(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】自動縫製機及び縫製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
D05B 35/02 20060101AFI20240619BHJP
D05B 39/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
D05B35/02
D05B39/00
(21)【出願番号】P 2021016572
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592026325
【氏名又は名称】東海金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂紀
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-509757(JP,A)
【文献】特開平06-054974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1生地と第2生地とを、互いの縁部を重ね合わせて重ね合わせ部を形成した状態で保持するための保持具と、
前記保持具に保持された両生地の前記重ね合わせ部を縫製する縫製装置と、
を備える自動縫製機であって、
前記保持具は、互いに交差する角度をなして隣接する第1面及び第2面を有し、
前記第1面は、前記第1生地の縁部が前記第1面と前記第2面との境界部からはみ出した状態で、前記第1生地が配置される面であり、
前記第2面は、前記第2生地の縁部が前記境界部からはみ出して前記第1生地の縁部と重ね合わせられることにより前記重ね合わせ部が形成された状態で、前記第2生地が配置される面であり、
前記保持具には、前記第1面において開口する複数の第1開口部と、前記第2面において開口する複数の第2開口部とが設けられており、
前記第1面に前記第1生地が配置され、前記第2面に前記第2生地が配置されることで前記重ね合わせ部が形成された前記両生地のセット状態において、前記第1生地を前記複数の第1開口部を介して吸引することにより前記第1生地を前記第1面に保持させるとともに、前記第2生地を前記複数の第2開口部を介して吸引することにより前記第2生地を前記第2面に保持させる吸引装置と、
前記吸引装置の吸引による前記両生地の保持状態で、前記重ね合わせ部が前記縫製装置において縫製が行われる所定の縫製位置に位置するように、前記保持具を移動させる移動装置と、
を備
え、
前記複数の第1開口部には、前記第1面と前記第2面との境界部寄りの位置で前記境界部に沿って並ぶ複数の境界側第1開口部が含まれており、
前記複数の第2開口部には、前記第1面と前記第2面との境界部寄りの位置で前記境界部に沿って並ぶ複数の境界側第2開口部が含まれており、
前記吸引装置により前記複数の境界側第1開口部及び前記複数の境界側第2開口部を介して前記両生地が吸引されることにより、前記重ね合わせ部が、前記第1面及び前記第2面に対して傾いた状態とされ、
前記移動装置は、前記重ね合わせ部が前記縫製位置において縫製針の移動方向と直交する向きとなるように、前記保持具を斜めにする、自動縫製機。
【請求項2】
前記第1面は、平面からなり、
前記第2面は、前記第1面の周縁から前記第1面が向く側とは反対側に延び、環状をなす環状面からなり、
前記第1生地として、前記第1面よりも大きい平面状の生地が用いられ、
前記第2生地として、前記第2面と周囲長さが略同じである環状の生地が用いられ、
前記第1面は、前記第1生地の周縁部が前記第1面と前記第2面との境界部からはみ出した状態で、前記第1生地が配置される面であり、
前記第2面は、前記第2生地の開口周縁部が前記第1生地の周縁部に重ね合わせられることにより環状の前記重ね合わせ部が形成された状態で、前記第2生地が配置される面である、請求項
1に記載の自動縫製機。
【請求項3】
前記移動装置は、前記縫製装置による縫製の際に、前記重ね合わせ部を送る送り機構を備え、
前記送り機構は、前記保持具を回転させる機構である、請求項
2に記載の自動縫製機。
【請求項4】
前記吸引装置は、前記両生地を前記保持具に前記セットするセット作業時に、前記複数の第1開口部及び前記複数の第2開口部を通じた吸引が可能となっており、
前記複数の境界側第1開口部は、前記第1面と前記第2面との境界部全域に沿って設けられ、
前記複数の第1開口部には、前記複数の境界側第1開口部よりも内側に設けられた内側第1開口部が含まれている、請求項
2又は
3に記載の自動縫製機。
【請求項5】
前記保持具には、前記第2面から突出するとともに、前記第2生地を前記第1面の側から前記第2面に配置する際に、前記第2生地と当たることで前記第2生地を位置決めする位置決め部が設けられ、
前記位置決め部は、前記第2生地の開口周縁部が前記第1面と前記第2面との境界部からはみ出した状態で前記第2生地を位置決めするものである、請求項
2乃至
4のいずれか一項に記載の自動縫製機。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の自動縫製機により前記第1生地及び前記第2生地の前記重ね合わせ部を縫製することで縫製品を製造する縫製品の製造方法であって、
