(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】塩分濃度調整装置及び乾海苔製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20240619BHJP
【FI】
A23L17/60 103C
(21)【出願番号】P 2020090666
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】599048786
【氏名又は名称】光洋通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】笠井 秀城
(72)【発明者】
【氏名】笠井 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 弘子
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192351(JP,A)
【文献】特開2004-208588(JP,A)
【文献】登録実用新案第3223471(JP,U)
【文献】特許第6624751(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末塩を収容すると共に当該粉末塩と水あるいは海水とを用いて塩分濃度が調製された調製水を生成する調製槽と、
前記調製水
と前記海水との混合水の塩分濃度を検出する塩分濃度センサと、
該塩分濃度センサの検出値が所定の濃度目標値となるように、前記調製槽への前記水あるいは前記海水の供給量を調節する供給部とを備え
、
前記調製槽は、多数の細孔が形成されると共に前記粉末塩を支持する仕切板を備え、
前記調製水は、前記水あるいは前記海水の噴射に基づいて前記細孔から下方に滴下することを特徴とする塩分濃度調整装置。
【請求項2】
前記調製槽では、前記水あるいは前記海水を前記粉末塩に噴射することによって調製水が生成されることを特徴とする請求項1に記載の塩分濃度調整装置。
【請求項3】
前記調製槽は、上側が前記粉末塩を投入するために開放されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塩分濃度調整装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の塩分濃度調整装置を備え、
該塩分濃度調整装置は、原藻から異物を除去する異物除去機の前段部に前記調製水を供給することを特徴とする乾海苔製造装置。
【請求項5】
前記前段部は、原藻を粗細断する粗細断機であることを特徴とする請求項4に記載の乾海苔製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩分濃度調整装置及び乾海苔製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乾燥海苔製造システムが開示されている。この乾燥海苔製造システムは、その
図1等に示されているように、前処理装置と海苔製造装置とから構成されている。前処理装置は、海苔原藻から海苔原料を製造する装置であり、貯蔵装置、細断装置及び調合装置等から構成されている。海苔製造装置は、海苔原料から乾燥海苔を製造する装置であり、抄成装置、脱水装置、乾燥装置及び剥離装置等から構成されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、海苔異物除去装置が開示されている。この海苔異物除去装置は、上述した乾燥海苔製造システムに付加的に備えられる装置であり、回転可能な中間環状体の両側に固定的な端環状体を僅かな隙間を設けて配置し、当該隙間を海苔原藻の大きさに応じて調節することにより、海苔原藻とは大きさが異なる小海老等の異物を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6624751号公報
【文献】特開平11-318399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した海苔異物除去装置は、海苔原藻と異物とのサイズ差を利用して異物を海苔原藻から除去するものなので、上記サイズ差が小さくなると、異物の除去性能が低下する。すなわち、既存の海苔異物除去装置には、海苔原藻を異物として除去してしまう虞がある。
【0006】
そして、上記サイズ差の縮小現象つまり海苔原藻の大型化は、海苔原藻が浸かっている海水の塩分濃度が低下した際に一時的に発生することが知られている。すなわち、海苔原藻は、浸かっている海水の塩分濃度に応じてサイズが一時的に変化する性質を有している。なお、海水の塩分濃度の低下は、例えば台風が海苔の養殖海域を通過した際に発生し得る。
