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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H01S5/0687
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020058450
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158267
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅重
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】八坂 洋
(72)【発明者】
【氏名】横田 信英
(72)【発明者】
【氏名】北 智洋
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0156802(US,A1)
【文献】特表2015-514306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0021082(US,A1)
【文献】特開2017-191815(JP,A)
【文献】特開平07-270841(JP,A)
【文献】特開平06-318759(JP,A)
【文献】特開昭62-055983(JP,A)
【文献】特開2012-256667(JP,A)
【文献】特開平09-246642(JP,A)
【文献】特開2001-284707(JP,A)
【文献】特開昭64-024485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G02B 6/12-6/14
H01L 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させる光源(10)と、
光負帰還によって前記レーザ光のスペクトルを狭線化する光負帰還部(20)と、を備えるレーザ装置であって、
前記光源に変調信号を入力して前記レーザ光の周波数を変調する周波数変調部(30、40)と、
前記レーザ光の周波数の変調量を検出する変調量検出部(50)と、
前記変調信号の強度および前記変調量から変調感度を算出する変調感度算出部(60)と、
前記変調感度に基づいて狭線化の状態を判定する判定部(70)と、を備え、
前記判定部は、前記変調感度を所定の閾値と比較して狭線化状態を判定するレーザ装置。
【請求項2】
前記変調量検出部および前記変調感度算出部は、前記レーザ光の自己遅延ヘテロダインによって生成されたビート信号に基づいて、前記変調量の検出および前記変調感度の算出を行う請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記変調量検出部は、リングフィルタ(55)を透過する光の強度に基づいて前記変調量を検出する請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記変調量検出部は、前記レーザ光と参照光との合波によって生成されたビート信号の周波数変化から前記変調量を検出する請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記判定部の判定結果に応じて前記光負帰還部を制御する制御部(80)を備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記変調量と前記変調感度との関係に基づいて、前記光負帰還部の結合位相を制御する請求項に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記光負帰還部から前記光源への戻り光の位相を調整する位相調整部(23)を備え、
前記制御部は、
前記判定部によってレーザ装置が狭線化状態にあると判定された場合には、前記位相調整部の状態を維持し、
前記判定部によってレーザ装置が狭線化状態にないと判定された場合には、前記変調量と前記変調感度との関係から位相状態を判定し、判定した位相状態に応じて、前記位相調整部により、戻り光と、前記光源から出力される光との位相差がπ/2となるように制御する請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記変調感度が閾値よりも小さいときにレーザ装置が狭線化状態にあると判定し、前記変調感度が閾値以上であるときにレーザ装置が狭線化状態にないと判定する請求項1ないし7のいずれか1つに記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光負帰還を用いたレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ装置のスペクトル線幅を狭線化する方法が様々に提案されている。例えば、発光部の外部に共振器が備えられた外部共振器構造のレーザ装置において、共振器長を伸ばすことで狭線化を図る方法が提案されている。この方法では、線幅が設計値から変化する要因が少ないため、狭線化状態を確認する必要性が高くない。しかしながら、共振器長を伸ばすと、狭線化に伴い発振周波数の調整が困難になるとともに、周波数の変調範囲が狭くなる。
