(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】貫入試験方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
E02D1/02
(21)【出願番号】P 2023076472
(22)【出願日】2023-05-08
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523167699
【氏名又は名称】株式会社ナガイ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】木本 尚子
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-180655(JP,A)
【文献】特開平09-111745(JP,A)
【文献】特開2003-313854(JP,A)
【文献】特開2005-314919(JP,A)
【文献】特開2005-009253(JP,A)
【文献】特開平06-336719(JP,A)
【文献】スクリューウエイト貫入試験方法,日本産業規格,JIS A 1221:2020,日本,2020年10月26日,第7-8頁(「5.3.3 全自動式の試験」の欄)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に貫入するためのロッド部と、前記ロッド部に鉛直方向の下向きの荷重を負荷する載荷部と、前記載荷部にかかる鉛直方向の力を測定する秤部とを備える貫入試験装置を用いて、鉛直方向の下向きの荷重が加えられた前記ロッド部が前記地盤に貫入するときの前記地盤の反力を連続的に求めることで前記地盤の強度を推定する貫入試験方法であって、
前記地盤への貫入の開始後に前記ロッド部を回転させながら貫入を継続する第1工程と、
前記第1工程の後、貫入速度が80m
m/s以上となったときに非自沈層から自沈層へ切り替わったと判断して、前記ロッド部の回転を停止させるとともに、前記地盤への前記貫入速度を60m
m/sに変更して自沈が始まった際の最低加重を測定して貫入を継続する第2工程と、
前記第2工程の後、前記貫入速度が5mm/s未満となったときに自沈層から非自沈層に切り替わったと判断して前記ロッド部を回転させながら貫入を継続する第3工程と、
を備えることを特徴とする貫入試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤調査を行うための方式としてスクリューウェイト貫入方法(旧スウェーデン式サウンディング試験方法)が用いられている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、スウェーデン式サウンディング試験装置について機械化を図り人手による作業を減らす目的で、載荷台に載せるおもりを吊り下げておき、試験時におもりを載荷台に載置する荷重昇降ユニット、及び非自沈時にロッドを機械的に回転させるための回転伝達機構を設けたサウンディング試験装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地盤には、自沈層と非自沈層(回転層)とが存在するが、従来、自沈層と非自沈層を判別しながら正確に地盤調査を行うことが不十分であった。
【0005】
本発明の目的は、好適に地盤調査を行うことを可能とする貫入試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る貫入試験方法は、地盤に貫入するためのロッド部と、前記ロッド部に鉛直方向の下向きの荷重を負荷する載荷部と、前記載荷部にかかる鉛直方向の力を測定する秤部とを備える貫入試験装置を用いて、鉛直方向の下向きの荷重が加えられた前記ロッド部が前記地盤に貫入するときの前記地盤の反力を連続的に求めることで前記地盤の強度を推定する貫入試験方法であって、前記地盤への貫入の開始後に前記ロッド部を回転させながら貫入を継続する第1工程と、前記第1工程の後、貫入速度が80mm/s以上となったときに非自沈層から自沈層へ切り替わったと判断して、前記ロッド部の回転を停止させるとともに、前記地盤への前記貫入速度を60mm/sに変更して自沈が始まった際の最低加重を測定して貫入を継続する第2工程と、前記第2工程の後、前記貫入速度が5mm/s未満となったときに自沈層から非自沈層に切り替わったと判断して前記ロッド部を回転させながら貫入を継続する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適に地盤調査を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態において、貫入試験装置を示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態において、貫入試験装置を用いて貫入試験を行う方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態において、貫入試験装置10を示す図である。
