(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】飛行体離着陸システム、飛行体用離着陸装置および飛行体
(51)【国際特許分類】
B64F 1/02 20060101AFI20240619BHJP
B64C 25/68 20060101ALI20240619BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240619BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240619BHJP
B64U 70/20 20230101ALI20240619BHJP
B64U 70/30 20230101ALI20240619BHJP
【FI】
B64F1/02
B64C25/68
B64C39/02
B64U10/13
B64U70/20
B64U70/30
(21)【出願番号】P 2020210816
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503132280
【氏名又は名称】特定非営利活動法人 国際レスキューシステム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将広
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 大貴
(72)【発明者】
【氏名】大野 和則
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳都
(72)【発明者】
【氏名】高森 年
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0274997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/02
B64C 25/68
B64C 39/02
B64U 10/13
B64U 70/20
B64U 70/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体と、
上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有する飛行体とを有し、
前記飛行体は、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、上方または側方に移動することにより、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されて
おり、
前記吊下体は、細長いポールから成り、前記係合部が任意の水平方向に移動可能に、前記上端部が前記支持部に回転可能に取り付けられていることを
特徴とする飛行体離着陸システム。
【請求項2】
支持部と、
細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体と、
上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有する飛行体とを有し、
前記飛行体は、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、上方または側方に移動することにより、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されており、
前記吊下体および/または前記着脱部は、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられていることを
特徴とする飛行体離着陸システム。
【請求項3】
前記吊下体は、少なくとも前記係合部の下方および側方の一部に空間をあけて配置されていることを特徴とする請求項1
または2記載の飛行体離着陸システム。
【請求項4】
前記着脱部は、前記吊下体の前記上端部と前記係合部との間に接触した状態で、前記係合部の側に移動することにより、前記係合部と係合するよう構成されていることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の飛行体離着陸システム。
【請求項5】
前記着脱部は、前記吊下体の伸張方向に沿って前記係合部から前記上端部に向かって移動することにより、前記係合部から開放されるよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の飛行体離着陸システム。
【請求項6】
前記吊下体および前記着脱部を介して、前記飛行体に所定の物体、物質、またはエネルギーを供給可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の飛行体離着陸システム。
【請求項7】
飛行体を着陸させるための飛行体用離着陸装置であって、
支持部と、
細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体とを有し、
前記飛行体は、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有しており、
前記吊下体は、
細長いポールから成り、前記係合部が任意の水平方向に移動可能に、前記上端部が前記支持部に回転可能に取り付けられており、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、前記飛行体が上方または側方に移動したとき、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されていることを
