(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸とプルロニックを含む関節及び軟骨損傷の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/728 20060101AFI20240619BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240619BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240619BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240619BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240619BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240619BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240619BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240619BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61K31/728
A61P19/02
A61K47/10
A61P19/08
A61P29/00 101
A61K9/06
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/52
(21)【出願番号】P 2022506662
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2020010215
(87)【国際公開番号】W WO2021020950
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2019-0093748
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524076006
【氏名又は名称】メディクリニア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハー、ユジン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-501101(JP,A)
【文献】特表2019-503425(JP,A)
【文献】JUNG, Y.-S. et al,Thermo-sensitive injectable hydrogel based on the physical mixing of hyaluronic acid and Pluronic F-127 for sustained NSAID delivery,Carbohydrate Polymers,2017年,Vol.156,pp.403-408
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61P 1/00- 43/00
A61L 27/00- 27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸
4~9w/v%及びポロクサマー
9~11w/v%を含む関節内病変の予防または治療用ハイドロゲル組成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルト、及びヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムよりなる群から選択されたいずれか1種以上であることを特徴とする請求項
2に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項4】
前記関節内病変は、軟骨損傷、軟骨欠損または関節炎であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項5】
前記軟骨は、硝子軟骨(hyaline cartilage)、線維軟骨(fibrocartilage)または弾性軟骨(elastic cartilage)であることを特徴とする請求項
4に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項6】
前記軟骨は、半月板(meniscus)、関節軟骨(articular Cartilage)、耳介軟骨、鼻軟骨、肘軟骨、膝半月板、肋軟骨、足関節軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨、及び脊椎軟骨からなる群から選択されたいずれか1種以上であることを特徴とする請求項
4に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項7】
前記関節内病変は、軟骨損傷、軟骨欠損、変形性関節症、リウマチ性関節炎、半月板損傷、椎間円板ヘルニア、恥骨看板損傷、顎関節損傷、胸鎖関節の関節円板損傷、手関節の三角繊維軟骨複合体破裂、尺骨嵌頓症候群、外耳(external ear)欠損及び喉頭蓋(epiglottis)または喉頭軟骨欠損からなる群から選択される少なくとも1種以上の病変により発生したことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項8】
前記ハイドロゲルは、注射器で注入可能(injectable)であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル組成物。
【請求項9】
1)ヒアルロン酸
4~9w/v%を第1の溶液として用意する段階;
2)ポロクサマー
9~11w/v%を第2の溶液として用意する段階;及び
3)前記第1の溶液及び第2の溶液とを混合する段階;を含むことを特徴とする関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物の製造方法。
【請求項10】
ヒアルロン酸
4~9w/v%及びポロクサマー
9~11w/v%を含むハイドロゲル組成物を有効成分として含む関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記関節内病変は、軟骨損傷、軟骨欠損、変形性関節症、リウマチ性関節炎、軟骨損傷、半月板損傷、椎間円板ヘルニア、恥骨間円板損傷、顎関節損傷、胸鎖関節の関節円板損傷、手関節三角繊維軟骨複合体破裂、尺骨嵌頓症候群、外耳(external ear)欠損、及び喉頭蓋欠損(epiglottis)または喉頭軟骨欠損からなる群から選択された1種以上の病変であることを特徴とする請求項
