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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/34 20200101AFI20240619BHJP
   D06F 33/54 20200101ALI20240619BHJP
【FI】
D06F33/34
D06F33/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020216733
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102166
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 登
(72)【発明者】
【氏名】川端 睦美
(72)【発明者】
【氏名】澤▲崎▼ 佳菜
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151188(JP,A)
【文献】特開2019-115379(JP,A)
【文献】特開2020-168231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/34
D06F 33/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容し、水が溜められる洗濯槽と、
洗剤を収容する洗剤ケースと、
前記洗剤ケース内を通って前記洗濯槽に接続された主給水路と、
前記洗剤ケース内を通らずに前記洗濯槽に接続された副給水路と、
前記主給水路を開閉する主給水弁と、
前記副給水路を開閉する副給水弁と、
前記洗濯槽に接続された排水路と、
前記排水路を開閉する排水弁と、
前記主給水弁、前記副給水弁及び前記排水弁のそれぞれの開閉を制御して、洗い運転の給水処理を実行する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記主給水弁及び前記排水弁を閉じた状態で前記副給水弁を開くことによって前記排水路における前記排水弁と前記洗濯槽との間の領域を水で満たす第1処理と、前記第1処理後に前記排水弁を閉じた状態で前記主給水弁を開くことによって水を前記洗濯槽に溜める第2処理とを、前記給水処理中に実行する、洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯槽に接続された取出口及び戻し口を有する循環路と、
前記洗濯槽内の空気を前記取出口から前記循環路内に取り出して前記戻し口から前記洗濯槽内に戻すことによって循環させる送風部と、
前記循環路内に設けられ、前記循環路内の空気を加熱する加熱部と、
前記循環路内において前記加熱部よりも前記取出口側の上流領域に配置された乾燥フィルタであって、前記循環路内で前記取出口から前記戻し口へ向かう空気から異物を捕獲する乾燥フィルタと、をさらに含み、
前記制御部は、前記送風部及び前記加熱部を制御して、乾燥運転を実行し、
前記副給水路の一部が前記上流領域を兼ねる、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2処理において、前記主給水弁及び前記副給水弁の両方を開く、請求項1又は2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯乾燥機は、水が溜められる外槽と、外槽内に配置されて洗濯物を収容するドラムと、蛇口と外槽とをつなぐ給水路と、給水路に設けられた給水弁と、外槽の下端部に接続されて外槽内の水を機外に排出する排水路と、排水路の途中に設けられた排水弁とを含む。外槽及びドラムは、洗濯槽を構成する。排水弁が閉じた状態で給水弁が開くと、蛇口からの水が給水路を流れて外槽に溜まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-168231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示はないが、一般的な洗濯機には、洗剤を収容する洗剤ケースが設けられ、給水路は、洗剤ケース内を通って外槽に接続される。