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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】柱脚金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240619BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
E04B1/58 511L
E04B1/58 507L
E04B1/26 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022055744
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147953
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】596036692
【氏名又は名称】株式会社タツミ
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】山田 塁史
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089160(JP,A)
【文献】特開2011-247029(JP,A)
【文献】特開2004-108141(JP,A)
【文献】特開2010-059765(JP,A)
【文献】実開平07-040810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎または土台に固定する基体部に、柱の下部に挿入しこの柱の側方から挿入される連結ピンが挿入されることでこの柱と連結する連結孔が設けられている柱挿入棒部が立設状態に設けられているとともに、前記柱下面を受けてこの柱を支持する柱受部が設けられている柱脚金具であって
前記柱受部は、前記基体部に着脱自在に設けられていて、前記柱の断面寸法に応じて取り換えできる構成とされているとともに、
この柱受部には、前記柱挿入棒部が貫通配設される柱挿入棒部貫通孔が設けられていて、この柱挿入棒部貫通孔は、前記柱挿入棒部の基部の前記基体部との溶接部を逃げる開口径もしくは高さ位置に設定されていて、
前記基体部に係止部または係止部に係合する係合部が設けられているとともに、前記柱受部には前記係合部または前記係止部が設けられていて、
前記柱受部は、前記係止部と前記係合部との係合により前記基体部の上部に着脱自在にして位置決め状態に設けられる板材で構成されているとともに、前記柱の断面寸法の大小に応じて異なる大きさに取り換えできる構成とされていることを特徴とする柱脚金具。
【請求項2】
前記基体部は、前記基礎または前記土台に設けられているアンカーボルトを貫通させナットを締め付けて固定するベース部と、このアンカーボルトと前記ナットとを避けた高さおよびこのナットを工具で締め付けできる高さに浮上状態に設けた架設部とからなる構成とされていて、
前記基体部の上部の前記架設部に基部が溶接されて前記柱挿入棒部が立設状態に設けられている構成とされていて、
前記架設部の上部に前記柱受部が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の柱脚金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎上または基礎上に横架する土台上に立設する柱を支承し固定する柱脚金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば基礎上に横架した土台上に立設する柱を支承し固定する柱脚金具は、この基礎に設けられ土台から上方に突出しているアンカーボルトに貫通するようにしてこの土台上にこの金具の基体部を配置し、このアンカーボルトにナットを螺着し締め付けてこの基体部を土台上に締め付け固定し、またこの基体部には柱受部を設け、この柱受部には柱挿入棒部(たとえばホゾパイプ)を溶接するなどして立設し、この柱挿入棒部が柱下面の下部孔に挿入されるようにしてこの柱受部上に柱を立設し、さらにこの柱の側方から連結ピン(たとえばドリフトピン)を挿入しこの柱挿入棒部の連結孔に挿入して連結し、柱を土台上に固定する構成としている。
【0003】
