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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】鋼材の重ね合せ装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 57/32 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B65G57/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020153640
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047715
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391029624
【氏名又は名称】滝川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光岡 賢
(72)【発明者】
【氏名】川口 透
(72)【発明者】
【氏名】広田 雅則
(72)【発明者】
【氏名】藤田 倫史
(72)【発明者】
【氏名】野上 和敏
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-037776(JP,U)
【文献】実開昭56-100432(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 57/00-57/32
B65G 60/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの一端のみにフランジが形成された鋼材を、前記フランジを下にしてかつ当該フランジの一部同士を重ねた状態で集積する重ね合せ装置であって、
前記鋼材の長手方向に直交する方向を搬送方向として、搬送面に前記フランジを下にして前記鋼材を載置して、前記搬送面に沿って前記搬送方向の後方側から前方側へ複数の前記鋼材を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の前後途中に配置され、前記鋼材を載置可能な載置面を有するスキッドを備え、前記載置面が前記搬送面以下となる下位置と、前記載置面が前記フランジの厚みより大きい距離で前記搬送面から上方に離間した上位置と、の間で前記スキッドを変位させる整列装置と、
前記搬送装置と前記整列装置を動作させて前記鋼材を重ねる制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記スキッドが前記下位置から前記上位置に変位すると、前記鋼材のフランジ後部が前記載置面より後方側へ食み出した状態で当該載置面に当該鋼材が載置される位置である重ね合せ位置に、前記鋼材を搬送して位置させる制御と、
前記スキッドが前記上位置に変位して、前記重ね合せ位置に位置していた前記鋼材が、前記フランジ後部を後方側へ食み出した状態で前記載置面に載置されている状態で、当該フランジ後部の下方となる位置である整列位置に、当該鋼材の直後に搬送される後の前記鋼材を搬送して位置させる制御と、
を実行し、
前記制御装置は、
前記スキッドが前記下位置にある状態で、前記搬送装置によって、前記鋼材を前記重ね合せ位置に搬送する第1動作と、
前記鋼材が前記重ね合せ位置にある状態で、前記整列装置によって、前記スキッドを前記上位置に変位させる第2動作と、
前記スキッドが前記上位置にある状態で、前記搬送装置によって、前記後の鋼材を前記整列位置に搬送した後、前記整列装置によって、前記スキッドを前記下位置に変位させる第3動作と、
を順次繰り返して実行する、鋼材の重ね合せ装置。
【請求項2】
ウェブの一端のみにフランジが形成された鋼材を、前記フランジを下にしてかつ当該フランジの一部同士を重ねた状態で集積する重ね合せ装置であって、
前記鋼材の長手方向に直交する方向を搬送方向として、搬送面に前記フランジを下にして前記鋼材を載置して、前記搬送面に沿って前記搬送方向の後方側から前方側へ複数の前記鋼材を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の前後途中に配置され、前記鋼材を載置可能な載置面を有するスキッドを備え、前記載置面が前記搬送面以下となる下位置と、前記載置面が前記フランジの厚みより大きい距離で前記搬送面から上方に離間した上位置と、の間で前記スキッドを変位させる整列装置と、
前記搬送装置と前記整列装置を動作させて前記鋼材を重ねる制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記スキッドが前記下位置から前記上位置に変位すると、前記鋼材のフランジ後部が前記載置面より後方側へ食み出した状態で当該載置面に当該鋼材が載置される位置である重ね合せ位置に、前記鋼材を搬送して位置させる制御と、
前記スキッドが前記上位置に変位して、前記重ね合せ位置に位置していた前記鋼材が、前記フランジ後部を後方側へ食み出した状態で前記載置面に載置されている状態で、当該フランジ後部の下方となる位置である整列位置に、当該鋼材の直後に搬送される後の前記鋼材を搬送して位置させる制御と、を実行し、
前記スキッドは、
前記整列位置に位置する前記鋼材に当接する当接面を備える、鋼材の重ね合せ装置。
【請求項3】
前記当接面が、
前記搬送方向の後方側に向かって下がる傾斜面である、請求項に記載の鋼材の重ね合せ装置。
【請求項4】
ウェブの一端のみにフランジが形成された鋼材を、前記フランジを下にしてかつ当該フランジの一部同士を重ねた状態で集積する重ね合せ装置であって、
前記鋼材の長手方向に直交する方向を搬送方向として、搬送面に前記フランジを下にして前記鋼材を載置して、前記搬送面に沿って前記搬送方向の後方側から前方側へ複数の前記鋼材を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の前後途中に配置され、前記鋼材を載置可能な載置面を有するスキッドを備え、前記載置面が前記搬送面以下となる下位置と、前記載置面が前記フランジの厚みより大きい距離で前記搬送面から上方に離間した上位置と、の間で前記スキッドを変位させる整列装置と、
前記搬送装置と前記整列装置を動作させて前記鋼材を重ねる制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記スキッドが前記下位置から前記上位置に変位すると、前記鋼材のフランジ後部が前記載置面より後方側へ食み出した状態で当該載置面に当該鋼材が載置される位置である重ね合せ位置に、前記鋼材を搬送して位置させる制御と、