【0007】
しかしながら、海苔養殖の現状では、海苔原藻が浸かっている海水の塩分濃度を適正値に管理する好適な塩分濃度調整装置が普及していない。すなわち、従来の乾燥海苔製造システムは、上述したように多数の機器から構成されており、これら多数の機器は、比較的狭い建屋内に設備されることが多い。したがって、塩分濃度調整装置としては、設置スペースが極力小さいものが要求されている。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、設置スペースが極力小さな塩分濃度調整装置及び乾海苔製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、塩分濃度調整装置に係る第1の解決手段として、粉末塩を収容すると共に当該粉末塩によって塩分濃度が調製された調製水を生成する調製槽と、前記調製水の塩分濃度を検出する塩分濃度センサと、該塩分濃度センサの検出値が所定の濃度目標値となるように、前記調製槽への前記水あるいは前記海水の供給量を調節する供給部とを備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、塩分濃度調整装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記調製槽では、前記水あるいは前記海水を前記粉末塩に噴射することによって調製水が生成される、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、塩素供給装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記調製槽は、上側が前記粉末塩を投入するために開放されている、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、塩分濃度調整装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記調製槽は、多数の細孔が形成されると共に前記粉末塩を支持する仕切板を備え、前記調製水は、前記水あるいは前記海水の噴射に基づいて前記細孔から下方に滴下する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、乾海苔製造装置に係る第1の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段に係る塩分濃度調整装置を備え、該塩分濃度調整装置は、原藻から異物を除去する異物除去機の前段部に前記調製水を供給する、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、乾海苔製造装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記前段部は原藻を粗細断する粗細断機である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ことが可能な塩分濃度調整装置及び乾海苔製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る乾海苔製造装置Aの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る塩分濃度調整装置Bの全体構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る塩分濃度調整装置Bの要部構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る乾海苔製造装置Aは、海苔原藻から乾海苔(板海苔)を製造する設備であり、
図1に示すように原藻タンク1、粗細断機2、異物除去機3、本細断機4、調合機5、撹拌槽6、漉き機7、乾燥機8、循環海水水槽9、塩分濃度センサ10、調製水生成装置11、汲上ポンプ12、貯水槽13、塩素タンク14及び塩素ポンプ15を備えている。
【0018】
原藻タンク1は、海苔の養殖場(養殖水域)から収穫された海苔原藻を一定時間に亘って貯留する容器であり、循環海水水槽9から供給される循環海水に浸かった状態で海苔原藻を保存する。養殖場では海苔原藻が十分に生育すると、専用船(刈取船)によって海苔網から収穫される。この海苔原藻は、専用船によって港に運ばれて原藻タンク1に収容されることによって陸揚げされる。すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、原藻タンク1によって原藻貯留工程が行われる。
【0019】