前記第1面に前記第1生地を配置し、前記第2面に前記第2生地を配置するとともに、前記両生地の縁部を重ね合わせることにより前記重ね合わせ部を形成する生地セット工程と、
前記生地セット工程の後、前記吸引装置により前記両生地を吸引することにより、前記第1生地を前記第1面に保持させ前記第2生地を前記第2面に保持させる保持工程と、
前記保持工程による前記両生地の保持状態で、前記重ね合わせ部が前記縫製位置に位置するように前記保持具を前記移動装置により移動させる移動工程と、
前記重ね合わせ部を前記縫製位置において前記縫製装置により縫製する縫製工程と、
を備える、縫製品の製造方法。
【請求項7】
前記生地セット工程では、前記第1面に配置した前記第1生地と前記第2面に配置した前記第2生地とを前記吸引装置により吸引しながら前記重ね合わせ部を形成し、
前記生地セット工程の際の前記吸引装置の吸引力は、前記保持工程の際の前記吸引装置の吸引力よりも弱くなっている、請求項
6に記載の縫製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動縫製機及び自動縫製機により製造される縫製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、縫製品を製造する際に、製造効率の向上を図るため、自動縫製機が用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、自動縫製機として、2枚の生地が重ねて載置される作業台と、2枚の生地の縫製を行うミシンと、作業台に沿ってミシンを搬送する搬送機構とを備えたものが開示されている。特許文献1の自動縫製機によれば、搬送機構によりミシンを搬送しながらミシンにより2枚の生地を自動縫製することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、縫製品には、2枚の生地が所定の角度をなして縫製された立体形状のものがある。しかしながら、上記特許文献1の自動縫製機は、2枚の生地を重ねた状態で縫製を行うものであり、製造される縫製品として平面形状のものしか想定していない。そのため、特許文献1の自動縫製機では、立体形状の縫製品を製造することが困難であると考えられる。
【0005】
また、立体形状の縫製品を手作業で製造する場合には、立体的に配置されることになる2枚の生地を縫製し易いように一部重ねた状態に変形させて縫製を行うことになると考えられる。しかしながら、このような縫製作業は比較的難易度の高い作業であり、縫製に時間がかかることが考えられ、また縫製品質の確保が難しいと考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、立体形状の縫製品を好適に製造することができる自動縫製機及び縫製品の製造方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の自動縫製機は、
第1生地と第2生地とを、互いの縁部を重ね合わせて重ね合わせ部を形成した状態で保持するための保持具と、
前記保持具に保持された両生地の前記重ね合わせ部を縫製する縫製装置と、
を備える自動縫製機であって、
前記保持具は、互いに交差する角度をなして隣接する第1面及び第2面を有し、
前記第1面は、前記第1生地の縁部が前記第1面と前記第2面との境界部からはみ出した状態で、前記第1生地が配置される面であり、
前記第2面は、前記第2生地の縁部が前記境界部からはみ出して前記第1生地の縁部と重ね合わせられることにより前記重ね合わせ部が形成された状態で、前記第2生地が配置される面であり、
前記保持具には、前記第1面において開口する複数の第1開口部と、前記第2面において開口する複数の第2開口部とが設けられており、
前記第1面に前記第1生地が配置され、前記第2面に前記第2生地が配置されることで前記重ね合わせ部が形成された前記両生地のセット状態において、前記第1生地を前記複数の第1開口部を介して吸引することにより前記第1生地を前記第1面に保持させるとともに、前記第2生地を前記複数の第2開口部を介して吸引することにより前記第2生地を前記第2面に保持させる吸引装置と、
前記吸引装置の吸引による前記両生地の保持状態で、前記重ね合わせ部が前記縫製装置において縫製が行われる所定の縫製位置に位置するように、前記保持具を移動させる移動装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動縫製機によれば、保持具の第1面に第1生地が配置され、第2面に第2生地が配置される。そして、両生地の縁部が第1面と第2面との境界部からはみ出した状態で重ね合わせられ重ね合わせ部が形成されることにより、両生地が保持具にセットされる。保持具に対して両生地がセットされた状態で、両生地が第1開口部及び第2開口部を介して吸引装置により吸引されると、第1生地が第1面に保持され、第2生地が第2面に保持される。この場合、第1面と第2面とは互いに交差する角度をなして隣接しているため、両生地は所定の角度をなして立体的に保持される。
