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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】庫内空気調節装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240619BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C09K5/04 F
F25B1/00 396Z
B60H1/32 613Z
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020569645
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2020002974
(87)【国際公開番号】W WO2020158731
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2019013979
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019019701
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019112406
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019115584
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020005787
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】池宮 完
(72)【発明者】
【氏名】藤中 伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 瞬
(72)【発明者】
【氏名】四元 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】山田 康夫
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186557(WO,A1)
【文献】特開2015-229767(JP,A)
【文献】特表2016-501978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/04
F25B1/00
B60H1/32
F25D11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒全体におけるHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの合計量が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(Z)の含有割合が53.0~59.5質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が47.0~40.5質量%である、
庫内空気調節装置。
【請求項2】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒全体におけるHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの合計量が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(Z)の含有割合が41.0~49.2質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が59.0~50.8質量%である、
庫内空気調節装置。
【請求項3】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなり、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が35.0~65.0質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が65.0~35.0質量%であり、
前記冷媒が、蒸発温度が-75~-5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる、
庫内空気調節装置。
【請求項4】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が40.5~49.2質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が59.5~50.8質量%である、
庫内空気調節装置。
【請求項5】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が31.1~39.8質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が68.9~60.2質量%である、
庫内空気調節装置。
【請求項6】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が21.0~28.4質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が79.0~71.6質量%である、
庫内空気調節装置。
【請求項7】
圧縮機(10)と、凝縮器(25)と、減圧器(13)と、蒸発器(17)とを有する冷媒回路(50)と、
前記冷媒回路(50)に封入され、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する冷媒と、
を備え、
前記冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなり、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が12.1~72.0質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が87.9~28.0質量%である、
庫内空気調節装置。
【請求項8】
前記冷媒は、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる、
請求項1に記載の庫内空気調節装置。
【請求項9】
前記冷媒は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項1又は8に記載の庫内空気調節装置。
【請求項10】
前記冷媒は、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる、
請求項2に記載の庫内空気調節装置。
【請求項11】
前記冷媒は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項2又は10に記載の庫内空気調節装置。
【請求項12】
前記冷媒は、R134a、R22、R12、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R428A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R450A、R452A、R452B、R454A、R452B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R513B、R515A又はR515Bの代替冷媒として用いられる、
請求項1、2、8~11のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項13】
前記冷媒は、
水、トレーサー、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質、
を含有する、
請求項1、2、8~12のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項14】
前記冷媒は、更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる、
請求項1、2、8~13のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項15】
前記冷凍機油は、
ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー、
を含有する、
請求項14に記載の庫内空気調節装置。
【請求項16】
前記冷媒は、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が41.3~53.5質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が58.7~46.5質量%である、
請求項3に記載の庫内空気調節装置。
【請求項17】
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項3又は16に記載の庫内空気調節装置。
【請求項18】
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項4に記載の庫内空気調節装置。
【請求項19】
前記冷媒は、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる、
請求項4又は18に記載の庫内空気調節装置。
【請求項20】
前記冷媒は、R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507又はR513Aの代替冷媒として用いられる、
請求項3、4、16~19のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項21】
前記冷媒は、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が31.1~37.9質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が68.9~62.1質量%である、
請求項5に記載の庫内空気調節装置。
【請求項22】
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項5又は21に記載の庫内空気調節装置。
【請求項23】
前記冷媒は、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる、
請求項5、21、22のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項24】
前記冷媒は、R134a、R1234yf又はCO2の代替冷媒として用いられる、
請求項5、21~23のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項25】
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項6に記載の庫内空気調節装置。
【請求項26】
前記冷媒は、R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いられる、
請求項6又は25に記載の庫内空気調節装置。
【請求項27】
前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、
請求項7に記載の庫内空気調節装置。
【請求項28】
前記冷媒は、R12、R134a又はR1234yfの代替冷媒として用いられる、
請求項7又は27に記載の庫内空気調節装置。
【請求項29】
前記冷媒は、
水、トレーサー、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質、
を含有する、
請求項3~7、16~28のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項30】
前記冷媒は、更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる、
請求項3~7、16~29のいずれか1項に記載の庫内空気調節装置。
【請求項31】
前記冷凍機油は、
ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー、
を含有する、
請求項30に記載の庫内空気調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
庫内空気調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍用あるいは冷蔵用の庫内空気調節装置の熱サイクルシステムでは、冷媒として、単一冷媒であるR134aが多用されている。また、庫内空気調節装置において、冷媒としてR404を用いることも考えられる。R404は、R125,R134a,R143aの3成分混合冷媒であり、擬似共沸組成物である。
【0003】
しかし、R134aの地球温暖化係数(GWP)は1430、R404Aの地球温暖化係数(GWP)は3920である。近年、地球温暖化への懸念の高まりから、他のGWPが低い冷媒が使われるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1(国際公開第2005/105947号)においては、R134aに代替可能な低GWP混合冷媒が、特許文献2(特開2018-184597号公報)においては、R404Aに代替可能な低GWP混合冷媒が、それぞれ提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、GWPが低い冷媒のうち、どのような冷媒を庫内空気調節装置に用いるべきかについては、なんら検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の庫内空気調節装置は、冷媒回路と、その冷媒回路に封入される冷媒と、を備える。冷媒回路は、圧縮機と、凝縮器と、減圧器と、蒸発器とを有する。冷媒は、少なくとも1,2-ジフルオロエチレンを含有する。
【0007】
第2観点の庫内空気調節装置は、第1観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))を含有する。
【0008】
第3観点の庫内空気調節装置は、第2観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(Z)の含有割合が53.0~59.5質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が47.0~40.5質量%である。
【0009】
第4観点の庫内空気調節装置は、第3観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0010】
第5観点の庫内空気調節装置は、第3又は第4観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0011】
第6観点の庫内空気調節装置は、第2観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(Z)の含有割合が41.0~49.2質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が59.0~50.8質量%である。
【0012】
第7観点の庫内空気調節装置は、第6観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0013】
第8観点の庫内空気調節装置は、第6又は第7観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0014】
第9観点の庫内空気調節装置は、第3観点から第8観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、
R134a、R22、R12、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R428A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R450A、R452A、R452B、R454A、R452B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R513B、R515A又はR515B
の代替冷媒として用いられる。
【0015】
第10観点の庫内空気調節装置は、第3観点から第9観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、
水、トレーサー、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質、
を含有する。
【0016】
第11観点の庫内空気調節装置は、第3観点から第10観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる。
【0017】
第12観点の庫内空気調節装置は、第11観点の庫内空気調節装置であって、冷凍機油は、
ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー、
を含有する。
【0018】
第13観点の庫内空気調節装置は、第1観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む。
【0019】
第14観点の庫内空気調節装置は、第13観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が35.0~65.0質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が65.0~35.0質量%である。また、冷媒は、蒸発温度が-75~-5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0020】
第15観点の庫内空気調節装置は、第14観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が41.3~53.5質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が58.7~46.5質量%である。
【0021】
第16観点の庫内空気調節装置は、第14又は第15観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0022】
第17観点の庫内空気調節装置は、第13観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が40.5~49.2質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が59.5~50.8質量%である。
【0023】
第18観点の庫内空気調節装置は、第17観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0024】
第19観点の庫内空気調節装置は、第17又は第18観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0025】
第20観点の庫内空気調節装置は、第14観点から第19観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507又はR513A
の代替冷媒として用いられる。
【0026】
第21観点の庫内空気調節装置は、第13観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が31.1~39.8質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が68.9~60.2質量%である。
【0027】
第22観点の庫内空気調節装置は、第21観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が31.1~37.9質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が68.9~62.1質量%である。
【0028】
第23観点の庫内空気調節装置は、第21又は第22観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0029】
第24観点の庫内空気調節装置は、第21観点から第23観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0030】
第25観点の庫内空気調節装置は、第21観点から第24観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、R134a、R1234yf又はCO2の代替冷媒として用いられる。
【0031】
第26観点の庫内空気調節装置は、第13観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が21.0~28.4質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が79.0~71.6質量%である。
【0032】
第27観点の庫内空気調節装置は、第26観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0033】
第28観点の庫内空気調節装置は、第26又は第27観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234ze
の代替冷媒として用いられる。
【0034】
第29観点の庫内空気調節装置は、第13観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、
トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含有し、
HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、
HFO-1132(E)の含有割合が12.1~72.0質量%であり、
HFO-1234yfの含有割合が87.9~28.0質量%である。
【0035】
第30観点の庫内空気調節装置は、第29観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる。
【0036】
第31観点の庫内空気調節装置は、第29または第30観点の庫内空気調節装置であって、冷媒は、R12、R134a又はR1234yfの代替冷媒として用いられる。
【0037】
第32観点の庫内空気調節装置は、第14観点から第31観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、
水、トレーサー、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質、
を含有する。
【0038】
第33観点の庫内空気調節装置は、第14観点から第32観点のいずれかの庫内空気調節装置であって、冷媒は、更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる。
【0039】
第34観点の庫内空気調節装置は、第33観点の庫内空気調節装置であって、冷凍機油は、
ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー、
を含有する。
【発明の効果】
【0040】
庫内空気調節装置で採用する冷媒を含有する組成物は、
R134aと同等又はそれ以上の成績係数(COP)及び冷凍能力(Capacity)を有すること、並びに、GWPが十分に小さいこと、という特性、
あるいは、
R404Aと同等又はそれ以上の成績係数(COP)及び冷凍能力を有すること、並びに、GWPが十分に小さいこと、という特性、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】燃焼性(可燃又は不燃)の判別をするための実験装置の模式図である。
図2】庫内空気調節装置の模式図である。
図3】庫内空気調節装置の制御ブロック図である。
図4】変形例Aの庫内空気調節装置の模式図である。
図5】変形例Bの庫内空気調節装置の模式図である。
図6】庫内空気調節装置が装着されたコンテナの外観を示す分解斜視図である。
図7】コンテナに装着された庫内空気調節装置の概略正面図である。
図8】コンテナに装着された庫内空気調節装置の概略側面図である。
図9】コンテナに装着された庫内空気調節装置の換気部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(1)
(1-1)用語の定義
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を夫々最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0043】
本明細書中、語句「含有」及び語句「含む」は、語句「実質的にからなる」及び語句「のみからなる」という概念を意図して用いられる。
【0044】
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、更に冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。
【0045】
冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
【0046】
本明細書において、用語「冷媒を含有する組成物」には、
(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物、すなわち「混合冷媒」を含む)と、
(2)その他の成分を更に含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍装置用作
動流体を得るために用いることのできる組成物と、
(3)冷凍機油を含有する冷凍装置用作動流体と、が少なくとも含まれる。
【0047】
本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(混合冷媒を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍装置用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0048】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0049】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0050】
本明細書において用語「冷凍装置」とは、広義には、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、広義には、冷凍装置は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。本開示において、広義には、冷凍装置はヒートポンプと同義である。
【0051】
また、本開示において、狭義には、利用する温度領域及び作動温度の違いにより冷凍装置はヒートポンプとは区別して用いられる。この場合、大気温度よりも低い温度領域に低温熱源を置くものを冷凍装置といい、これに対して低温熱源を大気温度の近くに置いて冷凍サイクルを駆動することによる放熱作用を利用するものをヒートポンプということもある。なお、「冷房モード」及び「暖房モード」等を有するエアコン等のように、同一の機器であるにもかかわらず、狭義の冷凍装置及び狭義のヒートポンプの機能を兼ね備えるものも存在する。本明細書においては、特に断りのない限り、「冷凍装置」及び「ヒートポンプ」は全て広義の意味で用いられる。
【0052】
本明細書において温度グライド(Temperature Glide)とは、熱サイクルシステムの構
成要素内における、本開示の冷媒を含有する組成物の相変化過程の開始温度と終了温度との差の絶対値と言い換えることができる。
【0053】
本明細書において、「車載用空調機器」とは、ガソリン車、ハイブリッド自動車、電気自動車、水素自動車などの自動車で用いられる冷凍装置の一種である。車載用空調機器とは、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。
【0054】
本明細書において、「ターボ冷凍機」とは、大型チラー冷凍装置の一種であって、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを遠心式圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。なお、上記「大型チラー冷凍機」とは、チラーの一種であって、建物単位での空調を目的とした大型空調機を指す。
【0055】
本明細書において、「飽和圧力」とは飽和蒸気の圧力を意味する。本明細書において、「飽和温度」とは飽和蒸気の温度を意味する。
【0056】
本明細書では、冷凍サイクルにおける蒸発温度とは、冷凍サイクルの蒸発工程において、冷媒液が熱を吸収して蒸気になる際の温度を意味する。冷凍サイクルにおける蒸発温度は、蒸発器入口及び/又は蒸発器出口の温度を測定することにより決定することができる。単体冷媒及び共沸冷媒の場合、蒸発温度は一定であるが、非共沸冷媒の場合、蒸発温度は蒸発器入口の温度と露点温度との平均値となる。即ち、非共沸冷媒の場合、「蒸発温度=(蒸発器入口温度+露点温度)/2」と計算することができる。
【0057】
本明細書において、「吐出温度」とは圧縮機の吐出口における混合冷媒の温度を意味する。
【0058】
本明細書において、「蒸発圧力」とは蒸発温度での飽和圧力を意味する。
【0059】
本明細書において、「凝縮圧力」とは凝縮温度での飽和圧力を意味する。
【0060】
本明細書における不燃及び微燃の技術的意味は次の通りである。
【0061】
本明細書において冷媒が「不燃」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格において冷媒許容濃度のうち最も燃えやすい組成であるWCF(Worst case of formulation for flammability)組成が「クラス1」と判断されることを意味する。
【0062】
本明細書において冷媒が「微燃」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格においてWCF組成が「クラス2L」と判断されることを意味する。
【0063】
本明細書において冷媒が「弱燃」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格においてWCF組成が「クラス2」と判断されることを意味する。
【0064】
本明細書において、GWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいた値を意味する。
【0065】
(1-2)冷媒
詳細は後述するが、本開示の冷媒11、冷媒12、冷媒1、冷媒2、冷媒3、冷媒4、冷媒5、のいずれか1つ(「本開示の冷媒」と表記することがある)を冷媒として用いることができる。
【0066】
(1-3)冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
【0067】
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
【0068】
上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍装置における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。
【0069】
ここで、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0~1質量%であり、より好ましくは0~0.5質量%であり、更に好ましくは0~0.25質量%であり、特に好ましくは0~0.1質量%である。
【0070】
(1-3-1)水
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。
【0071】
冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0~0.1質量%であることが好ましく、0~0.075質量%であることがより好ましく、0~0.05質量%であることが更に好ましく、0~0.025質量%であることが特に好ましい。
【0072】
冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。水分を含むことによる上記効果を得る観点では、含水割合の下限値は0.001質量%程度である。例えば、0.001~0.1質量%、0.001~0.075質量%、0.001~0.05質量%、0.001~0.025質量%の範囲で含水割合を調整することができる。
【0073】
(1-3-2)トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0074】
本開示の冷媒組成物は、上記トレーサーを1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0075】
上記トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。好ましくは、本開示の冷媒に不可避的に混入する不純物とはなり得ない化合物をトレーサーとして選択する。
【0076】
上記トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。これらの中でも、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが好ましい。
【0077】
上記トレーサーとしては、具体的には、以下の化合物(以下、トレーサー化合物とも称する)がより好ましい。
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-41(フルオロメタン、CH3F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3
【0078】
上記トレーサー化合物は、10質量百万分率(ppm)~1000ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在し得る。上記トレーサー化合物は30ppm~500ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが好ましく、50ppm~300ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することがより好ましく、75ppm~250ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが更に好ましく、100ppm~200ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが特に好ましい。
【0079】
(1-3-3)紫外線蛍光塗料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0080】
上記紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0081】
上記紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ナフタルイミド及びクマリンが好ましい。
【0082】
上記紫外線蛍光染料の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%であり、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.25~1.5質量%が更に好ましく、0.5~1質量%が特に好ましい。
【0083】
(1-3-4)安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0084】
