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特許7506390空気呼吸器および空気呼吸器とともに着用される防火服
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】空気呼吸器および空気呼吸器とともに着用される防火服
(51)【国際特許分類】
   A62B 7/02 20060101AFI20240619BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20240619BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20240619BHJP
   A62B 17/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A62B7/02
A41D13/002 105
A41D13/005 103
A62B17/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020020697
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021079063
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019209142
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大士
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-000554(JP,A)
【文献】米国特許第05572991(US,A)
【文献】米国特許第05511542(US,A)
【文献】米国特許第03174300(US,A)
【文献】特開2016-077334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00-33/00
A41D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸可能なガスが高圧で充填されるボンベと、前記ボンベに対して使用される背負具と減圧弁と可撓性の中圧ホースとを含む空気呼吸器であって、
前記ボンベから前記減圧弁を経て断熱膨張した前記ガスが蛇行する金属製の導管を流れて前記導管の周囲に対しての冷却効果を発揮する冷却用導管部が前記背負具に形成され、前記冷却用導管部が前記減圧弁と前記中圧ホースとの間に介在していて、
前記冷却用導管部を形成している前記導管は、湾曲する形状、屈曲する形状および直行する形状のいずれか複数の形状を反復することによって蛇行し、熱伝導率が少なくとも2W/m・Kの材料からなる冷却板に密着していることを特徴とする前記空気呼吸器。
【請求項2】
前記冷却板は、前記空気呼吸器の着用者の背中に対向する前面とその反対面である後面とを有し、前記冷却用導管部が前記後面に密着している請求項記載の空気呼吸器。
【請求項3】
前記背負具は、前記着用者が着用する防護服の内側に位置させるものである請求項記載の空気呼吸器。
【請求項4】
前記背負具は、前記空気呼吸器の着用者が着用する防護服の内側に位置させるものであって、前記着用者の背中に対向させる前面板部と、前記防護服の背中部分に対向させる後面板部と、前記前面板部と前記後面板部との間に介在する周壁部と、少なくとも前記前面板部と前記後面板部と前記周壁部とによって画成される中空部とを含む冷却ボックスを有し、前記冷却ボックスは前記中空部の内外間の通気を可能にする通気孔、吸気用ブロワーおよび排気用ブロワーからなる三つの通気要素のうちの少なくとも二つの通気要素を含むとともに、前記冷却用導管部が前記中空部にあり、前記防護服の内外いずれかにおける空気の前記中空部への流入が可能に形成されている請求項1記載の空気呼吸器。
【請求項5】
前記冷却ボックスが前記通気孔と前記吸気用ブロワーとを含み、前記吸気用ブロワーが作動すると、前記防護服の内部の空気および前記防護服の外部の空気のいずれかの空気が前記冷却ボックスに流入する一方、前記冷却ボックスの内部における前記空気が前記通気孔から前記防護服の内部に向かって流出する請求項記載の空気呼吸器。
【請求項6】
前記冷却ボックスが前記通気孔と前記排気用ブロワーとを含み、前記排気用ブロワーが作動すると、前記冷却ボックスの内部の空気が流出する一方、前記通気孔を介して前記防護服の内部の空気が前記冷却ボックスに流入する請求項記載の空気呼吸器。
【請求項7】
請求項1に記載の空気呼吸器とともに着用される防火服であって、
前記冷却用導管部を有する前記導管が前記減圧弁と前記中圧ホースとの間に介在して前記減圧弁につながる第1端部と前記中圧ホースにつながる第2端部とを有し、
前記防火服は外層と内層とこれら両層の間に介在する中間層とを有するものであって、前記ボンベが前記外層よりも外側にあり、前記背負具と前記冷却用導管部が前記内層よりも内側にあり、前記第1端部と前記第2端部とが前記防火服を実質的に貫通していることを特徴とする前記防火服。
【請求項8】
