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特許7506449グラウトの圧縮強度確認方法およびグラウンドアンカーの施工方法
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  • 特許-グラウトの圧縮強度確認方法およびグラウンドアンカーの施工方法 図1
  • 特許-グラウトの圧縮強度確認方法およびグラウンドアンカーの施工方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】グラウトの圧縮強度確認方法およびグラウンドアンカーの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20240619BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
G01N1/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024064786
(22)【出願日】2024-04-12
【審査請求日】2024-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170772
【氏名又は名称】黒沢建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 亮平
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-240487(JP,A)
【文献】特開2004-270228(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111157343(CN,A)
【文献】米国特許第5069417(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22 - 5/80
E02D 27/00
E21D 20/00 - 20/02
E21D 21/00 - 21/02
G01N 1/00 - 1/44
G01N 3/00 - 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウンドアンカーの施工に用いられる所定のグラウトに関して、加圧注入後の圧縮強度を確認するためのグラウトの圧縮強度確認方法であって、
地上において、
グラウトパッカーに前記グラウトを充填する充填ステップと、
前記充填ステップによって前記グラウトパッカーに充填された前記グラウトを所定圧力まで加圧する加圧ステップと、
前記加圧ステップによって前記所定圧力に加圧された前記グラウトを、モールド缶に充填した状態で採取する採取ステップと、
前記モールド缶から取り出された前記グラウトに対して、前記加圧ステップが完了したときから所定時間が経過したときに圧縮強度試験を行う圧縮強度確認ステップと、
を順に行うことを特徴とするグラウトの圧縮強度確認方法。
【請求項2】
地上に設置された吊り台に前記グラウトパッカーを吊り下げる吊り下げステップを更に備え、
前記吊り下げステップの後、前記吊り台に前記グラウトパッカーを吊り下げた状態で前記充填ステップと前記加圧ステップとを行うことを特徴とする請求項1に記載のグラウトの圧縮強度確認方法。
【請求項3】
前記充填ステップによって前記モールド缶に前記グラウトが充填されるように、前記充填ステップの開始前に前記グラウトパッカー内に前記モールド缶を取り付けておく採取準備ステップを更に備え、
前記採取ステップは、前記加圧ステップの完了後に、前記グラウトが充填された前記モールド缶を回収するモールド缶回収ステップである、
ことを特徴とする請求項1に記載のグラウトの圧縮強度確認方法。
【請求項4】
前記採取準備ステップでは、前記モールド缶が固定された固定用具を、前記グラウトパッカー内に差し込んで取り付ける、
ことを特徴とする請求項3に記載のグラウトの圧縮強度確認方法。
【請求項5】
前記モールド缶の側面に、余剰の水分を脱水させるための複数の孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のグラウトの圧縮強度確認方法。
【請求項6】
前記採取ステップは、前記加圧ステップの完了後に、前記グラウトパッカーから前記モールド缶に前記グラウトを詰め替える詰め替えステップである、
ことを特徴とする請求項1に記載のグラウトの圧縮強度確認方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のグラウトの圧縮強度確認方法によって、所定圧力への加圧注入が完了してから所定時間が経過したときにおけるグラウトの圧縮強度を確認し、
確認された前記グラウトの圧縮強度が所定の目標強度以上である場合にグラウンドアンカーの緊張定着を行う