上記安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0085】
上記安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類、アミン類等が挙げられる。
【0086】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、及びニトロベンゼン、ニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0087】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0088】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0089】
上記安定剤としては、上記ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類以外にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0090】
上記安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%であり、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.25~1.5質量%が更に好ましく、0.5~1質量%が特に好ましい。
【0091】
なお、本開示の冷媒組成物の安定性の評価方法は、特に限定されず、一般的に用いられる手法で評価することができる。そのような手法の一例として、ASHRAE標準97-2007にしたがって遊離フッ素イオンの量を指標として評価する方法等が挙げられる。その他にも、全酸価(total acid number)を指標として評価する方法等も挙げられる。この方法は、例えば、ASTM D 974-06にしたがって行うことができる。
【0092】
(1-3-5)重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0093】
上記重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0094】
上記重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0095】
上記重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%であり、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.25~1.5質量%が更に好ましく、0.5~1質量%が特に好ましい。
【0096】
(1-3-6)冷媒組成物に含み得るその他の成分
本開示の冷媒組成物は、以下の成分も含み得るものとして挙げられる。
【0097】
例えば、前述の冷媒とは異なるフッ素化炭化水素を含有することができる。他の成分としてのフッ素化炭化水素は特に限定されず、HCFC-1122及びHCFC-124、CFC-1113からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素化炭化水素が挙げられる。
【0098】
また、その他の成分としては、例えば、式(A):CmHnXp[式中、Xはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子又は臭素原子を表し、mは1又は2であり、2m+2≧n+pであり、p≧1である。]で表される少なくとも一種のハロゲン化有機化合物を含有することができる。上記ハロゲン化有機化合物は特に限定されず、例えば、ジフルオロクロロメタン、クロロメタン、2-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が好ましい。
【0099】
また、その他の成分としては、例えば、式(B):CmHnXp[式中、Xはそれぞれ独立してハロゲン原子ではない原子を表し、mは1又は2であり、2m+2≧n+pであり、p≧1である。]で表される少なくとも一種の有機化合物を含有することができる。上記有機化合物は特に限定されず、例えば、プロパン、イソブタン等が好ましい。
【0100】
これらのフッ素化炭化水素、式(A)で表わされるハロゲン化有機化合物、及び式(B)で表わされる有機化合物の含有量は限定的ではないが、これらの合計量として、冷媒組成物の全量に対して0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0101】
(1-4)冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍装置における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍装置の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。
【0102】
上記冷凍機油の含有割合は、特に限定されず、冷凍機油含有作動流体全体に対して、通常、10~50質量%であり、12.5~45質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましく、17.5~35質量%が更に好ましく、20~30質量%が特に好ましい。
【0103】
(1-4-1)冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0104】
上記冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、本開示の冷媒の混合物(本開示の混合冷媒)との相溶性(miscibility)及び本開示の混合冷媒の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0105】
上記冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0106】
上記冷凍機油は、上記基油に加えて、更に添加剤を含んでいてもよい。
【0107】
上記添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0108】
上記冷凍機油としては、潤滑の点から、40℃における動粘度が5~400cStであるものが好ましい。
【0109】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、更に少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0110】
(1-4-2)相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0111】
上記相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0112】
上記相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが好ましい。
【0113】
(1-5)冷媒11,冷媒12
本開示の組成物は冷媒を含有し、当該冷媒としては、「冷媒11」及び「冷媒12」が挙げられる。以下、冷媒11及び冷媒12について、それぞれ説明する。
【0114】
(1-5-1)冷媒11
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfを含有する。この冷媒を「冷媒11」ということがある。
【0115】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が53.0~59.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が47.0~40.5質量%である。
【0116】
冷媒11は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと同等又はそれ以上のCOPを有すること、(3)R134aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有すること、及び(4)ASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であること、というR134a代替冷媒として望ましい諸特性を有する。
【0117】
本項目において、GWPが十分に小さいとは、GWPが通常100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下であることを意味する。
【0118】
冷媒11において、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(Z)の含有割合が59.5質量%を超える場合は、冷媒11が弱燃になるという問題が生じる。
【0119】
冷媒11は、市販のR134a用冷凍装置に対して運転時の消費電力を低減することができる観点から、R134aに対する冷凍能力が通常95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、更に好ましくは100%以上、特に好ましくは100.5%以上である。
【0120】
冷媒11は、GWPが100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0121】
冷媒11は、R134aに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が100%以上であるため、市販のR134a用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0122】
冷媒11は、エネルギー消費効率の点から、R134aに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が高いことが好ましい。具体的には、R134aに対するCOPは98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、101%以上であることが特に好ましい。
【0123】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が53.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が47.0~41.0質量%であることが好ましい。
【0124】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が54.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が46.0~41.0質量%であることがより好ましい。
【0125】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が55.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が45.0~41.0質量%であることが更に好ましい。
【0126】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が56.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が44.0~41.0質量%であることが特に好ましい。
【0127】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で、通常99.5質量%以上含有してもよい。本開示において、冷媒11全体におけるHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの合計量が99.7質量%以上であれば好ましく、99.8質量%以上であればより好ましく、99.9質量%
以上であれば更に好ましい。
【0128】
冷媒11は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒11全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒11は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0129】
本開示において、冷媒11は、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0130】
冷媒11が使用される冷凍サイクルでは、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがより一層好ましく、5℃以下であること更に好ましく、0℃未満であることが特に好ましい。
【0131】
冷媒11が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発圧力を0.02MPa以上にする観点から、蒸発温度は好ましくは-55℃以上、より好ましくは-50℃以上、更に好ましくは-45℃以上、特に好ましくは-40℃以上である。
【0132】
冷媒11が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温はより好ましくは-55℃以上15℃以下、より一層好ましくは-50℃以上10℃以下、更に好ましくは-45℃以上5℃以下、特に好ましくは-40℃以上0℃未満である。
【0133】
冷媒11は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒11は、冷媒11全体におけるHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0134】
冷媒11がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が53.0~59.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が47.0~40.5質量%であることが好ましい。
【0135】
冷媒11がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が54.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が46.0~41.0質量%であることがより一層好ましい。
【0136】
冷媒11がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が55.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が45.0~41.0質量%であることが更に好ましい。
【0137】
冷媒11がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が56.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が44.0~41.0質量%であることが特に好ましい。
【0138】
冷媒11がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が53.0~59.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が47.0~40.5質量%であり、冷媒11が、蒸発温度が-55℃~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0139】
冷媒11がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が54.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が46.0~41.0質量%であり、冷媒11が、蒸発温度が-50℃~10℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることがより好ましい。
【0140】
冷媒11が、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が55.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が45.0~41.0質量%であり、冷媒11が、蒸発温度が-45℃~5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが更に好ましい。
【0141】
冷媒11が、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が56.0~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が44.0~41.0質量%であり、冷媒11が、蒸発温度が-40℃以上0℃未満である冷凍サイクルを運転するために用いられることが特に好ましい。
【0142】
(1-5-2)冷媒12
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfを含有し、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が41.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が59.0~50.8質量%である。この冷媒を「冷媒12」ということがある。
【0143】
冷媒12は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと同等又はそれ以上のCOPを有すること、(3)R134aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有すること、及び(4)ASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であること、というR134a代替冷媒として望ましい諸特性を有する。
【0144】
本項目において、GWPが十分に小さいとは、GWPが通常100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下であることを意味する。
【0145】
冷媒12は、GWPが100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0146】
冷媒12は、市販のR134a用冷凍装置に対して運転時の消費電力を低減することができる観点から、R134aに対する冷凍能力が通常95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、更に好ましくは100%以上、特に好ましくは101%以上である。
【0147】
冷媒12は、R134aに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が100%以上であるため、市販のR134a用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0148】
冷媒12は、エネルギー消費効率の点から、R134aに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が高いことが好ましい。具体的には、R134aに対するCOPは98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、101%以上であることが特に好ましい。
【0149】
冷媒12は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が42.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.0~50.8質量%であることが好ましい。
【0150】
冷媒12は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が43.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が57.0~50.8質量%であることがより好ましい。
【0151】
冷媒12は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が44.0~49.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が56.0~51.0質量%であることが更に好ましい。
【0152】
冷媒12は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で、通常99.5質量%以上含有してもよい。本開示において、冷媒12全体におけるHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの合計量が99.7質量%以上であれば好ましく、99.8質量%以上であればより好ましく、99.9質量%以上であれば更に好ましい。
【0153】
冷媒12は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒12全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒12は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0154】
本開示において、冷媒12は、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0155】
冷媒12が使用される冷凍サイクルでは、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがより一層好ましく、5℃以下であること更に好ましく、0℃未満であることが特に好ましい。
【0156】
冷媒12が使用される冷凍サイクルでは、蒸発圧力を0.02MPa以上にする観点から、蒸発温度は好ましくは-55℃以上、より好ましくは-50℃以上、更に好ましくは-45℃以上、特に好ましくは-40℃以上である。
【0157】
冷媒12が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度はより好ましくは-55℃以上15℃以下、より一層好ましくは-50℃以上10℃以下、更に好ましくは-45℃以上5℃以下、特に好ましくは-40℃以上0℃未満である。
【0158】
冷媒12は、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒12は、冷媒12全体におけるHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0159】
冷媒12がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が41.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が59.0~50.8質量%であることが好ましい。
【0160】
冷媒12がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が42.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.0~50.8質量%であることがより好ましい。
【0161】
冷媒12がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が43.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が57.0~50.8質量%であることが更に好ましい。
【0162】
冷媒12がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が44.0~49.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が56.0~51.0質量%であることが特に好ましい。
【0163】
冷媒12がHFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が41.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が59.0~50.8質量%であり、冷媒12が、蒸発温度が-55℃~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0164】
冷媒12が、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が42.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.0~50.8質量%であり、冷媒12が、蒸発温度が-50℃~10℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることがより好ましい。
【0165】
冷媒12が、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が43.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が57.0~50.8質量%であり、冷媒12が、蒸発温度が-45℃~5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが更に好ましい。
【0166】
冷媒12が、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(Z)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(Z)の含有割合が44.0~49.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が56.0~51.0質量%であり、冷媒12が、蒸発温度が-40℃以上0℃未満である冷凍サイクルを運転するために用いられることが特に好ましい。
【0167】
(1-5-3)用途
本開示の冷媒を含有する組成物は、作動流体として、1)冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法、2)冷凍サイクルを運転する冷凍装置の運転方法等における既存の冷媒の用途に幅広く利用することができる。
【0168】
ここで、上記冷凍サイクルは、圧縮機を介しての冷媒(本開示の冷媒11及び冷媒12)を当該冷媒のみの状態、又は後述する冷媒組成物或いは冷凍機油含有作動流体の状態で冷凍装置の内部を循環させてエネルギー変換することを意味する。
【0169】
本開示には、冷凍方法における本開示の冷媒(又はそれらを含む組成物)の使用、冷凍装置などの運転方法における本開示の冷媒(又はそれらを含む組成物)の使用、更には本開示の冷媒(又はそれらを含む組成物)を有する冷凍装置等も包含されている。
【0170】
本開示の冷媒11を含有する組成物は、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。また、本開示の冷媒11を含有する組成物を蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いることにより、市販のR134a用冷凍装置に対して運転時のCOPが高くなるため、消費電力を低減することができる。
【0171】
冷媒11を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、室内や被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがより一層好ましく、5℃以下であること更に好ましく、0℃未満であることが特に好ましい。
【0172】
冷媒11を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、蒸発圧力を0.02MPa以上にする観点から、蒸発温度は好ましくは-55℃以上、より好ましくは-50℃以上、更に好ましくは-45℃以上、特に好ましくは-40℃以上である。
【0173】
冷媒11を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度はより好ましくは-55℃以上15℃以下、より一層好ましくは-50℃以上10℃以下、更に好ましくは-45℃以上5℃以下、特に好ましくは-40℃以上0℃未満である。
【0174】
冷媒11を含有する組成物は、凝縮温度が0~70℃である冷凍サイクルを運転するために用いることが好ましい。
【0175】
冷媒11を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、冷凍装置の寿命を延ばす観点から、凝縮温度が70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、55℃以下であることが更に好ましく、50℃以下であることが特に好ましい。」
冷媒11を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、室外機の結露を防止する観点から、凝縮温度が0℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることが更に好ましく、15℃以上であることが特に好ましい。
【0176】
本開示において、圧縮機を介して冷媒11を含有する組成物を循環させる冷凍サイクルを構成する装置とすることができる。
【0177】
冷媒12を含有する組成物は、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が-60~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0178】
冷媒12を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、室内及び被冷却物を十分に冷却する観点から、蒸発温度が15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがより一層好ましく、5℃以下であること更に好ましく、0℃未満であることが特に好ましい。
【0179】
冷媒12を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、蒸発圧力を0.02MPa以上にする観点から、蒸発温度は好ましくは-55℃以上、より好ましくは-50℃以上、更に好ましくは-45℃以上、特に好ましくは-40℃以上である。
【0180】
冷媒12を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度はより好ましくは-55℃以上15℃以下、より一層好ましくは-50℃以上10℃以下、更に好ましくは-45℃以上5℃以下、特に好ましくは-40℃以上0℃未満である。
【0181】
冷媒12を含有する組成物は、凝縮温度が0~70℃である冷凍サイクルを運転するために用いることが好ましい。
【0182】
冷媒12を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、冷凍装置の寿命を延ばす観点から、凝縮温度が70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、55℃以下であることが更に好ましく、50℃以下であることが特に好ましい。
【0183】
冷媒12を含有する組成物が使用される冷凍サイクルでは、室外機の結露を防止する観点から、凝縮温度が0℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることが更に好ましく、15℃以上であることが特に好ましい。
【0184】
本開示において、圧縮機を介して冷媒12を含有する組成物を循環させる冷凍サイクルを構成する装置とすることができる。
【0185】
本開示の冷媒11及び冷媒12(又はそれらを含む組成物)が適用できる冷凍装置としては、例えば、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。
【0186】
本開示の組成物は、R134a、R22、R12、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R428A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R450A、R454A、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R513B、R515A又はR515Bの代替冷媒としての使用に適している。これらの中でも、本開示の組成物は、R134aと同等又はそれ以上の成績係数(COP)及び冷凍能力(Capacity)を有すること、並びにGWPが十分に小さいこと、という特性を有するため、R134aの代替冷媒としての使用に特に適している。
【実施例1】
【0187】
以下に、冷媒11,冷媒12に関する実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0188】
試験例1-1
実施例1-1~1-3、比較例1-1~1-6及び参考例1-1(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0189】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、National Institute of Science and Technology(NIST)、Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0190】
<空調条件>
蒸発温度 10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0191】
「蒸発温度10℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が10℃であることを意味する。また、「凝縮温度40℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が40℃であることを意味する。
【0192】
試験例1-1の結果を表1に示す。表1は、本開示の冷媒11の実施例及び比較例を示している。表1中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R134aに対する割合(%)を示す。表1中、「飽和圧力(40℃)」とは、飽和温度40℃における飽和圧力を示す。表1中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。
【0193】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0194】
圧縮比は、次式により求めた。
圧縮比=凝縮圧力(Mpa)/蒸発圧力(Mpa)
【0195】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。R134aの燃焼性は、R134aの組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。
【0196】
燃焼速度が0cm/s~10cm/sとなる混合冷媒は「クラス2L(微燃)」、燃焼速度が10cm/s超となる混合冷媒は「クラス2(弱燃)」であるとした。R134aは火炎伝播がなかったため、「クラス1(不燃)」であるとした。表1中、「ASHRAE燃焼性区分」とは、この判定基準に基づく結果を示している。
【0197】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純
度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0198】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて測定を実施した。
【0199】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。