特徴とする飛行体用離着陸装置。
【請求項8】
飛行体を着陸させるための飛行体用離着陸装置であって、
支持部と、
細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体とを有し、
前記飛行体は、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有しており、
前記吊下体は、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられ、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、前記飛行体が上方または側方に移動したとき、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されていることを
特徴とする飛行体用離着陸装置。
【請求項9】
細長く、上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体を利用して離着陸する飛行体であって、
上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有し、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、上方または側方に移動することにより、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されて
おり、
前記着脱部は、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられていることを
特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体離着陸システム、飛行体用離着陸装置および飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔操作や自動制御で飛行可能に設けられたドローンや無人飛行機などの飛行体は、例えば、専用の着陸台や、地面、車両の上面、建物の屋上など、平面上で離着陸するものが一般的である(例えば、特許文献1または2参照)。しかし、これらの一般的な飛行体では、いわゆる地面効果により、制御が不安定になったり、転倒したりする危険性があるため、着陸に時間がかかるという問題があった。また、安全に離着陸させるために、十分に広い空間も必要であるという問題があった。
【0003】
また、飛行体を、地面ではなく、空中で捕捉して着陸させるシステムとして、先端にフックを有するアームが、上方に伸びるよう取り付けられた飛行体に対し、クレーンで水平に吊り下げたレールと、レールに沿って移動可能に設けられたシャトルと、シャトルから吊り下げられて、レールに対して垂直方向に伸びるよう張られたケーブルとを有し、飛行体をレールの下方でレールに沿って飛行させ、飛行体のアームをケーブルに当てることにより、飛行体の移動と共に、アームがケーブルに当たる位置がアームの上方にずれて、フックがケーブルに引っ掛かり、飛行体を捕捉できるよう構成されたものがある(例えば、特許文献3参照)。しかし、このシステムでは、着陸した状態のままでは離陸できないため、一旦、飛行体のフックをケーブルから外したり、飛行体を離陸可能な状態にセットしなおしたりする必要があり、スムーズな離陸が困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、互いに間隔を開けて並べて配置された1対のレールと、上部に、各レールの間に挿入可能に設けられた吊下部を有する飛行体とを有し、各レールの間に吊下部が挿入された状態で、各レールの所定の着陸位置で飛行体を吊り下げ可能、かつ、着陸位置で吊り下げられた飛行体が離陸可能に構成された飛行体の離着陸システムが、本発明者等により開発されている(例えば、特許文献4参照)。このシステムによれば、飛行体を吊り下げて着陸させるため、地面効果の影響を小さくすることができ、比較的狭い空間でも、スムーズに飛行体が離着陸することができる。ただし、このシステムでは、レールを設置できる場所が必要であることから、使用場所として不向きな場所が存在する。
【0005】
レールを設置できない場所でも使用でき、飛行体を吊り下げて着陸させるものとして、所定の場所から吊り下げられて、下端に連結部を有する吊下体と、上部に、吊下体の連結部に連結可能に設けられたアンカー部を有する飛行体とを有し、アンカー部を下方から連結部に連結可能に設けられた飛行体の離着陸システムがある(例えば、非特許文献1参照)。このシステムでは、飛行体を着陸させる際には、アンカー部を下方から連結部に連結させ、飛行体を離陸させる際には、連結部からアンカー部を外し、飛行体を一旦落下させて離陸させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-089461号公報
【文献】特開2018-190362号公報
【文献】米国特許第9010683号明細書
