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特許7506387脊椎固定術用コネクターおよび脊椎固定術用インプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】脊椎固定術用コネクターおよび脊椎固定術用インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20240619BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61B17/70
A61B17/86
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019212931
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021083546
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】508282465
【氏名又は名称】帝人ナカシマメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄一
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】近藤 利充
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-97706(JP,A)
【文献】国際公開第2018/183423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎体に固定される、前記椎体に係合する椎体係合部およびヘッド部を含む椎体固定具と
前記椎体固定具と脊椎に沿って配置されるロッドとを連結する脊椎固定術用コネクターと、を備え、
前記椎体固定具のヘッド部には、当該ヘッド部を横断する溝または当該ヘッド部を貫通する穴である空洞が設けられ、前記ヘッド部は、当該ヘッド部に設けられた前記空洞の前記椎体係合部側の面に沿って張り出す張り出し部を有し、
前記脊椎固定術用コネクターは、前記ロッドが挿入される空洞および前記ロッドを固定するためのセットスクリューが螺合するネジ穴が設けられた支持部と、前記支持部から延びる柱状のアームであって、前記ヘッド部に設けられた前記空洞に挿入されるアームと、を含み
前記ネジ穴は前記椎体固定具を前記脊椎固定術用コネクターに連結したときに前記アームに対して前記椎体係合部と反対側に位置し、
前記アームの先端には、当該アームの外周面から突出する少なくとも1つの突起が設けられており、当該アームの軸方向における前記支持部から前記突起までの長さが前記ヘッド部に設けられた前記空洞の当該ヘッド部を横断または貫通する方向の長さ以上であり、前記少なくとも1つの突起の全てが、前記アームの中心軸よりも前記ネジ穴側に位置する、脊椎固定術用インプラント
【請求項2】
前記椎体係合部側を下方、前記ヘッド部側を上方としたとき、
前記張り出し部の上面は、前記張り出し部よりも上方に位置する前記ヘッド部の側面に向かって滑らかに湾曲している、請求項に記載の脊椎固定術用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定術用コネクターおよびこれを含む脊椎固定術用インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脊椎に沿って配置されるロッドと、椎体に固定されて前記ロッドを保持する椎体固定具とを含む脊椎固定術用インプラントが知られている。一般的に、椎体固定具は、ロッドが挿入される空洞が設けられたヘッド部と、このヘッド部に取り付けられた、椎体に係合する椎体係合部を含む。例えば、椎体係合部は、スクリューやフックなどである。
【0003】
椎体固定具のヘッド部には、ロッド挿入用の空洞が椎体係合部と反対向きに開口する溝であるオープンタイプのものと、前記空洞が椎体係合部と前記ヘッド部とが並ぶ方向と直交する方向で前記ヘッド部を貫通する穴であるクローズタイプのものがある。
【0004】
ロッドは、椎体固定具のヘッド部に直接保持されることもあるし、コネクターを介してヘッド部に保持されることもある。例えば、特許文献1には、ロッドが挿入される空洞が設けられた支持部と、この支持部から延びて椎体固定具のヘッド部に保持される円柱状のアームを含む脊椎固定術用コネクターが開示されている。また、支持部には、ロッドを固定するためのセットスクリューが螺合するネジ穴が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-309923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