上記海苔原藻は、形状が長尺状であり、後工程の異物除去機3にそのまま投入することができない。粗細断機2は、このような長尺状の海苔原藻をある程度短く(粗細断)する細断機である。この粗細断機2は、長さが海苔原藻よりも短くなった生海苔(粗細断生海苔)を異物除去機3に供給する。すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、粗細断機2によって粗細断工程が行われる。
【0020】
異物除去機3は、粗細断機2から供給された粗細断生海苔から異物を除去する装置である。この異物は、例えば極小さな海老等であり、養殖場における海苔の生育過程で海苔網に付着し得るものである。異物除去機3は、このような異物を粗細断機2から受け入れた粗細断生海苔から分離・回収することにより、異物が除去された粗細断生海苔(異物除去生海苔)を後段の本細断機4に供給する。
【0021】
すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、異物除去機3によって異物除去工程が行われる。この異物除去工程では、塩分濃度調整装置9から供給された調製水が粗細断生海苔に添加されつつ、粗細断生海苔に含まれる異物が効果的に除去される。このような異物除去機3として、例えば特許文献2に記載されたものを採用することができる。
【0022】
本細断機4は、異物除去生海苔をさらに細断することによって微細化する装置である。薄板状の乾海苔(板海苔)を製造するためには、個体長を異物除去生海苔の個体長よりも微細化する必要がある。本細断機4は、異物除去生海苔をさらに細断することにより、後述する漉き工程において均一な厚さで矩形状に分散するように異物除去生海苔の個体サイズを最適化する。
【0023】
すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、本細断機4によって本細断工程が行われる。また、この本細断工程では、異物除去生海苔を細断する際に貯水槽12から取り込んだ真水が添加される。海苔原藻は海水を含み、また原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3では調製水が添加されるが、本細断工程では、異物除去生海苔が真水によって洗われることにより塩分が除去される。このような本細断機4から出力される生海苔(本細断生海苔)は、水分が比較的少ないペースト状である。
【0024】
調合機5は、本細断機4から取り込んだ本細断生海苔に所定量の真水を添加することにより、本細断生海苔と真水との混合水(生海苔混合水)を調合する装置である。この調合機4は、本細断生海苔との調合比つまり生海苔混合水における生海苔濃度を所定の目標濃度に設定し、当該目標濃度の生海苔混合水を撹拌槽6に出力する。
【0025】
撹拌槽6は、所定量の生海苔混合水を貯留する容器であり、調合機5から受け入れた生海苔混合水を撹拌すると共に生海苔濃度の微調整(最終調整)を行う。この撹拌槽6には、生海苔濃度が最終調整された海苔混合水を漉き機7に順次供給する。
【0026】
漉き機7は、所定量の生海苔混合液を海苔簀に向けて吐出することにより、海苔混合水中の本細断生海苔を海苔簀に貼り付ける装置である。この漉き機7には、複数の海苔簀が一列に配列した状態で設けられていると共に、各々の海苔簀に対応して複数のノズルが設けられている。この漉き機7では、各海苔簀に各ノズルから同時に生海苔混合液を吐出することにより、複数の海苔簀に同時並行的に生海苔を貼り付ける。すなわち、この漉き機6は、片面に本細断生海苔が矩形状に付着すると共に一列に配列した複数の海苔簀(海苔付き簀)を乾燥機8に向けて送り出す。
【0027】
ここで、漉き機7では各ノズルから生海苔混合水を各海苔簀に吐出することによって、真水が生海苔から分離する。すなわち、生海苔混合水を海苔簀に吐出すると、本細断生海苔のみが海苔簀の片面に付着する。これに対して、生海苔混合水に含まれる真水は、海苔簀に形成されている隙間を通過して本細断生海苔から分離する。このように生海苔から分離した真水は、漉き機7で回収され、第2使用液として貯水槽12に供給される。乾海苔製造装置Aでは、漉き機7によって漉き工程が行われる。
【0028】
乾燥機8は、漉き機7から供給される海苔簀に加熱処理を施すことにより、海苔簀の片面に矩形状に貼り付いた生海苔を乾燥させる。すなわち、乾燥機8は、漉き機7から同時並行的に供給される海苔簀を同時に加熱処理することにより、矩形状かつ乾燥状態の海苔(乾海苔)を製品として排出する。乾海苔製造装置Aでは、乾燥機8によって乾燥工程が行われる。
【0029】