【文献】特許第6789558号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Musa Galimov, Roman Fedorenko and Alexander Klimchik, “UAV Positioning Mechanisms in Landing Stations: Classification and Engineering Design Review”, Sensors, 2020, 20, 3648, p.15, Figure 23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の離着陸システムでは、離着陸の際の方向が上下方向に限定されることや、連結部とアンカー部との連結可能範囲が狭く、着陸時には飛行体をほぼピンポイントで連結可能範囲まで誘導する必要があること、離陸時に飛行体が墜落しないよう飛行体を慎重に制御する必要があることから、離着陸に時間がかかるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、レールを設置できない場所でも使用可能であり、離着陸を比較的短時間でスムーズに行うことができる飛行体離着陸システム、飛行体用離着陸装置および飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る飛行体離着陸システムは、支持部と、細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体と、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有する飛行体とを有し、前記飛行体は、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、上方または側方に移動することにより、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されており、前記吊下体は、細長いポールから成り、前記係合部が任意の水平方向に移動可能に、前記上端部が前記支持部に回転可能に取り付けられていることを特徴とする。あるいは、本発明に係る飛行体離着陸システムは、支持部と、細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体と、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有する飛行体とを有し、前記飛行体は、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、上方または側方に移動することにより、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されており、前記吊下体および/または前記着脱部は、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る飛行体用離着陸装置は、飛行体を着陸させるための飛行体用離着陸装置であって、支持部と、細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体とを有し、前記飛行体は、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有しており、前記吊下体は、細長いポールから成り、前記係合部が任意の水平方向に移動可能に、前記上端部が前記支持部に回転可能に取り付けられており、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、前記飛行体が上方または側方に移動したとき、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されていることを特徴とする。あるいは、本発明に係る飛行体用離着陸装置は、飛行体を着陸させるための飛行体用離着陸装置であって、支持部と、細長く、前記支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体とを有し、前記飛行体は、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有しており、前記吊下体は、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられ、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、前記飛行体が上方または側方に移動したとき、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る飛行体は、細長く、上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられ、下端に係合部を有する吊下体を利用して離着陸する飛行体であって、上部に、前記吊下体の前記係合部に係合可能に設けられた着脱部を有し、前記着脱部と前記係合部とが係合した状態から、上方または側方に移動することにより、前記着脱部を前記係合部から開放可能に構成されており、前記着脱部は、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る飛行体離着陸システムは、本発明に係る飛行体用離着陸装置と本発明に係る飛行体とを組み合わせて構成することができる。このとき、本発明に係る飛行体用離着陸装置の吊下体が、本発明に係る飛行体離着陸システムの吊下体に対応しており、本発明に係る飛行体が、本発明に係る飛行体離着陸システムの飛行体に対応している。このため、本発明に係る飛行体用離着陸装置および本発明に係る飛行体は、以下に示す本発明に係る飛行体離着陸システムの対応する構成の作用効果を有している。
【0014】