このような洗濯機における洗い運転の給水処理では、排水弁が閉じた状態で給水弁が開くことにより、蛇口から給水路を流れる水が、洗剤ケース内の洗剤を乗せて洗濯槽を通り、外槽の底部に供給される。外槽の底部には排水部が形成され、排水部には、排水口に接続される排水路が接続する。この場合において、洗剤ケース内の洗剤は、給水の開始時に蛇口から供給された水とともに洗濯槽を通って外槽に供給される。このように初めに供給された水は、排水部から排水路に流れて、排水弁に達する。したがって、外槽に供給された洗剤の多くが排水路に流れ落ちてしまうことが想定される。給水処理後には、ドラムが回転することによって外槽内の洗剤が水に溶ける。しかし、排水路に流れ落ちた洗剤には、回転するドラムによる機械力が及ばないので、この洗剤は水に溶けにくく、洗剤の溶け残りが発生する虞がある。このように洗剤の溶け残りが発生すると、外槽内の水における洗剤の濃度が低いので、洗い運転では、洗剤による洗濯物の洗い効果が低減される。排水路に流れ落ちた洗剤を外槽に戻すための循環路及びポンプなどを追加すれば、排水路に流れ落ちた洗剤の溶け残りを解消できるが、コスト上昇が不可避である。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯槽に供給された洗剤が排水路に流れ落ちることを低コストで抑制できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、洗濯物を収容し、水が溜められる洗濯槽と、洗剤を収容する洗剤ケースと、前記洗剤ケース内を通って前記洗濯槽に接続された主給水路と、前記洗剤ケース内を通らずに前記洗濯槽に接続された副給水路と、前記主給水路を開閉する主給水弁と、前記副給水路を開閉する副給水弁と、前記洗濯槽に接続された排水路と、前記排水路を開閉する排水弁と、前記主給水弁、前記副給水弁及び前記排水弁のそれぞれの開閉を制御して、洗い運転の給水処理を実行する制御部と、を含む洗濯機であって、前記制御部が、前記主給水弁及び前記排水弁を閉じた状態で前記副給水弁を開くことによって前記排水路における前記排水弁と前記洗濯槽との間の領域を水で満たす第1処理と、前記第1処理後に前記排水弁を閉じた状態で前記主給水弁を開くことによって水を前記洗濯槽に溜める第2処理とを、前記給水処理中に実行する、洗濯機である。
【0007】
また、本発明は、前記洗濯機が、前記洗濯槽に接続された取出口及び戻し口を有する循環路と、前記洗濯槽内の空気を前記取出口から前記循環路内に取り出して前記戻し口から前記洗濯槽内に戻すことによって循環させる送風部と、前記循環路内に設けられ、前記循環路内の空気を加熱する加熱部と、前記循環路内において前記加熱部よりも前記取出口側の上流領域に配置された乾燥フィルタであって、前記循環路内で前記取出口から前記戻し口へ向かう空気から異物を捕獲する乾燥フィルタと、をさらに含み、前記制御部が、前記送風部及び前記加熱部を制御して、乾燥運転を実行し、前記副給水路の一部が前記上流領域を兼ねることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記制御部が、前記第2処理において、前記主給水弁及び前記副給水弁の両方を開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗濯機の洗い運転の給水処理では、まず、第1処理において、主給水弁及び排水弁が閉じた状態で副給水弁が開くことによって、排水路における排水弁と洗濯槽との間の領域が、副給水路からの水で満たされる。そして、次の第2処理において、排水弁が閉じた状態で主給水弁が開くことによって、主給水路及び洗剤ケース内を流れて洗剤を乗せた水が洗濯槽に溜められる。排水路における排水弁と洗濯槽との間の領域が既に水で満たされた状態にあるので、第2処理によって洗濯槽に供給された洗剤は、排水路に流れ落ちることなく、洗濯槽内に留まる。
このように第1処理によって排水路における排水弁と洗濯槽との間の領域を水で満たしてから第2処理によって洗剤及び水を洗濯槽内に供給するという低コストの構成により、洗濯槽に供給された洗剤が排水路に流れ落ちて溶け残ることを抑制できる。これにより、洗濯槽内の水における洗剤の濃度の低下を抑制できるので、洗い運転では、洗剤の濃度が高い洗剤水によって洗濯物を効果的に洗うことができる。以上の結果、洗濯槽に供給された洗剤が排水路に流れ落ちることを低コストで抑制できる。