前記冷却用導管部は、湾曲する形状、屈曲する形状および直行する形状のいずれか複数の形状を反復することによって蛇行し、熱伝導率が少なくとも2W/m・Kの材料からなる冷却板に密着しており、前記冷却板が前記内層よりも内側にあって前記空気呼吸器の着用者の背中に対向する前面とその反対面である後面とを有し、前記冷却用導管部が前記後面に密着している請求項記載の防火服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気呼吸器とその空気呼吸器とともに着用される防火服とに関し、より詳しくは、空気呼吸器の着用者に対して冷却効果を発揮可能な空気呼吸器とその空気呼吸器とともに着用される防火服とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場や災害の現場等での作業者が着用する空気呼吸器は周知である。また、その作業者が空気呼吸器とともに着用することのある防護服や防火服も周知である。ここでいう防護服とは、化学物質を取り扱う作業、粉じんや悪臭等が発生している現場での作業等に際して着用されるものであり、防火服とは消防活動等に際して着用されるものである。これら空気呼吸器や防護服、防火服を着用する作業者に対しては、熱中症対策を講じる必要性のあることも広く知られている。
【0003】
例えば、防護服にファンを取り付けて、外気や冷風を防護服と着用者との間の空間に送り込む技術がある。ただし、外気を送り込む技術は、外気温度が高い場合や外気が有毒物質を含んでいる場合には、採用することができない。また、冷風を使用する技術では空気呼吸器とは別に、冷風を供給するための機器が必要となる。
【0004】
例えば、特開2003-27312号公報(特許文献1)に開示の冷却防護服は、ガス供給手段と、ガス供給手段から延びて呼吸具に接続される第1管路と、第1管路に設けられてガスを分岐する分岐接続具とを有する。分岐接続具によって分岐されたガスは、ガス冷却手段に導かれて冷却される。冷却されたガスは、冷却手段から延びる第2管路を介して防護服本体に導かれる。防護服は少なくとも一部分が二層構造であって、二層構造における内層部には身体に向けて冷却ガスを噴出する噴出孔が形成されている。この冷却防護服を着用した作業者の行動範囲は、ガス供給手段から延びる第1管路の長さによって制約される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-27312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が課題とするところは、冷却ガスを製造する機器と配管で接続されて行動範囲を限定されるということがなく、加えて、携帯式の冷却ガス製造機器を備えるということがないにもかかわらず、冷却効果を発揮できるとともに着用者の行動範囲を制約することのない空気呼吸器の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、呼吸可能なガスが高圧で充填されるボンベと、前記ボンベに対して使用される背負具と減圧弁と可撓性の中圧ホースとを含む空気呼吸器である。また、その空気呼吸器とともに着用される防火服の提供も課題の一つである。
【0008】
かかる空気呼吸器において、本発明が特徴とするところは次のとおりである。前記ボンベから前記減圧弁を経て断熱膨張した前記ガスが蛇行する金属製の導管を流れて前記導管の周囲に対しての冷却効果を発揮する冷却用導管部が前記背負具に形成され、前記冷却用導管部が前記減圧弁と前記中圧ホースとの間に介在していて、前記冷却用導管部を形成している前記導管は、湾曲する形状、屈曲する形状および直行する形状のいずれか複数の形状を反復することによって蛇行し、熱伝導率が少なくとも2W/m・Kの材料からなる冷却板に密着している
【0010】
本発明の実施形態の他の一つにおいて、前記冷却板は、前記空気呼吸器の着用者の背中に対向する前面とその反対面である後面とを有し、前記冷却用導管部が前記後面に密着している。
【0011】
本発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記背負具は、前記着用者が着用する防護服の内側に位置させるものである。
【0012】
本発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記背負具は、前記空気呼吸器の着用者が着用する防護服の内側に位置させるものであって、前記着用者の背中に対向させる前面板部と、前記防護服の背中部分に対向させる後面板部と、前記前面板部と前記後面板部との間に介在する周壁部と、少なくとも前記前面板部と前記後面板部と前記周壁部とによって画成される中空部とを含む冷却ボックスを有し、前記冷却ボックスは前記中空部の内外間の通気を可能にする通気孔、吸気用ブロワーおよび排気用ブロワーからなる三つの通気要素のうちの少なくとも二つの通気要素を含むとともに、前記冷却用導管部が前記中空部にあり、前記防護服の内外いずれかにおける空気の前記中空部への流入が可能に形成されている。
【0013】
本発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記冷却ボックスが前記通気孔と前記吸気用ブロワーとを含み、前記吸気用ブロワーが作動すると、前記防護服の内部の空気および前記防護服の外部の空気のいずれかの空気が前記冷却ボックスに流入する一方、前記冷却ボックスの内部における前記空気が前記通気孔から前記防護服の内部に向かって流出する。
【0014】
本発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記冷却ボックスが前記通気孔と前記排気用ブロワーとを含み、前記排気用ブロワーが作動すると、前記冷却ボックスの内部の空気が流出する一方、前記通気孔を介して前記防護服の内部の空気が前記冷却ボックスに流入する。
【0015】
本発明の実施形態のさらにまた他の一つは、段落0007,段落0008に記載の空気呼吸器とともに着用される防火服であって、前記冷却用導管部を有する前記導管が前記減圧弁と前記中圧ホースとの間に介在して前記減圧弁につながる第1端部と前記中圧ホースにつながる第2端部とを有し、前記防火服は外層と内層とこれら両層の間に介在する中間層とを有するものであって、前記ボンベが前記外層よりも外側にあり、前記背負具と前記冷却用導管部が前記内層よりも内側にあり、前記第1端部と前記第2端部とが前記防火服を実質的に貫通している