【0009】
かかる両生地の保持状態で、両生地の重ね合わせ部が縫製装置の縫製位置に位置するように、保持具が移動装置により移動される。そして、重ね合わせ部が縫製位置において縫製装置により縫製される。この場合、第1生地と第2生地とを立体的に保持した状態で、両生地を自動縫製することができる。そのため、両生地を迅速かつ高品質に縫製することができる。これにより、立体形状の縫製品を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】保持具を示す斜視図であり、第1生地及び第2生地を併せて示している。
【
図3】保持具及びそれと一体に設けられた部材を示す側面図。
【
図4】保持具及びそれと一体に設けられた部材を示す縦断面図。
【
図5】第1生地と第2生地とを縫製する際の流れを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態の自動縫製機について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
はじめに、本実施形態の自動縫製機10は、椅子の座部に用いられる縫製品としての座部カバーを、2つの生地K1,K2(
図2参照)を縫い合わせて形成する際に用いられる。座部カバーを構成する2つの生地K1,K2には、座部の座面を形成する第1生地K1と、座部の側面(周面)を形成する第2生地K2とが含まれている。第1生地K1は平面状に形成され、円形状をなしている。第2生地K2は、帯状の生地の両端部があらかじめ縫い合わせられることにより円環状(円筒状)に形成されている。なお、第2生地K2は、マチとも呼ばれる。また、各生地K1,K2の素材はビニルレザーとされている。
【0013】
続いて、自動縫製機10の概略について
図1のブロック図に基づき説明する。
【0014】
図1に示すように、自動縫製機10は、保持具11と、縫製装置12と、吸引装置13と、移動装置14と、制御部15とを備える。保持具11は、第1生地K1及び第2生地K2を保持するためのものである。保持具11の具体的構成については後述する。
【0015】
縫製装置12は、保持具11に保持された第1生地K1及び第2生地K2を縫製するものである。縫製装置12はミシンからなり、ミシン針12a(
図5(b)参照)と、ミシン針12aの下方に設けられた針板12b(
図5(b)参照)と、ミシン針12aを上下動させる駆動部(図示略)とを有して構成されている。縫製装置12では、針板12b上に送られる生地をミシン針12aを上下動させることにより縫製を行う。したがって、針板12b上におけるミシン針12aが上下動する箇所が、縫製装置12において縫製が行われる縫製位置12c(
図5(b)参照)となっている。なお、ミシン針12aが縫製針に相当する。
【0016】
吸引装置13は、第1生地K1及び第2生地K2を保持具11を介して吸引することにより、両生地K1,K2を保持具11に保持させるものである。吸引装置13は、真空ポンプからなり、吸引力の調整が可能となっている。本実施形態では、吸引装置13の吸引モードとして、吸引力の弱い弱モードと、吸引力の強い強モードとを有している。
【0017】
移動装置14は、保持具11を移動させることにより、保持具11に保持された各生地K1,K2を縫製装置12に送るものである。移動装置14は、垂直多関節型の多軸ロボットからなる。移動装置14は、保持具11が連結される可動式のアーム17(
図3や
図5(b)参照)を有しており、そのアーム17を動作させることにより保持具11を移動させる。
【0018】
制御部15は、縫製装置12、吸引装置13及び移動装置14をそれぞれ制御するものである。制御部15は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部15は、予め設定された自動縫製処理のプログラムに基づき、各装置12~14の動作を制御する。
【0019】
次に、保持具11の構成について
図2~
図4に基づき説明する。
【0020】
図2~
図4に示すように、保持具11は、扁平の円形形状とされている。保持具11は、上下に離間しかつ対向して設けられた円板状の上板部21及び下板部22と、それら各板部21,22に跨って設けられた円筒状の側板部23とを有する。各板部21~23はいずれも金属製であり、溶接により互いに接合されている。上板部21の外径は側板部23の外径と同じとなっている。側板部23は上板部21の周縁部から下方に延びている。下板部22の外径は側板部23の外径よりも大きくなっている。下板部22の外周側は側板部23から突出してフランジ部22aとなっている。また、保持具11には、各板部21~23により囲まれた内側空間25が形成されている。なお、フランジ部22aが位置決め部に相当する。
【0021】
上板部21の上面26、すなわち保持具11の上面26は、第1生地K1が配置される面となっている。上面26は、第1生地K1と同じ形状つまり円形状の平面となっている。上面26の大きさは第1生地K1の大きさよりも小さくされており、換言すると上面26の外径は第1生地K1の外径よりも小さくなっている。なお、上面26が第1面に相当する。
