(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】乱巻防止装置
(51)【国際特許分類】
B66D 1/54 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B66D1/54 A
(21)【出願番号】P 2024021018
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516322728
【氏名又は名称】有限会社アグリプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】深代 光治
(72)【発明者】
【氏名】深代 ミドリ
(72)【発明者】
【氏名】水口 英男
(72)【発明者】
【氏名】山藤 則晴
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-26955(JP,U)
【文献】特開昭64-34896(JP,A)
【文献】特開2022-147944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0282109(US,A1)
【文献】登録実用新案第3033362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/54
B66D 5/02
B66D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤー(W)が巻かれる円筒状のドラム本体(11)と前記ドラム本体(11)の両端に位置する円盤状のドラムディスク(12)とを具備するウインチドラム(10)に設けられ、自由回転可能な状態の前記ウインチドラム(10)から前記ワイヤー(W)を引き出す際の乱巻きを防止するための乱巻防止装置(2,2A,4,5,6)であって、
ウインチドラム(10)の回転を制止又は抑制するために前記ドラムディスク(12)の周面(12a)又は盤面(12b)に押し当て可能な接触部材(21,21A,41,51,61)を有することを特徴とする乱巻防止装置。
【請求項2】
前記接触部材(21)が、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に押し当て可能な円筒状の接触ローラ(21)であり、
前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に押し当てられた前記接触ローラ(21)は、前記ウインチドラム(10)の回転速度が所定の許容範囲内であるときは前記ドラムディスク(12)の回転に伴って回転し、前記ウインチドラム(10)の回転速度が過剰となったときはその回転が制止又は抑制されることを特徴とする請求項1に記載の乱巻防止装置。
【請求項3】
前記接触部材(21A)が、前記ドラムディスク(12)の盤面(12b)に押し当て可能な円錐台状の接触ローラ(21A)であり、
前記ドラムディスク(12)の盤面(12b)に押し当てられた前記接触ローラ(21A)は、前記ウインチドラム(10)の回転速度が所定の許容範囲内であるときは前記ドラムディスク(12)の回転に伴って回転し、前記ウインチドラム(10)の回転速度が過剰となったときはその回転が制止又は抑制されることを特徴とする請求項1に記載の乱巻防止装置。
【請求項4】
前記接触ローラ(21,21A)の回転軸延長部(211)が、中空の静止円筒体(22)の中心軸上で回転可能に軸支されており、
前記静止円筒体(22)の中空内で前記回転軸延長部から放射方向に延在する少なくとも1つのコイルバネ(28)と、前記コイルバネ(28)の先端に取り付けられた接触板(29)とを有し、
前記ウインチドラム(10)の回転速度が許容範囲内であるとき、前記接触板(29)は前記静止円筒体(22)の内面から離間しており、
前記ウインチドラム(10)の回転速度が過剰となったとき、前記コイルバネ(28)が遠心力により伸長して前記接触板(29)が前記静止円筒体(22)の内面に接触することを特徴とする請求項2又は3に記載の乱巻防止装置。
【請求項5】
前記接触ローラ(21,21A)を前記ドラムディスク(12)に押し当てた使用状態と、前記接触ローラ(21,21A)を前記ドラムディスク(12)から離した不使用状態とを切り換え可能な起到機構(24)を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の乱巻防止装置。
【請求項6】
前記接触部材(21)が、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に沿って面状に押し当て可能な接触板(41)であり、
前記接触板(41)を、常時、前記ドラムディスク(12)に押し当てるために前記接触板(41)と連結された押圧本体(42e)を具備するバネカン(42)と、
前記バネカン(42)の立設部(42a)が固定され、かつ前記バネカン(42)の環状部(42h)を掛けるためのフック部(44)を形成されたバネカン座部(43)と、
前記バネカン座部(43)を支持する静止した支持枠(45)と、を有することを特徴とする請求項1に記載の乱巻防止装置。
【請求項7】
前記接触部材(51)が、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に沿って面状に押し当て可能な接触板(51)であり、
