(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240619BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2021530628
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025710
(87)【国際公開番号】W WO2021006122
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019127580
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 広宣
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3105617(JP,U)
【文献】特開2016-216835(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0142321(KR,A)
【文献】特開2015-9151(JP,A)
【文献】特開2007-97904(JP,A)
【文献】特開2017-89067(JP,A)
【文献】特開2017-61763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性シート材料からなり、横方向に延びる少なくとも一条のひだが形成され、装着時に前記ひだが縦方向に広がって少なくとも鼻部と口部を覆うフィルタ部と、
弾性変形可能な板材で環状に形成され
た環状部を有し、この環状
部の周縁部が前記フィルタ部に接合され、装着時に顔面に接触し少なくとも前記鼻部と前記口部に対応した位置に開口部が形成された接顔体と、
頭部又は耳部のいずれかに掛け回して前記フィルタ部及び前記接顔体を前記顔面に装着する掛け紐と、を備え、
前記接顔体は、前記環状部の下辺部側に下部突出片が前記開口部内に舌片状に突出するように形成され、
前記フィルタ部を縦方向に広げると、前記接顔体が上下に追随するように弾性変形
して前記下部突出片が前記顔面の前方に傾倒するように弾性変形して前記フィルタ部を立体的に押し広げるとともに、前記接顔体の左右が弾性変形して前記顔面の形状に沿って密着するように構成されていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
通気性シート材料からなり、横方向に延びる少なくとも一条のひだが形成され、装着時に前記ひだが縦方向に広がって少なくとも鼻部と口部を覆うフィルタ部と、
弾性変形可能な板材で環状に形成された環状部を有し、この環状部の周縁部が前記フィルタ部に接合され、装着時に顔面に接触し少なくとも前記鼻部と前記口部に対応した位置に開口部が形成された接顔体と、
頭部又は耳部のいずれかに掛け回して前記フィルタ部及び前記接顔体を前記顔面に装着する掛け紐と、を備え、
前記接顔体は、前記環状部の上辺部側に上部突出片が前記開口部内に舌片状に突出するように形成され、
前記フィルタ部を縦方向に広げると、前記接顔体が上下に追随するように弾性変形して前記上部突出片が前記顔面の前方に傾倒するように弾性変形して前記フィルタ部を立体的に押し広げるとともに、前記接顔体の左右が弾性変形して前記顔面の形状に沿って密着するように構成されていることを特徴とするマスク。
【請求項3】
前記
下部突出片は、上下方向に延びる中心線に対して左右対称に前記環状部の下辺部側に一対形成され
、これらの下部突出片は、上方に向かって間隔が狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のマスク。
【請求項4】
前記
上部突出片は、上下方向に延びる中心線に対して左右対称に前記環状部の上辺部側に一対形成され、これらの上部突出片は、前記鼻部の形状に沿って下方に向かって間隔が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項
2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防塵マスクや医療用マスク等に使用するのに好適なマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のマスクは、特許文献1~3に記載されたものがある。特許文献1に記載されたマスクは、マスク本体の周縁部と接顔布の外周部との接合部間に顔面に沿った立体形状を有するプラスチック製の保形具を挿入したものである。
【0003】
特許文献2に記載されたマスクは、環状をなす接顔パッドと、この接顔パッドの外周縁部に接合され、山形に膨らんだフィルタ部とを有し、このフィルタ部にひだが形成され、そのひだが畳まれることによって平坦な状態になるものである。
【0004】
特許文献3に記載されたマスクは、マスク本体部の鼻及び口を含む顔面の対象部に当接する側に口当てシートを付設したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3117121号公報
【文献】特開2006-149739号公報
