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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】切屑排出装置を具える工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022017418
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2023114862
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000154451
【氏名又は名称】株式会社武田機械
(74)【代理人】
【識別番号】100085246
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 博徳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 輝夫
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-055787(JP,U)
【文献】特開昭60-146647(JP,A)
【文献】実開昭62-095844(JP,U)
【文献】実開昭62-042940(JP,U)
【文献】実開昭61-154645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切屑排出装置を具える工作機械であって、
フライスを装着可能の主軸ヘッドがコラムに設けられており、
テーブル移動路をその基側とその先側との間で往復移動し得るテーブル上に設置されたワークの被加工面に対して、該テーブルが該基側から該先側に向けて進行することによって前記フライスがフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された線状切屑が切屑移送路に堆積されるようになされており、
前記切屑排出装置は、前記テーブルの前記進行に伴い、前記切屑移送路に堆積された切屑堆積物を該切屑移送路の所要場所に向けて移動させるものであり、該テーブルの側部で、前記切屑移送路に向けて、前記テーブルの移動方向と直角をなす前後方向で所要長さ突出可能且つ後退可能の切屑移動バーが設けられており、該切屑移動バーが突出状態で前記テーブルが前記先側に向けて進行することにより、突出状態にある該切屑移動バーに押されて前記切屑堆積物が前記所要場所に向けて移動され、該テーブルが前記基側に向けて逆進行する際に該切屑移動バーが後退することにより、該切屑移動バーが該切屑堆積物から抜けて該切屑堆積物が該所要場所で分離されることを特徴とする切屑排出装置を具える工作機械。
【請求項2】
切屑排出装置を具える工作機械であって、
フライスを装着可能の主軸ヘッドがコラムに設けられており、
該コラムの後方に位置し且つ左右方向に延長するテーブル移動路が設けられており、該テーブル移動路をその基側とその先側との間で左右方向に往復移動し得るテーブル上に設置されたワークの被加工面に対して、該テーブルが該基側から該先側に向けて進行することによって前記フライスがフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された切屑が切屑移送路に堆積されるようになされており、
前記テーブルと前記コラムとの間に、左右方向に延長する前記切屑移送路が設けられており、
前記切屑排出装置は、前記テーブルの前記進行に伴い、前記切屑移送路に堆積された切屑堆積物を該切屑移送路の所要場所に向けて移動させるものであり、該テーブルの側部の、前記左右方向で見た両側部位に、第1の切屑移動バーと第2の切屑移動バーが設けられており、該第1、第2の切屑移動バーは、前記左右方向と直交する前後方向で且つ前記切屑移送路に向けて所要長さ突出でき、且つ後退可能であり、
前記第1、第2の切屑移動バーが突出状態で前記テーブルが前記先側に向けて進行することにより、前記切屑堆積物が該第1、第2の切屑移動バーに押されて所要場所に向けて移動され、該テーブルが前記基側に向けて逆進行する際に該第1、第2の切屑移動バーが後退することにより、該切屑堆積物が該所要場所で分離されるようになされており、
前記第1 の切屑移動バーは、後退することにより、前記切屑移送路上で前記切屑堆積物を分離し、該分離された切屑堆積物は、前記テーブルの前記逆進行後における該テーブルの再度の進行により、突出状態にある前記第2の切屑移動バーに押されて前記所要場所に向けて移動されるようになされており、該第2の切屑移動バーは、切屑排出場所としての該所要場所で後退して前記切屑堆積物を分離することを特徴とする切屑排出装置を具える工作機械。
【請求項3】
切屑排出装置を具える工作機械であって、
所要間隔を隔てる支柱の上部間を横架部材で連結してなる門型コラムの該横架部材の延長方向で、フライスを装着可能の主軸ヘッドが往復移動可能とされており、両該支柱の間を通るように、前記横架材の延長方向と直交する方向にテーブル移動路が設けられており、
該テーブル移動路をその基側とその先側との間で往復移動し得るテーブル上に設置されたワークの被加工面に対して、該テーブルが該基側から該先側に向けて進行することによって前記フライスがフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された切屑が切屑移送路に堆積されるようになされており、
前記テーブルと前記支柱の夫々との間に、前記テーブル移動路の延長方向に前記切屑移送路が設けられており、
前記切屑排出装置は、前記テーブルの前記進行に伴い、前記切屑移送路に堆積された切屑堆積物を該切屑移送路の所要場所に向けて移動させるものであり、該テーブルの、前記横架部材の延長方向で見た両側部であって、且つ前記テーブル移動路の延長方向で見た両側部位に、第1の切屑移動バーと第2の切屑移動バーが設けられており、該第1、第2の切屑移動バーは、前記テーブル移動路の延長方向と直交する方向で且つ前記切屑移送路に向けて所要長さ突出でき、且つ後退可能であり、