前記接触板(51)を、常時、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に押し当てるように前記接触板(51)を支持する支持枠を有し、
前記支持枠は、前記接触板(51)の前記ドラムディスク(12)に対する位置を調整する手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の乱巻防止装置。
【請求項8】
前記接触部材(61)が、前記ドラムディスク(12)の両方の盤面に対してそれぞれ押し当て可能に配置された一対のブレーキパッド(61a,61b)であり、
前記ドラムディスク(12)の周縁を跨いで設置され、前記一対のブレーキパッド(61a,61b)を支持するキャリパー(62)と、
少なくとも一方の前記ブレーキパッド(61a,61b)を移動させるための油圧機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載の乱巻防止装置。
【請求項9】
前記ドラムディスク(12)の回転速度を検知する速度センサ(66)と、
前記速度センサ(66)によって検知された回転速度に基づいて前記油圧機構を制御する制御部(67)と、をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の乱巻防止装置。
【請求項10】
請求項2、3、6、7、8又は9のいずれかに記載の乱巻防止装置を備えたウインチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチドラムのワイヤロープの乱巻防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウインチは、対象物にワイヤの先端を取り付け、油圧モータ又は電動モータによりワイヤーをウインチドラムに巻き取ることによって対象物を動かすために用いられる。ウインチドラムのワイヤーロープ(以下「ワイヤー」と略称する)の乱巻防止装置として幾つかの方式が提供されている。例えば、ワイヤーを巻き取りつつワイヤドラムの軸方向にシフトさせるワイヤーシフター方式(特許文献1、2等)、巻き取られるワイヤーが浮かないようにするワイヤー押えローラ方式(特許文献3、4等)、ワイヤーの弛みを検知してウインチのブレーキを作動させる方式(特許文献5等)、ワイヤーの引き出し時に常にテンションをかける方式(特許文献6等)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-192697号公報
【文献】特開平8-301580号公報
【文献】特開平10-120378号公報
【文献】実開昭55-109685号公報
【文献】実開平4-17444号公報
【文献】実開平4-53790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乱巻防止装置のほとんどは、モータによってワイヤーを巻き取る際にワイヤーが弛むなどして乱巻きとなることを防止するものである。
しかしながら、ワイヤーの乱巻きはワイヤーを引き出す際にも生じ得る。特に、モータを停止させるか又はモータとの動力伝達を遮断し、ウインチドラムが束縛されずに自由回転可能な状態で、ワイヤーを手動や別の機械/車両等で引き出す際に乱巻きが生じることが多い。
【0005】
通常、ウインチドラムに完全に巻かれたワイヤーを引き出し始めるときは抵抗が大きいため、大きな力が必要である。そのような大きな力によってウインチドラムが回転し始め、ワイヤーが引き出され始めると、次第に抵抗が小さくなり、ウインチドラムの回転が円滑となっていく。そして、ワイヤーを引き出す速さよりもウインチドラムの回転速度が大きくなるとワイヤーに弛みを生じ乱巻き状態となる。一旦乱巻きを生じると、ウインチドラムに複雑に巻き付いたワイヤーを取り外すことは手では難しく、モータを駆動してウインチドラムを回そうとしても既に回転不能となっていることもある。
従来の乱巻防止装置は、このような動力制御されていない自由回転可能な状態にあるウインチドラムの乱巻きを防止することはできない。
【0006】
本発明の目的は、自由回転可能な状態にあるウインチにおける乱巻きを防止する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本発明は、以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付している。
【0008】
[1]本発明の態様は、ワイヤー(W)が巻かれる円筒状のドラム本体(11)と前記ドラム本体(11)の両端に位置する円盤状のドラムディスク(12)とを具備するウインチドラム(10)に設けられ、自由回転可能な状態の前記ウインチドラム(10)から前記ワイヤー(W)を引き出す際の乱巻きを防止するための乱巻防止装置(2,2A,4,5,6)であって、
ウインチドラム(10)の回転を制止又は抑制するために前記ドラムディスク(12)の周面(12a)又は盤面(12b)に押し当て可能な接触部材(21,21A,41,51,61)を有することを特徴とする乱巻防止装置。
[2]上記[1]の態様において、前記接触部材(21)が、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に押し当て可能な円筒状の接触ローラ(21)であり、
