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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】金属燃料電池に適用される性能試験装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20240619BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20240619BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240619BHJP
【FI】
H01M12/06 Z
H01M12/08 K
G01R31/378
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023041779
(22)【出願日】2023-03-16
(65)【公開番号】P2024043474
(43)【公開日】2024-03-29
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202211129846.6
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514112868
【氏名又は名称】北京理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】董明明
(72)【発明者】
【氏名】劉衞鵬
(72)【発明者】
【氏名】張▲ぎょく▼
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175446(JP,A)
【文献】中国実用新案第211480187(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112666465(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/00-16/00
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属燃料電池に適用される性能試験装置であって、前記性能試験装置は、適応クランプ装置、昇降コンソール、試験水槽、密封性能試験装置及び放電性能試験装置を含み、
適応クランプ装置は試験水槽に設置され、前記適応クランプ装置は異なる寸法・外形のスタックを自律的に位置決め及びクランプするために用いられ、
昇降コンソールは適応クランプ装置に接続され、前記昇降コンソールは適応クランプ装置の昇降を制御し、適応クランプ装置から試験水槽の底部までの高さを調整するために用いられ、
密封性能試験装置は試験水槽に接続され、前記密封性能試験装置は前記試験水槽を介して金属燃料電池に対して密封性能試験を行うために用いられ、
放電性能試験装置は適応クランプ装置における金属燃料電池に接続され、前記放電性能試験装置は金属燃料電池に対して放電性能試験を行うために用いられることを特徴とする金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項2】
前記適応クランプ装置は、支持台、2つの展開板、4つのクランプ構造及び4つの昇降リングを含み、
2つの展開板はいずれも櫛歯状をしており、支持台の対向する両側はいずれも展開板に合わせた櫛歯状をしており、各展開板は支持台の片側に伸縮可能に接続され、2つの展開板が展開しない時、支持台と完全な平板を構成し、2つの展開板は、スタックの寸法に応じて対応する長さを展開し、展開板の櫛歯の間の隙間はスタックから漏れた電解液を流下させ、かつ試験水槽に収集するために用いられ、
2つのクランプ構造は2つの展開板に対向して設置され、他の2つのクランプ構造は支持台に対向して設置され、2つのクランプ構造の接続線は他の2つのクランプ構造の接続線と垂直であり、4つのクランプ構造は異なる寸法・外形のスタックを自律的に位置決め及びクランプするために用いられ、
4つの昇降リングは支持台に固定して接続され、4つの昇降リングの制御端は昇降コンソールに接続され、4つの前記昇降リングは昇降コンソールの制御下で支持台及びスタックを駆動して昇降させ、スタックから試験水槽の底部までの高さを調整するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項3】
前記クランプ構造は、高さ調整支柱、高さロック装置、クランプ支柱、ボールヒンジ接続装置及び適応爪板を含み、