【0016】
本発明の実施形態のさらにまた他の一つにおいて、前記冷却用導管部は、湾曲する形状、屈曲する形状および直行する形状のいずれか複数の形状を反復することによって蛇行し、熱伝導率が少なくとも2W/m・Kの材料からなる冷却板に密着しており、前記冷却板が前記内層よりも内側にあって、前記空気呼吸器の着用者の背中に対向する前面とその反対面である後面とを有し、前記冷却用導管部が前記後面に密着している。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気呼吸器では、ボンベに充填されている高圧のガスがボンベから減圧弁を経て金属製の導管へ流出するときに断熱膨張によってそのガスの温度が急激に低下するという現象を利用する。その導管が形成する冷却用導管部は、周囲に対しての冷却効果を発揮する。そのような空気呼吸器は、着用者に対しての冷却効果を有するものとして利用することができる。この空気呼吸器は、防護服とともに着用されて冷却効果を発揮するほかに、防火服とともに着用されて冷却効果を発揮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】着用状態にある空気呼吸器の斜視図。
図2】空気呼吸器の平面図。
図3】一部分を破断して示す背負具の斜視図。
図4図3のIV-IV線断面図。
図5】実施形態の一例を示す図1と同様な図。
図6図5の部分破断図。
図7図6の背負具を一部分だけ破断して示す図。
図8図7のVIII-VIII線断面図。
図9】実施形態の一例を示す図8と同様な図。
図10】実施形態の他の一例を示す図8と同様な図。
図11】実施形態の他の一例を示す図5と同様な図。
図12図11の背負具を一部分だけ破断して示す図7と同様な図。
図13図12の部分XIIIを(a)と(b)とによって示す、部分XIIIの拡大図。
図14】実施形態の一例を示す図8と同様な図。
図15図14とは異なる実施形態の一例を示す図8と同様な図。。
図16図7とは異なる実施形態の一例を示す図。
図17図16のXVII-XVII線断面図。
図18図17とは異なる実施形態の一例を示す図。
図19】(a)は図17における頂部保形部材および側部保形部材の部分破断斜視図、(b)は図18における頂部保形部材および側部保形部材の部分破断斜視図。
図20】導管の蛇行する状態を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の詳細を説明すると、以下のとおりである。
図1,2は、本発明に係る空気呼吸器10の斜視図と、空気呼吸器10の平面図とであって、図1の空気呼吸器10は着用状態にある。空気呼吸器10は、着用者1の背中に対して固定される背負具20と、背負具20に固定されるボンベ12と、着用者1の顔面に取り付けられる面体13とを含んでいる。背負具20は、着用者1の上下方向と前後方向と横方向とのそれぞれに一致する上下方向Aと前後方向Bと横方向Cとを有する(図3参照)。ボンベ12からは高圧導管12aが分岐用ポート14にまで延びている。分岐用ポート14には減圧弁が内蔵されており、その減圧弁からは金属製の導管15が延びている。導管15は、背負具20の上方部分において背負具20の内部へ進入するように延びている。背負具20の下方部分では背負具20から退出した冷却用導管部15aに接続具17を介して中圧ホース18が接続している(図3参照)。中圧ホース18は、当該技術分野において慣用のもので、面体13における供給弁13aに接続している。分岐用ポート14からはまた、圧力計19aが取り付けられている高圧ホース19が延びている。高圧ホース19もまた、当該技術分野において慣用のものである。
【0020】
図2において、背負具20は、着用者1の背中にあてがうためのプレート部21(図3参照)と、ボンベ12をプレート部21に固定するときに使用するワンタッチベルト22とを有する他に、腰ベルト23、肩ベルト24、胸ベルト25を使用して着用することができる。
【0021】
図3は、空気呼吸器10の部分破断斜視図であるが、面体13と圧力計19aの図示が省略されている。背負具20におけるプレート部21は、ABS樹脂等の合成樹脂やアルミニウム等の金属で形成されていて、冷却板30で覆われた第1透孔31が形成されている他に、把手部38を得るための第2透孔32、腰ベルト23を通すための第3透孔33、胸ベルト25を通すための第4透孔34が形成されている。プレート部21は、軽量化を図るために、発泡した状態のプラスチックで形成されることもある。冷却板30は、少なくとも2W/m・K、好ましくは10W/m・K、さらに好ましくは100W/m・K熱伝導率を有する板材料で形成されていて、第1透孔31の周縁部31aに対して、複数の小ねじ35を介して取り付けられている。背負具20のうちにあって、冷却板30は、空気呼吸器10が着用されたときに着用者の背中に当接することが意図されている部位であって、その背中に対向する前面36と、前面36の反対面である後面37とを有する。後面37に対して蛇行した状態で取り付けられ、密着している導管15は、本発明においての冷却用導管部15aを形成している。
【0022】
