(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】風力タービン装置及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
F03D3/06 Z
(21)【出願番号】P 2020138826
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-07-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開1: 試験日 令和1年10月5日、令和1年11月1日、令和1年11月14日、令和1年11月19日 試験場所 富津海岸 公開2: 公開日 令和1年11月28日 公開場所 ウェリントン(ニュージーランド) 公開3: 掲載日 令和1年12月20日 ウェブサイトアドレス http://www013.upp.so-net.ne.jp/tmit/index.html http://www013.upp.so-net.ne.jp/tmit/news/渦巻き型凧発電風車.pdf 公開4: 放送日 令和1年12月24日 放送番組 株式会社TBSテレビ 理論上可能です。
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520315844
【氏名又は名称】株式会社TMIT
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕矩
(72)【発明者】
【氏名】ロデリック リード
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大希
(72)【発明者】
【氏名】草谷 大郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 広樹
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0281677(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0192068(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0052014(US,A1)
【文献】米国特許第04491739(US,A)
【文献】米国特許第04084102(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架体に対して回転可能に取り付けられ、風力によって回転軸周りに回転すると共にその回転トルクを発電機に伝達する風力タービン装置であって、
前記懸架体と前記発電機との間に複数段に亘って同軸に配置される複数の剛性リング体と、
前記複数の剛性リング体の少なくとも一つに設けられ、風力によって剛性リング体を一方向に回転させるタービンブレードと、
前記複数の剛性リング体の配列方向に沿って延在し、前記複数の剛性リング体同士を同軸に相互連結する複数の第1柔軟性連結線材と、
前記第1柔軟性連結線材に対して傾斜配置されるように、上下に隣接配置される一対の剛性リング体同士を連結する複数の第2柔軟性連結線材と、
を備え、
前記第1柔軟性連結線材及び前記第2柔軟性連結線材が、糸、紐、ライン、ストリング、ワイヤ、テグス、縄、綱、ケーブル、又はテザーであり、風力によって前記複数の剛性リング体が回転軸周りに回転する際、前記第2柔軟性連結線材を介して上段側に位置する剛性リング体の回転トルクが下段側に位置する剛性リング体に伝達される、
風力タービン装置。
【請求項2】
前記第1柔軟性連結線材が、前記懸架体側に位置する最上段の剛性リング体から前記発電機側に位置する最下段の剛性リング体に至るまで延在し、且つ、前記懸架体からの張力を最上段の剛性リング体から最下段の剛性リング体まで伝達する、
請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項3】
前記複数の剛性リング体の各々には、周方向における複数箇所に各第1柔軟性連結線材と連結される連結部が設けられている、
請求項1又は2に記載の風力タービン装置。
【請求項4】
前記連結部は、各剛性リング体の周方向に等間隔で配置されている、請求項3に記載の風力タービン装置。
【請求項5】
前記第2柔軟性連結線材は、上下に隣接配置される一対の剛性リング体と、当該一対の剛性リング体同士を連結すると共にこれらの周方向に隣接する一対の第1柔軟性連結線材とによって囲まれる四角形要素を複数の要素に分割するように上下に隣接配置される一対の剛性リング体同士を連結している、
請求項3又は4に記載の風力タービン装置。
【請求項6】
前記第2柔軟性連結線材が、前記四角形要素の各々における頂点を形成する4つの連結部のうち、上段側に位置する剛性リング体と回転方向側に位置する第1柔軟性連結線材とが連結される第1連結部と、当該第1連結部の対角方向に位置する第2連結部との間に張設されることで各四角形要素を2つの三角形要素に2分する、
請求項5に記載の風力タービン装置。
【請求項7】
前記タービンブレードは、少なくとも最上段の剛性リング体に設けられている、請求項1から6の何れか1項に記載の風力タービン装置。