高さ調整支柱の一端は高さロック装置に接続され、高さ調整支柱の他端はクランプ支柱の一端に垂直に接続され、高さロック装置は展開板又は支持台に固定され、クランプ支柱の他端はボールヒンジ接続装置を介して適応爪板に接続され、適応爪板はボールヒンジ接続装置の周りを120°回転でき、
高さ調整支柱は、クランプ支柱の軸線がスタックの軸線と重なり合うように垂直高さを調整するために用いられ、高さロック装置によって固定され、
クランプ支柱は水平方向の伸びを調整するために用いられ、スタックは適応爪板によってクランプされることを特徴とする請求項2に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項4】
前記適応爪板は、三方向ロッド及び接続平板を含み、
三方向ロッドの一端は接続平板の同一側面に接続され、三方向ロッドの他端はボールヒンジ接続装置に接続されることを特徴とする請求項3に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項5】
前記性能試験装置は、4つの昇降柱を含み、
4つの昇降柱の一端は試験水槽の底部に固定して接続され、4つの昇降柱はそれぞれ1対1に対応して4つの昇降リングを貫通し、前記適応クランプ装置は昇降柱に沿って上下に移動することを特徴とする請求項2に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項6】
前記密封性能試験装置は、蒸留水タンク、蒸留水管、水ポンプ、電子質量秤及び水漏れ検出機器を含み、
蒸留水タンクは蒸留水管を介して試験水槽に接続され、蒸留水管に水ポンプが設置され、前記蒸留水タンクは蒸留水管及び水ポンプを介して試験水槽に密封性能試験の浸透実験に必要な蒸留水を供給するために用いられ、
電子質量秤は試験水槽の下方に設置され、前記電子質量秤は密封性能試験の漏れ実験時にスタックの反応運転前後の質量を測定して、スタックの水漏れ量を得るために用いられ、
水漏れ検出機器は密封性能試験の漏れ実験時に試験水槽の底部に配置され、スタックの漏れがあるか否かを検出するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項7】
前記スタックの水漏れ量の計算式は、
【数10】
であり、
式中、Vtは単位時間あたりのスタック運転の漏れ量であり、Vlは時間T1内に漏れた液体の体積であり、mlは時間T1内に運転して漏れた液体の質量であり、ρsは漏れた液体の密度であり、m0はスタックが安定して運転する時に測定し始めた初期の質量であり、m1は測定終了時の質量であることを特徴とする請求項6に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項8】
前記性能試験装置はさらに、試験プラットフォームを含み、
試験プラットフォームは最上層、中間層及び底層を含むという3つの層に分けられ、前記最上層は電子質量秤を配置するために用いられ、前記中間層は蒸留水タンクを配置するために用いられ、前記底層は金属燃料電池の電解液循環システム及び附属装置を配置するために用いられることを特徴とする請求項6に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項9】
前記放電性能試験装置は、電気試験装置、データ収集機器及びコンピュータを含み、
スタックの陰極端子と陽極端子は電気試験装置の正極と負極に接続され、
電気試験装置の信号出力端はデータ収集機器の信号入力端に接続され、データ収集機器の信号出力端はコンピュータに接続され、
前記電気試験装置はスタックの電気パラメータデータを収集し、かつデータ収集機器に伝送するために用いられ、
前記データ収集機器は収集した電気パラメータデータを時間領域データセットファイルに形成し、かつコンピュータに伝送するために用いられ、
前記コンピュータは時間領域データセットファイルにおける電気パラメータデータを分析及び計算し、放電性能試験を完了するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【請求項10】
放電性能評価の試験指標は、平均安定運転電力We及び最大電力差WΔを含み、
前記平均安定運転電力Weの計算式は、
【数11】
であり、式中、Wtはスタックのリアルタイム電力であり、T2はスタックの安定運転試験時間であり、
前記最大電力差WΔの計算式は、
【数12】