【0200】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g(23℃における相対湿度50%の水分量)
冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1質量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0201】
【表1】
【0202】
試験例1-2
実施例1-4~1-6、比較例1-7~1-12及び参考例1-2(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0203】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度45℃における飽和圧力、凝縮
圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル
理論計算を実施することにより求めた。
【0204】
<空調条件>
蒸発温度 5℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0205】
試験例1-2の結果を表2に示す。表2は、本開示の冷媒11の実施例及び比較例を示している。表2中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0206】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0207】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0208】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0209】
【表2】
【0210】
試験例1-3
実施例1-7~1-9、比較例1-13~1-18及び参考例1-3(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0211】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮
圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル
理論計算を実施することにより求めた。
【0212】
<空調条件>
蒸発温度 -10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0213】
試験例1-3の結果を表3に示す。表3は、本開示の冷媒11の実施例及び比較例を示している。表3中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0214】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0215】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0216】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0217】
【表3】
【0218】
試験例1-4
実施例1-10~1-12、比較例1-19~1-24及び参考例1-4(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0219】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮
圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル
理論計算を実施することにより求めた。
【0220】
<空調条件>
蒸発温度 -35℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0221】
試験例1-4の結果を表4に示す。表4は、本開示の冷媒11の実施例及び比較例を示している。表4中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0222】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0223】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0224】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0225】
【表4】
【0226】
試験例1-5
実施例1-13~1-15、比較例1-25~1-30及び参考例1-5(R134a)に
示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0227】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0228】
<空調条件>
蒸発温度 -50℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0229】
試験例1-5の結果を表5に示す。表5は、本開示の冷媒11の実施例及び比較例を示している。表5中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0230】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0231】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0232】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0233】
【表5】
【0234】
試験例1-6
実施例1-16~1-18、比較例1-31~1-36及び参考例1-6(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0235】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0236】
<空調条件>
蒸発温度 -65℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0237】
試験例1-6の結果を表6に示す。表6は、本開示の冷媒11の実施例及び比較例を示している。表6中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0238】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0239】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0240】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0241】
【表6】
【0242】
試験例2-1
実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-6及び参考例2-1(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0243】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、National Institute of Science and Technology(NIST)、Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0244】
<空調条件>
蒸発温度 10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0245】
「蒸発温度10℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が10℃であることを意味する。また、「凝縮温度40℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が40℃であることを意味する。
【0246】
試験例2-1の結果を表7に示す。表7は、本開示の冷媒12の実施例及び比較例を示している。表7中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R134aに対する割合(%)を示す。
【0247】
表7中、「飽和圧力(40℃)」とは、飽和温度40℃における飽和圧力を示す。表7中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。
【0248】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0249】
圧縮比は、次式により求めた。
圧縮比=凝縮圧力(Mpa)/蒸発圧力(Mpa)
【0250】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。R134aの燃焼性は、R134aの組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。
【0251】
燃焼速度が0cm/s~10cm/sとなる混合冷媒は「クラス2L(微燃)」、燃焼速度が10cm/s超となる混合冷媒は「クラス2(弱燃)」であるとした。R134aは火炎伝播がなかったため、「クラス1(不燃)」であるとした。表7中、「ASHRAE燃焼性区分」とは、この判定基準に基づく結果を示している。
【0252】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純
度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0253】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて測定を実施した。
【0254】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。
【0255】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g(23℃における相対湿度50%の水分量)
冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1質量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0256】
【表7】
【0257】
試験例2-2
実施例2-5~2-8、比較例2-7~2-12及び参考例2-2(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0258】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度45℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0259】
<空調条件>
蒸発温度 5℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0260】
試験例2-2の結果を表8に示す。表8は、本開示の冷媒12の実施例及び比較例を示している。表8中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0261】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0262】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0263】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0264】
【表8】
【0265】
試験例2-3
実施例2-9~2-12、比較例2-13~2-18及び参考例2-3(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0266】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0267】
<空調条件>
蒸発温度 -10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0268】
試験例2-3の結果を表9に示す。表9は、本開示の冷媒12の実施例及び比較例を示している。表9中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0269】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0270】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0271】
【表9】
【0272】
試験例2-4
実施例2-13~2-16、比較例2-19~2-24及び参考例2-4(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0273】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0274】
<空調条件>
蒸発温度 -35℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0275】
試験例2-4の結果を表10に示す。表10は、本開示の冷媒12の実施例及び比較例を示している。表10中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0276】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0277】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0278】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0279】
【表10】
【0280】
試験例2-5
実施例2-17~2-20、比較例2-25~2-30及び参考例2-5(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0281】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0282】
<空調条件>
蒸発温度 -50℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0283】
試験例2-5の結果を表11に示す。表11は、本開示の冷媒12の実施例及び比較例を示している。表11中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0284】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0285】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0286】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0287】
【表11】
【0288】
試験例2-6
実施例2-21~2-24、比較例2-31~2-36及び参考例2-6(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0289】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST、Refprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0290】
<空調条件>
蒸発温度 -65℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0291】
試験例2-6の結果を表12に示す。表12は、本開示の冷媒12の実施例及び比較例を示している。表12中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0292】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0293】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0294】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0295】
【表12】
【0296】
(1-6)冷媒1,冷媒2,冷媒3,冷媒4,冷媒5
本開示の組成物は冷媒を含有し、当該冷媒としては、「冷媒1」、「冷媒2」、「冷媒3」、「冷媒4」及び「冷媒5」が挙げられる。以下、冷媒1、冷媒2、冷媒3、冷媒4及び冷媒5について、それぞれ説明する。
【0297】
(1-6-1)冷媒1
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfを含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は35.0~65.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は65.0~35.0質量%である。この冷媒を「冷媒1」ということがある。
【0298】
本開示において、冷媒1は、蒸発温度が-75~-5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0299】
冷媒1は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R404Aと同等又はそれ以上のCOPを有すること、及び(3)R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有すること、という諸特性を有する。
【0300】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が35.0質量%以上であることにより、R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力が得られる。また、冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が65.0質量%以下であることにより、冷媒1の冷凍サイクルにおける飽和温度40℃の飽和圧力を好適な範囲(特に2.10Mpa以下)に維持することができる。
【0301】
冷媒1において、R404Aに対する冷凍能力が95%以上であればよいが、98%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、101%以上であることが更に好ましく、102%以上であることが特に好ましい。
【0302】
冷媒1は、GWPが100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0303】
冷媒1は、エネルギー消費効率の点から、R404Aに対する冷凍サイクルで消費された動
力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が高いことが好ましく、具体的には、R404Aに対するCOPは98%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、102%以上であることが特に好ましい。
【0304】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が40.5~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が59.5~41.0質量%であることが好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であり、R404Aに対するCOPが101%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99%以上となる。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃における飽和圧力が、1.75MPa以上2.00MPa以下となるため、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0305】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~41.0質量%であることがより好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であり、R404Aに対するCOPが101%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となる。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃における飽和圧力が、1.76MPa以上2.00MPa以下となるため、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0306】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~55.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~45.0質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であり、R404Aに対するCOPが101%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となる。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃における飽和圧力が、1.76MPa以上1.95MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0307】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~53.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~46.5質量%であることが特に好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.94MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0308】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~51.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~49.0質量%であることが格別に好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99%以上となること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.90MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0309】
冷媒1において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~50.8質量%であることが最も好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0310】
冷媒1において、飽和温度40℃の飽和圧力は通常2.10MPa以下、好ましくは2.00MPa以下、より好ましくは1.95MPa以下、更に好ましくは1.90MPa以下、特に好ましくは1.88MPa以下である。飽和温度40℃の飽和圧力がこのような範囲にあれば、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく冷媒1を適用することができる。
【0311】
冷媒1において、飽和温度40℃の飽和圧力は通常1.70MPa以上、好ましくは1.73MPa以上、より好ましくは1.74MPa以上、更に好ましくは1.75MPa以上、特に好ましくは1.76MPa以上である。飽和温度40℃の飽和圧力がこのような範囲にあれば、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく冷媒1を適用することができる。
【0312】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒1を使用した場合は、市販のR404A用冷凍装置の部材の寿命を延ばす観点から、吐出温度は好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
【0313】
冷媒1を蒸発温度が-75~-5℃である冷凍サイクルを運転するために用いることにより、R404Aと同等以上の冷凍能力が得られるという利点がある。
【0314】
本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度が-5℃を超えた場合は、圧縮比が2.5未満となり、冷凍サイクルとしての効率が悪くなる。本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度が-75℃未満である場合は、蒸発圧力が0.02MPa未満となり、圧縮機への冷媒の吸入が困難になる。なお、圧縮比は、次式により求めることができる。
圧縮比=凝縮圧力(Mpa)/蒸発圧力(Mpa)
【0315】
本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-7.5℃以下、より好ましくは-10℃以下、更に好ましくは-35℃以下である。
【0316】
本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0317】
本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上-5℃以下、より好ましくは-60℃以上-5℃以下、更に好ましくは-55℃以上-7.5℃以下、特に好ましくは-50℃以上-10℃以下である。
【0318】
本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、圧縮機への冷媒の吸入を向上させる観点から、蒸発圧力は0.02MPa以上が好ましく、0.03MPa以上がより好ましく、0.04MPa以上が更に好ましく、0.05MPa以上が特に好ましい。
【0319】
本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、冷凍サイクルとしての効率を向上させる観点から、圧縮比は2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、3.5以上が更に好ましく、4.0以上が特に好ましい。本開示の冷媒1が使用される冷凍サイクルにおいて、冷凍サイクルとしての効率を向上させる観点から、圧縮比は200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましく、50以下が特に好ましい。
【0320】
冷媒1は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で、通常99.5質量%以上含有してもよい。本開示において、冷媒1全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.7質量%以上であれば好ましく、99.8質量%以上であればより好ましく、99.9質量%以上であれば更に好ましい。
【0321】
冷媒1は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒1全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒1は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0322】
冷媒1は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒1は、冷媒1全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0323】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は通常35.0~65.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は通常65.0~35.0質量%である。冷媒1は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R404Aと同等又はそれ以上のCOPを有すること、及び(3)R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有すること、という諸特性を有する。
【0324】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が40.5~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が59.5~41.0質量%であることが好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であり、R404Aに対するCOPが101%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99%以上となる。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃における飽和圧力が、1.75MPa以上2.00MPa以下となるため、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0325】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~59.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~41.0質量%であることがより好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であり、R404Aに対するCOPが101%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となる。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃における飽和圧力が、1.76MPa以上2.00MPa以下となるため、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0326】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~55.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~45.0質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であり、R404Aに対するCOPが101%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となる。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃における飽和圧力が、1.76MPa以上1.95MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0327】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~53.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~46.5質量%であることが特に好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.94MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0328】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~51.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~49.0質量%であることが格別に好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99%以上となること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.90MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0329】
冷媒1が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~50.8質量%であることが最も好ましい。この場合、冷媒1はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であり、且つR404Aに対する冷凍能力が99.5%以上となること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒1は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0330】
(1-6-2)冷媒2
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfを含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が40.5~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が59.5~50.8質量%である。この冷媒を「冷媒2」ということがある。
【0331】
冷媒2は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R404Aと同等又はそれ以上のCOPを有すること、(3)R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有すること、及び(4)ASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.75MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0332】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が40.5質量%以上であることにより、R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力が得られる。また、冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が49.2質量%以下であることにより、冷媒2の冷凍サイクルにおける飽和温度40℃の飽和圧力を好適な範囲(特に2.10Mpa以下)に維持することができる。
【0333】
冷媒2において、R404Aに対する冷凍能力が99%以上であればよいが、100%以上であることが好ましく、101%以上であることがより好ましく、102%以上であることが更に好ましく、103%以上であることが特に好ましい。
【0334】
冷媒2は、GWPが100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0335】
冷媒2は、エネルギー消費効率の点から、R404Aに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が高いことが好ましく、具体的には、R404Aに対するCOPは98%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、101%以上であることが更に好ましく、102%以上であることが特に好ましい。