【0010】
また、本発明によれば、洗濯機の乾燥運転では、洗濯槽内の空気が、取出口から循環路内に取り出されて戻し口から洗濯槽内に戻るように循環し、この空気は、循環路内で加熱部によって加熱されて熱風となり、洗濯槽内の洗濯物を乾燥させる。循環路内において加熱部よりも取出口側の上流領域に設けられた乾燥フィルタが、循環路内で取出口から戻し口へ向かう空気に含まれる異物を捕獲する。そのため、空気中の異物が加熱部に付着することを抑制できる。
副給水路の一部が循環路の上流領域を兼ねる。そのため、副給水路を流れる水は、乾燥フィルタに浴びせられることによって乾燥フィルタから異物を剥がし、この異物を乗せて取出口から洗濯槽に流れ込んだ後に排水路に流出する。このように乾燥フィルタから異物を剥がすための水を、第1処理では、排水路における排水弁と洗濯槽との間の領域を満たすために流用することができる。そのため、洗濯槽に供給された洗剤が排水路に流れ落ちることを一層低コストで抑制できる。
【0011】
また、本発明によれば、第2処理では、主給水弁及び副給水弁の両方が開くので、洗濯槽内の水位を速やかに上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
図2】洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】洗濯機における洗濯槽及び周辺構成の模式的な縦断面正面図である。
図4】洗濯槽及び周辺構成の模式的な縦断面正面図である。
図5】洗濯槽及び周辺構成の模式的な縦断面正面図である。
図6】洗濯機の洗い運転における給水処理を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。図1の紙面に直交する方向を洗濯機1の左右方向Xといい、図1における左右方向を洗濯機1の前後方向Yといい、図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Zという。左右方向Xのうち、図1の紙面における奥側を左側X1といい、図1の紙面における手前側を右側X2という。前後方向Yのうち、図1における左側を前側Y1といい、図1における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。左右方向X及び前後方向Yは、横方向に含まれる。横方向は、水平方向Hであってもよいし、水平方向Hに対して若干傾斜した略水平方向であってもよい。
【0014】
洗濯機1として、本実施形態ではドラム式の洗濯乾燥機を主な対象とするが、洗濯機1は、縦型洗濯機や、二槽式洗濯機であってもよいし、乾燥機能が省略されて洗濯運転だけを実行する洗濯機であってもよい。洗濯機1は、筐体2と、筐体2内に配置された洗濯槽3及び洗剤ケース4と、洗濯槽3に接続された主給水路5及び排水路6とを含む。洗濯機1は、洗濯槽3内に収容されて洗濯物Lを収容するドラム7と、ドラム7を回転させるモータ8と、ドラム7内の洗濯物Lを乾燥させる乾燥ユニット9とさらに含む。
【0015】
筐体2は、ボックス状に形成される。筐体2の前面2Aは、例えば垂直面である。前面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Bが形成される。前面2Aには、開口2Bを開閉する扉10が設けられる。
【0016】
洗濯槽3は、筐体2の底壁2Cから上側Z1へ延びるショックアブソーバ11の上端に連結される。これにより、洗濯槽3及びその内側のドラム7の全体が、ショックアブソーバ11を介して、底壁2Cによって弾性支持される。洗濯槽3は、水平方向Hに沿って前後方向Yに延びる軸線Jを中心とした円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁3Bと、円周壁3Aの前端縁につながったリング状の正面壁3Cとを有する。
【0017】