循環海水水槽9は、外部から取り込んだ海水に調製水生成装置11から供給される調製水を混合させる混合水槽である。この循環海水水槽9は、海水に調製水を混合させることにより所定の塩分濃度の循環海水を生成し、当該循環海水を原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3に供給する。また、この循環海水水槽9は、原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3で使用された循環海水を回収する回収水槽でもある。
【0030】
塩分濃度センサ10は、このような循環海水水槽9に備えられ、循環海水の塩分濃度を検出する検出器である。この塩分濃度センサ10は、循環海水の塩分濃度を示す濃度検出信号を調製水生成装置11に出力する。
【0031】
調製水生成装置11は、循環海水水槽9から取り込んだ循環海水と塩分濃度センサ10から入力される濃度検出信号とに基づいて所定塩分濃度の調製水に生成する。この調製水生成装置11は、
図2及び
図3に示す詳細構成を備えており、上記調製水を循環海水水槽9に供給する。
【0032】
すなわち、調製水生成装置11は、調製槽11a、仕切板11b、上部開口11c、散水管11d、循環ポンプ11e、制御部11f及び粉末塩Sを備えている。なお、この調製水生成装置11は、
図2に示すように、塩分濃度センサ10と共に塩分濃度調整装置Bを構成している。この塩分濃度調整装置Bは、外部から取り込んだ海水の塩分濃度を所定の目標濃度に調整する装置である。
【0033】
ここで、上記海水は、例えば養殖現場の水域(海域)から取得されたものであり、塩分濃度が気候状態等に応じて変動し得るものである。例えば、台風が通過した後の養殖現場の海域における海水の塩分濃度は、一般的な海水の塩分濃度よりも低下する。すなわち、塩分濃度調整装置が外部から取り込む海水は、塩分濃度が変動し得るものである。
【0034】
調製槽11aは、水平断面及び垂直断面が各々矩形な箱型の水槽(容器)であり、所定量の粉末塩Sを収納すると共に調製水を生成する。すなわち、この調製槽11aは、内部空間が仕切板11bによって上下に仕切られており、上側の空間(上部空間Ra)に粉末塩Sを収納し、下側の空間(下部空間Rb)において溶けた粉末塩Sを循環海水水槽9から取り入れた循環海水に混入させることによって調製水を生成する。
【0035】
仕切板11bは、網状あるいはペンチングメタルからなる矩形状の平板であり、調製槽11aの内部に水平姿勢でお設けられている。この仕切板11bは、上面に載置される粉末塩Sを支持するとと共に、粉末塩Sが解けて生成される塩水を下部空間Rbに向けて通過させる。
【0036】
上部開口11cは、調製槽11aの上側に設けられた矩形の開口であり、粉末塩Sを上部空間Raに投入するための矩形開放面である。すなわち、この上部開口11cは、粉末塩Sを調製槽11a内に収容するための通過穴である。粉末塩Sは、調製槽11aの上方から投下するのことよって、上部空間Ra内に容易に収容される。
【0037】
散水管11dは、上部空間Raの外周部つまり調製槽11aの内面に沿って口型に設けられると共に散水孔が延在方向に沿って所定間隔で多数形成された樹脂製管路である。この散水管11dは、上部空間Ra内に予め収容された粉末塩Sに周囲の複数方向(四方向)から循環海水を散水(噴射)する。
【0038】
このような散水管11dは、上部開口11cの面積(開口面積)を極力狭くしないように、また上部開口11cから上部空間Raへの粉末塩Sの投入を妨害しないように、調製槽11aの内面に沿った樹脂製管路として設けられている。したがって、本実施形態に係る塩分濃度調整装置Bによれば、乾海苔製造装置Aの稼働によって徐々に減少する粉末塩Sの追加補充が極めて容易である。
【0039】
循環ポンプ11eは、このような散水管11dに循環海水を供給する動力源である。この循環ポンプ11eは、一端が循環海水水槽9に接続され、他端が上記散水管11dに接続された循環用配管の途中に設けられており、循環海水水槽9から汲み出した循環海水を散水管11dに供給する。
【0040】
制御部11fは、塩分濃度センサ10から入力される濃度検出信号に基づいて循環ポンプ11eを制御するポンプ制御装置である。この制御部11fは、内部に予め記憶された所定の濃度目標値と濃度検出信号が示す濃度検出値とを比較し、濃度目標値と濃度検出値との差分がゼロとなるように循環ポンプ11eを制御する。すなわち、この制御部11fは、循環ポンプ11eをフィードバック制御するPIC制御器である。
【0041】
粉末塩Sは、所定の粒径を有する粉末状の塩である。この粉末塩Sは、上部開口11cから調製槽11a内に収容される。すなわち、この粉末塩Sは、作業者が上方から調製槽11a内に投入することによって上部空間Raつまり仕切板11bの上に載置される。このような粉末塩Sは、例えば一般に市販されている食塩である。