前記スキッドが前記上位置に変位して、前記重ね合せ位置に位置していた前記鋼材が、前記フランジ後部を後方側へ食み出した状態で前記載置面に載置されている状態で、当該フランジ後部の下方となる位置である整列位置に、当該鋼材の直後に搬送される後の前記鋼材を搬送して位置させる制御と、を実行し、
前記搬送装置の前後途中における前記整列位置より後方側に配置され、前記鋼材を載置可能な上端面を有する分離レバーと、
側面視において前記上端面が前記搬送面から連続して前記搬送方向における前方側に向かって上がる傾斜面を構成する作動位置と、前記上端面が前記搬送面以下の位置に配置される非作動位置と、に前記分離レバーを回動可能な退避装置と、をさらに備える、鋼材の重ね合せ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の重ね合せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レール鋼やCT型鋼のようなウェブの一端にフランジが形成された鋼材(以下、フランジ付き鋼材とも呼ぶ)を製造する製鉄圧延工場においては、所定長さに切断された複数のフランジ付き鋼材を、所定本数を1単位として束ねて出荷する場合がある。フランジ付き鋼材は、フランジを重ね合せることで荷の形態が安定し荷崩れを防ぐことができる。これとは重ね合せの姿は異なるが、複数のレール鋼を製造工程の途中で段積するための段積装置が、特許文献1に開示されている。
【0003】
従来、フランジを重ねてフランジ付き鋼材を重ね合せることができる装置としては、図9図10に示すような重ね合せ装置が知られている。図9に示す重ね合せ装置80は、所定本数の鋼材2を、その長手方向が互いに平行となるように整列集合させるプールストップ機構81と、整列集合させた所定本数の鋼材2を下方から押し上げることが可能な複数のフローティング付きのドッグ82aを有するドッグ機構82を備えている。このような構成の重ね合せ装置80では、ドッグ機構82が複数の鋼材2を搬送方向下流側へ前傾させて同時に押し上げ、その状態でチェーンコンベア83が各鋼材2を前方側へ搬送することで、後の鋼材2のフランジFが前の鋼材2のフランジFの下に位置される。そして、この状態からドッグ機構82によるフランジFの押し上げを前側から順次解除すると、フランジFを重ねた状態で各鋼材2が重ね合わされる。
【0004】
また、図10に示す重ね合せ装置90は、第1コンベア91、第2コンベア92、第3コンベア93を備えている。各コンベア91,92,93はチェーンコンベアにより構成されており、第3コンベア93は、複数のドッグ93aを備えている。第2コンベア92は、第1コンベア91の搬送方向下流側に配置されており、第1コンベア91で搬送した鋼材2を第2コンベア92で受け継ぐことができる。そして、第1コンベア91と第2コンベア92の搬送面には落差Rを設けている。落差Rは、鋼材2のフランジFの厚みより大きい寸法に設定されている。このような構成の重ね合せ装置90では、第1コンベア91から第2コンベア92に移載された鋼材2を、第1コンベア91の直後の重ね合せ位置において、ドッグ93aで係止して停止させる。そして、この状態から第1コンベア91によって後続の鋼材2を搬送方向下流側へ搬送すると、重ね合せ位置に停止している鋼材2のフランジFの上に、落差Rの分だけ上方に位置する後続の鋼材2のフランジFが重ね合わされる。これらの動作を繰り返すことで、フランジFを重ねた状態で複数の鋼材2を重ね合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-30659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9に示す重ね合せ装置80の場合、複数のドッグ82aをそれぞれ独立して昇降可能に構成する必要があるため、ドッグ機構82の装置構成が複雑になる。また、重ね合せ装置80では、鋼材2の重ね合せ数に対応するドッグ82aの個数が必要となるため、多数のドッグ82aが必要になってドッグ機構82の装置構成が大掛かりとなる。
【0007】
また、図10に示す重ね合せ装置90の場合、鋼材2の幅が各コンベア91,92のホイール径に対応していなければ、鋼材2が第1コンベア91から第2コンベア92に受け継がれる際に転倒してしまう場合があり、重ね合せ装置90に適用できる鋼材2が各コンベア91,92のホイール径によって制限され、処理できる製品のレンジが限られるという問題点がある。この問題点に対応するためには、重ね合せ装置90が複数台必要であり、装置構成が大掛かりとなる。また、重ね合せ装置90の場合、落差Rが鋼材2のフランジFの厚みより大きくなるように、各コンベア91,92の落差Rを調整する必要がある。このような調整を可能にするためには、各コンベア91,92の搬送面の高さを可変式にする必要があり、装置構成がさらに大掛かりとなる。
【0008】
本発明はこのような現状の課題に鑑みてなされたものであり、装置の構成が簡易であり、かつ、鋼材の重ね合せ数や仕様の変更に容易に対応することが可能なフランジ付き鋼材の重ね合せ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウェブの一端のみにフランジが形成された鋼材を、前記フランジを下にしてかつ当該フランジの一部同士を重ねた状態で集積する重ね合せ装置であって、前記鋼材の長手方向に直交する方向を搬送方向として、仮想の搬送面に前記フランジを下にして前記鋼材を載置して、前記搬送面に沿って前記搬送方向の後方側から前方側へ複数の前記鋼材を搬送する搬送装置と、前記搬送装置の前後途中に配置され、前記鋼材を載置可能な載置面を有するスキッドを備え、前記載置面が前記搬送装置の搬送面以下となる下位置と、前記載置面が前記フランジの厚みより大きい距離で前記搬送面から上方に離間した上位置と、の間で前記スキッドを変位させる整列装置と、前記搬送装置と前記整列装置を動作させて前記鋼材を重ねる制御を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記スキッドが前記下位置から前記上位置に変位すると、前記鋼材のフランジ後部が前記載置面より後方側へ食み出した状態で当該載置面に当該鋼材が載置される位置である重ね合せ位置に、前記鋼材を搬送して位置させる制御と、前記スキッドが前記上位置に変位して、前記重ね合せ位置に位置していた前記鋼材が、前記フランジ後部を後方側へ食み出した状態で前記載置面に載置されている状態で、当該フランジ後部の下方となる位置である整列位置に、当該鋼材の直後に搬送される後の前記鋼材を搬送して位置させる制御と、を実行する。
【0010】