背面壁3Bは、垂直に配置され、外周部3Dと、外周部3Dよりも後側Y2へ一段突出した中央部3Eとを有する。中央部3Eの中心には、軸線Jに沿って中央部3Eを前後方向Yに貫通した貫通穴3Fが形成される。正面壁3Cは、円周壁3Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第1部3Gと、第1部3Gの内周縁から前側Y1へ突出した円筒状の第2部3Hと、第2部3Hの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第3部3Iとを有する。第3部3Iの内側には、円周壁3Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口3Jが形成される。出入口3Jは、筐体2の開口2Bに対して後側Y2から対向して連通した状態にある。
【0018】
洗剤ケース4は、洗剤を収容する中空体であり、筐体2内において洗濯槽3よりも上側Z1の領域に配置される。洗剤ケース4の少なくとも一部は、筐体2の前面2A又は上面2Dから露出される。洗剤ケース4において前面2A又は上面2Dから露出された露出部分は、開閉可能な蓋、又は、引出しであってもよい。使用者は、当該露出部分を開いたり引き出したりして洗剤ケース4内に洗剤を補充することができる。
【0019】
主給水路5は、蛇口(図示せず)に接続された一端(図示せず)と、洗濯槽3の正面壁3Cの第2部3Hにおける例えば上部に接続された他端5Aと、当該一端と他端5Aとの間の途中部5Bとを有する。途中部5Bは、洗剤ケース4の内部空間の一部を構成する。つまり、主給水路5は、洗剤ケース4内を通って洗濯槽3に接続される。給水時には、蛇口からの水道水が主給水路5及び洗剤ケース4を通って洗濯槽3内に供給される。洗剤ケース4内に洗剤が存在しなければ、洗濯槽3内には水道水が溜められる。洗剤ケース4内に洗剤が存在すれば、洗濯槽3内には、水道水に洗剤が溶けた洗剤水が溜められる。以下では、水道水及び洗剤水を「水」と略称することがある。
【0020】
洗濯機1は、主給水路5において例えば途中部5Bよりも蛇口側に設けられた開閉可能な主給水弁12を含む。開状態の主給水弁12は、主給水路5を開いたON状態にあり、給水を許容する。閉状態の主給水弁12は、主給水路5を閉じたOFF状態にあり、給水を停止する。
【0021】
排水路6は、洗濯槽3の下端部、例えば円周壁3Aの下端部に接続される。洗濯槽3内の水は、排水路6から筐体2の外、つまり機外に排出される。
【0022】
洗濯機1は、排水路6の途中に設けられた開閉可能な排水弁13を含む。開状態の排水弁13は、排水路6を開いたON状態にあり、洗濯槽3の排水を許容する。閉状態の排水弁13は、排水路6を閉じたOFF状態にあり、排水を停止する。排水路6において排水弁13と洗濯槽3との間の領域を上流領域6Aといい、排水弁13よりも洗濯槽3から離れた領域を下流領域6Bという。
【0023】
ドラム7は、軸線Jと一致した中心軸線を有する円筒体であって、洗濯槽3よりも一回り小さい。ドラム7は、本実施形態では中心軸線が水平方向Hに沿うように水平に配置されるが、中心軸線が水平方向Hに対して傾斜するように斜めに配置されてもよい。ドラム7は、洗濯槽3の円周壁3Aと同軸上に配置された円筒状の円周壁7Aと、円周壁7Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁7Bと、円周壁7Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の環状壁7Cとを有する。ドラム7において少なくとも円周壁7Aには、複数の貫通穴7Dが形成され、洗濯槽3内の水は、貫通穴7Dを介して、洗濯槽3とドラム7との間で行き来する。そのため、洗濯槽3内の水位とドラム7内の水位とは、一致する。ドラム7の背面壁7Bの中心には、軸線Jに沿って後側Y2へ延びる支持軸14が設けられる。支持軸14の後端部は、洗濯槽3の背面壁3Bの貫通穴3Fを通って背面壁3Bよりも後側Y2に配置される。
【0024】
環状壁7Cの内側には、円周壁7Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口7Eが形成される。出入口7Eは、洗濯槽3の出入口3J及び筐体2の開口2Bに対して後側Y2から対向して連通した状態にある。出入口3J及び出入口7Eは、開口2Bとともに、扉10によって一括開閉される。洗濯機1の使用者は、開放された開口2B、出入口3J及び出入口7Eを介して、ドラム7内に洗濯物Lを出し入れする。扉10には、扉10が開口2B、出入口3J及び出入口7Eを閉じたときに洗濯槽3の正面壁3Cの第3部3Iに密着するパッキン15が設けられる。
