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特許7506398光照射により防蚊可能な布帛及び該光照射による防蚊可能な布帛を用いた防蚊方法
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  • 特許-光照射により防蚊可能な布帛及び該光照射による防蚊可能な布帛を用いた防蚊方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】光照射により防蚊可能な布帛及び該光照射による防蚊可能な布帛を用いた防蚊方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/20 20210101AFI20240619BHJP
   D03D 15/533 20210101ALI20240619BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20240619BHJP
   A01M 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   A01M 1/22 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
D03D15/20
D03D15/533
D06M17/00 K
A01M1/00 G
A01M1/22 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020129854
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026400
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮村 佳成
(72)【発明者】
【氏名】杉野 和義
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-500652(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129240(WO,A1)
【文献】特表2017-530265(JP,A)
【文献】特開2017-017136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00-27/18
D06M17/00-17/10
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸からなる織物であって、
該緯糸に複数の光発電部付き機能糸が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、
前記光発電部付き機能糸は、光発電部と、該光発電部の正極に接続された正極導電線材と、前記光発電部の負極に接続された負極導電線材と、を含み、
前記複数の光発電部付き機能糸は、前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材とが、光発電部に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、
前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触し、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触する、経糸としての第1導電糸が配置され、
前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触し、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触する、経糸としての第2導電糸が配置され、
抵抗器が前記織物の一番上の光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に配置され、
前記抵抗器の一方の端子と前記第2導電糸の上端部とが第3導電糸で接続されており、
前記抵抗器の他方の端子と前記第1導電糸の下端部とが第4導電糸で接続されており、
前記第1導電糸が、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の下側と前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の上側との間に対応する領域で電気的に分断されていて、
前記第2導電糸が、前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の下側と前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の上側との間に対応する領域で電気的に分断されていて、
前記抵抗器と、前記複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が直列に接続されていることを特徴とする光照射により防蚊可能な布帛。
【請求項2】
経糸と緯糸からなる織物であって、
該緯糸に複数の光発電部付き機能糸が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、
前記光発電部付き機能糸は、光発電部と、該光発電部の正極に接続された正極導電線材と、前記光発電部の負極に接続された負極導電線材と、を含み、
前記複数の光発電部付き機能糸は、前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材とが、光発電部に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、
前記光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触する、経糸としての第1導電糸が配置され、