10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項
10に記載の関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を有効成分として含む関節内病変治療用注射剤用組成物。
【請求項13】
請求項1
0に記載の関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を有効成分として含む関節内病変治療用スキャフォールド。
【請求項14】
ヒアルロン酸
4~9w/v%及びポロクサマー
9~11w/v%を含むハイドロゲル組成物を有効成分として含む粘性補充用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋剤を用いずに調製した、体内注入が容易な関節内病変の予防又は治療用組成物、並びにその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節症は、関節軟骨のすり減りにより関節内に退行性変化が現われる疾患であり、その原因は明らかにされていないが、老化現象や過剰な体重と深い関係があるとして知られている。変形性関節症の治療としては、減量、運動療法などといった非薬物的療法、非ステロイド性消炎鎮痛薬等の薬物治療があり、それに加え、最近では、関節内で潤滑作用するヒアルロン酸注射が多く利用されており、その結果、症状緩和及び機能の向上が期待されるようになった。
臨床にて適用されている低分子量のHA(Hyruan(登録商標)Hyaluronan,Artzal(登録商標)ハイルアン)は、一週間に5回ずつ注射しなければならず、高分子のHA(ヒルアンプラス、アラガンプラス、Synvisc(登録商標)は、一週間に3回ずつ注射しなければならない。極力分解を遅延させ、体内での滞留を維持できるようにしたXL-HA(Durolane TM、シノビアン)の1回製剤まで製品化されている。
ヒアルロン酸は、関節軟骨の基質を構成する成分であって、プロテオグリカン(proteoglycan)生成に関与するムコ多糖類の一種であり、β1-4 glycosidic結合によって連結されたNacetyl-D-glucosamineとD-glucuronic acidの糖タンパク複合体である。ヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸とからなり、前記繰り返し単位が螺旋状に連結されている生体高分子物質であって、眼の硝子体液、関節の滑液、鶏冠などに多くみられる。ヒアルロン酸は、優れた生体適合性と粘弾性による眼科用手術補助剤、薬物伝達物質及び点眼剤などの医療及び医療用具や、化粧品用途などに広く用いられている。しかし、それ自体では生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で分解され易いためその使用において限りがあった。したがって、構造的に安定したヒアルロン酸誘導体を開発するための努力が広く進められている。
ヒアルロン酸誘導体は、術後の癒着防止剤、しわ改善剤、整形補填材、薬物伝達体及び細胞培養支持体(Scaffold)など様々な用途に開発されており、特にしわ改善剤と整形補填材などとして商業的な用途としても活発に研究が進められている。
ヒアルロン酸誘導体の一つとして、架橋剤を用いてヒアルロン酸を相互に共有結合させたヒアルロン酸架橋物は、優れた生体適合性、物理的安定性及び生分解性を有している。
しかし、従来の公知方法で調製されたヒアルロン酸架橋物(ヒアルロン酸誘導体)は、ヒアルロン酸分解酵素及び熱に対する安定性が相対的に低く、未反応の化学物質の除去が難しいため、高純度の生体適合性材料として活用するには限界がある。特に、架橋剤として多官能性エポキシ系架橋剤(polyfunctional epoxide-based crosslinking agent)を用いる、例えば、米国特許第4,716,224号の方法で調製されたヒアルロン酸架橋物は、物理的粘弾性が低く、添加された架橋剤の濃度が高くて活性状態で反応物に残る可能性がある、あるいは反応後に残っている未反応物の残存量が高くて反応効率が低くて精製工程が難しいという問題点がある。すなわち、これらの方法は、アルカリ水溶液で架橋剤とヒアルロン酸とを混合し、これを液相(liquid phase)で架橋反応を誘導しているが、一般的に反応性が非常に低く、物性を向上させるためには、反応濃度を増加させたり、架橋剤を多く添加したりしなければならないが、この場合、高濃度で調製することが容易ではなく、多量に添加された架橋剤を精製過程で完全に除去することが難しいという問題点を有している。
したがって、ヒアルロン酸の安定性を高め、体内に長時間滞留させると同時に体内での適用が容易で、毒性のない物質が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、架橋剤による従来技術の問題点を解決し、ヒアルロン酸を体内に長時間滞留できるように適用するための方法を研究していたところ、ヒアルロン酸とプルロニックとを混合すると体内滞留時間が増大するばかりでなく、注射剤への適用が容易になることを確認した。さらに、ヒアルロン酸とプルロニックとの混合物の関節内病変及び炎症の治療効果を確認し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の目的は、関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物の調製方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、関節内病変治療用注射剤用組成物を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、関節内病変治療用スキャフォールドを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、損傷した関節を治療する方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、粘性補充用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明はヒアルロン酸1~10w/v%、及びプルロニック1~5w/v%を含む関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物を提供する。