【文献】特開2008-302144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載されたマスクは、マスク本体の周縁部と接顔布の外周部との接合部間に顔面に沿った立体形状を有するプラスチック製の保形具を挿入したことから、装着したときに顔面と接顔布との密着性を高めているものの、単価が高く、また梱包したときに嵩張り、輸送及び保管の際にスペースの無駄が多いという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されたマスクは、山形に膨らんだフィルタ部のひだが畳まれることによって平坦な状態になることから、フィルタ部を折り畳む工程が必要となり、コスト高になるという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3に記載されたマスクは、口当てシートが上下の口当てシートを連結部により連結して形成され、上下の口当てシートの端部同士を一部重ね合わせた状態で、上記連結部を上記マスク本体部の中央部に溶着又は圧着等して付設していることから、製造に手間がかかり、単価が高くなるという問題がある。
【0009】
そして、一般のプリーツマスク(サージカルマスク)は、安価で輸送又は保管の際に問題がないものの、顔面への密着性が悪く、高性能のフィルタを使用したとしても、顔面とマスクとの隙間から漏れ込みが多量であるため、マスクとして機能しないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、梱包したときに嵩張らず、装着した際に顔面への密着性をより高めるとともに、容易に製造可能なマスクを提供することを課題としている。
【0011】
また、他の課題としては、フィルタ部を立体的に押し広げ、その状態を維持することのできるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を達成するために、本発明が特徴とするのは、通気性シート材料からなり、横方向に延びる少なくとも一条のひだが形成され、装着時に前記ひだが縦方向に広がって少なくとも鼻部と口部を覆うフィルタ部と、弾性変形可能な板材で環状に形成された環状部を有し、この環状部の周縁部が前記フィルタ部に接合され、装着時に顔面に接触し少なくとも前記鼻部と前記口部に対応した位置に開口部が形成された接顔体と、頭部又は耳部のいずれかに掛け回して前記フィルタ部及び前記接顔体を前記顔面に装着する掛け紐と、を備え、前記接顔体は、前記環状部の下辺部側に下部突出片が前記開口部内に舌片状に突出するように形成され、前記フィルタ部を縦方向に広げると、前記接顔体が上下に追随するように弾性変形して前記下部突出片が前記顔面の前方に傾倒するように弾性変形して前記フィルタ部を立体的に押し広げるとともに、前記接顔体の左右が弾性変形して前記顔面の形状に沿って密着するように構成されていることである。
かかる課題を達成するために、本発明が特徴とするのは、通気性シート材料からなり、横方向に延びる少なくとも一条のひだが形成され、装着時に前記ひだが縦方向に広がって少なくとも鼻部と口部を覆うフィルタ部と、弾性変形可能な板材で環状に形成された環状部を有し、この環状部の周縁部が前記フィルタ部に接合され、装着時に顔面に接触し少なくとも前記鼻部と前記口部に対応した位置に開口部が形成された接顔体と、頭部又は耳部のいずれかに掛け回して前記フィルタ部及び前記接顔体を前記顔面に装着する掛け紐と、を備え、前記接顔体は、前記環状部の上辺部側に上部突出片が前記開口部内に舌片状に突出するように形成され、前記フィルタ部を縦方向に広げると、前記接顔体が上下に追随するように弾性変形して前記上部突出片が前記顔面の前方に傾倒するように弾性変形して前記フィルタ部を立体的に押し広げるとともに、前記接顔体の左右が弾性変形して前記顔面の形状に沿って密着するように構成されていることである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、前記下部突出片は、上下方向に延びる中心線に対して左右対称に前記環状部の下辺部側に一対形成され、これらの下部突出片は、上方に向かって間隔が狭くなるように形成されていることである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、前記上部突出片は、上下方向に延びる中心線に対して左右対称に前記環状部の上辺部側に一対形成され、これらの上部突出片は、前記鼻部の形状に沿って下方に向かって間隔が広くなるように形成されていることである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るマスクでは、フィルタ部を縦方向に広げると、接顔体が上下に追随するように弾性変形するとともに、接顔体の左右が弾性変形して顔面の形状に沿って密着するように構成したことにより、装着した際に顔面への密着性をより高めることができる。その結果、顔面に対して隙間がなくなり、粉塵等の漏れ込みを未然に防止することが可能になる。
【0019】
また、本発明に係るマスクは、フィルタ部に横方向に延びる少なくとも一条のひだが形成され、梱包時はひだが折り畳まれて平坦な状態になることから、梱包したときに嵩張らないので、輸送、保管が極めて容易になる。さらに、本発明に係るマスクは、フィルタ部、接顔体及び掛け紐によって構成されているので、部品点数が少なく、製造が容易になり、経済性に優れたマスクを提供することができる。