本発明に係る飛行体離着陸システムで、飛行体は、例えば、ドローンや無人飛行機など、遠隔操作や自動制御で飛行可能に設けられたものから成ることが好ましい。本発明に係る飛行体離着陸システムは、以下のようにして、飛行体を離着陸させることができる。すなわち、着陸させるときには、支持部により上端部を支持されて下方に伸びるよう設けられた吊下体の下方に向かって飛行体を飛行させ、飛行体の上部に設けられた着脱部を、吊下体の係合部に係合させる。これにより、飛行体を吊下体に吊り下げた状態で着陸させることができる。このとき、飛行体の下方に十分な空間があくよう吊下体を配置することにより、地面効果の影響をほとんど無視できるほど小さくすることができる。また、地面効果の影響がほとんどないため、比較的狭い空間でも、飛行体を安定して着陸させることができる。飛行体を離陸させるときには、飛行体を上方や側方に移動させればよい。
【0015】
着脱部および係合部の構成として、例えば、前記着脱部は、前記吊下体の前記上端部と前記係合部との間に接触した状態で、前記係合部の側に移動することにより、前記係合部と係合するよう構成されていてもよい。この場合、飛行体を飛行させて、着脱部を吊下体の上端部と係合部との間に接触させ、その状態で、着脱部が吊下体の係合部の側に移動するよう、飛行体を移動させることにより、着脱部と係合部とを係合させることができる。このように、着脱部を吊下体の上端部と係合部との間に接触するよう飛行体を誘導すればよく、飛行体をほぼピンポイントで誘導する場合と比べて、飛行体の制御が容易になり、比較的短時間でスムーズに着陸させることができる。
【0016】
また、前記着脱部は、前記吊下体の伸張方向に沿って前記係合部から前記上端部に向かって移動することにより、前記係合部から開放されるよう構成されていてもよく、前記吊下体の伸張方向に対して所定の角度範囲の方向に向かって横方向に移動することにより、前記係合部から開放されるよう構成されていてもよい。これらの場合、飛行体を能動的に移動させながら、安全に離陸することができる。また、飛行体を能動的に移動させるだけで、比較的短時間でスムーズに離陸させることができる。
【0017】
また、着脱部を係合部に接触させるだけで係合するよう、例えば、磁石や面ファスナー、吸盤等により構成されていてもよい。また、物体が接触するだけで、その物体の形状になじみ、その物体を把持可能なグリッパを用いて構成されていてもよい。これらの場合、着脱部と係合部とが係合した状態から、吊下体から離れるよう、飛行体を上方や側方に移動させるだけで、容易に離陸させることができる。このため、比較的短時間でスムーズに離着陸させることができる。
【0018】
本発明に係る飛行体離着陸システムは、吊下体を配置可能であれば、レールを設置できない場所でも使用可能である。また、吊下体に対して、飛行体をいずれの方向から接近させても着陸させることができる。このため、吊下体は、少なくとも係合部の下方および側方の一部に空間をあけることができる場所であれば、どのような場所に設置されてもよい。吊下体は、例えば、工場や家屋、ビルなどの天井や軒下に設置されてもよく、クレーン等で吊されていてもよい。
【0019】
本発明に係る飛行体離着陸システムは、例えば、飛行体の下部に荷物などを取り付けて運搬する際に好適に利用することができる。飛行体が吊下体に吊り下げられたとき、飛行体の下方に空間があるため、飛行体の下部に荷物を取り付けたり、飛行体の下部に取り付けられた荷物を下ろしたりする作業を容易に行うことができる。また、飛行体が吊下体に吊り下げられたとき、非接触で電力を供給したり、データの送受信を行ったりすることもできる。また、吊下体および着脱部を介して、例えば、液体や農薬、荷物、バッテリー、電力といった、所定の物体、物質、エネルギー等を飛行体に供給可能に構成されていてもよい。
【0020】
本発明に係る飛行体離着陸システムは、前記吊下体が、細長いポールから成り、前記係合部が任意の水平方向に移動可能に、前記上端部が前記支持部に回転可能に取り付けられている場合、着陸の際に、着脱部が吊下体の上端部と係合部との間に衝突しても、上端部を中心として吊下体が衝突方向に回転移動するため、衝突時の衝撃をやわらげることができる。これにより、その衝突で吊下体や着脱部等が破損するのを防ぐことができる。また、その衝突の際の飛行体の付勢力により、吊下体に衝突した着脱部が吊下体の長さ方向に沿って係合部の側に移動し、着脱部を係合部に係合させることができる。これにより、飛行体に勢いを付けた状態で、破損することなく、飛行体を吊下体に着陸させることができる。吊下体は、例えば、自在継手を介して支持部に取り付けられていてもよい。
【0021】
また、本発明に係る飛行体離着陸システムは、前記吊下体および/または前記着脱部が、前記着脱部が前記吊下体に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられている場合にも、着陸の際に、着脱部が吊下体に衝突して吊下体や着脱部等が破損するのを防ぐことができる。また、着脱部を吊下体に衝突させたとき、飛行体や吊下体が跳ね返るのを防ぐことができ、飛行体をより確実に着陸させることができる。衝突時の衝撃を吸収可能な構成として、例えば、吊下体や着脱部を柔軟な素材で形成したり、吊下体や着脱部にダンパーを設けたりすることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る飛行体離着陸システムで、着脱部は、飛行体の上方に向かって伸びた突出状態と、飛行体から上方への突出量が突出状態よりも小さい収納状態との間で変形可能に設けられていてもよい。この場合、着陸の際に着脱部を突出状態にすることにより、着陸しやすくすることができる。