前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に押し当てられた前記接触ローラ(21)は、前記ウインチドラム(10)の回転速度が所定の許容範囲内であるときは前記ドラムディスク(12)の回転に伴って回転し、前記ウインチドラム(10)の回転速度が過剰となったときはその回転が制止又は抑制されることを特徴とする。
[3]上記[1]の態様において、前記接触部材(21A)が、前記ドラムディスク(12)の盤面(12b)に押し当て可能な円錐台状の接触ローラ(21A)であり、
前記ドラムディスク(12)の盤面(12b)に押し当てられた前記接触ローラ(21A)は、前記ウインチドラム(10)の回転速度が所定の許容範囲内であるときは前記ドラムディスク(12)の回転に伴って回転し、前記ウインチドラム(10)の回転速度が過剰となったときはその回転が制止又は抑制されることを特徴とする。
[4]上記[2]又は[3]の態様において、前記接触ローラ(21,21A)の回転軸延長部(211)が、中空の静止円筒体(22)の中心軸上で回転可能に軸支されており、
前記静止円筒体(22)の中空内で前記回転軸延長部から放射方向に延在する少なくとも1つのコイルバネ(28)と、前記コイルバネ(28)の先端に取り付けられた接触板(29)とを有し、
前記ウインチドラム(10)の回転速度が許容範囲内であるとき、前記接触板(29)は前記静止円筒体(22)の内面から離間しており、
前記ウインチドラム(10)の回転速度が過剰となったとき、前記コイルバネ(28)が遠心力により伸長して前記接触板(29)が前記静止円筒体(22)の内面に接触することを特徴とする。
[5]上記[2]又は[3]の態様において、前記接触ローラ(21,21A)を前記ドラムディスク(12)に押し当てた使用状態と、前記接触ローラ(21,21A)を前記ドラムディスク(12)から離した不使用状態とを切り換え可能な起到機構(24)を有することを特徴とする。
[6]上記[1]の態様において、前記接触部材(21)が、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に沿って面状に押し当て可能な接触板(41)であり、
前記接触板(41)を、常時、前記ドラムディスク(12)に押し当てるために前記接触板(41)と連結された押圧本体(42e)を具備するバネカン(42)と、
前記バネカン(42)の立設部(42a)が固定され、かつ前記バネカン(42)の環状部(42h)を掛けるためのフック部(44)を形成されたバネカン座部(43)と、
前記バネカン座部(43)を支持する静止した支持枠(45)と、を有することを特徴とする。
[7]上記[1]の態様において、前記接触部材(51)が、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に沿って面状に押し当て可能な接触板(51)であり、
前記接触板(51)を、常時、前記ドラムディスク(12)の周面(12a)に押し当てるように前記接触板(51)を支持する支持枠を有し、
前記支持枠は、前記接触板(51)の前記ドラムディスク(12)に対する位置を調整する手段を具備することを特徴とする。
[8]上記[1]の態様において、前記接触部材(61)が、前記ドラムディスク(12)の両方の盤面に対してそれぞれ押し当て可能に配置された一対のブレーキパッド(61a,61b)であり、
前記ドラムディスク(12)の周縁を跨いで設置され、前記一対のブレーキパッド(61a,61b)を支持するキャリパー(62)と、
少なくとも一方の前記ブレーキパッド(61a,61b)を移動させるための油圧機構と、を有することを特徴とする。
[9]上記[8]の態様において、前記ドラムディスク(12)の回転速度を検知する速度センサ(66)と、
前記速度センサ(66)によって検知された回転速度に基づいて前記油圧機構を制御する制御部(67)と、をさらに有することを特徴とする。
[10]本発明の別の態様は、上記[2]、[3]、[6]、[7]、[8]又は[9]のいずれかに記載の乱巻防止装置を備えたウインチである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自由回転可能な状態にあるウインチにおける乱巻きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
【
図3】
図3(a)は
図1のウインチの概略平面図であり、(b)は(a)に示した乱巻防止装置の概略斜視図である。
【
図4】
図4は(a)は変形形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略平面図であり、(b)は(a)に示した乱巻防止装置の概略斜視図である。
【
図5】
図5(a)(b)は、ウインチドラムが許容範囲内で回転するときの乱巻防止装置の状態を示す概略断面図である。
【
図6】
図6(a)(b)は、ウインチドラムの過剰回転のときの乱巻防止装置の状態を示す概略断面図である。
【
図7】
図7(a)は乱巻防止装置の不使用時、(b)は使用時の起到機構の状態をそれぞれ示す、
図3(b)のIV-IVラインの概略断面図であり、(c)はロック手段と解除手段の動作を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、別の実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