ことを特徴とするグラウンドアンカーの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドアンカーの施工に用いられるグラウトに関して、加圧注入後の圧縮強度を確認するための方法と、この確認結果に基づいてグラウンドアンカーを施工する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、斜面、地上構造物、及び、山留め壁等を安定させるための土木工事において、グラウンドアンカー工法が採用されることがある。グラウンドアンカー工法では、セメントミルクやモルタルなどを材料としたグラウトによって安定地盤内に造成されるアンカー体と、地上のアンカー頭部とが、引張部を介して連結される。通常、引張部は、例えば、PC鋼棒、PC鋼より線、連続繊維補強材などからなる引張力伝達部材と、防食のために前記引張力伝達部材を覆うシースとを備える。
【0003】
グラウンドアンカーの施工においては、筒状のケーシングを用いて地盤の削孔が行われ、この孔に、テンドンの挿入、及び、グラウトの注入が行われる(特許文献1参照)。注入されたグラウトが硬化して目標の圧縮強度が発現した後、緊張定着、及び、アンカー頭部の処理が行われて施工が完了する。
【0004】
一般的に、グラウト注入が完了してから目標の圧縮強度(アンカーに緊張力を与える時点で必要な圧縮強度)(例えば、24N/mm)が発現するまでの養生期間として、グラウトとして早強セメントが用いられる場合は72時間以上を要し、普通セメントが用いられる場合は約一週間を要する。
【0005】
原則として、グラウトの注入では、テンドンの挿入の前または後に孔内の水をグラウトに置き換えるように徐々にグラウトが充填される置換注入と、充填完了後に、脱水促進のためにグラウトが加圧されながら更に注入される加圧注入とが順に行われる。
【0006】
加圧注入としては、例えば、パッカー加圧またはケーシング加圧が行われる。パッカー加圧には、グラウトの充填ロスを低減するためにアンカー体部または、引張部または、その両方の外側に装着されるグラウトパッカーが利用され、ケーシング加圧には、上記のケーシングが利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-034412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パッカー加圧によって加圧注入が行われる場合、及び、ケーシング加圧であっても地盤の地質が砂質土である場合には、上述した一般的な養生期間よりも早期に目標の圧縮強度が発現することが知られている。
【0009】
しかしながら、そのことを具体的に証明する方法は確立されていない。そのため、パッカー加圧が行われる場合や、砂質土の地盤でケーシング加圧が行われる場合などに、実際には早期に目標の圧縮強度が発現すると考えられるにもかかわらず、養生期間を短縮できず、災害現場などでの工期短縮の要求に十分に応えられない課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、グラウンドアンカー施工における加圧注入後のグラウトの養生期間の短縮を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、グラウンドアンカーの施工に用いられる所定のグラウトに関して、加圧注入後の圧縮強度を確認するためのグラウトの圧縮強度確認方法であって、地上において、グラウトパッカーに前記グラウトを充填する充填ステップと、前記充填ステップによって前記グラウトパッカーに充填された前記グラウトを所定圧力まで加圧する加圧ステップと、前記加圧ステップによって前記所定圧力に加圧された前記グラウトを、モールド缶に充填した状態で採取する採取ステップと、前記モールド缶から取り出された前記グラウトに対して、前記加圧ステップが完了したときから所定時間が経過したときに圧縮強度試験を行う圧縮強度確認ステップと、を順に行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の別の態様は、上記のグラウトの圧縮強度確認方法による確認結果を利用するグラウンドアンカーの施工方法であって、上記のグラウトの圧縮強度確認方法によって、所定圧力への加圧注入が完了してから所定時間が経過したときにおけるグラウトの圧縮強度を確認し、確認された前記グラウトの圧縮強度が所定の目標強度以上である場合、前記グラウトを地盤内に注入し、前記地盤内に注入された前記グラウトに対して、前記所定圧力以上の圧力で加圧注入を行い、前記加圧注入が完了してから前記所定時間が経過するまで、前記グラウトを養生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グラウンドアンカーの施工前に、所定圧力への加圧注入が完了してから所定時間が経過したときにおけるグラウトの圧縮強度が目標強度に達するか否かを確認することができる。そのため、この確認の結果を利用してグラウンドアンカーを施工することで、加圧注入後のグラウトの養生期間が従来よりも大幅に短縮可能になる。この結果、グラウンドアンカーの工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法において、グラウトパッカー内にモールド缶を取り付ける手順を示す図である。
図2】同方法において、固定用具にモールド缶を固定する手順を示す図である。