椎体固定具のヘッド部がオープンタイプの場合、あるいは椎体固定具のヘッド部がクローズタイプの場合であっても空洞の断面形状が長円状である場合は、脊椎固定術用コネクターのアームの先端に、当該アームの外周面から突出する一対の突起が設けられることがある。これらの突起は、アームがヘッド部の空洞に挿入された状態を維持するストッパーとしての役割を果たす。具体的に、一対の突起は、ロッドと平行な直線であってアームの中心軸を通る直線上で、アームから互いに反対向きに突出する。
【0007】
ところで、椎体固定具のヘッド部には、様々な形状のものが存在する。例えば、椎体固定具のヘッド部の中には、当該ヘッド部に設けられた空洞の下方に、空洞の椎体係合部側の面に沿って張り出す張り出し部を有するもある。このような形状のヘッド部に対し、上述したようなアームの先端に一対の突起が設けられたコネクターを用いた場合には、ロッドが椎体係合部とヘッド部の並び方向と直交する方向に対してある程度傾いたときに一方の突起が上記の張り出し部と干渉する。従って、ロッドの角度の調整範囲が狭くなる。
【0008】
そこで、本発明は、椎体固定具のヘッド部の形状に拘らずにロッドの角度の調整範囲を大きく確保することができる突起付きの脊椎固定術用コネクターを提供することを目的とする。また、本発明は、その脊椎固定術用コネクターを含む脊椎固定術用インプラントを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の脊椎固定術用コネクターは、椎体に固定される、椎体係合部およびヘッド部を含む椎体固定具と、脊椎に沿って配置されるロッドとを連結する脊椎固定術用コネクターであって、前記ロッドが挿入される空洞および前記ロッドを固定するためのセットスクリューが螺合するネジ穴が設けられた支持部と、前記支持部から延び、前記椎体固定具のヘッド部に設けられた空洞に挿入される柱状のアームと、を備え、前記アームの先端には、当該アームの外周面から突出する少なくとも1つの突起が設けられており、前記少なくとも1つの突起は、前記アームの中心軸よりも前記ネジ穴側に位置する、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、椎体固定具のヘッド部が空洞の椎体係合部側の面に沿って張り出す張り出し部を有する場合には、張り出し部から突起までの距離が従来よりも長くなる。このため、ロッドが椎体係合部とヘッド部の並び方向と直交する方向に対してある程度傾いても、突起が張り出し部と干渉することがない。一方、椎体固定具のヘッド部が張り出し部を有しない場合には、突起によってロッドの角度の調整範囲が阻害されることはない。従って、椎体固定具のヘッド部の形状に拘らずにロッドの角度の調整範囲を大きく確保することができる。
【0011】
また、本発明の脊椎固定術用インプラントは、上記の脊椎固定術用コネクターと、椎体に固定される椎体固定具であって、前記脊椎固定術用コネクターのアームが挿入される空洞が設けられたヘッド部、および椎体に係合する椎体係合部、を含む椎体固定具と、を備え、前記ヘッド部は、当該ヘッド部に設けられた前記空洞の前記椎体係合部側の面に沿って張り出す張り出し部を有する、ことを特徴とする。この構成によれば、ロッドの角度の調整範囲が大きく確保されるため、脊椎固定術を良好に行うことができる。
【0012】
例えば、前記椎体係合部側を下方、前記ヘッド部側を上方としたとき、前記張り出し部の上面は、前記張り出し部よりも上方に位置する前記ヘッド部の側面に向かって滑らかに湾曲してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、椎体固定具のヘッド部の形状に拘らずにロッドの角度の調整範囲を大きく確保することができる突起付きの脊椎固定術用コネクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る脊椎固定術用コネクターがスクリューとロッドとを連結した状態を示す斜視図である。
図2】(a)および(b)は、それぞれ前記脊椎固定術用コネクターの斜視図および正面図である。
図3】(a)および(b)は、それぞれロッドがスクリューの軸方向と直交するときの脊椎固定術用コネクターおよびスクリューの側面図および正面図である。