この鋼材の重ね合せ装置によれば、重ね合せ位置に鋼材を搬送しスキッドを上位置に変位させ、そのスキッドの載置面に載っている前の鋼材のフランジ後部の下方に、後の鋼材のフランジを位置させることができる。その状態で、スキッドを下位置に変位させると、前後の鋼材が、両者のフランジの一部同士を重ねた状態で搬送面上に集積される。このような鋼材の重ね合せ装置は、搬送装置の周囲に整列装置を配置するだけで、簡易に構成することができる。また、このような鋼材の重ね合せ装置は、整列装置に備えられたスキッドを交換することによって、鋼材の重ね合せ数や仕様の変更にも容易に対応することができる。
【0011】
また、前記制御装置は、前記スキッドが前記下位置にある状態で、前記搬送装置によって、前記鋼材を前記重ね合せ位置に搬送する第1動作と、前記鋼材が前記重ね合せ位置にある状態で、前記整列装置によって、前記スキッドを前記上位置に変位させる第2動作と、前記スキッドが前記上位置にある状態で、前記搬送装置によって、前記後の鋼材を前記整列位置に搬送した後、前記整列装置によって、前記スキッドを前記下位置に変位させる第3動作と、を順次繰り返して実行することが好ましい。
この構成によれば、前後の鋼材をフランジの一部同士を重ねた状態で搬送面上に容易に集積させることができる。また、この構成によれば、第1動作から第3動作までを繰り返す回数を変更することで、鋼材を重ね合わせる本数を容易に変更することができる。
【0012】
また、前記スキッドは、前記整列位置に位置する前記鋼材に当接する当接面を備えることが好ましい。
この構成によれば、整列位置に位置する鋼材をスキッドに当接させて位置決めすることによって、重ね合わせる鋼材が互いに平行となるように、鋼材を精度よく整列させることができる。
【0013】
また、前記当接面が、前記搬送方向の後方側に向かって下がる傾斜面であると好ましい。
この構成によれば、後の鋼材が整列位置に位置する状態でスキッドを下降させるときに、後の鋼材がスキッドとの接触により整列位置からずれることを防止できる。これにより、重ね合わせる鋼材が互いに平行となるように、鋼材をより一層精度よく整列させることができる。
【0014】
また、前記搬送装置の前後途中における前記整列位置より後方側に配置され、前記鋼材を載置可能な上端面を有する分離レバーを備え、側面視において前記上端面が前記搬送面から連続して前記搬送方向における前方側に向かって上がる傾斜面を構成する作動位置と、前記上端面が前記搬送面以下の位置に配置される非作動位置と、に前記分離レバーを回動可能な退避装置をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、重ね合せ動作が行われている鋼材より後方側の鋼材を、搬送装置の搬送面から退避させることができる。これにより、鋼材が搬送装置によって擦られて傷つくことを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鋼材の重ね合せ装置によれば、装置の構成を簡易にしつつ、鋼材の重ね合せ数や仕様の変更に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】重ね合せ装置の平面図である。
図2図1のII-II線矢視における重ね合せ装置の側面断面図である。
図3】重ね合せ装置を制御する制御装置のブロック図である。
図4】整列装置の詳細側面図である。
図5】退避装置の詳細側面図である。
図6】重ね合せ装置の動作説明図(その1)である。
図7】重ね合せ装置の動作説明図(その2)である。
図8】重ね合せ装置の動作フロー図である。
図9】従来の重ね合せ装置(その1)の説明図である。
図10】従来の重ね合せ装置(その2)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
[重ね合せ装置の全体構成]
図1および図2に示す重ね合せ装置1は、本発明に係る鋼材の重ね合せ装置の一実施形態であり、所定長さ(例えば12m程度)に切り出された鋼材2を搬送する搬送装置10と、搬送装置10により搬送される複数の鋼材2を所望の姿勢に整える整列装置20と、整列装置20より後方側で鋼材2を搬送装置10の搬送面から退避させる退避装置30とを備えている。搬送装置10、整列装置20および退避装置30は、重ね合せ装置1の骨格を構成する本体フレーム3上に配置されている。重ね合せ装置1は、束ねるのに適した所望の姿勢に複数の鋼材2を整える用途に用いられ、例えば、鋼材2の製造工程における出荷直前の工程に設置される。
【0019】
また、重ね合せ装置1は、当該重ね合せ装置1の動作を制御する制御装置40(図3参照)を備えている。
【0020】
[フランジ付き鋼材]
図1に示すように、重ね合せ装置1で重ね合せる対象とされる鋼材2は「フランジ付き鋼材」である。ここでいう「フランジ付き鋼材」とは、フランジFとウェブWを備えた鋼材2であり、ウェブWの一端のみにフランジFが設けられている。なお、「フランジ付き鋼材」には、レール鋼、CT型鋼、T型鋼等が含まれ、レール鋼には鉄道用レール鋼やエレベータガイド用レール鋼が含まれる。なお、図1に示す鋼材2のフランジFのうち、ウェブWより一方側(後で説明する搬送方向の前方側)へ突き出た部位をフランジ前部FAと称し、ウェブWより他方側(後で説明する搬送方向の後方側)へ突き出た部位をフランジ後部FBと称する。そして、フランジ前部FAおよびフランジ後部FBにおける最大厚みを、フランジFの厚みDと定義する。フランジ前部FAおよびフランジ後部FBは、ウェブWとの境界位置において最大厚みを有している。このため、鋼材2では、フランジ前部FAおよびフランジ後部FBのウェブWとの境界位置における厚みが、フランジFの厚みDとなっている。
【0021】
[搬送装置]
搬送装置10は、後で説明するチェーンコンベア11を備えており、鋼材2を水平方向に順次搬送する。搬送装置10によって搬送される鋼材2の長手方向に直交する方向が当該鋼材2の搬送方向となっている。なお、以下の説明において、鋼材2の搬送方向を前後方向と定義し、搬送装置10によって搬送される鋼材2の長手方向を幅方向と定義し、前後方向および幅方向に直交する方向を上下方向と定義する。また、鋼材2の搬送方向下流側を前方側(図1図2に示す矢印Aの向き)と定義し、その反対方向を後方側と定義する。
【0022】
図1および図2に示すように、搬送装置10は、幅方向に間隔を置いて配置された複数(図1に示す範囲には5個)のチェーンコンベア11を備えている。チェーンコンベア11は、前後一対のスプロケット12,13と、各スプロケット12,13にかみあう無端のチェーン14とを備えている。なお、図1には、重ね合せ装置1の一部を示している。重ね合せ装置1は、全体で幅方向に1500mm程度のピッチで合計9列のチェーンコンベア11を有しており、最大で幅方向に12m程度の長さを有する鋼材2を搬送することができる。