【0020】
また、本発明に係るマスクでは、接顔体の下辺部側に装着時に顔面の少なくとも一部を掛止する掛止部が設けられているので、接顔体の下辺部側を確実かつ容易に掛止することができる。また、装着時に掛止部が顎部に掛止されて顔面の前方に傾倒するように弾性変形されてフィルタ部が突出片によって押されて立体的に押し広げられるため、フィルタ部が元の平坦な状態に容易に戻ることがなく、立体的に押し広げられた状態を長く維持することができる。
【0021】
また、本発明に係るマスクでは、一対の下部突出片が上方に向かって間隔が狭くなるように形成されていることから、フィルタ部の中央部付近が押されるため、この中央部付近を頂部として山形に押し広げられ、空間部を確保することができる。
【0022】
また、本発明に係るマスクでは、接顔体の上辺部側に開口部内に舌片状に突出する上部突出片が形成され、装着時に上部突出片が鼻部の少なくとも一部に密着することから、鼻周りの密着性を確保することができる。
【0023】
また、本発明に係るマスクでは、一対の上部突出片が鼻部の形状に沿って下方に向かって間隔が広くなるように形成されていることから、鼻周りの密着性を一段と良好にすることができるとともに、フィルタ部が上部突出片によって押されて立体的に押し広げられて空間部を確保することができる。
【0024】
また、本発明に係るマスクでは、掛け紐のそれぞれの一端が多角形の上部両角部に接合され、それぞれの他端がフィルタ部における上下方向略1/4の高さの側辺に接合されていることから、フィルタ部を縦方向に広げ易くなり、顎部に掛止されたフィルタ部が掛け紐によって引っ張られるため、顎部より下側のフィルタ部がめくれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態のマスクを示す背面図である。
【
図5】同実施形態のマスクを装着したときのフィルタ部及び接顔体の状態を示す概略断面図である。
【
図6】同実施形態のマスクを装着者が装着した状態を示す側面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態のマスクを示す背面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態のマスクを示す背面図である。
【
図9】本発明に係るマスクの具体的な実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態のマスクについて
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、本実施形態のマスク1は、通気性シート材料からなるフィルタ部2と、装着者の顔面に当接する接顔体3と、装着者の左右の耳部にそれぞれ掛止される左右一対の掛け紐4と、を備える。
【0028】
フィルタ部2は、
図2に示すように略7角形に形成され、左右方向にそれぞれ緩やかに傾斜した2つの上辺部5と、これら上辺部5に対向する直線状の下辺部6と、2つの上辺部5からそれぞれ下方向に直線状に上下方向略1/4の高さまで延びる直線側辺部7aと、これら直線側辺部7aからそれぞれ左右方向内側に傾斜する傾斜側辺部7bと、を有する。
【0029】
フィルタ部2は、
図2に示すように上下方向中央に形成された中央フィルタ8と、この中央フィルタ8の上方及び下方にそれぞれ形成された上方フィルタ9及び下方フィルタ10と、を備える。上方フィルタ9には、
図3に示すように横(左右)方向に延びる2条の上方山折り部11と上方谷折り部12が上下方向に形成される一方、下方フィルタ10にも、同様に横(左右)方向に延びる2条の下方山折り部13と下方谷折り部14が上下方向に形成されている。
【0030】
フィルタ部2は、
図3に示すように中央フィルタ8と上方フィルタ9とが、2条の上方山折り部11と上方谷折り部12との間に延びる2条の上方折り込み部15を介して接続され、2条の上方ひだ9aを形成している。また、中央フィルタ8と下方フィルタ10とが、2条の下方山折り部13と下方谷折り部14との間に延びる2条の下方折り込み部16を介して接続され、2条の下方ひだ10aを形成している。
【0031】
フィルタ部2は、
図4に示すように例えば4層に積層されて、外側から内側にかけて、水分を吸着するとともに、外観の見栄えを良くするための吸水フィルタ2a、繊維径が太くて大きな粉塵をろ過するプレフィルタ2b、繊維径が細くて細かい粉塵をろ過するメインフィルタ2c、主として装着者の呼気の水分を吸水する吸水フィルタ2dの順で積層されている。なお、フィルタ部2は、繊維径が太いプレフィルタ2bを省略した3層構造であってもよい。この3層構造の場合には、吸水フィルタ2aが上記の機能を有するとともに、大きな粉塵をろ過するプレフィルタとしての機能も併せて有することとなる。なお、フィルタ部2の材質は、軟質で折り曲げ可能であって、装着者の吸気の取り入れ及び呼気の排出が可能であり、吸気及び呼気をろ過することができるフィルタ部として機能するものであれば、特に限定されない。
【0032】
フィルタ部2は、