前記第1、第2の切屑移動バーが突出状態で前記テーブルが前記先側に向けて進行することにより、前記切屑堆積物が該第1、第2の切屑移動バーに押されて所要場所に向けて移動され、該テーブルが前記基側に向けて逆進行する際に該第1、第2の切屑移動バーが後退することにより、該切屑堆積物が該所要場所で分離されるようになされており、
前記第1 の切屑移動バーは、後退することにより、前記切屑移送路上で前記切屑堆積物を分離し、該分離された切屑堆積物は、前記テーブルの前記逆進行後における該テーブルの再度の進行により、突出状態にある前記第2の切屑移動バーに押されて前記所要場所に向けて移動されるようになされており、該第2の切屑移動バーは、切屑排出場所としての該所要場所で後退して前記切屑堆積物を分離することを特徴とする切屑排出装置を具える工作機械。
【請求項4】
前記第1の切屑移動バーが前記所要場所で後退して後、前記テーブルが前記基側へ移動するに先立って、該テーブルが、前記コラムから遠ざかるように所要距離、後方向に移動することにより、前記切屑移送路で分離された切屑堆積物と前記テーブルとの間の摩擦を低減させることを特徴とする請求項2記載の切屑排出装置を具える工作機械。
【請求項5】
前記切屑移送路の底面部は、テレスコカバーの上面部として構成され、該上面部が、前記コラムが存する側から前記先側に向けて下方に傾斜する下方傾斜面部として形成されており、該切屑移送路の該下方傾斜面部を前記先側に向けて移動する前記切屑堆積物の、前記第2の切屑移動バー及び前記下方傾斜面部に及ぼす圧縮圧力が、該切屑堆積物が前記下方傾斜面部を前記先側に向けて移動する間における下方への圧縮解放によって低減されるように構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の切屑排出装置を具える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切屑排出装置を具える工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工に伴い切屑が生成される工作機械における切屑排出装置の一例として特許文献1~3が開示する切屑排出装置が提供されている。これらの切屑排出装置に共通する構成は、工作機械のベッド上を往復摺動するテーブルの該摺動方向の側面に、加工に伴い生成された切屑を切屑排出場所に向けて移動させる切屑移動部材が設けている点であった。
【0003】
特許文献1に係る切屑排出装置は、比較的細かい切屑を生成する工作機械に設けられるものであり、テーブルの側面に設けた受部の上面に下端が接し且つテーブルの往復移動方向に傾斜する揺動板(前記切屑移動部材)の上端部が、該テーブルの側面に揺動自在に設けられていた。そして、前記テーブルの摺動に伴って該下端が前記受部の上面を滑るように移動して切屑を切屑排出場所に向けて移動させるように構成されていた。
【0004】
特許文献2に係る切屑排出装置は、テレスコカバーの上面に向けて傾斜すると共に下端が該上面に接し且つ上端部が前記テーブルの側面に揺動自在に設けられてなる切屑除去板(前記切屑移動部材)を具えており、前記テーブルの摺動に伴って該下端が前記テレスコカバーの上面を切屑排出場所に向けて移動するように構成されていた。
【0005】
特許文献3に係る切屑排出装置は、前記テーブルの側面に固定されたワイパー(前記切屑移動部材)の下部の掃き出し部が、工作機械の加工に伴い生成された切屑を切屑排出場所に向けて移動させるように構成されていた。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2、3に係る前記切屑排出装置にあっては何れも、前記切屑移動部材が常時、前記テーブルの側面に張り出し状態に設けられていたため、前記切屑が、長く繋がった線状切屑であるときは、特許文献1が対象とするような比較的細かい切屑である場合とは異なり、該線状切屑が、常時張り出し状態にある前記切屑移動部材に被る等して絡みついた状態になり易い。該線状切屑がこのように前記切屑移動部材に絡みついた状態になると、該線状切屑は該切屑移動部材から分離しにくく該切屑は、該切屑移動部材の往復移動に伴って単に往復移動するだけとなってしまい易い。これでは所望の切屑排出ができないこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公昭48-28393号公報
【文献】実開昭54-119082号公報
【文献】特開2014-161926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、工作機械の加工に伴い生成される切屑が、長く繋がった線状切屑を多く含む切屑であっても切屑排出場所に向けて効果的に移動させて排出できる切屑排出装置を具える工作機械の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械の第1の態様は、フライスを装着可能の主軸ヘッドがコラムに設けられており、テーブル移動路をその基側とその先側との間で往復移動し得るテーブル上に設置されたワークの被加工面に対して、該テーブルが該基側から該先側に向けて進行することによって前記フライスがフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された線状切屑が切屑移送路に堆積されるようになされている。前記切屑排出装置は、前記テーブルの前記進行に伴い、前記切屑移送路に堆積された切屑堆積物を該切屑移送路の所要場所に向けて移動させるものであり、該テーブルの側部で、前記切屑移送路に向けて、前記テーブルの移動方向と直角をなす前後方向で所要長さ突出可能且つ後退可能の切屑移動バーが設けられている。