【0025】
モータ8は、筐体2内において、洗濯槽3の背面壁3Bの後側Y2に配置される。モータ8の一例として、DD(ダイレクトドライブ)モータを採用できる。モータ8は、ドラム7に設けられた支持軸14に連結される。モータ8が発生したトルクは、支持軸14に伝達され、ドラム7が、支持軸14を伴って軸線Jまわりに回転する。なお、モータ8と支持軸14と間には、モータ8のトルクを支持軸14に伝達したり遮断したりするクラッチ機構(図示せず)が設けられてもよい。
【0026】
乾燥ユニット9は、洗濯槽3内の空気を循環させるための循環路20及び送風部21と、循環する空気を加熱する加熱部22と、循環する空気に含まれる異物を捕獲する乾燥フィルタ23と、乾燥フィルタ23に自動掃除用の水を供給する副給水路24と、副給水路24を開閉する副給水弁25とを含む。
【0027】
循環路20は、筐体2内において洗濯槽3の上側Z1に配置された流路である。循環路20は、前後方向Yに延びる途中部分20Aと、途中部分20Aの後端から下側Z2へ延びる後部分20Bと、途中部分20Aの前端から下側Z2へ延びる前部分20Cとを有する。後部分20Bの下端部の前端には、取出口20Dが形成される。取出口20Dは、洗濯槽3の背面壁3Bの外周部3Dにおいて上限水位よりも高い部分に接続され、洗濯槽3内に後側Y2から連通する。前部分20Cの下端には、戻し口20Eが形成される。戻し口20Eは、洗濯槽3の正面壁3Cの第2部3Hの上端部に接続され、洗濯槽3内に上側Z1から連通する。
【0028】
送風部21は、いわゆるブロアであり、循環路20内に配置された回転羽根21Aと、回転羽根21Aを回転させるモータ(図示せず)とを含む。回転羽根21Aが回転すると、洗濯槽3内の空気、つまり洗濯槽3内及びドラム7内の空気が、太い破線矢印で示すように、取出口20Dから循環路20内に取り出された後に、戻し口20Eから洗濯槽3内に戻される。これにより、洗濯槽3内の空気は、洗濯槽3と循環路20とを順に流れるように循環する。
【0029】
加熱部22は、ヒートポンプにおける熱交換器又は一般的なヒータなどであり、少なくとも一部が、循環路20内に設けられる。加熱部22において循環路20内に設けられた部分は、放熱部22Aを有する。加熱部22が作動すると放熱部22Aが高温になるので、循環路20内を流れる空気が放熱部22Aの周囲を通過する際に加熱されて熱風になる。循環路20内において放熱部22Aよりも取出口20D側の領域を、上流領域20Fという。途中部分20Aの後端部と後部分20Bとが、上流領域20Fを構成する。
【0030】
乾燥フィルタ23は、メッシュシート又は格子であって、循環路20の上流領域20Fを例えば縦に横切って配置される。循環路20内で取出口20Dから戻し口20Eへ向かう空気が乾燥フィルタ23を通過する際に、この空気に含まれる塵や埃などの異物が、乾燥フィルタ23によって捕獲されて、乾燥フィルタ23において取出口20D側の上流面23Aに溜まる。
【0031】
副給水路24は、主給水路5において主給水弁12よりも蛇口に近い部分につながった上流部24Aと、循環路20の上流領域20Fによって構成された下流部24Bとを含む。つまり、副給水路24の一部が上流領域20Fを兼ねる。上流部24Aにおいて下流部24Bに接続された端部は、上流領域20Fにおける乾燥フィルタ23に上側Z1から臨む。上流領域20Fは、前述したように取出口20Dにおいて洗濯槽3に接続される。このような副給水路24は、洗剤ケース4内を通らずに洗濯槽3に接続される。
【0032】
副給水弁25は、副給水路24の上流部24Aに設けられる。開状態の副給水弁25は、副給水路24を開いたON状態にあり、副給水路24経由での洗濯槽3への給水を許容する。閉状態の副給水弁25は、副給水路24を閉じたOFF状態にあり、副給水路24経由での洗濯槽3への給水を停止する。
【0033】