【0003】
また、電気フィードバック技術によって出力光の周波数を調整し、揺らぎを打ち消すことで狭線化を図る方法が提案されている。この方法では、揺らぎを電気信号に変換するため、低ノイズの回路であれば、回路上で揺らぎの程度を検出し、狭線化状態を確認することが可能である。しかしながら、回路ノイズにより、狭線化の効果が限定的となる。
【0004】
これに対して、光で揺らぎを打ち消す光負帰還を用いたレーザ装置では、共振器長を伸ばさずに、線幅係数を下げることが可能であり、上記の方法を用いたレーザ装置よりも狭線化の効果が大きくなる。しかしながら、光負帰還は光信号のみによって動作するため、狭線化状態を確認することが困難である。これについて、例えば、電気フィードバックと同じ構成を用いれば、揺らぎ信号を電気的に得て狭線化状態を確認することは不可能ではないが、系が複雑となり現実的ではない。また、例えば非特許文献1では、数十kmの光ファイバー、スペクトルアナライザ等の大規模な研究用の計測系を使って、光負帰還による狭線化を確認する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】T. Okoshi, K. Kikuchi, and A. Nakayama, "Novel method for high resolution measurement of laser output spectrum", Electron. Lett. 16(1), 630-631 (1980).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、計測器が複雑で大規模になるため、一般向けの小型の機器に適用することが困難である。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、簡易な構成で狭線化状態を確認することが可能なレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、レーザ光を発生させる光源(10)と、光負帰還によってレーザ光のスペクトルを狭線化する光負帰還部(20)と、を備えるレーザ装置であって、光源に変調信号を入力してレーザ光の周波数を変調する周波数変調部(30、40)と、レーザ光の周波数の変調量を検出する変調量検出部(50)と、変調信号の強度および変調量から変調感度を算出する変調感度算出部(60)と、変調感度に基づいて狭線化の状態を判定する判定部(70)と、を備え、判定部は、変調感度を所定の閾値と比較して狭線化状態を判定する。
【0009】
光負帰還を用いたレーザ装置では、変調感度が狭線化効果に反比例するため、変調信号の強度および変調量から変調感度を算出することで、簡易な構成により狭線化状態を確認することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかるレーザ装置のブロック図である。
図2】光負帰還部の構成を示す図である。
図3】変調信号強度と周波数の変調量との関係を示す図である。
図4】参照信号の周波数と制御信号の傾きとの関係を示す図である。
図5】位相状態が正常のときの変調量と変調感度との関係を示す図である。
図6】戻り光の位相が正の方向にずれたときの変調量と変調感度との関係を示す図である。
図7】戻り光の位相が負の方向にずれたときの変調量と変調感度との関係を示す図である。
図8】第2実施形態における変調量検出部の構成を示す図である。
図9】リングフィルタの特性を示す図である。
図10】制御信号を示す図である。
図11】フォトダイオードの出力を示す図である。
図12】第3実施形態における光源の構成を示す図である。
図13】第4実施形態における変調量検出部の構成を示す図である。
図14】制御信号の微分係数とビート信号の周波数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態のレーザ装置は、例えば、車両に搭載されて、車両と周囲の物体との距離を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)に用いられる。ここでは、LiDARにおいてFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式で物体との距離を測定する場合について説明する。
【0014】
図1に示すように、レーザ装置は、光源10と、光負帰還部20と、変調信号生成部30と、加算器40と、変調量検出部50とを備えている。レーザ装置は、これらの構成要素と、構成要素を接続する光導波路および金属配線とが、シリコンフォトニクスによってSOI(Silicon on Insulator)基板に形成された光集積回路で構成されている。
【0015】