【
図12】
図12は、
図9のVII-VIIラインの概略断面に相当し、(a)は、乱巻防止装置を使用するためにセットする操作方法を示し、(b)は、乱巻防止装置の使用状態を示している。
【
図13】
図13は、
図10のV矢視図の部分拡大図であり、接触板のドラムディスクに対する摩擦力を調整するための調整具を示す。
【
図14】
図14は、さらに別の実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
【
図17】
図17は、さらに別の実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態において同一又は類似の構成要素については、同一又は類似の符号を用いて示す。
【0012】
図1は、一実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
図2は、
図1の概略I矢視図である。
図3(a)は
図1のウインチの概略平面図であり、(b)は(a)に示した乱巻防止装置の概略斜視図である。
【0013】
例示するウインチ1は、ウインチドラム10と、ウインチドラム10を駆動するモータ13と、モータ13から伝達される動力による回転速度を調節可能な減速機15とを備えている。モータ13と減速機15は、適宜のフレーム16により支持されている。
【0014】
ウインチドラム10は、ワイヤーWが巻かれた円筒形のドラム本体11と、ドラム本体11の両端に位置する円盤状のドラムディスク12とを具備する。ウインチドラム10は、その全体が一体的に回転するように軸支されている。
【0015】
モータ13は油圧モータでも電動モータでもよい。モータ13のモータシャフト14は、ドラム本体11内を通過して減速機15と連結可能である。減速機15は、モータシャフト14から伝達された回転の速度を切り換えるために例えば複数の遊星ギアを内蔵する。
【0016】
減速機15は、調整した回転速度で動力を伝達してウインチドラム10を回転駆動することができる。一方、減速機15は、ウインチドラム10をモータ動力から切り離す機構、例えばクラッチ機構を有する。ウインチドラム10がモータ動力から切り離されると、ウインチドラム10は自由回転可能となる。
【0017】
例えば、ドラム本体11にワイヤーWが完全に巻かれた状態から、手動又は機械/車両等によってワイヤーWを引き出すときには、ウインチドラム10を自由回転可能な状態にして行う。このとき、最初は静止しているウインチドラム10が重いため、大きな力をかけてワイヤーWを引き出す必要がある。回転し始めたウインチドラム10は次第に回転し易くなり、力が大きすぎると回転速度が過剰になってワイヤーWに弛みを生じる。この弛みが大きくなると、ドラム本体11に巻かれているワイヤーWも緩んでランダムに交差して乱巻きが発生する。乱巻き状態となったワイヤーWを手で解すことは非常に難しく、モータを稼動させてもウインチドラム10が回転不能となることもある。
【0018】
本発明は、ウインチドラム10の自由回転時の乱巻き防止のために、乱巻防止装置を提供する。本発明の乱巻防止装置は、自由回転状態にあるウインチドラム10の回転を制止又は抑制する機能を有する。「制止」とは回転を完全に停止させることであり、「抑制」とは回転速度を低下させることである。
このために、本発明の乱巻防止装置は、ドラムディスク12の周面12a又は盤面12bに押し当て可能な接触部材を備えている。周面12aは、円盤状のドラムディスク12における所定の幅をもつ環状外周面である。盤面12bは、円盤状のドラムディスク12おける2つの円形端面のうち少なくとも一方である。もっとも、接触部材とワイヤーWとの干渉を避ける観点から、接触部材を押し当てる盤面12bは、ワイヤーWの存在しない外側の面とすることが好ましい。
【0019】
図1の乱巻防止装置2は、本発明による乱巻防止装置の一実施形態である。乱巻防止装置2における接触部材は、ドラムディスク12の周面12aに押し当て可能な円筒状の接触ローラ21である。接触ローラ21は回転可能に支持され、その回転軸はドラムディスク12の回転軸と平行である。
【0020】
接触ローラ21は、その使用時にはドラムディスク12の周面12aに所定の力で押し当てられる。ウインチドラム10の自由回転時にその回転速度が所定の許容範囲内であるときは、接触ローラ21はドラムディスク12の回転に伴って回転する。このとき接触ローラ21は、ドラムディスク12に対して滑らずに回転するので摩擦は発生しない。
【0021】
ウインチドラム10の回転速度が所定の許容範囲を超えて過剰となったとき、接触ローラ21はドラムディスク12の回転に追随せずに滑りを生じ、ドラムディスク12に対して摩擦力を及ぼす。それによって、少なくともドラムディスク12の回転速度が低下し、場合によってはドラムディスク12の回転が停止する。この機構の具体例については、
図5及び
図6を参照して後述する。
【0022】
図3(b)に示すように、乱巻防止装置2は、ドラムディスク12に押し当てられる接触ローラ21を有し、その回転軸延長部211は、中空の静止円筒体22の中心軸上に延在し、回転可能に軸支されている。静止円筒体22は、その外周面の下端位置で起到シャフト23により支持されている。起到シャフト23は、起到機構24の中心軸上に位置し上方に延在している。起到機構24は、図示の例では、平たい円筒状筐体を有する。