従来、このような柱脚金具には様々な構成のものが提案されている。たとえば、基体部と柱受部とを別パーツ構成としてこの基体部に重合させる柱受部にはナット逃げ孔や凹部を設けたり、この柱受部を着脱自在に構成してこの柱受部を基体部から取り外すことでナットによる締め付け固定操作が容易となるように構成したものなどがある。
【0004】
しかしながら、従来、柱の大きさに応じて別の金具を特注製作せずに、着脱自在に設ける柱受部の大きさを変えたものに取り換え係止することで柱の大きさの違いに容易に対応できるものはなく、しかも柱挿入棒部の基部を基体部に溶接していてこの溶接部の大きさや形状に応じて柱下面にこの溶接部を逃げる溶接部逃げ凹部の木材加工をも要しないものはない。
【0005】
またさらに、単にアンカーボルトに締め付け固定するためのナットを逃げるように構成するだけでなく、柱の建て入れ後(施工後)に柱受部をもはや外せない状況でもこのナットを締め付けるナット締め付け固定作業を行うこともでき、しかもこのような構成でありながらも柱受部は柱挿入棒部の基部の溶接部をも逃げる構成とされていて柱下面にこれを逃げる木材加工を要しない構成のものもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような現状に鑑み、前記問題を解決したもので、柱の大きさに応じて別の金具を特注製作せずに、柱受部を取り換え自在な構成とすることで、柱の大きさの違いに容易に対応できるとともに柱支承強度が常に確保でき、しかも柱挿入棒部の基部を基体部に溶接していてこの溶接部の大きさや形状に応じて柱下面にこの溶接部を逃げる溶接部逃げ凹部の木材加工をも要しないため、施工が容易となるなど実用性に優れた柱脚金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
基礎1または土台2に固定する基体部3に、柱4の下部に挿入しこの柱4の側方から挿入される連結ピン5が挿入されることでこの柱4と連結する連結孔6が設けられている柱挿入棒部7が立設状態に設けられているとともに、前記柱4下面を受けてこの柱4を支持する柱受部8が設けられている柱脚金具であって前記柱受部8は、前記基体部3に着脱自在に設けられていて、前記柱4の断面寸法に応じて取り換えできる構成とされているとともに、この柱受部8には、前記柱挿入棒部7が貫通配設される柱挿入棒部貫通孔9が設けられていて、この柱挿入棒部貫通孔9は、前記柱挿入棒部7の基部の前記基体部3との溶接部10を逃げる開口径もしくは高さ位置に設定されていて、前記基体部3に係止部15または係止部15に係合する係合部16が設けられているとともに、前記柱受部8には前記係合部16または前記係止部15が設けられていて、前記柱受部8は、前記係止部15と前記係合部16との係合により前記基体部3の上部に着脱自在にして位置決め状態に設けられる板材で構成されているとともに、前記柱4の断面寸法の大小に応じて異なる大きさに取り換えできる構成とされていることを特徴とする柱脚金具に係るものである。
【0009】
また前記基体部3は、前記基礎1または前記土台2に設けられているアンカーボルト11を貫通させナット12を締め付けて固定するベース部13と、このアンカーボルト11と前記ナット12とを避けた高さおよびこのナット12を工具で締め付けできる高さに浮上状態に設けた架設部14とからなる構成とされていて、前記基体部3の上部の前記架設部14に基部が溶接されて前記柱挿入棒部7が立設状態に設けられている構成とされていて、前記架設部14の上部に前記柱受部8が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の柱脚金具に係るものである。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、柱の大きさに応じて別の金具を特注製作せずに、柱受部を取り換え自在な構成とすることで、柱の大きさの違いに容易に対応できるとともに柱支承強度が常に確保でき、しかも柱挿入棒部の基部を基体部に溶接していてこの溶接部の大きさや形状に応じて柱下面にこの溶接部を逃げる溶接部逃げ凹部の木材加工をも要しないため、施工が容易となるなど実用性に優れた柱脚金具となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の斜視図である。
図2】実施例1の分解斜視図である。
