ12側でも同様である。
【0051】
図8において、領域S2は、図5,図7に示すメガネ穴24における吸込通路25の開口の縁EG1の第2の位置P2から、回転方向に周方向長さが歯先円上1ピッチとなる第1の位置P1までの領域である。また、領域S1は、図5,図7に示す第1の位置P1から、回転方向に周方向長さが歯先円上1ピッチとなるまでの領域である。
【0052】
図9は、第1実施形態の歯車ポンプ1のメガネ穴24の内周面の高低圧切替り領域をメガネ穴24の内部から見た模式図である。図9において、11bは駆動ギヤ11の歯先シール部、12bは従動ギヤ12の歯先シール部である。
【0053】
図9に示すように、第1ガスケット50のメガネ穴24と接触する端部50a,50bの周方向の長さを駆動ギヤ11,従動ギヤ12の歯先円上1ピッチよりも長くしたことにより、低圧側から高圧側に切り替わる領域の全域に亘って第1サイドプレート30とメガネ穴24との間の隙間を第1ガスケット50により塞ぐことが可能になり、第1サイドプレート30の非摺動面30b(駆動ギヤ11,従動ギヤ12と摺接する面と反対側の面)に供給された高圧の作動油が、第1サイドプレート30の摺動面側の高低圧切替り領域へ漏れるのを抑制する。
【0054】
また、第2ガスケット60のメガネ穴24と接触する端部60a,60bの周方向の長さを駆動ギヤ11,従動ギヤ12の歯先円上1ピッチよりも長くしたことにより、低圧側から高圧側に切り替わる領域の全域に亘って第2サイドプレート40とメガネ穴24との間の隙間を第2ガスケット60により塞ぐことが可能になり、第2サイドプレート40の非摺動面40b(駆動ギヤ11,従動ギヤ12と摺接する面と反対側の面)に供給された高圧の作動油が、第2サイドプレート40の摺動面側の高低圧切替り領域へ漏れるのを抑制する。
【0055】
また、低圧側から高圧側に切り替わる領域の全域に亘って第1,第2サイドプレート30,40とメガネ穴24との間の隙間が第1,第2ガスケット50,60により塞がれるため、第1,第2サイドプレート30,40とメガネ穴24との間の隙間が少々広くても良くなる。これにより、寸法公差を緩和できると共に、第1,第2サイドプレート30,40をメガネ穴24に組み込む作業がしやすくなる。さらに、第1,第2サイドプレート30,40の温度上昇時に第1,第2サイドプレート30,40が熱膨脹によりメガネ穴24との隙間が無くなって固着するのを防止できる。
【0056】
また、図5に示すように、第1ガスケット50の端部50a,50bが、メガネ穴24における吸込通路25の開口の縁EG1,EG2から回転方向に向かって駆動ギヤおよび従動ギヤの歯先円上1ピッチ進んだ第1の位置P1から周方向に延びている。これにより、第1サイドプレート30の摺動面側の高低圧切替り領域が、第2サイドプレート40の摺動面側の高低圧切替り領域よりも回転方向に向かって歯先円上1ピッチ進んでいても、第1サイドプレート30とメガネ穴24との間の隙間を第1ガスケット50により塞ぐことができる。
【0057】
また、図7に示すように、第2ガスケット60の端部60a,60bが、第2ガスケット60の端部50a,50bの第1の位置P1よりも歯先円上1ピッチ遅れた第2の位置P2から回転方向に向かって周方向に延びている。これにより、第2サイドプレート40の摺動面側の高低圧切替り領域における第2サイドプレート40とメガネ穴24との間の隙間を第2ガスケット60により塞ぐことができる。
【0058】
<比較例>
図10は、比較例の歯車ポンプのメガネ穴24の内周面の高低圧切替り領域をメガネ穴24の内部から見た模式図である。この比較例の歯車ポンプは、第1,第2ガスケット150,160を除いて第1実施形態と同様の構成をしており、図1図3を援用する。
【0059】
図10では、ベアリングケース71,72の第1サイドプレート30と対向する面には、第1ガスケット150が設けられている。また、ベアリングケース73,74の第2サイドプレート40と対向する面には、第2ガスケット160が設けられている。
【0060】
この比較例の第1ガスケット150の端部150a,150bは、第1実施形態の第1ガスケット50の端部50a,50bと同様に第1の位置P1(図5に示す)から回転方向に向かって周方向に延びているが、第1実施形態よりも周方向の長さが短い。また、第2ガスケット160の端部160a,160bは、第1実施形態の第2ガスケット60の端部60a,60bと同様に第2の位置P2(図7に示す)から回転方向に向かって周方向に延びているが、第1実施形態よりも周方向の長さが短い。