【0023】
複数のスプロケット12は、幅方向に間隔を置いて配置され、共通の駆動軸15に固定されている。このため、各スプロケット12は、駆動軸15の回転に伴って、同時に同じ回転数で回転する。複数のスプロケット13は、幅方向に間隔を置いて配置されており、複数の回転軸16によってそれぞれ支持されている。駆動軸15と各回転軸16の軸心は、同じ高さに位置しており、平面視において鋼材2の搬送方向と直交する。チェーン14の長さ方向は、鋼材2の搬送方向に平行であり、チェーン14の上端は側面視において水平である。
【0024】
本説明では、複数のチェーン14の上端に接する仮想の水平面を、搬送装置10の搬送面10aとして定義する(図2参照)。そして、鋼材2は、フランジFを下にした姿勢で搬送面10aに載置され、搬送装置10によって搬送方向の前方側(図1図2に示す矢印Aの向き)に搬送される。
【0025】
チェーンコンベア11では、前側の駆動軸15が駆動モータ17で駆動され、前側のスプロケット12が回転するとともにチェーン14を介して後側のスプロケット13が従動回転し、各スプロケット12,13にかみあうチェーン14が駆動される。そして、搬送装置10の前後方向途中の各チェーンコンベア11と幅方向に隣接しているスペースには、複数(図1に示す範囲にはそれぞれ5個)の整列装置20と退避装置30が配置されている。
【0026】
重ね合せ装置1では、搬送装置10の前後方向の途中において、鋼材2を整列させるときの基準となる位置である整列位置P1と、鋼材2を重ね合せるときの基準となる位置である重ね合せ位置P2が設定されている。整列位置P1および重ね合せ位置P2に位置される鋼材2は、フランジFの前端位置を基準として位置決めされる。
【0027】
[整列装置]
図1図2および図4に示すように、整列装置20は、搬送装置10によって前方側に搬送される鋼材2を、搬送途中で整列させる装置であり、スキッド21と、リンク機構22と、駆動装置23とを備えている。ここでいう「整列させる」動作には、鋼材2を前後方向に直交する姿勢に整える動作と、フランジFを重ねて複数の鋼材2を集積させる動作とが含まれる。
【0028】
スキッド21は、略直方体状の金属製部材からなり、その長手方向が重ね合せ装置1の前後方向に向く姿勢で、整列装置20の最上部に配置されている。スキッド21の上面には、鋼材2を載置するための載置面21aが形成されている。載置面21aは、ユーザーが所望する所定の本数(以下、所定本数と称する)の鋼材2を載置できる長さを有している。なお、スキッド21の長さは、ユーザーが所望する鋼材2の重ね合せ数(所定本数)に応じて適宜設定される。また、スキッド21は、金属製でなくてもよく、例えば、樹脂製等であってもよい。
【0029】
スキッド21の後方側端部には、鋼材2を当接させるための当接面21bが形成されている。当接面21bは、前方側から後方側へ向かって下がる傾斜面である。ここでいう「傾斜面」には、平面および曲面が含まれる。
【0030】
リンク機構22は、スキッド21を上下方向へ変位可能に支持する機構であり、駆動装置23と、第1回動プレート24と、第2回動プレート25と、昇降ステージ26と、連結プレート27とを備えている。
【0031】
第1回動プレート24は、第2回動プレート25の後方側に配置されている。昇降ステージ26は、各回動プレート24,25の上方に配置され、各回動プレート24,25に対して回動可能に連結されている。連結プレート27は、各回動プレート24,25の下方に配置され、各回動プレート24,25に対して回動可能に連結されている。なお、連結プレート27は幅方向に一対で設けられており、各回動プレート24,25が一対の連結プレート27の間に挟まれている。
【0032】
第1回動プレート24は、略V字状の形態を有しており、V字の谷部近傍に軸孔24aが形成されている。軸孔24aに本体フレーム3に固定された第1支持軸4が挿通され、第1回動プレート24は、第1支持軸4によって回動可能に支持されている。そして、第1回動プレート24は、第1支持軸4に支持された状態で軸孔24aから略後方に延設される第1腕部24bと、略下方に延設される第2腕部24cとを備えている。
【0033】
第2回動プレート25は、略V字状の形態を有しており、V字の谷部近傍に軸孔25aが形成されている。軸孔25aに本体フレーム3に固定された第2支持軸5が挿通され、第2回動プレート25は、第2支持軸5によって回動可能に支持されている。そして、第2回動プレート25は、第2支持軸5に支持された状態で軸孔25aから略後方に延設される第1腕部25bと、略下方に延設される第2腕部25cとを備えている。
【0034】
昇降ステージ26は、第1回動プレート24の第1腕部24bと第2回動プレート25の第1腕部25bの間に設けられており、ピン26a,26bによって各回動プレート24,25と回動可能に連結されている。
【0035】
連結プレート27は、第1回動プレート24の第2腕部24cと第2回動プレート25の第2腕部25cの間に設けられており、ピン27a,27bによって各回動プレート24,25と回動可能に連結されている。
【0036】
このようなリンク機構22は、第1回動プレート24の第1腕部24bの後方側端部に、駆動装置23が連結されている。
【0037】
駆動装置23は、リンク機構22を駆動するための装置であり、アクチュエータ23aと、第1回動レバー23bと、回動軸23cと、第2回動レバー23dと、入力レバー23eとを備えている。
【0038】
回動軸23cは、複数(本実施形態では5つ)の整列装置20を連結する共通の軸として設けられている。このため、駆動装置23は、回動軸23cの回動に伴って、複数の整列装置20を同時に駆動することができる。
【0039】
回動軸23cは、第1回動レバー23bを介してアクチュエータ23aに連結されている。アクチュエータ23aの伸縮動作は、第1回動レバー23bを介して回動軸23cに伝達され、回動方向の動作に変換される。また、回動軸23cは、第2回動レバー23dを介して入力レバー23eに連結されている。回動軸23cの回動動作は、第2回動レバー23dを介して入力レバー23eに伝達され、略上下方向の昇降動作に変換される。そして、駆動装置23の入力レバー23eは、第1回動プレート24の第1腕部24bに連結されており、第1腕部24bが略上下方向に変位されることによって、第1回動プレート24が第1支持軸4回りに回動される。
【0040】