【0023】
起到シャフト23は、起到機構24の中心軸の周りで所定の角度で旋回可能である。起到機構24には、ロック操作部24a及び解除操作部24bが備わっている。起到機構24により、接触ローラ21をドラムディスク12に押し当てた使用状態(
図3(a)の実線参照)と、接触ローラ21をドラムディスク12から離した不使用状態(
図3(a)の点線参照)との間で切り換え可能である。起到機構24の具体例については、
図7を参照して後述する。起到機構24は、適宜の支持台25上で支持されている。支持台25は、ウインチ1のフレーム16に固定されている。
【0024】
図4(a)は変形形態の乱巻防止装置2Aを備えたウインチ1の概略平面図であり、(b)は(a)に示した乱巻防止装置2Aの概略斜視図である。乱巻防止装置2Aにおける接触部材は、ドラムディスク12の盤面12bに押し当て可能な円錐台状の接触ローラ21Aである。接触ローラ21Aは回転可能であり、その回転軸はドラムディスク12の回転軸に対して所定の角度で傾斜している。その角度は、円錐台状の接触ローラ21Aの回転軸と母線とのなす角度で決まる。
【0025】
接触ローラ21Aは、その使用時にはドラムディスク12の盤面12bに所定の力で押し当てられる。ウインチドラム10の自由回転時にその回転速度が所定の許容範囲内であるときは、接触ローラ21Aはドラムディスク12の回転に伴って回転する。このとき接触ローラ21Aはドラムディスク12に対して滑らず、摩擦は発生しない。
【0026】
ウインチドラム10の回転速度が所定の許容範囲を超えて過剰となったとき、接触ローラ21Aはドラムディスク12の回転に追随せずに滑りを生じ、ドラムディスク12に対して摩擦力を及ぼす。それによって、少なくともドラムディスク12の回転速度が低下し、場合によってはドラムディスク12の回転が停止する。
【0027】
図4(b)に示すように、乱巻防止装置2Aは、ドラムディスク12に押し当てられる接触ローラ21Aを有し、その回転軸延長部211は、中空の静止円筒体22の中心軸上に延在し、回転可能に軸支されている。静止円筒体22、これを支持する起到機構24及び支持台25については、
図3(b)と同様であるので説明を省略する。起到機構24により、接触ローラ21をドラムディスク12に押し当てた使用状態(
図4(a)の実線参照)と、接触ローラ21をドラムディスク12から離した不使用状態(
図4(a)の点線参照)との間で切り換え可能である。起到機構24の具体例については、
図7を参照して後述する。
【0028】
図5(a)は
図3(a)のII-IIラインの概略断面図であり、(b)は
図5(a)のIII-IIIラインの概略断面図であり、ウインチドラム10が許容範囲内の回転速度で回転するときの乱巻防止装置2の状態を示している。
図6(a)(b)はそれぞれ、
図5(a)(b)と同様の概略断面図であり、ウインチドラムの過剰回転のときの乱巻防止装置2の状態を示している。
【0029】
図5(a)(b)に示すように、接触ローラ21の回転軸延長部211が、中空の静止円筒体22の中心軸上で回転可能に軸支されている。このために、静止円筒体22の両側端面にはベアリング27が設けられている。静止円筒体22は、
図3(b)に示すように起到シャフト23によって支持されているので、接触ローラ21の回転軸の周りで回転しない。
【0030】
静止円筒体22の中空内では、回転軸延長部211に少なくとも1つのコイルバネ28の一端が取り付けられ、コイルバネ28は放射方向に延在している。図示の例では、2つのコイルバネ28が回転軸延長部211から互いに反対向きに延在している。そして、コイルバネ28の他端には、接触板29が取り付けられている。接触板29の大きさ及び形状は限定しないが、静止円筒体22の内面に沿う湾曲面を有することが好ましい。さらに、その湾曲面上に摩擦材30を有することが好ましい。摩擦材30は、例えば、表面に凹凸のあるシート、ゴム等の滑り難い材料で形成されたシート、あるいは、ディスクブレーキパッドやドラムブレーキライニングと同様の素材である。摩擦材30に替えて又はそれに加えて、静止円筒体22の内面上に摩擦材を設けてもよい。
【0031】
図5(a)に示すように、接触ローラ21は、使用状態ではドラムディスク12に接触している。ウインチドラム10が許容範囲内の回転速度で回転するとき、接触ローラ21は、ドラムディスク12に追随して滑らずに回転する(黒矢印参照)。接触ローラ21は、ドラムディスク12に対して滑り難くなるようにその周面上に摩擦材26を有することが好ましい。摩擦材26も、上記の摩擦材30と同様の材料で形成される。
【0032】
図5(a)(b)に示すように、ウインチドラム10の回転速度が許容範囲内であるとき、コイルバネ28に取り付けられた接触板29は静止円筒体22の内面から離間している。コイルバネ28は、回転軸延長部211と共に回転することで遠心力がかかるため、静止しているときよりも伸長するが、接触板29と静止円筒体22の内面とは接触しない。遠心力は回転速度の二乗に比例するので、回転速度が増すとコイルバネ28は長くなる。
【0033】