洗濯機1は、制御部30をさらに含む。図2は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。制御部30は、例えば、CPUと、ROMやRAMなどのメモリと、計時用のタイマとを含むマイコンとして構成され、筐体2内に内蔵される。モータ8、主給水弁12、排水弁13、送風部21、加熱部22及び副給水弁25のそれぞれは、制御部30に対して電気的に接続され、制御部30は、これらのそれぞれの動作を制御することによって洗濯乾燥運転を実行する。洗濯乾燥運転は、序盤の洗い工程と、洗い工程後に1回又は複数回実行されるすすぎ工程と、少なくとも最後のすすぎ工程後に実行される脱水工程と、終盤の乾燥工程とを含む。これらの工程のそれぞれは、独立した運転であってもよく、その場合、例えば、洗い工程は洗い運転であり、乾燥工程は、乾燥運転である。洗濯機1は、洗濯槽3内の水位を検出する水位センサ31をさらに含む。水位センサ31として、公知のセンサを採用できる。水位センサ31の検出値は、リアルタイムで制御部30に入力される。
【0034】
制御部30は、洗い工程では、まず、主給水弁12、副給水弁25及び排水弁13のそれぞれの開閉を制御して給水処理を実行する。以下では、洗濯槽3及び周辺構成の模式的な縦断面正面図である図3図5と、洗い運転における給水処理を示すタイムチャートである図6とを参照しながら、洗い工程の給水処理について説明する。図6のタイムチャートでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が、上から順に、水位センサ31の検出値である洗濯槽3内の水位、主給水弁12のON・OFF状態、副給水弁25のON・OFF状態及びモータ8の状態を示す。モータ8の状態には、モータ8が停止した状態と、モータ8が正回転した状態と、モータ8が逆回転した状態とがある。なお、排水弁13は、給水処理中では常に閉じた状態にある。
【0035】
給水処理において、制御部30は、排水弁13を閉じた状態で、副給水弁25及び主給水弁12を順番に開く。ただし、主給水弁12が最初に開くと、洗剤ケース4内の洗剤が、図3の矢印A1に示すように、主給水路5を流れる水に乗って洗濯槽3内に流入し、洗濯槽3内に溜まることなく、排水路6の上流領域6Aに流れ落ちてしまう。これでは、洗濯槽3内の水における洗剤の濃度が低くなってしまう。
【0036】
そこで、本実施形態の給水処理では、制御部30は、最初の第1処理として、排水弁13及び主給水弁12を閉じた状態で、副給水弁25を開く(図6のタイミングT0)。すると、副給水路24からの水道水が、図4の矢印A2に示すように、洗濯槽3内を通って排水路6の上流領域6Aに流入する。副給水弁25が所定時間開くと、図4のハッチングで示されるように、上流領域6Aが水道水によって満たされる。
【0037】
その後、上流領域6Aをから水道水が溢れることによって洗濯槽3内の水位がドラム7の円周壁7Aの下端よりも下側Z2の水位W1まで上昇すると、制御部30は、第1処理を終了して、第2処理を実行する(図6のタイミングT1)。第1処理を終了するタイミングは、洗濯槽3内の水位が水位W1まで上昇したことを水位センサ31が検出したタイミングであってもよいし、実験などによって予め定められた時間がタイミングT0から経過したタイミングであってもよい。第2処理として、制御部30は、排水弁13を引き続き閉じた状態で、副給水弁25を閉じて主給水弁12を開く。すると、主給水路5を流れて洗剤ケース4内の洗剤を乗せた洗剤水が、図5の矢印A3に示すように、洗濯槽3内に流入して溜まる。これにより、洗濯槽3内の水位が、水位W1から上昇する。
【0038】
第1処理によって排水路6における排水弁13と洗濯槽3との間の上流領域6Aが既に水道水で満たされた状態にあるので、その後の第2処理によって洗濯槽3に供給された洗剤は、排水路6に流れ落ちることなく、洗濯槽3内に留まる。このように第1処理によって排水路6の上流領域6Aを水道水で満たしてから第2処理によって洗剤及び水を洗濯槽3内に供給するという構成により、洗濯槽3に供給された洗剤が排水路6に流れ落ちて溶け残ることを抑制できる。この場合には、排水路6の水を洗濯槽3に戻すためのポンプなどを用いない低コストの構成で済む。よって、洗濯槽3に供給された洗剤が排水路6に流れ落ちることを低コストで抑制できる。