【0042】
ここで、上述した塩分濃度センサ10、調製槽11a、仕切板11b、上部開口11c、散水管11d、循環ポンプ11e、制御部11f及び粉末塩Sのうち、塩分濃度センサ10、散水管11d、循環ポンプ11e、制御部11f及び粉末塩Sは、本発明の供給部を構成している。すなわち、塩分濃度センサ10、散水管11d、循環ポンプ11e、制御部11f及び粉末塩Sは、塩分濃度センサ10の濃度検出値が所定の濃度目標値となるように調製槽11aへの循環海水の供給量を調節する。
【0043】
このような塩分濃度調整装置Bは、散水管11dが粉末塩Sに散水(噴射)する循環海水の散水量(噴射量)に相当する流量の調製水を調製槽11aから循環海水水槽9に供給する。すなわち、塩分濃度調整装置Bから循環海水水槽9に供給される調製水の供給量は、上記散水量(噴射量)を操作する循環ポンプ11eの回転数や動作時間に応じて調整される。
【0044】
このような散水量(噴射量)と調製水の供給量との関係は、塩分濃度調整装置Bが調製槽11aと循環海水水槽9との高低差を利用して調製槽11aから循環海水水槽9に調製水を供給する供給方式を採用することに起因する。すなわち、本実施形態に係る塩分濃度調整装置Bは、調製槽11aを循環海水水槽9よりも高所に設置することにより、落差を利用して調製槽11aから循環海水水槽9に調製水を供給する。
【0045】
このような調製水の供給方式によれば、ポンプのような動力機器を用いることなく調製水を調製槽11aから循環海水水槽9に供給することができる。したがって、本実施形態に係る塩分濃度調整装置Bによれば、装置構成を簡略化することが可能であり、以って設置スペースの省スペース化を実現することができる。
【0046】
汲上ポンプ12は、地下水(真水)を汲み上げて貯水槽13に供給するポンプであり、図示しない制御装置(汲上制御装置)によって作動が制御される。すなわち、この汲上ポンプ12は、貯水槽13の水位が所定の目標水位になるように汲上制御装置によって制御される。
【0047】
貯水槽13は、汲上ポンプ12から供給される地下水、調合機5から供給される第1使用液及び漉き機7から供給される第2使用液を貯留する容器である。地下水、第1使用液及び第2使用液は、何れも塩分を含まない、あるいは塩分濃度が極めて低い真水である。貯水槽13は、このような地下水、第1使用液及び第2使用液の混合水を乾海苔の製造に使用する製造用水として貯留し、本細断機4及び調合機5に供給する。
【0048】
ここで、地下水は、水道水とは異なり、殺菌処理が施されていない。また、第1使用液及び第2使用液は、生海苔から分離されたものであり、微細な生海苔等の有機成分が含まれている。貯水槽13は、このような地下水、第1使用液及び第2使用液の混合水を製造用水として所定量貯留している。
【0049】
このような各機器のうち、本細断機4、調合機5、撹拌槽6及び漉き機7は、製造用水の流れ方向において、地下水及び各製造工程で使用された使用水を製造用水として貯留する貯水槽13の下流側に位置する製造機器である。すなわち、貯水槽13は、製造用水の流れ方向において汲上ポンプ12の次に上流側に位置する製造機器として位置付けられる。
【0050】
塩素タンク14及び塩素ポンプ15は、本実施形態における塩素供給装置を構成している。この塩素供給装置は、上述した貯水槽13に適量の塩素を添加する。塩素タンク14は、所定量の塩素を貯留する容器であり、塩素ポンプ15に塩素を供給する。この塩素タンク14が貯留する塩素は、正確には次亜塩素酸(HClO)を主成分とする塩素水溶液(例えば弱酸性次亜塩素酸水あるいは微酸性次亜塩素酸水)である。塩素ポンプ15は、貯水槽13の製造用水に塩素を添加する塩素添加部である。この塩素ポンプ15は、貯水槽13への塩素の添加量(塩素添加量)を調節する。
【0051】
次に、本実施形態に係る乾海苔製造装置A及び塩分濃度調整装置Bの動作について詳しく説明する。
【0052】
この乾海苔製造装置Aにおいて、原藻タンク1は、循環海水水槽9から供給される循環海水に浸かった状態で海苔原藻を保存する。すなわち、原藻タンク1の海苔原藻は、塩分濃度が濃度目標値に設定された循環海水に浸かった状態で一定期間に亘って保存される。
【0053】
そして、このような海苔原藻は、原藻タンク1から粗細断機2に供給されて粗細断され、この後に異物除去機3に供給されて異物が除去される。粗細断機2において、海苔原藻は、循環海水水槽9から供給される循環海水に浸かった状態で粗細断される。また、異物除去機3において、粗細断生海苔は、循環海水水槽9から供給される循環海水に浸かった状態で異物が除去される。
【0054】