光源10は、レーザ装置の外部へ出射するレーザ光を発生させるものであり、レーザダイオード等で構成されている。光源10の出力光の一部は、光負帰還部20に入力される。光負帰還部20は、光源10が発生させた光を反射して光源10に戻し、光負帰還によって光源10の出力光の周波数の揺らぎを打ち消して、周波数を安定化し、スペクトルを狭線化するものである。光負帰還の原理については、例えばK. Aoyama, N. Yokota, and H. Yasaka, "Strategy of optical negative feedback for narrow linewidth semiconductor lasers", OPTICS EXPRESS, Vol. 26, No. 16, 21159 (2018)に記載されている。
【0016】
上記文献では、光負帰還部は、ファブリペロエタロンとレンズで構成されている。これに対して、図2に示すように、本実施形態の光負帰還部20は、リングフィルタ21と、ループミラー22と、位相調整部23とを備えた構成とされており、光源10の出力光のうち、リングフィルタ21を透過した成分が、ループミラー22によって反射して光源10に戻るようになっている。
【0017】
リングフィルタ21の中心周波数は、出力光の所望の周波数に合わせられており、光源10の出力光の周波数が所望の周波数から離れているときに、光負帰還による周波数の制御が働くようになっている。
【0018】
ループミラー22からの戻り光の位相は、必要に応じて位相調整部23によって調整される。位相調整部23は、例えばマイクロヒータ等で構成されている。位相調整部23による位相調整の詳細については、後述する。
【0019】
図1に示すように、光源10には、変調信号生成部30からの変調信号が、加算器40によって変調量検出部50からの信号と加算されて入力されるようになっており、この入力信号に応じて光源10の出力光の周波数が変化する。このように、本実施形態では、変調信号生成部30と加算器40とによって出力光の周波数が変調されるようになっており、変調信号生成部30および加算器40は、周波数変調部に相当する。
【0020】
変調信号生成部30の変調信号は、FMCW方式による測距のために、時間の経過とともに振幅が増減する三角波とされている。そして、変調信号生成部30の変調信号に応じた出力光の周波数の変化量を検出するために、出力光の一部が分岐して変調量検出部50に入力されるようになっている。
【0021】
変調量検出部50は、出力光の周波数の変調量を検出するものであり、ビート信号生成部51と、PD(フォトダイオード)52と、比較器53と、参照信号生成部54とを備えるPLL(フェーズロックループ)回路で構成されている。ビート信号生成部51は、光源10の出力光がそのまま伝搬する光導波路と、遅延回路を備えた光導波路とで構成されており、光源10の出力光と、遅延した出力光との自己ヘテロダインによって、出力光の周波数の変調傾きに応じたビート信号が得られる。この信号はPD52によって電気信号に変換され、比較器53に入力される。
【0022】
比較器53には、PD52から出力されたビート信号と、参照信号生成部54から出力された参照信号が入力されるようになっている。参照信号は、変調信号生成部30が生成する変調信号の傾きに対応するように生成されており、比較器53は、この参照信号とビート信号とを比較し、差分信号を出力する。差分信号は、ビート信号の周波数が参照信号の周波数よりも高い場合には出力光の周波数を低くするように生成され、ビート信号の周波数が参照信号の周波数よりも低い場合には出力光の周波数を高くするように生成される。この差分信号が周波数の変調量に対応しており、変調量検出部50では、このようにして変調量が検出される。
【0023】
変調信号生成部30の変調信号は、加算器40によってこの差分信号と加算され、これにより生成された信号が制御信号として光源10に入力される。このように、ビート信号を参照信号と比較し、差分を変調信号にフィードバックすることで、線形な変調が可能となり、参照信号の周波数と制御信号の傾きとが線形の関係になる。
【0024】
本実施形態のレーザ装置は、光負帰還部20による狭線化の効果を判定する、すなわち、所望の線幅が実現されているかを判定する構成を備えている。具体的には、図1に示すように、レーザ装置は、変調感度算出部60と、判定部70と、制御部80とを備えている。変調感度算出部60等は、例えばDSP(Digital Signal Processor)で構成されている。
【0025】
変調感度算出部60は、変調信号生成部30が生成する変調信号に対する出力光の変調感度を算出するものである。光負帰還部20を備えるレーザ装置では、図3に示すように、変調感度が狭線化効果に反比例する。すなわち、変調信号の強度をPとし、出力光の周波数の変調量をFとして、狭線化されていない初期状態では、強度Pの変化に対して変調量Fの変化が大きく、変調感度dF/dPが大きい。これに対して、狭線化された状態では、強度Pの変化に対する変調量Fの変化が小さく、変調感度dF/dPが小さい。変調感度算出部60は、算出した変調感度を判定部70に送信する。
【0026】