【請求項8】
前記タービンブレードは、前記剛性リング体の周方向における複数箇所に等間隔で接続され、前記剛性リング体との接続箇所から前記剛性リング体の外側へ向けて延設されている、請求項1から7の何れか1項に記載の風力タービン装置。
【請求項9】
前記第1柔軟性連結線材は、前記回転軸の方向に沿って略直線状に延在している、請求項1から8の何れか1項に記載の風力タービン装置。
【請求項10】
前記第2柔軟性連結線材は、少なくとも一部が長手方向に伸縮可能な弾性部を含
み、風が強い場合と比べて風が弱い場合に前記一対の剛性リング体同士の間を狭める、請求項1から9の何れか1項に記載の風力タービン装置。
【請求項11】
前記懸架体が凧である請求項1から10の何れか1項に記載の風力タービン装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の風力タービン装置と、
前記風力タービン装置を懸架する懸架体と、
前記風力タービン装置から伝達される回転トルクによって発電を行う発電機と、
を備える風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン装置及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風車と当該風車の回転運動を電気エネルギーに変換する発電機を備えた風力発電装置が広く知られている。風力発電装置は、一般に、地上の構築物などによる風の乱れや風速低下を避けるためにある程度の高度に風車を設置する必要がある。そのため、風車を支える支柱には剛性が要求され、軽量化を困難なものとしている。また、一般に、風力発電装置における風車を支持する支柱は、コンクリート製の基礎等に埋設されており、その設置や運搬・移動を容易に行うことはできない。
【0003】
これに関連して、鉄塔等の建築物や凧に懸架される風力タービン装置において、タービンブレードを有する多段配置されたタービンアセンブリをタービンブレードの回転軸に沿って平行に配置された複数の線材を介して連結することで回転トルクを発電機に伝達する技術も提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された風力タービン装置においては、タービンアセンブリ同士が回転軸に沿った線材のみによって連結されているため、回転軸方向に沿った張力については線材を介して伝達できるものの、線材はねじり剛性が小さく、且つ、圧縮力に対しても抵抗することができない。そのため、多段配置されているタービンアセンブリ同士を連結する線材に捻じれや撓みが生じ易く、タービン装置全体の保形を維持することが難しい。その結果、タービンアセンブリの回転トルクを効率良く発電機に伝達することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量且つコンパクトで設置、運搬及び移動が容易であり、風力による回転トルクを効率良く発電機へ伝達することが可能な風力タービン装置に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の風力タービン装置は、
懸架体に対して回転可能に取り付けられ、風力によって回転軸周りに回転すると共にその回転トルクを発電機に伝達する風力タービン装置であって、
前記懸架体と前記発電機との間に複数段に亘って同軸に配置される複数の剛性リング体と、
前記複数の剛性リング体の少なくとも一つに設けられ、風力によって剛性リング体を一方向に回転させるタービンブレードと、
前記複数の剛性リング体の配列方向に沿って延在し、前記複数の剛性リング体同士を同軸に相互連結する複数の第1柔軟性連結線材と、
前記第1柔軟性連結線材に対して傾斜配置されるように、上下に隣接配置される一対の剛性リング体同士を連結する複数の第2柔軟性連結線材と、
を備え、
風力によって前記複数の剛性リング体が回転軸周りに回転する際、前記第2柔軟性連結線材を介して上段側に位置する剛性リング体の回転トルクが下段側に位置する剛性リング体に伝達される。
【0008】
このように本発明の風力タービン装置は、トルクの伝達機構を柔軟性の線材を用いて構成したことにより、軽量且つコンパクトで設置や移動・収納を容易にできる。また、第2柔軟性連結線材が、第1柔軟性連結線材に対して傾斜配置されたことにより、風力によって前記複数の剛性リング体が回転軸周りに回転する際、第2柔軟性連結線材を介して上段側に位置する剛性リング体の回転トルクを下段側に位置する剛性リング体へ伝達してタービン装置の捻じれを抑え、タービンブレードによって得た回転トルクを効率良く発電機へ伝達することができる。
【0009】
前記風力タービン装置は、前記第1柔軟性連結線材が、前記懸架体側に位置する最上段の剛性リング体から前記発電機側に位置する最下段の剛性リング体に至るまで延在し、且つ、前記懸架体からの張力を最上段の剛性リング体から最下段の剛性リング体まで伝達してもよい。これにより、第1柔軟性連結線材が、最上段の剛性リング体から最下段の剛性リング体に至るまで直線的に連結すると共に、第1柔軟性連結線材に対して傾斜配置された第2柔軟性連結線材が、第1柔軟性連結線材の捻じれを抑制することにより、タービン装置全体の形状を安定して保つことができ、タービンブレードによって得た回転トルクを効率良く発電機へ伝達することができる。