リンク機構22は、図4左図の状態から駆動装置23が作動して入力レバー23eが上方へ変位すると、第1回動プレート24が、第1支持軸4を中心に図4における時計回りに回動するとともに連結プレート27が変位し、同時に、連結プレート27によって第1回動プレート24に連結された第2回動プレート25も図4における時計回りに回動する。すると、リンク機構22は、各回動プレート24,25に連結された昇降ステージ26が、側面視において円弧状となる軌跡を描きながら、前方側への変位を伴いつつ略上方へ変位し、図4右図の状態となる。
【0041】
リンク機構22は、図4右図の状態から駆動装置23が作動して入力レバー23eが下方へ変位すると、第1回動プレート24が図4における反時計回りに回動するとともに連結プレート27が変位し、同時に、連結プレート27によって第1回動プレート24に連結された第2回動プレート25も図4における反時計回りに回動する。すると、リンク機構22は、各回動プレート24,25に連結された昇降ステージ26が、側面視において円弧状となる軌跡を描きながら、後方側への変位を伴いつつ略下方へ変位し、図4左図の状態となる。
【0042】
整列装置20では、図4右図の状態で、載置面21aが、搬送面10aから厚みDより大きい距離で離間された位置に位置しており、この位置を上位置U1と定義する。また、整列装置20では、図4左図の状態で、載置面21aが、搬送面10a以下の位置に位置しており、この位置を下位置L1と定義する。なお、上位置U1は、載置面21aの上限位置でなくてもよく、下位置L1は、載置面21aの下限位置でなくてもよい。
【0043】
整列装置20では、スキッド21は、その載置面21aが上位置U1と下位置L1の範囲で上下方向へ変位可能となっている。
【0044】
このように、整列装置20は、スキッド21を上下方向に変位可能に支持するリンク機構22と、リンク機構22を駆動する駆動装置23を備えている。この構成によれば、スキッド21を上下に変位させる機構を簡易に構成することができ、これにより、重ね合せ装置1をより簡易に構成することが可能となる。
【0045】
[退避装置]
図1図2および図5に示すように、退避装置30は、搬送装置10により搬送される鋼材2を、搬送面10aより上方(即ち、チェーンコンベア11と接触しない位置)へ退避させるための装置であり、分離レバー31とアクチュエータ32とを備えている。退避装置30は、整列位置P1よりも後方側に配置されている。
【0046】
分離レバー31は、側面視で略矩形状の金属製板材からなり、その長手方向を重ね合せ装置1の前後方向に向けた姿勢で配置されている。分離レバー31は、回動基部31aと、アタッチメント部31bとを備えており、回動基部31aに形成された軸孔31cに、本体フレーム3に固定された第3支持軸6が挿通されている。分離レバー31は、第3支持軸6によって回動可能に支持されている。
【0047】
アタッチメント部31bは、分離レバー31を前方側へ延長する部位であり、回動基部31aの前端部に固定されている。アタッチメント部31bは、図示しないボルトナット等の着脱により回動基部31aに対して着脱可能である。アタッチメント部31bは、鋼材2の仕様に応じて交換することができるように、長さ等の仕様が異なる複数種類が準備されている。分離レバー31の上端面31eは、鋼材2を載置することが可能な載置面を構成する。上端面31eは、上端面31e上に載置された鋼材2を滑らせることが可能な面とする。
【0048】
アクチュエータ32は、分離レバー31を回動させるための駆動源となる装置であって、長さ方向に伸縮可能であり、長さ方向の両端部に軸孔32a,32bを備えている。アクチュエータ32は、下向きに配置された一端側の軸孔32aに、本体フレーム3に固定された第4支持軸7が挿通され、第4支持軸7によって支持されている。また、アクチュエータ32は、上向きに配置された他端側の軸孔32bと回動基部31aに形成された軸孔31dに共通の連結軸8が挿通されて、連結軸8によって支持されている。すべてのアクチュエータ32は、制御装置40(図3参照)によって制御され、同時に同じ動作を行う。
【0049】
そして、退避装置30は、アクチュエータ32の伸縮動作に伴って、分離レバー31が略上下方向へ変位するように回動する。具体的には、退避装置30は、図5左図の状態からアクチュエータ32が伸長すれば、分離レバー31が図5における反時計回りに回動し、図5右図の状態となる。また、退避装置30は、図5右図の状態からアクチュエータ32が縮小すれば、分離レバー31が図5における時計回りに回動し、図5左図の状態となる。
【0050】
退避装置30では、アクチュエータ32が伸長し、側面視において上端面31eが搬送面10aを下端として前方側へ向かって上がる傾斜面を構成するときの当該分離レバー31の回動位置を、分離レバー31の作動位置U2と定義する(図5右図参照)。また、退避装置30では、アクチュエータ32が縮小し、分離レバー31が搬送面10a以下に位置するときの当該分離レバー31の回動位置を、分離レバー31の非作動位置L2と定義する(図5左図参照)。なお、分離レバー31が作動位置U2に位置するとき、アクチュエータ32は最大長さまで伸長されていなくてもよいし、分離レバー31が非作動位置L2に位置するとき、アクチュエータ32は最小長さまで縮小されていなくてもよい。
【0051】
[制御装置]
制御装置40は、少なくとも搬送装置10と整列装置20と退避装置30の動作を制御する装置であり、コンピュータ装置により構成されている。制御装置40は、図3に示すように、搬送装置10と、整列装置20と、退避装置30と、第1センサ50に接続されている。具体的には、制御装置40は、搬送装置10の駆動モータ17と、整列装置20のアクチュエータ23aと、退避装置30のアクチュエータ32に接続されている。そして、制御装置40は、第1センサ50の検知結果に基づくタイミングにより、搬送装置10、整列装置20および退避装置30の動作を制御する。
【0052】
[センサ]
図1に示すように、第1センサ50は、整列位置P1において、搬送面10aの下方に配置されており、搬送装置10により前方側に搬送される鋼材2の前端が、整列位置P1に到達したことを検知する。また、第1センサ50は、基準位置から鋼材2までの距離を計測することで、整列位置P1に位置する鋼材2が搬送装置10の搬送面10aに位置するか、搬送面10aから上方に離間した位置に位置するか、をさらに検出する。第1センサ50としては、所定位置に鋼材2が存在することを非接触で検出できるセンサを採用することが好ましく、本実施形態では、赤外線センサを採用している。なお、第1センサ50としては、例えば、超音波センサ等のその他の非接触型センサを採用してもよく、あるいは、接触型のセンサ(例えばリミットスイッチ等)を採用してもよい。
【0053】