図4は、図3におけるIV-IV線断面図であるが、着用者1、ボンベ12、中圧ホース18、および導管15の一部分が仮想線で示されている。図4において、背負具20のプレート部21には、後面部分37と向かい合うようにボンベ12が固定されている。プレート部21に取り付けられている冷却板30は、プレート部21における第1透孔31を覆っていて、前面36が着用者1の着衣である防護服1a(図1参照)を介して着用者1の背中に圧接している。分岐用ポート14の減圧弁から延びる導管15は、その上部15bが第1透孔31へ進入したのち蛇行して、冷却板30の後面37に対して密着する態様で取り付けられ、冷却用導管部15aを形成している。図示してはいないが、導管15は、適宜の形状を有する金具や接着剤を使用したり、溶接したりすることによって冷却板30に取り付けられる。プレート部21における第1透孔31の下方部分では、導管15の下部15cが第1透孔31の外側に出て、接手である接続具17を介して中圧ホース18につながっている。
【0023】
上述したように背負具20が冷却板30と冷却用導管部15aとを含む空気呼吸器10では、空気等の呼吸可能なガスが高圧で充填されているボンベ12から、そのガスが分岐用ポート14の減圧弁を通り、導管15へ流出するときに、ガスは断熱膨張して温度が低下する。そのガスは、冷却用導管部15aを通過する過程において、冷却用導管部15aを冷却しながら冷却用導管部15aが密着している冷却板30や導管15と冷却板30の周囲の空気をも冷却する。その結果として、作業者でもある空気呼吸器10の着用者1は、背中等が冷やされて、作業への取組が容易になるばかりでなく、熱中症の予防効果を期待することもできる。図示例において、ガスは上下方向Aの上方から下方に向かって流れることによって、冷却用導管部15aと冷却板30との上方部分、およびその上方部分の周囲の空気を優先的に冷却する。そのようにして冷却された空気は、上方から下方に向かって自然に移動しながら着用者1の背中を冷やすことができる。
【0024】
本発明において、冷却板30には黒鉛シートやアルミニウム板、銅板、ステンレススチール板等の材料を使用することができる。これら板材料の熱伝導率は、例えば(株)リガク製の熱伝導率測定装置TCiのタイプClassic-kまたはBassic-kを使用して測定することができる。
【0025】
図5,6において、図5は本発明の実施形態の一例を示す図1と同様な図であり、図6図5の部分破断図である。ただし、図5,6における着用者1は、例えば粉じん対策のために用意され、着用者1の身体の全部または大部分を保護する防護服1bと、本発明に係る空気呼吸器110とを着用している。空気呼吸器110は、ボンベ112と、ボンベ112が固定される背負具120とを有するものであるが、ボンベ112が防護服1bの外側に位置し、背負具120が防護服1bの内側に位置する態様で着用されている(図6参照)。図5において明らかなように、ボンベ112から延びる高圧導管112aと、高圧導管112aに取り付けられた分岐用ポート114とが防護服1bの外側に位置する一方、分岐用ポート114から延びる金属製の導管115は防護服1bの内側に向かって延びた後、防護服1bの内側において中圧ホース118に接続している(図7参照)。中圧ホース118は、防護服1bの外に出た後、面体113に取り付けられた吸気弁113aにまで延びている。分岐用ポート114から延びる高圧ホース119は防護服1bの外側にあり、延びた先端には残圧計119aが取り付けられている。
【0026】
図7は、図6において防護服1bの内側に位置している背負具120を一部分破断した状態で示す図であるが、図6における着用者1は図示が省略され、防護服1bは一部分のみが図示されている。図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。
【0027】
図7,8の背負具120は、プレート部121と冷却板130とを有しているが、プレート部121は、図8において明らかなように、図4のプレート部21とは異なり、箱型に作られている。すなわち、プレート部121は、着用者1(図5参照)の背中に対向させる前板121a、前板121aに離間対向する後板121b、前板121aと後板121bとの間に介在して着用者1の横方向Cにおいて対向する両側板121c、着用者1の上下方向Aにおいて対向する上板121dと下板121eを有する。前板121aには第1透孔131が形成され、第1透孔131の上方には把手部137が形成され、第1透孔131の下方には腰ベルト(図示せず)を通すための複数の貫通孔133と、胸ベルト(図示せず)を通すための第4透孔134とが形成されている。このようなプレート部121は、第1透孔131が冷却板130によって覆われることによって、これら前板121a、後板121b、両側板121c、上板121d、下板121e、冷却板130が冷却ボックス150を形成し、その冷却ボックス150の内側には中空部150aが形成されている。両側板121cと上板121dと下板121eとは、一体となってプレート部121においての周壁部を形成している。
【0028】
冷却ボックス150は、蛇行して延びる導管115が形成している冷却用導管部115aを収納する部位であって、その冷却用導管115aは金属製やプラスチック製の留め具(図示せず)を使用したり、接着や溶着等の接合手段(図示せず)を使用したりすることによって、冷却板130に対して密着する態様で取り付けることができる。ただし、冷却用導管部115aは、冷却板130に対して密着することがない態様で冷却ボックス150に収納されていてもよいものである。
【0029】
図8において明らかなように、背負具120ではまた、下板121eに少なくとも一つのブロワー155が取り付けられている。ブロワー155は、冷却ボックス150の外側における空気を冷却ボックス150に対してその下方から送り込むことができる。その冷却ボックス150を形成している部分のうちで、少なくとも前板121a、両側板121c、上板121d、下板121eのうちのいずれかには、複数の排気孔156が形成されている。冷却板130にも多数の排気孔157(図7参照)が上下方向へ並ぶ態様で形成されている。