図2に示すように上辺部5の近傍であって、上下方向に延びる中心線に対して左右対称にノーズクリップ17が内包されている。このノーズクリップ17は、例えば延伸ポリエチレンからなり、鼻部の横方向の形状に沿って折り曲げられてフィルタ部2を鼻部に密着させるようになっている。ノーズクリップ17は、接顔体3の左右方向略中央であって、接顔体3の両側部の上端を結んだ仮想水平線(二点鎖線で示す)と上方の山形部分の頂部である接顔体3の上端部との中間部に左右対称に、長手方向がマスク1の左右方向に沿うように配設されている。なお、ノーズクリップ17は、その機能を適切に奏するものであれば上記の位置のみに限定されない。
【0033】
接顔体3は、
図1に示すように弾性変形可能な平坦な板材から打抜き加工により形成されている。接顔体3は、例えば発泡ポリエチレンシートや発泡ポリビニルアルコールシート等の非通気性の発泡樹脂材に不織布やパルプを貼り付けたものが使用される。接顔体3は、環状に形成された環状部20を備えている。この環状部20は、その周縁部20aがフィルタ部2の周縁部に溶着や接着等の固定手段を介して接合されている。すなわち、接顔体3は、環状部20の周縁部20aだけがフィルタ部2の周縁部に接合され、その他の部分は、接合されておらず、重ね合わせているだけであるので、フィルタ部2に対して離間することができる。そのため、接顔体3は、上下方向及び左右方向に容易に弾性変形することができる。接顔体3の周縁部20aは、上下の各2条の上方山折り部11及び上方谷折り部12と、下方山折り部13及び下方谷折り部14とで重なり合ったフィルタ部2がその重なり合った状態で接合されている。接顔体3は、装着時に装着者の顔面に接触し鼻部と口部及びその周辺の頬部に対応した位置に開口部21が形成されている。これにより、開口部21内に装着者の鼻部及び口部が挿通することができる。
【0034】
接顔体3の環状部20は、上辺部25と、この上辺部25から左右に連続する側辺部30と、これらの側辺部30から連続する下辺部22とが一体に形成されている。上辺部25は、その上下方向が所定の幅を有している。この場合、接顔体3の上辺部25の幅が短いと、装着時に上辺部25が立上り易く、外部と隙間が生じ易くなる。本実施形態では、上辺部25の上下方向の幅が所定の長さを有しているため、鼻部との接触面積が大きくなり、摩擦力が増加して装着時にマスクをずれにくくすることができる。
【0035】
接顔体3は、環状部20の下辺部22側に装着時に顔面の少なくとも一部である顎部を掛止する掛止部23が設けられている。したがって、接顔体3は、下辺部22側が掛止部23で顎部を掛止する一方、上辺部25に設けられた後述する2つの上部突出片26が鼻部の両側面に密着して上辺部25側が掛止されることから、フィルタ部2が上下に開いた状態を顎部と鼻部との双方で掛止し、その立体形状を保つことができる。加えて、上記のようにノーズクリップ17が鼻部の横方向の形状に沿って折り曲げられてフィルタ部2を鼻部に密着させるようにすれば、上辺部25側が鼻部に一段と強固に掛止されてフィルタ部2が上下に開いた状態を顎部と鼻部との双方で確実に維持し、その立体形状を長く保つことができる。
【0036】
掛止部23の両側には、それぞれ開口部21内に延びる下部突出片24が形成されている。これらの下部突出片24は、接顔体3の上下方向に延びる中心線に対して左右対称に一対形成され、上方に向かって互いの間隔が狭くなるように傾斜して形成されている。下部突出片24は、それぞれ先端が角形に形成され、開口部21内に舌片状に突出するように形成されている。下部突出片24は、それぞれ先端まで略同一幅に形成され、それぞれ先端がフィルタ部2の上下方向中央に形成された中央フィルタ8まで延びている。すなわち、下部突出片24は、フィルタ部2における上下方向の高さが同一になるように延びている。下部突出片24は、それぞれ先端の辺がフィルタ部2の上方ひだ9a及び下方ひだ10aと同一方向となるように形成されている。下部突出片24間は、開口部21の一部である台形開口部27が形成されている。
【0037】
なお、台形開口部27は、下辺をさらに広げることで、掛止部23の長さが長くなり、顎部への掛止効果が高まる。その結果、顎部に接顔体3を確実に掛止することが可能となる。
【0038】
接顔体3は、環状部20の上辺部25側に上部突出片26が形成され、これらの上部突出片26は、装着時に上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、鼻部の両側面に密着するように構成されている。なお、上部突出片26は、装着時に鼻部の少なくとも一部に密着するようにしてもよい。上部突出片26は、上下方向に延びる中心線に対して左右対称に一対形成され、これらの上部突出片26は、前記鼻部の両側面の形状に沿って下方に向かって互いの間隔が徐々に広くなるように形成され、その間に逆V字開口部28が形成されている。台形開口部27及び逆V字開口部28は、装着者の口部と鼻部が入り込むような大きさに形成されている。
【0039】
上部突出片26は、それぞれ先端が角形に形成され、開口部21内に舌片状に突出するように形成されている。上部突出片26は、それぞれ先端が下部突出片24と同様に中央フィルタ8まで延びている。すなわち、上部突出片26は、フィルタ部2における上下方向の高さが同一になるように延びている。上部突出片26は、それぞれ先端に向けて幅が徐々に狭くなるように形成されている。下部突出片24と上部突出片26は、互いに接近する方向に延び、互いの先端が近接した位置にある。