そして、該切屑移動バーが突出状態で前記テーブルが前記先側に向けて進行することにより、該切屑移動バーに押されて前記切屑堆積物が前記所要場所に向けて移動され、該テーブルが前記基側に向けて逆進行する際に該切屑移動バーが後退することにより、該切屑移動バーが該切屑堆積物から抜けて該切屑堆積物が該所要場所で分離されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械の第2の態様は、フライスを装着可能の主軸ヘッドがコラムに設けられており、該コラムの後方に位置し且つ左右方向に延長するテーブル移動路が設けられている。該テーブル移動路をその基側とその先側との間で左右方向に往復移動し得るテーブル上に設置されたワークの被加工面に対して、該テーブルが該基側から該先側に向けて進行することによって前記フライスがフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された切屑が切屑移送路に堆積されるようになされ、前記テーブルと前記コラムとの間に、左右方向に延長する前記切屑移送路が設けられている。前記切屑排出装置は、前記テーブルの前記進行に伴い、前記切屑移送路に堆積された切屑堆積物を該切屑移送路の所要場所に向けて移動させるものであり、該テーブルの側部の、前記左右方向で見た両側部位に、第1の切屑移動バーと第2の切屑移動バーが設けられており、該第1、第2の切屑移動バーは、前記左右方向と直交する前後方向で且つ前記切屑移送路に向けて所要長さ突出でき、且つ後退可能である。前記第1、第2の切屑移動バーが突出状態で前記テーブルが前記先側に向けて進行することにより、前記切屑堆積物が該第1、第2の切屑移動バーに押されて所要場所に向けて移動される。該テーブルが前記基側に向けて逆進行する際に該第1、第2の切屑移動バーが後退することにより、該切屑堆積物が該所要場所で分離されるようになされている。そして前記第1 の切屑移動バーは、後退することにより、前記切屑移送路上で前記切屑堆積物を分離し、該分離された切屑堆積物は、前記テーブルの前記逆進行後における該テーブルの再度の進行により、突出状態にある前記第2の切屑移動バーに押されて前記所要場所に向けて移動されるようになされており、該第2の切屑移動バーは、切屑排出場所としての該所要場所で後退して前記切屑堆積物を分離することを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械の第3の態様は、所要間隔を隔てる支柱の上部間を横架部材で連結してなる門型コラムの該横架部材の延長方向で、フライスを装着可能の主軸ヘッドが往復移動可能とされており、両該支柱の間を通るように、前記横架材の延長方向と直交する方向にテーブル移動路が設けられており、該テーブル移動路をその基側とその先側との間で往復移動し得るテーブル上に設置されたワークの被加工面に対して、該テーブルが該基側から該先側に向けて進行することによって前記フライスがフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された切屑が切屑移送路に堆積されるようになされている。前記テーブルと前記支柱の夫々との間に、前記テーブル移動路の延長方向に前記切屑移送路が設けられており、前記切屑排出装置は、前記テーブルの前記進行に伴い、前記切屑移送路に堆積された切屑堆積物を該切屑移送路の所要場所に向けて移動させるものであり、該テーブルの、前記横架部材の延長方向で見た両側部であって、且つ前記テーブル移動路の延長方向で見た両側部位に、第1の切屑移動バーと第2の切屑移動バーが設けられており、該第1、第2の切屑移動バーは、前記テーブル移動路の延長方向と直交する方向で且つ前記切屑移送路に向けて所要長さ突出でき、且つ後退可能である。前記第1、第2の切屑移動バーが突出状態で前記テーブルが前記先側に向けて進行することにより、前記切屑堆積物が該第1、第2の切屑移動バーに押されて所要場所に向けて移動され、該テーブルが前記基側に向けて逆進行する際に該第1、第2の切屑移動バーが後退することにより、該切屑堆積物が該所要場所で分離されるようになされている。そして前記第1 の切屑移動バーは、後退することにより、前記切屑移送路上で前記切屑堆積物を分離し、該分離された切屑堆積物は、前記テーブルの前記逆進行後における該テーブルの再度の進行により、突出状態にある前記第2の切屑移動バーに押されて前記所要場所に向けて移動されるようになされており、該第2の切屑移動バーは、切屑排出場所としての該所要場所で後退して前記切屑堆積物を分離することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械の第4の態様は、前記第2の態様において、前記第1の切屑移動バーが前記所要場所で後退して後、前記テーブルが前記基側へ移動するに先立って、該テーブルが、前記コラムから遠ざかるように所要距離、後方向に移動することにより、前記切屑移送路で分離された切屑堆積物と前記テーブルとの間の摩擦を低減させることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械の第5の態様は、前記第2の態様又は前記第3の態様において、前記切屑移送路の底面部は、テレスコカバーの上面部として構成され、該上面部が、前記コラムが存する側から前記先側に向けて下方に傾斜する下方傾斜面部として形成されており、該切屑移送路の該下方傾斜面部を前記先側に向けて移動する前記切屑堆積物の、前記第2の切屑移動バー及び前記下方傾斜面部に及ぼす圧縮圧力が、該切屑堆積物が前記下方傾斜面部を前記先側に向けて移動する間における下方への圧縮解放によって低減されるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械によるときは、該工作機械のフライス加工に伴い生成される線状切屑を切屑排出場所に向けて効果的に移動させて排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械を説明する斜視図である。