【0030】
このように形成されている空気呼吸器110では、図1に例示の態様における空気呼吸器10と同様に呼吸可能なガスが高圧で充填されているボンベ112から流出したガスが分岐用ポート114の減圧弁を通過して断熱膨張すると、ガスの温度が急激に低下する。それに伴って、冷却用導管部115aの温度が下がると、冷却用導管部115aが取り付けられている冷却板130の温度も下がるので、その冷却板130によって着用者1の背中を冷やすことができる。また、背負具120の冷却ボックス150では、ブロワー155によって防護服1bの内側にある空気100が下側から吹き込まれるので、その空気100が冷却用導管部115aと冷却板130とによって冷却される。冷却された空気100は、冷却ボックス150の内外に通じる多数の排気孔156,157を通って冷却ボックス150の外に出るとともに、防護服1bと着用者1とが作る間隙に行き渡り、着用者1に冷気を感じさせることができる。
【0031】
背負具120ではさらにまた、上板121dが前板121aから後板121bへ向かう方向において登り勾配となるように傾斜している。それに伴って、上板121dにおける排気孔156から外に出る冷気は、着用者1の頸部に向かって流れることが可能になる。背負具120におけるこのような態様は、着用者1に冷気を感じさせるうえにおいて好ましいものである。
【0032】
かような空気呼吸器110は、図1~3に例示の空気呼吸器と同様に、冷却板130を介して着用者1の背中を冷やすことができる他に、冷却された空気100によって着用者1の身体の各部を冷やすことができる。さらにはまた、防護服1bの内部において空気100を循環させることによって、空気に対する冷却効果を高めることもできる。ただし、空気呼吸器110における背負具120は、図示例とは異なり、冷却板130を使用することなく、後板121bとほぼ同じ大きさの前板121aを使用するものであってもよい。
【0033】
図7,8の空気呼吸器110はまた、冷却板130による冷却効果を必要とせず、冷却された空気のみを必要とする場合には、冷却板130を熱伝導率の低い板材料に代えたり、プレート部121と同じ材料となるようにプレート部121と一体的に成形したりすることもできる。また、空気呼吸器110は、冷却用導管部115aを冷却板130に密着させることのない態様で実施することもできる。
【0034】
図9もまた、本発明の実施形態の一例を示す図8と同様な図である。図9における空気呼吸器210もまた、図8の空気呼吸器110と同様に着用者1の身体の全部または大部分を保護する防護服1cとともに使用されている。ただし、この防護服1cでは、空気呼吸器210に使用されているブロワー255が防護服1cの外側の空気、すなわち外気100aを空気呼吸器210の背負具220における冷却ボックス150の内側へ送り込むことができるように使用されている。換言すると、図9における空気呼吸器210と防護服1cとは、外気100aを防護服1cの内側に取り込んでも着用者1に悪影響を与えることがない、という環境において使用される。
【0035】
図9における実施形態が図8における実施形態と異なるのは、ブロワー255の使用態様だけである。着用者1の作業環境における外気100aが清浄なものである場合には、図示例の如き態様によって、冷気を効率よく着用者1に供給することができる。図9において、図8に記載の部位と共通する部位には、同じ参照符号が使用されている。
【0036】
図10もまた、本発明の実施形態の一例を示す図8と同様な図である。図10における空気呼吸器310では、図9に例示の背負具220と防護服1cとが使用されている。ただし、図10の背負具220では、導管315が形成する冷却用導管部315aが冷却板130と、前板121aと、後板121bとのいずれにも接触していない。ブロワー255によって防護服1cの外側から背負具220の中空部150aへ取り入れられた外気100aは、冷却用導管部315aに接触して冷却され、冷却された後には中空部150aの外に出て、着用者1の身体を冷やすことができる。冷却板130が高い熱伝導率、例えば少なくとも2W/m・Kの熱伝導率を有する金属板や黒鉛シートである場合には、その冷却板130を介して着用者1の背中を冷やすことも可能である。しかし、ブロワー255を使用して取り入れた外気100aを冷却用導管部315aによって冷却すれば足りるという場合には、冷却板130を使用することのない背負具220を採用することもできる。そのような場合の背負具220は、前板121aが冷却板130にとって代わる大きさを有するものになる。背負具220は、どのような材料で形成してもよいが、一例として、軽量にして断熱性の高い発泡プラスチックでその全体を形成するという場合がある。
【0037】
図10における背負具220の態様から明らかなように、中空部150aが形成され、所要の部位に排気孔156(図7参照)が形成されている背負具220は、ブロワー255から送り込まれる外気100aを冷気に変えて背負具220の前方や上方、側方等に向かって排出することのできる外気100aについての分配器として作用している。排気孔156は、その位置や大きさ、形状、単位面積当たりの個数等を必要に応じて定めることができる。図8,9に例示の如く外気100aを背負具120,220に取り入れて、防護服1b,1cの内側へ排出する場合には、防護服1b,1cの内側が陽圧になって、防護服1b,1cの袖口や襟元等において生じる着用者1の身体との間の隙間から防護服1b,1c内の空気が流れ出ることで、身体の全体に冷気を送り届けることもできる。
【0038】
これまでに説明した本発明に係る空気呼吸器は、下記の如き態様で実施することが可能である。