前記光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触する、経糸としての第2導電糸が配置され、
抵抗器が前記織物の一番上の前記光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に配置され、
前記抵抗器の一方の端子と前記第2導電糸の上端部とが第3導電糸で接続されており、
前記抵抗器の他方の端子と前記第1導電糸の上端部とが第4導電糸で接続されており、
前記抵抗器と、前記複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が並列に接続されていることを特徴とする光照射により防蚊可能な布帛。
【請求項3】
前記織物の裏面側に絶縁層が固着されている請求項1又は2に記載の光照射により防蚊可能な布帛
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光照射により防蚊可能な布帛の前記複数の光発電部付き機能糸の光発電部に光照射することを特徴とする防蚊方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫の中でも、特に蚊に対して、光照射をすることで防虫効果を得ることができる布帛、その光照射をすることで防虫効果を得ることができる布帛を用いた防蚊方法に関する。
【0002】
一般的に防蚊効果を得るためには、忌避効果や殺虫効果のある薬剤を噴霧するなどの方法がある。薬剤を噴霧する場合、殺虫効果のある薬剤が、乳幼児などの免疫機能が未発達の人体に及ぼす影響が懸念されている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、中空なグリップと、グリップの一端に装着されるフレームと、フレーム内に装着される少なくとも一つの電撃網と、グリップ内に配置される電池セットと、電撃網と電池セットに接続する回路とを備えている安全な電気蚊取りラケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3112006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、製造コストが低く、安全性が高くて二重の保護機能を有し、電気ショックをうけることを防止可能で、余剰電気を確実に解放可能な安全な電気蚊取りラケットを得ることができる。しかしながら、乾電池などの電池を用いずに、蚊に電気ショックを与えて蚊を殺すことなく、簡単に防蚊効果を得ることができる布帛が求められている。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景を鑑みてなされたものであって、乾電池などの電池を用いず、光照射だけで、簡単に防蚊効果を得ることができる防蚊可能な布帛を提供することが目的である。また、別の目的としては、光照射により防蚊可能な布帛を用いて、簡単に防蚊効果を得ることができる防蚊方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1] 経糸と緯糸からなる織物であって、
該緯糸に複数の光発電部付き機能糸が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、
前記光発電部付き機能糸は、光発電部と、該光発電部の正極に接続された正極導電線材と、前記光発電部の負極に接続された負極導電線材と、を含み、
前記複数の光発電部付き機能糸は、前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材とが、光発電部に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、
前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触し、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触する、経糸としての第1導電糸が配置され、
前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触し、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触する、経糸としての第2導電糸が配置され、
抵抗器が前記織物の一番上の光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に配置され、
前記抵抗器の一方の端子と前記第2導電糸の上端部とが第3導電糸で接続されており、
前記抵抗器の他方の端子と前記第1導電糸の下端部とが第4導電糸で接続されており、
前記第1導電糸が、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の下側と前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の上側との間に対応する領域で電気的に分断されていて、
前記第2導電糸が、前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の下側と前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の上側との間に対応する領域で電気的に分断されていて、
前記抵抗器と、前記複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が直列に接続されていることを特徴とする光照射により防蚊可能な布帛。
【0009】
[2] 経糸と緯糸からなる織物であって、
該緯糸に複数の光発電部付き機能糸が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、
前記光発電部付き機能糸は、光発電部と、該光発電部の正極に接続された正極導電線材と、前記光発電部の負極に接続された負極導電線材と、を含み、