また、飛行時に着脱部を収納状態にすることにより、飛行中に着脱部が何かに衝突したり引っ掛かったりするのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レールを設置できない場所でも使用可能であり、離着陸を比較的短時間でスムーズに行うことができる飛行体離着陸システム、飛行体用離着陸装置および飛行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの使用状態を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、(a)三脚式のスタンド、(b)地上を移動する移動体に、吊下体を設置した使用状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、(a)船舶、(b)飛行機に、吊下体を設置した使用状態を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の第1の変形例を示す(a)平面図、(b)側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の第2の変形例を示す(a)各指部が開いている状態の係合部の平面図、(b)飛行体が各指部の間に入る状態を示す飛行体および吊下体の側面図、(c)飛行体を把持した状態の係合部の平面図、(d)飛行体を把持した状態の飛行体および吊下体の側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の第3の変形例を示す(a)平面図、(b)側面図である。
【
図7】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の第4の変形例を示す(a)平面図、(b)側面図である。
【
図8】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の第5の変形例を示す(a)平面図、(b)側面図である。
【
図9】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の第6の変形例を示す(a)平面図、(b)側面図である。
【
図10】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、係合部および着脱機構の構成を説明するための側面図である。
【
図11】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムの、水中移動体の離発着システムに応用したときの使用状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態の飛行体離着陸システムに関し、垂直上方に伸びるポールを利用した飛行体離着陸システムの、(a)ポールの平面図、(b)使用状態を示す斜視図、(c)飛行体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図11は、本発明の実施の形態の飛行体離着陸システム、飛行体用離着陸装置および飛行体を示している。
図1に示すように、本発明の実施の形態の飛行体離着陸システム10は、支持部11と吊下体12と飛行体13とを有している。
【0026】
図1に示すように、支持部11は、横方向に伸びる部材から成り、少なくとも下方および側方の一部に空間をあけて配置されている。吊下体12は、細長い丸棒状のポールから成り、上端部を支持部11により支持されて、下方に伸びるよう設けられている。
図1に示す具体的な一例では、支持部11は、棒状の部材から成り、一端部11aが、地面に設置された台座1から上方に伸びる柱状部2に取り付けられている。また、吊下体12は、支持部11の他端部11bに取り付けられている。
【0027】
なお、吊下体12は、
図1に示す構成に限らず、少なくとも下方および側方の一部に空間をあけることができる場所であれば、どのような場所に設置されてもよい。このため、吊下体12は、例えば、工場や家屋、ビルなどの天井や軒下に設置されてもよく、クレーン等で吊されていてもよい。これらの場合、天井や軒、クレーンのアームが支持部11を成している。また、
図2および
図3に示すように、吊下体12は、三脚式のスタンド3や、地上を移動する移動体4、船舶5、飛行機6などに、支持部11を介して設置されていてもよい。これらの場合、移動体3、スタンド4、船舶5、飛行機6などを構成する部分が、支持部11を成していてもよい。
【0028】
図1に示すように、吊下体12は、下端に係合部12aを有している。また、吊下体12は、上端部が自在継手12bを介して支持部11に回転可能に取り付けられている。これにより、吊下体12は、係合部12aが任意の水平方向に移動可能になっている。具体的な一例では、係合部12aは、吊下体12の他の部分の径より大きい径を有する球体から成っている。なお、支持部11および吊下体12が、飛行体13を着陸させるための飛行体用離着陸装置を成している。
【0029】
飛行体13は、上部に、上方に伸びるよう設けられた着脱部21を有している。着脱部21は、飛行体13から上方に伸びるよう設けられたアーム21aと、アーム21aの先端に設けられた着脱機構21bとを有している。具体的な一例では、着脱機構21bは、係合部12aの上部の吊下体12を挟み込むよう、横方向に開いたくの字型の形状を成している。
【0030】