(1)背負具は上下方向を有し、冷却用導管部では前記上下方向の上方から下方に向かって冷却されたガスが流れる態様。
(2)前面板部の少なくとも一部分は熱伝導率が少なくとも2W/m・Kの材料からなる冷却板によって形成され、冷却用導管部は前記冷却板に密着する態様および離間する態様のいずれかにある。
(3)背負具は上下方向を有し、冷却用導管部においては冷却されたガスが上下方向の上方から下方に向かって流れ、ブロワーが送り込む空気は、前記上下方向の下方から上方に向かって流れる態様。
【0039】
図11,12,13は、防護服1b,1cに代えて防火服1dを使用する本発明の実施態様の一例を示す図であって、図11,12は、防火服1dを除けば、図5,7と同様な図である。図11における空気呼吸器410は、防火服1dとともに着用されている。着用者1は、防火服1dの他に防火帽460、防火手袋451、防火靴(図示せず)等の個人防火装備を着用している。防火帽460とともに着装されている「しころ」462は、その一部分が破断されていて、「しころ」462の内側にある吸気弁413aが見えている。これら防火装備の好ましい一例には、当該技術分野において慣用のいわゆる自主基準を満たすものがある。図11において、ボンベ412から延びる高圧導管412aは、分岐用ポート414にまで延びている。分岐用ポート414からは減圧され、冷却された呼吸用のガスが流れる導管415が防火服1dに取り付けられた第1接手部材471を介して防火服1dの内側へ延びている。
【0040】
また、図12において、防火服1dの内側にあって冷却用導管部115aを形成している導管415は、その下端部469が接手部材473を介して導管415の延長部474につながっている。実質的な意味において導管415の一部分である延長部474は防火服1dに取り付けられた第2接手部材472を介して中圧ホース418につながり、その中圧ホース418は吸気弁413aにまで延びている。分岐用ポート414から延びる高圧ホース419の先端には、圧力計419a(図11参照)が取り付けられている。導管415のうちで、分岐用ポート414と第1接手部材471とにつながる部位は第1端部と呼ばれ、中圧ホース418と第2接手部材472とにつながる部位は第2端部と呼ばれることがある。これら第1、第2端部のそれぞれは、第1、第2接手部材471,472のそれぞれにつながっていることによって、実質的な意味において防火服1dを貫通している。図示例の導管415において上端部468は第1端部を形成し、延長部474は第2端部を形成している。
【0041】
図12においてはまた、図7の背負具120と同じ構造を有する部分について、図7における参照符号と同じ参照符号が使用されている。図12の防火服1dは、外層を形成する表地465と、中間層を形成する透湿防層466と、内層を形成する断熱層467とを有する。一例として、表地465は耐炎性、耐熱性、機械的強度に優れているアラミド繊維等の繊維を使用した織物で形成されている。透湿防水層466は耐水性と透湿性とに優れているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の繊維を使用した織物で形成されている。断熱層467は、表地と同様の繊維を使用して、多くの空気層を有している織物で形成されている。
【0042】
図13において、(a)は図12における部分XIIIの拡大図であり、(b)は(a)における第1,第2接手部材471,472についてのb-b線矢視図である。図示例の第1接手部材471と第2接手部材472とは同一形状のものであって、防火服1dに対しての取り付け構造も同一である。図13(b)において、表地465と透湿防水層466と断熱層467とを有する防火服1dには、これら三層465,466,467を貫通する透孔475が形成され、その透孔475にはフランジ部476を有するリング部材477が取り付けられている。リング部材477を貫通している導管415の第1端部である上端部468および第2端部である延長部474の外周面に形成されたねじ部478には、防火服1dの内外それぞれにおいて内側締め付け部材481と外側締め付け部材482とのそれぞれが螺着して、リング部材477のフランジ部476に圧接している。外側締め付け部材482に対しては、それに螺着する一組の連結用部材483を介して導管415の上端部468または中圧ホース418が接続されている。防火服1dは、それが図示例の如く透孔475を有し、その透孔475を利用して空気呼吸器410を使用するものであっても、その透孔475が図示例の如くに使用される場合には、防火服1dの内外が透孔475の周辺で気密状態に保たれていて、火災の現場等において熱風等が透孔475を介して防火服1dの内側に侵入することを防ぐことができる。本発明は、図11-13に例示の空気呼吸器410と防火服1dとにおいて、防火服1dの外側に位置することとなる部材には、防火服1dが十分に機能することができるように、不燃性、難燃性、耐熱性に優れた材料を使用する。
【0043】
これまでに記述した本発明において、空気呼吸器10,110,210,410における導管15,115,415やその他の部位は、断熱材や不燃材、難燃材等で被覆した状態で使用することができる。
【0044】