であり、式中、(Wt)maxはスタックのリアルタイム電力の最大値であることを特徴とする請求項9に記載の金属燃料電池に適用される性能試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属燃料電池の分野に関し、特に金属燃料電池に適用される性能試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属燃料電池は、コストが低く、無毒で、汚染がなく、放電電圧が安定し、比エネルギーが高く、比出力が高い等の利点を有し、また豊富な資源を有し、さらに再生利用でき、巨大な発展と応用の見通しを有する新エネルギーである。近年、いくつかの理論的プロセスの発展と改善に伴い、金属燃料電池は電気自動車、国防産業、交通設備等の分野で幅広い生産用途があり、いくつかの新興エネルギー産業において極大な発展の潜在力を有するが、金属燃料電池製品の生産段階に関連する試験基準及び装置はまだ完全なエコチェーンに発展していない。現在、業界内では各種類の金属燃料電池の密封性能及び放電性能等のコア性能指標に関する具体的かつ明確な基準と定義が欠如しており、これらの性能試験装置にも、各種類の金属燃料電池製品の出荷時の検査及び試験に適用される性能試験機器が不足している。検出指標と試験装置の欠如及び不足により、金属燃料電池は応用市場、産業選択等の段階において十分な吸引力が欠如しており、他のカテゴリーの電池産業の競争力を達成しにくい。
【0003】
従来技術は、具体的には、以下のいくつかの欠点を有する。
【0004】
1.金属燃料電池に関する研究と特許の多くは、電池の理論設計構造(例えば特許文献1、特許文献2)、外部熱伝達振動伝達との相互作用技術(例えば特許文献3、特許文献4)、及び新規材料の応用(例えば特許文献5、特許文献6)に集中しており、性能試験等の製品生産の後続ステップが無視され、これらの性能試験は標準化された指標のサポートが欠如しているため、金属燃料電池を市場に投入して生産及び使用することが困難になる。
【0005】
2.金属燃料電池の性能試験では、従来技術は、主に耐久性能試験(例えば、特許文献7、特許文献8)及び電池温度維持性能試験(例えば特許文献9)に集中しており、金属燃料電池の2つのコア性能試験、即ち密封性能と放電性能試験では、明確な意味での試験基準が欠如している。従来技術と現在の基準は金属燃料電池の出荷時のコア性能試験のニーズを満たすことができない。
【0006】
3.電池性能試験に使用されるクランプ装置と性能試験装置との間にハードウェア上の関連は欠如しており(例えば特許文献10、特許文献11)、クランプ装置は異なる金属燃料電池、異なる電池接続方式、さらに異なる寸法、異なる数量の電池セルの間の幾何学的外形の違いも考慮せず、電気回路の接続、電解液管路の外部循環も考慮せず、クランプ装置が製品の性能試験をある程度妨げることになり、そのため、多角的に考慮する必要があり、スタックの幾何学的外形、回路管路の接続、電池試験のニーズの3つの面を総合的に考慮し、クランプ装置と性能試験装置の両者を有機的に組み合わせて、金属燃料電池の性能試験のニーズを満たす。
【0007】
4.金属燃料電池の異なる試験基準の間の関連が人為的に切断されるため、客観的に試験段階の不連続性を引き起こし、ある金属燃料電池の異なる試験の間の内部要因が相互に影響し、そして、燃料電池性能試験の適時性が要件を満たしにくいことにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国実用新案第216054915号明細書
【文献】中国実用新案第216213720号明細書
【文献】中国特許出願公開第113555627号明細書
【文献】中国特許出願公開第113764715号明細書
【文献】中国特許出願公開第113523268号明細書
【文献】中国特許出願公開第107210503号明細書
【文献】中国特許出願公開第111537900号明細書
【文献】中国特許出願公開第110146821号明細書
【文献】中国特許出願公開第108844989号明細書
【文献】中国特許出願公開第111323721号明細書
【文献】中国実用新案第2505849号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、出荷する電池の大量生産とマルチタイプの互換性要件、及び密封試験と放電試験の同期実行を満たすために、金属燃料電池に適用される性能試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【0011】
金属燃料電池に適用される性能試験装置であって、前記性能試験装置は、適応クランプ装置、昇降コンソール、試験水槽、密封性能試験装置及び放電性能試験装置を含み、