【0022】
側板部23の外面27、すなわち保持具11の側面27は、第2生地K2が配置される面となっている。側面27は上面26の周縁から下方(第1面が向く側とは反対側に相当)に延びており、詳しくは上面26の周縁全域から下方に延びる円環状(円筒状)の曲面となっている。この場合、側面27は上面26と隣接(連続)しており、上面26に対して直角をなしている。また、側面27の周囲長さは第2生地K2の周囲長さと略同じとされており、換言すると側面27の径は第2生地K2の径と略同じとされている。なお、側面27が第2面に相当する。
【0023】
上板部21には、上板部21を厚み方向に貫通する複数の孔部28が形成されている。各孔部28は、上面26に配置される第1生地K1を吸引する際に用いられる吸引用の孔部であり、円形状をなしている。各孔部28は、上面26において開口され、内側空間25に通じている。なお、各孔部28が第1開口部に相当する。
【0024】
各孔部28には、上面26と側面27との境界部に沿って設けられた複数の孔部28aと、各孔部28aよりも内側(内周側)に設けられた複数の孔部28bとが含まれている。各孔部28aは、上面26と側面27との境界部寄り(境界部付近)の位置で、当該境界部全域に沿って所定の間隔(詳しくは等間隔)で並んでいる。また、各孔部28bは、上面26の直径方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)で並んでいる。この場合、各孔部28bは、上面26の中心部を通る一直線上に並んでいる。また、各孔部28bは、その孔径(換言すると開口面積)が各孔部28aよりも小さくされている。なお、各孔部28aが境界側第1開口部に相当し、各孔部28bが内側第1開口部に相当する。
【0025】
側板部23には、側板部23を厚み方向に貫通する複数の孔部29が形成されている。これらの孔部29は、側面27に配置される第2生地K2を吸引する際に用いられる吸引用の孔部であり、円形状をなしている。各孔部29は、側面27において開口され、内側空間25に通じている。なお、各孔部29が第2開口部及び境界側第2開口部に相当する。
【0026】
各孔部29は、上面26と側面27との境界部寄り(境界部付近)の位置で、当該境界部に沿って設けられている。詳しくは、各孔部29は、当該境界部全域に沿って所定の間隔(詳しくは等間隔)で並んでいる。各孔部29は、当該境界部の延びる方向において、いずれも隣り合う孔部28aの中間位置に位置している。この場合、上記境界部の延びる方向において、孔部28aと孔部29とが交互に位置するように配置されている。また、各孔部29は、その孔径(換言すると開口面積)が各孔部28aと同じとされている。
【0027】
保持具11の下板部22には、プレート31を介して連結具32が固定されている。連結具32は、移動装置14のアーム17に着脱可能に連結されるものである。保持具11は、この連結具32を介してアーム17に着脱可能に連結されるようになっている。なお、連結具32をアーム17に着脱するための構成としては、適宜、公知の構成を採用することができる。
【0028】
プレート31は、下板部22の下面に重ねられ、下板部22に固定されている。連結具32は、円柱状に形成され、軸線方向の一端部がプレート31に固定されている。連結具32は、その中心軸が保持具11の中心軸と同一直線状に位置するよう配置されている。連結具32の軸線方向の他端部には、連結具32の外周面から突出する円環状のフランジ部33が設けられている。
【0029】
連結具32の外周側には、円筒状の回転体35が設けられている。回転体35は、その内側に連結具32を挿通した状態で配設されている。回転体35は、連結具32のフランジ部33とプレート31との間に配置されている。回転体35の内周面と連結具32の外周面とは互いに離間されている。回転体35と連結具32との間には円環状の軸受部36が設けられている。軸受部36は、回転体35の軸線方向の両側に一対配置されている。回転体35は、これらの軸受部36を介して連結具32に取り付けられている。これにより、回転体35は、連結具32の外周方向に回転可能となっている。
【0030】
続いて、吸引装置13により保持具11の孔部28,29に吸引力を作用させるための吸引用の流路について説明する。
【0031】
回転体35には、L字状の継手部材37を介して吸引用のチューブ38が接続されている。チューブ38の一端部は継手部材37に接続され、他端部は吸引装置13に接続されている。継手部材37の内部は、回転体35の内周面と連結具32の外周面との間の空間部41に連通されている。空間部41は、各軸受部36の間に形成され、円環状をなしている。また、各軸受部36により回転体35と連結具32との間の気密性が確保されている。
【0032】
連結具32には、軸線方向に延びる空気通路43が形成されている。空気通路43は、保持具11側に開放された凹状の通路となっており、保持具11の内側空間25と連通されている。詳しくは、空気通路43は、プレート31に設けられた孔部44と、保持具11の下板部22に設けられた孔部45とを介して内側空間25に連通されている。
【0033】