また、本発明は、1)ヒアルロン酸1~10w/v%を第1の溶液として用意する段階;2)プルロニック1~15w/v%を第2の溶液として用意する段階;及び3)前記第1の溶液及び第2の溶液とを混合する段階;を含む関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物の調製方法を提供する。
また、本発明はヒアルロン酸1~10w/v%、及びプルロニック1~15w/v%を含むハイドロゲル組成物を有効成分として含む、関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、前記関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を有効成分として含む、関節内病変治療用注射剤用組成物を提供する。
また、本発明は、前記関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を有効成分として含む、関節内病変治療用スキャフォールドを提供する。
また、本発明は、前記関節内病変の予防または治療用薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、損傷した関節を治療する方法を提供する。
また、本発明はヒアルロン酸1~10w/v%、及びプルロニック1~15w/v%を含むハイドロゲル組成物を有効成分として含む、粘性補充用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のハイドロゲルは、関節の損傷部位に直接注入する場合、当該部位の関節内病変及び炎症を治療する効果を有しており、関節内病変の予防または治療用組成物と粘性補充剤として有用に活用することができる。特に、架橋剤なしに調製された本発明のハイドロゲルは、生体適合性、物理的特性及び熱と分解酵素に対する安定性が向上され、増大した粘弾性度により関節内での分解にかかる時間が長くなり、吸収時間が長くなった長所がある。したがって、注射剤として活用した際、効能が長く持続され得、細胞毒性がないので、生体適合性に非常に優れている。したがって、本発明のハイドロゲルは、体内の多様な環境においても有用に用いられることができ、体内注入が容易で、体内毒性なしに長らく留まることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】ヒアルロン酸ナトリウム単独またはプルロニック127(F127)単独で構成されたハイドロゲルの温度及び濃度による粘度を示す図である。
【
図2】ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニック127(F127)との混合物の温度及び濃度によるハイドロゲルの粘度を示す図である。
【
図3f】ヒアルロン酸ナトリウム単独、ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニック127(F127)との混合物の濃度及び温度変化によるハイドロゲルの粘弾性率の変化を示す図である(
図3aは、ヒアルロン酸ナトリウム1w/v%+プルロニック5,8,10,13又は15w/v%に対する図であり、
図3bは、ヒアルロン酸ナトリウム2w/v%+プルロニック5,8,10,13または15w/v%に対する図であり、
図3cは、ヒアルロン酸ナトリウム3w/v%+プルロニック5,8,10,13または15w/v%に対する図であり、
図3dは、ヒアルロン酸ナトリウム4w/v%+プルロニック5,8,10,13又は15w/v%に対する図であり、
図3eは、ヒアルロン酸ナトリウム5w/v%+プルロニック5,8,10,13または15w/v%に対する図であり、
図3fは、ヒアルロン酸ナトリウム6w/v%+プルロニック5,8,10,13または15w/v%に対する図である。)。
【
図4】ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニック127(F127)との混合物に酵素を処理し、ハイドロゲルの分解能を確認した図である。
【
図5】本発明によるハイドロゲルと混合された細胞の24時間後の細胞生存を確認した図である。
【
図6】ラットに変形性関節症MIA(monosodium iodoacetate)モデルを作製した後、本発明に係るハイドロゲルを投与し、変形性関節症の治療効果を示す図である。
【
図7】ラットに変形性関節症DMMモデルを作製した後、8週目に本発明に係るハイドロゲルを注入し、変形性関節症部位の程度、及び関節炎症が治療される結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、ヒアルロン酸及びプルロニックを含む関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物を提供する。
本発明のハイドロゲルは、ヒアルロン酸とプルロニックとを混合することにより調製され、架橋剤なしに形成されることを特徴とすることができる。したがって、本発明のヒアルロン酸及びプルロニックは、臨床的に使用可能な範囲内で適切に混合して用いられることができる。好ましくは、関節内病変の予防又は治療効果が得られる濃度内で注射適合性を高め、生体滞留時間を増加させるための適切な混合比で混合されて用いられることができる。
本発明は、ヒアルロン酸1~10w/v%、及びプルロニック1~15w/v%を含む関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物を提供する。
好ましくは、本発明のハイドロゲルにおいて、ヒアルロン酸は1~9w/v%、1~8w/v%、1~7w/v%、1~6w/v%、1~5w/v%、1~4w/v%、1~3w/v%、1~2w/v%、2~10w/v%、2~9w/v%、2~8w/v%、2~7w/v%、2~6w/v%、2~5w/v%、2~4w/v%、2~3w/v%、3~10w/v%、3~9w/v%、3~8w/v%、3~7w/v%、3~6w/v%、3~5w/v%、3~4w/v%、4~10w/v%、4~9w/v%、4~8w/v%、4~7w/v%、4~6w/v%、4~5w/v%、5~10w/v%、5~9w/v%、5~8w/v%、5~7w/v%、5~6w/v%、6~10w/v%、6~9w/v%、6~8w/v%、6~7w/v%、7~10w/v%、7~9w/v%、7~8w/v%、8~10w/v%、8~9w/v%または9~10w/v%含むことができるが、これに制限されるものではない。