前記複数の光発電部付き機能糸は、前記織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材とが、光発電部に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、
前記光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触する、経糸としての第1導電糸が配置され、
前記光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触する、経糸としての第2導電糸が配置され、
抵抗器が前記織物の一番上の前記光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に配置され、
前記抵抗器の一方の端子と前記第2導電糸の上端部とが第3導電糸で接続されており、
前記抵抗器の他方の端子と前記第1導電糸の上端部とが第4導電糸で接続されており、
前記抵抗器と、前記複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が並列に接続されていることを特徴とする光照射により防蚊可能な布帛。
【0010】
[3] 前記織物の裏面側に絶縁層が固着されている前項1又は2に記載の光照射により防蚊可能な布帛。
【0011】
[4] 前項1~3のいずれか1項に記載の光照射により防蚊可能な布帛の前記複数の光発電部付き機能糸の光発電部に光照射することを特徴とする防蚊方法。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明では、経糸と緯糸からなる織物であって、緯糸に複数の光発電部付き機能糸が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、光発電部付き機能糸は、光発電部と、光発電部の正極に接続された正極導電線材と、光発電部の負極に接続された負極導電線材と、を含み、複数の光発電部付き機能糸は、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材とが、光発電部に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触し、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触する、経糸としての第1導電糸が配置され、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触し、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触する、経糸としての第2導電糸が配置され、抵抗器が織物の一番上の光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に配置され、 抵抗器の一方の端子と第2導電糸の上端部とが第3導電糸で接続されており、抵抗器の他方の端子と第1導電糸の下端部とが第4導電糸で接続されており、第1導電糸が、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の下側と織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の上側との間に対応する領域で電気的に分断されていて、第2導電糸が、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の下側と前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の上側との間に対応する領域で電気的に分断されていて、抵抗器と、複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が直列に接続されているから、乾電池などの電池を用いず、光照射だけで、簡単に防蚊効果を得ることができる布帛を提供することができる。
【0013】
[2]の発明では、経糸と緯糸からなる織物であって、緯糸に複数の光発電部付き機能糸が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、光発電部付き機能糸は、光発電部と、光発電部の正極に接続された正極導電線材と、光発電部の負極に接続された負極導電線材と、を含み、複数の光発電部付き機能糸は、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材と、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸の負極導電線材とが、光発電部に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、光発電部付き機能糸の負極導電線材と接触する、経糸としての第1導電糸が配置され、光発電部付き機能糸の正極導電線材と接触する、経糸としての第2導電糸が配置され、抵抗器が織物の一番上の光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に配置され、抵抗器の一方の端子と第2導電糸の上端部とが第3導電糸で接続されており、抵抗器の他方の端子と第1導電糸の上端部とが第4導電糸で接続されており、抵抗器と、複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が並列に接続されているから、乾電池などの電池を用いず、光照射だけで、簡単に防蚊効果を得ることができる布帛を提供することができる。
【0014】
[3]の発明では、織物の裏面側に絶縁層が固着されているから、光発電部への光照射(太陽光等)により発生した電気が他の所に逃げていくことなく、光照射により防蚊可能な布帛内に電気を効率よく流すことができ、より防蚊性を向上させることができる。
【0015】