連結具32において空気通路43を囲む周壁部46には、空気通路43と空間部41とを連通する連通孔47が形成されている。連通孔47は、連結具32の周方向に複数設けられている。これにより、保持具11の内側空間25は、空気通路43と空間部41とを介してチューブ38内と連通している。この場合、それら連通する内側空間25、空気通路43、空間部41及びチューブ38内を含んで吸引用の流路が構成されている。そして、その吸引用の流路を介して吸引装置13により保持具11の各孔部28,29に吸引力を作用させることが可能となっている。
【0034】
次に、自動縫製機10により第1生地K1と第2生地K2とを縫製する際の流れについて
図5を参照しながら説明する。
【0035】
まず、
図5(a)に示すように、第1生地K1と第2生地K2とを保持具11にセットする生地セット工程を行う。生地セット工程では、作業者が手作業により各生地K1,K2を保持具11にセットするセット作業を行う。本実施形態では、このセット作業を、保持具11を移動装置14のアーム17から取り外した状態で行う。詳しくは、保持具11に固定された連結具32をアーム17から取り外した状態で行う。セット作業は、保持具11をセット作業用の支持台51の上に載置した状態で行う。例えば、支持台51には、連結具32及び回転体35を挿通する切り欠き部が設けられ、その切り欠き部に連結具32及び回転体35を挿通した状態で保持具11がプレート31を介して支持台51上に載置されるようになっている。なお、セット作業に先立ち、第2生地K2はあらかじめ裏返しの状態とされ、その表面が内側に向けられている。
【0036】
生地セット工程では、まず生地配置工程を行い、その後重ね合わせ工程を行う。生地配置工程では、保持具11の上面26に第1生地K1を配置し、保持具11の側面27に第2生地K2を配置する。第1生地K1については、その表面を保持具11の上面26に向けた状態で当該上面26に載置する。この場合、第1生地K1の周縁部全域が上面26からはみ出すようにして第1生地K1を上面26に載置する。
【0037】
また、第2生地K2については、保持具11の側面27を囲むようにして配置する。この場合、第2生地K2の表面(内面)が側面27を向いた状態とされる。第2生地K2は、保持具11の上方から、つまり保持具11の上面26側から側面27に配置される。この配置の際、第2生地K2の下端部を保持具11のフランジ部22aに当て、その状態で第2生地K2を配置する。したがって、第2生地K2は、フランジ部22aの上に載置された状態で配置される。かかる第2生地K2の配置により、第2生地K2の上端側の開口周縁部が保持具11の側面27よりも上方にはみ出した状態とされる。
【0038】
このように、生地セット工程では、第1生地K1の周縁部及び第2生地K2の開口周縁部がそれぞれ上面26と側面27との境界部からはみ出した状態で、両生地K1,K2が保持具11にセットされる。
【0039】
重ね合わせ工程では、上面26と側面27との境界部からはみ出した第1生地K1の周縁部及び第2生地K2の開口周縁部を、互いに重ね合わせることにより重ね合わせ部53を形成する。重ね合わせ部53は、後述する縫製処理の際に縫製装置12により縫製される部分となっている。重ね合わせ工程では、第1生地K1の周縁部の表面(下面)と第2生地K2の開口周縁部の表面(内面)とを向き合わせた状態で、それら各周縁部を重ね合わせることにより重ね合わせ部53を形成する。また、この際、両生地K1,K2の周縁部全域において重ね合わせ部53を形成する。これにより、重ね合わせ部53が円環状に形成される。
【0040】
重ね合わせ工程では、吸引装置13を弱モードで駆動させることにより、保持具11の各孔部28,29に弱い吸引力を作用させる。これにより、その吸引力によって、第1生地K1が保持具11の上面26に仮固定され、第2生地K2が保持具11の側面27に仮固定される。また、重ね合わせ工程では、上面26と側面27との境界部寄りに配置された各孔部28a,29に作用する吸引力により、重ね合わせ部53が保持具11の各面26,27に対して傾いた状態とされる。詳しくは、重ね合わせ部53が、保持具11の各面26,27とそれぞれ鈍角をなすように、各面26,27に対して傾いた状態とされる。この場合、重ね合わせ部53と上面26とがなす角度、及び重ね合わせ部53と側面27とがなす角度は、例えば110°~160°の範囲とされる。
【0041】
また、重ね合わせ工程の際に、吸引装置13の弱モード運転により孔部28,29に発生する(弱い)吸引力は、仮固定された生地K1,K2を位置調整することが可能な程度の大きさとなっている。このため、重ね合わせ部53を形成する際に、上面26における第1生地K1の配置状態(位置や向き等)や、側面27における第2生地K2の配置状態(位置や向き等)を調整(微調整)する必要が生じた場合には、かかる調整を行うことが可能となっている。
【0042】
生地セット工程の後、保持具11にセットされた両生地K1,K2を自動縫製機10により自動縫製する自動縫製処理を行う。自動縫製処理は、制御部15によって行われる。すなわち、自動縫製処理は、制御部15が、縫製装置12、吸引装置13及び移動装置14を動作制御することにより行われる。以下、自動縫製処理について説明する。