【0040】
接顔体3は、上記のように環状部20の両側にそれぞれ円弧状に形成された側辺部30が設けられている。これら側辺部30の内側は、所定の曲率を有する湾曲開口部31が形成されている。この湾曲開口部31を形成する湾曲部31aは、上部突出片26及び下部突出片24のそれぞれの一辺と連続して形成されている。
【0041】
湾曲部31aは、上下方向に対して所定の曲率に形成されている。湾曲部31aは、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、その引張力を吸収し略直線状になるまで伸長する。したがって、湾曲部31aは、上下方向に対する曲率が大きければ大きいほど、その離間する長さが長くなり、その引張力を吸収する効果が高まる。このように湾曲部31aは、引張幅を確保するとともに、略直線状になった場合に両頬への密着性を高める機能を有する。
【0042】
ここで、略直線状になったとき、湾曲部31aが形成されていない場合には、接顔体3の弾力性だけの伸長であることから、上記引張力によって頬部に当接する部分が固くなり、装着感が著しく損なわれるという不具合がある。しかし、本実施形態のように湾曲部31aが形成されている場合には、上記引張力によって見た目では直線状になっていたとしても、弾力性によって伸長する余地が残されていることから、常に良好な装着感が得られることとなる。
【0043】
上部突出片26は、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、各上部突出片26の先端が互いに接近するように上方に移動するとともに、逆V字開口部28が縦長に変形する力が作用する。そのとき、上部突出片26のそれぞれの先端によってフィルタ部2の中央フィルタ8が押されて上方ひだ9aと下方ひだ10aが立体的に押し広げられる。各上部突出片26の先端が互いに接近した状態でフィルタ部2の中央フィルタ8の同じ高さで押し広げるため、その押圧力が中央フィルタ8の中心付近に集中することとなる。また、逆V字開口部28が縦長に変形する力が作用するため、鼻部の側面に対する各上部突出片26の側面の接触面積が広くなり、鼻部の側面に強く圧接することとなる。
【0044】
同様に、下部突出片24も、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、各下部突出片24の先端が互いに接近するように下方に移動する。そのとき、下部突出片24のそれぞれの先端によってフィルタ部2の中央フィルタ8が押されて上方ひだ9aと下方ひだ10aが立体的に押し広げられる。各下部突出片24の先端が互いに接近した状態でフィルタ部2の中央フィルタ8の同じ高さで押し広げるため、その押圧力が中央フィルタ8の中心付近に集中することとなる。ここで、下部突出片24及び上部突出片26は、上方ひだ9aと下方ひだ10aを立体的に確実に押し広げ、その状態を維持するため、所定の剛性を備えている。
【0045】
左右一対の掛け紐4は、それぞれ弾性的に伸縮可能なゴム紐により平たく形成されている。なお、左右一対の掛け紐4は、不織布や織布、プラスチックフィルム等の公知の弾性材料によって形成されていてもよい。左右一対の掛け紐4は、それぞれの一端4aが、フィルタ部2における上辺部5の下端近傍にその上辺部5の傾斜方向に沿って溶着や接着等の手段を介して接合されている。左右一対の掛け紐4の他端4bは、それぞれフィルタ部2における上下方向略1/4の高さの傾斜側辺部7bの傾斜方向に沿って上記と同様の手段を介して接合されている。左右一対の掛け紐4の一端4a及び他端4bを接合する際は、フィルタ部2の外周縁に接顔体3の環状部20の外周縁を溶着や接着等の手段を介して接合すると同時に行われる。
【0046】
次に、本実施形態のマスク1の使用方法及び作用について説明する。
【0047】
マスク1は、上方ひだ9a及び下方ひだ10aが折り畳まれることによって平坦な状態にある。これにより、マスク1は、梱包したときに嵩張らないので、輸送、保管が極めて容易になる。そして、上記のように構成されたマスク1を装着するには、例えばマスク1の接顔体3側を装着者の顔面に当てがい、ノーズクリップ17を折り曲げて接顔体3を鼻部の隆起部に密着させた後、左右一対の掛け紐4を耳部に掛け回す。ここで、ノーズクリップ17を鼻部の隆起部に密着させたとき、上部突出片26が鼻部の両側面に密着し、マスク1の上部が位置決めされる。ここで、ノーズクリップ17は、接顔体3の左右方向略中央であって、接顔体3の両側部の上端を結んだ仮想水平線と上方の山形部分の頂部である接顔体3の上端部との中間部の位置に左右対称に、長手方向がマスク1の左右方向に沿うように配設されているので、ノーズクリップ17を折り曲げたとき、鼻部への密着性を良好にするとともに、上部突出片26で上方ひだ9aと下方ひだ10aを立体的に確実に押し広げることができる。
【0048】
次いで、装着者がフィルタ部2の左右方向中間部における上辺部5と下辺部6とを離間させるように指先で引っ張って縦方向に広げる。
【0049】
すると、
図5及び