図3】実施例1の使用状態の説明斜視図である。
図4】実施例2の斜視図である。
図5】実施例2の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0014】
基体部3を基礎1または土台2に固定し、この基体部3に設けた柱受部8に柱4を支承するとともに、この基体部3に立設した柱挿入棒部7をこの柱4の下部に挿入し柱4を立設する。
【0015】
さらにこの柱4の側方から挿入する連結ピン5をこの柱挿入棒部7の連結孔6に挿入して、柱4を柱受部8で支承するとともに柱4と柱挿入棒部7とを連結して、基礎1または土台2上に柱4を固定する構成としている。
【0016】
この基体部3の固定は、たとえば、基礎1または土台2に設けられ上方に突出しているアンカーボルト11が貫通するようにして基体部3を基礎1または土台2上に配置し、このアンカーボルト11にナット12を螺着してこれを締め付けてこの基体部3を固定する。
【0017】
また本発明のこの柱受部8は、前記基体部3に着脱自在に設けられていて、柱4の断面寸法に応じた大きさのものに容易に取り換え係止できる構成としている。
【0018】
したがって、従来は、柱4断面の大きさに応じて既製品の柱脚金具を選定したり適切なものがなければオーダーメイドしたりしていたため、種類の少ない既製品の中で寸法が合わなければ、柱支承強度などの問題で使用できずオーダーメイドとならざるを得なく、そのためコスト高となる上、納期まで時間もかかっていたが、本発明によれば、柱受部8をたとえば製作がきわめて容易な金属板材とし、これを柱4断面に応じた適切な大きさに形成し、または複数種用意しておき、これを基体部3に組み合わせることで、きわめて容易に柱4断面の大きさに適切に対応できる構成となる。
【0019】
すなわち、柱脚金具の製作容易な1部品である着脱自在な柱受部8を取り換え係止するだけでよく、たとえば常に柱4断面より少し大きい柱受部8上面で柱4を支承できるから、柱4が傾くおそれがなく支承強度に優れた柱脚金具となる。
【0020】
また本発明の柱受部8の中央部には、前記基体部3に基部を溶接して立設した柱挿入棒部7が貫通配設される柱挿入棒部貫通孔9が設けられていて、この柱挿入棒部貫通孔9は、この柱挿入棒部7の基部の溶接部10を逃げる開口径もしくは逃げるに十分な高さ位置に設定されている。
【0021】
そのため、柱挿入棒部7の基部の溶接部10が柱4下面と干渉しないように、溶接部10の大きさや形状に応じて柱4下面にこの溶接部10を逃げる溶接部逃げ凹部を切削加工することも要しないため、さらに施工が一層容易となるなど実用性に優れた柱脚金具となる。
【0022】
すなわち、柱受部8を溶接干渉回避用部品として基体部3に着脱自在に設け、この柱受部8に前記柱挿入棒部7が貫通配設される柱挿入棒部貫通孔9を設け、たとえばこの柱挿入棒部貫通孔9の開口径を溶接部10を避けるように大きくしこの溶接部10が上面から突出しない板厚とする、または溶接部10を避けるように溶接部10より柱受部8が高い位置となるように構成する。
【0023】
したがって、柱受部8の上面の支承面は平坦であり溶接部10が柱4下面に干渉することはないから、溶接部10と柱4下面とが干渉しないように溶接部10を逃げるための木材加工を要しない。
【0024】
また、たとえば、さらに前記基体部3を、前記基礎1または土台2上に前記アンカーボルト11とナット12とで固定するベース部13と、このアンカーボルト11とナット12とを避けた高さおよびこのナット12を側方などから差し入れる工具で締め付け固定操作できる高さに浮上状態に設けた架設部14とからなる構成とし、この基体部3の架設部14に基部を溶接して前記柱挿入棒部7を立設状態に設けた構成とすることで、さらに柱4の建て入れ後に柱受部8が外せない状況でもこのナット12を締め付けるナット締め付け固定作業も容易に行うことができ、しかもこのような構成でありながらも柱受部8には柱挿入棒部7の基部の溶接部10をも逃げる構成とされていて柱受部8の上面は平坦に構成でき、柱4下面に溶接部10を逃げる加工を要しないため、さらに一層施工が容易となる優れた柱脚金具となる。
【0025】
またさらに、この柱受部8を取り外すことで、ナット12がたとえば前記架設部14があってもこれを高くあるいは必要最小限の大きさに設定すれば、ナット12をアンカーボルト11に螺着してベース部13を締め付け固定する締め付け作業が一層容易となり、施工が容易となる。