適応クランプ装置は試験水槽に設置され、前記適応クランプ装置は異なる寸法・外形のスタックを自律的に位置決め及びクランプするために用いられ、
昇降コンソールは適応クランプ装置に接続され、前記昇降コンソールは適応クランプ装置の昇降を制御し、適応クランプ装置から試験水槽の底部までの高さを調整するために用いられ、
密封性能試験装置は試験水槽に接続され、前記密封性能試験装置は前記試験水槽を介して金属燃料電池に対して密封性能試験を行うために用いられ、
放電性能試験装置は適応クランプ装置における金属燃料電池に接続され、前記放電性能試験装置は金属燃料電池に対して放電性能試験を行うために用いられる。
【0012】
任意選択的に、前記適応クランプ装置は、支持台、2つの展開板、4つのクランプ構造及び4つの昇降リングを含み、
2つの展開板はいずれも櫛歯状をしており、支持台の対向する両側はいずれも展開板に合わせた櫛歯状をしており、各展開板は支持台の片側に伸縮可能に接続され、2つの展開板が展開しない時、支持台と完全な平板を構成し、2つの展開板は、スタックの寸法に応じて対応する長さを展開し、展開板の櫛歯の間の隙間はスタックから漏れた電解液を流下させ、かつ試験水槽に収集するために用いられ、
2つのクランプ構造は2つの展開板に対向して設置され、他の2つのクランプ構造は支持台に対向して設置され、2つのクランプ構造の接続線は他の2つのクランプ構造の接続線と垂直であり、4つのクランプ構造は異なる寸法・外形のスタックを自律的に位置決め及びクランプするために用いられ、
4つの昇降リングは支持台に固定して接続され、4つの昇降リングの制御端は昇降コンソールに接続され、4つの前記昇降リングは昇降コンソールの制御下で支持台及びスタックを駆動して昇降させ、スタックから試験水槽の底部までの高さを調整するために用いられる。
【0013】
任意選択的に、前記クランプ構造は、高さ調整支柱、高さロック装置、クランプ支柱、ボールヒンジ接続装置及び適応爪板を含み、
高さ調整支柱の一端は高さロック装置に接続され、高さ調整支柱の他端はクランプ支柱の一端に垂直に接続され、高さロック装置は展開板又は支持台に固定され、クランプ支柱の他端はボールヒンジ接続装置を介して適応爪板に接続され、適応爪板はボールヒンジ接続装置の周りを120°回転でき、
高さ調整支柱はクランプ支柱の軸線がスタックの軸線と重なり合うように垂直高さを調整するために用いられ、高さロック装置によって固定され、
クランプ支柱は水平方向の伸びを調整するために用いられ、スタックは適応爪板によってクランプされる。
【0014】
任意選択的に、前記適応爪板は、三方向ロッド及び接続平板を含み、
三方向ロッドの一端は接続平板の同一側面に接続され、三方向ロッドの他端はボールヒンジ接続装置に接続される。
【0015】
任意選択的に、前記性能試験装置はさらに、4つの昇降柱を含み、
4つの昇降柱の一端は試験水槽の底部に固定して接続され、4つの昇降柱はそれぞれ1対1に対応して4つの昇降リングを貫通し、前記適応クランプ装置は昇降柱に沿って上下に移動する。
【0016】
任意選択的に、前記密封性能試験装置は、蒸留水タンク、蒸留水管、水ポンプ、電子質量秤及び水漏れ検出機器を含み、
蒸留水タンクは蒸留水管を介して試験水槽に接続され、蒸留水管に水ポンプが設置され、前記蒸留水タンクは蒸留水管及び水ポンプを介して試験水槽に密封性能試験の浸透実験に必要な蒸留水を供給するために用いられ、
電子質量秤は試験水槽の下方に設置され、前記電子質量秤は密封性能試験の漏れ実験時にスタックの反応運転前後の質量を測定して、スタックの水漏れ量を得るために用いられ、
水漏れ検出機器は密封性能試験の漏れ実験時に試験水槽の底部に配置され、スタックの漏れがあるか否かを検出するために用いられる。
【0017】
任意選択的に、前記スタックの水漏れ量の計算式は、
【数1】
であり、
式中、Vtは単位時間あたりのスタック運転の漏れ量であり、Vlは時間T1内に漏れた液体の体積であり、mlは時間T1内に運転して漏れた液体の質量であり、ρsは漏れた液体の密度であり、m0はスタックが安定して運転する時に測定し始めた初期の質量であり、m1は測定終了時の質量である。
【0018】
任意選択的に、前記性能試験装置はさらに、試験プラットフォームを含み、
試験プラットフォームは最上層、中間層及び底層を含むという3つの層に分けられ、前記最上層は電子質量秤を配置するために用いられ、前記中間層は蒸留水タンクを配置するために用いられ、前記底層は金属燃料電池の電解液循環システム及び附属装置を配置するために用いられる。