図3】同方法に用いられるモールド缶を拡大して示す斜視図である。
図4】同方法において、吊り台にグラウトパッカーを吊り下げる手順を示す図である。
図5】同方法において、グラウトパッカーにグラウトを注入する手順を示す図である。
図6】同方法において、グラウトパッカーに充填されたグラウトを加圧する手順を示す図である。
図7】同方法において、グラウトが充填されたモールド缶を回収する手順を示す図である。
図8】同方法において、モールド缶に採取されたグラウトの圧縮強度を確認する手順を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法において、グラウトパッカーにグラウトを注入する手順を示す図である。
図10】同方法において、グラウトパッカーからモールド缶にグラウトを詰め替える手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態が説明される。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
[グラウトの圧縮強度確認方法]
以下、第1及び第2実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法が説明される。グラウトの圧縮強度確認方法は、グラウンドアンカーの施工への使用が予定されている所定のグラウトに関して、加圧注入後の圧縮強度(具体的には、所定圧力への加圧注入が完了してから所定時間が経過したときにおける圧縮強度)を確認するために行われる。
【0017】
いずれの実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法においても、グラウンドアンカーが施工される地盤の中ではなく、地上において全ての工程が実行される。以下、グラウトの圧縮強度確認方法の流れが、実施形態ごとに具体的に説明される。
【0018】
[第1実施形態]
図1図8を参照しながら、第1実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法が説明される。
【0019】
第1実施形態では、図1図3に示す採取準備ステップ、図4に示す吊り下げステップ、図5に示す充填ステップ、図6に示す加圧ステップ、図7に示す採取ステップ(モールド缶回収ステップ)、図8に示す圧縮強度確認ステップがこの順で行われる。以下、第1実施形態におけるグラウトの圧縮強度確認方法の流れが具体的に説明される。
【0020】
[採取準備ステップ]
まず、図1に示すように、採取準備ステップにおいて、グラウトパッカー1内に複数のモールド缶20が取り付けられる。採取準備ステップは、後続の充填ステップ(図5参照)によってモールド缶20にグラウト40が充填されるように、充填ステップの開始前に行われる。
【0021】
具体的に、採取準備ステップでは、まず、図2に示すように、複数のモールド缶20が固定用具10に固定される。固定用具10としては、例えばロープが用いられる。固定用具10の長さは、グラウトパッカー1の全長よりも長い。
【0022】
複数のモールド缶20は、固定用具10の長さ方向において互いに間隔を空けて並ぶように固定用具10に固定される。このとき、それぞれのモールド缶20は、固定用具10と平行に配置される。複数のモールド缶20は、固定用具10の一端から中間部に亘る部分に固定され、固定用具10の他端部は、モールド缶20が取り付けられない余白部とされる。固定用具10に対するモールド缶20の固定は、例えば、粘着テープ(例えば、ビニルテープ)12を固定用具10の側面(外周面)とモールド缶20の側面(外周面)とに跨って巻き付けることで行われる。
【0023】
図3に示すように、モールド缶20は、セメント系材料の圧縮強度試験の供試体の作成に使用される型枠である。モールド缶20は、所定寸法(例えば、直径50mm、高さ100mm)の円柱状の供試体を作成可能な円筒状の部材である。モールド缶20の一方の端部は開放端面20aであり、他方の端部は閉塞端面20bである。モールド缶20の素材は限定されるものでないが、例えばブリキ製であってもよい。
【0024】
本実施形態において、モールド缶20の側面(外周面)20cには、使用前に予め複数の孔22が形成される。複数の孔22は、開放端面20aからモールド缶20にグラウト40が充填されるときに余剰の水分を脱水するように形成される。複数の孔22は、例えば、モールド缶20の側面20cの略全面に亘って互いに間隔を空けて設けられる。孔22の直径は、例えば5mmである。
【0025】
図1に戻って、複数のモールド缶20が固定された固定用具10は、グラウトパッカー1内に差し込まれて取り付けられる。具体的には、固定用具10に固定された全てのモールド缶20がグラウトパッカー1内に収容されるように、固定用具10の大部分がグラウトパッカー1内に差し込まれる。固定用具10の残りの部分は、グラウトパッカー1の外側に露出する。グラウトパッカー1内には、グラウト注入ホース2の一端部も差し込まれる。
【0026】