【0336】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~50.8質量%であることが好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が99.5%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0337】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が43.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が57.0~50.8質量%であることがより好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が101%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.78MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0338】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が44.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が56.0~50.8質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が101%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.80MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0339】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が45.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が55.0~50.8質量%であることが特に好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が102%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.81MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0340】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が45.0~48.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が55.0~52.0質量%であることが格別に好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102.5%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が102.5%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.81MPa以上1.87MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0341】
冷媒2において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が45.0~47.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が55.0~53.0質量%であることが最も好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102.5%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が102.5%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.81MPa以上1.85MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0342】
冷媒2において、飽和温度40℃の飽和圧力は通常2.10MPa以下、好ましくは2.00MPa以下、より好ましくは1.95MPa以下、更に好ましくは1.90MPa以下、特に好ましくは1.88MPa以下である。飽和温度40℃の飽和圧力がこのような範囲にあれば、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく冷媒2を適用することができる。
【0343】
冷媒2において、飽和温度40℃の飽和圧力は通常1.70MPa以上、好ましくは1.73MPa以上、より好ましくは1.74MPa以上、更に好ましくは1.75MPa以上、特に好ましくは1.76MPa以上である。飽和温度40℃の飽和圧力がこのような範囲にあれば、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく冷媒2を適用することができる。
【0344】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒2を使用した場合は、市販のR404A用冷凍装置の部材の寿命を延ばす観点から、吐出温度は好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
【0345】
本開示において、冷媒2は、R404Aと同等以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0346】
本開示の冷媒2が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは15℃以下、より好ましくは5℃以下、更に好ましくは0℃以下、特に好ましくは-5℃以下である。
【0347】
本開示の冷媒2が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0348】
本開示の冷媒2が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上15℃以下、より好ましくは-60℃以上5℃以下、更に好ましくは-55℃以上0℃以下、特に好ましくは-50℃以上-5℃以下である。
【0349】
本開示の冷媒2が使用される冷凍サイクルにおいて、圧縮機への冷媒の吸入を向上させる観点から、蒸発圧力は0.02MPa以上が好ましく、0.03MPa以上がより好ましく、0.04MPa以上が更に好ましく、0.05MPa以上が特に好ましい。
【0350】
本開示の冷媒2が使用される冷凍サイクルにおいて、冷凍サイクルとしての効率を向上させる観点から、圧縮比は2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、3.5以上が更に好ましく、4.0以上が特に好ましい。
【0351】
冷媒2は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で、通常99.5質量%以上含有してもよい。本開示において、冷媒2全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.7質量%以上であれば好ましく、99.8質量%以上であればより好ましく、99.9質量%以上であれば更に好ましい。
【0352】
冷媒2は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒2全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒2は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0353】
冷媒2は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒2は、冷媒2全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0354】
冷媒2が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は通常40.5~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は通常59.5~50.8質量%である。冷媒2は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R404Aと同等又はそれ以上のCOPを有すること、(3)R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有すること、及び(4)ASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.75MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0355】
冷媒2が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が41.3~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が58.7~50.8質量%であることが好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が99.5%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.76MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0356】
冷媒2が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が43.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が57.0~50.8質量%であることがより好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が101%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.78MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0357】
冷媒2が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が44.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が56.0~50.8質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が101%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.80MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0358】
冷媒2が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が45.0~49.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が55.0~50.8質量%であることが特に好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が102%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.81MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0359】
冷媒2が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が45.0~48.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が55.0~52.0質量%であることが格別に好ましい。この場合、冷媒2はGWPが100以下であること、R404Aに対するCOPが102.5%以上であること、R404Aに対する冷凍能力が102.5%以上であること、及びASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒2は、飽和温度40℃の飽和圧力が、1.81MPa以上1.87MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0360】
(1-6-3)冷媒3
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfを含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が31.1~39.8質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が68.9~60.2質量%である。この冷媒を「冷媒3」ということがある。
【0361】
冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと同等程度のCOPを有すること、(3)R134aと比較して150%以上の冷凍能力を有すること、及び(4)吐出温度が90℃以下であることという、諸特性を有する。
【0362】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が31.1質量%以上であることにより、R134aと比較して150%以上の冷凍能力が得られる。また、冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が39.8質量%以下であることにより、冷媒3の冷凍サイクルにおける吐出温度を90℃以下に維持し、R134a用冷凍装置の部材の寿命を長く確保することができる。
【0363】
冷媒3において、R134aに対する冷凍能力が150%以上であればよいが、151%以上であることが好ましく、152%以上であることがより好ましく、153%以上であることが更に好ましく、154%以上であることが特に好ましい。
【0364】
冷媒3において、冷凍サイクルにおける吐出温度は90.0℃以下であることが好ましく、89.7℃以下であることがより好ましく、89.4℃以下であることが更に好ましく、89.0℃以下であることが特に好ましい。
【0365】
冷媒3は、GWPが100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0366】
冷媒3は、エネルギー消費効率の点から、R134aに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が高いことが好ましく、具体的には、R134aに対するCOPは90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましく、91.5%以上であることが更に好ましく、92%以上であることが特に好ましい。
【0367】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は通常31.1~39.8質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は通常68.9~60.2質量%である。冷媒3は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと同等程度のCOPを有すること、(3)R134aと比べて150%以上の冷凍能力を有すること、及び(4)吐出温度が90.0℃以下であることという、諸特性を有する。
【0368】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が31.1~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が68.9~62.1質量%であることが好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて150%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0369】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が32.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が68.0~62.1質量%であることがより好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて151%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0370】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が33.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が67.0~62.1質量%であることがより一層好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて152%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0371】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が34.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が66.0~62.1質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて153%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0372】
冷媒3において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が35.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が65.0~62.1質量%であることが特に好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて155%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0373】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒3を使用した場合は、市販のR134a用冷凍装置の部材の寿命を延ばす観点から、吐出温度は好ましくは90.0℃以下、より好ましくは89.7℃以下、更に好ましくは89.4℃以下、特に好ましくは89.0℃以下である。
【0374】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒3を使用した場合は、冷凍サイクルでは冷媒の液化(凝縮)の過程を必要とするので、臨界温度は冷媒を液化させるための冷却水または冷却空気の温度より著しく高いことが必要となる。このような観点から、本開示の冷媒3が使用される冷凍サイクルにおいて、臨界温度は好ましくは80℃以上、より好ましくは81℃以上、更に好ましくは81.5℃以上、特に82℃以上である。
【0375】
本開示において、冷媒3は、R134aと比較して150%以上の冷凍能力を得る観点から、通常、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0376】
本開示の冷媒3が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは15℃以下、より好ましくは5℃以下、更に好ましくは0℃以下、特に好ましくは-5℃以下である。
【0377】
本開示の冷媒3が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0378】
本開示の冷媒3が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上15℃以下、より好ましくは-60℃以上5℃以下、更に好ましくは-55℃以上0℃以下、特に好ましくは-50℃以上-5℃以下である。
【0379】
本開示の冷媒3が使用される冷凍サイクルにおいて、性能向上の観点から、冷媒の臨界温度は80℃以上が好ましく、81℃以上がより好ましく、81.5℃以上が更に好ましく、82℃以上が特に好ましい。
【0380】
冷媒3は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で、通常99.5質量%以上含有してもよい。本開示において、冷媒3全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.7質量%以上であれば好ましく、99.8質量%以上であればより好ましく、99.9質量%以上であれば更に好ましい。
【0381】
冷媒3は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒3全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒3は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0382】
冷媒3は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒3は、冷媒3全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0383】
冷媒3が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は通常31.1~39.8質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は通常68.9~60.2質量%である。冷媒3は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと同等程度のCOPを有すること、(3)R134aと比べて150%以上の冷凍能力を有すること、及び(4)吐出温度が90℃以下であることという、諸特性を有する。
【0384】
冷媒3が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が31.1~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が68.9~62.1質量%であることが好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて150%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0385】
冷媒3が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が32.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が68.0~62.1質量%であることがより好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて151%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0386】
冷媒3が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が33.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が67.0~62.1質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて152%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0387】
冷媒3が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が34.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が66.0~62.1質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aとと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて153%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0388】
冷媒3が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が35.0~37.9質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が65.0~62.1質量%であることが更に好ましい。この場合、冷媒3は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R134aと比較して92%以上のCOPを有すること、(3)R134aと比べて155%以上の冷凍能力を有すること、(4)吐出温度が90.0℃以下であること、及び(5)臨界温度が81℃以上であることという、諸特性を有する。
【0389】
(1-6-4)冷媒4
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfを含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が21.0~28.4質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が79.0~71.6質量%である。この冷媒を「冷媒4」ということがある。
【0390】
冷媒4は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R1234yfと同等程度のCOPを有すること、及び(3)R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を有すること、及び(4)ASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.380MPa以上0.420MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0391】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が21.0質量%以上であることにより、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力が得られる。また、冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が28.4質量%以下であることにより、83.5℃以上の臨界温度を確保し易くなる。
【0392】
冷媒4において、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であればよいが、142%以上であることが好ましく、143%以上であることがより好ましく、145%以上であることが更に好ましく、146%以上であることが特に好ましい。
【0393】
冷媒4は、GWPが100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0394】
冷媒4は、エネルギー消費効率の点から、R1234yfに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が高いことが好ましく、具体的には、R1234yfに対するCOPは95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましく、97%以上であることが更に好ましく、98%以上であることが特に好ましい。
【0395】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は好ましくは21.5~28.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は好ましくは78.5~72.0質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が65.0℃以下であること、臨界温度が83.5℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.383MPa以上0.418MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0396】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合はより好ましくは22.0~27.7質量%であり、HFO-1234yfの含有割合はより好ましくは78.0~72.3質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が65.0℃以下であること、臨界温度が83.5℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.385MPa以上0.417MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0397】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は更に好ましくは22.5~27.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は更に好ましくは77.5~72.5質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.8℃以下であること、臨界温度が83.8℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.388MPa以上0.414MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0398】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は特に好ましくは23.0~27.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は特に好ましくは77.0~72.8質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が141%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.8℃以下であること、臨界温度が83.8℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.390MPa以上0.414MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0399】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は格別に好ましくは23.5~27.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は格別に好ましくは76.5~73.0質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が142%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.8℃以下であること、臨界温度が83.8℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.390MPa以上0.414MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0400】
冷媒4において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は最も好ましくは24.0~26.7質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は最も好ましくは76.0~73.3質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が144%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.6℃以下であること、臨界温度が84.0℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.396MPa以上0.411MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0401】
冷媒4において、飽和温度-10℃の飽和圧力は通常0.420MPa以下、好ましくは0.418MPa以下、より好ましくは0.417MPa以下、更に好ましくは0.415MPa以下、特に好ましくは0.413MPa以下である。このような範囲にあれば、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく冷媒4を適用することができる。
【0402】
冷媒4において、飽和温度-10℃の飽和圧力は通常0.380MPa以上、好ましくは0.385MPa以上、より好ましくは0.390MPa以上、更に好ましくは0.400MPa以上、特に好ましくは0.410MPa以上である。これらの場合、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく冷媒4を適用することができる。
【0403】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒4を使用した場合は、市販のR1234yf用冷凍装置の部材の寿命を延ばす観点から、吐出温度は好ましくは65℃以下、より好ましくは64.8℃以下、更に好ましくは64.7℃以下、特に好ましくは64.5℃以下である。
【0404】
本開示において、冷媒4は、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度が-75~5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0405】
本開示の冷媒4が使用される冷凍サイクルにおいて、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度は好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは-5℃以下、特に好ましくは-10℃以下である。
【0406】
本開示の冷媒4が使用される冷凍サイクルにおいて、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度は好ましくは-75℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0407】
本開示の冷媒4が使用される冷凍サイクルにおいて、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度は好ましくは-65℃以上0℃以下、より好ましくは-60℃以上-5℃以下、更に好ましくは-55℃以上-7.5℃以下、特に好ましくは-50℃以上-10℃以下である。
【0408】
本開示の冷媒4が使用される冷凍サイクルにおいて、市販のR1234yf用冷凍装置の部材の寿命を延ばす観点から、吐出温度は65.0℃以下が好ましく、64.9℃以下がより好ましく、64.8℃以下が更に好ましく、64.7℃以下が特に好ましい。
【0409】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒4を使用した場合は、冷凍サイクルでは冷媒の液化(凝縮)の過程を必要とするので、臨界温度は冷媒を液化させるための冷却水または冷却空気の温度より著しく高いことが必要となる。このような観点から、本開示の冷媒4が使用される冷凍サイクルにおいて、臨界温度は83.5℃以上が好ましく、83.8℃以上がより好ましく、84.0℃以上が更に好ましく、84.5℃以上が特に好ましい。