図4】(a)はロッドがスクリューの軸方向と直交する方向に対して傾いたときの本発明の一実施形態の脊椎固定術用コネクターおよびスクリューの正面図、(b)はロッドがスクリューの軸方向と直交する方向に対して傾いたときの従来の脊椎固定術用コネクターおよびスクリューの正面図である。
図5】変形例の脊椎固定術用コネクターの斜視図である。
図6】(a)および(b)は、それぞれ別の変形例の脊椎固定術用コネクターの斜視図および正面図である。
図7】(a)は図6(a)に示す脊椎固定術用コネクターを用いたときの筋肉や軟組織を示す図であり、(b)は図2(a)または図5に示す脊椎固定術用コネクターを用いたときの筋肉や軟組織を示す図である。
図8】(a)は変形例の椎体固定具の斜視図、(b)はその椎体固定具のヘッド部の空洞に図2(a)または図5に示す脊椎固定術用コネクターのアームが挿入されるときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明の一実施形態に係る脊椎固定術用コネクター3を含む脊椎固定術用インプラント9を示す。このインプラント9は、コネクター3の他に、椎体に固定される椎体固定具1と、脊椎に沿って配置されるロッド2を含む。コネクター3は、椎体固定具1とロッド2とを連結する。
【0016】
椎体固定具1は、ロッド2が挿入可能な空洞13が設けられたヘッド部12と、このヘッド部12に取り付けられた、椎体に係合する椎体係合部11を含む。本実施形態では、ヘッド部12の形状が略円柱状である。ただし、ヘッド部12の形状はこれに限られるものではなく、例えば断面が四角形や六角形などの角柱状であってもよい。以下、説明の便宜上、椎体係合部11とヘッド部12とが並ぶ方向を上下方向(特に、椎体係合部11側を下方、ヘッド部12側を上方)ともいう。
【0017】
本実施形態では、椎体係合部11が、ヘッド部12に回転可能に支持されたスクリューである。ただし、スクリューはヘッド部12に一体的に形成されてもよい。あるいは、椎体係合部11は、図8(a)に示す変形例の椎体固定具1Aのように、ヘッド部12に一体的に形成されたフックであってもよい。さらには、椎体係合部11は、椎体に結び付けられる環状のケーブルであってもよい。
【0018】
また、本実施形態では、図1に示すように、ヘッド部12がオープンタイプである。つまり、ヘッド部12に設けられた空洞13は、椎体係合部11と反対向きに開口する溝である。換言すれば、空洞13は、上下方向と直交する方向でヘッド部12を横断する溝である。
【0019】
さらに、ヘッド部12には、空洞13である溝の両側面を利用して、ネジ穴14が設けられている。ネジ穴14には、コネクター3の後述するアーム5をヘッド部12に固定するためのセットスクリュー8が螺合する。
【0020】
本実施形態では、ヘッド部12が、図1および図3(a)に示すように、空洞13の下方に、空洞13の椎体係合部11側の下面(溝の底)に沿って空洞13の横断方向に張り出す一対の張り出し部15,16を有する。これらの張り出し部15,16は、ヘッド部12における空洞13の横断方向の両側部分が切りかかれることによって形成されている。このため、ヘッド部12は、張り出し部15,16の上方に位置する、互いに平行な一対の側面18を有する。また、張り出し部15の上面17および張り出し部16の上面のそれぞれは、側面18に向かって滑らかに湾曲している。
【0021】
コネクター3は、ロッド2を支持する支持部4と、支持部4から延びる柱状のアーム5を含む。アーム5は、椎体固定具1の空洞13に挿入される。本実施形態では、アーム5が円柱状であってアーム5の断面形状が円形状であるが、アーム5の形状はこれに限られず、例えばアーム5の断面形状が、円形状の一部がカットされた形状(例えば、Dカット形状や半円状)であってもよい。
【0022】
支持部4には、ロッド2が挿入される空洞41が設けられている。本実施形態では、空洞41が支持部4を貫通する穴である。また、支持部4には、図2(a)に示すように、空洞41である穴の軸方向と直交する方向を軸方向とするネジ穴42が設けられている。図1に示すように、ネジ穴42には、ロッド2を支持部4に固定するためのセットスクリュー7が螺合する。
【0023】
アーム5の先端には、図2(a)および(b)に示すように、当該アーム5の外周面から突出する少なくとも1つの突起6が設けられている。少なくとも1つの突起6は、アーム5がヘッド部12の空洞13に挿入された状態を維持するストッパーとしての役割を果たす。
【0024】