複数のモールド缶20が固定された固定用具10とグラウト注入ホース2とがグラウトパッカー1内に差し込まれると、グラウトパッカー1の開放端部1aに巻き付けられる締め付け部材(例えば、ビニルテープ及び結束バンド)14(図4参照)によって、グラウトパッカー1に固定用具10とグラウト注入ホース2とが固定される。
【0027】
[吊り下げステップ]
続く吊り下げステップでは、図4に示すように、地上に設置された吊り台30にグラウトパッカー1が吊り下げられる。なお、図4には、1つの吊り台30に1つのグラウトパッカー1が吊り下げられた例が図示されているが、1つの吊り台30に同時に複数のグラウトパッカー1が吊り下げられてもよい。
【0028】
吊り台30の構成は限定されるものでないが、例えば、複数(例えば3本)の単管パイプ32を用いて吊り台30が組み立てられてもよい。具体的には、複数の単管パイプ32のそれぞれの下端部が斜めに地面に差し込まれて固定され、これらの単管パイプ32の上端部が、例えば連結金具によって互いに連結される。これらの単管パイプ32の連結部に、グラウトパッカー1を吊り下げ支持するための支持部34が設けられる。
【0029】
吊り台30の支持部34には、グラウトパッカー1から露出した固定用具10の端部が、例えば連結金具を用いて固定される。これにより、グラウトパッカー1は、固定用具10を介して吊り台30に吊り下げ支持される。この吊り下げ状態において、グラウトパッカー1内のそれぞれのモールド缶20は、開放端面20a(図3参照)が上方を向き且つ閉塞端面20b(図3参照)が下方を向く姿勢で配置されている。
【0030】
吊り下げステップの完了後、吊り台30にグラウトパッカー1が吊り下げられた状態で、後続の充填ステップ(図5参照)および加圧ステップ(図6参照)が行われる。
【0031】
[充填ステップ]
図5に示すように、充填ステップでは、グラウンドアンカーの施工での使用が予定されている所定のグラウト40が、グラウト注入ホース2からグラウトパッカー1に充填される。充填ステップにおけるグラウト40の注入は、グラウトパッカー1全体にグラウト40が充填されるまで、少量ずつ行われる。
【0032】
充填ステップでは、グラウトパッカー1内に取り付けられたそれぞれのモールド缶20にもグラウト40が充填される。
【0033】
[加圧ステップ]
図6に示すように、加圧ステップでは、充填ステップによってグラウトパッカー1に充填されたグラウト40が所定圧力まで加圧される。加圧ステップは、グラウト40の加圧注入によって行われる。加圧ステップにおける加圧注入の圧力は、グラウンドアンカーの施工における加圧注入で予定されている圧力と同じ値(例えば、0.2MPa)に設定されることが好ましい。グラウト40に含まれる水分は、加圧によってモールド缶20の側面20cの孔22から脱水される。
【0034】
[採取ステップ]
加圧ステップが完了してから所定時間(例えば、30分以上、1時間以下)経過すると、採取ステップが行われる。採取ステップでは、加圧ステップによって所定圧力に加圧されたグラウト40が、モールド缶20に充填された状態で採取される。
【0035】
本実施形態における採取ステップは、加圧ステップの完了後に、グラウト40が充填されたモールド缶20を回収するモールド缶回収ステップである。モールド缶回収ステップでは、グラウトパッカー1が解体された後、図7に示すように、それぞれのモールド缶20が、固定用具10から取り外されて回収される。
【0036】
[圧縮強度確認ステップ]
最後に、圧縮強度確認ステップでは、図8(a)に示すようにそれぞれのモールド缶20から円柱状のグラウト40が取り出され、図8(b)に示すように、モールド缶20から取り出されたグラウト40に対して、それぞれ圧縮強度試験が行われる。
【0037】
圧縮強度試験は、加圧ステップが完了したときから所定時間が経過したとき、具体的には、グラウンドアンカーの施工における加圧注入後に予定されるグラウトの養生期間と同じ時間(例えば、18時間)が経過したときに行われる。圧縮強度試験は、例えば、JIS A 1108規格に準じて行われる。
【0038】
この圧縮強度試験の結果により、所定圧力(例えば、0.2MPa)への加圧注入が完了してから所定時間(例えば、18時間)が経過したときにおけるグラウト40の圧縮強度を確認することが可能になる。
【0039】
[第2実施形態]
図9及び図10を参照しながら、第2実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法が説明される。
【0040】
第2実施形態では、吊り下げステップ、充填ステップ、加圧ステップ、採取ステップ、圧縮強度確認ステップがこの順で行われる。第2実施形態において、第1実施形態のような採取準備ステップ(グラウトパッカー1内へのモールド缶20の取り付け)は行われない。
【0041】
[吊り下げステップ]
まず、吊り下げステップでは、図9に示すように、第1実施形態と同様に設置された吊り台30に、グラウト注入ホース2の一端部が差し込まれた状態のグラウトパッカー1が吊り下げ支持される。このとき、グラウトパッカー1は、第1実施形態と同様の固定用具10を介して吊り台30に吊り下げられてもよいし、吊り台30に直接吊り下げられてもよい。