[4]の発明では、光照射により防蚊可能な布帛の複数の光発電部付き機能糸の光発電部に光照射するから、防蚊可能な布帛内に電気が発生して、防蚊することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る光照射により防蚊可能な布帛の一実施形態を示す平面図である。
図2】本発明に係る光照射により防蚊可能な布帛の他の実施形態を示す平面図である。
図3】本発明に係る光照射により防蚊可能な布帛の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る光照射により防蚊可能な布帛の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、光照射により防蚊可能な布帛1は、経糸2と緯糸3からなる織物15であって、該緯糸3に複数の光発電部付き機能糸4が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、前記光発電部付き機能糸4は、光発電部5と、該光発電部5の正極に接続された正極導電線材6と、前記光発電部5の負極に接続された負極導電線材7と、を含み、 前記複数の光発電部付き機能糸4は、前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A、4C)の負極導電線材7と、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の正極導電線材6とが、光発電部5に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、 前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A、4C)の負極導電線材7と接触し、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の正極導電線材6と接触する、経糸2としての第1導電糸8が配置され、前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A、4C)の正極導電線材6と接触し、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の負極導電線材7と接触する、経糸2としての第2導電糸9が配置され、抵抗器12が前記織物15の一番上の光発電部付き機能糸4Aから上側に離間した位置に配置され、前記抵抗器12の一方の端子と前記第2導電糸9の上端部Yとが第3導電糸10で接続されており、前記抵抗器12の他方の端子と前記第1導電糸8の下端部Xとが第4導電糸11で接続されており、前記第1導電糸8が、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の下側と前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4C)の上側との間に対応する領域13で電気的に分断されていて、前記第2導電糸9が、前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A)の下側と前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の上側との間に対応する領域13で電気的に分断されていて、前記抵抗器12と、前記複数の光発電部付き機能糸4の光発電部5と、が直列に接続されていることを特徴とする。
【0018】
前記光照射により防蚊可能な布帛は、複数の光発電部付き機能糸4の光発電部5に光照射することで、防蚊効果を得ることができる。光発電部付き機能糸4の光発電部5に光照射がないと、防蚊効果を得ることができない。
【0019】
前記光照射により防蚊可能な布帛1は経糸2(絶縁糸)と緯糸3(絶縁糸)とで構成されている織物である。
【0020】
前記光照射により防蚊可能な布帛1の組織としては、平織であることが好ましい。
【0021】
前記経糸2(絶縁糸)としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、麻、綿、ウール等が挙げられる。
【0022】
前記緯糸3(絶縁糸)としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、麻、綿、ウール等が挙げられる。
【0023】
前記光照射により防蚊可能な布帛1には、複数の光発電部付き機能糸4が必要であり、図1では、3本の緯糸3に光発電部付き機能糸4が用いられている。図1に示すように、上から、第1光発電部付き機能糸4A、第2光発電部付き機能糸4B、第3光発電部付き機能糸4Cの順番で配置されている。第1光発電部付き機能糸4Aと第2光発電部付き機能糸4Bの間には6本の緯糸(絶縁糸)3が配置されており、第2光発電部付き機能糸4Bと第3光発電部付き機能糸4Cの間には6本の緯糸(絶縁糸)3が配置されている。すなわち、緯糸しての第1発電部付き機能糸4A及び第2発電部付き機能糸4Bが互いに経方向に離間して(緯糸6本分離間して)配置されており、緯糸しての第2発電部付き機能糸4B及び第3発電部付き機能糸4Cが互いに経方向に離間して(緯糸6本分離間して)配置されている。なお、図1において、符号が付されていない緯糸は、緯糸(絶縁糸)3であり、符号が付されていない経糸は、経糸(絶縁糸)2であり、後の図2においても同様である。
【0024】
緯糸3に用いられる複数の光発電部付き機能糸4が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられていることが必要である。例えば、図1では、緯糸3としての第1光発電部付き機能糸4Aと第2光発電部付き機能糸4Bと第3光発電部付き機能糸4Cとが互いに経方向に1mm~7.5mm離間して配置されている必要がある。1mm未満では織り上げることが難しくなり、7.5mmを超えても防蚊効果が得られないので、好ましくない。中でも、4mm~6mmであることがより好ましい。
【0025】