【0410】
冷媒4は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒4全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒4は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0411】
冷媒4は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒4は、冷媒4全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0412】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は通常21.0~28.4質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は通常79.0~71.6質量%である。冷媒4は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R1234yfと同等程度のCOPを有すること、及び(3)R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を有すること、及び(4)ASHRAEの規格で微燃性(クラス2L)であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.380MPa以上0.420MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0413】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は好ましくは21.5~28.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は好ましくは78.5~72.0質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が65.0℃以下であること、臨界温度が83.5℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.383MPa以上0.418MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0414】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合はより好ましくは22.0~27.7質量%であり、HFO-1234yfの含有割合はより好ましくは78.0~72.3質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が65.0℃以下であること、臨界温度が83.5℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.385MPa以上0.417MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0415】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は更に好ましくは22.5~27.5質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は更に好ましくは77.5~72.5質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が140%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.8℃以下であること、臨界温度が83.8℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.388MPa以上0.414MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0416】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は特に好ましくは23.0~27.2質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は特に好ましくは77.0~72.8質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が141%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.8℃以下であること、臨界温度が83.8℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.390MPa以上0.414MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0417】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は格別に好ましくは23.5~27.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は格別に好ましくは76.5~73.0質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が142%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.8℃以下であること、臨界温度が83.8℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.390MPa以上0.414MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0418】
冷媒4が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は最も好ましくは24.0~26.7質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は最も好ましくは76.0~73.3質量%である。この場合、冷媒4は、GWPが100以下であること、R1234yfに対するCOPが98%以上であること、R1234yfに対する冷凍能力が144%以上であること、ASHRAEの規格で微燃性(クラス2Lであること)、吐出温度が64.6℃以下であること、臨界温度が84.0℃以上であることという、諸特性を有する。更にこの場合、冷媒4は、飽和温度-10℃の飽和圧力が、0.396MPa以上0.411MPa以下となり、市販のR1234yf用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができる。
【0419】
(1-6-5)冷媒5
本開示の組成物に含まれる冷媒は、一つの態様において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfを含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は12.1~72.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は87.9~28.0質量%である。この冷媒を「冷媒5」ということがある。
【0420】
本開示において、冷媒5は、車載用空調機器に用いられる。
【0421】
冷媒5は、上述の構成を有することによって、(1)GWPが十分小さいこと(100以下)、(2)R1234yfと同等程度のCOPを有すること、(3)R1234yfと比較して128%以上の冷凍能力を有すること、及び(4)燃焼速度が10.0cm/s未満であること、という諸特性を有する。
【0422】
冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が12.1質量%以上であることにより、電気自動車でヒートポンプを用いて暖房する場合に有利な-40℃以下の沸点を確保することができる。なお、-40℃以下の沸点は-40℃で飽和圧力が大気圧以上であることを意味し、上記用途において沸点は-40℃以下でより低い方が好ましい。また、冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)の含有割合が72.0質量%以下であることにより、車載用空調機器に用いる場合の安全性に寄与する10.0cm/s未満の燃焼速度を確保することができる。
【0423】
冷媒5において、R1234yfに対する冷凍能力が128%以上であればよいが、130%以上であることが好ましく、140%以上であることがより好ましく、150%以上であることが更に好ましく、160%以上であることが特に好ましい。
【0424】
冷媒5は、GWPが5以上100以下であることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。
【0425】
冷媒5において、エネルギー消費効率の点から、R1234yfに対する冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))が100%以上であればよい。
【0426】
冷媒5を車載用空調機器に用いることにより、電気ヒーターに比べて消費電力の少ないヒートポンプによる暖房が可能になるという利点がある。
【0427】
冷媒5において、上記空調機器が、ガソリン車用、ハイブリッド自動車用、電気自動車用又は水素自動車用であることが好ましい。これらの中でも、ヒートポンプにより車室内を暖房しつつ、車の走行距離を向上させる観点から、冷媒5において、上記空調機器が電気自動車用であることが特に好ましい。即ち、本開示において、冷媒5を電気自動車に用いることが特に好ましい。
【0428】
本開示において、冷媒5は車載用空調機器に使用される。本開示において、冷媒5はガソリン車の空調機器、ハイブリッド自動車の空調機器、電気自動車の空調機器又は水素自動車の空調機器に使用されることが好ましい。本開示において、冷媒5は、電気自動車の空調機器に使用されることが特に好ましい。
【0429】
本開示において、ヒートポンプにより車室内を暖房する際、-40℃で大気圧以上の圧力が必要となるため、冷媒5の沸点は、好ましくは-51.2~-40.0℃、より好ましくは-50.0~-42.0℃、更に好ましくは-48.0~-44.0℃である。
【0430】
冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は好ましくは15.0~65.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は好ましくは85.0~35.0質量%である。
【0431】
冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合はより好ましくは20.0~55.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合はより好ましくは80.0~45.0質量%である。
【0432】
冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は更に好ましくは25.0~50.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は更に好ましくは75.0~50.0質量%である。
【0433】
冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は特に好ましくは30.0~45.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は特に好ましくは70.0~55.0質量%である。
【0434】
冷媒5において、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は最も好ましくは35.0~40.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は最も好ましくは65.0~60.0質量%である。
【0435】
本開示において、冷媒5の燃焼速度は10.0cm/s未満であることが好ましく、5.0cm/s未満であることがより好ましく、3.0cm/s未満であることが更に好ましく、2.0cm/sであることが特に好ましい。
【0436】
本開示において、冷媒5は、R1234yfと同等又はそれ以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度が-40~10℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0437】
本開示において、冷凍サイクルを運転するために冷媒5を使用した場合、吐出温度は好ましくは79℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下、特に好ましくは67℃以下である。
【0438】
冷媒5は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で、通常99.5質量%以上含有してもよい。本開示において、冷媒5全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの合計量が99.7質量%以上であれば好ましく、99.8質量%以上であればより好ましく、99.9質量%以上であれば更に好ましい。
【0439】
冷媒5は、上記の特性を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfに加えて、更に他の冷媒を含有することができる。この場合、冷媒5全体における他の冷媒の含有割合は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。他の冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。冷媒5は、他の冷媒を単独で含んでいてもよいし、他の冷媒を2種以上含んでいてもよい。
【0440】
冷媒5は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなることが特に好ましい。換言すると、冷媒5は、冷媒5全体におけるHFO-1132(E)及びHFO-1234yfの総濃度が100質量%であることが特に好ましい。
【0441】
冷媒5が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は通常12.1~72.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は通常87.9~28.0質量%である。
【0442】
冷媒5が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は好ましくは15.0~65.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は好ましくは85.0~35.0質量%である。
【0443】
冷媒5が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合はより好ましくは20.0~55.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合はより好ましくは80.0~45.0質量%である。
【0444】
冷媒5が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は更に好ましくは25.0~50.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は更に好ましくは75.0~50.0質量%である。
【0445】
冷媒5が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は特に好ましくは30.0~45.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は特に好ましくは70.0~55.0質量%である。
【0446】
冷媒5が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる場合、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は最も好ましくは35.0~40.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は最も好ましくは65.0~60.0質量%である。
【0447】
(1-6-6)用途
本開示の冷媒を含有する組成物は、作動流体として、1)冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法、2)冷凍サイクルを運転する冷凍装置の運転方法等における既存の冷媒の用途に幅広く利用することができる。
【0448】
ここで、上記冷凍サイクルは、圧縮機を介しての冷媒(本開示の冷媒1、冷媒2、冷媒3、冷媒4及び冷媒5)を当該冷媒のみの状態、又は後述する冷媒組成物或いは冷凍機油含有作動流体の状態で冷凍装置の内部を循環させてエネルギー変換することを意味する。
【0449】
本開示の冷媒を含有する組成物は、特に限定されないが、蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける用途に適している。蒸気圧縮式冷凍サイクルとは、冷媒を、(1)気体状態で圧縮機で圧縮し、(2)凝縮器で冷却して圧力が高い液体状態に変え、(3)膨張弁で圧力を下げ、さらに(4)蒸発器において低温で気化させて気化熱により熱を奪い取る、という一連のサイクルからなる。気体状態の冷媒を圧縮する方式によりターボ(遠心式)、レシプロ、ツインスクリュー、シングルスクリュー及びスクロール圧縮機等に分類することができ、熱容量、圧縮比及び大きさにより選択することができる。
【0450】
本開示の冷媒を含有する組成物は、特に限定されないが、大型チラー冷凍機、特にターボ(遠心式)圧縮機に用いられる冷媒に適している。
【0451】
本開示には、冷凍方法における本開示の冷媒(又はそれらを含む組成物)の使用、冷凍装置などの運転方法における本開示の冷媒(又はそれらを含む組成物)の使用、更には本開示の冷媒(又はそれらを含む組成物)を有する冷凍装置等も包含されている。
【0452】
本開示の冷媒1を含有する組成物は、蒸発温度が-75~-5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられる。
【0453】
本開示の冷媒1を含有する組成物を蒸発温度が-75~-5℃である冷凍サイクルを運転するために用いることにより、R404Aと同等以上の冷凍能力が得られるという利点がある。
【0454】
本開示の冷媒1を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-7.5℃以下、より好ましくは-10℃以下、更に好ましくは-35℃以下である。
【0455】
本開示の冷媒1を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0456】
本開示の冷媒2を含有する組成物は、R404Aと同等以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度が-75~5℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0457】
本開示の冷媒2を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは0℃以下、より好ましくは-5℃以下、更に好ましくは-7.5℃以下、特に好ましくは-10℃以下である。
【0458】
本開示の冷媒2を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0459】
本開示の冷媒3を含有する組成物は、R134aと同等又はそれ以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度が-75~15℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0460】
本開示の冷媒3を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは15℃以下、より好ましくは5℃以下、更に好ましくは0℃以下、特に好ましくは-5℃以下である。
【0461】
本開示の冷媒3を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0462】
本開示の冷媒3を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、蒸発温度は好ましくは-65℃以上15℃以下、より好ましくは-60℃以上5℃以下、更に好ましくは-55℃以上0℃以下、特に好ましくは-50℃以上-5℃以下である。
【0463】
本開示の冷媒4を含有する組成物は、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度が-75~20℃である冷凍サイクルを運転するために用いられることが好ましい。
【0464】
本開示の冷媒4を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度は好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下、特に好ましくは-10℃以下である。
【0465】
本開示の冷媒4を含有する組成物が使用される冷凍サイクルにおいて、R1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を得る観点から、蒸発温度は好ましくは-75℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。
【0466】
本開示の冷媒1、冷媒2、冷媒3及び冷媒4(又はそれらを含む組成物)が適用できる冷凍装置としては、例えば、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機又はスクリュー冷凍機が好ましいものとして挙げられる。これらの中でも、車載用空調機器がより好ましい。車載用空調機器の中でも、ガソリン車用空調機器、ハイブリッド自動車用空調機器、電気自動車用空調機器又は水素自動車用空調機器が更に好ましい。車載用空調機器の中でも、電気自動車用空調機器が特に好ましい。
【0467】
本開示の冷媒1又は2を含有する組成物は、R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507又はR513Aの代替冷媒としての使用に適している。本開示の冷媒1又は2を含有する組成物は、R22、R404A、R407F、R407H、R448A、R449A、R454C、R455A又はR465Aの代替冷媒としての使用により適している。更に、本開示の冷媒1又は2を含有する組成物は、現在汎用されているR404Aと同等の冷凍能力を有し、且つGWPが十分小さいという性能を有するため、R404Aの代替冷媒としての使用に特に適している。
【0468】
本開示の冷媒3を含有する組成物は、R134a、R1234yf又はCO2の代替冷媒としての使用に適している。本開示の冷媒3を含有する組成物は、R134aの代替冷媒としての使用により適している。更に、本開示の冷媒3を含有する組成物は、現在汎用されているR134aと比較して150%以上の冷凍能力を有し、且つGWPが十分小さいという性能を有するため、R134aの代替冷媒としての使用に特に適している。
【0469】
本開示の冷媒4を含有する組成物は、R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒としての使用に適している。本開示の冷媒4を含有する組成物は、R12、R134a、R404A、R407C、R449C、R454C、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒としての使用により適している。更に、本開示の冷媒4を含有する組成物は、現在汎用されているR1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を有し、且つGWPが十分小さいという性能を有するため、R1234yfの代替冷媒としての使用に特に適している。
【0470】
本開示の冷媒5を含有する組成物は、R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒としての使用に適している。本開示の冷媒5を含有する組成物は、R12、R134a又はR1234yfの代替冷媒としての使用により適している。更に、本開示の冷媒5を含有する組成物は、現在汎用されているR1234yfと比較して140%以上の冷凍能力を有し、且つGWPが十分小さいという性能を有するため、R1234yfの代替冷媒としての使用に特に適している。
【0471】
本開示の冷媒5を含有する組成物は、車載用空調機器に用いることが好ましい。また、当該車載用空調機器が、ガソリン車用空調機器、ハイブリッド自動車用空調機器、電気自動車用空調機器又は水素自動車用空調機器であることが好ましい。これらの中でも、当該車載用空調機器が電気自動車用空調機器であることが特に好ましい。即ち、本開示において、冷媒5を含有する組成物を、電気自動車に用いることが特に好ましい。
【実施例
【0472】
以下に、冷媒1,冷媒2,冷媒3,冷媒4,冷媒5に関する実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0473】
試験例1-1
実施例1-1~1-13、比較例1-1~1-2及び参考例1-1(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0474】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0475】
蒸発温度 -50℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0476】
「蒸発温度-50℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が-50℃であることを意味する。また、「凝縮温度40℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が40℃であることを意味する。
【0477】
試験例1-1の結果を表101に示す。表101は、本開示の冷媒1の実施例及び比較例を示している。表101中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R404Aに対する割合(%)を示す。
表101中、「飽和圧力(40℃)」とは、飽和温度40℃における飽和圧力を示す。表101中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。
【0478】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0479】
圧縮比は、次式により求めた。
圧縮比=凝縮圧力(Mpa)/蒸発圧力(Mpa)
【0480】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。燃焼速度が0cm/s~10cm/sとなるものは「クラス2L(微燃)」、燃焼速度が10cm/s超となるものは「クラス2(弱燃)」であるとし、火炎伝播がないものは「クラス1(不燃)」であるとした。表1中、「ASHRAE燃焼性区分」とは、この判定基準に基づく結果を示している。
【0481】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0482】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて測定を実施した。
【0483】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。
【0484】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g(23℃における相対湿度50%の水分量)冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1質量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0485】
【表101】
【0486】
試験例1-2
実施例1-14~1-26、比較例1-3~1-4及び参考例1-2(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0487】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
蒸発温度 -35℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0488】
試験例1-2の結果を表102に示す。表102は、本開示の冷媒1の実施例及び比較例を示している。表102中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0489】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0490】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0491】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0492】
【表102】
【0493】
試験例1-3
実施例1-27~1-39、比較例1-5~1-6及び参考例1-3(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0494】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0495】
蒸発温度 -10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0496】
試験例1-3の結果を表103に示す。表103は、本開示の冷媒1の実施例及び比較例を示している。表103中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0497】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0498】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0499】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0500】
【表103】
【0501】
試験例1-4
比較例1-7~1-21及び参考例1-4(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0502】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0503】
蒸発温度 -80℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0504】
試験例1-4の結果を表104に示す。表104は、本開示の冷媒1の比較例を示している。表104中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0505】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0506】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0507】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0508】
【表104】
【0509】
試験例1-5
比較例1-22~1-36及び参考例1-5(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0510】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0511】
蒸発温度 10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0512】
試験例1-5の結果を表105に示す。表105は、本開示の冷媒1の比較例を示している。表105中、各用語の意味は、試験例1-1と同様である。
【0513】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例1-1と同様にして求めた。
【0514】
混合冷媒の燃焼性は、試験例1-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例1-1と同様にして行った。
【0515】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例1-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0516】
【表105】
【0517】
試験例2-1
実施例2-1~2-6、比較例2-1~2-9及び参考例2-1(R404A)に示される
混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0518】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0519】
蒸発温度 -50℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0520】
「蒸発温度-50℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が-50℃であることを意味する。また、「凝縮温度40℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が40℃であることを意味する。
【0521】
試験例2-1の結果を表106に示す。表106は、本開示の冷媒2の実施例及び比較例を示している。表106中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R404Aに対する割合(%)を示す。
【0522】
表106中、「飽和圧力(40℃)」とは、飽和温度40℃における飽和圧力を示す。表106中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。
【0523】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0524】
圧縮比は、次式により求めた。
圧縮比=凝縮圧力(Mpa)/蒸発圧力(Mpa)
【0525】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。燃焼速度が0cm/s~10cm/sとなるものは「クラス2L(微燃)」、燃焼速度が10cm/s超となるものは「クラス2(弱燃)」であるとし、火炎伝播がないものは「クラス1(不燃)」であるとした。表106中、「ASHRAE燃焼性区分」とは、この判定基準に基づく結果を示している。
【0526】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0527】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて測定を実施した。
【0528】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。