【0019】
任意選択的に、前記放電性能試験装置は、電気試験装置、データ収集機器及びコンピュータを含み、
スタックの陰極端子と陽極端子は電気試験装置の正極と負極に接続され、
電気試験装置の信号出力端はデータ収集機器の信号入力端に接続され、データ収集機器の信号出力端はコンピュータに接続され、
前記電気試験装置はスタックの電気パラメータデータを収集し、かつデータ収集機器に伝送するために用いられ、
前記データ収集機器は収集した電気パラメータデータを時間領域データセットファイルに形成し、かつコンピュータに伝送するために用いられ、
前記コンピュータは時間領域データセットファイルにおける電気パラメータデータを分析及び計算し、放電性能試験を完了するために用いられる。
【0020】
任意選択的に、放電性能評価の試験指標は、平均安定運転電力We及び最大電力差WΔを含み、
前記平均安定運転電力Weの計算式は、
【数2】
であり、式中、Wtはスタックのリアルタイム電力であり、T2はスタックの安定運転試験時間であり、
前記最大電力差WΔの計算式は、
【数3】
であり、式中、(Wt)max、はスタックのリアルタイム電力の最大値である。
【発明の効果】
【0021】
本発明が提供する具体的な実施例によれば、本発明は以下の技術的効果を開示する。
【0022】
本発明は、金属燃料電池に適用される性能試験装置を開示し、適応クランプ装置は異なる寸法・外形のスタックを自律的に位置決め及びクランプすることができ、外形に応じて適応的に固定でき、密封性能試験装置は試験水槽を介して金属燃料電池に対して密封性能試験を行い、放電性能試験装置は金属燃料電池に対して放電性能試験を行う。本発明は、密封と放電の2種類の性能試験を同時に行うことができ、異なる電解液の注入及び異なる寸法、異なる数量の電池セルからなるスタックの測定を実現でき、出荷する電池の大量生産とマルチタイプの互換性要件を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例で使用する必要のある図面を簡単に説明し、明らかに、次の説明における図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0024】
図1】本発明の実施例が提供する金属燃料電池に適用される性能試験装置の構造概略図である。
図2】本発明の実施例が提供する適応クランプ装置の構造概略図である。
図3】本発明の実施例が提供する昇降コンソールの構造概略図である。
図4】本発明の実施例が提供する放電性能試験装置の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明した実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに取得した他の全ての実施例は、いずれも本発明の技術的範囲に属する。
【0026】
本発明は、出荷する電池の大量生産とマルチタイプの互換性要件、及び密封試験と放電試験の同期実行を満たすために、金属燃料電池に適用される性能試験装置を提供することを目的とする。
【0027】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかで分かりやすくするために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0028】
金属燃料電池は金属空気電池とも呼ばれ、金属を燃料とし、空気中の酸素と酸化還元反応を起こして電気エネルギーを生成する特殊な燃料電池である。金属燃料電池構造は金属陽極、電解質、空気陰極で構成され、電極電位が負である活性固体金属(例えば、アルミニウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム等)を燃料源とし、アルカリ性溶液又は中性塩溶液を電解液とし、空気中の酸素を陰極とし、コストが低く、無毒で、汚染がなく、放電電圧が安定し、比エネルギーが高く、比出力が高い等の利点を有する。
【0029】
密封性能と放電性能は金属燃料電池の2つの重要なコア性能指標であり、密封性能は合格した電池製品が一定の漏れ防止基準を満たすことを保証するものである。第1に、電解質溶液が電池から漏れてはならず、第2に、任意の水分が電池に漏れてはならず、密封性能試験は金属燃料電池の密封性を検査する標準試験である。放電性能は、電池が安定した動作状況で放電する電池内部抵抗、開回路電圧、放電電力等の電気パラメータ及び放電プロセスにおける温度変化の指標であり、放電性能試験は金属燃料電池の放電性能を検査する標準試験である。