図2は、本発明に係る実施形態において、貫入試験装置10を用いて貫入試験を行う方法の手順を示すフローチャートである。
【0012】
貫入試験装置10は、地盤の強度を調査する装置である。貫入試験装置10は、ロッド部1と、載荷部3と、チャック部5と、付加錘6と、架台7と、ガイドレール8と、モータ部11と、制御部15と、車輪部16と、支柱部17と、秤部30とを備えている。
【0013】
ロッド部1は、地盤に貫入させるように形成された棒部材であり、先端部には鋭利な加工が施された螺旋状のスクリューが形成されている。ロッド部1は、適度な強度を有する材質で構成されている。
【0014】
載荷部3は、ロッド部1に鉛直方向の下向きの荷重を負荷するための装置である。載荷部3は、
図1に示されるように、ロッド部1にかける重量を調整するための付加錘6を配置可能な構造を有している。
【0015】
チャック部5は、ロッド部1による掘削作業を行うためにロッド部1を固定するチャック機構を有する。チャック部5は、中心にある貫通孔を挿通可能なロッド部1を固定する三つの爪部を備えてている。三つの爪部は、径方向を移動することでロッド部1を固定することが可能な構造となっている。
【0016】
秤部30は、載荷部3にかかる鉛直方向の力を測定する。架台7は、載荷部3を案内するためのガイドレール8などを備えた略L字状の部材である。ガイドレール8は、
図1に示されるように、上下方向に延伸し、載荷部3の昇降を案内するレール部材である。
【0017】
モータ部11は、架台7の上部に設置されて、架台7内のチェーン(不図示)を巻き上げ、又は下すことで載荷部3を昇降させるための電動機である。
【0018】
制御部15は、貫入試験装置10の全体を制御するための制御装置である。制御部15には、例えば、予めインストールされたプログラムを実行することでモータ部11などを制御することが出来る。
【0019】
制御部15は、貫入試験装置10を用いて貫入検査を行う場合において、地盤への貫入の開始後にロッド部1を回転させながら貫入を継続するように制御する工程と、貫入速度が第1の速度(80mm/s)以上となったときに、ロッド部1の回転を停止させるとともに、地盤への貫入速度を第1の速度よりも小さい第2の速度(60mm/s)に変更して貫入を継続するように制御する工程と、貫入速度が第2の速度よりも小さい第3の速度(5mm/s)未満となったときにロッド部1を回転させながら貫入を継続するように制御する工程とを備えている。
【0020】
車輪部16は、貫入試験装置10を移動させるための複数のタイヤと、これらの複数のタイヤを囲むように一帯に接続された環(キャタピラ)を備えている。これにより、地盤調査の対象となる土地に例えば段差があったとしても容易に移動することが出来る。
【0021】
支柱部17は、通常時は、
図1に示されるように浮いた状態であり、貫入試験装置10が傾斜状態にあるときに安定させて地面に設置させるように下降可能な支柱である。
【0022】
上記のように、載荷部3は、ロッド部1に鉛直方向の下向きの荷重を負荷するための装置であるが、ここでは載荷部3とチャック部5などの載荷部3に付随する装置の合計の自重と、載荷部3に付加錘6を2個載せることで、スクリューウェイト貫入方法(旧スウェーデン式サウンディング試験方法)と同様の1000Nまでの荷重を加えることが可能な構造となっている。
【0023】
なお、載荷部3に載せる付加錘6の重量の組み合わせは任意であり、載荷部3とこれに付随する装置のみで1000Nとなるように構成することもできるが適宜変更することが可能である。
【0024】
また、載荷部3は、ガイドレール8に沿って背面に設置されたローラなどから構成される摺動部により昇降自在となっている。
【0025】
載荷部3には、上述したように2個の付加錘6を載置できるようになっており、本実施形態における1個の付加錘6の重量は、人力で積み下ろしが容易な250Nとしているが、適宜変更可能である。
【0026】
上述したように、載荷部3の上部にはチャック部5が設置されており、スクリューウェイト貫入方法(旧スウェーデン式サウンディング試験方法)で用いられている先端にスクリューを備えたロッド部1の軸を着脱自在に把持することができる。
【0027】
また、非自沈層でのロッド部1の回転は、載荷部3の内部に設置した回転モータ(不図示)で制御部15の制御によりチャック部5を回転させることによって行う構成としている。
【0028】