【0042】
[充填ステップ及び加圧ステップ]
続いて、図9に示すように吊り台30に吊り下げられた状態のグラウトパッカー1に対して、充填ステップ及び加圧ステップが第1実施形態と同様に行われる。
【0043】
[採取ステップ]
加圧ステップが完了してから所定時間(例えば、30分以上、1時間以下)経過すると、採取ステップが行われる。図10に示すように、本実施形態における採取ステップは、加圧ステップの完了後、グラウトパッカー1からモールド缶20にグラウト40を詰め替える詰め替えステップである。なお、この時点において、グラウト40の硬化は、モールド缶20に詰め替え可能な程度までしか進行していない。
【0044】
詰め替えステップでは、例えば、グラウトパッカー1が解体されて、複数のモールド缶20のそれぞれにグラウト40が詰め直される。これにより、加圧ステップによって所定圧力に加圧されたグラウト40が、モールド缶20に充填された状態で採取される。
【0045】
[圧縮強度確認ステップ]
最後に、それぞれのモールド缶20に採取されたグラウト40に対して、圧縮強度確認ステップが第1実施形態と同様に行われる(図8(a)及び図8(b)参照)。この結果、第1実施形態と同様、所定圧力(例えば、0.2MPa)への加圧注入が完了してから所定時間(例えば、18時間)が経過したときにおけるグラウト40の圧縮強度を確認することが可能になる。
【0046】
[グラウンドアンカーの施工方法]
以下、上述の第1または第2実施形態に係るグラウトの圧縮強度確認方法によって確認された結果を利用して、グラウンドアンカーを施工する方法の一例が簡単に説明される。
【0047】
まず、上述の圧縮強度試験の結果、すなわち、所定圧力(例えば、0.2MPa)への加圧注入が完了してから所定時間(例えば、18時間)が経過したときにおけるグラウト40の圧縮強度が確認される。
【0048】
続いて、これによって確認されたグラウト40の圧縮強度が所定の目標強度(例えば、24N/mm)以上である場合、当該グラウト40が、グラウンドアンカーの施工に使用されることが決定される。
【0049】
グラウンドアンカーの施工は、従来と同様の手順で行われる。つまり、地盤の削孔、削孔された地盤の孔に対するテンドンの挿入およびグラウト40の置換注入、地盤内に置換注入されたグラウト40に対する加圧注入、緊張定着、並びに、アンカー頭部の処理が行われる。
【0050】
この施工において、グラウト40の加圧注入は、例えば、グラウトパッカーを用いて行われることで、グラウト40の脱水が効果的に促進される。ただし、地盤の地質が砂質土である場合は、グラウトパッカーが用いられなくても、ケーシング加圧によって効果的に脱水が促進される。また、グラウト40の加圧注入は、前記所定圧力(例えば、0.2MPa)以上の圧力で行われる。
【0051】
その後、グラウト40の加圧注入が完了してから、前記所定時間(例えば、18時間)が経過するまで、グラウト40を養生させる。具体的に、当該養生期間は、前記所定時間(例えば、18時間)と同じ時間に設定されてもよいし、当該所定時間よりも若干長い時間に設定されてもよい。
【0052】
本実施形態に係るグラウンドアンカーの施工方法によれば、従来の養生期間(例えば、早強セメントの場合は72時間以上、普通セメントの場合は約一週間)に比べて、加圧注入後のグラウト40の養生期間が大幅に短縮される。したがって、グラウンドアンカーの工期短縮を図ることが可能になる。
【0053】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態におけるグラウトの圧縮強度確認方法では、吊り台30に吊り下げられたグラウトパッカー1にグラウト40が注入されるが、本発明において、吊り台の使用は必須でなく、例えば、地上に載置されたグラウトパッカーにグラウトが注入されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 グラウトパッカー
2 グラウト注入ホース
10 固定用具
20 モールド缶
22 孔
30 吊り台
40 グラウト
【要約】
【課題】グラウンドアンカー施工における加圧注入後のグラウトの養生期間の短縮を図る。
【解決手段】グラウンドアンカーの施工に用いられる所定のグラウト40に関して、所定圧力への加圧注入が完了してから所定時間が経過したときにおける圧縮強度を確認するためのグラウトの圧縮強度確認方法が提供される。本発明では、地上において、グラウトパッカー1に前記グラウト40を充填する充填ステップと、前記充填ステップによって前記グラウトパッカー1に充填された前記グラウト40を前記所定圧力まで加圧する加圧ステップと、前記加圧ステップによって前記所定圧力に加圧された前記グラウト40を、モールド缶20に充填した状態で採取する採取ステップと、前記モールド缶20から取り出された前記グラウト40に対して、前記加圧ステップが完了したときから前記所定時間が経過したときに圧縮強度試験を行う圧縮強度確認ステップと、が順に行われる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10