図6に示すように、接顔体3が上下に追随するように弾性変形するとともに、接顔体3の左右の側辺部30の湾曲部31aが
図1に実線で示す形状から上記の引張力を吸収した二点鎖線で示す略直線状になるまで伸長して顔面の両頬の形状に沿って密着する。このとき、接顔体3の内周側がフィルタ部2に対して離間することで、湾曲部31aは、前後方向の位置が変化せずに略直線状になることが可能となる。ここで、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、左右の側辺部30の内側の湾曲部31aの曲率が小さいと、すぐに直線状になって引張力の吸収効果が低くなり、顔面の両頬への密着効果が低くなる。そのため、湾曲部31aがすぐに直線状になると、さらに会話等で口部を開いたときには、マスク1の伸縮代がなくなることから、例えば顎部が支点となった場合には、マスク1が下方にずり下がってしまう一方、鼻部が支点となった場合には、顎部からマスク1が上方にずれてしまい、顔面の所定位置に安定して保持しておくことができないという不具合がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、接顔体3が弾性体製であって、環状部20の周縁部20aだけが接合され、かつ接顔体3の左右の側辺部30の湾曲部31aが上下方向に対して所定の曲率に形成されていることから、上記の引張力を吸収して略直線になるまで伸長するため、その復元力によって両頬に対して適度な圧力がかかり、接顔体3の左右の側辺部30が両頬に密着し、その状態を常に維持することとなる。その結果、外部からの粉塵等の異物の侵入を防止することができるとともに、会話等で口部を開いたときでも、マスク1が上方及び下方にずれることがなくなり、マスク1を顔面の所定位置に安定して保持しておくことができる。
【0051】
また、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げて接顔体3の掛止部23を顎部に掛止すると、接顔体3の下辺部6が顔面の前方に傾倒するように弾性変形される。すると、フィルタ部2の中央フィルタ8が左右一対の下部突出片26のそれぞれの先端によって押されて上方ひだ9aと下方ひだ10aが立体的に押し広げられる。より具体的には、
図1に二点鎖線で示すように各下部突出片24の先端が互いに接近するように下方に移動する。そのとき、下部突出片24のそれぞれの先端によってフィルタ部2の中央フィルタ8が押されて上方ひだ9aと下方ひだ10aが立体的に押し広げられる。各下部突出片24の先端が互いに接近した状態でフィルタ部2の中央フィルタ8の同じ高さで押し広げるため、その押圧力が中央フィルタ8の中心付近に集中することとなり、上方ひだ9aと下方ひだ10aを立体的に確実に押し広げることができる。そして、この状態が下部突出片24によって支持されるため、フィルタ部2が元の平坦な状態に容易に戻ることがなく、立体的に押し広げられた状態を長く維持することができる。
【0052】
同時に、上部突出片24のそれぞれの先端によってフィルタ部2の中央フィルタ8が押されて上方ひだ9aと下方ひだ10aが立体的に押し広げられる。具体的には、
図1に二点鎖線で示すように各上部突出片26の先端が互いに接近するように上方に移動するとともに、逆V字開口部28を縦長に変形する力が作用する。そのとき、上部突出片26のそれぞれの先端によってフィルタ部2の中央フィルタ8が押されて上方ひだ9aと下方ひだ10aが立体的に押し広げられる。各上部突出片26の先端が互いに接近した状態でフィルタ部2の中央フィルタ8の同じ高さで押し広げるため、その押圧力が中央フィルタ8の中心付近に集中することとなり、上方ひだ9aと下方ひだ10aを立体的に確実に押し広げることができる。そして、この状態が上部突出片26によって支持されるため、フィルタ部2が元の平坦な状態に容易に戻ることがなく、立体的に押し広げられた状態を長く維持することができる。
【0053】
また、逆V字開口部28を縦長に変形する力が作用するため、鼻部の側面に対する各上部突出片26の側面の接触面積が広くなり、鼻部の側面に強く圧接することとなり、摩擦力が増加して鼻周りの密着性を一段と良好にすることができる。このようにして、装着者の鼻部、口部及び頬部がマスク1によって覆われる。
【0054】
上記のように本実施形態では、ノーズクリップ17を折り曲げて接顔体3を鼻部の隆起部に密着させマスク1の上部を位置決めした後、フィルタ部2を指先で引っ張り接顔体3を上下に追随するように弾性変形させて接顔体3の掛止部23を顎部に掛止させるようにしたので、顔面に対して接顔体3の上下方向の収縮力が作用することとなり、顔面への密着力を一段と高めることができる。
【0055】
このように本実施形態によれば、フィルタ部2を縦方向に広げると、接顔体3が上下に追随するように弾性変形するとともに、接顔体3の左右が弾性変形して顔面の形状に沿って密着するように構成したことにより、装着した際に顔面への密着性をより高めることができる。その結果、接顔体3の左右方向からの粉塵等の異物の侵入を未然に防止することが可能になる。
【0056】
