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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】噴流はんだ付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20240619BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240619BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B23K1/00 E
H05K3/34 506Z
B23K3/00 310P
B23K1/00 330E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024508456
(86)(22)【出願日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2023021650
(87)【国際公開番号】W WO2023243576
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2022094829
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川島 泰司
(72)【発明者】
【氏名】田口 寛
(72)【発明者】
【氏名】倉本 恭子
(72)【発明者】
【氏名】半澤 編理
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 智丈
(72)【発明者】
【氏名】篠原 克宏
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-001134(JP,A)
【文献】特開2005-236066(JP,A)
【文献】特開2002-190666(JP,A)
【文献】特開2000-151090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
H05K 3/34
B23K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだが供給される基板を搬送するための搬送爪から、はんだを除去するためのはんだ除去機構であって、
搬送爪の凹部内又は前記搬送爪の下方を相対的に通過可能な当接体を備え
当接体は、屈曲部と、屈曲部から搬送爪の移動方向下流側に向かって延在する先端部を有する、はんだ除去機構。
【請求項2】
当接体は、前記搬送爪の凹部内を相対的に通過可能な第一当接体と、前記搬送爪の下方を相対的に通過可能な第二当接体とを有する、請求項1に記載のはんだ除去機構。
【請求項3】
当接体よりも搬送爪の移動方向下流側に位置付けられたブラシを備える、請求項1又は2に記載のはんだ除去機構。
【請求項4】
当接体は当接板からなる、請求項1又は2に記載のはんだ除去機構。
【請求項5】
当接体の下方に延在して設けられ、前記搬送爪から落下したはんだを貯留槽に案内するための案内部を備える、請求項1又は2に記載のはんだ除去機構。
【請求項6】
当接体よりも搬送爪の移動方向上流側に設けられ、上下方向に延在するカバーを備える、請求項1又は2に記載のはんだ除去機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを基板に供給する噴流はんだ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、噴流はんだ付け装置等のはんだ付け装置において基板を搬送するための複数の搬送爪が用いられている。はんだ付け時に噴流した溶融はんだがこの搬送爪にかかり、溶融はんだが搬送爪に付いたまま固化して、搬送爪にはんだが付着することがあることから、搬送爪に付着したはんだを除去することが従来から行われている。特開2002-190666号公報では、搬送爪に付着したはんだを除去ブラシで除去する態様が従来例として示されており、吹き出しノズルから供給される熱風によってはんだを除去する態様が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
噴流はんだ付け装置にて用いるはんだ組成によってははんだの付着力が強く、従来のような除去ブラシや、吹き出しノズルから供給される熱風では、搬送爪に付着したはんだを取り除くことができないことがある。
【0004】
本発明は、搬送爪に付着したはんだをより確実に除去するためのはんだ除去機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概念1]
本発明のはんだ除去機構は、
はんだが供給される基板を搬送するための搬送爪から、はんだを除去するためのはんだ除去機構であって、