図6(a)(b)に示すように、ウインチドラム10の回転速度が過剰となったとき、コイルバネ28は遠心力により伸長して接触板29が静止円筒体22の内面に接触する。これを実現するように、回転速度の上限、遠心力、バネ定数及びバネの長さ等を設定する。接触板29が静止円筒体22の内面に接触することで摩擦力を生じて、回転軸延長部211の回転速度が減速し、場合によっては停止する。その結果、接触ローラ21を介してドラムディスク12に制動力が作用し、ドラムディスク12の回転速度が少なくとも低下する。これにより、引き出し中のワイヤーWの弛みを防止してテンションを維持し、ドラム本体11に巻かれたワイヤーWの乱巻き発生を防止することができる。
【0034】
ドラムディスク12の回転速度が低下すると、コイルバネ28にかかる遠心力も小さくなってコイルバネ28は短くなり、接触板29は再び静止円筒体22の内面から離間する。そのときには、ドラムディスク12は既に減速しているので問題の無い状態となっている。その後、再びワイヤーWの引き出しを開始できる。このように、本発明の乱巻防止装置は、電気や油圧等の動力無しで作動することができる。また、既存のウインチに追加設置することも可能である。
【0035】
以上、
図5及び
図6を参照して、接触ローラ21を有する乱巻防止装置2の動作を説明したが、この動作は、
図4に示した接触ローラ21Aを有する乱巻防止装置2Aについても同様である。
【0036】
図7(a)は乱巻防止装置の不使用時、(b)は使用時の起到機構24の状態をそれぞれ示す、
図3(b)のIV-IVラインの概略断面図であり、(c1)~(C4)はロック手段と解除手段の動作を概略的に示す図である。
【0037】
起到機構24は、
図3(b)に示す接触ローラ21又は
図4(b)に示す接触ローラ21Aをドラムディスク12に押し当てるように付勢可能なバネ24cを有する。バネ24cは、図示の例では捻りバネである。バネ24cは起到シャフト23と同心状にその周囲に配置されている。バネ24cの一端24c1は、筐体24gと一体に形成された適宜の壁24dによって支持されている。
【0038】
バネ24cの他端24c2は、ロック操作部24aの一部である連結棹24a1の一端と接続されている。連結棹24a1は、円筒状の筐体24gの側面に形成された開口部24hを通って外部にあるロック操作部24aの本体に繋がっている。起到シャフト23は、連結棹24a1と一体に回動可能である。起到シャフト23は、
図3(b)及び
図4(b)に示すように静止円筒体22と一体である。
【0039】
図7(a)の不使用時の状態(接触ローラ21、21Aの起立状態)では、ロック操作部24aは、バネ24cの弾性力に抗して時計回りに回動させられている。この回動操作は、ロック操作部24aを指で持って行うことができる。ロック操作部24aは、ロック手段(コイルバネ24eと係止部材24f)によってこの回動した位置に保持されている。
【0040】
ロック手段24e、24fは、解除操作部24bによって解除することができる。解除されると、ロック操作部24aは、バネ24cの弾性復元力によって反時計回りに回動し、
図7(b)に示す使用時の状態(接触ローラ21、21Aの倒伏状態)となる。
図7(b)の状態で、乱巻防止装置の接触ローラがドラムディスクに押し当てられる。
【0041】
図7(c1)~(c4)を参照して、ロック操作部24aのロックと解除の動作を説明する。ロック手段は、係止部材24fと、筐体24gの天井と係止部材24fとの間に配置されたコイルバネ24eとを有する。係止部材24eは、例えば略三角柱であり、鉛直面と傾斜面とをもつように配置されている。解除操作部24bは、例えばU字状部材であり、筐体24gの外部に持ち手部分が露出し、下端は筐体24gの内部で係止部材24fと連結されている。
【0042】
図7(c1)(c2)は、ロック操作部の連結棹24a1を使用時の位置から不使用時の位置へ回動させるときの動作である。
図7(c1)で、連結棹24a1が係止部材24fの傾斜面に当って押すことによって、
図7(c2)のように、係止部材24fが押し上げられコイルバネ24eは圧縮される。それによって、連結棹24a1は、係止部材24fの下を通過できる。連結棹24a1が通過すると、コイルバネ24eの復元力によって係止部材24fは元の位置に降下する。
【0043】
図7(c3)は、不使用時の状態である。連結棹24a1は、係止部材24fの鉛直面に当接して回動できず、この位置に保持される。解除するときは、
図7(c4)に示すように解除操作部24bを指で持ち上げて係止部材24fを上昇させることで、連結棹24a1は使用時の位置へ戻ることができる。
図7に示した起到機構は一例であり、他にも多様な構成が考えられる。
【0044】
図8は、別の実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
図9は、
図8のウインチの概略平面図である。
図10は、
図9の概略V矢視図である。
図11は、
図9の概略VI矢視図である。
図12は、
図9のVII-VIIラインの概略断面に相当し、(a)は、乱巻防止装置を使用するためにセットする操作方法を示し、(b)は、乱巻防止装置の使用状態を示している。
【0045】
図8のウインチ1は、乱巻防止装置4を除いて
図1に示したウインチ1と実質的に同じ構成である。
【0046】
乱巻防止装置4は、ドラムディスク12に対する接触部材として、接触板41を備えている。接触板41は、ドラムディスク12の周面に沿って面状に押し当て可能である。接触板41におけるドラムディスク12に対向する面は、ドラムディスク12の周面に沿うように湾曲している。好ましくは、接触板41の表面に摩擦材46が設けられる。