また、本実施形態のマスク1は、フィルタ部2に横方向に延びる上方ひだ9aと下方ひだ10aが形成され、梱包時は上方ひだ9aと下方ひだ10aが折り畳まれて平坦な状態であることから、梱包したときに嵩張らないので、輸送、保管が極めて容易になる。さらに、本実施形態のマスク1は、フィルタ部2、接顔体3及び左右一対の掛け紐4によって構成されているので、部品点数が少なく、製造が容易になり、経済性に優れたマスク1を提供することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、接顔体2の下辺部22側に装着時に顔面の少なくとも一部である顎部を掛止する掛止部23が設けられているので、接顔体2の下辺部22側を確実かつ容易に掛止することができる。
【0058】
また、装着時に掛止部23が顎部に掛止されて顔面の前方に傾倒するように弾性変形されてフィルタ部2が下部突出片24によって押されて立体的に押し広げられ、その状態が下部突出片24によって支持されるため、フィルタ部2が元の平坦な状態に容易に戻ることがなく、立体的に押し広げられた状態を長く維持することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、一対の下部突出片24が上方に向かって間隔が狭くなるように形成されていることから、フィルタ部2の中央フィルタ8の中心付近が押されるため、この中央フィルタ8の中心付近を頂部として山形に押し広げることが可能になる。これにより、空間部を確保することができ、装着者にとって呼吸が苦しくなるのを未然に防止することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、一対の下部突出片24は、マスク1の折畳み時にそれぞれ先端の辺がフィルタ部2の上方ひだ9a及び下方ひだ10aと同一方向に形成されていることから、フィルタ部2を縦方向に広げた場合、接顔体3が弾性変形する際、下部突出片24のそれぞれ先端の辺が中央フィルタ8に当接し、上方ひだ9a及び下方ひだ10aを確実に押し広げることが可能になる。
【0061】
また、本実施形態によれば、接顔体3の上辺部25側に開口部21内に延びる舌片状に突出する上部突出片26が形成され、装着時に上部突出片26が鼻部の両側面に密着することから、鼻周りの密着性を確保することができる。この場合、上部突出片26が鼻部の少なくとも一部に密着するようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態によれば、一対の上部突出片26が鼻部の形状に沿って下方に向かって間隔が広くなるように形成されていることから、鼻周りの密着性を一段と良好にすることができるとともに、フィルタ部2が上部突出片26によって押されて立体的に押し広げられて空間部を確保することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、掛け紐4の一端4aがフィルタ部2における上辺部5の下端近傍の上部両角部に接合され、それぞれの他端4bがフィルタ部2における上下方向略1/4の高さの側辺部7aに接合されていることから、フィルタ部2を縦方向に広げ易くなり、顎部に掛止されたフィルタ部2が掛け紐4によって引っ張られるため、顎部より下側のフィルタ部2がめくれるのを防止することができる。
【0064】
また、掛け紐4のそれぞれの他端4bがフィルタ部2における最下部両角部に接合された場合には、フィルタ部2の下辺部6が掛け紐4によって引っ張られることから、喉部が苦しくなるか、あるいは煩わしくなることから、本実施形態のように上下方向略1/4の高さの側辺部に接合することで、これらの不具合を解消することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、一対の下部突出片24及び一対の上部突出片26の先端がそれぞれ角形に形成されていることから、それらの角部がフィルタ部2の中央フィルタ8の中心付近に引っ掛かり易くなり、フィルタ部2の中央フィルタ8の中心付近を頂部として確実かつ容易に立体形状に押し広げることが可能になる。
【0066】
また、本実施形態によれば、下部突出片24及び上部突出片26の先端がフィルタ部2における上下方向の高さが同一になるように延びていることから、下部突出片24及び上部突出片26の先端がそれぞれ互いに接近した状態でフィルタ部2の中央フィルタ8の同じ高さで押し広げるため、その押圧力が中央フィルタ8の中心付近に集中することとなり、上方ひだ9aと下方ひだ10aを立体的に確実に押し広げることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、側辺部30の内側に湾曲部31aが形成されていることにより、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、その引張幅を確保することができ、また略直線状になった場合に両頬への密着性を高めることができる。
【0068】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態のマスクを示す背面図である。
【0069】
なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して重複する説明は、省略する。
【0070】
図7に示すように、本実施形態のマスク1Aは、前記第1実施形態の上部突出片26に代えて円弧状突出部29が形成されている。円弧状突出部29間には、前記第1実施形態の逆V字開口部28と形状の異なる逆V字開口部29aが形成されている。