【0010】
前記風力タービン装置において、前記複数の剛性リング体の各々には、周方向における複数箇所に各第1柔軟性連結線材と連結される連結部が設けられてもよい。これにより、第1柔軟性連結線材を剛性リング体の周方向における複数箇所に分散して接続できる。
【0011】
前記風力タービン装置において、前記連結部は、各剛性リング体の周方向に等間隔で配置されてもよい。これにより、第1柔軟性連結線材を剛性リング体の周方向にバランス良く接続できる。
【0012】
前記風力タービン装置において、前記第2柔軟性連結線材は、上下に隣接配置される一対の剛性リング体と、当該一対の剛性リング体同士を連結すると共にこれらの周方向に隣接する一対の第1柔軟性連結線材とによって囲まれる四角形要素を複数の要素に分割するように上下に隣接配置される一対の剛性リング体同士を連結してもよい。このように、剛性リング体と、第1柔軟性連結線材と、第2柔軟性連結線材とが連結された構成により、タービン装置全体の形状を安定して保つことができ、タービンブレードによって得た回転トルクを効率良く発電機へ伝達することができる。
【0013】
前記風力タービン装置において、前記第2柔軟性連結線材が、前記四角形要素の各々における頂点を形成する4つの連結部のうち、上段側に位置する剛性リング体と回転方向側に位置する第1柔軟性連結線材とが連結される第1連結部と、当該第1連結部の対角方向に位置する第2連結部との間に張設されることで各四角形要素を2つの三角形要素に2分してもよい。これにより、剛性リング体と、第1柔軟性連結線材と、第2柔軟性連結線材とがトラス構造を構成し、タービン装置全体の形状を安定して保つことができ、タービンブレードによって得た回転トルクを効率良く発電機へ伝達することができる。
【0014】
前記風力タービン装置において、前記タービンブレードは、少なくとも最上段の剛性リング体に設けられてもよい。これによりタービンブレードを懸架体側の適切な位置に配置できる。例えば、懸架体が、風力タービン装置の上段側を吊り上げた場合、高い位置にタービンブレードを配置でき、効率良く回転トルクを得ることができる。
【0015】
前記タービンブレードは、前記剛性リング体の周方向における複数箇所に等間隔で接続され、前記剛性リング体との接続箇所から前記剛性リング体の外側へ向けて延設されてもよい、これにより、タービンブレードを支える構造体として剛性リング体を兼用でき、大径のタービン装置を形成しやすくなり、効率良く回転トルクを得ることが可能になる。
【0016】
前記第1柔軟性連結線材は、前記回転軸の方向に沿って略直線状に延在してもよい。これにより、最上段の剛性リング体から最下段の剛性リング体にわたって懸架部による引張力を伝え、タービン装置の形状を適切に保つことができる。
【0017】
前記風力タービン装置において、前記第2柔軟性連結線材は、少なくとも一部が、長手方向に伸縮可能な弾性部材を含んでもよい。これにより第2柔軟性連結線材が、懸架体側に引張されていない場合に、第2柔軟性連結線材が縮むことにより、収納を容易にできる。また、懸架体として凧を用いた場合に、凧が受ける風力が減少し、凧による引張力が小さくなった場合でも、第2柔軟性連結線材が縮むことにより、風力タービン装置の形状を適切に保つことができる。
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の風力発電装置は、
前記風力タービン装置と、
前記風力タービン装置を懸架する懸架体と、
前記風力タービン装置から伝達される回転トルクによって発電する発電機と、を備える。
【0019】
これにより、前記風力発電装置は、風力タービン装置が軽量且つコンパクトになり、設置や移動・収納を容易できると共に、風力による回転トルクを発電機へ効率良く伝達することができ、発電効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設置及び移動・収納が容易で、風力による回転トルクを効率良く発電機へ伝達することが可能な風力タービン装置又は風力発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第一実施形態に係る風力発電装置の概略構成図である。
【
図2】発電機の回転ホイールに接続された風力タービン装置の側面図である。
【
図3】
図2のA-A線における風力タービン装置の断面図である。
【
図5】剛性リング体の連結部付近を示す部分拡大図である。
【
図6】剛性リング体の連結部付近を示す部分拡大図である。
【
図7】複数の剛性リング体、第1柔軟性連結線材、及び第2柔軟性連結線材の一部を模式的に示した図である。
【
図8】剛性リング体及び連結線材が構成するトラス構造の説明図である。
【
図9】変形例に係る風力タービン装置について、風が強い状態と風が弱い状態とを模式的に示す図である。
【
図10】第二実施形態に係る風力発電装置の概略構成図である。
【
図11】第三実施形態に係る複数の剛性リング体、第1柔軟性連結線材、及び第2柔軟性連結線材の連結構造を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。但し、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本発明は以下で説明する態様に限定されない。