そして、モータ部11の回転により、架台7の内部に設けられたチェーンの巻き上げ、巻き出しを行い、載荷部3を昇降させるようになっている。
【0029】
貫入試験が終わって装置を引き上げるときは、モータ部11の回転により、架台7内部のチェーンを巻き上げることで、載荷部3が架台7のガイドレール8に沿って上昇する。
【0030】
架台7には、上述したように載荷部3にかかる力(載荷部3及び付加錘6の自重も含む)の合計の力が表示される秤部30が設置されている。
【0031】
貫入試験においては、まず、載荷部3について台車を兼ねた架台7の車輪部16を利用して、試験位置まで移動させ、載荷部3に250Nの付加錘6を2個載せることで、全体で1000Nの錘を構成している。
【0032】
これにより、載荷部3は、モータ部11によって巻き出し、巻き上げされるチェーンの下端部には秤部30が取り付けられ、秤部30を介して載荷部3が支持されている。
【0033】
先端にスクリューが形成されたロッド部1を載荷部3に設けたチャック部5で把持すれば、ロッド部1には下向きに1000Nの荷重が加わり、一方、ロッド部1の先端には地盤からの抵抗力Rが作用することになる。このとき、秤部30は1000Nから地盤の抵抗力Rを引いた値を表示することになる。
【0034】
貫入試験装置10の制御部15は、鉛直方向の下向きの荷重が加えられたロッド部1が地盤に貫入するときの地盤の反力(抵抗力R)を連続的に求めることで地盤の強度を推定する機能を有する。
【0035】
続いて、上記構成の貫入試験装置10を用いて貫入試験を行う方法について説明する。最初に、地盤調査の対象となる場所に車輪部16を利用して貫入試験装置10を移動させる。
【0036】
地盤の非自沈層内に貫入させるために、先端にスクリューが形成されたロッド部1を載荷部3に設けたチャック部5で把持し、チャック部5を回転させることでロッド部1を回転させる(S2)。このときのロッド部1の回転速度は、例えば、28rpmに設定することが出来るが、適宜変更可能である。
【0037】
S2の工程において、ロッド部1を回転させた状態で貫入を継続してロッド部1を下降させていく際に、貫入速度が80mm/s以上となったか否かを判断する(S4)。ここで、貫入速度が80mm/s未満のときは再びS4へと戻る。なお、貫入速度が80mm/sとなったときは、非自沈層から自沈層へと切り替わったと判断している。
【0038】
S4の工程において、貫入速度が80mm/s以上となったと判断された場合は、ロッド部1の回転を停止し、貫入速度を60mm/sと制御する(S6)。自沈が始まった際の最低荷重を測定する必要があるからである。
【0039】
S6の工程において、貫入速度を60mm/sに制御した後、貫入を継続する際に、貫入速度が5mm/s未満となったか否かを判断する(S8)。ここで、貫入速度が5mm/s以上のときは再びS8へと戻る。なお、貫入速度が5mm/sとなったときは、自沈層から非自沈層へと切り替わったと判断している。
【0040】
S8の工程において、貫入速度が5mm/s未満となったときに、再び、チャック部5を回転させることでロッド部1を回転させる(S10)。これにより、非自沈層に再び入った場合であっても継続して貫入することができ、地盤の調査を行うことが出来る。
【0041】
以上のように、貫入試験装置10を用いて貫入試験を行う方法によれば、自沈層及び非自沈層を自動で判別して貫入速度やロッド部1の回転を制御することができるため、どのような地盤であっても好適に地盤調査を行うことが出来るという顕著な効果を奏する。
【0042】
なお、上記数値等は、あくまで一例であり、もちろん、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ロッド部、3 載荷部、5 チャック部、6 付加錘、7 架台、8 ガイドレール、10 貫入試験装置、11 モータ部、15 制御部、16 車輪部、17 支柱部、30 秤部。
【要約】
【課題】好適に地盤調査を行うことを可能とする貫入試験方法を提供することである
【解決手段】貫入試験方法は、地盤に貫入するためのロッド部1と、ロッド部1に鉛直方向の下向きの荷重を負荷する載荷部3と、載荷部3にかかる鉛直方向の力を測定する秤部30とを備える貫入試験装置10を用いて、鉛直方向の下向きの荷重が加えられたロッド部1が地盤に貫入するときの地盤の反力を連続的に求めることで地盤の強度を推定する貫入試験方法であって、地盤への貫入の開始後にロッド部1を回転させながら貫入を継続する第1工程と、第1工程の後、貫入速度が第1の速度以上となったときに、ロッド部1の回転を停止させるとともに、地盤への貫入速度を第1の速度よりも小さい第2の速度に変更して貫入を継続する第2工程と、を備える。
【選択図】
図1