着脱部21は、吊下体12の上端部と係合部12aとの間に接触した状態で、係合部12aの側に移動することにより、着脱機構21bが係合部12aと係合するよう構成されている。これにより、飛行体13を吊下体12に吊り下げた状態で着陸可能になっている。なお、着脱部21は、係合部12aのみと接触した状態で、係合部12aの側に移動して、着脱機構21bが係合部12aと係合するよう構成されていてもよい。
【0031】
また、着脱部21は、着脱機構21bが係合部12aと係合した状態で、吊下体12の伸張方向に沿って係合部12aから上端部に向かって、または、吊下体12の伸張方向に対して所定の角度範囲の方向に向かって横方向に移動することにより、着脱機構21bが係合部12aから開放されるよう構成されている。これにより、飛行体13を上方または側方に移動させて、離陸可能になっている。このように、飛行体13は、着脱部21を係合部12aに対して着脱可能になっている。
【0032】
図1に示す一例では、飛行体13は、ドローンであるが、無人飛行機など、飛行可能なものであれば、いかなるものであってもよい。また、飛行体13は、遠隔操作で飛行可能であっても、自動制御で飛行可能であってもよい。
【0033】
なお、飛行体離着陸システム10は、係合部12aおよび着脱機構21bの構成が、
図1に示すもの以外の構成であってもよい。例えば、
図4に示すように、係合部12aは、側方に向かって放射状に伸びるよう設けられた複数の細長い腕部31を有しており、着脱部21は、アーム1bが隣り合う腕部31の奥に入ったとき、着脱機構21bが、係合部12aの上部に引っかかりやすい形状を成していてもよい。着脱機構21bは、例えば、
図4に示すように、係合部12aの上部の吊下体12を挟み込むよう、くの字型の形状を成していてもよく、隣り合う腕部31の奥の幅よりも長い幅や径を有する形状を成していてもよい。また、係合部12aの形状と着脱機構21bの形状とが入れ替わった形状であってもよい。
【0034】
また、
図5に示すように、係合部12aが、2つの指部32の開閉により把持可能に設けられたグリッパから成り、着脱機構21bが、グリッパの各指部32が閉じたときの空間よりも大きい形状を成していてもよい。このとき、着脱部21のアーム21aがグリッパの2つの指部32の間に入ったとき、アーム21aの付勢力により各指部32が閉じ、アーム21aが閉じた各指部32の内側から各指部32の先端を押したとき、各指部32が開くよう構成されていることが好ましい。また、係合部12aの形状と着脱機構21bの形状とが入れ替わった形状であってもよい。
【0035】
また、飛行体離着陸システム10は、着脱機構21bを係合部12aに接触させるだけで係合するよう構成されていてもよい。この場合、例えば、
図6に示すように、係合部12aおよび着脱機構21bが、互いに吸着可能に、それぞれ面ファスナーのフックおよびループから成っていてもよい。また、係合部12aが面ファスナーのループ、着脱機構21bが面ファスナーのフックであってもよい。また、
図7に示すように、係合部12aが、中心軸周りに回転可能に設けられた円柱状を成し、回転方向に沿って側面にN極とS極とを交互に有する磁石から成り、着脱機構21bが、アーム21aの周方向に沿って側面にN極とS極とを交互に有する磁石から成っていてもよい。
【0036】
また、
図8に示すように、係合部12aが、円柱状を成し、その側面に複数の吸盤33、吸着パット、または、非接触の吸着パット等を有していてもよく、着脱機構21bが、係合部12aの側面に沿った曲面34を有する板状体から成り、その曲面34を側方に向けた状態で、アーム21aの周方向に沿って回転可能に設けられていてもよい。また、着脱機構21bは、バネを介してアーム21aに取り付けられていてもよい。また、
図9に示すように、係合部12aは、物体が接触するだけで、その物体の形状になじみ、その物体を把持可能なグリッパから成っていてもよい。
【0037】
このように、飛行体離着陸システム10は、係合部12aと着脱機構21bとが係合可能、かつ、飛行体13が離陸する際に、着脱機構21bを係合部12aから容易に開放可能であればよい。このため、係合部12aの構成と着脱機構21bの構成とを入れ替えてもよく、
図10に示すように、係合部12aがメスのとき着脱機構21bがオス、係合部12aがオスのとき着脱機構21bがメスであればよい。
【0038】
次に、作用について説明する。
飛行体離着陸システム10は、以下のようにして、飛行体13を離着陸させることができる。すなわち、着陸させるときには、吊下体12の下方に向かって飛行体13を飛行させ、飛行体13の上部に設けられた着脱部21を、吊下体12の上端部と係合部12aとの間に接触させる。このとき、着脱部21と吊下体12とが衝突しても、自在継手12bにより吊下体12が衝突方向に回転移動するため、衝突時の衝撃をやわらげることができる。このため、吊下体12の回転移動により吸収可能な衝撃の範囲であれば、飛行体13に勢いをつけた状態で、着脱部21を吊下体12に衝突させてもよい。
【0039】
吊下体12と着脱部21とを接触させた後、その状態で飛行体13を係合部12aの側に移動させることにより、着脱機構21bを係合部12aに係合させることができる。こうして、飛行体13を吊下体12に吊り下げた状態で着陸させることができる。また、飛行体13に勢いをつけた状態で、着脱部21を吊下体12に衝突させた場合には、衝突時の飛行体13の付勢力により、吊下体12に衝突した着脱部21が吊下体12の長さ方向に沿って係合部12aの側に移動するため、着脱機構21bを係合部12aに係合させることができる。これにより、飛行体13に勢いを付けた状態で、破損することなく、飛行体13を吊下体12に吊り下げた状態で着陸させることができる。
【0040】