【0023】
図1は、風力発電装置100の概略構成図、
図2は、発電機1の回転ホイール13に接続された風力タービン装置2の側面図、
図3は、
図2のA-A線における風力タービン装置2の断面図である。
【0024】
風力発電装置100は、発電機1と、風力タービン装置2と、凧3とを備える。凧3は、骨組み(フレーム)に、紙や、プラスチックシート、布等を張った本体31と、本体31に接続されたライン32,33とを有する。ライン32,33は、本体31を牽引する線状の部材であり、例えば糸や紐である。ライン32は、一端が本体31の四隅と接続され、他端が本体31から所定の距離で一つに結ばれている。ライン33は、一端がライン32に接続され、他端が風力タービン装置2と接続されている。
【0025】
凧3は、風を受けて浮上し、風力タービン装置2の一端を吊り上げ、風力タービン装置2のタービンブレード22が上空で風を受けることができるようにしている。即ち、本実施形態において、凧3は、風力タービン装置2を懸架する懸架体の一形態である。なお、凧3の構成は、特に限定されるものではなく、風力タービン装置2を懸架するための浮力が得られる大きさや強度を有するものであればよい。また、懸架体は、凧に限らず、気球であってもよい。
【0026】
発電機1は、本体11内の回転子(不図示)と連結されたドライブシャフト12や、ドライブシャフト12と同軸に接続された回転ホイール13、本体11を支持する支持台14を有している。発電機1の回転ホイール13は、風力タービン装置2と連結され、風力タービン装置2の回転に伴って回転し、ドライブシャフト12を回転させる。これにより発電機1は、回転子としての界磁又は電機子を回転させ、界磁と電機子とを相対的に変位させて電磁誘導により発電し、電力ケーブル15を介して出力する。
【0027】
支持台14は、地表に設置され、凧3が風を受けて風力タービン装置2の一端を引張した場合でも、発電機1の位置が変わらないように、本体11等を保持している。また、本実施形態の支持台14は、鉛直軸回りに回転可能に本体11を支持し、発電機1の地表上の位置を保ちつつ、発電機1の向きを変えられるようにしている。
【0028】
回転ホイール13は、外径形状が円形の円環部と、その円の中心部と周縁の円環部とを接続するスポークとを有し、中心部がドライブシャフト12と接続されている。なお、本実施形態では、風力タービン装置によって回転される回転ホイールと、ドライブシャフト12とが直結されているが、回転ホイールとドライブシャフト12との間に、ギアや、プーリー等を用いた変速機を備えてもよい。
【0029】
風力タービン装置2は、凧3に対して回転可能に取り付けられ、風力によって回転軸周りに回転すると共にその回転トルクを発電機1に伝達する。風力タービン装置2は、複数の剛性リング体21と、この複数の剛性リング体21の少なくとも一つに取り付けられたタービンブレード22と、複数の剛性リング体21を連結する第1柔軟性連結線材23及び第2柔軟性連結線材24と、凧3に対して回転可能に接続する接続部25とを備えている。なお、以下の説明で、第1柔軟性連結線材23と第2柔軟性連結線材24とを同時に示す場合は、連結線材23,24とも称す。
【0030】
連結線材23,24は、線形の部材であり、いわゆる糸、紐、ライン、ストリング、ワイヤ、テグス等である。また、連結線材23,24は、縄、綱、ケーブル、テザーなどであってもよい。連結線材23,24は、凧3が風を受けた際に、凧3によって引張されるので、この引張力によって破断しない程度の引っ張り強度を有している。また、連結線材23,24は、凧3によって容易に吊り上げられるように、軽量なものが望ましい。連結
線材23,24の材料は、例えば、木綿や、絹、麻、羊毛等の天然繊維を撚り合わせものや、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン等の化学繊維を用いたもの、布を紐状に成形したもの等が挙げられる。
【0031】
接続部25は、一端に連結線材23,24が接続され、他端に凧3のライン33が接続されている。このため凧3が風を受けて上昇した場合に、ライン32,33と共に接続部25が上昇し、風力タービン装置2の一端が吊り上げられる。また、接続部25は、例えば、スイベル、より戻し、回転継手等と呼ばれるものである。接続部25は、連結線材23,24が接続された端部から、ライン33が接続された端部に向かう方向を回転軸として、両端が互いに回転可能となっている。これによって風力タービン装置2が凧3に対して回転可能に接続され、風力タービン装置2が回転した場合であっても接続部25の一端のみが回転し、凧3のライン33に回転が伝わらない構成となっている。
【0032】
剛性リング体21は、
図2に示すように、発電機1と凧3との間に複数段(
図2の例では6段)に亘って同軸に配置されている。この複数段の剛性リング体21について、以下の説明では、凧側を上段側、発電機側を下段側とも称す。ここで上段又は下段は、便宜上の呼称であり、必ずしも物理的な高さを示すものではない。なお、風力タービン装置2は、使用時、風や重力の影響によって撓み、各部の位置が変化することがあるが、撓みのない状態では、