搬送爪の凹部内又は前記搬送爪の下方を相対的に通過可能な当接体を備えてもよい。
【0006】
[概念2]
概念1によるはんだ除去機構において、
当接体は、前記搬送爪の凹部内を相対的に通過可能な第一当接体と、前記搬送爪の下方を相対的に通過可能な第二当接体とを有してもよい。
【0007】
[概念3]
概念1又は2によるはんだ除去機構において、
当接体よりも搬送爪の移動方向下流側に位置付けられたブラシを備えてもよい。
【0008】
[概念4]
概念1乃至3のいずれか1つによるはんだ除去機構において、
当接体は当接板からなってもよい。
【0009】
[概念5]
概念1乃至4のいずれか1つによるはんだ除去機構において、
当接体は、屈曲部と、屈曲部から搬送爪の移動方向下流側に向かって延在する先端部を有してもよい。
【0010】
[概念6]
概念1乃至5のいずれか1つによるはんだ除去機構において、
当接体の下方に延在して設けられ、前記搬送爪から落下したはんだを貯留槽に案内するための案内部を備えてもよい。
【0011】
[概念7]
概念1乃至6のいずれか1つによるはんだ除去機構において、
当接体よりも搬送爪の移動方向上流側に設けられ、上下方向に延在するカバーを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送爪に付着したはんだをより確実に除去するためのはんだ除去機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態によるはんだ付け装置を示した概略図である。
図2図2は、本実施の形態による搬送爪及び当接体の関係を示した縦断面図である。
図3図3は、本実施の形態による当接体及びブラシを示した写真である。
図4図4は、本実施の形態による当接体及びブラシを示した正面図である。
図5図5は、本実施の形態によるはんだ除去機構の一例を示した側方図である。
図6図6は、本実施の形態によるはんだ除去機構の別の例を示した側方図である。
図7図7は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の一例を示した側方図である。
図8図8は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の別の例を示した側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態
図1に示すはんだ付け装置は、例えば、半導体素子、抵抗、コンデンサ等の電子部品を回路上に搭載した基板200に対して、はんだ付け処理する装置である。典型的には電子部品等は基板200の下方側に位置付けられることになる。はんだ付け装置は、本体部1と、基板200を搬送する搬送部5とを有している。本体部1は、基板200を搬入する搬入口2と、基板200を搬出する搬出口3とを有している。基板200の搬送は、側方から見て所定の角度、例えば3~6度程度の傾斜をもって行われてもよい(図7及び図8参照)。この場合、基板搬送方向Aの上流と比較して下流の方が高い位置に位置付けられることになる。但し、これに限られることはなく、基板200の搬送が例えば水平に行われるようにしてもよい。搬送部5は、搬送レール6(図7参照)と、基板200を把持した状態で搬送レール6に沿って移動可能な搬送爪510(図2参照)と、搬送爪510を搬送レール6に沿って移動させるための駆動力を付与する搬送駆動部(図示せず)と、を有してもよい。搬送レール6としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等が使用されてもよい。搬送爪510は基板200を把持するための凹部511を有している(図2参照)。
【0015】
図1に示すように、本体部1には、基板200にフラックスを塗布するフラクサ10と、フラックスを塗布された基板200を予備加熱するプリヒータ部15と、溶融したはんだを噴流して基板200に接触させる噴流はんだ付け装置100と、はんだ付けされた基板200を冷却する冷却機20と、が設けられてもよい。搬送部5の搬送レール6に沿って搬送される基板200は、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ付け装置100及び冷却機20を順に通過することになる。なお、図1では、制御部50、記憶部60及び後述する操作部70以外について、はんだ付け装置が上方平面図で示されている。
【0016】
フラクサ10は、搬送された基板200にフラックスを塗布するために用いられる。フラックスは溶剤及び活性剤等を含んでもよい。フラクサ10は、複数の塗布装置を設けてもよい。はんだの種類や基板200の品種に応じて、フラックスの種類を使い分けるようにしてもよい。
【0017】