【0039】
洗濯槽3内の水位が、給水途中の水位W2まで上昇すると、制御部30は、主給水弁12を閉じて副給水弁25を開き、モータ8を作動させてモータ8の正回転と逆回転とを繰り返す(図6のタイミングT2)。モータ8が正回転に応じてドラム7が正回転し、モータ8が逆回転に応じてドラム7が逆回転する。ドラム7の正逆回転に応じてドラム7内の洗濯物Lへの洗剤水の染み込みが促進されるので、洗濯槽3内の水位が低下する。また、ドラム7の正逆回転により、洗濯槽3内において洗剤が積極的に水道水に溶けるので、高濃度の洗剤水が洗濯槽3内に溜まる。
【0040】
制御部30は、モータ8の正逆回転を所定時間継続すると、副給水弁25を引き続き開いた状態で、モータ8を停止させて主給水弁12を開く(図6のタイミングT3)。このように、制御部30は、第2処理において、主給水弁12及び副給水弁25の両方を開く。これにより、洗濯槽3内の水位が、再び上昇する。主給水弁12及び副給水弁25の両方が開くので、洗濯槽3内の水位を速やかに上昇させることができる。なお、洗剤ケース4内の洗剤が全て流出しきった状態にあれば、主給水路5からは水道水だけが洗濯槽3に供給される。
【0041】
洗濯槽3内の水位が、水位W2を上回って目標の水位W3まで上昇すると、制御部30は、主給水弁12及び副給水弁25を閉じて、モータ8を作動させてモータ8の正回転と逆回転とを繰り返す(図6のタイミングT4)。モータ8の正逆回転に応じて、前述したように洗濯槽3内の水位が低下する。ただし、直前のタイミングT2~T3におけるモータ8の正逆回転によって洗剤水が洗濯槽3内の洗濯物Lにほとんど染み込んだ状態にあるので、タイミングT4以降の洗濯槽3内の水位の低下は緩やかである。制御部30は、モータ8の正逆回転を所定時間継続すると、主給水弁12及び副給水弁25を引き続き閉じた状態で、モータ8を一時停止させる(図6のタイミングT5)。
【0042】
その後、制御部30は、副給水弁25を引き続き閉じた状態で主給水弁12を開く(図6のタイミングT6)。これに応じて洗濯槽3内の水位が水位W3まで上昇すると、制御部30は、主給水弁12を閉じてモータ8の正回転と逆回転とを繰り返す(図6のタイミングT7)。その後、制御部30は、主給水弁12及び副給水弁25を引き続き閉じた状態で、モータ8を一時停止させる(図6のタイミングT8)。制御部30は、このような主給水弁12の開放、モータ8の正逆回転及びモータ8の一時停止によって構成された追加給水を、その後も所定回数繰り返すと(図6のタイミングT9以降)、主給水弁12及び副給水弁25を閉じることによって第2処理を終了する。これにより、給水処理の全体が終了する。なお、第2処理では、主給水弁12を常に開くのでなく、間欠的に開くことによって、洗濯槽3内の水位が安定するので、水位センサ31は、洗濯槽3内の水位を正確に検出することができる。
【0043】
制御部30は、給水処理後の洗い処理として、モータ8によってドラム7を回転させる。これにより、ドラム7内の洗濯物Lが、たたき洗いされる。たたき洗いでは、洗濯物Lがある程度持ち上げられてから水面に自然落下するというタンブリングが繰り返される。タンブリングによる衝撃や、ドラム7に溜まった洗剤水に含まれる高濃度の洗剤成分によって、洗濯物Lから汚れが取り除かれる。前述したように洗濯槽3内の水における洗剤の濃度の低下を抑制できるので、洗い処理では、洗剤の濃度が高い洗剤水によって洗濯物Lを素早く効果的に洗うことができる。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部30が排水弁13を開いて排水すると、洗い工程が終了する。
【0044】
制御部30は、すすぎ工程では、排水弁13を閉じた状態で、少なくとも主給水弁12を所定時間開いて洗濯槽3に給水してから、モータ8によってドラム7を回転させる。すると、前述したタンブリングが繰り返されるので、洗濯物Lがドラム7内の水道水によってすすがれる。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部30が排水すると、すすぎ工程が終了する。
【0045】