また、プルロニックは、1~14w/v%、1~13w/v%、1~12w/v%、1~11w/v%、1~10w/v%、1~9w/v%、1~8w/v%、1~7w/v%、1~6w/v%、1~5w/v%、1~4w/v%、1~3w/v%、1~2w/v%、2~15w/v%、2~14w/v%、2~13w/v%、2~12w/v%、2~11w/v%、2~10w/v%、2~9w/v%、2~8w/v%、2~7w/v%、2~6w/v%、2~5w/v%、2~4w/v%、2~3w/v%、3~15w/v%、3~14w/v%、3~13w/v%、3~12w/v%、3~11w/v%、3~10w/v%、3~9w/v%、3~8w/v%、3~7w/v%、3~6w/v%、3~5w/v%、3~4w/v%、4~15w/v%、4~14w/v%、4~13w/v%、4~12w/v%、4~11w/v%、4~10w/v%、4~9w/v%、4~8w/v%、4~7w/v%、4~6w/v%、4~5w/v%、5~15w/v%、5~14w/v%、5~13w/v%、5~12w/v%、5~11w/v%、5~10w/v%、5~9w/v%、5~8w/v%、5~7w/v%、5~6w/v%、6~15w/v%、6~14w/v%、6~13w/v%、6~12w/v%、6~11w/v%、6~10w/v%、6~9w/v%、6~8w/v%、6~7w/v%、7~15w/v%、7~14w/v%、7~13w/v%、7~12w/v%、7~11w/v%、7~10w/v%、7~9w/v%、7~8w/v%、8~15w/v%、8~14w/v%、8~13w/v%、8~12w/v%、8~11w/v%、8~10w/v%、8~9w/v%、9~15w/v%、9~14w/v%、9~13w/v%、9~12w/v%、9~11w/v%、9~10w/v%、10~15w/v%、10~14w/v%、10~13w/v%、10~12w/v%、10~11w/v%、11~15w/v%、11~14w/v%、11~13w/v%、11~12w/v%、12~15w/v%、12~14w/v%、12~13w/v%、13~15w/v%、13~14w/v%、または14~15w/v%含むことができるが、これに制限されるものではない。
本発明の一実施形態によれば、本発明によるハイドロゲルは、ヒアルロン酸が約3~8w/v%、プルロニックが約5~10w/v%の濃度を含有したとき、優れた関節内病変及び炎症の治療効果を示し、特にヒアルロン酸が約4~9w/v%及びプルロニックが約10w/v%の濃度を含有したとき、最も優れた変形性関節症治療効果が奏された。
したがって、前記ハイドロゲル組成物は、好ましくは1~10w/v%、好ましくは4~9w/v%のヒアルロン酸及び1~15w/v%、好ましくは9~11w/v%のプルロニックを含むことができるが、これに制限されるものではない。
本発明の一実施形態によれば、ヒアルロン酸が前記範囲未満の濃度で含まれると、ハイドロゲルの物理的粘弾性が低くなることができ、本発明のハイドロゲルが目標とする関節内病変及び炎症の治療効果が低下するという問題が惹起し得、前記範囲を超えて含まれる場合、粘弾性が高まるという問題が惹起され、関節内注射適合性(injection)及び注射剤の効能が減少される、または投与後、関節部位の違和感が持続する問題が惹起しうる。また、プルロニックが前記範囲未満の濃度で含まれると、物理的粘弾性が低くなり、注射剤適合性が減少されることができ、前記範囲を超過して含まれる場合、粘弾性が高くなり、注射剤適合性及び注射剤の効能が減少されることができ、投与後、関節部位の違和感の持続または生体内細胞毒性(cytotoxicity)が誘発される問題が引き起こる可能性がある。
実際、本発明のハイドロゲルにヒアルロン酸が1%または2%の濃度で含まれた場合、3%以上の濃度で含まれたハイドロゲルに比べて顕著に薄い濃度を示した。
本発明のヒアルロン酸は、ヒアルロン酸そのものまたはヒアルロン酸塩であってもよく、前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルト及びヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムからなる群から選択された何れか一つまたはそれ以上であることができるが、これに制限されるものではない。
また、本発明のプルロニックは、当分野で知られているプルロニックを制限なく含むことができ、例えば、プルロニックF127、プルロニックP123もしくはプルロニックL44であってもよい。
本発明において、前記関節内病変は、軟骨損傷または関節炎であることができる。
本発明の病変及び炎症の治療対象となる軟骨は、硝子軟骨(hyaline cartilage)、線維軟骨(fibrocartilage)または弾性軟骨(elastic cartilage)を意味する。繊維軟骨は、白色線維性組織と軟骨組織が多様な比率で混合されている軟骨であって、圧迫には強いが裂けられやすく、緻密な状態で配列されている。繊維軟骨は硝子軟骨や結合組織と連結されて存在し、ねじれや圧迫が起こる部位において緩衝作用をし、制限された動きが可能となるようにし、弾力を維持することを特徴とする。硝子軟骨は、主にII型コラーゲンからなり、繊維成分と無形質が均一に観察されるが、弾性軟骨は、基質内に弾性繊維が豊富であるという点で、硝子軟骨と相違しており、線維軟骨は、硝子軟骨及び弾性軟骨に比べて無形質が少なく、膠原線維が多く、一定した配列でつながっているという点で明確な違いを持つ。特に繊維軟骨を構成する膠原繊維のコラーゲンは、I型コラーゲンとして相違点があり、線維軟骨には、弾性軟骨、硝子軟骨とは異なり明確に軟骨膜といえるものがない。線維軟骨にて層板をなすI型コラーゲン線維束は、隣接する層板と直角に配列されるいることが知られており、他の軟骨とは異なり、繊維軟骨の前記のような特徴的な配列によって椎間円板等において、特別な弾性を有し、体重負荷等によって生成される圧力によく耐えられるようにする。
本発明において、前記軟骨は、硝子軟骨、椎間円板や関節唇、関節半月部位に存在する様々な繊維軟骨、並びに外耳(external ear)、喉頭蓋(epiglottis)及び一部喉頭軟骨部位に存在する様々な弾性軟骨を全て含むことができ、好ましくは半月板(meniscus)、関節軟骨(articular Cartilage)、耳介軟骨、鼻軟骨、肘軟骨、膝半月板、肋軟骨、足関節軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨、脊椎軟骨、椎間板軟骨(intervertebral disc)、恥骨結合(symphysis pubis)、関節内の線維軟骨複合体(fibrocartilage complex)、顎関節軟骨、胸鎖関節(sternoclavicular joint)の関節円板、寛骨臼窩(acetabular fossa)、外耳(external ear)及び喉頭蓋(epiglottis)からなる群から選択された1種以上であることができる。