前記光発電部付き機能糸4は、光発電部5と、該光発電部5の正極に接続された正極導電線材6と、前記光発電部5の負極に接続された負極導電線材7と、を含んでいる。(図1参照)
【0026】
前記複数の光発電部付き機能糸4は、前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A、4C)の負極導電線材7と、前記織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の正極導電線材6とが、光発電部5に対して緯方向の同じ側にあるように配置されていることが必要である。例えば、図1に示すように、前記3本の光発電部付き機能糸4は、前記第1光発電部付き機能糸4Aの負極導電線材7と、前記第2光発電部付き機能糸4Bの正極導電線材6と、前記第3光発電部付き機能糸4Cの負極導電線材7が、光発電部5に対して緯方向の同じ側にあるように配置されている。例えば、図1では、図面上側の前記第1光発電部付き機能糸4Aの負極導電線材7と、図面真ん中の前記第2光発電部付き機能糸4Bの正極導電線材6と、図面下側の前記第3光発電部付き機能糸4Cの負極導電線材7とが、光発電部5に対して左側に配置されている。また、図面上側の前記第1光発電部付き機能糸4Aの正極導電線材6と、図面真ん中の前記第2光発電部付き機能糸4Bの負極導電線材7と、図面下側の前記第3光発電部付き機能糸4Cの正極導電線材6とが、光発電部5に対して右側に配置されている。
【0027】
前記正極導電線材6としては、特に限定されるものではないが、例えば、金線、銅線、金属めっき繊維、導電性高分子糸等が用いられる。
【0028】
前記負極導電線材7としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス線、銅線、アルミニウム線、金属めっき繊維、導電性高分子糸等が用いられる。
【0029】
前記光発電部5は、その受光面に太陽光等の光が照射されることによって電気を発生することができる部材であり、例えば、有機薄膜太陽電池、SI薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、CICS薄膜太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池等が挙げられる。
【0030】
前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A、4C)の負極導電線材7と接触し、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の正極導電線材6と接触する、経糸2としての第1導電糸8が配置されている。例えば、図1では、前記第1光発電部付き機能糸4Aの負極導電線材7と接触し、前記第2光発電部付き機能糸4Bの正極導電線材6と接触すると共に、前記第3光発電部付き機能糸4Cの負極導電線材7と接触する、経糸2としての第1導電糸8が配置されている。前記第1導電糸8は、一対の導電糸(図1で左側の2本の導電糸)が、第1光発電部付き機能糸4Aの負極導電線材7と接触して導通されており、前記第2光発電部付き機能糸4Bの正極導電線材6と接触して導通されていると共に、前記第3光発電部付き機能糸4Cの負極導電線材7と接触して導通されている。前記一対の第1導電糸8は、他の緯糸(絶縁糸)3に対して平織で織り込まれている。
【0031】
前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A、4C)の正極導電線材6と接触し、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の負極導電線材7と接触する、経糸2としての第2導電糸9が配置されている。例えば、図1では、前記第1光発電部付き機能糸4Aの正極導電線材6と接触し、前記第2光発電部付き機能糸4Bの負極導電線材7と接触すると共に、前記第3光発電部付き機能糸4Cの正極導電線材6と接触する、経糸2としての第2導電糸9が配置されている。前記第2導電糸9は、一対の導電糸(図1で右側の2本の導電糸)が、第1光発電部付き機能糸4Aの正極導電線材6と接触して導通されており、前記第2光発電部付き機能糸4Bの負極導電線材7と接触して導通されていると共に、前記第3光発電部付き機能糸4Cの正極導電線材6と接触して導通されている。前記一対の第2導電糸9は、他の緯糸(絶縁糸)3に対して平織で織り込まれている。
【0032】
抵抗器12が前記織物15の一番上の光発電部付き機能糸4(すなわち、第1発電部付き機能糸4A)から上側に離間した位置に配置されている。抵抗器12が配置されている位置としては、特に限定されるものではないが、前記第1光発電部付き機能糸4Aから上側(すなわち、第2光発電部付き機能糸4Bとは反対側)に緯糸2本~16本分離間していることが好ましい。
【0033】
前記抵抗器12の一方の端子と前記第2導電糸9の上端部Yとが第3導電糸10で接続されており、前記抵抗器12の他方の端子と前記第1導電糸8の下端部Xとが第4導電糸11で接続されている。前記抵抗器12は第3導電糸10を用いて第2導電糸9の上端部Yと接続し、第4導電糸11を用いて第1導電糸8の下端部Xと接続することで、電気回路を組むことができ、第1光発電部付き機能糸4A、第2発電部付き機能糸4B、第3光発電部付き機能糸4Cに電気を通すことができる。また、図1の右上では、第4導電糸11と第1導電糸8が接触しているように見えるが、接触する部分、すなわち、第4導電糸11と第1導電糸8との間に非導電性のフィルムを貼ることにより、第4導電糸11と第1導電糸8とは導通しない。なお、図1では非導電性のフィルムは図示していない。
【0034】
前記第1導電糸8が、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の下側と前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4C)の上側との間に対応する領域で電気的に分断されている必要がある。図1に示すように、前記第1導電糸8(図1で左側の2本の導電糸)が、前記第2光発電部付き機能糸4Bと前記第3光発電部付き機能糸4Cの間に対応する領域13で電気的に分断されている。図1に示すように、13が、第1導電糸8の切断位置である(13の位置で緯糸は切断されていない)。