制御部30は、脱水工程では、排水弁13を開いた状態で、ドラム7を脱水回転させる。ドラム7の脱水回転により生じた遠心力によって、ドラム7内の洗濯物Lが脱水される。脱水により洗濯物Lから染み出た水は、排水路6から機外に排出される。脱水工程は、すすぎ工程後だけでなく、洗い工程後にも実施されてもよい。
【0046】
制御部30は、乾燥工程では、送風部21及び加熱部22を制御することによって熱風を発生させてドラム7と循環路20との間で循環させ、ドラム7内の洗濯物Lに供給する。これにより、洗濯物Lが乾燥する。洗濯運転では、前述した異物が発生して、この異物が乾燥工程中において熱風に乗って流れるが、異物は、循環路20内の乾燥フィルタ23によって捕獲される。これにより、異物が加熱部22の放熱部22Aに付着して蓄積することを抑制できるので、加熱部22での加熱効率の低下や循環路20における空気の流れの悪化に伴う性能低下が生じることを防止できる。
【0047】
制御部30は、乾燥工程後つまり洗濯乾燥運転終了後に、乾燥フィルタ23のメンテナンス運転として副給水弁25を開く。なお、主給水弁12が主給水路5において副給水路24との接続位置よりも蛇口に近い上流側に設けられてもよく、その場合には、制御部30は、主給水弁12及び副給水弁25の両方を開く。蛇口からの水道水は、主給水路5から副給水路24に流入する。または、副給水路24は、主給水路5に接続されずに、蛇口に直接接続されてもよい。
【0048】
副給水路24において上流部24Aから下流部24Bに流入した水は、下流部24B、つまり循環路20の上流領域20Fに配置された乾燥フィルタ23に上側Z1から浴びせられる。これにより、乾燥フィルタ23の上流面23A上の異物が上流面23Aから剥がされて落下し、水に乗って循環路20の取出口20Dに到達する。なお、下流部24Bには、上流部24Aからの水道水を勢いよく乾燥フィルタ23に噴射するためのノズルやポンプなどが設けられてもよいし、制御部30の制御によって回動しながら上流面23A上の異物を掻き取るワイパなどが設けられてもよい。
【0049】
取出口20Dに到達した異物及び水は、取出口20Dから洗濯槽3内に落下する。ことのき、排水弁13が開いた状態にあると、これらの異物及び水は、排水路6を流れて機外に排出される。なお、排水路6において排水弁13よりも洗濯槽3に近い上流部には、排水フィルタ(図示せず)が設けられてもよく、その場合には、排水路6を流れる異物は、排水フィルタによって捕獲されて、排水フィルタのメンテナンス時に使用者によって回収される。排水フィルタとして、メンテナンス時に使用者によって筐体2に対して着脱可能な公知の構成を用いることができる。
【0050】
以上のように、副給水路24を流れる水は、乾燥フィルタ23に浴びせられることによって乾燥フィルタ23から異物を剥がし、この異物を乗せて取出口20Dから洗濯槽3に流れ込んだ後に排水路6に流出する。このように乾燥フィルタ23から異物を剥がすための自動掃除用の水を、第1処理では、排水路6における排水弁13と洗濯槽3との間の上流領域6Aを満たすために流用することができる。そのため、洗濯槽3に供給された洗剤が排水路6に流れ落ちることを一層低コストで抑制できる。
【0051】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、主給水弁12及び副給水弁25が、共通の多方弁によって構成されてもよい。また、副給水路24は、乾燥フィルタ23の自動掃除などの複数の用途のそれぞれに応じて複数存在してもよい。副給水路24を流れる水は、水道水に限らず、風呂水であってもよい。主給水路5を流れる水についても同様である。
【0053】
洗剤ケース4には、洗剤だけでなく、柔軟剤も収容されてもよい。その場合、洗剤ケース4は、洗剤及び柔軟剤を選択的に主給水路5の水に乗せるように構成される。柔軟剤は、すすぎ工程での給水処理時に洗濯槽3内に供給される。
【符号の説明】
【0054】
1 洗濯機
3 洗濯槽
4 洗剤ケース
5 主給水路
6 排水路
6A 上流領域
12 主給水弁
13 排水弁
20 循環路
20D 取出口
20E 戻し口
20F 上流領域
21 送風部
22 加熱部
23 乾燥フィルタ
24 副給水路
25 副給水弁
30 制御部
L 洗濯物
図1
図2
図3
図4
図5
図6