【0529】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g(23℃における相対湿度50%の水分量)冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1質量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0530】
【表106】
【0531】
試験例2-2
実施例2-7~2-12、比較例2-10~2-18及び参考例2-2(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0532】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0533】
蒸発温度 -35℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0534】
試験例2-2の結果を表107に示す。表107は、本開示の冷媒2の実施例及び比較例を示している。表107中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0535】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0536】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0537】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0538】
【表107】
【0539】
試験例2-3
実施例2-13~2-18、比較例2-19~2-27及び参考例2-3(R404A)に
示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0540】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0541】
蒸発温度 -10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0542】
試験例2-3の結果を表108に示す。表108は、本開示の冷媒2の実施例及び比較例を示している。表108中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0543】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0544】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0545】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0546】
【表108】
【0547】
試験例2-4
実施例2-19~2-24、比較例2-28~2-36及び参考例2-4(R404A)に
示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0548】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0549】
蒸発温度 -80℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0550】
試験例2-4の結果を表109に示す。表109は、本開示の冷媒2の実施例及び比較例を示している。表109中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0551】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0552】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0553】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0554】
【表109】
【0555】
試験例2-5
実施例2-25~2-30、比較例2-37~2-45及び参考例2-5(R404A)に
示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0556】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度40℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、NIST及びRefprop 9.0を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0557】
蒸発温度 10℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
上記用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0558】
試験例2-5の結果を表110に示す。表110は、本開示の冷媒2の実施例及び比較例を示している。表110中、各用語の意味は、試験例2-1と同様である。
【0559】
成績係数(COP)及び圧縮比は、試験例2-1と同様にして求めた。
【0560】
混合冷媒の燃焼性は、試験例2-1と同様にして判断した。燃焼速度試験は、試験例2-1と同様にして行った。
【0561】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて、試験例2-1と同様の方法及び試験条件で測定した。
【0562】
【表110】
【0563】
試験例3
実施例3-1~3-5、比較例3-1~3-5、参考例3-1(R134a)及び参考例3-2(R404A)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0564】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度、飽和温度45℃における飽和圧力、凝縮圧力及び蒸発圧力は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0565】
蒸発温度 -10℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0566】
「蒸発温度-10℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が-10℃であることを意味する。また、「凝縮温度45℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が45℃であることを意味する。
【0567】
試験例3の結果を表111に示す。表111は、本開示の冷媒3の実施例及び比較例を示している。表111中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R134aに対する割合(%)を示す。
【0568】
表111中、「飽和圧力(45℃)」とは、飽和温度45℃における飽和圧力を示す。表111中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。
【0569】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0570】
臨界温度は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、計算を実施することにより求めた。
【0571】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。燃焼速度が0cm/s~10cm/sとなるものは「クラス2L(微燃)」、燃焼速度が10cm/s超となるものは「クラス2(弱燃)」であるとし、火炎伝播がないものは「クラス1(不燃)」であるとした。表111中、「ASHRAE燃焼性区分」とは、この判定基準に基づく結果を示している。
【0572】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0573】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて測定を実施した。
【0574】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。
【0575】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g(23℃における相対湿度50%の水分量)冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1質量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0576】
【表111】
【0577】
試験例4
実施例4-1~4-7及び比較例4-1~4-5に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0578】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度及び飽和温度-10℃における飽和圧力は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0579】
蒸発温度 5℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0580】
「蒸発温度 5℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が5℃であることを意味する。また、「凝縮温度 45℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が45℃であることを意味する。
【0581】
試験例4の結果を表112に示す。表112は、本開示の冷媒4の実施例及び比較例を示している。表112中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R1234yfに対する割合(%)を示す。表112中、「飽和圧力(-10℃)」とは、冷蔵条件の蒸発温度の代表値としての飽和温度-10℃における飽和圧力を示す。表112中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。
【0582】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0583】
臨界温度は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、計算を実施することにより求めた。
【0584】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより、判断した。燃焼速度が0cm/s~10cm/sとなるものを「クラス2L(微燃)」、燃焼速度が10cm/s超となるものは「クラス2(弱燃)」であるとし、火炎伝播がないものは「クラス1(不燃)」であるとした。表112中、「ASHRAE燃焼性区分」とは、この判定基準に基づく結果を示している。
【0585】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0586】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681-09に基づく測定装置(図1を参照)を用いて測定を実施した。
【0587】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。
【0588】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g(23℃における相対湿度50%の水分量)
冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1質量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0589】
【表112】
【0590】
試験例5
実施例5-1~5-13、比較例5-1~5-3及び参考例5-1(R134a)に示される混合冷媒のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0591】
これらの混合冷媒のCOP、冷凍能力、沸点及び吐出温度は、National Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0592】
蒸発温度 -30℃
凝縮温度 30℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0593】
「蒸発温度 -30℃」とは、冷凍装置が備える蒸発器における混合冷媒の蒸発温度が-30℃であることを意味する。また、「凝縮温度 30℃」とは、冷凍装置が備える凝縮器における混合冷媒の凝縮温度が30℃であることを意味する。
【0594】
試験例5の結果を表113に示す。表113は、本開示の冷媒5の実施例及び比較例を示している。表113中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R1234yfに対する割合(%)を示す。表113中、「吐出温度(℃)」とは、上記混合冷媒の冷凍サイクル理論計算において、冷凍サイクル中で最も温度が高くなる温度を示す。表113中、「沸点(℃)」とは、混合冷媒の液相が大気圧(101.33kPa)となる温度を示す。表113中、「動力の消費電力量(%)」とは、電気自動車が走行するために使用した電気エネルギーを示し、冷媒をHFO-1234yfとしたとき消費電力量との比で表す。表113中、「暖房の消費電力量(%)」とは、電気自動車が暖房を運転するために使用した電気エネルギーを示し、冷媒をHFO-1234yfとしたとき消費電力量との比で表す。表113中、「走行可能距離」とは、一定の電気容量の二次電池を搭載した電気自動車において、暖房せずに(暖房の消費電力が0)走行した場合の走行可能距離を100%とした場合の暖房ありで走行した場合の走行可能距離を相対割合(%)を表したものである。
【0595】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0596】
混合冷媒の燃焼性は、混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定することにより判断した。燃焼速度の測定は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0597】
暖房方法は、沸点が-40℃を超える冷媒では暖房に電気ヒーター方式を用い、沸点が-40℃以下の冷媒には暖房にヒートポンプ方式を用いた。
【0598】
暖房使用時の消費電力量は、次式により求めた。
暖房使用時の消費電力量=暖房能力/暖房COP
なお、暖房COPとは「暖房効率」を意味する。
【0599】
暖房効率について、電気ヒーターの場合は暖房COP=1であり、動力と同等の電極を暖房に消費する。つまり、暖房の消費電力はE=E/(1+COP)となる。一方、ヒートポンプの場合はNational Institute of Science and Technology(NIST)及びReference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより暖房COPを求めた。
【0600】
蒸発温度 -30℃
凝縮温度 30℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0601】
走行可能距離は、次式により求めた。
走行可能距離=(電池容量)/(動力の消費電力量+暖房での消費電力量)
【0602】
【表113】
【0603】
(2)冷凍機油
第2グループの技術としての冷凍機油は、冷媒組成物と共存させて冷凍サイクルを行わせることで、冷凍サイクル装置内の潤滑性を高めることが可能であり、効率的なサイクル性能を発揮させることも可能となる。
【0604】
冷凍機油として、例えば、含酸素系合成油(エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油等)、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。なかでも、冷媒または冷媒組成物との相溶性の観点から、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油が好ましい。冷凍機油としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0605】
冷凍機油は、潤滑性や圧縮機の密閉性の低下を抑制させること、低温条件下で冷媒に対して相溶性が十分に確保されること、圧縮機の潤滑不良を抑制させること、蒸発器における熱交換効率を良好にすること、の少なくともいずれかの観点から、40℃における動粘度が1mm/s以上750mm/s以下であることが好ましく、1mm/s以上400mm/s以下であることがより好ましい。なお、冷凍機油の100℃における動粘度としては、例えば、1mm/s以上100mm/s以下であってよく、1mm/s以上50mm/s以下であることがより好ましい。
【0606】
冷凍機油は、アニリン点が、-100℃以上0℃以下であることが好ましい。ここで、「アニリン点」は、例えば、炭化水素系溶剤等の溶解性を示す数値であり、試料(ここでは冷凍機油)を等容積のアニリンと混合して冷やしたときに、互いに溶解し合えなくなって濁りがみえ始めたときの温度を表すものである(JIS K 2256で規定)。なお、これらの値は、冷媒が溶解しない状態の冷凍機油自体の値である。このようなアニリン点の冷凍機油を用いることで、例えば、樹脂製機能部品を構成する各軸受および電動機の絶縁材料が冷凍機油と接する位置で用いられている場合においても、これらの樹脂製機能部品に対する冷凍機油の適合性を向上させることができる。具体的には、アニリン点が低すぎると、冷凍機油が軸受や絶縁材料に浸透し易くなり、軸受等が膨潤し易くなる。一方、アニリン点が高すぎると、冷凍機油が軸受や絶縁材料に浸透し難くなり、軸受等が収縮し易くなる。そこで、アニリン点が上述した所定の範囲(-100℃以上0℃以下)である冷凍機油を用いることで、軸受や絶縁材料の膨潤/収縮変形を防止することができる。ここで、各軸受が膨潤変形してしまうと、摺動部での隙間(ギャップ)を所望とする長さに維持することができない。その結果、摺動抵抗の増大を招く虞がある。各軸受が収縮変形してしまうと、軸受の硬度が高くなり圧縮機の振動によって軸受が破損する虞がある。つまり、各軸受が収縮変形すると、摺動部の剛性の低下を招く虞がある。また、電動機の絶縁材料(絶縁被服材料や絶縁フィルム等)が膨潤変形してしまうと、その絶縁材料の絶縁性が低下してしまう。絶縁材料が収縮変形してしまうと、上述した軸受の場合と同様に絶縁材料が破損する虞があり、この場合もまた絶縁性が低下してしまう。これに対して、上記のようにアニリン点が所定の範囲内である冷凍機油を用いることで、軸受や絶縁材料の膨潤/収縮変形を抑制できるため、このような不具合を回避することができる。
【0607】
冷凍機油は、冷媒組成物と混合して冷凍機用作動流体として使用される。冷凍機用作動流体全量に対する冷凍機油の配合割合は、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0608】
(2-1)含酸素系合成油
含酸素系合成油であるエステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油は、主として、炭素原子と酸素原子を有して構成されている。エステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油においては、この炭素原子と酸素原子の比率(炭素/酸素モル比)が小さすぎると吸湿性が高くなり、当該比率が大きすぎると冷媒との相溶性が低下してしまうことから、当該比率はモル比で2以上7.5以下であることが好ましい。
【0609】
(2-1-1)エステル系冷凍機油
エステル系冷凍機油としては、化学的安定性の観点から、二塩基酸と1価アルコールとの二塩基酸エステル油、ポリオールと脂肪酸とのポリオールエステル油、またはポリオールと多価塩基酸と1価アルコール(又は脂肪酸)とのコンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が基油成分として挙げられる。
【0610】
(二塩基酸エステル油)
二塩基酸エステル油としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸、特に、炭素数5~10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1~15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。この二塩基酸エステル油としては、具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0611】
(ポリオールエステル油)
ポリオールエステル油とは、多価アルコールと脂肪酸(カルボン酸)とから合成されるエステルであり、炭素/酸素モル比が2以上7.5以下、好ましくは3.2以上5.8以下のものである。
【0612】
ポリオールエステル油を構成する多価アルコールとしては、ジオール(エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等)、水酸基を3~20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~3量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物等)が挙げられ、エステルを構成する多価アルコールとしては、上記の1種でもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0613】
ポリオールエステルを構成する脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1~24のものが用いられる。直鎖の脂肪酸、分岐を有する脂肪酸が好ましい。直鎖の脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、カルボキシル基に結合する炭化水素基は、全て飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素を有していてもよい。さらに、分岐を有する脂肪酸としては、2-メチルプロパン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、2,2,3-トリメチルブタン酸、2,3,3-トリメチルブタン酸、2-エチル-2-メチルブタン酸、2-エチル-3-メチルブタン酸、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、4-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,3-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、2,5-ジメチルヘキサン酸、3,3-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、4,4-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、5,5-ジメチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2-メチルオクタン酸、3-メチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、5-メチルオクタン酸、6-メチルオクタン酸、7-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、2,3-ジメチルヘプタン酸、2,4-ジメチルヘプタン酸、2,5-ジメチルヘプタン酸、2,6-ジメチルヘプタン酸、3,3-ジメチルヘプタン酸、3,4-ジメチルヘプタン酸、3,5-ジメチルヘプタン酸、3,6-ジメチルヘプタン酸、4,4-ジメチルヘプタン酸、4,5-ジメチルヘプタン酸、4,6-ジメチルヘプタン酸、5,5-ジメチルヘプタン酸、5,6-ジメチルヘプタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、2-メチル-2-エチルヘキサン酸、2-メチル-3-エチルヘキサン酸、2-メチル-4-エチルヘキサン酸、3-メチル-2-エチルヘキサン酸、3-メチル-3-エチルヘキサン酸、3-メチル-4-エチルヘキサン酸、4-メチル-2-エチルヘキサン酸、4-メチル-3-エチルヘキサン酸、4-メチル-4-エチルヘキサン酸、5-メチル-2-エチルヘキサン酸、5-メチル-3-エチルヘキサン酸、5-メチル-4-エチルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸、3-メチルオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。脂肪酸は、これらの中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのエステルであってもよい。
【0614】
エステルを構成する多価アルコールは1種類でもよく、2種以上の混合物でもよい。また、エステルを構成する脂肪酸は、単一成分でもよく、2種以上の脂肪酸とのエステルでもよい。脂肪酸は、各々1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。また、ポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。
【0615】
具体的なポリオールエステル油としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)等と炭素数2~20の脂肪酸とのエステルが好ましい。
【0616】
このような多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、脂肪酸は直鎖アルキル基をもつ脂肪酸のみでもよいし、分岐構造をもつ脂肪酸から選ばれてもよい。また、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルでもよい。さらに、エステルを構成する脂肪酸は、上記脂肪酸から選ばれる2種類以上が用いられていてもよい。
【0617】
具体的な例として、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルの場合には、直鎖を有する炭素数4~6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸のモル比は、15:85~90:10であり、好ましくは15:85~85:15であり、より好ましくは20:80~80:20であり、さらに好ましくは25:75~75:25であり、最も好ましくは30:70~70:30である。また、多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の全量に占める直鎖を有する炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上であることが好ましい。脂肪酸組成に関しては、冷媒との十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とを両立させるものであることが好ましい。なお、ここでいう脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
【0618】
なかでも、このような冷凍機油としては、脂肪酸における炭素数4~6の脂肪酸と炭素数7~9の分岐脂肪酸のモル比が15:85~90:10であり、炭素数4~6の脂肪酸は2-メチルプロパン酸を含有し、上記エステルを構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4~6の脂肪酸および炭素数7~9の分岐脂肪酸の合計の割合が20モル%以上であるエステル(以下、「多価アルコール脂肪酸エステル(A)」という。)を含有したものが好ましい。
【0619】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)には、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化された完全エステル、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化せずに残っている部分エステル、ならびに完全エステルと部分エステルとの混合物が包含されるが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、さらには5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下である。
【0620】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸において、炭素数4~6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸のモル比は、15:85~90:10であり、好ましくは15:85~85:15であり、より好ましくは20:80~80:20であり、さらに好ましくは25:75~75:25であり、最も好ましくは30:70~70:30である。また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上である。脂肪酸組成に関する上記の条件を満たさない場合には、冷媒組成物にジフルオロメタンが含まれている場合において、当該ジフルオロメタンとの十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とが高水準で両立されにくくなる。なお、脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含有される多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
【0621】
上記炭素数4~6の脂肪酸としては、具体的には例えば、ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸、ヘキサン酸などが挙げられる。これらの中でも、2-メチルプロパン酸のように、アルキル骨格に分岐を有するものが好ましい。
【0622】
上記分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸としては、具体的には例えば、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、1,1,2-トリメチルブタン酸、1,2,2-トリメチルブタン酸、1-エチル-1メチルブタン酸、1-エチル-2-メチルブタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2-プロピルペンタン酸、ノナン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、2-メチルオクタン酸、2-エチルヘプタン酸、3-メチルオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。
【0623】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、炭素数4~6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸のモル比が15:85~90:10であり、かつ、炭素数4~6の脂肪酸が2-メチルプロパン酸を含有する限りにおいて、炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸以外の脂肪酸を構成酸成分として含有してもよい。
【0624】
上記炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸以外の脂肪酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸等の炭素数2~3の脂肪酸;ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸等の炭素数7~9の直鎖脂肪酸;デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の炭素数10~20の脂肪酸等が挙げられる。
【0625】
上記炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸と、これらの脂肪酸以外の脂肪酸とを組み合わせて用いる場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4~6の脂肪酸および炭素数7~9の分岐脂肪酸の合計の割合が20モル%以上とすることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらにより好ましい。この割合が20モル%以上であることにより、冷媒組成物においてジフルオロメタンが含まれている場合における当該ジフルオロメタンとの相溶性が十分となる。
【0626】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)の中でも、酸構成成分が2-メチルプロパン酸と3,5,5-トリメチルヘキサン酸のみからなるものが、必要粘度の確保と、冷媒組成物においてジフルオロメタンが含まれている場合における当該ジフルオロメタンとの相溶性との両立の面で特に好ましい。
【0627】
上記多価アルコール脂肪酸エステルは、分子構造の異なるエステルの2種以上の混合物であってもよく、かかる場合には個々の分子が必ずしも上記の条件を満たしている必要はなく、冷凍機油中に含まれるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全体として上記条件を満たしていればよい。
【0628】
上記した通り、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、エステルを構成する酸成分として炭素数4~6の脂肪酸及び分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸を必須とし、必要に応じてその他の脂肪酸を構成成分として含むものである。すなわち、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、2種のみの脂肪酸を酸構成成分としているものであっても、3種以上の構造の異なる脂肪酸を酸構成成分としているものであってもよいが、当該多価アルコール脂肪酸エステルは、酸構成成分として、カルボニル炭素と隣接する炭素原子(α位炭素原子)が四級炭素でない脂肪酸のみを含有することが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中に、α位炭素原子が四級炭素である脂肪酸が含まれる場合には、冷媒組成物にジフルオロメタンを含んでいる場合における当該ジフルオロメタン存在下での潤滑性が不十分となる傾向にある。
【0629】
また、本実施形態にかかるポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、水酸基を2~6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。
【0630】
2価アルコール(ジオール)としては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどが挙げられる。また、3価以上のアルコールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~3量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物などが挙げられる。これらの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)がさらに好ましく、冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることから、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)またはペンタエリスリトールとジ-(ペンタエリスリトール)との混合エステルが最も好ましい。