プリヒータ部15は、基板200を加熱することで、基板200を均一に所定の温度まで上昇させる。このように基板200を加熱すると、基板200の所定の箇所にはんだが付着されやすくなる。プリヒータ部15は、例えば、ハロゲンヒータが用いられる。ハロゲンヒータは、基板200を設定した温度まで急速に加熱させることができる。また。ヒータによって加熱された気体(熱風)をファンによって基板200に吹き付けて、基板200を加熱するようにしてもよい。また、プリヒータ部15としては、遠赤外線パネルヒータ等を用いてもよい。
【0018】
冷却機20は、図示しない冷却ファンを有し、噴流はんだ付け装置100ではんだ付け処理された基板200を冷却する。冷却ファンの制御はON及びOFFだけでもよいが、風速を調整する等するようにしてもよい。また、冷却機20としては、基板200が所定の温度となるまで冷却するようにチラー等を用いてもよい。
【0019】
図1に示す制御部50は、搬送部5、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ付け装置100、冷却機20、操作部70及び記憶部60に通信可能に接続されている。通信可能な接続には有線によるものと無線によるものの両方が含まれている。操作部70は、液晶表示パネルやテンキー等を有してもよく、典型的にはパソコン、スマートフォン、タブレット、タッチパネル等である。作業者が操作部70を操作することで、制御部50は、搬送部5による搬送速度や基板200を搬送するタイミング、フラクサ10でのフラックスの温度、フラックスの塗布量、プリヒータ部15の温度、噴流はんだ付け装置100の溶融はんだSの温度や、噴流量、噴流速度、冷却機20が有する冷却ファンのONやOFF等を制御するようにしてもよい。記憶部60は、操作部70で入力された情報や、制御部50の指示、噴流はんだ付け装置100の稼働時間等を記憶するようにしてもよい。なお、基板200の搬送速度は例えば毎秒1~3cm程度である。
【0020】
次に、基板200の処理方法の一例について、説明する。
【0021】
基板200が複数の搬送爪510(図2参照)に挟持された状態で、搬送レール6に沿って搬送爪510が移動されることで基板200が搬送される。基板200は、搬入口2から本体部1内に搬入される。基板200がフラクサ10上に到達すると、フラクサ10が、基板200の所定の箇所にフラックスを塗布する。
【0022】
搬送爪510は、フラクサ10でフラックスが塗布された基板200をプリヒータ部15に搬送する。プリヒータ部15は、基板200を所定の温度まで加熱する。
【0023】
次に、搬送爪510は、プリヒータ部15で所定の温度まで加熱された基板200を噴流はんだ付け装置100に搬送する。噴流はんだ付け装置100が、基板200の所定の箇所にはんだ付けを行う。噴流はんだ付け装置100が溶融はんだSを供給している間、第一供給口125から供給される溶融はんだSと、第二供給口135から供給される溶融はんだSは混じり合った状態となるとともに、搬送レール6よりも上方まで溶融はんだSが供給される態様となる。そして、溶融はんだSは、第一供給口125と第二供給口135との間において、搬送爪510によって搬送される基板200から離間しない構成になっている。なお、基板200が存在しない状態では、第二供給口135から供給される溶融はんだSを第一供給口125から供給される溶融はんだSが押し上げるようになり、第一開口部126に対応する複数の凸形状が溶融はんだSによって形成されることになる。
【0024】
次に、搬送爪510は、はんだ付けされた基板200を冷却機20に搬送する。例えば冷却機20の冷却ファンが、はんだ付け処理された基板200を所定の時間冷却する。基板200が冷却された後、搬送爪510が、基板200を搬出口3から排出すると、基板200へのはんだ付け処理が完了となる。
【0025】
この後、搬送爪510は搬送レール6に沿って周縁外方に折り返されて、搬入口2に向かって戻ることになる。このため、基板搬送方向Aと搬送爪510の搬送方向Bとは反対方向を向くことになる(図1参照)。搬送爪510が搬入口2に向かって過程において、搬送爪510ははんだ除去機構520を通過することになる。このようにはんだ除去機構520を搬送爪510が通過する際に、搬送爪510に付着したはんだがはんだ除去機構520によって取り除かれることになる。はんだ除去機構520は一対設けられており、基板200を把持する搬送爪510の各々に付着したはんだを除去できるようになっている。
【0026】
はんだ除去機構520を通過した搬送爪510が搬入口2に戻ると、別の基板200を搬送爪510が搬送することになる。
【0027】
典型的には、複数の搬送爪510が搬送レール6に沿って多数配置されており、多数の搬送レール6のうちの一部である複数の搬送爪510によって、順次、基板200が搬送されることになる。