判定部70は、変調感度算出部60が算出した変調感度に基づいて、狭線化状態を判定するものである。具体的には、判定部70は、変調感度dF/dPを所定の閾値と比較し、変調感度dF/dPが閾値よりも小さいときにレーザ装置が狭線化状態にあると判定し、変調感度dF/dPが閾値以上であるときにレーザ装置が狭線化状態にないと判定する。
【0027】
なお、本実施形態の変調感度算出部60には、加算器40が出力する制御信号と、参照信号生成部54が出力する参照信号とが入力されるようになっている。そして、図3に示す強度Pと変調量Fとの関係によって、参照信号の周波数と制御信号の傾きとの関係は、図4に示すようになる。すなわち、狭線化状態では、参照信号の周波数の変化に対する制御信号の傾きの変化量が、初期状態に比べて大きくなる。変調感度算出部60は、参照信号の周波数の変化に対する制御信号の傾きの変化量から変調感度を算出し、判定部70は、この変調感度を閾値と比較して狭線化状態を判定する。判定部70による判定結果は、制御部80に送信される。
【0028】
制御部80は、判定部70による判定結果に応じて光負帰還部20を制御するものであり、制御部80の出力信号は位相調整部23に入力されるようになっている。判定部70によってレーザ装置が狭線化状態にあると判定された場合には、制御部80は、位相調整部23の状態を維持する。一方、判定部70によってレーザ装置が狭線化状態にないと判定された場合には、制御部80は、位相調整部23を制御して戻り光の位相を変化させることにより、レーザ装置を狭線化状態に近づける。
【0029】
レーザ装置を狭線化状態に近づける場合には、制御部80は、変調感度と周波数の変調量との関係から位相状態を判定し、位相状態に応じて位相調整部23を制御する。光負帰還部20の結合位相は、例えば戻り光と光源10から出力される光との位相差がπ/2となるように制御される。
【0030】
図5に示すように、変調量に対する変調感度のグラフが、所望の周波数に対応する変調量で落ち込み、この変調量の前後で極大値をとる場合には、制御部80は、位相状態が正常であると判定し、位相調整部23の状態を維持する。
【0031】
図6に示すように、変調量に対する変調感度のグラフが、所望の周波数に対応する変調量で落ち込み、この変調量よりも大きい変調量でのみ極大値をとる場合には、制御部80は、戻り光の位相が正の方向にずれていると判定する。そして、制御部80は、位相調整部23のヒーター電力を弱めることで実効的な帰還光路を長くして、位相を負の方向に変化させる。
【0032】
図7に示すように、変調量に対する変調感度のグラフが、所望の周波数に対応する変調量で落ち込み、この変調量よりも小さい変調量でのみ極大値をとる場合には、制御部80は、戻り光の位相が負の方向にずれていると判定する。そして、制御部80は、位相調整部23のヒーター電力を強めることで実効的な帰還光路を短くして、位相を正の方向に変化させる。
【0033】
また、光負帰還部20では、図示しないマイクロヒータによってリングフィルタ21の実効的な光路長が変化するようになっており、制御部80は、このマイクロヒータの電力を調整することで、リングフィルタ21を通過する光の周波数を制御する。このような位相と周波数の制御により、レーザ装置が狭線化状態に近づく。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、判定部70は、変調感度が狭線化効果に反比例するという光負帰還に固有の現象を利用して、狭線化効果を判定する。そして、制御部80は、この判定結果に基づいて、光負帰還部20の状態を最適化する制御を行う。これにより、環境要因などで狭線化効果が変化した場合にも、適切に光負帰還部20を調節し最適状態を保つことが可能となる。また、大規模で高価な計測器が不要であり、簡易な構成で狭線化効果を確認することができる。
【0035】
また、上記文献に記載の方法では、動作点の周波数と位相の調整を、線幅を直接測定して行っている。これに対して、本実施形態では、線幅を直接測定する必要がないため、レーザ装置をさらに簡易な構成とすることができる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して変調量検出部50の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
図8に示すように、本実施形態の変調量検出部50は、リングフィルタ55と、PD56とを備えており、リングフィルタ55を透過した光がPD56によって電気信号に変換されて、変調感度算出部60に入力されるようになっている。また、本実施形態のレーザ装置は加算器40を備えず、変調信号生成部30からの変調信号が制御信号として光源10に直接入力されるようになっており、変調信号生成部30が周波数変調部に相当する。なお、図8では、判定部70、制御部80の図示を省略している。
【0038】
高いQ値を有するリングフィルタの透過率は、周波数に敏感に依存するので、リングフィルタ55のQ値を高く設定すれば、透過光の強度の変化を周波数の変化とみなし、透過光の強度に基づいて変調量を検出することができる。そして、PD56の出力の変化と、変調信号とに基づいて変調感度を算出し、狭線化状態を判定することができる。