【0043】
自動縫製処理ではまず、吸引装置13を強モードで駆動させることにより、保持具11の各孔部28,29に強い吸引力を作用させる。これにより、その吸引力により、第1生地K1が保持具11の上面26に吸引保持され、第2生地K2が保持具11の側面27に吸引保持される(保持工程に相当)。この場合の吸引力は、弱モードにおける吸引力よりも十分に大きくされている。そのため、両生地K1,K2はそれぞれ各面26,27に対して強固に吸引固定される。
【0044】
次に、移動装置14のアーム17を動作させることにより、アーム17の先端部に連結具32を連結する。これにより、アーム17に保持具11が連結具32を介して連結される。
【0045】
次に、
図5(b)に示すように、両生地K1,K2を吸引装置13により保持具11に吸引保持した状態で、移動装置14のアーム17を動作させることにより、保持具11を移動させる。この場合、両生地K1,K2の重ね合わせ部53が縫製装置12の縫製位置12cに位置するように、保持具11を移動させる(移動工程に相当)。また、この際、重ね合わせ部53が縫製位置12cにおいて水平の向きとなるように、つまり、重ね合わせ部53が縫製位置12cにおいてミシン針12aの移動方向と直交する向きとなるように、保持具11を斜めに傾ける。
【0046】
続いて、重ね合わせ部53を縫製位置12cにおいて縫製装置12により縫製する(縫製工程に相当)。この場合、重ね合わせ部53を移動装置14により送りながら縫製を行う。移動装置14は、アーム17を回転させることにより、保持具11をその中心軸を中心として回転させることで、重ね合わせ部53を送る。したがって、移動装置14は、保持具11を回転させることで重ね合わせ部53を送る送り機構を有しているといえる。また、この場合、保持具11は斜めに傾いたまま回転移動される。
【0047】
上記のように重ね合わせ部53を送りながら、重ね合わせ部53の全周が縫製されると、縫製装置12による縫製が終了する。その後、移動装置14のアーム17を動作させ保持具11を支持台51上に移動させる。これにより、第1生地K1と第2生地K2とが縫製された縫製品としての座部カバーが製造され、一連の自動縫製処理が終了する。
【0048】
その後、座部カバーを保持具11から取り外し、座部カバーの表面が外側を向くように座部カバーを裏返す。座部カバーは金属製又は樹脂製の座部本体に被せられ、それにより座部が製造される。
【0049】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0050】
(1)自動縫製機10では、保持具11の上面26に第1生地K1が配置され、側面27に第2生地K2が配置される。そして、両生地K1,K2の縁部が上面26と側面27との境界部からはみ出した状態で重ね合わせられ重ね合わせ部53が形成されることにより、両生地K1,K2が保持具11にセットされる。保持具11に対して両生地K1,K2がセットされた状態で、両生地K1,K2が各孔部28及び各孔部29を介して吸引装置13により吸引されると、第1生地K1が上面26に保持され、第2生地K2が側面27に保持される。この場合、上面26と側面27とは直角をなして隣接しているため、両生地K1,K2は直角をなして立体的に保持される。
【0051】
かかる両生地K1,K2の保持状態で、両生地K1,K2の重ね合わせ部53が縫製装置12の縫製位置12cに位置するように、保持具11が移動装置14により移動される。そして、重ね合わせ部53が縫製位置12cにおいて縫製装置12により縫製される。この場合、第1生地K1と第2生地K2とを立体的に保持した状態で、両生地K1,K2を自動で縫製することができる。そのため、両生地K1,K2を迅速かつ高品質に縫製することができる。これにより、立体形状の縫製品(座部カバー)を好適に製造することができる。
【0052】
(2)孔部28aを、上面26と側面27との境界部寄りの位置で当該境界部に沿って並ぶように複数設けた。また、孔部29を、上面26と側面27との境界部寄りの位置で当該境界部に沿って並ぶように複数設けた。この場合、第1生地K1及び第2生地K2をそれぞれ重ね合わせ部53付近で吸引することができるため、重ね合わせ部53を安定して保持することができる。
【0053】
また、孔部28a,29を介した吸引により重ね合わせ部53が上面26及び側面27に対してそれぞれ傾いた状態とされるため、重ね合わせ部53の縫製により生じるしわを両生地K1,K2に分散させることができる。これにより、両生地K1,K2それぞれにおけるしわの発生を抑制することができる。また、移動装置14により保持具11を移動させる際には保持具11を斜めにすることで、重ね合わせ部53を縫製位置12cにおいてミシン針12aの動作方向(上下方向)と直交する向きとなるようにした。これにより、重ね合わせ部53が傾いた状態とされる構成にあっても、重ね合わせ部53の縫製を好適に行うことができる。
【0054】