【実施例1】
【0026】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施例は、コンクリート製の基礎1上に構築する木材建築物の柱4を固定する柱脚金具であって、具体的には基礎1上に横架する土台2上に柱4を立設状態に固定する柱脚金具に本発明を適用したものである。
【0028】
この本実施例の柱脚金具は、土台2上に固定する基体部3と、柱4を受ける柱受部8とからなり、この基体部3に、柱4の下部に挿入しこの柱4の側方から挿入される連結ピン5(ドリフトピン)が連結孔6に挿入されることでこの柱4と連結する柱挿入棒部7を立設状態に設けた構成としている。
【0029】
また本実施例は、柱4下面を受けてこの柱4を支承する前記柱受部8は、前記基体部3に着脱自在に設けた構成とし、柱4の断面寸法に応じて取り換え係止固定できる構成としている。
【0030】
またこの柱受部8の中央部には、前記柱挿入棒部7が貫通配設される柱挿入棒部貫通孔9を設け、この柱挿入棒部貫通孔9は、前記柱挿入棒部7の基部の前記基体部3との溶接部10を逃げる開口径もしくは溶接部10を逃げる浮上高さ位置となるように設定した構成としている。
【0031】
具体的には、前記基体部3は、前記基礎1に設けられているアンカーボルト11を基礎1上に横架した土台2上に突出させ、この土台2の上方に突出しているアンカーボルト11の上端部を貫通させるようにして土台2上に配置し、このアンカーボルト11にナット12を螺着し締め付け固定するベース部13と、このアンカーボルト11とナット12とを避けた高さおよびこのナット12を側方から差し入れる締め付け工具で締め付けできる高さに浮上状態に設けた架設部14とからなる構成として、この基体部3の架設部14に基部を溶接して前記柱挿入棒部7を立設状態に設けた構成としている。
【0032】
また本実施例では、基体部3の下部に板材で形成したベース部13上に、一対の架設用脚部17間の上部に水平架設板部を設けて構成した門状の架設部14を設けた構成とし、この架設部14の上部に重合状態に板状の前記柱受部8を着脱自在に設けた構成としている。
【0033】
さらに説明すると、本実施例は前記基体部3の前記架設部14の架設用脚部17の上端部に上方に突出する係止部15を設け、前記柱受部8にはこの係止部15に係合する係合孔状の係合部16をそれぞれ四隅に設けた構成として、柱受部8は、前記係止部15と前記係合部16との係合により基体部3の架設部14の上部に、位置決め状態にして容易に着脱自在に設けた構成とし、柱4の断面寸法の大小に応じて適切な大きさに取り換え係止できる構成としている。
【実施例2】
【0034】
また、前記実施例1では、柱受部8は方形平板材で構成したが、実施例2ではこの柱受部8は接地脚部18を有する断面コ字型の折曲脚付き板材で構成している。
【0035】
具体的には、基体部3の外周の1辺の長さのたとえば1.4~1.6倍の長さとなるような柱受部8となる場合は、柱4の傾きと圧縮耐力性能を向上させるため、この着脱自在に係止する柱受部8(柱受板部品)には、架設部14と同様に接地脚部18を左右にたとえば折曲状態に一体形成した構成とする。
【0036】
このように構成することで、側面あるいは本実施例では正面と背面にたとえこの本実施例のように接地脚部18を柱受部8に設けて支承強度を高めた構成としても、施工後であってもはやこの柱受部8を取り外せない状況でも、柱4を微調整し工具を差し入れてナット12を調整締め付け作業を行うことができる。
この実施例2においても、実施例1と同様に架設部14の水平架設板部上に柱受部8を重合状態に着脱自在に設けることができ、前記係止部15と係合部16との係合により強固に位置決め保持されることになり、圧縮耐力性能に優れる。
【0037】
尚、本発明は、実施例1、2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0038】
1 基礎
2 土台
3 基体部
4 柱
5 連結ピン
6 連結孔
7 柱挿入棒部
8 柱受部
9 柱挿入棒部貫通孔
10 溶接部
11 アンカーボルト
12 ナット
13 ベース部
14 架設部
15 係止部
16 係合部
17 架設用脚部
18 接地脚部
図1
図2
図3
図4
図5