【0631】
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する酸構成成分の好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1~13種と、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸および2-エチル-3-メチルブタン酸から選ばれる1~13種との組合せ;
(ii)ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1~13種と、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、3,3-ジメチルヘキサン酸、4,4-ジメチルヘキサン酸、5,5-ジメチルヘキサン酸、2,3-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、2,5-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルペンタン酸、2,3,3-トリメチルペンタン酸、2,4,4-トリメチルペンタン酸、3,4,4-トリメチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2-メチル-2-エチルペンタン酸、2-メチル-3-エチルペンタン酸および3-メチル-3-エチルペンタン酸から選ばれる1~25種との組合せ;
(iii)ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1~13種と、2-メチルオクタン酸、3-メチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、5-メチルオクタン酸、6-メチルオクタン酸、7-メチルオクタン酸、8-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、3,3-ジメチルヘプタン酸、4,4-ジメチルヘプタン酸、5,5-ジメチルヘプタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、2,3-ジメチルヘプタン酸、2,4-ジメチルヘプタン酸、2,5-ジメチルヘプタン酸、2,6-ジメチルヘプタン酸、3,4-ジメチルヘプタン酸、3,5-ジメチルヘプタン酸、3,6-ジメチルヘプタン酸、4,5-ジメチルヘプタン酸、4,6-ジメチルヘプタン酸、2-エチルヘプタン酸、3-エチルヘプタン酸、4-エチルヘプタン酸、5-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘキサン酸、3-プロピルヘキサン酸、2-ブチルペンタン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,4-トリメチルヘキサン酸、2,2,5-トリメチルヘキサン酸、2,3,4-トリメチルヘキサン酸、2,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,3,4-トリメチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4,4,5-トリメチルヘキサン酸、4,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、3,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジエチルペンタン酸、2,3-ジエチルペンタン酸、3,3-ジエチルペンタン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、3-エチル-2,2,3-トリメチル酪酸および2,2-ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1~50種との組合せ。
【0632】
上記多価アルコール脂肪酸エステルを構成する酸構成成分のさらに好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)2-メチルプロパン酸と、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸および2-エチル-3-メチルブタン酸から選ばれる1~13種との組合せ;
(ii)2-メチルプロパン酸と、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、3,3-ジメチルヘキサン酸、4,4-ジメチルヘキサン酸、5,5-ジメチルヘキサン酸、2,3-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、2,5-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルペンタン酸、2,3,3-トリメチルペンタン酸、2,4,4-トリメチルペンタン酸、3,4,4-トリメチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2-メチル-2-エチルペンタン酸、2-メチル-3-エチルペンタン酸および3-メチル-3-エチルペンタン酸から選ばれる1~25種との組合せ;
(iii)2-メチルプロパン酸と、2-メチルオクタン酸、3-メチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、5-メチルオクタン酸、6-メチルオクタン酸、7-メチルオクタン酸、8-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、3,3-ジメチルヘプタン酸、4,4-ジメチルヘプタン酸、5,5-ジメチルヘプタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、2,3-ジメチルヘプタン酸、2,4-ジメチルヘプタン酸、2,5-ジメチルヘプタン酸、2,6-ジメチルヘプタン酸、3,4-ジメチルヘプタン酸、3,5-ジメチルヘプタン酸、3,6-ジメチルヘプタン酸、4,5-ジメチルヘプタン酸、4,6-ジメチルヘプタン酸、2-エチルヘプタン酸、3-エチルヘプタン酸、4-エチルヘプタン酸、5-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘキサン酸、3-プロピルヘキサン酸、2-ブチルペンタン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,4-トリメチルヘキサン酸、2,2,5-トリメチルヘキサン酸、2,3,4-トリメチルヘキサン酸、2,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,3,4-トリメチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4,4,5-トリメチルヘキサン酸、4,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、3,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジエチルペンタン酸、2,3-ジエチルペンタン酸、3,3-ジエチルペンタン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、3-エチル-2,2,3-トリメチル酪酸および2,2-ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1~50種との組合せ。
【0633】
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)の含有量は、冷凍機油全量基準で50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。本実施形態に係る冷凍機油は、後述するように多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の潤滑油基油や添加剤を含有してもよいが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)が50質量%未満であると、必要粘度と相溶性とを高水準で両立することができなくなる。
【0634】
本実施形態に係る冷凍機油において、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は主として基油として用いられる。本実施形態に係る冷凍機油の基油としては、多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみを単独で(すなわち多価アルコール脂肪酸エステル(A)の含有量が100質量%)用いてもよいが、これに加えて、その優れた性能を損なわない程度に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の基油をさらに含有してもよい。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、アルキルジフェニルアルカン、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の炭化水素系油;多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステル、コンプレックスエステル、脂環式ジカルボン酸エステル等のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油(以下、場合により「他の含酸素合成油」という)などが挙げられる。
【0635】
酸素を含有する合成油としては、上記の中でも、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテルが好ましく、特に好ましいのは、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルである。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられ、特に好ましいものは、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステル、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステル及びジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルである。
【0636】
ネオペンチルグリコールエステルとしては、ネオペンチルグリコールと炭素数5~9の脂肪酸とのエステルであることが好ましい。このようなネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には例えば、ネオペンチルグリコールジ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2-エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2-メチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2-エチルペンタノエート、ネオペンチルグリコールと2-メチルヘキサン酸・2-エチルペンタン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3-メチルヘキサン酸・5-メチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと2-メチルヘキサン酸・2-エチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3,5-ジメチルヘキサン酸・4,5-ジメチルヘキサン酸・3,4-ジメチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールジペンタノエート、ネオペンチルグリコールジ2-エチルブタノエート、ネオペンチルグリコールジ2-メチルペンタノエート、ネオペンチルグリコールジ2-メチルブタノエート、ネオペンチルグリコールジ3-メチルブタノエート等が挙げられる。
【0637】
ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールと炭素数5~9の脂肪酸とのエステルが好ましい。このようなペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸および2-エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
【0638】
ジペンタエリスリトールエステルとしては、ジペンタエリスリトールと炭素数5~9の脂肪酸のエステルが好ましい。このようなジペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸および2-エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
【0639】
本実施形態に係る冷凍機油が多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の含酸素合成油を含有する場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の含酸素合成油の含有量は、本実施形態に係る冷凍機油の優れた潤滑性と相溶性とを損なわない限りにおいて特に制限はないが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルを配合する場合、冷凍機油全量基準で、50質量%未満であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以下であることがさらにより好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることが最も好ましく;ポリオールエステル以外の含酸素合成油を配合する場合、冷凍機油全量基準で50質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルや他の含酸素合成油の配合量が多すぎると、上記効果が十分には得られない。
【0640】
なお、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、水酸基価が、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
【0641】
本実施形態に係る冷凍機および冷凍機用作動流体が多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルを含有する場合、該ポリオールエステルとして、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものを含有してもよく、また、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物を含有してもよい。
【0642】
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルは、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステルのいずれであってもよい。
【0643】
本実施形態に係る冷凍機油は、多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみからなるものであってもよく、また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)とその他の基油とからなるものであってもよいが、後述する各種添加剤をさらに含有してもよい。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体においても、各種添加剤をさらに含有してもよい。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用作動流体におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0644】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0645】
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0646】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0647】
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0648】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1~24、好ましくは5~18の1~3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
【0649】
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖または分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミン、トリテトラコシルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0650】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0651】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.02~3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0652】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、テルペン化合物を添加することができる。本開示でいう「テルペン化合物」とは、イソプレンの重合した化合物およびこれらの誘導体を意味し、イソプレンの2~8量体が好ましく用いられる。テルペン化合物としては、具体的には、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(ゲラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルボン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ボルネオールなどのモノテルペン、ファルネセン、ファルネソール、ネロリドール、幼若ホルモン、フムレン、カリオフイレン、エレメン、カジノール、カジネン、ツチンなどのセスキテルペン、ゲラニルゲラニオール、フィトール、アビエチン酸、ピマラジェン、ダフネトキシン、タキソール、ピマール酸などのジテルペン、ゲラニルファルネセンなどのセスタテルペン、スクアレン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロールなどのトリテルペン、カロテノイドなどのテトラテルペンなどが挙げられる。
【0653】
これらのテルペン化合物の中でも、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペンがより好ましく、αファルネセン(3,7,11-トリメチルドデカ-1,3,6,10-テトラエン)および/またはβファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチリデンドデカ-1,6,10-トリエン)が特に好ましい。本開示において、テルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0654】
本実施形態に係る冷凍機油におけるテルペン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、さらに好ましくは0.05~3質量%である。テルペン化合物の含有量が0.001質量%未満であると熱・化学的安定性の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、10質量%を超えると潤滑性が不十分となる傾向にある。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体におけるテルペン化合物の含有量については、冷凍機油全量を基準とした場合に上記の好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0655】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0656】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1~13のアルキル基を1~3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4~10のアルキル基を1個有するもの、例えばn-ブチルフェニルグリシジルエーテル、i-ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0657】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0658】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル-2,2-ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0659】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2-エポキシスチレン、アルキル-1,2-エポキシスチレンなどが例示できる。
【0660】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシトリデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,1,2-エポキシオクタデカン、2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシイコサンなどが例示できる。
【0661】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-2,3-エポキシノルボルナン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)-スピロ(1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-(1’-メチルエポキシエチル)-1,2-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン、4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0662】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12~20の脂肪酸と炭素数1~8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0663】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0664】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、および脂環式エポキシ化合物である。
【0665】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.1~3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0666】
なお、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは20~80mm/s、より好ましくは25~75mm/s、最も好ましくは30~70mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは2~20mm/s、より好ましくは3~10mm/sとすることができる。動粘度が前記下限値以上の場合には冷凍機油として必要な粘度を確保しやすく、他方、前記上限値以下の場合には冷媒組成物としてジフルオロメタンが含まれている場合の当該ジフルオロメタンとの相溶性を十分にすることができる。
【0667】
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
【0668】
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0669】
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本開示において、酸価とは、JIS K 2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0670】
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の灰分は特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、灰分とは、JIS K 2272「原油および石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0671】
(コンプレックスエステル油)
コンプレックスエステル油とは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
【0672】
脂肪酸としては、上記ポリオールエステルの脂肪酸で示したものが挙げられる。
【0673】
二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0674】
ポリオールとしては、上記ポリオールエステルの多価アルコールとして示したものが挙げられる。コンプレックスエステルは、これらの脂肪酸、二塩基酸、ポリオールのエステルであり、各々単一成分でもよいし、複数成分からなるエステルでもよい。
【0675】
(ポリオール炭酸エステル油)
ポリオール炭酸エステル油とは、炭酸とポリオールとのエステルである。
【0676】
ポリオールとしては、上述と同様のジオールやポリオールが挙げられる。
【0677】
また、ポリオール炭酸エステル油としては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。
【0678】
(2-1-2)エーテル系冷凍機油
エーテル系冷凍機油としては、ポリビニルエーテル油、ポリオキシアルキレン油等が挙げられる。
【0679】
(ポリビニルエーテル油)
ポリビニルエーテル油としては、ビニルエーテルモノマーの重合体、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合体、オレフィン性二重結合とポリオキシアルキレン鎖を有するモノマーとビニルエーテルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0680】
ポリビニルエーテル油の炭素/酸素モル比は、2以上7.5以下であることが好ましく、2.5以上5.8以下であることがより好ましい。炭素/酸素モル比が当該範囲より低いと吸湿性が高くなり、当該範囲より高いと相溶性が低下する。また、ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。
【0681】
ポリビニルエーテル油は、流動点が-30℃以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、20℃における表面張力が0.02N/m以上0.04N/m以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、15℃における密度が0.8g/cm以上1.8g/cm以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、温度30℃、相対湿度90%における飽和水分量が2000ppm以上であることが好ましい。
【0682】
冷凍機油においては、ポリビニルエーテルが主成分として含まれていてもよい。冷媒にHFO-1234yfが含まれている場合には、冷凍機油の主成分であるポリビニルエーテルが、当該HFO-1234yfに対して相溶性を有しており、冷凍機油の40℃における動粘度が400mm/s以下であると、HFO-1234yfが、冷凍機油にある程度溶解する。また、冷凍機油の流動点が-30℃以下である場合には、冷媒回路において冷媒組成物や冷凍機油が低温となる部位においても冷凍機油の流動性を確保しやすい。また、冷凍機油の20℃における表面張力が0.04N/m以下である場合には、圧縮機から吐出された冷凍機油が冷媒組成物によって押し流されにくくなるような大きな油滴になりにくい。このため、圧縮機から吐出された冷凍機油は、HFO-1234yfに溶解してHFO-1234yfと共に圧縮機に戻されやすい。
【0683】
また、冷凍機油の40℃における動粘度が30mm/s以上である場合には、動粘度が低すぎて油膜強度が不十分になることが抑制され、潤滑性能を確保しやすい。また、冷凍機油の20℃における表面張力が0.02N/m以上である場合には、圧縮機内のガス冷媒中で小さな油滴になりにくく、圧縮機から多量に冷凍機油が吐出されることを抑制できる。このため、圧縮機における冷凍機油の貯留量を充分に確保しやすい。
【0684】
また、冷凍機油の飽和水分量が、温度30℃/相対湿度90%において2000ppm以上である場合には、冷凍機油の吸湿性を比較的高いものとすることができる。これにより、冷媒にHFO-1234yfが含まれている場合には、HFO-1234yf中の水分を冷凍機油によって有る程度捕捉することが可能となる。HFO-1234yfは、含有される水分の影響により、変質/劣化し易い分子構造を有する。よって、冷凍機油による吸湿効果により、このような劣化を抑制することができる。
【0685】
さらに、冷媒回路を流れる冷媒と接触可能となるシール部や摺動部に所定の樹脂製機能部品が配置されている場合であって、当該樹脂製機能部品が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、クロロブレンゴム、シリコンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴムのいずれかで構成されている場合には、冷凍機油のアニリン点は、当該樹脂製機能部品との適合性を考慮して、その数値範囲を設定することが好ましい。このようにアニリン点を設定することで、例えば樹脂製機能部品を構成する軸受と冷凍機油との適合性が向上する。具体的に、アニリン点が小さ過ぎると、冷凍機油が軸受等に浸透し易くなり、軸受等が膨潤し易くなる。一方、アニリン点が大き過ぎると、冷凍機油が軸受等と浸透し難くなり、軸受等が収縮し易くなる。そこで、冷凍機油のアニリン点を所定の数値範囲とすることで、軸受等の膨潤/収縮変形を防止できる。ここで、例えば各軸受等が膨潤/縮小変形してしまうと、摺動部での隙間(ギャップ)を所望とする長さに維持することができない。その結果、摺動抵抗の増大や摺動部の剛性の低下を招くおそれがある。しかしながら、上記のように冷凍機油のアニリン点を所定の数値範囲とすることで、軸受等の膨潤/縮小変形が抑制されるので、このような不具合を回避できる。
【0686】
ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α-メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0687】
ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテル油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0688】
好ましく用いられるポリビニルエーテル油は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。
【0689】
【化1】
【0690】
(式中、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~10の2価の炭化水素基または炭素数2~20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1~20の炭化水素基を示し、mは上記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0~10となるような数を示し、R~Rは構造単位ごとに同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。)
【0691】
上記一般式(1)におけるR、RおよびRは、少なくとも1つが水素原子、特には全てが水素原子であることが好ましい。一般式(1)におけるmは0以上10以下、特には0以上5以下が、さらには0であることが好ましい。一般式(1)におけるRは炭素数1~20の炭化水素基を示すが、この炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を示す。なお、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基の中でも、アルキル基、特には炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。なお、上記ポリビニルエーテル油としては、Rの炭素数が1又は2のアルキル基であるポリビニルエーテル油:Rの炭素数が3又は4のアルキル基であるポリビニルエーテル油の比率が、40%:60%~100%:0%で含まれていることが好ましい。
【0692】
本実施形態におけるポリビニルエーテル油は、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0693】
本実施形態に係るポリビニルエーテル油は、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0694】
【化2】
【0695】
(式中、R~Rは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
ビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)の化合物が挙げられる。
【0696】
【化3】
【0697】
(式中、R、R、R、R、Rおよびmは、それぞれ一般式(1)中のR、R、R、R、Rおよびmと同一の定義内容を示す。)
【0698】