なお、重ね合せ装置1は、第1センサ50のほか、図1に示すように、上流側から搬送装置10に鋼材2が受け継がれたことを検知する第2センサ51や、鋼材2がスキッド21よりも前方側に搬送されたことを検知する第3センサ52を、さらに備えていてもよい。そして、図3に示すように、第2センサ51と第3センサ52を制御装置40にさらに接続し、各センサ50,51,52の検知結果に基づいて、搬送装置10、整列装置20および退避装置30の動作を制御する構成としてもよい。
【0054】
[鋼材の重ね合せ動作]
図1に示す重ね合せ装置1には、当該重ね合せ装置1の上流側に配置された図示しない装置(例えば、鋼材2の切り出し装置)から鋼材2が供給される。そして、重ね合せ装置1では、搬送装置10に鋼材2が供給され、第2センサ51が鋼材2を検知したときに、制御装置40が、以下の重ね合せ動作の制御を開始する。
【0055】
図6および図8に示すように、重ね合せ装置1では、重ね合せ動作を開始すると、制御装置40がスキッド21を上昇させて、載置面21aを上位置U1に位置させる(STEP-01)。また、このとき制御装置40は、当該制御装置40に記憶された鋼材2の搬送本数のカウント数を「0」にクリアする。なお、図6は、重ね合せ装置1による1本目の鋼材2(前の鋼材2)の重ね合せ動作を示している。
【0056】
次に、載置面21aを上位置U1に位置させた状態で、制御装置40が搬送装置10を「ON」とし、搬送装置10によって鋼材2を前方側に搬送する(STEP-02)。搬送装置10による鋼材2の搬送速度は、ユーザーが鋼材2の仕様に応じて設定し、制御装置40に記憶させておく。
【0057】
次に、制御装置40が、第1センサ50の検知結果に基づく判定を行う(STEP-03)。具体的には、(STEP-02)で搬送装置10を「ON」とした後、判定が「NO」の場合(即ち、第1センサ50が鋼材2を検知していない間)は、搬送装置10を「ON」とし、搬送装置10による鋼材2の搬送を継続する。そして、鋼材2のフランジFの前端が整列位置P1に到達すれば、第1センサ50が鋼材2を検知し、制御装置40が、鋼材2が整列位置P1に到達したことを検知する。そして、判定が「YES」の場合(即ち、第1センサ50が鋼材2を検知したとき)、制御装置40が、搬送装置10を「OFF」とする(STEP-04)。これにより、鋼材2は、整列位置P1に停止される。なお、鋼材2が停止されるとき、制御装置40によって、駆動モータ17の動作を数値管理して、鋼材2を整列位置P1に位置決めしてもよい。
【0058】
フランジFの前端が整列位置P1に到達した鋼材2は、そのフランジFの前端が当接面21bに当接する。これにより、鋼材2は、長手方向が前後方向に直交する姿勢に整列されるとともに、整列位置P1に位置決めされる。
【0059】
このように、重ね合せ装置1では、第1センサ50の検知結果に基づいて搬送装置10を「OFF」にするときに、鋼材2を当接面21bに当接させて整列位置P1に位置決めしており、これにより、鋼材2を整列位置P1に確実に位置決めすることが可能となっている。
【0060】
次に、制御装置40がスキッド21を下降させて、載置面21aを下位置L1に位置させる(STEP-05)。このとき載置面21aは、搬送装置10の搬送面10a以下の高さに位置している。
【0061】
スキッド21は、当接面21bを傾斜面とすることで、スキッド21が下方へ変位するほど、当接面21bとその前方側に位置する鋼材2との距離が大きくなる。このため、当接面21bは、スキッド21の下降に伴って鋼材2から即座に離間される。また、スキッド21は、リンク機構22によって上位置U1から下位置L1へ変位されるときに、円弧状の軌跡に沿って後方側への変位を伴いつつ変位されるが(図4参照)、当接面21bが傾斜面であるため、整列位置P1に位置決めされた鋼材2と接触しない。このため、整列位置P1に位置決めされた鋼材2は、スキッド21が下降されたときに、スキッド21に押されて整列位置P1よりずれることがない。
【0062】
次に、制御装置40が、搬送装置10を「ON」として、搬送装置10によって鋼材2を前方側に所定量X(以下、第1所定量Xと称する)だけ搬送した後、搬送装置10を「OFF」とする(STEP-06)。重ね合せ装置1では、整列位置P1から第1所定量Xだけ前方側の位置を重ね合せ位置P2と定義している。このため、鋼材2は、(STEP-06)の終了時点で、重ね合せ位置P2に停止される。
【0063】
本実施形態の重ね合せ装置1では、第1所定量Xは、鋼材2のフランジFの幅TとウェブWの幅tに基づいて、X=(T+t)/2より算出される量として設定されている(図1参照)。なお、第1所定量Xは、鋼材2の仕様(具体的には、鋼材2のフランジFとウェブWの幅やフランジFの厚みD)に応じて決定すればよく、上記数式で算出される量でなくともよい。
【0064】
重ね合せ位置P2に位置する鋼材2は、フランジ後部FBが整列位置P1から後方側へ所定量Y(以下、第2所定量Yと称する)だけ食み出している。この第2所定量Yは、Y=T-Xとなる量であり(図1参照)、本実施形態では、Y=(T-t)/2より算出される量となる。第2所定量Yは、重ね合せ装置1を用いて鋼材2を重ねたときに、フランジF同士が重なりあう量となる。
【0065】
次に、制御装置40がスキッド21を上昇させて、載置面21aを上位置U1に位置させる(STEP-07)。このとき、鋼材2は、フランジ前部FAが載置面21aに載置されるとともに、フランジ後部FBが載置面21aから後方側へ食み出している。具体的には、フランジ後部FBは、整列位置P1から後方側へ第2所定量Yで食み出している。そして、鋼材2が搬送装置10の搬送面10aから上方へ離間されることに伴って、第1センサ50が鋼材2を検知しなくなる。なお、本実施形態の重ね合せ装置1では、重ね合せ位置P2で載置面21aに載置される鋼材2は、フランジ前部FAのみが載置面21aに載置されているが、例えば、フランジFのフランジ後部FBを含む範囲が載置面21aに載置され、フランジ後部FBの一部が整列位置P1から後方側へ食み出されるようにしてもよい。
【0066】
上位置U1は、搬送装置10の搬送面10aから上方へフランジFの厚みDより大きい距離で離間した位置である。これにより、(STEP-07)では、フランジ後部FBの下面と搬送面10aの間に、次に搬送されてくる後の鋼材2のフランジ前部FAを差し込むことが可能な(即ち、厚みDより大きい)高さを有する隙間が形成される。
【0067】
以上が、1本目に搬送される鋼材2(前の鋼材2)に対する(STEP-07)までの重ね合せ装置1による重ね合せ動作である。
【0068】
次に、制御装置40が鋼材2の搬送本数をカウントする(STEP-08)。ここで説明した鋼材2は1本目であるため、(STEP-08)より前の時点では搬送本数のカウント数が「0」であり、(STEP-08)において、制御装置40によって、当該制御装置40に記憶されたカウント数が「1」に更新される。