図14,15は、本発明の実施形態の一例を示す図8と同様な図である。図14の背負具520では、冷却ボックス150における上板121dと、両側板121cとのそれぞれに排気用ブロワー158,159のそれぞれが取り付けられている。ただし、図14には両側板121cのうちの一方の側板121cのみが図示されている。また、冷却ボックス150における下板121eには、図8において例示の吸気用ブロワー155が取り付けられている。上板121dと両側板121cとには、図7,8に例示の排気孔156も形成されている。吸気用ブロワー155と排気用ブロワー158,159とを作動させることによって、防護服1b内の空気100が冷却ボックス150に容易に流入して冷却され、冷却された空気100が排気用ブロワー158,159の作用によって容易に流出する。空気100のこのような流入と流出とにおける風量や風速等は、吸気用ブロワー155と排気用ブロワー158,159の回転速度を変化させることによって制御できる他に、上板121dと両側板121cとにおける排気孔156の孔径や孔の数を適宜の値にすることによっても制御することができる。背負具520において、吸気用ブロワー155と排気用ブロワー158,159の個数や取り付け位置に格別の制約はない。
【0045】
図15における背負具520は、図14の背負具520と同様に形成されているものではあるが、図15ではブロワー155が排気用のものとして使用され、ブロワー158,159が吸気用のものとして使用されていて、防護服1bの内部における空気100は矢印で示す方向へ流れる。背負具520は、このような態様のものとしての使用も可能である。この場合の背負具520では、排気孔156が吸気孔として作用する場合がある。また、背負具520の冷却ボックス150には、吸気用ブロワーと排気用ブロワーとを取り付ける一方、排気孔156を設けないという態様を採用することも可能である。排気孔156を吸気孔として使用する態様の冷却ボックス150にあっては、ブロワーとして排気用のもののみを使用することもできる。その場合の排気用ブロワーにはブロワー155,158,159のいずれをも使用することができるが、なかでもブロワー158を図14の態様で使用することが特に好ましい。
【0046】
また、図示してはいないが、図9,10に例示の空気呼吸器210,310においても、背負具220に対して排気用ブロワーを適宜の部位に取り付けることができる他に、排気孔156の孔数を適宜増減したり、ゼロにしたりすることができる。このような例を含め、図5図15に例示の空気呼吸器110,210,310,410,510,610は、冷却ボックスを有し、その冷却ボックスに対して排気または吸気のために使用可能な通気孔、吸気用ブロワーおよび排気用ブロワーからなる三つの通気要素のうちの少なくとも二つの通気要素を採用する態様での実施が可能である。
【0047】
図16,17もまた、本発明の実施態様の一例を示す図7,8と同様な図である。図示例の空気呼吸器610における背負具620は、図7,8における背負具120と同様に作られているもので、背負具120と共通する部位には背負具120における参照符号と同じ参照符号が使用されている。ただし、背負具620は、それが頂部保形部材571と、側部保形部材581とを有することにおいて、背負具120と異なっている。頂部保形部材571と側部保形部材581とは、背負具620における取り付け部位が異なっているが、形状については同じようにすることもできれば、異なるようにすることもできる。
【0048】
頂部保形部材571は、背負具620の頂部に位置するように、基部573が背負具620の上板121dに対して、固定用部材575を使用して取り付けられている。頂部保形部材571はまた、上板121dの上方へ延びていて、先端部分574が着用者1の後頭部2および/または頸部3(図17参照)と防護服1bとの間に位置し、防護服1bが後頭部2や頸部3に接触することを妨げて、防護服1bと後頭部2や頸部3との間に通気性の隙間を作ることができるように、防護服1bに対する保形用の部材として作用している。
【0049】
側部保形部材581は、両側板121cのそれぞれに対して基部583が固定用部材585によって固定されている。側部保形部材581はまた、先端部分584が着用者1の背中の側方部分、例えば脇腹の近くにまで延びていて、防護服1bと着用者1の肌着や肌(いずれも図示せず)との接触を妨げて、防護服1bと肌着等との間に通気性の隙間を作ることができるように、防護服1bに対する保形用の部材として作用している。
【0050】
頂部保形部材571と側部保形部材581とのそれぞれはまた、通気路576,586(図19(a)参照)を有する中空の部材、例えばパイプ状の部材で作られていて、背負具520の冷却ボックス150における中空部150aの空気、例えば冷却用導管部115aや冷却板130によって冷却された空気をブロワー155の作用によって、部材571,581それぞれの先端部分574,584から排出することができる。そのように排出されるときの空気は、着用者1にとって、冷却ボックス150の排気孔156,157(図16参照)から排出する場合の空気では届くことが困難な部位にまで届くことが可能になる。それと同時に、着用者1に対しての局所的な冷却も可能になる。さらには、頂部保形部材571と側部保形部材581との存在が、着用者1の身体や肌着等と防護服1bとの密着を妨げるように作用し、その結果として、身体や肌着等と防護服1bとの間に通気可能な間隙を作り、防護服1bを着用して作業をしている時などにおける着用感を向上させることができる。ただし、防護服1bは、頂部保形部材571と側部保形部材581とのうちのいずれか一方のみを有するものであってもよいし、いずれか一方を複数有するものであってもよい。
【0051】