(3)平面状の第1生地K1と環状の第2生地K2とを縫製する場合、第1生地K1の周縁部と第2生地K2の開口周縁部とを互いに重ね合わせ、その重ね合わせ部を環状に縫製することになる。ここで、かかる縫製を手作業で行う場合、品質を確保しながら迅速に縫製するのが特に難しいと考えられる。そこで、上記の実施形態では、かかる縫製を行うにあたって自動縫製機10を用いている。具体的には、第1生地K1が配置される上面26を平面とし、第2生地K2が配置される側面27を上面26の周縁から下方に延び環状をなす環状面とした。この場合、平面状の第1生地K1と環状の第2生地K2とを立体的に保持した状態で自動縫製することができる。そのため、これら両生地K1,K2を好適に縫製することが可能となる。
【0055】
(4)移動装置14に、縫製装置12による縫製の際に、保持具11を回転させることにより重ね合わせ部53を送る送り機構を設けた。この場合、保持具11に生地K1,K2をセットした後、重ね合わせ部53が縫製位置12cに位置するように保持具11を移動させる移動装置14を、重ね合わせ部53の送り機構としても用いることができる。そのため、かかる送り機構を別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
【0056】
(5)自動縫製機10では、両生地K1,K2を保持具11にセットするセット作業時(生地セット工程時)に吸引装置13による吸引が可能となっている。そのため、両生地K1,K2を吸引により保持具11に仮固定しながら生地のセット作業を行うことができる。これにより、重ね合わせ部53を形成する作業をし易くすることができる。
【0057】
また、重ね合わせ部53を形成する際には、保持具11の各面26,27における両生地K1,K2の配置状態(位置や向き等)を調整しながら重ね合わせ部53を形成することになると考えられる。その点、生地セット工程の際には、吸引装置13の吸引力が保持工程の際の吸引力よりも弱くなっているため、両生地K1,K2を仮固定しながらも、両生地K1,K2の配置状態を調整することができる。
【0058】
(6)ところで、平面状の第1生地K1と環状の第2生地K2との各周縁部を重ね合わせることにより、重ね合わせ部53を環状に形成するにあたっては、上面26における第1生地K1の配置状態(配置位置等)によって、重ね合わせ部53が周方向において不均一に形成されるおそれがある。このため、第1生地K1の配置が重要になると考えられる。そこで、吸引用の孔部28として、上面26と側面27との境界部寄りに設けた複数の孔部28aに加え、これらの孔部28aよりも内側に複数の孔部28bを設けた。この場合、第1生地K1を上面26に仮固定する際、まず第1生地K1の内側部分を孔部28aを通じた吸引により仮固定することで内側部分の位置決めを行い、その後、第1生地K1の外側部分を手で押し広げながら外側部分を孔部28bを通じた吸引により仮固定することができる。これにより、第1生地K1を比較的容易に正規の配置状態で仮固定することができる。
【0059】
(7)保持具11に、その側面27から突出するフランジ部22aを設け、第2生地K2を上面26側から側面27に配置する際に、第2生地K2をフランジ部22aに当てて位置決めするようにした。具体的には、第2生地K2の開口周縁部が上面26と側面27との境界部からはみ出した状態で位置決めするようにした。この場合、第2生地K2を側面27に配置する際には、第2生地K2をフランジ部22aに当てて配置するだけで、簡単に開口周縁部をはみ出した状態で第2生地K2を正規の位置に配置することができる。
【0060】
(8)保持具11の上面26と側面27との境界部が延びる方向において、各孔部29をそれぞれ、隣り合う孔部28aの中間位置に位置するよう配置した。この場合、重ね合わせ部53に沿って両生地K1,K2を吸引するにあたり、上記境界部の延びる方向において、両生地K1,K2のいずれもが吸引されない範囲を小さくすることができる。そのため、吸引されない範囲が大きくなることで、重ね合わせ部53が開いてしまうのを抑制することができる。
【0061】
(9)保持具11の回転中心軸を中心として保持具11に対し回転可能な回転体35を当該保持具11と一体に設けた。回転体35には、吸引装置13に接続された吸引用のチューブ38を接続し、チューブ38内を回転体35の内側に設けた空間部41を介して保持具11の各孔部28,29と連通させた。この場合、吸引装置13により、チューブ38内と回転体35の空間部41とを介して各孔部28,29に吸引力を作用させることができる。また、かかる構成では、保持具11を回転させて両生地K1,K2を縫製する際、回転体35が保持具11の回転に伴い回転するのを回避できる。そのため、保持具11の回転に伴い、吸引用のチューブ38がねじれる等の不都合を回避することが可能となる。
【0062】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0063】
(a)上記実施形態では、保持具11の上面26において開口する複数の孔部28b(第1内側開口部に相当)を上面26の直径方向に沿って並ぶように設けたが、これらの孔部28bを例えば各孔部28aよりも内側で上面26の円周方向に並ぶように設ける等、他の並び方で設けてもよい。また、これらの孔部28bを設けないようにしてもよい。