飛行体離着陸システム10は、飛行体13の下方に十分な空間があくよう吊下体12を配置することにより、地面効果の影響をほとんど無視できるほど小さくすることができる。また、地面効果の影響がほとんどないため、比較的狭い空間でも、飛行体13を安定して着陸させることができる。また、着陸の際には、着脱部21を吊下体12の上端部と係合部12aとの間に接触するよう飛行体13を誘導すればよく、飛行体13をほぼピンポイントで誘導する場合と比べて、飛行体13の制御が容易になり、比較的短時間でスムーズに着陸させることができる。
【0041】
飛行体13を離陸させるときには、飛行体13を上方や側方に移動させることにより、着脱機構21bを係合部12aから開放することができる。このため、飛行体13を能動的に移動させるだけで、比較的短時間でスムーズかつ安全に離陸させることができる。
【0042】
飛行体離着陸システム10は、吊下体12を配置可能であれば、レールを設置できない場所でも使用可能である。また、吊下体12に対して、飛行体13をいずれの方向から接近させても着陸させることができる。
【0043】
飛行体離着陸システム10は、例えば、飛行体13の下部に荷物などを取り付けて運搬する際に好適に利用することができる。飛行体13が吊下体12に吊り下げられたとき、飛行体13の下方に空間があるため、飛行体13の下部に荷物を取り付けたり、飛行体13の下部に取り付けられた荷物を下ろしたりする作業を容易に行うことができる。また、飛行体13が吊下体12に吊り下げられたとき、非接触で電力を供給したり、データの送受信を行ったりすることもできる。また、吊下体12および着脱部21を介して、例えば、液体や農薬、荷物、バッテリー、電力といった、所定の物体、物質、エネルギー等を飛行体13に供給してもよい。
【0044】
なお、飛行体離着陸システム10で、吊下体12および/または着脱部21は、着脱部21が吊下体12に衝突したときの衝撃を吸収可能に設けられていることが好ましい。この場合にも、着陸の際に、着脱部21が吊下体12に衝突して吊下体12や着脱部21等が破損するのを防ぐことができる。また、着脱部21を吊下体12に衝突させたとき、飛行体13や吊下体12が跳ね返るのを防ぐことができ、飛行体13をより確実に着陸させることができる。衝突時の衝撃を吸収可能な構成として、例えば、吊下体12や着脱部21を柔軟な素材で形成したり、吊下体12や着脱部21にダンパーを設けたりすることが好ましい。
【0045】
また、飛行体離着陸システム10で、着脱部21は、飛行体13の上方に向かって伸びた突出状態と、飛行体13から上方への突出量が突出状態よりも小さい収納状態との間で変形可能に設けられていてもよい。この場合、着陸の際に着脱部21を突出状態にすることにより、着陸しやすくすることができる。また、飛行時に着脱部21を収納状態にすることにより、飛行中に着脱部21が何かに衝突したり引っ掛かったりするのを防ぐことができる。
【0046】
また、
図11に示すように、飛行体離着陸システム10は、吊下体12が、例えば、水上を浮遊する浮融体7または水上を移動する船舶などの底部や、水中に設置された物体、水中を浮遊または移動する物体に取り付けられて、水中に設置されていてもよい。この場合、飛行体13だけでなく、水中移動体8でも利用することができ、その離発着システムとして拡張することができる。
【0047】
なお、
図12に示すように、飛行体離着陸システム10に関し、吊下体12ではなく、下端部51aが設置されて、垂直上方に伸びるよう設けられた細長いポール51を有していてもよい。このとき、ポール51は、下端部51aがダンパー52を介して支持台61に設置されており、上端部51bが任意の水平方向に移動するよう、下端部51aを中心として回転可能に設けられている。また、ダンパー52は、ポール51の上端部51bが任意の水平方向に移動して回転したとき、ポール51に付勢力を加えて、ポール51を垂直上方に伸びる状態に戻すよう構成されている。また、飛行体53は、上部ではなく、下部または側部に、ポール51に係合可能に設けられた着脱部53aを有している。
図12に示す具体的な一例では、着脱部53aは、ポール51を挟み込むよう、横方向に開いたくの字型の形状を成している。
【0048】
この場合、ポール51に対して、飛行体53をいずれの方向から接近させても着陸させることができる。着陸の際、着脱部53aを細長いポール51に係合するよう飛行体53を誘導すればよく、飛行体53をほぼピンポイントで誘導する場合と比べて、飛行体53の制御が容易になり、比較的短時間でスムーズに着陸させることができる。また、着陸時に着脱部53aとポール51とが衝突しても、ダンパー52により衝突時の衝撃をやわらげることができる。このため、ダンパー52により吸収可能な衝撃の範囲であれば、飛行体53に勢いをつけた状態で、着脱部53aをポール51に衝突させてもよい。また、離陸の際には、飛行体53を斜め上方や側方に移動させることにより、着脱部53aをポール51から開放することができる。このため、飛行体53を能動的に移動させるだけで、比較的短時間でスムーズかつ安全に離陸させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 台座
2 柱状部
3 スタンド
4 移動体
5 船舶
6 飛行機
7 浮遊体
8 水中移動体
10 飛行体離着陸システム
11 支持部
11a 一端部
11b 他端部
12 吊下体
12a 係合部
12b 自在継手
13 飛行体
21 着脱部
21a アーム
21b 着脱機構
31 腕部
32 指部
33 吸盤
34 曲面