前記半月板とは、大腿骨と脛骨の関節面の間に位置し、膝関節の機能を維持する上で非常に重要な役割をする構造物の1つであり、膝関節にかかる荷重とストレスを分散させ、衝撃を吸収し、関節軟骨に潤滑作用し、外部からの衝撃を吸収し、関節軟骨を保護する非常に重要な役割をする。このような半月板は、膝関節の中間に位置する三日月状の軟骨で形成され、軟骨板は関節の間で緩衝作用をするが、立ったり、歩いたり、走ったりするとき、体重が上から下にかかる際、関節軟骨が損傷しないように衝撃を吸収する役割をする。したがって、軟骨板は、変形性関節症の予防において非常に重要であることが知られている。
また、前記関節内病変は、変形性関節症、リウマチ性関節炎、半月板損傷、椎間円板ヘルニア、恥骨間円板損傷、顎関節損傷、胸鎖関節円板損傷、手関節三角繊維軟骨複合体破裂、尺骨嵌頓症候群、外耳(external ear)欠損、及び喉頭蓋欠損(epiglottis)または喉頭軟骨欠損からなる群から選択される少なくとも1種の疾患により発生したものであることができるが、これに制限されるものではない。
より具体的には、本発明の関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物は、変形性関節症(degenerative arthritis)、炎症性関節炎(inflammatory arthritis)、関節リウマチ(Rheumatoid arthritis)、骨軟骨腫(osteochondromatosis)、捻挫(distortion)、滑液包炎(bursitis)、半月板軟骨損傷(menstruation)、円盤状半月板断裂(meniscal tear)、半月板軟骨嚢胞(meniscus cyst)、側副靱帯損傷(collateral ligamentrupture)、前十字靱帯損傷(anterior cruciate ligament injury)、後十字靭帯損傷(posterior cruciate ligament injury)、関節内硝子体(intra-articular vitreous)、離断性骨軟骨炎(exfoliation osteochondritis)、滑膜ヒダ症候群(plica syndrome)、内反膝(genu varum)、外反膝(knock-knee)及びばね膝(snapping knee)からなる群から選択されたいずれか1種以上の疾患に投与することができる。
本発明によるハイドロゲル組成物は、注射器で注入可能(injectable)であることを特徴とする。本発明のハイドロゲルは、ヒアルロン酸とプルロニックを混合して調製することにより、温度別の弾性及び粘性が改善され、注射剤適合性が増進されることを特徴とする。したがって、本発明のハイドロゲルを用いると、高い弾性と粘度調節を通じて外科的手術なしに注入式治療剤として活用することができる。このように注入式治療剤、フィラー、注射剤として剤形化して使用する場合、本発明におけるハイドロゲルは、磨耗、破裂、変形性関節症などで損傷した関節の治療に好適に用いることができる。
本発明の関節内病変の予防又は治療用ハイドロゲル組成物は、1)ヒアルロン酸1~10w/v%を第1の溶液として用意する段階;2)プルロニック1~15w/v%を第2の溶液として用意する段階;3)前記第1の溶液及び第2の溶液を混合する段階;を含む方法で調製することができる。
前記第1の溶液及び第2の溶液は人体に無害かつ溶解させることができるものであれば、制限なく用いることができる。用途に応じて生理食塩水(saline solution)、蒸溜水、緩衝溶液、化粧品用防腐剤及び医薬品用防腐剤からなる群から選択されたいずれか1種以上を用いて調製することができるが、これに制限されるものではない。さらに、溶液には、関節内病変及び炎症の治療に必要な生理活性物質がさらに含まれることができ、前記生理活性物質は成長因子であることができる。
また、本発明は、ヒアルロン酸1~10w/v%及びプルロニック1~15w/v%を含むことを特徴とする関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
前記関節内病変は、線維軟骨または弾性軟骨欠損であることができ、これは繊維軟骨、線維軟骨組織及び/または関節組織(滑膜、関節膜、軟骨下骨など)が機械的刺激や炎症反応により傷害を受けた繊維軟骨損傷または他の先天性もしくは後天性要因による弾性軟骨損傷あるいは欠損をいう。前記関節内病変は、変形性関節症、リウマチ性関節炎、軟骨損傷、半月板損傷、椎間円板ヘルニア、恥骨間円板損傷、顎関節損傷、胸鎖関節の関節円板損傷、手関節の三角繊維軟骨複合体破裂、尺骨嵌頓症候群、外耳(external ear)欠損、及び喉頭蓋欠損(epiglottis)または喉頭軟骨欠損からなる群から選択された1種以上であることができる。前記椎間円板ヘルニアは、ディスクとも呼ばれ、椎体間あるいは恥骨間においても発生しうる。前記変形性関節症及びリウマチ性関節炎は、線維軟骨または弾性軟骨の損傷によって発生あるいは悪化しうる疾患であって、線維軟骨または弾性軟骨の損傷の修復及び再生を通じて治療または改善することができる。これに関連して、当該技術分野では、膝関節の初期変形性関節症を治療するために、軟骨板を切除する際、最小限に切除したり、軟骨板欠損がひどい場合には軟骨板移植術といった外科的方法を行い、線維軟骨または弾性軟骨の消失を最小化する、または代替方法を通じて変形性関節症の発生を減らすことができることが知られている。
本発明のハイドロゲルは、プルロニック酸とヒアルロン酸を混合して調製することにより、温度別の弾性及び粘性が改善され、注射剤適合性が改善されたため、本発明は、前記関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を有効成分として含む、関節内病変治療用注射剤用組成物を提供する。
本発明の組成物は、軟骨再生のためのハイドロゲル組成物の形態であり、注射器などを用いて、最小侵襲による治療が必要な損傷関節部位に効果的に投与することができる。特に、体内の様々な環境においても有用に使用することができ、人体内注入が容易であり、体内毒性なしに長時間滞留することができるので、治療用支持体として使用されることができる。
したがって、本発明は、関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を有効成分として含む、関節内病変治療用スキャフォールドを提供する。