【0064】
(b)上記実施形態では、保持具11の側面27において開口する吸引用の孔部29(第2開口部に相当)を上面26と側面27との境界部に沿って設けたが、これに加えて、これらの孔部29よりも下方に、つまり反境界部側に吸引用の孔部29を設けるようにしてもよい。
【0065】
(c)自動縫製機10により縫製を行う生地K1,K2の形状は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば、第1生地K1が楕円形の平面状であり、第2生地K2が楕円環状であってもよい。その場合、それらの生地K1,K2の形状に合わせた保持具11を用意すればよい。つまり、保持具11の上面26を第1生地K1の形状に合わせた楕円形状とし、側面27を第2生地K2の形状に合わせた楕円環状とすればよい。
【0066】
また、保持具11を楕円形状とした場合、保持具11の上面26と側面27との境界部に、曲率が大きい部分と、曲率が小さい部分とが存在することになる。そこで、上記境界部に沿って並ぶ吸引用の孔部28aのピッチを境界部の曲率に応じて変えるようにしてもよい。例えば、曲率が大きい部分では、曲率が小さい部分よりも孔部28aのピッチを小さくすることが考えられる。このようにすることで、曲率が大きい部分であっても、第1生地K1の吸引力を高めることにより、重ね合わせ部53を安定した状態で形成することができる。
【0067】
(d)縫製対象となる生地K1,K2の組み合わせは、必ずしも平面状の生地と環状の生地との組み合わせである必要はない。例えば、第1生地K1が半円形の平面状であって、第2生地K2が半円環状をなすものであってもよい。この場合、保持具として、第1生地K1が配置される半円形状の平面(第1面)と、第2生地K2が配置される半円環状の面(第2面)とを有するものを用いればよい。
【0068】
また、各生地K1,K2がいずれも平面状の生地であってもよい。すなわち、各生地K1,K2が、互いに交差する角度をなして縫製される平面状の生地であってもよい。この場合、保持具として、上記の角度をなして隣接する2つの平面(第1面、第2面)を有したものを用いればよい。そして、2つの平面のうち一方に第1生地K1を配置し、他方に第2生地K2を配置するようにする。また、この場合、2つの平面のなす角度は、生地K1,K2のなす角度に合わせて適宜設定すればよく、その角度が直角であってもよいし、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。
【0069】
(e)上記実施形態では、生地セット工程を手作業により行ったが、生地セット工程を自動化してもよい。すなわち、自動縫製機10に生地K1,K2を保持具11にセットする生地セット用の装置を設け、生地K1,K2のセットから縫製までの一連の工程を自動縫製機10により自動で行うようにしてもよい。
【0070】
(f)上記実施形態では、移動装置14により保持具11を回転させることで重ね合わせ部53を送るようにしたが、重ね合わせ部53を送る送り装置を移動装置14と別で設けてもよい。この場合、移動装置14により、重ね合わせ部53が縫製位置12cに位置するように保持具11を移動させた後、保持具11を移動装置14から送り装置に受け渡し、その送り装置により保持具11を回転させることで重ね合わせ部53を送ることになる。
【0071】
(g)上記実施形態では、生地K1,K2の素材がビニルレザーであったが、生地K1,K2として、本革やソフトレザーを用いてもよい。要するに、空気を透過しない又は透過しにくい素材であれば、生地K1,K2として用いることが可能である。
【0072】
また、生地K1,K2として、布等、空気を透過し易い素材のものを用いてもよい。但し、この場合には、吸引装置13により生地K1,K2を十分吸引できないおそれがあるため、保持具11に生地K1,K2をセットした後、生地K1,K2の表面にビニルシート等、空気を透過しない又は透過しにくい素材のシートを重ねるのがよい。そうすることで、こうした素材の生地K1,K2であっても、吸引装置13により吸引することが可能となる。
【0073】
(h)上記実施形態では、本発明の自動縫製機を、椅子の座部に用いられる座部カバーを製造する場合に適用したが、例えば座部の背もたれに用いられる背もたれカバー(縫製品)を製造する場合に適用してもよい。この場合、背もたれの前面を形成する生地(第1生地)と、背もたれの周面を形成する生地(第2生地)とを自動縫製機により縫製することで背もたれカバーを製造することが考えられる。また、本発明の自動縫製機を、椅子以外で用いられる縫製品の製造に用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…自動縫製機、11…保持具、12…縫製装置、12c…縫製位置、13…吸引装置、14…移動装置、22a…位置決め部としてのフランジ部、26…第1面としての上面、27…第2面としての側面、28…第1開口部としての孔部、28a…境界側第1開口部としての孔部、28b…内側第1開口部としての孔部、29…第2開口部及び境界側第2開口部としての孔部、53…重ね合わせ部、K1…第1生地、K2…第2生地。