【0028】
次に、噴流はんだ付け装置100について簡単に説明する。
【0029】
図7及び図8に示すように、噴流はんだ付け装置100は、溶融はんだSを貯留する貯留槽110と、溶融はんだSを基板200に供給するための供給口と、を有してもよい。供給口は、2種類の第一供給口125及び第二供給口135を有してもよい。そして、第一駆動部である第一ポンプ141からの駆動力を受けて、第一供給口125から溶融はんだSが噴出され、第二駆動部である第二ポンプ146からの駆動力を受けて、第二供給口135から溶融はんだSが噴出されてもよい。
【0030】
第一供給口125及び第二供給口135から噴出される溶融はんだSは下方から上方に向けて噴流される。第一ポンプ141からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴流させ、基板200の所定の箇所にはんだを付着させる。同様に、第二ポンプ146からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴流させ、基板200の所定の箇所にはんだを付着させる。
【0031】
噴流はんだ付け装置100の第一供給口125は複数の第一開口部126を有しており、第一開口部126は一次噴流ノズルを構成する。複数の第一開口部126は大量の溶融はんだSを勢いよく基板200に供給するために用いられる。第二供給口135の第二開口部136は二次噴流ノズルであり、第一供給口125と比較して弱い勢いで溶融はんだSを基板200に供給するために用いられる。第一供給口125から供給される噴流はんだは勢いよく溶融はんだSを基板200に衝突させる動的な供給であって、溶融はんだSを基板200の隅々まで行きわたらせるための供給である。他方、第二供給口135から供給される噴流はんだは静的な供給であり、静かな流れからなる溶融はんだS内を通過させることで、基板200の電極等にはんだを綺麗に付けるための供給である。なお、前記噴流はんだ付け装置の構成及び、溶融はんだの噴流の勢い等の条件は一例であり、本願は前記構成に限定されない。
【0032】
第一供給部120は、第一筐体121と、第一筐体121の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1つ又は複数の第一開口部126を有する第一供給口125と、を有している。第一開口部126は第一筐体121の上面から上方に突出して設けられてもよい。第二供給部130は、第二筐体131と、第二筐体131の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1又は複数の第二開口部136を有する第二供給口135と、を有している。第一筐体121と第二筐体131とは離間して設けられてもよいが(図7参照)、これらは一体となって設けられてもよい(図8参照)。第一筐体121と第二筐体131が一体となる場合には、壁面の一部が共有されるようにしてもよい。
【0033】
第一筐体121及び第二筐体131の上面であって基板搬送方向Aに沿った第一供給口125と第二供給口135と間には、溶融はんだSが下方に落下する開口や間隙が設けられていない態様を採用してもよい。溶融はんだSが下方に落下する開口や間隙が設けられている場合には、溶融はんだSが酸素に触れてしまう表面積が大きくなってしまい、酸化物が生成されてしまう。他方、本態様のように基板搬送方向Aに沿った第一供給口125と第二供給口135と間に開口や間隙といった溶融はんだSが落下する箇所が設けられていない態様を採用した場合には、基板搬送方向Aに沿った第一供給口125と第二供給口135と間で溶融はんだSが落下することがないことから、溶融はんだSの酸化物が生成されることを防止できる。
【0034】
次に、はんだ除去機構520について説明する。
【0035】
図2に示すように、本実施の形態のはんだ除去機構520は、基板200が搬送爪510から取り除かれて搬送された後において、移動する搬送爪510の凹部511内又は移動する搬送爪510の下方を相対的に通過可能な当接体530を有している。図2において基板200を把持している搬送爪510は紙面のおもて面側に向かって移動することとなるが、基板200を把持していない図2の左右の両側で示されている搬送爪510は紙面の裏面側に向かって移動することとなる。本願において「通過可能」というのは相対的に通過できることを意味している。典型的には、搬送爪510が移動し、当接体530が停止している状態において、搬送爪510が当接体530を通過することで、移動する搬送爪510の凹部511内又は移動する搬送爪510の下方を当接体530が相対的に通過することになる。
【0036】