図2】テーブル上におけるワークの設置状態を示す平面図と、切屑移動バーが突出して、これが切屑堆積物に突き刺さった当接状態を説明する斜視図である。
図3】本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械を説明する平面図である。
図4】前テレスコカバーと、テーブルの左右方向での往復動の移動範囲を説明する説明図である。
図5】切屑移動バーの構成を、その突出状態及び後退状態と共に説明する説明図である。
図6】テーブルの左右方向での往復移動と、それに伴う第1、第2の切屑移動バーによる切屑堆積物の所要場所への移動作用を説明する説明図である。
図7】本発明に係る切屑排出装置を具える工作機械を、門型コラムを具える場合について説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1~4において本発明に係る切屑排出装置1aを具える工作機械(以下、工作機械ともいう)1は、フライス2を装着可能の主軸ヘッド3がコラム5に設けられており、テーブル移動路6をその基側7とその先側9との間で往復移動し得るテーブル10上に設置されたワーク11の被加工面12に対して、該テーブル10が該基側7から該先側9に向けて進行することによって前記フライス2がフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された、線状切屑を多く含む切屑13が、切屑移送路15に堆積されるようになされている。前記切屑排出装置1aは、前記テーブル10の前記進行に伴い、該切屑移送路15に堆積された切屑堆積物16を該切屑移送路15の所要場所17に向けて移動させるものであり、該テーブル10の側部19で、前記切屑移送路15に向けて所要長さ突出可能且つ後退可能の切屑移動バー20が設けられている。該切屑移動バー20が所要長さ突出した突出状態で前記テーブル10が前記先側9に向けて進行することにより、突出状態にある該切屑移動バー20に押されて前記切屑堆積物16が前記所要場所17に向けて移動され、該テーブル10が前記基側7に向けて逆進行する際に該切屑移動バー20が後退することにより、該切屑堆積物16が該所要場所17で分離される。
【0017】
このように、該切屑移動バー20が前記切屑堆積物16から抜けて該切屑堆積物16が前記所要場所17で分離されるため(図6(D))、分離された該切屑堆積物16が前記基側7に戻る現象は生じない。これによって、前記線状切屑13を生成して行われる前記フライス加工を円滑に継続できることとなる。以下、これを具体的に説明する。
【0018】
前記工作機械1は、本実施例においてはフライス盤として構成され、前記主軸ヘッド3に装着されたフライス2が、前記テーブル10上に設置された鋼材からなる前記ワーク11の上面21に対して所要のフライス加工を施す。該テーブル10は、プログラム制御によって、前記左右方向F1と前記前後方向F2に所要に移動できる。該テーブル10は、該前後方向F2に移動する移動台23上に前後所要間隔を置いて左右方向F1に延長する如く配設された前後の案内レール25,25に案内され、第1の駆動装置によって、前記左右方向F1で往復移動可能に構成されている。該第1の駆動装置は公知の構成を有しており、左右方向F1に延長する該前後の案内レール25,25間に第1の駆動ネジ軸が配設されてなり、該第1の駆動ネジ軸の一端部が、前記移動台23に固設された制御モータのモータ出力軸に連結されている。そして、前記テーブル10の下面部に設けられたナット部材に該第1の駆動ネジ軸が螺合されており、該制御モータによって該第1の駆動ネジ軸が正逆回転されることにより、前記テーブル10が左右方向F1で往復移動できる。該第1の駆動ネジ軸が正回転すると、前記テーブル10が図3に矢印F3で示すように前記基側7から前記先側9に向けて進行でき、該第1の駆動ネジ軸が逆回転すると、該テーブル10が図3に矢印F4で示すように前記基側7に向けて逆進行できる。
【0019】
そして前記移動台23は、前後方向に延長する如く工作機械のベッドに配設された複数本、例えば4本の案内レール26,26,26,26に案内され、第2の駆動装置
によって、前記前後方向F2で往復移動可能に構成されている。該第2駆動装置は公知の構成を有しており、左右隣り合う該案内レール26,26間に第2の駆動ネジ軸が配設されてなり、該第2の駆動ネジ軸の一端部が、前記ベッドに固設された制御モータのモータ出力軸に連結されている。そして、該移動台23の下面部に設けられたナット部材に該第2の駆動ネジ軸が螺合されており、該制御モータによって該第2の駆動ネジ軸が正逆回転されることにより、前記移動台23が前後方向F2で移動できる。該第2の駆動ネジ軸が正回転すると、前記移動台23上の前記テーブル10が図3に矢印F5で示すように前進でき、該第2の駆動ネジ軸が逆回転すると、該テーブル10が図3に矢印F6で示すように後進できる。
【0020】
又前記主軸ヘッド3は、左右の上下方向案内レール27,27に案内されて、プログラム制御により上下方向F7(図1)で往復移動可能に構成されている。
【0021】
本実施例においては、前記テーブル10の左右方向F1及び前後方向F2での移動面部分を、前記フライス加工により生ずる切屑から保護するために、各移動面部分を覆うようにテレスコカバー29を設けている。該テレスコカバー29は、前記テーブル10の左右方向F1及び前後方向F2の動きに合わせて複数のカバー部材が伸縮できるように、上下のカバー部材が入れ子状に重ね合わせられてなるものである。
【0022】