【0030】
本発明は、革新的に、金属燃料電池の密封性能と放電性能という2つのコア性能指標試験を有機的に組み合わせ、金属燃料電池に適用される性能試験装置を設計し、該装置に合わせて、金属燃料電池の出荷検査に対して明確な性能試験指標を定義した。図1に示すように、本発明の実施例が提供する金属燃料電池に適用される性能試験装置は、適応クランプ装置3、昇降コンソール1、試験水槽4、密封性能試験装置及び放電性能試験装置を含む。適応クランプ装置3は試験水槽4内に設置され、適応クランプ装置3は異なる寸法・外形のスタック13を自律的に位置決め及びクランプするために用いられ、外形に応じて適応的に固定できる。昇降コンソール1は適応クランプ装置3に接続され、昇降コンソール1は適応クランプ装置3の昇降を制御し、適応クランプ装置3から試験水槽4の底部までの高さを調整するために用いられる。密封性能試験装置は試験水槽4に接続され、密封性能試験装置は前記試験水槽4を介して金属燃料電池に対して密封性能試験を行うために用いられる。放電性能試験装置は適応クランプ装置3における金属燃料電池に接続され、放電性能試験装置は金属燃料電池に対して放電性能試験を行うために用いられる。そのうち、スタック13は複数の金属燃料電池セルが直列接続又は並列接続された電気構造を介して接続されて構成された複数電池全体であり、セルの間に電解液を交換するための通路を有する。電解液は、化学電池で使用される一定の腐食性を有する媒体であり、金属燃料電池の通常の動作にイオンを供給する。
【0031】
該性能試験装置は様々な金属燃料電池及びスタック13を適応的にクランプすることができ、同時に密封と放電の2種類の性能試験を行い、異なる電解液の注入及び異なる寸法、異なる数量の電池セルの測定を実現でき、現在の全ての金属燃料電池メーカーの電池出荷時の検査と試験に適用される。
【0032】
以下、図面を参照しながら、性能試験装置の具体的な構造をさらに詳細に説明する。
【0033】
図2を参照すると、適応クランプ装置3は、支持台3-1、2つの展開板3-2、4つのクランプ構造及び4つの昇降リング3-7を含む。2つの展開板3-2はいずれも櫛歯状をしており、支持台3-1の対向する両側はいずれも展開板3-2に合わせた櫛歯状をしており、各展開板3-2は支持台3-1の片側に伸縮可能に接続され、2つの展開板3-2が展開しない時、支持台3-1と完全な平板を構成し、2つの展開板3-2はスタック13の寸法に応じて対応する長さを展開し、展開板3-2の櫛歯の間の隙間はスタック13から漏れた電解液を流下させ、かつ試験水槽4に収集するために用いられる。2つのクランプ構造は2つの展開板3-2に対向して設置され、他の2つのクランプ構造は支持台3-1に対向して設置され、2つのクランプ構造の接続線は他の2つのクランプ構造の接続線と垂直であり、4つのクランプ構造は異なる寸法・外形のスタック13を自律的に位置決め及びクランプするために用いられる。4つの昇降リング3-7は支持台3-1に固定して接続され、4つの昇降リング3-7の制御端は昇降コンソール1に接続され、4つの前記昇降リング3-7は昇降コンソール1の制御下で支持台3-1及びスタック13を駆動して昇降させ、スタック13から試験水槽4の底部までの高さを調整するために用いられる。
【0034】
クランプ構造は、高さ調整支柱3-3、高さロック装置3-4、クランプ支柱3-5、ボールヒンジ接続装置3-6及び適応爪板3-8を含む。高さ調整支柱3-3の一端は高さロック装置3-4に接続され、高さ調整支柱3-3の他端はクランプ支柱3-5の一端に垂直に接続され、高さロック装置3-4は展開板3-2又は支持台3-1上に固定され、クランプ支柱3-5の他端はボールヒンジ接続装置3-6を介して適応爪板3-8に接続され、適応爪板3-8はボールヒンジ接続装置3-6の周りを120°回転できる。高さ調整支柱3-3は、クランプ支柱3-5の軸線がスタック13の軸線と重なり合うように、垂直高さを調整するために用いられ、高さロック装置3-4によって固定される。クランプ支柱3-5は水平方向の伸びを調整するために用いられ、スタック13は適応爪板3-8によってクランプされる。
【0035】
適応爪板3-8は、三方向ロッド及び接続平板を含む。三方向ロッドの一端は接続平板の同一側面に接続され、三方向ロッドの他端はボールヒンジ接続装置3-6に接続される。
【0036】
性能試験装置はさらに、4つの昇降柱2を含む。4つの昇降柱2の一端は試験水槽4の底部に固定して接続され、4つの昇降柱2はそれぞれ1対1に対応して4つの昇降リング3-7を貫通し、前記適応クランプ装置3は昇降柱2に沿って上下に移動する。