当接体530は、搬送爪510に付着して硬化したはんだに当接して、除去するためのものである。このような当接体530を採用することで、搬送爪510に付着して硬化したはんだをより確実にそぎ落とすことができる。従来のようにブラシだけを用いた場合には、搬送爪510に強固に付着したはんだをそぎ落とすことができないことがあった。この点、本実施の形態のような当接体530を採用することで、そのような事態が発生することを防止できる。特にSn-58Bi(Bi:58質量%、残部Sn)等の特定のはんだの場合には搬送爪510に強固にはんだが付着する傾向にあることから、本実施の形態のような当接体530を設けることは有益である。より具体的には、Sn-58Bi等のSn-Bi系はんだの付着力はSAC(Sn-Ag-Cu)組成よりもかなり強く、従来のブラシ590では付着したはんだを落とせないことがある。この点、本実施の形態の態様を採用することで、付着力の強いSn-Bi系はんだもより確実にそぎ落とせることとなる。また、Sn-Bi系はんだはSAC組成よりも搬送爪510への付着量も多い事から、そぎ落とすはんだ量が多くなる。このため、従来のようなブラシ590を採用した場合には、詰まり等も懸念される。これに対して、本実施の形態の態様によれば、ブラシ590を採用した場合のように、そぎ落としたはんだが除去機構に絡む要素がないため、そのような懸念も減らすことができる。なお、付着力の強いはんだとはSn-Bi系はんだに限られず、Sn-Sb系はんだ等別の付着力の強いはんだ組成においても本実施の形態は効果を発揮することができる。
【0037】
基板200を挟持する搬送爪510は一対で設けられることから、当接体530も一対で設けられてもよい。はんだ除去機構520は、図5及び図6で示すように、少なくとも一部が噴流はんだ装置の貯留槽110の上方に位置してもよい。はんだ除去機構520を噴流はんだ装置の貯留槽110の上方に設置することで、搬送爪510よりそぎ落としたはんだをそのまま貯留槽110内へ落とすことで、はんだ付け用に再利用することができ、また噴流はんだ付け装置100内にそぎ落としたはんだが堆積するのを抑制することができる。搬送爪510は樹脂や金属から構成されてもよく、金属からなる場合にはSUS等のステンレスからなってもよい。
【0038】
図2図5及び図6で示すように、当接体530は、移動する搬送爪510の凹部511内を相対的に通過可能となり、搬送爪510の凹部511内に付着して硬化したはんだに当接可能な第一当接体540と、移動する搬送爪510の下方を相対的に通過可能となり、搬送爪510の下方に付着して硬化したはんだに当接可能な第二当接体550とを有してもよい。第一当接体540は、凹部511よりも若干小さく凹部511の形状に合致する形状となってもよい。第一当接体540は凹部511の形状と相似形状となってもよい。このように第一当接体540が凹部511よりも小さく凹部511の形状に合致する形状とすることで、凹部511に付着したはんだをより確実に除去することができる。
【0039】
図3及び図4で示すように、第一当接体540は当接板からなってもよい。第一当接体540は、第一基端部545と、第一先端部543と、第一基端部545と第一先端部543との間に設けられる第一屈曲部541と、を有してもよい。第一先端部543は、第一屈曲部541を基準として搬送爪510の移動方向Bの下流側(図3では右側)に向かって延在してもよい。(第一当接体540は基本的には搬送爪510に当接しない構成となっているものの)第一当接体540が第一屈曲部541を設けずに直線状となっている場合には、何らかの原因で第一当接体540が搬送爪510へ引っかかってしまい、搬送爪510の移動を停止させてしまう可能性がある。これに対して、本態様のように第一先端部543が搬送爪510の移動方向Bの下流側に向かって延在する構成とすることで、第一当接体540の第一先端部543が何らかの理由で搬送爪510に当接しても、搬送爪510に引っかかって搬送爪510の移動を停止させてしまう可能性を低減させることができる。搬送爪510の移動が停止してしまうと、基板200への処理自体が止まってしまうが、本態様を採用することで、そのような自体が発生してしまうことを防止できる。なお、第一先端部543ははんだ付け装置の内側に向かって延在する構成となっており、図2で言えば右側の第一当接体540の第一先端部543は左側に向かって延在し、左側の第一当接体540の第一先端部543は右側に向かって延在している。
【0040】