図2及び
図3のように構成されている。例えば風力タービン装置2を風の影響を受けずに垂直に吊り下げた状態では、
図3に示すように、各剛性リング体21の中心が一致し、各剛性リング体21の中心を通る仮想の回転軸26が
図2に示すように直線状となる。風力タービン装置2は、使用時に撓んだとしても、凧3によって、連結線材23,24に十分な張力が働いている場合には、
図2及び
図3に近い形状となるため、以下の説明では、
図2及び
図3の状態に基づいて説明する。また、回転軸26の長手方向を軸方向(配列方向)、風力タービン装置2の凧側(懸架体側)の端部を先端、発電機1側の端部を基端とも称す。
【0033】
複数の剛性リング体21のうち、少なくとも最上段の剛性リング体21には、タービンブレード22が取り付けられている。また、タービンブレード22は、複数段の剛性リング体21に取り付けられてもよい。タービンブレード22は、回転軸26に対して所定の角度(迎え角)で翼面が傾斜し、翼面に風を受けることで、回転軸26を中心に回転し、剛性リング体21を一方向に回転させる。タービンブレード22は、例えば、木材、プラスチック、又は金属等で形成される。また、タービンブレード22は、発泡プラスチックを対候性の高い皮膜でコーティングしたものであってもよい。
【0034】
タービンブレード22は、剛性リング体21の周方向における複数箇所に等間隔で接続されている。
図3に示すように、本実施形態では、剛性リング体21の周方向における3か所にタービンブレード22が接続されている。そして、各タービンブレード22は、
図3において、剛性リング体21のやや内側から接続箇所を超え、剛性リング体21の外側へ向けて延設されている。タービンブレード22は、回転軸26に近い位置では、風力を回転力に変換する効果が得られにくい場合がある。そこで、本実施形態では、回転軸26に近い位置にはタービンブレード22を設けず、回転軸から径方向に所定の距離を空け、剛性リング体21近傍から外側にタービンブレード22を張り出すように設けている。
【0035】
剛性リング体21は、凧3の揚力によって吊り上げられるように軽量で、接続されている連結線材23,24の間隔を保持できる程度の剛性を有している。剛性リング体21の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ合金やマグネシウム合金等の金属、プラスチックが挙げられる。また、剛性リング体21は、中空のパイプ状で、軽量化を図りつつ、剛性を確保する構成であってもよい。剛性リング体21は、凧3と発電機1との間に複数段設けられる。各剛性リング体21の径は、特に限定されるものではないが
、本実施形態では、下段側と比べて上段側の剛性リング体21の径が徐々に大きくなるように形成されている。これによりタービンブレード22が接続される上段の剛性リング体21の径を大きくし、タービンブレード22の回転半径を大きく構成することができる。これにより効率良く回転トルクが得られるようにしている。
【0036】
図4は、剛性リング体21を軸方向に見た図である。本実施形態の剛性リング体21は、
図4に示すように、円形の環である。これに限らず、剛性リング体21は、多角形など、他の形状の環であってもよい。
【0037】
また、剛性リング体21は、円環部211と、円環部211の周方向に複数の連結部27を有している。
図4の例では、各連結部27が、周方向に6箇所、均等な間隔を空けて配置されている。即ち、各連結部27は、隣接する他の連結部27に対し、回転軸26を中心として60°の角度を有して円環部211上に配置され、回転対称(6回対称)となっている。
【0038】
複数の第1柔軟性連結線材23は、凧3と発電機1との間に複数段設けられた剛性リング体21の連結部27と接続し、複数の剛性リング体21同士を同軸に相互連結する。複数の第1柔軟性連結線材23は、凧側に位置する最上段の剛性リング体21から発電機側に位置する最下段の剛性リング体21に至るまで延在し、且つ、凧3からの張力を最上段の剛性リング体から最下段の剛性リング体まで伝達する。また、
図2に示すように、各第1柔軟性連結線材23は、回転軸26の方向に沿って略直線状に延在している。なお、第1柔軟性連結線材23が最上段の剛性リング体21から最下段の剛性リング体21に至るまで延在するとは、第1柔軟性連結線材23が、最上段の剛性リング体21に接続した部分から最下段の剛性リング体21に接続した部分まで連続した一つの部材であることに限定されるものではない。例えば、上下に隣接配置される一対の剛性リング体21のうち、一方から他方までの長さの線状部材が、各剛性リング体21の連結部27に接続される。そして、最上段から最下段までの各剛性リング体21の間に、この線状部材が接続され、各線状部材が連結部27で連結されることで、一つながりの第1柔軟性連結線材23が構成されてもよい。例えば
図2のように、上下に6段の剛性リング体21が配置される場合、各剛性リング体21の間に連結される5つの線状部材で、1本の第1柔軟性連結線材23を構成する。このように、複数の線状部材を連結して一本の第1柔軟性連結線材23とすることで、第1柔軟性連結線材23を部分的に交換することや、剛性リング体21の段数を減らして第1柔軟性連結線材23を短くすること、剛性リング体21及び線状部材を追加して第1柔軟性連結線材23を長くすることができる。また、第2柔軟性連結線材24についても同様に、複数の線状部材で1本の第2柔軟性連結線材24を構成してもよい。