【0061】
上記比較例の歯車ポンプでは、第1ガスケット150の端部150a,150bの周方向の長さが短いので、低圧側から高圧側へ切り替わる領域がメガネ穴24の内周面と第1サイドプレート30との密着部から離れた位置において、第1サイドプレート30とメガネ穴24の内周面との間の隙間を塞いでいない。このため、第1サイドプレート30とメガネ穴24の内周面との間の広い隙間を介して、第1サイドプレート30の非摺動面30bに供給された高圧側の作動油が低圧側(第1サイドプレート30の摺動面30a側)に漏れてしまう(図10の太線の矢印)。
【0062】
これに対して、第1実施形態の歯車ポンプ1では、図9に示すように、低圧側から高圧側に切り替わる領域の全域に亘って第1,第2サイドプレート30,40とメガネ穴24との間の隙間を第1,第2ガスケット50,60により塞ぐことが可能になり、第1,第2サイドプレート30,40の非摺動面30b,40bに供給された高圧の作動油が低圧側に漏れるのを抑制できる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図11は、本開示の第2実施形態の歯車ポンプ101の図3のV-V線から見た断面図である。この第2実施形態の歯車ポンプ101は、第1ガスケット250が作動油の高圧に押されて、隙間にはみ出すのを防止するための補強部材251を除いて第1実施形態の歯車ポンプ1と同一の構成をしており、図1図3を援用する。
【0064】
この第2実施形態の歯車ポンプ101は、図11に示すように、第1ガスケット250は、図5に示すように、3の字形に形成され、メガネ穴24の内周面に対向する端部250a,250bを有している。ベアリングケース71に設けられた装着部71bとベアリングケース72に設けられた装着部72bとに、第1ガスケット250が装着されている。
【0065】
さらに、ベアリングケース71に設けられた装着部71bとベアリングケース72に設けられた装着部72bとに、補強部材251が第1ガスケット250と共に装着されている。補強部材251は、第1ガスケット250に対して駆動軸11a,従動軸12a側、および、第1ガスケット250の端部250a,250bのメガネ穴24に対向する部分を囲んでいる。このことは、第2ガスケット(図示せず)側でも同様である。
【0066】
上記第2実施形態の歯車ポンプ101は、第1実施形態の歯車ポンプ1と同様の効果を有する。
【0067】
上記第1,第2実施形態では、歯車ポンプ1,101について説明したが、本開示は、歯車ポンプと同様に構成された歯車モータに適用されてもよい。
【0068】
また、上記第1,第2実施形態では、作動流体として作動油を使用する場合について説明したが、本開示は、その他の流体を作動流体として使用する歯車ポンプまたは歯車モータに適用されてもよい。
【0069】
本開示の具体的な実施の形態について説明したが、本開示は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,101…歯車ポンプ
11…駆動ギヤ
11a…駆動軸
11b…歯先シール部
12…従動ギヤ
12a…従動軸
12b…歯先シール部
20…ハウジング
21…ボディ
22…カバー
23…マウンティング
24…メガネ穴
24a…低圧空間
24b…高圧空間
25…吸込通路
26…吐出通路
30…第1サイドプレート
30a…摺動面
30b…非摺動面
40…第2サイドプレート
40a…摺動面
40b…非摺動面
50…第1ガスケット
50a,50b…端部
60…第2ガスケット
60a,60b…端部
71,72,73,74…ベアリングケース
71a,72a,73a,74a…ベアリング
150…第1ガスケット
150a,150b…端部
160…第2ガスケット
160a,160b…端部
250…第1ガスケット
250a,250b…端部
251…補強部材
EG1,EG2…縁
P1…第1の位置
P2…第2の位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11