【0037】
好ましい態様として、クランプ支柱3-5は油圧制御システムに接続され、油圧システムはクランプ支柱3-5の伸びを制御し、落下を防止する一定のクランプ力を供給することができる。適応クランプ装置3全体は、支持台3-1の四隅にある昇降リング3-7を介して水平位置と垂直並進量を固定し、プラットフォームの自動昇降を実現する。
【0038】
適応クランプ装置3の具体的な動作原理は、まず、スタック13の軸方向寸法に応じて、取り付けの径方向寸法、即ち支持台3-1と2つの展開板3-2の合計長をほぼ決定し、展開板3-2の伸び量を決定し、かつ位置を固定し、クランプ支柱3-5の軸線がスタック13の軸線と重なり合うように高さ調整支柱3-3を調整し、高さロック装置3-4によって固定される。油圧システムは4つの方向におけるクランプ支柱3-5がスタック13をクランプするまで伸びるように制御し、クランプ板に十分なクランプ力を供給し、両側の水出入口に干渉が発生する場合、高さ調整支柱3-3を調整して二次的に位置決めすることができる。密封性能試験を行う時、スタック13全体を液面以下に沈める必要があり、昇降リング3-7は昇降コンソール1の制御で適応クランプ装置3全体及びスタック13を駆動して試験水槽4の底部まで垂直に下降させる。
【0039】
適応クランプ装置3と昇降コンソール1の組立嵌合は図3に示すとおりである。図3において、昇降柱2は試験水槽4の底部に溶接され、適応クランプ装置3を駆動して上下に移動させることができる。スタック13を取り付ける時、昇降コンソール1は適応クランプ装置3を制御して試験水槽4の底部まで落下させ、スタック13を取り付けた後に放電性能試験を行う。密封性能試験の漏れ実験を行う時、適応クランプ装置3及び試験対象のスタック13を持ち上げ、水漏れがあるか否かを検出するための水漏れ検出機器(水漏れ検出試験紙)を底部に配置する必要がある。浸透実験を行う時、クランプ装置及びスタック13(試験対象のスタック)を底部まで落下させ、試験水槽4は液面がスタック13のハウジングの最上部を超えるまで給水し始める。検出試験紙:密封性試験の検出試験紙はリトマス試験紙を用い、金属燃料電池の電解液には反応後にアルカリ性物質が含まれ、例えばマグネシウム燃料電池の反応生成物は塩基性である水酸化マグネシウムを有し、赤色のリトマス試験紙がアルカリ性物質に接触すると青色になるため、リトマス試験紙が変色するか否かを観察することにより、スタック13に電解液の漏れがあるか否かを検出することができる。
【0040】
例示的に、密封性能試験装置は、蒸留水タンク9、蒸留水管6、水ポンプ7、電子質量秤5及び水漏れ検出機器を含む。図1に示すように、蒸留水タンク9は蒸留水管6を介して試験水槽4に接続され、蒸留水管6に水ポンプ7が設置される。蒸留水タンク9は、蒸留水管6及び水ポンプ7を介して密封性能試験の浸透実験に必要な蒸留水を試験水槽4に供給するために用いられる。電子質量秤5は試験水槽4の下方に設置され、電子質量秤5は密封性能試験の漏れ実験時にスタック13の反応運転前後の質量を測定して、スタック13の水漏れ量を得るために用いられる。水漏れ検出機器は、密封性能試験の漏れ実験時に試験水槽4の底部に配置され、スタック13の漏れがあるか否かを検出するために用いられる。
【0041】
水漏れ量の計算:
【0042】
試験対象のスタックが安定して運転する時に測定し始めた初期の質量をm0とし、一定時間T1の電気パラメータの数値変化を記録した後、測定終了時の質量をm1をとすると、試験対象のスタックは該時間内に運転して漏れた液体の質量mlは、
【数4】
である。
【0043】
漏れ液の蒸発量が小さく、計算ではそれを無視する。漏れた液体の体積Vlを次のように計算し始める。
【数5】
【0044】
単位時間あたりのスタック運転の漏れ量Vtを計算する。
【数6】
【0045】
単位時間あたりのスタックの漏れ量Vtを試験指標として評価系に代入する。
【0046】
スタックの水漏れ量の計算式は、
【数7】
である。
【0047】
性能試験装置はさらに、試験プラットフォーム8を含む。試験プラットフォーム8は最上層、中間層及び底層を含むという3つの層に分けられる。最上層は電子質量秤5を配置するために用いられ、中間層は蒸留水タンク9を配置するために用いられる。底層は金属燃料電池の電解液循環システム及び附属装置を配置するために用いられる。
【0048】