【0047】
ウインチドラムの自由回転時に、常時、接触板41をドラムディスク12に押し当てるために、ウインチ軸方向において接触板41の隣にバネカン(「エビカン」とも称される)42が設けられている。バネカン自体は、公知の金具である。接触板41は、接触板連結部48に固定されている。接触板連結部48は、溶接等によってバネカン42の押圧本体42eと一体に連結されている。
【0048】
図12(a)に示すように、バネカン42は、板状のバネカン座部43に固定された立設部42aを有する。バネカン座部43は、固定具49により支持枠45に固定され、支持枠45はウインチ1のフレーム16に固定されている。バネカン座部43の上端近傍には、フック部44が形成されている。
【0049】
バネカン42のレバー本体42bは、2箇所に貫通孔42cと42dを有する。一方の貫通孔42cは、立設部42aの貫通孔とピンにより回動可能に連結され、他方の貫通孔42dは、押圧本体42eの貫通孔とピンにより回動可能により連結されている。押圧本体42eは、その長手方向に沿って移動可能に係合ロッド42fを支持している。押圧本体42e内の係合ロッド42fの周囲にはコイルバネ42gが設置されている。押圧本体42eの上端から上方に延在する係合ロッド42fの先端には環状部42hが形成されている。
【0050】
図12(a)は、接触板41をドラムディスク12にセットする前の状態である。バネカン42のレバー本体42b及び押圧本体42eは自由であり、コイルバネ42gは伸張状態である。接触板41をセットする場合、係合ロッド42fの環状部42hを、フック部44に掛ける(黒矢印参照)。次に
図12(b)に示すように、レバー本体42bを下方に回動させる(黒矢印参照)。これにより、係合ロッド42fはフック44と係合した状態で押圧本体42eからさらに引き出され、コイルバネ42gは圧縮状態となる。これによって、接触板41は、常時、ドラムディスク12の周面に押し当てられた状態に保持される。
【0051】
接触板41がドラムディスク12に対して常に適度な摩擦力を及ぼすことによって、ウインチの回転速度が過剰となることを防止でき、ワイヤーの乱巻きを防止できる。
【0052】
図13は、
図10のV矢視図の部分拡大図であり、接触板41のドラムディスク12に対する摩擦力を調整するための調整具47を示している。接触板41におけるドラムディスク12に対向する面とは反対側の面から、一対の調整螺子47aが突出している。一対の調整螺子47aは、いわばボール螺子であり、板状の接触板連結部48を貫通している。接触板連結部48と接触板41との間の距離dを適度に設定した上で、接触板連結部48を調整ナット47bで固定する。これによって、接触板41による摩擦力を調整できる。
【0053】
図14は、さらに別の実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
図15は、
図14の概略VII矢視図である。
図16は、乱巻防止装置の展開図である。
【0054】
図14のウインチ1は、乱巻防止装置5を除いて
図1に示したウインチ1と実質的に同じ構成である。
【0055】
乱巻防止装置5は、ウインチドラムの自由回転時に、常時、ドラムディスク12の周面12aに押し当てられる接触板51を有する。乱巻防止装置5は、接触板51を常時ドラムディスク12の周面12aに押し当てるために、接触板51を位置決めして支持する支持部材を有する。
【0056】
図15及び
図16を参照して接触板51の支持部材を説明する。支持部材は、長尺の棹状の摩擦力調整レバー52と、摩擦力調整レバー52の基端部52bをフレーム16上に回動可能に取り付けるための軸支部材56と、摩擦力調整レバー52を挟んで両側にそれぞれ配置された一対の調整板53とを有する。
【0057】
摩擦力調整レバー52は、例えば平板の棹状である。摩擦力調整レバーにおけるドラムディスク12に対向する側に接触板51が取り付けられている。接触板51はドラムディスク12の周面12aに沿うように湾曲面を有する。
【0058】
基端部52aを中心に回動可能な摩擦力調整レバー52の位置を変えることで、接触板51のドラムディスク12に対する位置を変えることができる。それによって接触板15がドラムディスク12に及ぼす摩擦力を調整できる。そのために、摩擦力調整レバー52の上端近傍に位置決め孔52aが穿設されている。さらに、摩擦力調整レバー52の両側に配置された調整板53は、摩擦力調整レバー52の基端部52bを中心とする円周に沿って延在し、例えば
図15に示すように脚部材54を介してフレーム16上に固定されている。調整板53には、延在方向に複数の調整孔53aが穿設されている。
【0059】
接触板51による所望する摩擦力を得るために、複数の調整孔53aの1つを選択し、選択された調整孔53aと摩擦力調整レバー52の位置決め孔52aとを適宜の固定具55を用いて固定する。これにより、ワイヤーWの引き出し時にウインチドラムの回転速度が過剰になることを防止できる。なお、接触板51による摩擦力は、ワイヤーWの引き出し作業に支障がない程度とする。
【0060】
図17は、さらに別の実施形態の乱巻防止装置を備えたウインチの概略正面図である。
図17のウインチ1は、乱巻防止装置6を除いて
図1に示したウインチ1と実質的に同じ構成である。
【0061】