前後方向の移動面部分を覆う前記テレスコカバー29の内の、前記テーブル10の前側に配設されている前テレスコカバー29aは、図1図3~4に示すように、左右方向の中央部30から前記先側9に向かう部分が、下方に傾斜する(傾斜角度は、例えば、水平面に対して下向に15度)先側の下方傾斜面部31に形成されると共に、その下端32で先側垂下片部33が下設されている。又前記前テレスコカバー29aの左右方向の前記中央部30から前記基側7に向かう部分は水平面部35に形成されると共に、該水平面部35の先端で、下方に傾斜する基側の下方傾斜面部36が連設されると共に、その下端37で基側垂下片部38が下設されている。かかる構成を有する前テレスコカバー29aの上面部(主として、前記水平面部35と前記先側の下方傾斜面部31)は、前記切屑移送路15の底部を構成している。
【0023】
本実施例においては図4に示すように、前記テーブル10が前記基側7に位置した状態では、後述する第1の切屑移動バー20aは、前記前テレスコカバー29aの前記基側の下方傾斜面部36の下端37の外方に所要距離Llを隔てて位置している。該下端37の外方側の空間部分34は、後述する第1の切屑移動バー20aが前記基側7に運んできた幾らかの切屑がある場合や飛んできた切屑がある場合に該切屑を落下させて排除する場所であり、切屑収容バケット(図示せず)が設置されている。又、前記テーブル10が前記基側7に位置した状態で、後述する第2の切屑移動バー20bは、前記中央部30より稍基側7寄りに位置している。
【0024】
一方前記テーブル10が前記先側9に位置した状態では、後述する第1の切屑移動バー20a は、前記中央部30より稍先側9寄りに位置している。又後述する第2の切屑移動バー20bは、前記前テレスコカバー29aの前記先側の下方傾斜面部31の下端32の外方に所要距離L2、例えば300~500mmの距離を隔てて位置している。該下端32の外方側の空間部分39は、前記第2の切屑移動バー20bから分離された切屑堆積物16を落下させて排除する切屑排出場所40であり、その下側にはベルトコンベア(図示せず)が配設されている。
【0025】
本実施例において、前記テーブル10が前記先側9に位置した状態における後述する第1、第2の切屑移動バー20a,20bが存する場所の近辺を前記所要場所17という。
【0026】
一方、前後方向の移動面を覆うテレスコカバー29の内の、前記テーブル10の後側に位置する後テレスコカバー29bは、図1に示すように、左右方向の中央面部48の両側部分が下方に傾斜する傾斜面部に形成されると共にその下端で垂下片部が下設されている。
【0027】
なお図1においては、説明の便宜上、前記テーブル10の左右方向F1の移動面部分を覆うテレスコカバー29の図示を省略している。
【0028】
前記テーブル10の、左右方向F1及び前後方向F2での所要の移動制御と、前記主軸ヘッド3の上下方向F7(図1)での所要の移動制御によって、前記フライス2が、前記テーブル10上に設置された前記ワーク11(図1~2)の前記被加工面12に対して所要のフライス加工を施す。
【0029】
該フライス加工に伴い、線状切屑を多く含む切屑13(図2(B)が生成される。前記切屑移送路15に堆積した該切屑13は、前記切屑移動バー20による前記切屑移送路15での切屑移動作用によって、前記切屑排出場所40等としての前記所要場所17に移動される。
【0030】
前記構成を有する前記テーブル10の移動量は、前記ワーク11の前記左右方向F1での長さを考慮して所要に設定されるものである。
【0031】
次に、前記テーブル10に設けられている前記切屑移動バー20の構成を図5に基づいて説明する。該切屑移動バー20は、図1図3に示すように、前記テーブル10の側部(本実施例においては前部55)19の、前記左右方向F1で見た両側部位に設けられており、前後方向に長い例えば角棒状(図5(D))を呈し、その先端部分44は先細に形成されている。より具体的には、前記テーブル10の左右端部位41,42(図1)の下部を切欠して形成された収容凹所43(図5(D))に、往復運動装置45と共に配設されている。該切屑移動バー20は、図5(D)に示すように、該収用凹所43の頂面部46に前記前後方向F2で固定されたガイドレール47にガイドされる摺動部材49、49がその前後に固定されており、該切屑移動バー20は、該摺動部材49,49が該ガイドレール47を摺動することによって前後進でき、前記切屑移送路15に向けて所要長さ突出可能且つ後退可能となる。
【0032】
前記往復運動装置45は、例えばエアシリンダ50を以て構成されており(図15(B))、該エアシリンダ50の往復運動部51の連結部52が前記切屑移動バー20の後端側部位53に連結されている(図5(B))。然して、該往復運動部51が前進すると前記切屑移動バー20が前進して前記突出状態を呈し、該切屑移動バー20が、前記切屑移送路15に堆積状態にある前記切屑堆積物16(図2(B))に、突き刺し状態となる等によって当接できる。この突き刺しは、前記先端部分44(図5)が先細に形成されているために無理なく行われる。
【0033】
今、図3において、前記テーブル10の前記左端部位41に配置されている切屑移動バー20を第1の切屑移動バー20aとし、前記テーブル10の前記右端部位42に配置されている前記切屑移動バー20を第2の切屑移動バー20bとする。
【0034】
前記テーブル10が、前記テーブル移動路6の前記基側7に存する停止状態(図3)では、図6(A)に示すように、該第1、第2の切屑移動バー20a,20bは、共に、前記エアシリンダ50の前記往復運動部51の後進によって、前記先端部分44のみが前記テーブル10の前記側部19(本実施例においては前記テーブル10の前部55)で突出した後退状態を呈する。該前部55からの該先端部分44の突出量は極小さい(例えば20mm程度)ために、該先端部分44に前記線状切屑13が絡み付く恐れはない。なお該第1、第2の切屑移動バー20a,20bは、その先端が該前部55に合致し乃至該前部55に沈む状態の後退状態を呈してもよい。
【0035】
そして、前記第1、第2の切屑移動バー20a,20bは、前記テーブル10が前記進行する際に突出(例えば300mm程度突出)でき、該突出により、前記切屑移送路15に堆積状態にある前記切屑堆積物16に当接するようになされている(図2(B))。そして、その後におけるテーブル10の前記先側9に向けての移動によって、該切屑堆積物16は、該切屑移動バー20a,20bに押されて前記所要場所17に向けて移動される(図6(B)(C))。