【0039】
図5は、剛性リング体21の連結部27付近を示す部分拡大図である。
図5に示すように、一つの連結部27に一対の連結線材23,24が接続されている。連結部27は、円環部211に取り付けられるクランプ271と、クランプ271に対して連結線材23,24を締め付けて固定することにより、連結線材23,24を剛性リング体21に接続させるサドルバンド272とを備えている。即ち、本実施形態の連結部27は、円環部211のクランプ271を取り付けた部分と、クランプ271と、サドルバンド272とから構成されている。
【0040】
図5の連結部27は、一組のクランプ271とサドルバンド272とによって、連結線材23,24が、円環部211に接続されているが、これに限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、第1柔軟性連結線材23が、クランプ271Aとサドルバンド272Aによって円環部211に接続され、第2柔軟性連結線材24が、クランプ271Bとサドルバンド272Bによって円環部211に接続されていてもよい。このように、
第1柔軟性連結線材23と第2柔軟性連結線材24とが、別々に円環部211に接続されていても、連結線材23,24が近い位置に設けられ、円環部211の周方向に設けた6箇所(
図4:P1~P6)のうち、一つの箇所に設けられていると見做せる場合、同じ連結部27に接続されていると称す。本実施形態では、各連結部27に、それぞれ一対の連結線材23,24が接続され、この連結線材23,24が軸方向に隣接する剛性リング体21において、別々の連結部27に接続されている。この接続関係が全ての連結部27において繰り返されることで、本実施形態の風力タービン装置2は
図2のように構成されている。
【0041】
図2の例において、各第1柔軟性連結線材23及び各第2柔軟性連結線材24は、その基端が発電機1の回転ホイール13に接続され、先端が接続部25と接続している。
図2では、風力タービン装置2を側方から見た場合に、剛性リング体21の手前部分に接続された連結線材23,24と、剛性リング体21の奥側部分に接続された連結線材23,24とが重なり合い、連結線材23,24と剛性リング体21との接続関係が分かりにくいため、
図7を用いて連結線材23,24と剛性リング体21との接続関係を説明する。
【0042】
図7は、複数の剛性リング体21、第1柔軟性連結線材23、及び第2柔軟性連結線材24の一部を模式的に示した図である。
図7では、図面の下方が発電機側、図面の上方が懸架体側である。即ち、連結線材23,24は、図の下から上の方向(引張方向)へ向かって引張される。また、図の左右方向が、剛性リング体21の周方向であり、剛性リング体21は、図の右から左の方向(回転方向)へ回転する。
【0043】
図7では、軸方向に配置された複数の剛性リング体21のうち、発電機側のものを剛性リング体21A、懸架体側のものを剛性リング体21Bと称す。また、
図4と同様に、剛性リング体21の円周上に設けられた複数の連結部27のうちの一つが設けられた位置を符号P1、その回転方向側に隣接して設けられた連結部27の位置を符号P2、更にその回転方向側に隣接して設けられた連結部27の位置を符号P3で示している。また、
図7では、複数の第1柔軟性連結線材23について、剛性リング体21の円周上に異なる位置P1~P3で接続するものに、それぞれ別の枝番を加え、符号23-1~23-3として区別している。同様に、第2柔軟性連結線材24についても、枝番を加え、符号24-1~24-3として区別して示している。
【0044】
図7に示すように、第1柔軟性連結線材23は、軸方向に沿って剛性リング体21A,21Bと接続されている。即ち、剛性リング体21Bにおいて、位置P1の連結部27に接続された第1柔軟性連結線材23-1は、剛性リング体21Aにおいて、円周上の同じ位置(同一箇所)P1の連結部27に接続されている。同様に、第1柔軟性連結線材23-2は、剛性リング体21A,21Bにおいて、円周上の同じ位置P2にある連結部27に接続されている。この周方向に隣接する一対の第1柔軟性連結線材23-1、23-2と、上下に隣接配置される一対の剛性リング体21A,21Bとは、
図7中、二点鎖線で示す四角形要素SAを構成する。なお、
図7では、四角形要素SAを一つだけ二点鎖線で示したが、他の第1柔軟性連結線材23間及び剛性リング体21間にも同様に四角形要素が形成されている。そして、この四角形要素SAの頂点を形成する4つの連結部27のうち、上段側に位置する剛性リング体21Bにおいて回転方向側の位置P1で第1柔軟性連結線材23-1と連結される第1連結部27-1と、当該第1連結部27-1の対角方向に位置する第2連結部27-2との間に第2柔軟性連結線材24-1が張設され、四角形要素SAを2つの三角形要素に2分する。
【0045】