上記ポリビニルエーテル系化合物に対応する各種のものがあるが、例えば、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル-n-プロピルエーテル;ビニル-イソプロピルエーテル;ビニル-n-ブチルエーテル;ビニル-イソブチルエーテル;ビニル-sec-ブチルエーテル;ビニル-tert-ブチルエーテル;ビニル-n-ペンチルエーテル;ビニル-n-ヘキシルエーテル;ビニル-2-メトキシエチルエーテル;ビニル-2-エトキシエチルエーテル;ビニル-2-メトキシ-1-メチルエチルエーテル;ビニル-2-メトキシ-プロピルエーテル;ビニル-3,6-ジオキサヘプチルエーテル;ビニル-3,6,9-トリオキサデシルエーテル;ビニル-1,4-ジメチル-3,6-ジオキサヘプチルエーテル;ビニル-1,4,7-トリメチル-3,6,9-トリオキサデシルエーテル;ビニル-2,6-ジオキサ-4-ヘプチルエーテル;ビニル-2,6,9-トリオキサ-4-デシルエーテル;1-メトキシプロペン;1-エトキシプロペン;1-n-プロポキシプロペン;1-イソプロポキシプロペン;1-n-ブトキシプロペン;1-イソブトキシプロペン;1-sec-ブトキシプロペン;1-tert-ブトキシプロペン;2-メトキシプロペン;2-エトキシプロペン;2-n-プロポキシプロペン;2-イソプロポキシプロペン;2-n-ブトキシプロペン;2-イソブトキシプロペン;2-sec-ブトキシプロペン;2-tert-ブトキシプロペン;1-メトキシ-1-ブテン;1-エトキシ-1-ブテン;1-n-プロポキシ-1-ブテン;1-イソプロポキシ-1-ブテン;1-n-ブトキシ-1-ブテン;1-イソブトキシ-1-ブテン;1-sec-ブトキシ-1-ブテン;1-tert-ブトキシ-1-ブテン;2-メトキシ-1-ブテン;2-エトキシ-1-ブテン;2-n-プロポキシ-1-ブテン;2-イソプロポキシ-1-ブテン;2-n-ブトキシ-1-ブテン;2-イソブトキシ-1-ブテン;2-sec-ブトキシ-1-ブテン;2-tert-ブトキシ-1-ブテン;2-メトキシ-2-ブテン;2-エトキシ-2-ブテン;2-n-プロポキシ-2-ブテン;2-イソプロポキシ-2-ブテン;2-n-ブトキシ-2-ブテン;2-イソブトキシ-2-ブテン;2-sec-ブトキシ-2-ブテン;2-tert-ブトキシ-2-ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
【0699】
上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物は、その末端を本開示例に示す方法及び公知の方法により、所望の構造に変換することができる。変換する基としては、飽和の炭化水素,エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリルなどを挙げることができる。
【0700】
ポリビニルエーテル系化合物としては、次の末端構造を有するものが好ましい。
【0701】
【化4】
【0702】
(式中、R11、R21およびR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1~10の二価の炭化水素基または炭素数2~20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1~20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0~10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0703】
【化5】
【0704】
(式中、R61、R71、R81およびR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
【0705】
【化6】
【0706】
(式中、R12、R22およびR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1~10の二価の炭化水素基または炭素数2~20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1~20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0~10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR42Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0707】
【化7】
【0708】
(式中、R62、R72、R82およびR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
【0709】
【化8】
【0710】
(式中、R13、R23およびR33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【0711】
本実施形態におけるポリビニルエーテル油は、上記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
【0712】
(ポリオキシアルキレン油)
ポリオキシアルキレン油としては、炭素数2~4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸基含有化合物を開始剤として重合させる方法等により得られたポリオキシアルキレン化合物が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン化合物の水酸基をエーテル化またはエステル化したものであってもよい。ポリオキシアルキレン油中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。
【0713】
具体的なポリオキシアルキレン油としては、例えば次の一般式(9)
101-[(OR102-OR103 …(9)
【0714】
(式中、R101は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアシル基又は結合部2~6個を有する炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、R102は炭素数2~4のアルキレン基、R103は水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数2~10のアシル基、lは1~6の整数、kはk×lの平均値が6~80となる数を示す。)で表される化合物が挙げられる。
【0715】
上記一般式(9)において、R101、R103におけるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアルキル基の炭素数は1~6である。
【0716】
また、R101、R103における該アシル基のアルキル基部分は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として挙げた炭素数1~9の種々の基を同様に挙げることができる。該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2~6である。
【0717】
101及びR103が、いずれもアルキル基又はアシル基である場合には、R101とR103は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0718】
さらにlが2以上の場合には、1分子中の複数のR103は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0719】
101が結合部位2~6個を有する炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である場合、この脂肪族炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。また、結合部位3~6個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;1,2,3-トリヒドロキシシクロヘキサン;1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
【0720】
この脂肪族炭化水素基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離が生じる場合がある。好ましい炭素数は2~6である。
【0721】
上記一般式(9)中のR102は炭素数2~4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、特にオキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものが好適である。
【0722】
上記一般式(9)中のlは1~6の整数で、R101の結合部位の数に応じて定めることができる。例えばR101がアルキル基やアシル基の場合、lは1であり、R101が結合部位2,3,4,5及び6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、lはそれぞれ2,3,4,5及び6となる。lは1または2であることが好ましい。また、kはk×lの平均値が6~80となる数であることが好ましい。
【0723】
ポリオキシアルキレン油の構造は、下記一般式(10)で表されるポリオキシプロピレンジオールジメチルエーテル、並びに下記一般式(11)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールジメチルエーテルが経済性および前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(12)で表されるポリオキシプロピレンジオールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(13)で表されるポリオキシプロピレンジオールモノメチルエーテル、下記一般式(14)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールモノメチルエーテル、下記一般式(15)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールモノブチルエーテル、下記一般式(16)で表されるポリオキシプロピレンジオールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
【0724】
CHO-(CO)-CH …(10)
(式中、hは6~80の数を表す。)
CHO-(CO)-(CO)-CH …(11)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6~80となる数を表す。)
O-(CO)-H …(12)
(式中、hは6~80の数を示す。)
CHO-(CO)-H …(13)
(式中、hは6~80の数を表す。)
CHO-(CO)-(CO)-H …(14)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6~80となる数を表す。)
O-(CO)-(CO)-H …(15)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6~80となる数を表す。)
CHCOO-(CO)-COCH …(16)
(式中、hは6~80の数を表す。)
【0725】
このポリオキシアルキレン油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0726】
(2-2)炭化水素系冷凍機油
炭化水素系冷凍機油としては、例えば、アルキルベンゼンを用いることができる。
【0727】
アルキルベンゼンとしては、フッ化水素などの触媒を用いてプロピレンの重合物とベンゼンを原料として合成される分岐アルキルベンゼン、また同触媒を用いてノルマルパラフィンとベンゼンを原料として合成される直鎖アルキルベンゼンが使用できる。アルキル基の炭素数は、潤滑油基油として好適な粘度とする観点から、好ましくは1~30、より好ましくは4~20である。また、アルキルベンゼン1分子が有するアルキル基の数は、アルキル基の炭素数によるが粘度を設定範囲内とするために、好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。
【0728】
なお、炭化水素系冷凍機油は、冷凍サイクル系内を、冷媒と共に循環することが好ましい。冷凍機油は冷媒と溶解することが最も好ましい形態だが、冷凍サイクル系内を冷媒と共に循環できる冷凍機油であれば、例えば、溶解性が低い冷凍機油(例えば、特許第2803451号公報に記載されている冷凍機油)であっても用いることができる。冷凍機油が冷凍サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。炭化水素系冷凍機油の動粘度としては、40℃において1mm/s以上50mm/s以下であることが好ましく、1mm/s以上25mm/s以下であることがより好ましい。
【0729】
これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0730】
冷凍機用作動流体における、炭化水素系冷凍機油の含有量は、例えば、冷媒組成物100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下であってよく、20質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0731】
(2-3)添加剤
冷凍機油には、1種または2種以上の添加剤が含まれていてもよい。
【0732】
添加剤としては、酸捕捉剤、極圧剤、酸化防止剤、消泡剤、油性剤、銅不活性化剤等の金属不活化剤、、摩耗防止剤、および、相溶化剤等が挙げられる。
【0733】
酸捕捉剤には、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、カルボジイミド等を用いることができる。なお、これらのうち、相溶性の観点から、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシドが好ましい。アルキルグリシジルエーテルのアルキル基、及びアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐を有していてもよい。これらの炭素数は、3以上30以下であればよく、4以上24以下であればより好ましく、6以上16以下であればさらに好ましい。また、α-オレフィンオキシドは、全炭素数が4以上50以下であればよく、4以上24以下であればより好ましく、6以上16以下であればさらに好ましい。酸捕捉剤は、1種だけを用いてもよく、複数種類を併用することも可能である。
【0734】
極圧剤には、例えば、リン酸エステル類を含むものを用いることができる。
リン酸エステル類としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性亜リン酸エステル等を用いることができ、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性亜リン酸エステルのアミン塩を含むものを用いることもできる。
【0735】
リン酸エステルには、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート、トリアリールアルキルホスフェート、トリアルケニルホスフェート等がある。さらに、リン酸エステルを具体的に列挙すると、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート等がある。
【0736】
また、亜リン酸エステルの具体的としては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト等がある。
【0737】
また、酸性リン酸エステルの具体的としては、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート等がある。
【0738】
また、酸性亜リン酸エステルの具体的としては、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドゲンホスファイト、ジステアリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等がある。以上のリン酸エステル類の中で、オレイルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートが好適である。
【0739】
また、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル又は酸性亜リン酸エステルのアミン塩に用いられるアミンのうちモノ置換アミンの具体例としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン等がある。また、ジ置換アミンの具体例としては、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリル・モノエタノールアミン、デシル・モノエタノールアミン、ヘキシル・モノプロパノールアミン、ベンジル・モノエタノールアミン、フェニル・モノエタノールアミン、トリル・モノプロパノール等がある。また、トリ置換アミンの具体例としては、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイル・モノエタノールアミン、ジラウリル・モノプロパノールアミン、ジオクチル・モノエタノールアミン、ジヘキシル・モノプロパノールアミン、ジブチル・モノプロパノールアミン、オレイル・ジエタノールアミン、ステアリル・ジプロパノールアミン、ラウリル・ジエタノールアミン、オクチル・ジプロパノールアミン、ブチル・ジエタノールアミン、ベンジル・ジエタノールアミン、フェニル・ジエタノールアミン、トリル・ジプロパノールアミン、キシリル・ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等がある。
【0740】
また、上記以外の極圧剤としては、例えば、モノスルフィド類、ポリスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオスルフィネート類、硫化油脂、チオカーボネート類、チオフェン類、チアゾール類、メタンスルホン酸エステル類等の有機硫黄化合物系の極圧剤、チオリン酸トリエステル類等のチオリン酸エステル系の極圧剤、高級脂肪酸、ヒドロキシアリール脂肪酸類、多価アルコールエステル類、アクリル酸エステル類等のエステル系の極圧剤、塩素化パラフィン等の塩素化炭化水素類、塩素化カルボン酸誘導体等の有機塩素系の極圧剤、フッ素化脂肪族カルボン酸類、フッ素化エチレン樹脂、フッ素化アルキルポリシロキサン類、フッ素化黒鉛等の有機フッ素化系の極圧剤、高級アルコール等のアルコール系の極圧剤、ナフテン酸塩類(ナフテン酸鉛等)、脂肪酸塩類(脂肪酸鉛等)、チオリン酸塩類(ジアルキルジチオリン酸亜鉛等)、チオカルバミン酸塩類、有機モリブデン化合物、有機スズ化合物、有機ゲルマニウム化合物、ホウ酸エステル等の金属化合物系の極圧剤が挙げられる。
【0741】
酸化防止剤には、例えば、フェノール系の酸化防止剤やアミン系の酸化防止剤を用いることができる。フェノール系の酸化防止剤には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(DBPC)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ビスフェノールA等がある。また、アミン系の酸化防止剤には、N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、N.N’-ジ-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジ(2-ナフチル)-p-フェニレンジアミン等がある。なお、酸化防止剤には、酸素を捕捉する酸素捕捉剤も用いることができる。
【0742】
消泡剤としては、例えば、ケイ素化合物を用いることができる。
【0743】
油性剤としては、例えば、高級アルコール類、脂肪酸等を用いることができる。
【0744】
銅不活性化剤等の金属不活化剤としては、ベンゾトリアゾールやその誘導体等を用いることができる。
【0745】
摩耗防止剤としては、ジチオリン酸亜鉛等を用いることができる。
【0746】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができ、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0747】
なお、冷凍機油には、必要に応じて、耐荷重添加剤、塩素捕捉剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、耐熱性向上剤、安定剤、腐食防止剤、耐熱性向上剤、流動点降下剤、および、防錆剤等を添加することも可能である。
【0748】
上記各添加剤の配合量は、冷凍機油に含まれる割合が0.01質量%以上5質量%以下であってよく、0.05質量%以上3質量%以下であることが好ましい。なお、冷媒組成物と冷凍機油とを合わせた冷凍機用作動流体中の添加剤の配合割合が、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0749】
なお、冷凍機油は、塩素濃度が50ppm以下となっていることが好ましく、硫黄濃度が50ppm以下となっていることが好ましい。
【0750】
(3)庫内空気調節装置
以下、上記の冷媒11、冷媒12、冷媒1、冷媒2、冷媒3、冷媒4、及び冷媒5、のいずれか1つ、及び冷凍機油を用いた、庫内空気調節装置について説明する。
【0751】
(3-1)構成
庫内空気調節装置の模式図を、図2に示す。
【0752】
庫内空気調節装置は、冷媒回路50を備え、さらに図3に示すように、マイクロコンピュータ42と、入力部43と、庫内温度センサ44と、を備えている。
【0753】
冷媒回路50は、主として、圧縮機10、凝縮器25、電子膨張弁13、蒸発器17、及び吸入比例弁21から成り、配管により順次接続されている。
【0754】
圧縮機10は、一定速のモータを内蔵するスクロール圧縮機であり、気体状態の冷媒の圧縮を行うものである。圧縮機10には、その内部に油温センサ45が設けられ、その吐出側に圧力温度センサ46が設けられている。油温センサ45は、圧縮機10の潤滑油(冷凍機油)の油温を検知するセンサである。
【0755】
凝縮器25は、冷媒から熱を奪い、その奪った熱を放熱するものである。凝縮器25は、圧縮機10の吐出側に、三方切換弁26を介して接続されている。凝縮器25の近傍には、凝縮器用ファン31が配置されている。
【0756】
電子膨張弁13は、通過する冷媒を膨張させて冷媒の圧力及び温度を低下させるものである。電子膨張弁13は、凝縮器25の出口側に設けられている。凝縮器25と電子膨張弁13との間には、レシーバ14、補助熱交換器15、開閉弁16等が設けられている。
【0757】
蒸発器17は、庫内空気調節装置の内部からの熱を吸熱して冷媒に熱を与えるものであり、電子膨張弁13の出口側に設けられている。蒸発器17と電子膨張弁13との間には、分流器18が設けられている。蒸発器17は、メイン蒸発器17aとサブ蒸発器17bとから成る。サブ蒸発器17bは、電子膨張弁13と凝縮器25との間に設けられている。蒸発器17の近傍には、蒸発器用ファン32が配置されている。
【0758】
圧縮機10の吐出側と蒸発器17との間には、バイパス回路19が設けられている。バイパス回路19には、バイパス弁20が設けられている。
【0759】
吸入比例弁21は、冷媒の循環量を調節するものであり、圧縮機10の吸入側に設けられている。
【0760】
図3に、庫内空気調節装置の制御ブロック図を示す。
【0761】
庫内空気調節装置は、マイクロコンピュータ42を有している。マイクロコンピュータ42は、制御部42aおよび保護部42bの役割を果たす。制御部42aは、庫内空気調節装置の制御を行う機能部であり、保護部42bは、圧縮機10の損傷を避けるための保護を行う機能部である。そして、制御部42aには、庫内空気調節装置の庫内の温度設定などを行う入力部43と、庫内の温度を検知する庫内温度センサ44と、油温センサ45と、圧力温度センサ46とが接続されている。また、制御部42aには、圧縮機10と、電子膨張弁13と、吸入比例弁21とが接続されている。
【0762】
(3-2)動作
庫内空気調節装置は、制御部42aにより庫内温度の制御が行われる。まず、庫内空気調節装置の冷却について示す。
【0763】
(3-2-1)冷凍運転
庫内空気調節装置は、冷媒回路50に冷媒が循環することにより庫内の熱を奪い、熱を外部へ放出するものである。以下、冷媒回路50における冷媒の循環について説明する。
【0764】
まず冷媒は、蒸発器17により庫内の熱を吸熱する。吸熱した冷媒は、吸入比例弁21を経て圧縮機10に導かれる。圧縮機10において、冷媒は、高温高圧の気体に圧縮される。圧縮機10から凝縮器25へ送られた冷媒は、凝縮器25において、外部へ熱を放熱し、温度が下がる。これにより、冷媒は、蒸発器17で吸熱した熱を、凝縮器25で放熱したことになる。さらに冷媒は、凝縮器25から電子膨張弁13に送られて膨張され、蒸発器17に戻される。
【0765】
制御部42aは、圧縮機10、電子膨張弁13、及び吸入比例弁21を制御することにより、冷媒回路50における冷媒の循環量などを制御して、庫内温度の制御を行う。冷凍運転を行う場合には、冷媒の循環量を多くして、庫内が入力部43における設定温度になるように、庫内の熱を外部へ廃熱する。庫内が設定温度になると、圧縮機10を停止させる。
【0766】
冷凍運転において、蒸発器17を通って蒸発器用ファン132によって庫内に吹き出される空気温度は、-10℃~-35℃である。
【0767】
(3-2-2)チルド運転
一方、チルド運転を行う場合には、庫内の温度を摂氏零度より高い温度にするため、庫内空気調節装置の冷凍能力を抑えて運転を行う。以下、冷凍能力を抑える方法を説明する。
【0768】
冷凍能力を抑えるためには、まず吸入比例弁21を絞る。これにより、吸入比例弁21までの配管などに湿り飽和状態で冷媒を溜めることができ、冷媒回路50を循環する冷媒の量が抑えられる。さらに、この状態で、電子膨張弁13を開けて調節することにより、蒸発器17の出口においても、冷媒が湿り飽和状態になる。これにより、蒸発器17の出口から吸入比例弁21までの配管に湿り飽和状態で冷媒を溜めることができるため、冷媒回路50を循環する冷媒の量を十分に減少させることができる。このため、冷凍能力が抑えられて、チルド運転が好適に為される。
【0769】
また、電子膨張弁13をさらに開けることにより、蒸発器17の内部全体に湿り飽和状態の冷媒を溜めることができる。このとき、蒸発器17の内部における冷媒の圧力は一定であるため、蒸発器17に溜められている湿り飽和状態の冷媒の温度は一定になる。冷媒の温度が一定になるため、蒸発器における庫内からの吸熱が均一になる。よって、庫内における温度ムラが抑えられる。
【0770】
チルド運転において、蒸発器17を通って蒸発器用ファン32によって庫内に吹き出される空気温度は、-10℃よりも高い温度である。
【0771】
(3-2-3)チルド運転時における圧縮機の保護
冷凍運転を行っているときの圧縮機の吸入口における冷媒の状態は、過熱蒸気になっている。
【0772】
しかし、冷凍能力を抑えてチルド運転を行うと、圧縮機の吸入口における冷媒の状態が湿り飽和状態になることがある。湿り飽和状態の冷媒は、液体状態の冷媒を含む。液体は気体と異なり非圧縮であるため、圧縮機10が冷媒を圧縮する際に液体状態の冷媒が多いと、圧縮機10の内部に耐圧以上の高圧が生じて損傷が生じるおそれがある。さらに、液体状態の冷媒が圧縮機10の潤滑油を外部へ運ぶこともある。このことが原因で、潤滑油の量が減少して、圧縮機10が焼き付きをおこす可能性がある。
【0773】
よって、制御部42aにより圧縮機10の吸入口における冷媒の状態が過熱蒸気になるように、電子膨張弁13と吸入比例弁21とを制御する必要がある。したがって、圧縮機10の吸入口における冷媒の状態を知る必要があるが、この圧縮機10の吸入口における冷媒の状態は、冷媒の圧力と温度とから知ることができる。
【0774】
しかし、冷媒の循環量が少ない場合、圧縮機10の吸入口における圧力が非常に低く、通常の圧力センサでは不正確となり、状態が不明確になる。
【0775】
そこで、保護部42bにより、油温センサ45及び圧力温度センサ46の検知結果から圧縮機10の吸入口における圧力及び温度を推測する。圧力温度センサ46により圧縮機吐出側における冷媒の過熱度が明らかになる。この過熱度により、圧縮機10の吸入口における冷媒の湿り度を知ることができる。さらに、油温センサ45の結果により、冷媒の湿り度が推測できるため、より正確な判断が可能である。これらにより、制御部42aにより圧縮機10の損傷を避けるように冷凍能力の制御を行うことができる。
【0776】
(3-2-4)デフロスト運転
長時間の運転によって蒸発器17に霜が付いた場合には、その霜を溶かすためのデフロスト運転が行われる。デフロスト運転では、バイパス弁20を開けて、三方切換弁26を切り替えて、圧縮機10から吐出されたホットガスを蒸発器17に流して、蒸発器17に付いた霜を溶かす。
【0777】
(3-3)庫内空気調節装置の変形例A
上記の図2に示す冷媒回路50に代えて、図4に示す冷媒回路を採用してもよい。この冷媒回路は、主として、圧縮機110、凝縮器125、レシーバ114、ドライヤー124、エコノマイザ熱交換器126、電子膨張弁113、及び蒸発器117から成り、配管により順次接続されている。図4の冷媒回路では、吸入比例弁は用いていない。また、図4に示す冷媒回路は、再熱用のコイル127を備えている。
【0778】
圧縮機110は、インバータ制御によって容量が変わる圧縮機である。圧縮機110には、その内部に油温センサ145が設けられ、その吐出側に圧力温度センサ146が設けられている。油温センサ145は、圧縮機110の潤滑油(冷凍機油)の油温を検知するセンサである。
【0779】
凝縮器125は、冷媒から熱を奪い、その奪った熱を放熱するものである。凝縮器125の近傍には、凝縮器用ファン131が配置されている。
【0780】
蒸発器117は、庫内空気調節装置の内部からの熱を吸熱して冷媒に熱を与えるものであり、電子膨張弁113の出口側に設けられている。蒸発器117の近傍には、蒸発器用ファン132が配置されている。
【0781】
エコノマイザ熱交換器126を通る中間インジェクション回路126aによって圧縮機110に流れ込む中間圧冷媒は、圧縮機110の圧縮室において圧縮途中の冷媒を冷却する。
【0782】
デフロスト運転時には、弁128を開けて、圧縮機110から吐出されたホットガスを蒸発器117に流す。
【0783】
(3-4)庫内空気調節装置の変形例B
上記の変形例Aの図4に示す冷媒回路では、圧縮機110から吐出されたホットガスを蒸発器117に流すことで蒸発器17に付いた霜を溶かす構成を採っているが、それに加えて、あるいは、それに代えて、図5に示すように、電気ヒータ280を蒸発器17の近傍に配置してもよい。
【0784】
これにより、蒸発器17に付いた霜を早く溶かし終わることができる。あるいは、ホットガスを蒸発器117に流さずに蒸発器117に付いた霜を溶かすことができる。
【0785】
(3-5)庫内空気調節装置の変形例C
上記の変形例の庫内空気調節装置では、圧縮機としてインバータ式の圧縮機を採用しているが、これに代えて、デジタル式の容量制御圧縮機を採用してもよい。この場合には、インバータ基板が不要となる。
【0786】
また、レシプロ型のインバータ圧縮機など、他の形式の圧縮機を採用してもよい。
【0787】
(3-6)庫内空気調節装置の変形例D
上記の変形例の庫内空気調節装置では、電子膨張弁を採用しているが、これに代えて、感温式の膨張弁を採用してもよい。
【0788】
(4)コンテナに装着される庫内空気調節装置
図6図9は、上記の庫内空気調節装置をコンテナ220に装着したものを示している。図6は、庫内空気調節装置200が装着されたコンテナ220の外観を示す分解斜視図である。図7は、その概略正面図である。図8は、その概略側面図である。図9は、庫内の換気を行うための空気流路を示す側面図である。
【0789】
庫内空気調節装置200は、海上コンテナや陸上コンテナとして取り扱われるコンテナ220の開口面220aに装着されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、コンテナ220の庫内を冷却する装置である。コンテナに装着される庫内空気調節装置200は、上記の冷媒回路50などの他、コンテナ220の開口面220aを覆うフレーム230を備えている。
【0790】
フレーム230は、その下部がコンテナ220の庫内側に向かって突出した形状を有している(図8参照)。フレーム230の庫外側の下部には、凝縮器用ファン31、冷媒回路50を構成する圧縮機10、凝縮器25等が配置される庫外側空間OSが形成される。また、フレーム230の庫内側には、フレーム230と間隔を空けて仕切板240が配置されている。この仕切板240は、サポート(図示せず)を介してフレーム230に装着されている。そして、フレーム230と仕切板240との間には、蒸発器用ファン32、冷媒回路50を構成する蒸発器17等が配置される庫内側空間ISが形成されている。また、仕切板240の上部には、コンテナ220の庫内の空気を庫内側空間ISに吸入するための吸入口240aが形成されており、仕切板240の下部には、庫内側空間ISの空気を庫内に吹き出すための吹出口240bが形成されている。
【0791】
図8の白抜きの矢印で示すように、庫内の空気は吸入口240aから庫内側空間ISの上部に吸い込まれ、蒸発器用ファン32によって下方に流される。蒸発器17を通るときに冷却された空気は、庫内側空間ISの下部から吹出口240bを通って庫内に吹き出される。
【0792】
また、図8及び図9に示すように、庫内空気調節装置200は、さらに換気部を備えている。換気部は、排気用空気流路260と、給気用空気流路270とを備えている。排気用空気流路260の上端は、庫内側空間ISの蒸発器用ファン32の下流側の正圧空間IS2に位置している。正圧空間IS2は、蒸発器用ファン32によって大気圧よりも高い圧力になっている。排気用空気流路260の下端は、庫外側空間OSの凝縮器用ファン31の上流側の負圧空間OS2に位置している。負圧空間OS2は、凝縮器用ファン31によって大気圧よりも低い圧力になっている。排気用空気流路260の内部には、流路面積を調整するための排気ダンパ261が設けられている。給気用空気流路270の上端は、庫内側空間ISの蒸発器用ファン32の上流側の負圧空間IS1に位置している。負圧空間IS1は、蒸発器用ファン32によって大気圧よりも低い圧力になっている。給気用空気流路270の下端は、庫外側空間OSの下部の大気圧空間OS1に位置している。大気圧空間OS1は、概ね庫外の大気圧と同じ圧力になっている。給気用空気流路270の内部には、流路面積を調整するための給気ダンパ271が設けられている。図9の排気用空気流路260及び給気用空気流路270の中に示す白抜きの矢印で示すように、排気用空気流路260及び給気用空気流路270の内部を空気が流れる。庫内に通じる庫内側空間ISから庫外に、排気用空気流路260を通って空気が排気される。給気用空気流路270を通って、庫外の外気が庫内側空間ISに供給される。これらの排気、給気によって、庫内の換気が行われる。排気量、給気量は、排気ダンパ261及び給気ダンパ271の開度調整によって変えることができる。
【0793】
さらに、図9に示すように、庫内空気調節装置200は、冷媒漏洩検知センサ290を備えている。庫内に通じる庫内側空間ISにおいて例えば蒸発器17から冷媒が漏洩した場合、冷媒が庫内に充満することを抑えるために、排気用空気流路260による強制的な強い換気を行うことが好ましい。そこで、庫内空気調節装置200では、冷媒漏洩検知センサ290を設置している。冷媒漏洩検知センサ290は、排気用空気流路260の下端の出口付近に設置され、庫内側空間ISにおいて冷媒漏洩が生じたときに、排気用空気流路260を通って流れてくる冷媒の存在を検知する。冷媒漏洩検知センサ290が冷媒漏洩を検知したときには、通常換気時における排気ダンパ261及び給気ダンパ271の開度ではなく、排気ダンパ261及び給気ダンパ271を全開にした状態で強い換気を行うことになる。なお、冷媒漏洩の検知時には、電子膨張弁13を閉め、蒸発器17から圧縮機10や凝縮器25へと冷媒を移動させた上で、圧縮機10を停止させる制御を行わせることが好ましい。
【0794】
(5)
以上、各実施形態を説明したが、請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0795】
10 圧縮機
13 電子膨張弁(減圧器)
17 蒸発器
25 凝縮器
50 冷媒回路
200 庫内空気調節装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0796】
【文献】国際公開第2005/105947号
【文献】特開2018-184597号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9