【0036】
本実施例においては、前記第1の切屑移動バー20aは、図6(C)に一点鎖線で示すように、該切屑堆積物16の前記基側7の端部分等に押し当たる状態に当接する。一方前記第2の切屑移動バー20bは、前記切屑堆積物16の前記基側7の端部分等に押し当たる状態に当接でき、或いは図6(B)(C)に示すように、該切屑堆積物16に突き刺し状態に当接できる。
【0037】
本実施例においては、前記テーブル10が前記テーブル移動路6の前記基側7に存する停止状態において、前記第2の切屑移動バー20bは、図6(A)(B),図4に示すように、前記中央部30よりも前記基側7寄りに位置される。
【0038】
然して前記テーブル10が、該停止状態から前記先側9に向けて移動することにより、前記フライス2によるフライス加工が施されて線状切屑を多く含む切屑が生成される。該フライス加工は、該フライス2が平面視で時計回りに回転することによって行われ、該テーブル10が前記基側7に向けて移動する際には行われない。その結果、生成される前記切屑13の殆どが前記切屑移送路15に堆積する。
【0039】
該切屑移動バー20a,20bの突出は、前記テーブル10が進行する際に行われるものである。ここに、「前記突出が、前記テーブル10が進行する際に行われる」とは、図6(B)に示すように、前記突出が、前記テーブル10が停止した状態から前記進行を開始する直前に行われることの他、図6(C)に一点鎖線で示すように、該テーブル10が前記先側9に向けて進行中において該突出が行われることもある、ことを意味する。該突出を該テーブル10の進行中において行うことは、フライス加工の能率化を図る上で好ましい。
【0040】
該テーブル10の進行によって、前記切屑堆積物16に当接した状態にある前記第1の切屑移動バー20aは、図6(C)に一点鎖線の矢印で示すように、前記切屑移送路15の前記先側の下方傾斜面部31(図4)の上側部分56(所要場所17)(図4)に向けて移動する。この移動に伴い、該第1の切屑移動バー20aが、図6(C)に一点鎖線で示すように、前記切屑堆積物16を前記先側9に向けて押し、最終的には、図6(C)に実線で示すように、該上側の部分56(前記所要場所17)に移動させる。
【0041】
又該テーブル10の前記進行によって、前記突き刺しにより前記切屑堆積物16に当接状態にある前記第2の切屑移動バー20bは、図6(C)に一点鎖線の矢印で示すように移動し、最終的には図6(C)に実線で示すように、前記切屑移送路15の前記先側の下方傾斜面部31の下端32(図4)の外方に向けて移動する。この移動に伴い、該第2の切屑移動バー20bが前記切屑堆積物16を押して、図6(C)に実線で示すように、該下端32の外方側の空間部分39( 前記所要場所17であり、前記切屑排出場所40) に移動させる。このように切屑堆積物16が、前記第1、第2の切り屑移動バー20a,20bによって所要場所17に移動されるのであるが、この移動は、粉状の切屑の移動も伴う。粉状の切屑は、移動する線状切屑の固まりが箒のように作用して移動され易い。
【0042】
該切屑排出場所40(図4に示す前記L2の範囲)に到達した該切屑堆積物16(図6(C))は、前記テーブル10が前記基側7に向けて逆進行する際に、該第1、第2の切屑移動バー20a,20bが、図6(D)に矢印で示すように後退することにより、前記切屑堆積物16が図6(D)に示すように、該第1、第2の切屑移動バー20a,20bから分離される。該第2の切屑移動バー20bから分離された前記切屑堆積物16は、前記ベルトコンベア上に落下する。該ベルトコンベアに乗った切屑は所定場所に搬出される。ここに、「前記後退が、前記テーブル10が逆進行する際に行われる」とは、前記テーブル10が前記所要場所17で完全に停止した状態で行われることを意味する他、該テーブル10が前記基側7に向けて逆進行中において行われる(該後退は、本実施例においては前記L2の範囲で行われる)ことを意味する。本実施例において、該第2の切屑移動バー20bによる該切屑堆積物16の分離のための該後退を該テーブル10の逆進行中において行うことは、フライス加工の能率化を図る上で好ましい。
【0043】
該第1 の切屑移動バー20aに押されて移動された切屑堆積物16は、図6(D)に示すように、前記所要場所17である前記上側の部位56(図4図6(D))で、該第1の切屑移動バー20aの後退によって分離されるのであるが、特に本実施例においては、その後における前記テーブル10の前記基側7への移動に先立って該テーブルが若干後方向に移動するようになされている。
【0044】
このように後方向に移動させるのは次の理由による。即ち、前記第1の切屑移動バー20aにより前記切屑移送路15で押されて次第に嵩を増し前記所要場所17で分離された切屑堆積物16(図6(D)は圧縮状態にあるが、その圧縮度合が高い場合は、該切屑堆積物16と前記テーブル10の間の摩擦力が大きくなる場合が生ずる。そのため、該テーブル10が前記基側7に向けて移動(逆進行)する際に、圧縮状態にある該切屑堆積物16の略全体又は一部分が、該テーブル10と共に前記基側7に戻る場合が生ずる。そこで本実施例においては、該逆進行の際に前記テーブル10を、例えば150mm程度後方向に移動させて前記摩擦を低減させることとしている。
【0045】
前記テーブル10が前記基側7に戻った後に2列目のフライス加工を行う場合は、図6(B)(C)に矢印で示すように、該テーブル10を前記先側9に向けて再度進行させる。このとき、前記摩擦低減のために後方向に移動した前記テーブル10は、該2列目のフライス加工に先立って、通常位置に復帰した状態にある。このフライス加工の際、図6(C)に一点鎖線で示すように、前記第1、第2の切屑移動バー20a,20bが突出する。この突出により前記と同様にして、前記第1の切屑移動バー20aは、前記切屑移送路15に堆積状態にある切屑堆積物16に押し当たる状態に当接し始め、且つ前記第2の切屑移動バー20bは、図6(B)に示すように、切屑堆積物16に押し当たる状態や突き刺し状態に当接する。