このように第1柔軟性連結線材23-1、第2柔軟性連結線材24-1、及び剛性リング体21Aにおいて連結部27の間に位置する一区間(以下、トラス形成区間)23T、24T、21Tが、それぞれ三角形要素を形成する。この三角形要素は、
図7に示した部
分だけでなく、最上段から最下段までの剛性リング体21におけるトラス形成区間21Tと、これら剛性リング体21を連結する全ての連結線材23、24におけるトラス形成区間23T、24Tによって形成される。例えば、
図8に示すように、最上段の剛性リング体21から最下段の剛性リング体21までの全域に亘って、三角形要素(ハッチング部分)が連続して形成される。なお、
図8では、便宜上、背面側の三角形要素を省略して示したが、これら三角形要素は最上段から最下段までの剛性リング体21の全周囲に形成される。また、
図8では、
図7に示した四角形要素SAを2分した一方の三角形要素のみハッチングを施して示したが、ハッチングを施していない部分も逆向きの三角形要素を形成していると言える。このように本実施形態では、最上段から最下段までの剛性リング体21の各トラス形成区間21T、及びこれらを連結する全ての連結線材23、24の各トラス形成区間23T,24Tが、三角形要素を形成することで、トラス構造をとり、風力タービン装置2の形状が安定して維持される。そして、回転方向に張設された第2柔軟性連結線材24が、下段側の剛性リング体21に回転トルクを伝えるので、回転トルクが、効率良く発電機1に伝達される。
【0046】
なお、最下段の剛性リング体21と、発電機1との接続構成は、特に限定されるものではなく、任意に形成され得るが、本実施形態では、最下段の剛性リング体21と発電機1の回転ホイール13との間が、
図7の剛性リング体21間と同様に接続されている。即ち、回転ホイール13が、剛性リング体21と同様に連結部を備え、剛性リング体21と回転ホイール13が、
図7と同様に連結線材23、24によって接続され、トラス構造を構成している。
【0047】
本実施形態では、第2柔軟性連結線材24が、最上段の剛性リング体21から最下段の剛性リング体21にかけて螺旋状(渦巻状)に延設され、軸方向に対して回転方向の傾きを有するように剛性リング体21間に接続されている。このように第2柔軟性連結線材24が、軸方向に働く引張力と、周方向に働く回転力との合力に近い傾きを有して接続されているため、回転力を効率良く発電機側へ伝達できる。
【0048】
また、本実施形態は、風力タービン装置2の先端が凧3に懸架され、風向きに応じて支持台14を中心として鉛直軸回りに回転する。即ち、凧3が風下に移動し、風力タービン装置2のタービンブレード22が回転しやすい方向に変化するため、発電効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態は、風力タービン装置2は、連結線材23,24によってトルクの伝達機構を構成しているため、比較的軽量で、設置や収納が容易になる。
【0050】
<変形例>
上述の第一実施形態では、凧3によって連結線材23,24に引張力を与え、風力タービン装置2の形状を安定させている。この場合、凧3に当たる風が弱くなると、連結線材23,24に与える引張力が小さくなり、連結線材23,24が自重によって弛み、風力タービン装置2の形状が不安定になる可能性がある。そこで、本変形例の風力タービン装置2は、第2柔軟性連結線材24を長手方向に伸縮可能なバネ等の弾性部材とし、風が弱くなった際の弛みを吸収する構成としている。なお、その他の構成は前述の第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0051】
図9は、本変形例に係る風力タービン装置2について、風が強い状態と風が弱い状態とを模式的に示す図である。風が強い場合には、凧3による引張力が大きくなり、
図9(A)に示すように、各剛性リング体間の第1柔軟性連結線材23が、ほぼ直線状となる。これに対し、風が弱い場合、凧3による引張力が小さくなり、この引張力よりも第2柔軟性連結線材24の弾性力の影響が大きくなり、
図9(B)に示すように、第2柔軟性連結線
材24が縮み、各剛性リング体間の第1柔軟性連結線材23が、第2柔軟性連結線材24側に傾斜した状態となる。この場合、第1柔軟性連結線材23は、凧3による引張力と第2柔軟性連結線材24の弾性力とによって引っ張られ、これらが釣り合う姿勢をとるため、弛みが抑えられる。
【0052】
このように本変形例では、第2柔軟性連結線材24を伸縮可能とし、風が弱くなった場合でも、第2柔軟性連結線材24が縮み、第1柔軟性連結線材23を折り畳むように剛性リング体21間を狭めることで、連結線材23,24の弛みを抑え、連結線材23,24及び剛性リング体21によるトラス構造を保持できる。これにより、風力タービン装置2の形状が適切に保たれ、連結線材23,24が絡まる等の不具合を抑制できる。また、弛みによるトルク伝達のロスが抑えられることで、発電効率を高く維持できる。
【0053】
<第二実施形態>
図10は、第二実施形態に係る風力発電装置200の概略構成図である。本実施形態は、前述の実施形態と比べて、懸架体を鉄塔等の建築物30とした点が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0054】