【0069】
次に、制御装置40が、(STEP-08)で得た搬送本数のカウント数に基づいて、所定本数に達したか否かの判定を行う(STEP-09)。ここでいう「所定本数」は、ユーザーが1単位として束ねて出荷する鋼材2の本数に基づいて設定したものであり、その本数は重ね合せ装置1による鋼材2の重ね合せ数となる。
【0070】
ここで、制御装置40が、鋼材2の搬送本数が所定本数に達していない(「NO」)と判定した場合には、(STEP-02)の処理に戻る。一方、制御装置40が、鋼材2の搬送本数が所定本数に達した(「YES」)と判定した場合には、(STEP-10)の処理に進む。
【0071】
(STEP-9)から(STEP-02)に処理が戻されたとき、図7図8に示すように、制御装置40が、搬送装置10を「ON」とし、搬送装置10によって鋼材2を前方側に搬送する(STEP-02)。なお、図7は、重ね合せ装置1による2本目の鋼材2(後の鋼材2)と3本目以降の鋼材2の重ね合せ動作を示している。
【0072】
次に、上記説明のとおり、制御装置40が、第1センサ50が鋼材2を検知するまで搬送装置10による鋼材2の搬送を継続し、2本目の鋼材2を整列位置P1に位置決めして停止させる(STEP-02~04)。このとき、整列位置P1に位置決めされた2本目の(後の)鋼材2は、フランジ前部FAが、重ね合せ位置P2に位置決めされた1本目の(前の)鋼材2のフランジ後部FBの下方に差し込まれている。
【0073】
次に、制御装置40がスキッド21を下降させて、載置面21aを下位置L1に位置させる(STEP-05)。このとき、前後の鋼材2,2は、フランジF同士が重なった状態で、搬送面10aに載置される。具体的には、前の鋼材2のフランジ後部FBの下に、後の鋼材2のフランジ前部FAが位置した状態で、前後の鋼材2,2が重ねられている。
【0074】
次に、制御装置40が、搬送装置10を「ON」とし、重なった状態の鋼材2,2を搬送装置10によって前方側へ第1所定量Xだけ搬送した後、搬送装置10を「OFF」とする(STEP-06)。このとき鋼材2,2は、フランジF同士が重なった状態で、後の鋼材2を重ね合せ位置P2に位置決めして停止される。
【0075】
次に、制御装置40がスキッド21を上昇させて、載置面21aを上位置U1に位置させる(STEP-07)。このとき、後の鋼材2は、フランジFの下面が上位置U1に位置するとともに、フランジ後部FBが整列位置P1から後方側へ第2所定量Yだけ食み出している。そして、後の鋼材2のフランジ後部FBの下面と搬送面10aの間には、さらにその後の鋼材2のフランジ前部FAを差し込むことが可能な高さを有する隙間が形成されている。
【0076】
次に、図8に示すように、制御装置40が鋼材2の搬送本数をカウントし(STEP-08)、その後鋼材2の搬送本数が所定本数に達したか否かの判定を行う(STEP-09)。具体的には、ここで搬送されてきた鋼材2は2本目であるため、当初の搬送本数のカウント数は「1」であり、(STEP-08)において、制御装置40が、当該制御装置40に記憶されたカウント数を「2」に更新する。また、(STEP-09)において、制御装置40が、鋼材2の搬送本数が所定本数に達していない(「NO」)と判定した場合には、再び(STEP-02)の処理に戻る。つまり、目標とする所定本数が仮に「5」であれば、カウント数が「5」となるまで、(STEP-02)から(STEP-09)の処理を繰り返す。
【0077】
そして、(STEP-09)において、制御装置40が、鋼材2の搬送本数が所定本数に達した(「YES」)と判定するまで、3本目以降の鋼材2でも(STEP-02)から(STEP-09)までの動作(図7図8参照)を順次繰り返し実行する。これにより、所定本数の鋼材2を重ね合せることができる。このようにして重ね合せられた複数の鋼材2は、前の鋼材2のフランジ後部FBの下に、後の鋼材2のフランジ前部FAが重ねられた姿勢に整えられる。
【0078】
(STEP-09)において、制御装置40が、鋼材2の搬送本数が所定本数に達した(「YES」)と判定した場合には、(STEP-10)の処理に進む。
【0079】
次に、制御装置40がスキッド21を下降させて、載置面21aを下位置L1に位置させる(STEP-10)。
【0080】
次に、制御装置40が、搬送装置10を「ON」とし、搬送装置10によって鋼材2を前方側へ所定量Z(以下、第3所定量Zと称する)だけ搬送した後、搬送装置10を「OFF」とする(STEP-11)。
【0081】
第3所定量Zは、載置面21aで最も後方側に載置されている鋼材2が、スキッド21の前端より前方側となる位置まで搬送されるように設定された量(距離)であり、スキッド21の長さに第2所定量Yを加えた量よりも大きい。そして、第3所定量Zをこのように設定すれば、(STEP-11)を完了したとき、所定本数の鋼材2のうち最も後方側の鋼材2のフランジFの後端が、スキッド21の前端より前に位置する。
【0082】
このようにして、重ね合せ装置1によって、所定本数の鋼材2が重ね合せられた一塊の鋼材束9が生成される。鋼材束9は、図1に示す重ね合せ装置1の下流側に配置された図示しない装置(例えば、鋼材束9の反転装置や結束装置等)に向けて、搬送装置10によって搬出される。そして、重ね合せ装置1は、鋼材2が下流側の前記装置に受け継がれたことを第3センサ52によって検出したとき、制御装置40による一連の重ね合せ動作の制御を完了する。
【0083】
ユーザーは、重ね合せ装置1に、(STEP-1)から(STEP-11)までの一連の重ね合せ動作を所望の回数繰り返し実行させることで、所望の個数の鋼材束9を得ることができる。
【0084】
このように、重ね合せ装置1は、制御装置40によって、スキッド21の載置面21aが下位置L1にある状態で、搬送装置10によって、鋼材2を重ね合せ位置P2に搬送する動作(即ち、STEP-06)と、鋼材2が重ね合せ位置P2にある状態で、整列装置20によって、スキッド21の載置面21aを上位置U1に変位させる動作(即ち、STEP-07)と、スキッド21の載置面21aが上位置U1にある状態で、搬送装置10によって、後の鋼材2を整列位置P1に搬送した後、整列装置20によって、スキッド21の載置面21aを下位置L1に変位させる動作(即ち、STEP-02~05)と、を順次繰り返して実行する。このように構成された重ね合せ装置1によれば、前後の鋼材2,2をフランジFの一部同士を重ねた状態で搬送面10a上に容易に集積させることができる。また、この重ね合せ装置1によれば、上記各動作を繰り返す回数を変更することで、鋼材2を重ね合わせる本数を容易に変更することができる。
【0085】
[退避装置の動作]