ここで、養殖現場海域における塩分濃度は、上述したように変動し得るものである。この塩分濃度が例えば通常の塩分濃度よりも低下した場合、海苔原藻は、大きさが通常サイズよりも大きくなる。したがって、原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3に養殖現場海域の海水をそのまま供給した場合には、粗細断機2から異物除去機3に供給される粗細断生海苔も大きさが通常サイズよりも大きくなる。この結果として、粗細断生海苔の一部が異物として除去される虞がある。
【0055】
しかしながら、本実施形態に係る乾海苔製造装置Aでは、塩分濃度調整装置Bが循環海水水槽9における循環海水の塩分濃度を標準的な塩分濃度である濃度目標値に調整するので、海苔原藻及び粗細断生海苔の大きさを通常サイズに戻すことができる。したがって、本実施形態に係る乾海苔製造装置Aによれば、異物除去機3において粗細断生海苔の一部が異物として除去される事態を抑制あるいは防止することが可能である。
【0056】
すなわち、本実施形態に係る塩分濃度調整装置Bは、調製水生成装置11の循環ポンプ11eが循環海水を散水管11dに供給することによって、循環海水を粉末塩Sに散水させる。この結果、上部空間Raの粉末塩Sが循環海水によって溶けて循環水内に混入する。そして、溶けた粉末塩Sを含む循環海水は、仕切板11bを通過し、調製水として調製槽11aの下部空間Rbの溜まる。
【0057】
ここで、循環水の散水管11dへの供給量つまり粉末塩Sに対する循環水の散水量は、塩分濃度センサ10が検出する循環海水水槽9の循環海水の塩分濃度に応じてフィードバック制御される。すなわち、上記散水量は、制御部11fが循環ポンプ11eの回転を制御することにより、調製水の塩分濃度が濃度目標値と一致するように調整される。
【0058】
このような塩分濃度調整装置Bによれば、単一の調製槽11a内で粉末塩Sの収納と調製水の生成とを行うので、装置サイズが極めてコンパクトである。すなわち、塩分濃度調整装置Bは、調製槽11aの上段に位置する上部空間Raに粉末塩Sを収納し、当該上部空間Raの下段に位置する下部空間Rbで調製水の生成を行うので、比較的狭いスペースでも設置することが可能である。
【0059】
例えば、粉末塩Sの収納と調製水の生成とを隣接配置された2つの装置で行うことが考えられる。しかしながら、この場合には設置スペースが大きくなり、乾海苔製造装置Aの建屋内に設置することが困難である。
【0060】
さて、乾海苔製造装置Aでは、異物除去機3から出力される異物除去生海苔は本細断機4に供給される。本細断機4では、異物除去生海苔がさらに細かく細断(本細断)され、所定の目標サイズに微細化されることによって本細断生海苔が生成される。そして、調合機5では、本細断機4で生成された本細断生海苔に所定量の真水を添加することによって生海苔混合水が生成される。
【0061】
そして、このような生海苔混合水は、撹拌槽6において生海苔混合水の生海苔濃度の最終調整が行われる。濃度調整後の生海苔混合水は、漉き機7に供給されて本細断生海苔が複数の海苔簀に同時並行的に順次貼り付けられ、本細断生海苔が片面に付着した海苔簀が乾燥機8に順次供給される。
【0062】
そして、乾燥機8では、本細断生海苔が矩形状に付着した海苔簀を加熱することによって矩形状の乾海苔を生成する。この乾燥機8では、本細断海苔簀に付着した乾海苔(板海苔)を海苔簀から剥がし、乾海苔製造装置Aの製品として出力する。
【0063】
このような乾海苔製造装置Aの基本動作に加え、貯水槽12から本細断機4及び調合機5には製造用水が順次供給される。すなわち、貯水槽12では、地下水等の製造用水に塩素水溶液が塩素ポンプ14によって添加されることによって、製造用水の塩素濃度が目標濃度(例えば0.1ppm程度)に設定される。そして、このような塩素水溶液の添加によって殺菌性能を有した製造用水が本細断機4及び調合機5に供給される。
【0064】
このような本実施形態に係る乾海苔製造装置Aによれば、本細断機4及び調合機5等、製造用水が流れる各機器を殺菌処理することができるので、乾海苔(板海苔)の製造における製造用水の衛生管理を的確に行うことが可能である。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、調製水生成槽11に循環海水を取り込んで調製水を生成したが、本発明はこれに限定されない。