このように作用する頂部保形部材571と側部保形部材581とは、長さ方向や径方向の寸法を特に限定するものではなく、形状を自由に定めることができる。また頂部保形部材571と側部保形部材581とは、所要の耐熱性、難燃性、または不燃性を有する合成樹脂材料等で作ることが好ましいが、その材料の種類を特定するものではなく、防護服1bを着用して行う作業の内容に応じてその材料を選ぶことができる。例えば、適度な可撓性を有する耐熱ゴムホースを使用したり、アルミニウム製のパイプであって、その表面が柔軟で熱伝導率が低い発泡した状態の合成樹脂等で被覆してあるものを使用したりすることができる。なお、頂部保形部材571および/または側部保形部材581を有する場合の背負具620において、排気孔156および排気孔157の存否、および、存在する場合の大きさや単位面積当たりの数量は、頂部保形部材571および側部保形部材581の作用効果を考慮して、適宜に設計することができる。そのように設計する場合の一例として、側部保形部材581は、両側板121cのうちの一方の側板だけに取り付けておくということができる。
【0052】
図18は、図16,17における頂部保形部材571および側部保形部材581とは異なる態様の頂部保形部材671と側部保形部材681とを例示する図17と同様な図である。図18における頂部保形部材671と側部保形部材681とは、図16における部材571,581と同様にして背負具620に取り付けられている。ただし、頂部保形部材671と側部保形部材681とは、適宜の形状に曲げた状態を維持できる可撓性の芯材671a,681aと、その芯材671aに追随しての変形が可能で柔軟性のある被覆材671b,681bとを有するもので、通気性の中空部が形成されていないことにおいて、図16,17に例示の頂部保形部材571および側部保形部材581とは異なっている。このような頂部保形部材671と側部保形部材681とは、着用者1や防護服1bの大きさや、着用者1の好みに合わせて、曲げるときの形状や方向等を調整することが容易である。このように作用する頂部保形部材671の芯材671aには、可撓性のあるアルミニウム等の棒材を使用することができる。被覆材671bには、柔軟なゴムや発泡ポリウレタン、バルキーな布地等を使用することができる。側部保形部材681は、頂部保形部材671と同様に作ることができる。なお、図18に例示の頂部保形部材671と側部保形部材681とは好ましいものの一例である。これらの部材671と部材681とは、被覆材671bや被覆材681bのない、芯材671aや芯材681aだけで作ることもできる。また、必要であるならば、これらの部材671,681は、形状を自由に変えることのできないものであってもよい。付言しておくと、図18における例示は、図16,17に例示の頂部保形部材571と側部保形部材581とが適宜の形状に曲げられた状態を維持することができないものであるということを意味しているわけではない。
【0053】
図19(a),(b)は、頂部保形部材と側部保形部材との部分破断斜視図であって、(a)は図16,17における背負具620に使用されている頂部保形部材571と側部保形部材581とを例示し、(b)は図18における頂部保形部材671と側部保形部材681とを例示している。図19(a)において、部材571,581は通気性のものであって、通気路576,586が形成されている。また、図19(b)において、部材671,681は、非通気性のものであって、芯材671a,681aと被覆材671b,681bとを有している。本発明における頂部保形部材571,671や側部保形部材581,681は、防護服1bの他に、防火服に適用することもできる。
【0054】
図20は、本発明における図示例の冷却用導管部15a,115a,315aを形成するものとして採用可能な導管CPの蛇行する態様と、その導管CPを取り付けることが可能な冷却板CPLとを例示している。図20(a)では、導管CPが直状に延びる部分Sと、湾曲しながら延びる部分Bとを交互に反復するという態様で蛇行しながら延びている。図20(b)では、冷却用の導管CPが直状に延びる部分Sと、屈曲する部分Cとを交互に反復するという態様で蛇行しながら延びている。図20(c)では、導管CPが湾曲しながら延びる部分Bと、屈曲する部分Cと、直状に延びる部分Sとを交互に反復するという態様で蛇行しながら延びている。本発明においては、図示例の部分S,B,Cによって示される形状をいかようにも組み合わせることができる。その組み合わせは、導管CPと冷却板CPLとが接触する面積や長さを勘案して、また、導管CPに曲げ加工を施すときの難易等を勘案して決めることができる。冷却板CPLは、導管CPを介して容易に冷却されるように熱伝導率の高い材料で形成されることが好ましい。そのような材料の一例は、金属板であるが、広義には少なくとも2W/m・Kの熱伝導率を有する板材料である。黒鉛シートもまた、その板材料の一例である。
【符号の説明】
【0055】
1a 防護服
1b 防護服
1c 防護服
1d 防火服
10 空気呼吸器
12 ボンベ
15 導管
15a 冷却用導管部
18 中圧ホース
20 背負具
21 プレート部
30 冷却板
31 第1透
00 空気
100a 空気(外気)
110 空気呼吸器
112 ボンベ
115 導管
115a 冷却用導管部
120 背負具
121 プレート部
130 冷却板
131 第1透孔
150 冷却ボックス
150a 中空部
155 ブロワー
156 排気孔
158 ブロワー
159 ブロワー
210 空気呼吸
20 背負
55 ブロワー
315a 冷却用導管部
410 空気呼吸器
415 導管
415a 冷却用導管部
418 中圧ホース
465 外層(表地)
466 中間層(透湿防水層)
467 内層(断熱層)
468 第1端部(上端部)
474 第2端部(延長部)
510 空気呼吸器
520 背負具
571 頂部保形部材
581 側部保形部材
620 背負具
671 頂部保形部材
681 側部保形部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20