さらに、本発明は、前記関節内病変の予防又は治療用薬学的組成物を個体に投与する段階を含む損傷した関節内病変を治療する方法を提供する。
本発明にて使用された用語「個体」とは、関節内病変を有しており、本発明の前記薬学的組成物を投与し、症状が好転できる疾患を有するヒトを含む馬、羊、豚、山羊、犬などの哺乳動物を意味するが、好ましくはヒトを意味する。
本発明による関節内病変の予防または治療用薬学的組成物は、標的部位、例えば、関節に直接注射または移植して使用することができる。
本発明による薬学的組成物の投与は、しばしば、日、週、週当たりに数回、隔月、月当たりに数回、月単位の頻度で、または症状の軽減を提供するために必要なだけの頻度で実行することができる。関節内に使用する場合、関節の大きさ及び状態の重症度に応じて、投与される組成物の量を調節することができる。この関節への後続投与に対する頻度は、前記関節での症状が再発する時間に応じて間隔を置くようにする。
任意の特定患者に対する特定投与量レベルは、採択された組成物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食餌、投与時間、投与経路、排出率、薬物の組合せ及び治療中の特定疾患の重症度を含む様々な因子に応じて適宜調節することができる。薬学的組成物は、投与量単位で調製して投与することができる。しかし、特異な状況によってより多めもしくはより少なめな用量単位を適切に調節することがでる。前記投与量単位の投与は、前記組成物の単回投与及び特定間隔で分割された用量の複数投与の両方により行われたり、または投与は、幾つかのより小さな用量単位で実行することができる。
一実施形態では、関節内病変は半月軟骨板損傷によるものであり、前記組成物は、例えば、膝のような関節腔に投与される。
例えば、膝の半月板損傷を有する個体は、膝当たり約2、3、4、5、6、7、8、9、10ml以上の注射を、1、2、または3回打つことができる。他の関節の場合、投与される体積は、その関節の大きさに基づいて調整することができる。
本発明の薬学的組成物は、有効成分として含まれる前記ハイドロゲル組成物に加えて、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。
本発明の組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、調剤の際に一般的に使用されるものとして、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
本発明の薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量形態で調製されたり、あるいは多用量容器内に内入させて調製されたりすることができる。この時、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、乳化液、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
本発明において、用語「治療」とは、組成物の投与または塗布で関節内病変、または炎症の治療または関節疾患の治療などといった有益に変更するすべての行為を意味する。本願が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などより提示された資料を参照にし、軟骨損傷または関節疾患など、本願の組成物が効果を示す疾患の正確な基準を知り、改善、向上及び治療程度を判断することができる。
本発明において、用語「予防」とは、本願による組成物の投与により本組成物が、効果のある疾患の発症を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。関節内病変または炎症の治療効果がある本発明の組成物は、関連疾患の初期症状、或いは発病する前に服用または投与する場合、このような疾患を予防することができるということは、当業者には自明であろう。
また、本発明は、ヒアルロン酸1~10w/v%及びプルロニック1~15w/v%を含むハイドロゲル組成物を有効成分として含む、粘性補充用組成物を提供する。
前記粘性補充とは、現在唯一立証された初期症状の変形性関節症の治療法であって、患者の関節内にヒアルロン酸注射を1回またはそれ以上投与し、関節症の患者の滑液包で低下したヒアルロン酸(hyaluronate)のレベルを補充する治療法を意味する。
上述した本発明の内容は、相互矛盾しない限り、互いに等しく適用され、当該技術分野における通常の技術者が適切な変更を加えて実施することもまた本発明の範疇に含まれる。
以下、本発明を実験例及び実施例を通じて詳細に説明するが、本発明の範囲が次の実験例及び実施例のみに限定されるものではない。
【0008】
実施例1.ハイドロゲルの調製
損傷した関節の病変及び炎症を治療するために、ハイドロゲル組成物を調製した。
1.1 ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127を用いたハイドロゲルの調製
ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127を用いたハイドロゲルを調製するために、第1の溶液及び第2の溶液を調製した。第1の溶液と第2の溶液を混合した際の最終濃度は、第1の溶液は、ヒアルロン酸ナトリウム(Sodium hyaluronate,3.3m
3/kg)を1~10w/v%となるように生理食塩水(saline)に溶解させて調製し、第2の溶液はプルロニック(プルロニック)F127(BASF)粉末が1~15w/v%の濃度になるように生理食塩水を入れ、4℃で溶解させて調製した。
1.2 ゲル化の確認
ヒアルロン酸ナトリウム単独、プルロニックF127単独、並びにこれらを第1の溶液及び第2の溶液と混合し、室温及び37℃条件でそれぞれのゲル化(gelation)の可否を確認した。このうち、ゲル化の可否を直接的に確認するために、低濃度の3w/v%のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックとを混合し、ハイドロゲルを調製し、ゲル化の可否を
図2に示した(左側実験群:ヒアルロン酸ナトリウム3w/v%及びプルロニック5w/v%、真ん中実験群:ヒアルロン酸ナトリウム3w/v%及びプルロニック6w/v%、右側実験群:ヒアルロン酸ナトリウム3w/v%及びプルロニック7w/v%)。
その結果、
図1及び
図2に示すように、ヒアルロン酸ナトリウム単独の場合、室温及び37℃でゲル化(gelation)を通じて3次元構造体ハイドロゲルを形成した。ところで、プルロニックF127単独の場合には、室温及び37℃で液体状態であることが確認された。さらに、これらを第1の溶液及び第2の溶液として混合した組成物は、室温及び37℃にていずれもゲル化を通じて3次元構造体ハイドロゲルが形成されたことが確認された。特に、