【0039】
例えば、リングフィルタ55が図9に示すような特性を持ち、図9に示す周波数f1の付近で周波数を変調させた場合、周波数の増減と同様にPD56の出力が増減する。そして、図10に示すような制御信号を入力すると、狭線化されていない初期状態では、図11の実線で示すようにPD56の出力が大きく増減する。
【0040】
一方、狭線化状態では、制御信号の変化に対する出力光の周波数の変化が小さいため、図11の破線で示すように、PD56の出力が初期状態に比べて小さく増減する。したがって、PD56の出力と制御信号とを比較することで、第1実施形態と同様に変調感度を算出し、狭線化状態を判定することができる。
【0041】
このように変調量検出部50がリングフィルタ55とPD56とで構成された本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して光源10の構成を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
本実施形態の光源10は、外部共振器構造とされている。具体的には、図12に示すように、光源10は、光を発生させる利得媒体11と、利得媒体11を通る光路の両側に配置された反射部12および反射部13とを備えており、利得媒体11から発生した光が反射部12と反射部13との間で共振し、光負帰還部20と、変調量検出部50と、レーザ装置の外部とに出力されるようになっている。なお、図12では、変調信号生成部30、変調感度算出部60、判定部70、制御部80の図示を省略している。利得媒体11は例えば半導体光増幅器で構成され、反射部12、反射部13は、例えば分布ブラッグ反射器で構成される。
【0044】
また、光源10は、利得媒体11と反射部13との間に配置された変調部14を備えており、変調部14は、変調信号生成部30から入力された変調信号に応じて、変調部14を通る光の周波数を変調する。
【0045】
このように光源10が外部共振器構造とされた本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0046】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して変調量検出部50の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図13に示すように、本実施形態の変調量検出部50は、参照光源57と、合波器58と、PD59とを備えている。なお、図13では、光負帰還部20、変調信号生成部30、加算器40、変調感度算出部60、判定部70、制御部80の図示を省略している。
【0048】
参照光源57は、光源10の出力光と比較するための参照光としてのレーザ光を出力するものであり、光源10の出力光は、合波器58によって、参照光源57から出力された参照光と合波される。そして、合波された光は、PD59によって電気信号に変換され、変調感度算出部60に入力される。
【0049】
第1実施形態では、自己遅延ヘテロダインを用いて周波数の変調量を検出したが、このように光源10の出力光と参照光とを合波し、これにより生成されたビート信号の周波数変化から変調量を検出してもよい。
【0050】
変調量検出部50がこのような構成とされた本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0052】
例えば、上記第1実施形態では、PLL回路による線形変調を用いたが、線形の変調を必要としない場合には、フィードバックをかけずに、制御信号に対するビート信号の応答周波数を直接比較して狭線化状態を判定してもよい。この場合には、図14に示すように、制御信号の1次微分の変化に対するビート信号の周波数の変化量が、初期状態では大きく、狭線化状態では小さくなることから、この変化量に基づいて狭線化状態を判定することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、判定部70の判定結果に基づいて制御部80が光負帰還部20を制御したが、レーザ装置が制御部80を備えず、判定部70による狭線化状態の確認のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 光源
11 利得媒体
12 反射部
13 反射部
14 変調部
20 光負帰還部
21 リングフィルタ
22 ループミラー
23 位相調整部
30 変調信号生成部
40 加算器
50 変調量検出部
51 ビート信号生成部
52 PD(フォトダイオード)
53 比較器
54 参照信号生成部
55 リングフィルタ
56 PD(フォトダイオード)
57 参照光源
58 合波器
59 PD(フォトダイオード)
60 変調感度算出部
70 判定部
80 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14