本実施形態の風力タービン装置2は、接続部25の一端がライン33によって建築物30に懸架される。なお、本実施形態では、風向きによって風力タービン装置2の向きが変わることが無いので、支持台14の回転機構を省略してもよい。
【0055】
本実施形態によれば、風の強さに依らず、常に風力タービン装置2のタービンブレード22を上空に位置させることができ、安定して発電を行うことができる。
【0056】
<第三実施形態>
図11は、第三実施形態に係る複数の剛性リング体、第1柔軟性連結線材、及び第2柔軟性連結線材の連結構造を模式的に示した図である。前述の第一実施形態及び第二実施形態では、
図7に示すように、上下一対の剛性リング体21A,21Bと第1柔軟性連結線材23-1,23-2が構成する四角形要素の対角線上を第2柔軟性連結線材24-1が2分した例を示したが、本実施形態では、これに限らず、対角線以外の部分で四角形要素を分割するように第2柔軟性連結線材24-1を剛性リング体21A,21Bに連結した例を示す。なお、その他の構成は同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0057】
前述の実施形態では、剛性リング体21の円周上に設けられた複数の連結部27がそれぞれ、第1柔軟性連結線材23及び第2柔軟性連結線材24と連結されていたが、本実施形態の連結部27は、第1柔軟性連結線材23又は第2柔軟性連結線材24と個別に連結されている。
【0058】
図11では、剛性リング体21の円周上に設けられた複数の連結部27のうち、第1柔軟性連結線材23と連結されるものを連結部27Aとし、第2柔軟性連結線材24と連結されるものを連結部27Bとして示している。
【0059】
図11に示すように、第1柔軟性連結線材23は、軸方向に沿って剛性リング体21A,21Bと接続されている。即ち、剛性リング体21Bにおいて、位置P1の連結部27に接続された第1柔軟性連結線材23-1は、剛性リング体21Aにおいて、円周上の同じ位置(同一箇所)P1の連結部27Aに接続されている。同様に、第1柔軟性連結線材23-2は、剛性リング体21A,21Bにおいて、円周上の同じ位置P2にある連結部27Aに接続されている。
【0060】
一方、第2柔軟性連結線材24は、上下に隣接配置される剛性リング体21A,21Bにおいて、円周上の異なる位置に設けられた連結部27Bに接続され、第1柔軟性連結線材に対して傾斜配置されている。
【0061】
図11に示すように、周方向に隣接する一対の第1柔軟性連結線材23-1、23-2と、上下に隣接配置される一対の剛性リング体21A,21Bとは、
図11中、二点鎖線で示す四角形要素SAを構成する。なお、
図11では、四角形要素SAを一つだけ二点鎖線で示したが、他の第1柔軟性連結線材23間及び剛性リング体21間にも同様に四角形要素が形成されている。そして、この四角形要素SAの上辺を成す剛性リング体21Bに設けられた連結部27Bと、当該剛性リング体21B上の連結部27Bに対して、回転方向の上流側であって剛性リング体21Aに設けられた連結部27Bとの間に第2柔軟性連結線材24-1が張設され、四角形要素SAを2つの要素に分割する。
【0062】
このように第1柔軟性連結線材23-1、第2柔軟性連結線材24-1、及び剛性リング体21Aにおいて連結部27の間に位置する一区間(以下、要素区間)23Y、24Y、21Yが、それぞれ台形要素を形成する。この台形要素は、
図11に示した部分だけでなく、最上段から最下段までの剛性リング体21における要素区間21Yと、これら剛性リング体21を連結する全ての連結線材23、24における要素区間23Y、24Yによって形成される。このように本実施形態では、最上段から最下段までの剛性リング体21の各要素区間21Y、及びこれらを連結する全ての連結線材23、24の各要素区間23Y,24Yが、台形要素を形成することで、風力タービン装置2の形状が安定して維持される。そして、回転方向に張設された第2柔軟性連結線材24が、下段側の剛性リング体21に回転トルクを伝えるので、回転トルクが、効率良く発電機1に伝達される。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例を説明したが、本発明は、可能な限り実施形態及び変形例を組み合わせて実施することができる。例えば、前述の第一実施形態~第三実施形態では、第2柔軟性連結線材24が、各四角形要素SAをそれぞれ2つに分割するように設けられているが、一部の四角形要素SAのみに第2柔軟性連結線材24を設けても良い、このように、少なくとも一部に傾斜した第2柔軟性連結線材24を備えることが、捻じれを抑制する観点から好ましい。この場合、剛性リング体21の各段の少なくとも一部に第2柔軟性連結線材24を設けることが更に好ましい。また、各段に設ける第2柔軟性連結線材24は、剛性リング体21の円周上において回転軸を中心として回転対称となる複数の位置に設けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 :発電機
2 :風力タービン装置
3 :凧
21 :剛性リング体
22 :タービンブレード
23 :第1柔軟性連結線材
24 :第2柔軟性連結線材
25 :接続部
27 :連結部
100 :風力発電装置
200 :風力発電装置