【0046】
該第2の切屑移動バー20bによって押し当たる状態や突き刺し状態とされる切屑堆積物16は、前の工程において前記第1の切屑移動バー20aにより前記上側の部分56(前記所要場所17)に移動された前記切屑堆積物に新たな切屑が積層されてなるものであるので、該切屑堆積物は嵩が張り圧縮された状態にある。
【0047】
その後における前記テーブル10の前記進行によって、該第2の切屑移動バー20bは図6(C)に基づいて前記したと同様に、該切屑堆積物16を前記所要場所17(切屑排出場所40)に向けて移動させる。この移動は、該切屑堆積物16が前記先側の下方傾斜面31を移動しながら行われるものであるため、その移動に伴い、該切屑堆積物16の圧縮度合が、該切屑堆積物16が前記先側の下方傾斜面部31(図4)で下方に逃げて、低減される。従って、前記切屑堆積物16の前記先側9に向けての移動を、突出状態にある前記第2の切屑移動バー20bや前記先側の下方傾斜面部31に無理な外力を作用させることなく円滑に行うことができる。
【0048】
以上の工程の繰り返しによって、フライス加工に伴い生成される前記切屑の排出が円滑に行われる。前記のように切屑排出場所40で分離された切屑堆積物16は、前記したように前記ベルトコンベアで所定場所に搬出される。或いは、手作業で所定場所に搬出される。
【0049】
本実施例においては、このように、前記第1、第2の切屑移動バー20a,20bの連携によって、前記切屑排出場所40に向けての切屑堆積物16の2段階移動制御が行われる。該2段階移動制御は、要するに、前記第1の切屑移動バー20aによって切屑堆積物16が前記先側9に向けて移動されても、移動された該切屑堆積物16と前記切屑排出場所40とが離れている場合におけるものであり、該第1の切屑移動バー20aにより前記先側9に向けて移動されて前記所要場所17で分離された切屑堆積物16を、前記テーブル10の前記逆進行後における該テーブル10の再度の進行による前記第2の切屑移動バー20bの、突出状態での切屑移動作用によって、前記切屑排出場所40に向けて移動させる制御である。
【0050】
なお、前記テーブル10の前記進行を複数回行うことによってフライス加工が行われる場合における最後の列のフライス加工が完了したとき、或いは、フライス加工が前記テーブルの1回の進行で完了したときにおいては次の制御を行う。即ち、前記第1の切屑移動バー20aによって前記所要場所17に移動された切屑堆積物を、前記第2 の切屑移動バー20bによって前記切屑排出場所40に移動させるために、前記テーブル10の前記逆進行後における該テーブル10の再度の進行の際に、後退状態にある前記第2の切屑移動バー20bを突出状態とする。これによって、該第2の切屑移動バー20bを、該所要場所17に存する切り屑堆積物16に押し当たる状態や突き刺し状態で当接させ、その後、該切屑堆積物16を前記切屑排出場所40に向けて、押して移動させる。
【0051】
なお本実施例においては、前記テーブル10の前記側部19に、第1、第2の切屑移動バー20a,20bが設けられているため、所定のフライス加工が完了した段階で、該第1、第2の切屑移動バー20a,20bを突出状態にして該テーブル10を最大ストロークで所要回数往復移動させることにより、前記切屑移送路15に残存していた切屑を前記外方側の空間部39,59で良好に排除でき、これにより、前記切屑移送路15を清掃できることとなる。
【実施例2】
【0052】
図7は、本発明に係る切屑排出装置1aを備える工作機械1の他の態様を示すものであり、所要間隔を隔てる支柱57,57の上部60,60間を横架部材61で連結してなる門型コラム62の該横架部材61の延長方向F8で、フライス2を装着可能の主軸ヘッド3が往復移動可能とされている。該移動によって、前記フライス2はワーク11の被加工面12を、位置をずらして順次加工できる。該主軸ヘッド3の移動の構成は公知手段による。該支柱57,57の間を通るように、前記横架部材61の前記延長方向F8と直交する方向F9にテーブル移動路6が設けられている。そして、該テーブル移動路6をその基側7とその先側9との間で往復移動し得るテーブル10上に設置された前記ワーク11の前記被加工面(図7においては上面)12に対して、該テーブル10が該基側7から該先側9に向けて進行することによって前記フライス2がフライス加工を施し、該フライス加工に伴い生成された、線状切屑を多く含む切屑が切屑移送路15に堆積されるようになされている。該テーブル10の往復移動(前記延長方向F9での往復移動)のための駆動装置は、実施例1で説明した前記第1の駆動装置と同様に構成できる。
【0053】
前記テーブル10と前記支柱57,57の夫々との間には、前記テーブル移動路6の前記延長方向F9に切屑移送路15,15が設けられている。前記切屑排出装置1aは、前記テーブル10の前記進行に伴い、前記切屑移送路15,15に堆積された切屑堆積物16を該切屑移送路15の所要場所17に向けて移動させるものである。そして本実施例においては、該テーブル10の、前記横架部材61の延長方向F9で見た両側部19,19であって、且つ前記テーブル移動路6の延長方向F9で見た両側部位に、第1の切屑移動バー20aと第2の切屑移動バー20bが設けられている。該第1、第2の切屑移動バー20a,20bは、前記延長方向F8と直交する方向で且つ前記切屑移送路15に向けて所要長さ突出でき、且つ後退可能である。
【0054】