少なくとも1つの突起6の全ては、アーム5の中心軸51よりもネジ穴42側に位置する。ここで、各突起6について「アーム5の中心軸51よりもネジ穴42側に位置する」とは、アーム5の軸方向から見たときに、その突起6が、アーム5の中心軸51を通ってネジ穴42の軸方向と直交する直線Lよりもネジ穴42側にあることをいう。
【0025】
本実施形態では、アーム5の先端に、空洞41である穴の軸方向に沿って互いに反対向きに突出するように一対の突起6が設けられている。アーム5の軸方向から見たときの各突起6の形状は略台形状であり、底辺側の一方のコーナー部が直線L上に位置する。図例では、各突起6がアーム5の径方向に突出しているが、各突起6の突出方向は直線Lと平行であってもよい。
【0026】
次に、図3(a)および(b)ならびに図4(a)および(b)を参照して、本実施形態のコネクター3の作用効果を説明する。
【0027】
まず、図4(b)に、従来の脊椎固定術用コネクター30を示す。このコネクター30では、アーム5の先端に設けられた一対の突起6が、ロッド2と平行な直線であってアーム5の中心軸51(図4(b)では省略)を通る直線上で、アーム5から互いに反対向きに突出する。このため、ロッド2が上下方向(椎体係合部11とヘッド部12の並び方向)と直交する方向に対してある程度傾いたときに一方の突起6が張り出し部15の上面17と干渉する。従って、ロッド2の角度の調整範囲が狭くなる。
【0028】
これに対し、本実施形態のコネクター3では、一対の突起6がアーム5の中心軸51よりもネジ穴42側に位置するため、図3(a)および(b)に示すように、ヘッド部12の張り出し部15から双方の突起6までの距離が従来よりも長くなる。このため、ロッド2が上下方向と直交する方向に対してある程度傾いても、一方の突起6が張り出し部15の上面17と干渉することがない。すなわち、図4(a)に示すように、ロッド2が大きく傾いたときに、ようやく一方の突起6が張り出し部15の上面17に干渉する。このため、ロッド2の角度の調整範囲を大きく確保することができる。これにより、脊椎固定術を良好に行うことができる。
【0029】
なお、本実施形態のコネクター3は、張り出し部15,16を有しないヘッド部に対しても使用可能である。この場合には、一対の突起6によってロッド2の角度の調整範囲が阻害されることはない。従って、本実施形態のコネクター3では、椎体固定具1のヘッド部12の形状に拘らずにロッド2の角度の調整範囲を大きく確保することができる。
【0030】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0031】
例えば、図5に示す変形例の脊椎固定術用コネクター3Aのように、支持部4に設けられた空洞41は、当該支持部4を横断する溝であってもよい。この場合、空洞41である溝の両側面を利用してネジ穴42が設けられる。
【0032】
また、図6(a)および(b)に示す別の変形例の脊椎固定術用コネクター3Bのように、アーム5の先端には、円弧状の1つの突起6が設けられてもよい。ただし、図6(a)に示すコネクター3Bでは、図7(a)に示すように溝であるヘッド部12の空洞13に上方からアーム5を挿入しなければならない。そのため、ヘッド部12の上面と筋肉や軟組織90との間に隙間91を設ける必要がある。
【0033】
これに対し、図2(a)に示すコネクター3または図5に示すコネクター3Aのようにアーム5の先端に一対の突起6が設けられていれば、図7(b)に示すように空洞13の横断方向から空洞13にアーム5を挿入することができる。このため、図7(a)に示すように、ヘッド部12の上面と筋肉や軟組織90との間に隙間91を設ける必要がない。
【0034】
また、図8(a)に示す変形例の椎体固定具1Aのように、ヘッド部12の空洞13は、上下方向と直交する方向でヘッド部12を貫通する穴であってもよい。この場合、図8(b)に示すように一対の突起6が設けられたアーム5が空洞13である穴の軸方向から挿入できるように、空洞13の断面形状は長円状である。あるいは、空洞13の断面形状は、角が丸められた長方形状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,1A 椎体固定具
11 椎体係合部
12 ヘッド部
13 空洞
15,16 張り出し部
17 上面
18 側面
2 ロッド
3,3A,3B 脊椎固定術用コネクター
4 支持部
41 空洞
42 ネジ穴
5 アーム
51 中心軸
6 突起
7,8 セットスクリュー
9 脊椎固定術用インプラント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8