図2を通じてヒアルロン酸ナトリウムが低濃度である3w/v%含まれても、ゲル化が進むことが確認された。
【0009】
実施例2.プルロニックF127追加による注射可能性(injectability)
ヒアルロン酸ナトリウムにプルロニックF127を加えた時、ハイドロゲルの注射可能性の特性を確認した。ヒアルロン酸ナトリウムは、最終濃度が1~10w/v%となるように混合し、プルロニックF127は、最終濃度が0w/v%~15w/v%の濃度となるように混合した。各製造例による注射可能性変化を室温条件で確認し、その結果を表1に示した。
【表1】
注射可能性を測定したところ、前記表1に示すように、注射針18Gの場合、ヒアルロン酸ナトリウムの濃度1~10w/v%及びプルロニックF127の濃度0w/v%~15w/v%の濃度範囲において注射可能性がみられたが、注射針21Gの場合、ヒアルロン酸ナトリウムの濃度が9%以上に増加する場合、注射可能性が低く評価された。特にヒアルロン酸ナトリウムの濃度1~6w/v%及びプルロニックF127の濃度0w/v%~15w/v%の濃度で注射可能性の利便性がより優れていることが確認された。
【0010】
実施例3.プルロニックF127追加による温度別の粘弾性率の確認
ヒアルロン酸ナトリウムにプルロニックF127を加えた際、ハイドロゲルの温度別の粘度特性を確認した。ヒアルロン酸ナトリウムは、最も優れた注射可能性の利便性がみられた、最終混合組成物中1~6w/v%の濃度となるように混合した。プルロニックF127は、最終混合組成物中の濃度が5、8、10、13または15w/v%となるように調製した。温度変化による粘弾性を測定するために25mm径のプレートを用い、振動モードでレオメータ(MCR702,Anton Paar Korea)装備を使用して測定した(Angular Frequency:10rad/s,Shear strain:1%,gap:1mm、昇温速度:2℃/min条件)。
温度別の粘度を測定したところ、
図3a~
図3fに示すように、ヒアルロン酸ナトリウム単独の場合には、温度による粘度変化がなかったが、温度感応型であるプルロニックF127の濃度により粘度変化が現れることを確認することができた。これにより、ヒアルロン酸ナトリウム単独で使用するよりはプルロニックF127の濃度選択による混合製剤を使用するのが室温条件では注射するのに便利であり、関節腔内に投与された場合にハイドロゲルの粘度が高くなり、治療効果がより長く維持されることができるものと判断した。
【0011】
実施例4.ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルの分解能の確認
本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルの分解能を確認するために、トリプシン(trypsin)酵素を用いて分解挙動を測定した。ヒアルロン酸ナトリウムは、最終濃度が1~8w/v%となるように混合し、プルロニックF127は、最終濃度が5w/v%~15w/v%の濃度となるように混合して調製した。分解能を測定した結果、
図4に示すように、ヒアルロン酸ナトリウム単独の場合、濃度別に分解程度の時間差があった。1%または3%の場合、6時間が経過すると形を区別することが難しく、他の濃度では、24時間が経過するとすべて分解され、ゲル形態を区分し難い。しかしながら、ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックとを混合し、調製したハイドロゲルの場合では30日程持続されることを確認することができた。したがって、ハイドロゲルを関節腔内に投与したとき、ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックとを混合して調製されたハイドロゲルがヒアルロン酸ナトリウムのみを含むハイドロゲル単独に比べて、粘度が増加して、関節腔内で分解速度が減少し、治療効果をより長く持続させることができるものと判断した。
【0012】
実施例5.ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲル内の細胞生存率の確認
本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルの細胞毒性を確認するため、細胞生存率を確認した。ヒアルロン酸ナトリウムは、最終濃度が3~8w/v%となるように混合し、プルロニックF127は、最終濃度が0w/v%~15w/v%の濃度となるように混合した。細胞生存を確認するために、初期軟骨細胞(primary chondrocyte)を培養し、ハイドロゲルと混合した。これをLive/Dead assay kit(Invitrogen)を用いて、生細胞と死細胞をそれぞれ染色した上、蛍光顕微鏡(AMF4300,EVOS,Life Technology)を用いて観察した。その結果、ほとんどの濃度で細胞が死滅せずに生存することを確認しており、それらの中で最も高い濃度である最終濃度8w/v%のヒアルロン酸ナトリウムと最終濃度が10w/v%~15w/v%の濃度であるプルロニックF127を混合したハイドロゲルを10倍率の画像で4個撮影し、下記式を用いて細胞生存率を算出し、比較した。その代表的な結果を
図5に示した。
細胞生存率=生存細胞数/全細胞数×100
図5に示すように、ヒアルロン酸ナトリウム単独と比較したところ、プルロニックF127を含んで調製されたハイドロゲルも同様に赤色で染色された死細胞がほとんど観察されなかったが、8w/v%のヒアルロン酸ナトリウムと15w/v%のプルロニックとを混合して調製したハイドロゲルの場合、20%程細胞が死滅されることを確認することができた。加えて時間別ハイドロゲル細胞生存/死滅蛍光画像を確認した結果、本発明のヒアルロン酸ナトリウム及びプルロニックF127濃度で混合したハイドロゲルの場合、ヒアルロン酸ナトリウム単独ハイドロゲルと比較したとき、細胞生存において明らかな差がないことを確認した。したがって、本発明によるハイドロゲルは、生体内投与時、生体に長く残存するだけでなく、生体適合性に優れていることを確認した。
【0013】
実施例6.変形性関節症の動物モデルにおける抗炎症効果の評価