【0035】
前記第2導電糸9が、前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4(4A)の下側と前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4(4B)の上側との間に対応する領域で電気的に分断されている必要がある。図1に示すように、前記第2導電糸9(図1で右側の2本の導電糸)が、前記第1光発電部付き機能糸4Aと前記第2光発電部付き機能糸4Bの間に対応する領域13で電気的に分断されている。図1に示すように、13が、第2導電糸9の切断位置である(13の位置で緯糸は切断されていない)。このような切断構造により、抵抗器12と、3本の光発電部付き機能糸4の光発電部5が、第1導電糸8、第2導電糸9、第3導電糸10、第4導電糸11を介して直列に接続された構成になっている。本実施形態の光照射により防蚊可能な布帛1は、上記のような直列接続された3つの光発電部5を備えているので、光発電部5への光照射(太陽光等)により電気が流れることで、発生する磁界により、防蚊効果を得ることができるのではないかと推測している。電気が流れることで、磁界が発生する箇所、例えば、第1導電糸8、第2導電糸9、第3導電糸10、第4導電糸11でも防蚊効果が得ることができるのではないかと推測している。
【0036】
前記第1導電糸8、前記第2導電糸9、前記第3導電糸10及び前記第4導電糸11としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属線、金属めっき繊維、導電性高分子糸、金属カバリング糸等が用いられる。
【0037】
本発明に係る光照射により防蚊可能な布帛1の第2実施形態の平面図を図2に示す。第1光発電部付き機能糸4Aと第2光発電部付き機能糸4Bと第3光発電部付き機能糸4Cの挿入向きと、抵抗器12と第1導電糸8との接続位置が異なっている以外は、前記第1実施形態と同様の織構造である。
【0038】
第2実施形態では
経糸2と緯糸3からなる織物15であって、該緯糸3に複数の光発電部付き機能糸4が互いに経方向に1mm~7.5mm離間して用いられ、前記光発電部付き機能糸4は、光発電部5と、該光発電部5の正極に接続された正極導電線材6と、前記光発電部5の負極に接続された負極導電線材7と、を含み、前記複数の光発電部付き機能糸4は、前記織物15の上端部16から奇数本目の光発電部付き機能糸4の負極導電線材7と、前記織物15の上端部16から偶数本目の光発電部付き機能糸4の負極導電線材7とが、光発電部5に対して緯方向の同じ側にあるように配置され、前記光発電部付き機能糸4の負極導電線材7と接触する、経糸2としての第1導電糸8が配置され、前記光発電部付き機能糸4の正極導電線材6と接触する、経糸2としての第2導電糸9が配置され、抵抗器12が前記織物15の一番上の前記光発電部付き機能糸4(4A)から上側に離間した位置に配置され、前記抵抗器12の一方の端子と前記第2導電糸9の上端部Yとが第3導電糸10で接続されており、前記抵抗器12の他方の端子と前記第1導電糸8の上端部Zとが第4導電糸11で接続されており、前記抵抗器12と、前記複数の光発電部付き機能糸4の光発電部5と、が並列に接続されていることを特徴とする。並列に接続することで流れる電流を大きくすることができる。
【0039】
並列に接続する場合、前記複数の光発電部付き機能糸4を挿入する向きとしては、すべて同じ向きである必要がある。例えば、第1導電糸8側に負極導電線材7がくるなら、第2導電糸9側には正極導電線材6がくるようになる。
【0040】
並列接続する場合、前記抵抗器12の他方の端子と前記第1導電糸8の上端部Zとが第4導電糸11で接続する必要がある。
【0041】
図3に示すように、前記織物15の裏面側に絶縁層14が固着されていることが好ましい。絶縁層14が固着されていることで、光発電部5への光照射(太陽光等)により発生した電気が他の所に逃げていくことなく、光照射により防蚊可能な布帛1内に流すことができ、より防蚊性を向上させることができる。
【0042】
前記絶縁層14としては、電気を通さない材質であれば問題なく、例えば、フィルム、テープ、樹脂、接着剤等が挙げられ、中でも、フィルムであることがより好ましい。
【0043】
なお、図1~2において、説明、理解の容易化のため、各糸(経糸2、緯糸3)同士の間は、隙間があるように記載しているが、実際には糸同士は接触している。
【0044】
前記光照射により防蚊可能な布帛1を用いて防蚊させる方法としては、光照射により防蚊可能な布帛1の複数の光発電部付き機能糸4の光発電部5に光照射により、電気を発生させることができ、防蚊効果を得ることができる。光照射としては、例えば、太陽光、蛍光灯、LED照明、水銀灯、白熱電球、ハロゲンランプなどが挙げられ、中でも、太陽光、LED照明であることがより好ましい。
【0045】
光照射する照度としては、200ルクス~90000ルクスであることが好ましく、中でも、300ルクス~70000ルクスであるより好ましい。
【実施例
【0046】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