【0071】
円弧状突出部29は、環状部20の上辺部25の左右方向中央から下方にいくに従って左右方向に緩やかに湾曲し、左右両側辺部30まで形成されている。円弧状突出部29は、装着時に鼻部の両側面に沿って密着するように構成されている。
【0072】
具体的には、本実施形態のマスク1Aは、上辺部5と下辺部6とを離間させるように引っ張って縦方向に広げた場合、各円弧状突出部29の先端が互いに接近するように上方に移動するとともに、逆V字開口部29aが縦長に変形する力が作用する。そのため、逆V字開口部28は、鼻部の側面に対する接触面積が広くなり、鼻部の側面に強く圧接することとなり、摩擦力が増加して鼻周りの密着性を一段と良好にすることができる。これらの
作用及び効果以外は、前記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態のマスクを示す背面図である。
【0074】
なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して重複する説明は、省略する。
【0075】
図8に示すように、本実施形態のマスク1Bは、前記第1実施形態の下辺部22側に下部突出片24が形成されておらず、掛止部23が前記第1実施形態よりも長く形成されている。
【0076】
このように本実施形態では、掛止部23が前記第1実施形態よりも長く形成されているので、顎部の掛止効果が高まり、掛止部23に顎部を確実かつ容易に掛止することができる。その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
(その他の実施形態)
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0078】
なお、上記各実施形態では、一対の掛け紐4を装着者の左右の耳部にそれぞれ掛止するようにしたが、これに限らず装着者の頭部に掛け回す上下各一条の紐であってもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、中央フィルタ8の上下方向に上方ひだ9aと下方ひだ10aをそれぞれ二条ずつ形成した例について説明したが、これに限定することなく、上方ひだ9aと下方ひだ10aをそれぞれ一条ずつ形成してもよく、またフィルタ部2の中央付近において幅広に1組だけ山折り、谷折りがされているものでもよい。
【0080】
さらに、上記各実施形態では、フィルタ部2を略7角形に形成した例について説明したが、これに限定することなく、その他の多角形に形成したものでもよい。
【0081】
そして、上記各実施形態に限定されることなく、フィルタ部2を縦方向に広げると、接顔体3が上下に追随するように弾性変形するとともに、接顔体3の左右が弾性変形して顔面の形状に沿って密着するように構成されているものであれば、如何なる構成のものであってもよい。
【0082】
(実施例)
次に、第1実施形態のマスクの具体的な実施例について説明する。
【0083】
図9は、本発明に係るマスクの具体的な実施例を示す説明図である。なお、
図9は定量フィットテストであり、マスクの漏れを定量的に測定した結果である。また、
図9において、FFとは、フィットファクター(Fit Factor)であり、マスクの外側の粒子の数をマスクの内側の粒子の数で除算した値である。
【0084】
本実施例では、試験機は、フィットテスターとして米国TSI社製のポータカウンタプロ8038を使用し、試験方法は、N95コンパニオンモード(N95オンモード)、評価動作は、8動作によるエクササイズである。装着者Aと装着者Bは、互いに顔サイズが異なる。これらのエクササイズを、一般のプリーツマスクと、フィルタ部2が
図4に示した4層に積層された前記第1実施形態のマスク1(装着者A及び装着者B)に対して行った結果、その全防護計数及び平均漏れ率が
図9に示す結果が得られた。
【0085】
図9によれば、各エクササイズとも、一般のプリーツマスクに比べて、前記第1実施形態のマスク1は装着者Aと装着者Bの両者が、全防護計数及び平均漏れ率が格段に向上することが判明した。
【0086】
このような結果は、前記第1実施形態のマスク1を装着したとき、顔面への密着性が極めて高いことから、顔面に対して隙間がなくなり、粉塵等の漏れ込みを防止していることによる。
【符号の説明】
【0087】
1…マスク
2…フィルタ部
2a…吸水フィルタ
2b…プレフィルタ
2c…メインフィルタ
2d…吸水フィルタ
3…接顔体
4…掛け紐
4a…一端
4b…他端
5…上辺部
6…下辺部
7…側辺部
7a…直線側辺部
7b…傾斜側辺部
8…中央フィルタ
9…上方フィルタ
9a…上方ひだ
10…下方フィルタ
10a…下方ひだ
11…上方山折り部
12…上方谷折り部
13…下方山折り部
14…下方谷折り部
15…上方折り込み部
16…下方折り込み部
17…ノーズクリップ
20…環状部
20a…周縁部
21…開口部
22…下辺部
23…掛止部
24…下部突出片
25…上辺部
26…上部突出片
27…台形開口部
28…逆V字開口部
29…円弧状突出部
30…側辺部
31…湾曲開口部
31a…湾曲部