第一当接体540と同様、第二当接体550も当接板からなってもよい。図3及び図4で示すように、第二当接体550は、第二基端部555と、第二先端部553と、第二基端部555と第二先端部553との間に設けられる第二屈曲部551と、を有してもよい。第二先端部553は、第二屈曲部551を基準として搬送爪510の移動方向Bの下流側(図3では右側)に向かって延在してもよい。第一当接体540で述べたのと同様の理由から、このように第二先端部553が搬送爪510の移動方向Bの下流側に向かって延在する構成とすることで、第二当接体550が搬送爪510への引っかかることを防止することができる。つまり、第二当接体550も基本的には搬送爪510に当接しない構成となっているが、第二当接体550が何らかの原因で搬送爪510に当接しても、第二当接体550が搬送爪510の移動を妨げることがないようにすることができる。なお、第二先端部553も第一先端部543と同様、はんだ付け装置の内側に向かって延在する構成となっている。
【0041】
当接体530は金属からなってもよく、SUS等のステンレスや鉄であってもよい。但し、錆が生じにくいという観点からするとステンレスであることが好ましい。第一当接体540及び第二当接体550ははんだ付け装置に一対だけ設けられてもよいが、複数対設けられてもよい。
【0042】
図5及び図6で示すように、当接体530の下方に位置し、搬送爪510から落下した固体のはんだを噴流はんだ装置の貯留槽110に案内するための案内部580が設けられてもよい。このような案内部580を設けることで、より確実に当接体530に当接してそぎ落とされたはんだを貯留槽110に案内することができ、当該はんだを溶かして再利用することができる。またより確実に噴流はんだ付け装置100内にそぎ落としたはんだが堆積するのを抑制することもできる。特にSn-Bi系はんだのような特定のはんだでは搬送爪510への付着量が多くなることから、このような態様を採用することは、再利用の観点及び噴流はんだ付け装置100内にそぎ落としたはんだが堆積するのを抑制する観点の両観点からは非常に有益なものになる。
【0043】
搬送爪510の移動方向Bの下流側(図5及び図6では左側)に位置し、上下方向に延在するカバー585が設けられてもよい。本願の発明者らの検討では、搬送爪510からそぎ落とされたはんだは移動方向Bの上流側(図5及び図6では左側)に飛び散ってしまう傾向にあるが、このようなカバー585を設けることで、当接体530に接触してそぎ落とされたはんだが搬送爪510の移動方向Bの上流側(図5及び図6では左側)に飛び散ってしまうことを防止することができる。本実施の形態では、カバー585と案内部580とが一体になっており、これらが連結部589を介して連結されている態様となっているが、このような態様に限られることはなく、カバー585と案内部580とは別体になってもよい。但し、本態様のようにカバー585と案内部580が一体となっている場合には、カバー585にぶつかった固体のはんだをそのまま案内部580によって貯留槽110に案内することができる点で有益である。
【0044】
当接体530よりも搬送爪510の搬送方向Bの下流側(図5及び図6では右側)に位置付けられたブラシ590が設けられてもよい。このようなブラシ590を設けることで、搬送爪510に付着したはんだをより確実に除去することができる。つまり、金属板等からなる当接体530によって搬送爪510に付着したはんだを削ることができても、削ったはんだが搬送爪510に乗った状態となることがある。この点、本態様のようにブラシ590を設けておくことで、搬送爪510に乗ったはんだを落とすことができる。ここでブラシ590の材質が金属からなる場合には、その効果も高くなる点で有益である。但し、ブラシ590の材質は特に限定されるものではなく、例えば馬の毛からなるブラシ590であってもよい。ブラシ590が金属からなる場合には、SUS等のステンレスや鉄であってもよい。但し、錆が生じにくいという観点からするとステンレスであることが好ましい。図3で示すように当接体530とブラシ590は一体となって構成されてもよい。
【0045】
当接体530は搬送爪510の上方において付着したはんだに当接する第三当接体560を有してもよい(図6参照)。搬送爪510の上側にはんだが付着することは通常は起こらないが、何らしかの理由ではんだが付着することもあることから、このような第三当接体560が設けられてもよい。第三当接体560もまた、第一当接体540及び第二当接体550と同様、第三当接体560の先端側が搬送爪510の搬送方向Bの下流側(図6では右側)に向かって延在してもよい。
【0046】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した各実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0047】
110 貯留槽
200 基板
510 搬送爪
511 凹部
520 はんだ除去機構
530 当接体
540 第一当接体
541 第一屈曲部
543 第一先端部
550 第二当接体
551 第二屈曲部
553 第二先端部
580 案内部
585 カバー
590 ブラシ
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8