経糸としてPET糸(84dtex、36f、2本撚り)、緯糸してPET糸(50d、24f)を用い、ニードル織機で経糸密度72本/cm、緯糸密度11.5本/cm、第1導電糸として銀メッキナイロン糸を左端部から1.5cmの位置に2本、第2導電糸として銀メッキナイロン糸を右端部から1.5cmの位置に2本、光発電部付き機能糸(有機薄膜太陽電池)と光発電部付き機能糸(有機薄膜太陽電池)との挿入間隔が5mmになる条件下で平織した。なお、光発電部付き機能糸の挿入向きについては、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸は織物の左側に負極導電線材、織物の右側に正極導電線材がくるように挿入され、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸は織物の右側に正極導電線材、織物の右側に負極導電線材がくるように挿入した。次に、得られた織物の上端部から1番上の光発電部付き機能糸から上側に離間した位置に抵抗器(620Ω)を配置して、抵抗器の一方の端子と第2導電糸の上端部Yとを接続するように、針で第3導電糸(銀メッキナイロン糸)を縫い合わせ、抵抗器の他方の端子と第1導電糸8の下端部Xとを接続するように、針で第4導電糸11(銀メッキナイロン糸)を縫い合わせた。第1導電糸8と第4導電糸11とが接触する部分には、非導電性のフィルムを貼った。次に、第1導電糸8を、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸4の下側と織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸4の上側との間に対応する領域13で電気的に分断して、第2導電糸9を、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸4の下側と織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸4の上側との間に対応する領域13で電気的に分断して、抵抗器12と、複数の光発電部付き機能糸4の光発電部5と、が直列するようにして、織幅が10.5cm、長さが24cmの光照射により防蚊可能な布帛1を得た。
【0048】
<実施例2>
光発電部付き機能糸と光発電部付き機能糸との挿入間隔が2mmになる設定に変更した以外は、実施例1と同様にして、光照射により防蚊可能な布帛1を得た。
【0049】
<実施例3>
光発電部付き機能糸と光発電部付き機能糸との挿入間隔が7mmになる設定に変更した以外は、実施例1と同様にして、光照射により防蚊可能な布帛1を得た。
【0050】
<実施例4>
光発電部付き機能糸の挿入向きについて、織物の上端部から奇数本目の光発電部付き機能糸と、織物の上端部から偶数本目の光発電部付き機能糸とを同じ向きにして、抵抗器12の他方の端子と第1導電糸8の上端部Zとが第4導電糸で接続して、抵抗器と複数の光発電部付き機能糸の光発電部と、が並列に接続した以外は、実施例1と同様にして、光照射により防蚊可能な布帛1を得た。
【0051】
<比較例1>
光発電部付き機能糸と光発電部付き機能糸との挿入間隔が10mmに変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛を得た。
【0052】
<比較例2>
抵抗器、第3導電糸、第4導電糸を用いず、電気回路を組んでいない設定にした以外は、実施例1と同様にして、布帛を得た。
【0053】
<比較例3>
比較例3としては、実施例1で作成した光照射により防蚊可能な布帛を用いて、蚊忌避評価時に光照射なしの状態で評価した場合を示した。
【0054】
【表1】
【0055】
上記のようにして得られた光照射により防蚊可能な布帛に対して、下記の蚊忌避評価法に基づいて評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0056】
<蚊忌避評価法>
まず、作成した布帛の裏面にポリエチレンフィルムを貼り付けた。次に、布帛の端部に、人の腕に巻き付けても外れないように、面ファスナーを取り付けた。次に、縦25cm、横25cm、高さ25cmの大きさの蚊飼育用ゲージに、供試蚊30匹を放ち25℃±2℃、湿度70%~80%、光発電部に光照射(蛍光灯300ルクス)ができる条件下で、モニターの人の腕に作成した布帛を巻き、(指部分の刺咬を防除するため、ビニール手袋をはめた。)ゲージ中に2分間暴露した。この間に、腕に巻いた布帛に止まった蚊の数を計数した。計数した蚊の数から、次式より静止率を算出した。また、緯糸に光発電部付き機能糸を全く用いていない布帛での蚊の静止数との比較により忌避率を算出した。
忌避率(%)=(緯糸に光発電部付き機能糸を全く用いていない布帛での蚊の静止数-実施例1~4、比較例1~3で作成した布帛での蚊の静止数)/緯糸に光発電部付き機能糸を全く用いていない布帛での蚊の静止数×100
<供試虫>ヒトスジシマカ雌成虫
<モニター>男性
<判断基準>
忌避率が50.0%以上を「◎」、忌避率が10%以上~50%未満を「〇」、忌避率が10%未満を「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0057】
実施例1~4の光照射により防蚊可能な布帛は防蚊性に優れていた。比較例1の布帛は防蚊性が劣っていた。比較例2の布帛は防蚊性が劣っていた。比較例3の布帛は防蚊性が劣っていた。比較例4は、光照射により防蚊可能な布帛を用いていたが、光発電部に光照射がなかったため、防蚊性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る光照射により防蚊可能な布帛は、例えば、屋外作業時の蚊よけ、乳幼児向けの防蚊ブランケットとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・光照射により防蚊可能な布帛
2・・・経糸(絶縁糸)
3・・・緯糸(絶縁糸)
4・・・光発電部付き機能糸(緯糸等)
4A・・・第1光発電部付き機能糸
4B・・・第2光発電部付き機能糸
4C・・・第3光発電部付き機能糸
5・・・光発電部
6・・・正極導電線材
7・・・負極導電線材
8・・・第1導電糸(経糸等)
9・・・第2導電糸(経糸等)
10・・・第3導電糸
11・・・第4導電糸
12・・・抵抗器
13・・・導電糸の切断位置
14・・・絶縁層
15・・・織物
16・・・織物の上端部
X・・・第1導電糸の下端部
Y・・・第2導電糸の上端部
Z・・・第1導電糸の上端部
図1
図2
図3