図1から分かるように、試験プラットフォーム8は3つの層に分けられ、最上層に放電性能試験及び密封性能試験のための主な装置が配置され、昇降コンソール1は適応クランプ装置3及び試験対象のスタック13が昇降柱2に沿って上下に移動するように制御し、様々な試験のニーズを満たす。試験対象のスタック13は適応クランプ装置3に取り付けられ、陰極端子と陽極端子は電気試験装置10に接続され、各電気指標数値をリアルタイムで観測でき、測定された数値は放電性能試験の評価に用いられる。試験水槽4は、密封性能試験の浸透実験において、スタック13のハウジングのガス密封性を検査するために用いられる。電子質量秤5はクランプ装置全体の質量を測定し、反応運転前後の質量の変化に応じてスタック13装置の水漏れ量をグラム単位の精度で推定し、測定された数値は漏れ実験の評価に用いられる。第2層に蒸留水タンク9が配置され、密封性能試験の浸透実験に必要な蒸留水を補助媒体として供給する。蒸留水管6を介して試験水槽4に接続され、水ポンプ7は蒸留水の輸送に動力を供給する。試験プラットフォーム8の底層は、金属燃料電池の電解液循環システム及び他の可能な附属装置を配置するために用いられる。
【0049】
一例では、図4を参照して、放電性能試験装置は、電気試験装置10、データ収集機器11及びコンピュータ12を含む。スタック13の陰極端子と陽極端子は、電気試験装置10の正極と負極に接続される。電気試験装置10の信号出力端はデータ収集機器11の信号入力端に接続され、データ収集機器11の信号出力端はコンピュータ12に接続される。電気試験装置10は、スタック13の電気パラメータデータを収集し、かつデータ収集機器11に伝送するために用いられる。データ収集機器11は、収集した電気パラメータデータを時間領域データセットファイルに形成し、かつコンピュータ12に伝送するために用いられる。コンピュータ12は、時間領域データセットファイルにおける電気パラメータデータを分析及び計算し、放電性能試験を完了するために用いられる。
【0050】
放電性能指標の計算:
【0051】
記録したスタックのリアルタイム電力をWtとし、記録したスタックの安定運転試験時間をT2とすると、平均安定運転電力Weは、
【数8】
である。
【0052】
最大電力差WΔを計算する。
【数9】
【0053】
最大電力差WΔと平均安定運転電力Weを放電性能評価の試験指標とする。
【0054】
本発明では、金属燃料電池の2つのコア性能試験を総合的に考慮し、クランプ装置の改良・革新を試験することによって設計された金属燃料電池に適用される性能試験装置は、具体的には、金属燃料電池の密封性能及び放電性能試験に適用される装置であり、2つの性能の試験指標を組み合わせ、試験装置は出荷する電池の大量生産とマルチタイプの互換性要件を実現し、密封試験と放電試験を同期して行うことにより、電池試験の不連続性を最大限になくし、電池試験の適時性と正確性を満たすことができる。本発明は、異なる電解液の注入及び異なる寸法、異なる数量の金属燃料電池セルの測定を実現でき、現在の全ての金属燃料電池メーカーの電池出荷時の検査と試験に適用される。
【0055】
本発明は、金属燃料電池の出荷検査の標準化と正規化を推進し、金属燃料電池業界の全面的かつ多角的な発展を促進することができ、金属燃料電池は巨大な市場応用の見通しと発展の潜在力を十分に発揮し、様々な新エネルギー産業チェーンにより広く応用されるようにすることができる。
【0056】
本明細書の各実施例は漸進的に説明され、各実施例は他の実施例との相違点を重点的に説明し、各実施例の間の同じ又は類似する部分は互いに参照すればよい。
【0057】
本明細書では、具体的な例を用いて本発明の原理及び実施形態を説明したが、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核心思想を理解するのを助けるためのものに過ぎない。また、当業者にとって、本発明の思想に基づいて、具体的な実施形態及び応用範囲のいずれも変化できる。要約すると、本明細書の内容は本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0058】
1 昇降コンソール、2 昇降柱、3 適応クランプ装置、3-1 支持台、3-2 展開板、3-3 高さ調整支柱、3-4 高さロック装置、3-5 クランプ支柱、3-6 ボールヒンジ接続装置、3-7 昇降リング、3-8 適応爪板、4 試験水槽、5 電子質量秤、6 蒸留水管、7 水ポンプ、8 試験プラットフォーム、9 蒸留水タンク、10 電気試験装置、11 データ収集機器、12 コンピュータ、13 スタック。

図1
図2
図3
図4