本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルが変形性関節症の動物モデルにおいて、抗炎症効果を奏するか否かを検証するために、次のような実験を行った。これのためにヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックとの混合を、様々な濃度において前記実施例から確認できたように、適合する粘弾性として優れた注射適合性を示し、細胞死滅を起こさない濃度に選別して調製した。したがって、ヒアルロン酸ナトリウム3w/v%及びプルロニック5w/v%、ヒアルロン酸ナトリウム5w/v%及びプルロニック10w/v%又はヒアルロン酸ナトリウム8w/v%及びプルロニック10w/v%濃度で混合してハイドロゲルを調製し、本実験に用いた。
まず、ラット(rat)に変形性関節症の動物モデルを作製するために、体重に応じた適切な量のケタミン(Ketamine)とラムプーン(Rompun)で注射麻酔した後、ラットが十分に全身麻酔が効いていることを確認し、右下肢の膝関節部位を剃毛した後、姿勢を維持させながら絆創膏で固定した。両側膝関節部位をポビドンで消毒し、膝蓋骨を触知して膝関節位置を確認した。それから、変形性関節症の誘発物質であるヨード酢酸ナトリウム(Monosodium iodoacetate(MIA)(Sigma.Chemical Co.Ltd,Cat.No.I2512,USA))を0.9%の生理食塩水で希釈し、31Gの1mlインスリン注射器(Insulin Syringe(BD Medical-Diabetes Care,USA)を用いて、右膝関節内に50μl(60mg/ml)ずつ投与した。変形性関節症を誘発してから1週間後に関節の直径を測定し、グループ別に同等レベルになるように構成し、ヒアルロン酸ナトリウム単独、またはヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合物各20μlを、前記動物モデルの関節腔に1回投与した。ラットが麻酔から覚めたのを確認した後、自由に動けるようにさせ、投与してから1週間経過後、各グループから関節の直径を測定し、
図6に示した。
炎症度の評価は、関節の炎症性変化により起こる関節浮腫(Joint swelling)を炎症指標とし、精密測定機器(Digimatic calipers((株)ミツトヨ、日本))を用いて内外径(diameter)を測定し、Absolute(Right joint diameter - Left joint diameter)で計算した。
その結果、
図6に示すように、変形性関節症動物モデルにおいてヒアルロン酸ナトリウム単独処理では10~15%程度の抗炎症効果を示したが、ヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合物処理群では、より優れた抗炎症効果が確認できた。本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合物を投与した場合、ヒアルロン酸ナトリウム単独で投与した場合に比べて、抗炎症が著しく減少したことが観察された。特にヒアルロン酸ナトリウム5w/v%及びプルロニック10w/v%濃度で混合して調製したハイドロゲル組成物の抗炎症効果が最も優れた。
したがって、本発明のハイドロゲルにおいて、成分の組み合わせにより対照群に比べて、抗炎症効果が上昇したことを知ることができ、損傷した関節に発生する炎症を治療するための薬学的製剤として非常に有用に活用され得ることが確認された。
【0014】
実施例7.変形性関節症の動物モデルにおける関節内病変治療効果の検証
本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルが変形性関節症動物モデルにおいて、関節内病変に対する治療効果を示すか否かを検証するために、次の実験を行った。
まず、ラット(rat)に変形性関節症の動物モデルを作製するために、体重に応じた適切な量のケタミンとラムプーンで注射麻酔させた後、ラットに十分に全身麻酔が効いていることを確認し、両下肢の膝関節部位を剃毛した後、姿勢を維持させながら絆創膏で固定した。両側膝関節部位をポビドンで消毒し、膝蓋骨を触知して位置を確認した後、膝関節の上、下、膝蓋骨の内側を通る切開線に沿って傍正中アプローチ(paramedian approach)で膝関節内に到達し、膝蓋骨を外側に倒しながら膝関節を折り曲げ、関節内部を観察した。特異な病的所見がないことを確認した後、内側半月板に損傷を与えるDMM(destabilization of the medial meniscus)モデルを作製した。前記のように損傷を誘発させてから4週間と8週間後に損傷部位を観察し、変形性関節症が誘発されたことを確認した。その後、注射器を用いてヒアルロン酸ナトリウム単独、または前記実施例6と同じ濃度で調製したヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合物各20μlを前記動物モデルの関節腔に注入した。ラットが麻酔から覚めたことを確認した後、自由に動けるようにさせ、術後3日間鎮痛剤と抗生物質を投与した。投与してから8週間経過後、各ラットから損傷及び治療を行った関節部位の切片を得て、サフラニンO(Safranin O)染色を行い、OARSIスコアを用いた定量化により変形性関節症の損傷程度を分析した。
その結果、
図7に示すように、ヒアルロン酸ナトリウムのみを単独で含んで調製された対照群ハイドロゲルに比べて本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルを注入した群からは、投与8週間後に関節軟骨の病変を治療したり、変形性関節症への進行が抑制されることを確認できた。特にヒアルロン酸ナトリウム5w/v%及びプルロニック10w/v%又はヒアルロン酸ナトリウム8w/v%及びプルロニック10w/v%濃度で混合して調製したハイドロゲル組成物を投与した場合、変形性関節症による損傷程度が最も少なかった。こうした結果により、ラット変形性関節症のモデルに本発明のヒアルロン酸ナトリウムとプルロニックF127との混合ハイドロゲルを注入すると、関節軟骨の病変が治療される、または変形性関節症への進行が抑制されることが確認された。
総合的に、本発明によるヒアルロン酸及びプルロニックを最適濃度で混合して調製したハイドロゲル組成物は、架橋剤を用いずに調製したにもかかわらず温度別の弾性及び粘度が向上され、増進した注射剤適合性を示すだけでなく、生体滞留時間も増し、生体適合性が非常に優れたハイドロゲル組成物であることを確認した。特に本発明のハイドロゲル組成物は、関節の病変を治療する、または変形性関節症への進行を抑制する効果を有しているので、関節内病変の予防または治療用組成物と粘性補充剤として有用に活用されることができる。