図7に示すように、重ね合せ装置1では、(STEP-06)と(STEP-11)において、制御装置40が退避装置30を作動させて、上端面31eを作動位置U2に位置させる。
【0086】
重ね合せ装置1では、分離レバー31が作動位置U2に位置する状態で、搬送装置10が「ON」であれば、退避装置30の後方側から分離レバー31に到達した鋼材2は、分離レバー31に乗り上げて、上端面31eに載置された状態で停止する。このとき鋼材2は、搬送面10aから上方へ離間され、搬送装置10の搬送力を受けない状態となっている。また、上端面31eに載置された鋼材2は、分離レバー31に乗り上がってくる後続の鋼材2により押圧されて、傾斜面である上端面31eを上っていく。分離レバー31が作動位置U2にあるときに、退避装置30を通過する鋼材2は、このようにして搬送面10aより離間した位置に次々と退避される。
【0087】
重ね合せ装置1では、搬送装置10によって鋼材2を前方側へ第1所定量Xだけ搬送するときと第3所定量Zだけ搬送するときに、退避装置30を作動させて、整列位置P1より後方側に位置する鋼材2を待機させる。なお、図6に示した1本目の鋼材2を搬送するときの(STEP-06)においても、退避装置30は、制御装置40によってこれと同様に作動される。
【0088】
重ね合せ装置1では、(STEP-06)と(STEP-11)において上端面31e上に載置された鋼材2は、搬送面10aから離間されているため、搬送装置10の動作中に回転する各チェーン14と接触せず、搬送装置10によって傷つけられることがない。これにより、重ね合せ装置1は、フランジFを傷つけることなく鋼材2を搬送し、重ね合せることができる。なお、重ね合せ装置1の搬送方向上流側に鋼材2の切り出し装置や供給装置等の設備があり、これらの設備によって、重ね合せ装置1への鋼材2の供給間隔を調整することが可能である場合には、退避装置30を省略してもよい。
【0089】
なお、重ね合せ装置1では、(STEP-02~04)、(STEP-05)、(STEP-07)においては、制御装置40によって退避装置30を非作動とし、分離レバー31の上端面31eを非作動位置L2に位置させる。
【0090】
重ね合せ装置1では、分離レバー31が非作動位置L2に位置する状態で、搬送装置10が「ON」であれば、後方側から退避装置30に到達した鋼材2は、分離レバー31に接触することなく退避装置30を通過する。なお、図6に示した1本目の鋼材2の搬送時においても、(STEP-02~04)、(STEP-05)、(STEP-07)では、退避装置30は、制御装置40によってこれと同様に非作動される。
【0091】
以上より、本実施形態の重ね合せ装置1は、前記のとおり、ウェブWの一端のみにフランジFが形成された鋼材2を、フランジFを下にしてかつ当該フランジFの一部同士を重ねた状態で集積する装置である。重ね合せ装置1は、鋼材2の長手方向に直交する方向を搬送方向として、搬送面10aにフランジFを下にして鋼材2を載置して、搬送面10aに沿って搬送方向の後方側から前方側へ複数の鋼材2を搬送する搬送装置10を備えている。また、重ね合せ装置1は、搬送装置10の前後途中に配置され、鋼材2を載置可能な載置面21aを有するスキッド21を備え、載置面21aが搬送装置10の搬送面10a以下となる下位置L1と、載置面21aがフランジFの厚みDより大きい距離で搬送面10aから上方に離間した上位置U1と、の間でスキッド21を変位させる整列装置20を備えている。さらに、重ね合せ装置1は、搬送装置10と整列装置20を動作させて鋼材2を重ねる制御を行う制御装置40を備えている。制御装置40は、スキッド21が下位置L1から上位置U1に変位すると、鋼材2のフランジ後部FBが載置面21aより後方側へ食み出した状態で載置面21aに鋼材2が載置される位置である重ね合せ位置P2に、鋼材2を搬送して位置させる制御と、スキッド21が上位置U1に変位して、重ね合せ位置P2に位置していた鋼材2が、フランジ後部FBを後方側へ食み出した状態で載置面21aに載置されている状態で、当該フランジ後部FBの下方となる位置である整列位置P1に、当該鋼材2の直後に搬送される後の鋼材2を搬送して位置させる制御と、を実行する。
【0092】
そして、本実施形態の重ね合せ装置1は、上記のような構成により、重ね合せ位置P2に鋼材2を搬送しスキッド21を上位置U1に変位させ、そのスキッド21の載置面21aに載っている前の鋼材2のフランジ後部FBの下方に、後の鋼材2のフランジ前部FAを位置させることができる。その状態で、スキッド21を下位置L1に変位させると、前と後の鋼材2,2は、両者のフランジFの一部同士を重ねた状態で搬送面10a上に集積される。このような重ね合せ装置1は、搬送装置10の周囲に整列装置20を配置するだけの簡易な構成を有している。また、重ね合せ装置1は、整列装置20に備えられたスキッド21を交換することで、鋼材2の重ね合せ数や仕様の変更に容易に対応することができる。
【0093】
なお、図1図5に示す搬送装置10、整列装置20、退避装置30の各構成は例示であって、その他の構成によるものであってもよい。搬送装置10は、例えば、チェーンを用いないコンベア(例えばベルトコンベア)で構成してもよく、さらにその他の構成によるものであってもよい。また、整列装置20は、リンク機構22を用いずにスキッド21を上下変位可能に構成したものであってもよく、例えば、分離レバー31のような軸回りに回動されるレバーでスキッドを構成してもよい。さらに、退避装置30は、例えば、分離レバー31を軸回りに回動させる構成ではなく、例えば、スキッド21と同じように、リンク機構等を用いて分離レバーを上下に変位させる構成としてもよい。
【0094】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明のフランジ付き鋼材の重ね合せ装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、整列装置20や退避装置30を構成する各種のアクチュエータは、図示した構成以外であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1:重ね合せ装置 2:鋼材 10:搬送装置 10a:搬送面 20:整列装置
21:スキッド 21a:載置面 21b:当接面 22:リンク機構
23:駆動装置 30:退避装置 31:分離レバー 31e:上端面
40:制御装置 50:センサ P1:整列位置 P2:重ね合せ位置
U1:上位置 L1:下位置 U2:作動位置 L2:非作動位置
F:フランジ FA:フランジ後部 W:ウェブ
図1
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