海水に代えてあるいは海水に加えて、地下水あるいは水道水を用いてもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、異物除去機3において粗細断生海苔の一部が異物として除去されることを抑制あるいは防止するために調製水を用いたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、商品海苔の製造における他の用途に本発明に係る塩分濃度調整装置を利用してもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、調製水を原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3に供給したが、本発明はこれに限定されない。異物除去機3において粗細断生海苔の一部が異物として除去されることを抑制あるいは防止することが可能であれば、原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3のうち、いずれか1つあるいは2つに調製水を供給してもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、塩分濃度センサ10、調製槽11a、仕切板11b、上部開口11c、散水管11d、循環ポンプ11e、制御部11f及び粉末塩Sを備える塩分濃度調整装置Bについて説明したが、本発明はこれに限定されない。このような塩分濃度調整装置Bの構成は、あくまで一例に過ぎない。本発明に係る塩分濃度調整装置は、調製槽、濃度センサ及び供給部を最少構成要素とするものである。
【0069】
(5)上記実施形態では、原藻タンク1、粗細断機2、異物除去機3、本細断機4、調合機5、撹拌槽6、漉き機7、乾燥機8、循環海水水槽9、塩分濃度センサ10、調製水生成槽11、汲上ポンプ12、貯水槽13、塩素タンク14及び塩素ポンプ15を備える乾海苔製造装置Aについて説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0070】
海苔製造装置には、海苔原藻の性状や装置規模等に応じて種々の構成のものが知られている。本発明に係る塩分濃度調整装置は、様々な構成の海苔製造装置に適用可能である。例えば、本発明に係る塩分濃度調整装置は、乾海苔(板海苔)の製造だけではなく、他の商品海苔の製造にも適用することができる。
【0071】
(6)上記実施形態では、塩分を含まない、あるいは塩分濃度が極めて低い製造用水に塩素を添加したが、上記製造用水に加えて、原藻タンク1、粗細断機2及び異物除去機3で使用される調製水つまり塩分を含む製造用海水にも塩素を添加してもよい。
【0072】
(7)上記実施形態では、貯水槽13に塩素を添加したが、塩素は製造用水の流路のいずれに添加してもよい。例えば、乾燥機8で乾海苔が剥がされた海苔簀には微量な乾海苔が残存することがあるので、乾燥機8では高圧洗浄機を用いた海苔簀の高圧洗浄が行われる場合がある。この高圧洗浄機には高圧洗浄水として製造用水が用いられるので、上述した貯水槽13に加えてあるいは貯水槽13に代えて、高圧洗浄機に供給する製造用水に塩素を添加してもよい。
【0073】
(8)上記実施形態では、調製槽11aに上部開口11cを設けることにより上部空間Raへの粉末塩Sの投入を容易としたが、本発明はこれに限定されない。粉末塩Sへの異物の混入を防止するために調製槽11aの上部に開閉自在な蓋を設けてもよい。
【0074】
(9)上記実施形態では、循環海水の塩分濃度の調整について説明したが、本発明はこれに限定されない。乾海苔製造装置Aにおいて、本細断機4における本細断工程及び調合機5における調合工程は、貯水槽13から供給される真水を用いて行われる。また、
図1には示さなかったが、漉き機7で生海苔から分離された真水は、貯水槽13に回収されて再利用される。すなわち、貯水槽13から本細断機4及び調合機5に供給される真水は、機器間を循環する循環真水である。
【0075】
このような循環真水には、生海苔に付着した循環海水が若干混入するので、塩分濃度を所望の濃度範囲内に管理する必要がある。すなわち、本発明に係る塩分濃度調整装置は、このような循環真水における塩分濃度の管理にも適用することが可能である。このような本発明によれば、循環真水の塩分濃度を所望の濃度範囲に調整することが可能である。
【0076】
(10)上記実施形態では、落差を利用して調製槽11aから循環海水水槽9に調製水を供給したが、本発明はこれに限定されない。落差を利用できない場合には、ポンプを用いて調製槽11aから循環海水水槽9に調製水を供給してもよい。
【符号の説明】
【0077】
A 乾海苔製造装置
B 塩分濃度調整装置
S 粉末塩
1 原藻タンク
2 粗細断機
3 異物除去機
4 本裁断機
5 調合機
6 撹拌槽
7 漉き機
8 乾燥機
9 循環海水水槽
10 塩分濃度センサ
11 調製水生成槽
11a 調製槽
11b 仕切板
11c 上部開口
11d 散水管
11e 循環ポンプ
11f 制御部
12 汲上ポンプ
13 貯水槽
14 塩素タンク
15 塩素ポンプ