乱巻防止装置6は、自動車等のディスクブレーキ構造と類似した構成を有する。乱巻防止装置6は、ドラムディスク12の両方の盤面12b1、12b2に対してそれぞれ押し当て可能なブレーキパッド61a、61b(これらをまとめて符号61で示す)を具備する。一対のブレーキパッド61a、61bは、ドラムディスク12を挟んで対向配置されている。乱巻防止装置6はさらに、ドラムディスク12の周縁を跨いで設置されるキャリパー62を具備する。ワイヤーW側の一方の盤面12b1に押し当て可能なブレーキパッド61aは、キャリパー62の一方のアームに固定されている。
【0062】
キャリパー62の他方のアーム内には、油圧機構(図示せず)から油圧ポート65を通して油圧がかかる油室64と、油室64内の油圧によって移動するピストン63とが設けられている。盤面12b2に押し当て可能なブレーキパッド61bは、ピストン63の前面に固定されている。
【0063】
乱巻防止装置6はさらに、ドラムディスク12の回転速度を検知する速度センサ66と、速度センサ66の検知信号を受信し、検知された回転速度に基づいて油圧機構(図示せず)を制御する制御部67とを具備する。
【0064】
乱巻防止装置6の動作を説明する。ウインチドラム10の自由回転時、速度センサ66により検知された回転速度が所定の許容範囲内であるときは、制御部67はピストン63を油圧駆動せず、ピストン63は後退しており、ブレーキパッド61a、61bはドラムディスク12から離れている。ウインチドラム10の回転速度が所定の許容範囲を超えたことが検知されると、制御部67は油室64に油圧をかけてピストン63を押し出す。これによってブレーキパッド61a、61bはドラムディスク12の盤面に押し当てられ、ブレーキがかかる。この結果、乱巻きの発生を防止できる。
【0065】
図示の例では、乱巻防止装置6のキャリパー62は、片側のみにピストン63と油室64を有する浮遊型であるが、両側にピストンと油室を有する対向型のキャリパーとしてもよい。ただし、キャリパーの一部がワイヤーW側に大きく突出しないという点では、浮遊型が好ましい。
【0066】
図18は、
図17の実施形態の変形形態を示す部分正面図である。この形態では、ドラムディスク12の直径が一定ではなく、ワイヤーW側に小径部121を、反対側に大径部122を有する。この構成では、ドラムディスク12の周縁近傍には段差が形成される。乱巻防止装置6は、この段差内にキャリパー62の一方のアームが収まるように設置される。この結果、キャリパー62がドラムディスク12におけるワイヤーW側の盤面12bから突出しないので、乱巻き防止装置6とワイヤー6が干渉するおそれがない。
【0067】
図17及び
図18に示した実施形態のさらなる変形形態として、速度センサ66の検知に基づく制御を省いた簡易形態でもよい。その場合、ウインチドラム10の自由回転時に、ブレーキパッド61a、61bがドラムディスク12に対して、常時、適度な摩擦力を及ぼすように、油圧を適切な一定の大きさに設定する。
【0068】
以上に図示し説明した各実施形態は一例であって、本発明はこれらに限定されるものではなく、多様な変形形態が可能である。また、各実施形態について説明した構成を、適用可能な他の実施形態に適用した形態も本発明に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0069】
1 ウインチ
10 ウインチドラム
11 ドラム本体
12 ドラムディスク
12a ドラムディスク周面
12b ドラムディスク盤面
13 モータ
14 モータシャフト
15 減速機
16 フレーム
2、2A、乱巻防止装置
21 接触ローラ
22 静止円筒体
23 起到シャフト
24 起到機構
24a ロック操作部
24b 解除操作部
24c 捻りバネ
24d 固定壁
24e コイルバネ
24f 係止部材
24g 筐体
24h 開口部
25 支持台
26 摩擦材
27 ベアリング
28 コイルバネ
29 接触板
30 摩擦材
4 乱巻防止装置
41 接触板
42 バネカン
42a 立設部
42b レバー本体
42c、42d 連結棒(貫通孔)
42e 押圧本体
42f 係合ロッド
42g コイルバネ
42h 環状部
43 バネカン座部
44 フック部
45 支持枠
46 摩擦材
47 調整具
47a 調整螺子
47b 調整ナット
48 接触板連結部
49 固定具
5 乱巻防止装置
51 接触板
52 摩擦力調整レバー
53 調整板
54 脚部材
55 固定具
56 軸支部材
6 乱巻防止装置
61、61a、61b ブレーキパッド
62 キャリパー
63 ピストン
64 油室
65 油圧ポート
66 速度センサ
67 ブレーキ制御部
121 ドラムディスク大径部
122 ドラムディスク小径部
W ワイヤーロープ
【要約】
【課題】自由回転可能な状態にあるウインチにおける乱巻きを防止する装置を提供する。
【解決手段】ワイヤー(W)が巻かれる円筒状のドラム本体(11)と前記ドラム本体(11)の両端に位置する円盤状のドラムディスク(12)とを具備するウインチドラム(10)に設けられ、自由回転可能な状態の前記ウインチドラム(10)から前記ワイヤー(W)を引き出す際の乱巻きを防止するための乱巻防止装置(2,2A,4,5,6)であって、
ウインチドラム(10)の回転を制止又は抑制するために前記ドラムディスク(12)の周面(12a)又は盤面(12b)に押し当て可能な接触部材(21,21A,41,51,61)を有する。
【選択図】
図1