該第1、第2の切屑移動バー20a,20bは、共に、例えば前記したと同様の構成によって、前記切屑移送路15に向けて所要長さ突出した突出状態と、前記先端部分44のみが前記テーブル10の側部19で突出した後退状態を呈し得る。前記第1、第2の切屑移動バー20a,20bが該突出状態で前記テーブル10が前記先側9に向けて進行することにより、前記切屑堆積物16が該第1、第2の切屑移動バー20a,20bに押されて所要場所17(切屑排出場所40)に向けて移動される。そして、該テーブルが前記基側7に向けて前記逆進行する際に該第1、第2の切屑移動バー20a,20bが後退することにより、該切屑堆積物16が前記切屑移送路15上で分離される。該第1の切屑移動バー20aの後退によって分離された該切屑堆積物16は、実施例1で説明したと同様に、前記テーブル10の前記逆進行後における該テーブル10の再度の進行により、前記第2の切屑移動バー20bに押されて所要場所17に向けて移動される。該第2の切屑移動バー20bは、切屑排出場所40としての前記所要場所17で後退して前記切屑堆積物16を分離する。
かかる該第1、第2の切屑移動バー20a,20bの連携による切屑堆積物16の排出作用は実施例1で具体的に説明したところと同様であるため、その説明を省略する。
【実施例3】
【0055】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0056】
(1) 本発明に係る切屑排出装置1aを具える工作機械1は、フライス2を装着可能の主軸ヘッド3がコラム5に設けられた構成を有するものであれば、フライス盤の他マシニングセンターであってもよい。該工作機械1によるフライス加工は、ワーク11の上面(被加工面12)に対して施されることの他、ワークの側面(被加工面12)等に対して施されることもある。
【0057】
(2) 前記切屑移動バー20は前記テーブル10の側部19で、前記切屑移送路15に向けて所要長さ突出可能且つ後退可能に設けられるものであり、例えば実施例2で説明したように、該テーブル10の対向する側部19,19に設けられることもある。又前記門型コラム62を有する工作機械の場合、切屑の発生状態を考慮して、テーブル10の一方の側部にのみ前記切屑移動バー20を設けることもある。
【0058】
(3) 前記切屑移動バー20は、前記切屑堆積物16を前記所要場所17に向けて移動させることができ、且つ、前記切屑堆積物16を前記所要場所17で分離させることができるならば、前記テーブルの側部19でのその突出方向は限定されない。
【0059】
(4) 前記テーブル10に設けられる前記切屑移動バー20の本数は、フライス加工に伴い生成される線状切屑13を、該切屑移動バー20の突出と後退の動作、及び、前記テーブル10の前記進行と前記逆進行の動作によって前記切屑排出場所40で排出できるように所要本数に設定されるものである。前記2段階移動制御によっても前記切屑堆積物16の全体を前記切屑排出場所40に向けて移動させることができない場合は、前記テーブル10の側部19に所要間隔を置いて3本の切屑移動バー20を、前記切屑移送路15に向けて突出可能且つ後退可能に設けることもある。
今、該切屑移動バー20を、前記基側7から前記先側9に向けて第1の切屑移動バー、第2の切屑移動バー、第3の切屑移動バーとすれば、該第1の切屑移動バーが、設定された第1の所要場所に移動させた切屑堆積物を、前記第2の切屑移動バーが、これに新たに積層された切屑と共に、前記第1の所要場所よりも前記先側寄りに設定された第2の所要場所に移動させる。その後、該第3の切屑移動バーが、該第2の所要場所に移動された該切屑積層物を、これに新たに積層された切屑がある場合は該積層された切屑と共に、前記排出場所40に移動させて排出させる。
該切屑移動バー20の本数は、その他、複数本には限られず1本であってもよい。この場合は、前記テーブル10の移動に伴い、該1本の切屑移動バー10が、前記切屑移送路15に存する切屑堆積物16を前記切屑排出場所40に向けて移動させる。
【0060】
(5) 前記切屑移動バー20を前記テーブル10に設ける部位は、前記フライス加工の障害にならない部位であれば、前記前部55の延長方向の中央部位等、該テーブル10の側部19の所要部位に設定できる。
【0061】
(6) 前記切屑移動バー20は、前記テーブル10の前記進行時に行われる前記フライス加工に伴い生成される切屑を排出するために、所要の切屑移動動作を行う。そのため該切屑移動バー20の突出動作は、該生成される切屑の発生量に応じて適宜に行われるものである。前記テーブル10の毎進行時に該突出動作を行うとは限らず、フライス加工の途中段階で必要回数だけ行うことができ、或いは、所要のフライス加工が完了した時点でのみ該突出動作を行わせることもできる。
【0062】
(7) 前記テーブル10の前後方向の移動面を覆う前記テレスコカバー29は、その上面が水平面に構成されることもある。又、該テレスコカバー29は省略されることもある。
【0063】
(8) 前記テーブル10の、前記左右方向で見た両側に第1の切屑移動バー20aと第2の切屑移動バー20bが設けられる場合、前記2段階制御ではなく、該第1、第2の切屑移動バー20a,20bが共に、前記切屑堆積物16を前記切屑排出場所40に向けて移動させるように構成することもできる。
又、該第1、第2の切屑移動バー20a,20bを、前記のように同時に突出、後退させることの他、生成される切屑の発生量に応じて必要な前記切屑移動バー20のみを突出、後退させることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 切屑排出装置を具える工作機械
1a 切屑排出装置
2 フライス
3 主軸ヘッド
5 コラム
6 テーブル移動路
7 基側
9 先側
10 テーブル
12 被加工面
13 切屑
15 切屑移送路
16 切屑堆積物
17 所要場所
19 テーブルの側部
20 切屑移動バー
29 テレスコカバー
30 中央部
31 先側の下方傾斜面部
40 切屑排出場所
62 門型コラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7